JP4092528B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真の現像に用いられるトナーの製造方法に関し、更に詳しくは、製造時に発泡や凝集物の発生が少なく、また、残留重合性単量体が少なく、環境安全性に優れた電子写真用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に電子写真用トナーは、結着樹脂を着色剤、帯電制御剤、離型剤などと混練、粉砕、分級して得られる粉砕法トナーと、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、離型剤等の混合物を懸濁重合、乳化重合、分散重合などの方法で重合した粒子として得られる重合法トナーに大別される。何れの手法でも重合工程で完全に重合性単量体を反応させることは困難であり、僅少の未反応重合性単量体がトナー中に残留してしまう。重合性単量体の残留したトナーを静電画像形成装置で使用すると、画像定着時の加熱等により残留重合性単量体がトナー中から揮発して作業環境を悪化させたり、不快な臭気を発生させる。また、残留重合性単量体の多い電子写真用トナーは、保存中にブロッキングが発生しやすい、画像定着時にオフセットしやすい、静電画像現像装置の部材上にフィルミングしやすいなどの問題がある。
粉砕法トナーの場合は、結着樹脂の製造段階で残留重合性単量体を除去するため、着色剤、帯電制御剤、離型剤などの影響を受けることがなく、残留重合性単量体低減は比較的容易である。一方、重合法トナーでは、着色剤、帯電制御剤、離型剤などを含んだ樹脂から残留重合性単量体を除去しなければならないが、重合性単量体はこれらの成分に吸着され易く、結着樹脂のみからの場合に比較して、残留重合性単量体の低減が困難である。
近年、特に市場要求の高まっている低温での定着が可能な重合法トナー(低温定着トナー)において、凝集を防止しつつ残留重合性単量体を低減することは著しく困難である。
【0003】
重合法トナーの重合反応後の一般的な工程には、洗浄工程、脱水工程及び乾燥工程がある。重合法トナーの残留重合性単量体を減らすために、こうした重合反応工程後の工程で残留重合性単量体除去処理をすることが多く検討されている。
例えば、(1)乾燥工程後の重合法トナーを処理する方法、(2)脱水工程後、乾燥工程前の重合法トナーを処理する方法、(3)脱水工程前の分散液中にある重合法トナーを処理する方法が知られている。
【0004】
(1)の方法として、減圧加熱処理する方法(特開平7−92736号公報)がある。しかし、乾燥したトナーを加熱処理すると、トナーが熱により凝集する傾向にあり、特に連続高速印字に適していると言われる低温定着トナーにおいてはこの傾向が大きな問題となる。これは低温での定着を実現させるため、一般に結着樹脂成分をはじめとするトナー成分としてTgや融点の低いものを用いてトナーを製造するため、製造工程での熱によってこれらの成分が柔らかくなり、凝集することに起因している。従って、この方法は低温定着トナーにおいては実用的ではない。
【0005】
(2)の方法として、気体を注入しながら真空乾燥を行う方法が提案されている(特開平10−207122号公報)が、当該公報の実施例によれば、この方法でも残留重合性単量体は、着色剤などに吸着され、約100ppmまでしか除去されていない。また、脱水後の処理であるため、前述した(1)の場合と同様、低温定着トナーの製造に際しては、トナー粒子の凝集が懸念される。
【0006】
(3)の方法としては、分散液に飽和蒸気を吹き込むこと(特開平5−100485号公報)が提案され、この方法によれば残留重合性単量体量は70ppm程度まで低減されると記載されている(実施例)。しかし、この方法では、飽和蒸気がトナー粒子と接触した際のせん断力によって粒子が凝集しやすく、スケールや凝集塊が増大する傾向にある。このため、必ずしも高い流動性のトナーを得ることができなかった。特にトナー粒径が小さくなるほど流動性が下がる傾向にあり、トナーの凝集は流動性にとって重大な問題となる。
このほか、特開平5−66613号公報においては、重合反応終了後の重合体粒子の水系分散液に水系媒体を添加しつつ、水系媒体を留去する方法が提案されているが、実際、どの程度の残留重合性単量体がトナー中に含まれているのかの確認はされていない。重合性単量体は水にも若干溶解するため、重合性単量体が接触する水の量が少なければ、重合体粒子から水に移行する重合性単量体の量も少なくなる。従って、当該公報で提案されたような徐々に水を添加する方法では、重合体粒子からの残留重合性単量体の溶出効率はさほど高くない。すなわち大量生産に際して、この方法を採用しても極めて高い生産性は期待できない。当該公報で示された残留重合性単量体除去に際しての温度条件は、トナーの吸熱ピークのピークトップ温度以上の温度に加温することと記載され、具体的には減圧下で150℃に加温している(実施例)。この温度条件は水の沸点を遙かに超えているため、添加した水系媒体の除去は容易である。しかしながら、こうした過酷な条件は、装置内壁へのトナーの付着や凝固を招き、特に低温定着トナーのような低軟化点物質を含み、結着樹脂自体のガラス転移温度(Tg)が低いトナーではこの傾向がますます高くなってしまう。
【0007】
このように、従来から重合法トナーにおいて、重合後の処理による残留重合性単量体の低減手法が種々検討されているものの、昨今の残留重合性単量体量100ppm以下という厳しい環境安全性に対する要求に応えることは困難であり、特に低温定着トナーの工業生産にも適した残留重合性単量体の低減方法は見いだされていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い生産性を可能にし、且つトナーの性能を損なわずに残留重合性単量体の少ない重合法トナーの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、重合終了後の重合体粒子の水系分散液を減圧ストリッピングする際、該分散液の少なくとも一部を外部熱交換器で加熱し、それを蒸発器内の液相に循環させることによって、上記目的を達成できることを見いだし、この知見によって、本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、少なくとも重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合し、次いで得られた重合体粒子の水系分散液の一部を抜き出し、それを外部熱交換器で加熱し、その加熱された水系分散液を蒸発器内の液相に循環させながら重合体の水系分散液を蒸発器で減圧ストリッピングして、揮発性有機化合物を留去することを特徴とする重合法トナーの製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明で使用する重合性単量体組成物には、少なくとも重合性単量体を含有する。
【0011】
重合性単量体として、モノビニル系単量体、架橋性単量体及びマクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、重合体粒子中の結着樹脂成分となる。
モノビニル系単量体の具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの不飽和カルボン酸エステル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;
【0012】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル単量体;等のモノビニル系単量体が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらのモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸の誘導体などが好ましく、特にスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステルが好適に用いられる。
【0013】
これらのモノビニル系単量体とともに任意の架橋性モノマーを用いると、定着性、特にオフセット性が向上する。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、架橋性モノマーを、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
【0014】
本発明では、マクロモノマーをモノビニル系単量体とともに重合性単量体として使用することができる。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。
マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。
マクロモノマーの量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。この範囲であれば保存性と定着性との良好なバランスが得られる。
【0015】
重合性単量体組成物には、重合性単量体の他、着色剤、分子量調整剤、帯電制御剤、離型剤などの添加剤を含有することができる。
【0016】
黒色着色剤として、カーボンブラック、ニグロシンベースの染顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。カーボンブラックを用いる場合、一次粒径が20〜40nmであるものを用いると良好な画質が得られ、またトナーの環境への安全性も高まるので好ましい。
カラートナー用着色剤としては、ネフトールイエロS、ハンザイエロG、C.I.ピグメントイエロ、C.I.バットイエロ、エオシンレーキ、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.バットレッド、フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー等が挙げられる。
これら着色剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
【0017】
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;を例示することができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で反応系に添加することができる。上記分子量調整剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部用いる。
【0018】
帯電制御剤として、各種の正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることが可能である。例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン等が挙げられる。より具体的には、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンN−01(オリエント化学社製 )、コピーブルー−PR(クラリアント社製)等の帯電制御剤および/または4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、スルホン酸(塩)基含有共重合体等の帯電制御樹脂を用いることができる。上記帯電制御剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜8重量部用いる。
【0019】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類や分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレンおよびこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレンおよびこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの多官能エステル化合物など1種あるいは2種以上が例示される。
【0020】
これらのうち、合成ワックス(特にフィッシャートロプシュワックス)、合成ポリオレフィン、低分子量ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが好ましい。なかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは50〜180℃、60〜160℃の範囲にあるものが、トナーとしての定着−剥離性バランスの面で特に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部用いる。
【0021】
本発明では、上記重合性単量体組成物を水系媒体中で重合する。重合は公知の方法を採用すればよく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等が挙げられるが、ドット再現性の良好な画質を与えるトナーを得る観点から、懸濁重合法を採用することが好ましい。また、重合性単量体の重合は、一段で行なってもよいし、二段階に分けて行なってもよい。
例えば、二段階に分けて重合する方法では、(1)一段目に重合する単量体(コア用重合性単量体)と二段目に重合する単量体(シェル用重合性単量体)の組成を変えて、一段目の重合で低Tgのコアを形成させ、二段目の重合で高Tgの層(シェル)を形成させる方法、(2)一段目に単量体を重合させ粒子を形成させた後、任意の重合体成分を添加して当該粒子に重合体成分を吸着または固着させる方法などによって、コア・シェル型重合体粒子とする方法が、低温定着性と高温保存性のバランスの点からも好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。このうち、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
【0023】
分散剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。特に架橋性モノマーを共重合させなかった場合には、難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤が、減圧ストリッピング中の重合体粒子の分散安定性ならびに、トナーの定着性と保存性とを改善するために好適である。
【0024】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることが好ましい。
【0025】
難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0026】
分散剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の割合で使用する。この割合が少ないと、得られるトナーの粒径が大きくなって所望の粒径分布を有するトナーを得ることが困難になる上、充分な重合安定性や減圧ストリッピング中の分散安定性を得ることが困難となり、凝集物が生成し易くなる。逆に、この割合が多いとトナー粒径が小さくなって所望の粒径分布を有するトナーを得ることが困難になるので好ましくない。
【0027】
これより、本発明の重合法トナーの製造方法を図1を参照しながら詳しく説明する。
【0028】
本発明においては、前述した方法によって重合して重合体粒子の水系分散液を得、次に行う減圧ストリッピングにおいて、得られた重合体粒子の水系分散液の一部を抜き出し、それを外部熱交換器2で加熱し、加熱された水系分散液を加熱液相循環ライン4を経て、蒸発器1内の液相10に循環させる。
【0029】
分散液を減圧条件下でストリッピング処理することで、重合体粒子の水系分散液中の水系媒体、及び残留重合性単量体、残留重合開始剤などの揮発性有機化合物を低減できる。
本発明の減圧ストリッピング処理は、通常減圧された蒸発器内で行う。また本発明における減圧ストリッピング処理では、揮発性有機化合物は気体となるため、通常蒸発器から排気ライン9を通して、外部へ気体が排出されることになる。
【0030】
重合体粒子の水系分散液の一部を抜き出し、それを外部熱交換器で加熱し、加熱された水系分散液を蒸発器内の液相に循環させる方法として、▲1▼抜き出した分散液の全量を加熱し、それを加熱液相循環ライン4で液相に循環させる方法、▲2▼抜き出した分散液の全量を加熱し、それを加熱液相循環ライン4と加熱気相循環ライン3に振り分けて、液相及び気相に循環させる方法、▲3▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインで液相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それも非加熱液相循環ライン6で液相に循環させる方法、▲4▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインで液相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それを非加熱気相循環ライン5で気相に循環させる方法、▲5▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインで液相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それを非加熱液相循環ラインと加熱気相循環ラインに振り分けて液相及び気相に循環させる方法、▲6▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインと加熱気相循環ラインに振り分けて液相及び気相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それを非加熱液相循環ラインで液相に循環させる方法、▲7▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインと加熱気相循環ラインに振り分けて液相及び気相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それを非加熱気相循環ラインで気相に循環させる方法、▲8▼抜き出した分散液の一部を加熱し、それを加熱液相循環ラインと加熱気相循環ラインに振り分けて液相及び気相に循環させ、同時に、抜き出した分散液の残りを非加熱のまま、それも非加熱液相循環ラインと非加熱気相循環ラインに振り分けて液相及び気相に循環させる方法が挙げられる。
これらの中でも、効率的に揮発性有機化合物を除去できる点から、▲2▼又は▲4▼の方法が好ましい。また、その場合、液相11と気相10の循環量の割合は、液相/気相=9/1〜1/9が好ましく、8/2〜2/8がより好ましい。
【0031】
外部熱交換器の使用に際して、加熱後の重合体分散液温度は、蒸発器内の重合体分散液温度に比較して高く設定するのがよく、温度差は通常0〜50℃、好ましくは0〜20℃である。温度差が設けるために、加熱後のスラリー温度を高くし過ぎると、循環時や蒸発器内への噴出時の不安定化により凝集が発生しやすくなる。一方、加熱後のスラリー温度を低くして温度差を大きくすると蒸発器内のスラリー温度を低くする必要があり、除去効率を著しく低下させる。
外部熱交換器の形式は特に限定されるものではないが、重合体分散液の加熱や循環時の不安定化による凝集等を抑制するためには、加熱時の接触面積が大きく、熱媒温度が低くても効率的に加熱可能なプレート型熱交換器が好適である。
また、液相循環液と気相循環液の温度は、液相循環液を気相循環液より、0〜20℃高くすることが好ましく、0〜10℃高くすることがより好ましい。
【0032】
分散液を気相に循環する場合には、重合体分散液を蒸発器上部より下部に向けて、重合体分散液の一部を噴出させる操作(以下、フラッシングという)を行うのが、液面発泡を抑制しながら揮発性有機化合物の蒸発が効率的に行われる点で好ましい。この操作を行うと、蒸発に伴う液面発泡を、蒸発器上部から液面へのフラッシングによって機械的に抑制する効果が得られる。
【0033】
減圧ストリッピングを行うに当り、重合体粒子の水系分散液に新たに水系媒体を添加することができる。
水系媒体を添加する場合、その量は、分散液に対して、通常1〜200体積%、好ましくは5〜100体積%である。これが少ないと、留去による分散液の濃度上昇によって凝集物の発生や容器内面への付着が処理早期に発生することがあり、逆に多いと、ストリッピング処理後の洗浄・濾過等の工程を生産性良く実施するための分散液量とするために多量の水系媒体の留去が必要となり、かえってストリッピング処理の効率が低下することがある。
【0034】
減圧ストリッピング処理では水系媒体及び揮発性有機化合物の蒸発、回収によって、系内の重合体分散液の濃縮が同時に行われる。
【0035】
重合体粒子を含む水系分散液の減圧ストリッピング処理において、一般的に処理初期の段階では分散媒中に溶出した揮発性有機化合物が水系媒体とともに気液平衡支配下で高い速度で除去され、処理後期では重合体粒子中から水系媒体中への揮発性有機化合物の溶出が律速となり除去速度が低下する。
また、本発明においては、前述した方法によって重合して重合体粒子の水系分散液を得、次に行う減圧ストリッピングの供給熱量を、段階的または連続的に増加させて、水系媒体とともに揮発性有機化合物を留去することができる。これにより、処理初期において揮発性有機化合物の除去速度を抑制することが可能になり、水系媒体の発泡を少なくすることができ、それにより、凝集物の発生や前記気液平衡支配下での除去効率の低下を防ぐことが可能となる。
【0036】
減圧ストリッピング処理初期の重合体粒子1kg当たりの供給熱量は、通常5〜50kcal/hr、好ましくは10〜40kcal/hrである。処理初期時間は、処理開始から、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜4時間とすることが望ましい。ここで、減圧ストリッピング処理の開始時は、処理を行う所定温度にした後、蒸発器内が飽和水蒸気圧に達した時をいう。
供給熱量が少ないと、処理中の発泡はないものの揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがあり、逆に多いと、液面からの発泡抑制が困難になることがある。上記供給熱量での処理時間が短いと、液面からの発泡抑制が困難になることがあり、逆に長いと、揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがある。
また、減圧ストリッピング処理後期の重合体粒子1kg当たりの供給熱量は、通常20〜200kcal/hr、好ましくは30〜100kcal/hrとすることが望ましい。これが少ないと、揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがあり、逆に多いと、蒸発量が多くなり液面からの発泡抑制が困難になることがある。
【0037】
供給熱量を増加させる方法としては、上述した外部熱交換器を接続した蒸発器を用いる方法の他に、熱媒循環ジャケット7を設けた蒸発器を用いる方法、熱交換器を内部に設けた蒸発器を用いる方法、蒸発器内に気体吹込みライン8を通して加熱気体を吹込む方法等が挙げられ、またはこれらの方法の組合せによって行うこともできる。これらの方法のうち、外部熱交換器を接続した蒸発器を用いる方法と蒸発器内に加熱気体を吹込む方法との組合せが、除去効率と発泡抑制を両立させる面で好ましい。
【0038】
減圧ストリッピング時の重合体粒子の水系分散液の温度(℃)は、分散液温度Ts(℃)と当該重合体粒子のガラス転移温度Tg(℃)の関係が、通常Tg≦Ts<100℃、好ましくはTg≦Ts≦90℃、より好ましくはTg+5℃≦Ts≦85℃でほぼ一定となるようにするのが望ましい。TsがTgよりも低いと蒸発が少なくなる上、重合体粒子中での揮発性有機化合物の移動が極端に遅くなるため、揮発性有機化合物の除去速度が著しく低下する。この観点からTsはTgより5℃以上高く設定するのが望ましい。また、Tsが100℃より高いと熱により重合体粒子の分散安定性が低下して処理中に凝集物、蒸発器缶壁や攪拌機へのスケール付着が増大する。もちろん外部熱交換器を使用する場合、フラッシングを繰り返す中で重合体分散液が徐々に加熱されて前述の温度に達してもよいし、あらかじめ重合体粒子の水系分散液の温度を前述の温度にしてからフラッシングさせてもよい。
なお、重合性単量体の重合によって生成する結着樹脂のTgが2点以上ある場合、一番低いTgを基準とする。ここでTgは、示差走査熱量計(DSC)によって測定される値である。
【0039】
重合体粒子の水系分散液には、重合時に使用した分散剤が存在しているが、減圧ストリッピング処理中の分散安定性を維持するために、さらに分散剤を追加してもよい。
減圧ストリッピング処理の終了は、重合体粒子中の残留重合性単量体が所望の量になった時点である。具体的には、印字中の臭気等の観点から、乾燥後の重合体粒子中の残留重合性単量体量が80ppm以下、好ましくは70ppm以下となるよう、減圧ストリッピング処理後の重合体粒子中の残留重合性単量体量は100ppm以下にする。
また、上記残留重合性単量体の量をストリッピング処理数時間毎に測定し、処理時間(x)対残留モノマー量(y)をプロットして、yを対数とする片対数グラフから指数近似式y=a・e−bxを得、それを用いて下式より残留重合性単量体低減速度Rs(%/hr)を算出した。
Rs=100・(1−e−b
残留重合性単量体低減速度Rsは、10%/hr以上であることが好ましい。この値が小さいと、残留重合性単量体の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがある。
【0040】
蒸発器内の圧力は処理温度と分散媒(通常は水)の蒸気圧の関係で決定されるが、本発明においては、ゲージ圧で−30〜−90kPaの範囲が好適である。高過ぎる圧力では重合体水系分散液をかなり高温に加熱することになるため、熱交換器部分での水系分散液中の重合体粒子の分散安定性が低下し、処理中に凝集物や蒸発器壁へのスケール付着が増大する。また、低過ぎる圧力では処理温度における分散媒の蒸気圧に対して圧力が低くなるので気液平衡が一気に気体側に移行して、蒸発器中の水系分散液内部から分散媒やその他の揮発成分の沸騰が始まり、発泡が著しくなる等、安定な処理が困難になる。
【0041】
更に本発明においては、水系分散液中の重合体粒子と分散媒体の界面更新を促進して揮発性有機化合物の蒸発を促すため、系の温度や圧力のバランスを不安定化させない範囲で、蒸発器内の液相に気体を吹込みながら減圧ストリッピング処理することができる。吹込む気体は特に限定されるものではなく、水蒸気、乾燥空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、不燃性気体であることが好ましい。また、上記気体を吹込む際、重合体粒子の凝集防止の意味から、気体の温度は100℃以下の温度が好ましい。
【0042】
本発明においては、減圧ストリッピング処理の後、必要に応じて粒子を凝集させて粒径を肥大化させ、次いで、通常の脱水、洗浄、乾燥処理を行なって重合体の乾燥粒子(トナー)を得る。得られた粒子の残留重合性単量体は80ppm以下、好ましくは70ppm以下である。
【0043】
本発明の製造方法で得られる好ましい重合法トナーは、流動性が55%以上、好ましくは60%以上の実質的に球形のトナーであり、上述した懸濁重合法により得ることができる。また、本発明の実質的に球形のトナーは、体積平均粒径(dv)が3〜15μm、好ましくは5〜10μmであり、体積平均粒径と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1〜1.4、好ましくは1〜1.3であり、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1〜1.3の範囲であり、かつBET比表面積(A)[m/g]、個数平均粒径(dpn)[μm]および真比重(D)の積(A×dn×D)が5〜10の範囲のものであるのが望ましい。
特に好ましい重合法トナーは、120℃での溶融粘度が10万ポイズ以下、好ましくは0.1〜10万ポイズ、より好ましくは1〜8万ポイズである。粘度測定はフローテスターを用いて測定すればよい。このような溶融粘度を持つトナーによれば高速での印刷によっても高画質が実現する。
【0044】
コア層と、これを被覆するコア層を構成する重合体のガラス転移温度より高いガラス転移温度を持つ重合体からなるシェル層を有する、コアシェル構造の重合体粒子(カプセルトナー)は保存性の点で好ましい。
さらに本発明の重合法トナーを外添処理に付し、重合体粒子(トナー粒子)の表面に添加剤(以下、外添剤という)を付着、埋設等させることによって、粒子の帯電性、流動性、保存安定性などを調整することができる。
外添剤としては、無機粒子、有機樹脂粒子、好ましくはシリカ粒子、酸化チタン粒子、特に好ましくは疎水化処理されたシリカ粒子が挙げられる。外添剤を前記トナー粒子に付着させるには、通常、外添剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合器に仕込み、撹拌すればよい。
【0045】
【実施例】
本発明の製造方法を実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0046】
本実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(液面発泡性)
ストリッピング処理中の蒸発器内部の目視観察結果より、下記の基準で評価した。
○:分散液の液面上にほとんど泡の滞留が見られないか、若干の発泡層が形成されるにとどまっている安定な処理状態。
△:分散液の液面上に常時泡の滞留が見られ、泡先端が蒸発器上部の排気ノズルに到達しない範囲で変動している不安定な処理状態。
×:泡先端が蒸発器上部の排気ノズルに達するまで泡が成長し、系内が不安定で連続処理が不可能な状態。
【0047】
(粒径)
重合体粒子(トナー粒子)の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と平均粒径(dp)との比(dv/dp)はマルチサイザー(ベックマン・コールター社製)によりを測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:100000個の条件で行った。
【0048】
(ガラス転移温度)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製:SSC5200)を用いてASTMD3418−97に準じて、トナー10mgを精秤し、これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲:室温〜150℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行った。
【0049】
(残留重合性単量体の量)
ガスクロマトグラフィーにより、下記条件で下記方法により測定した。
カラム:TC−WAX、0.25mm×30m)
カラム温度:80℃
インジェクション温度:200℃
FID検出側温度:200℃
【0050】
脱水処理後乾燥前の湿潤した重合体粒子または乾燥後のトナー3gを1mg単位まで精秤し、n,n−ジメチルホルムアミド27gを加えて15分間攪拌した後、メタノール13gを加えて更に10分間攪拌してから静置して不溶分を沈澱させた。その後、上澄み液2μlをガスクロマトグラフに注入して重合性単量体の残留を確認した。定量用標準試料は、各単量体のn,n−ジメチルホルムアミド/メタノール溶液とした。
脱水後乾燥前の重合体粒子中の残留重合性単量体量は、湿潤した試料中の純固形分に対する比率として算出した。なお、純固形分は、▲1▼上記試料調整作業のために湿潤した重合体粒子を分取するのと同時に、1gを1mg単位まで精秤し、▲2▼これを赤外ランプで約200℃、30分間加熱して得た固形分重量を精秤し、▲3▼乾燥前後の重量差から純固形分割合を算出し、▲4▼この割合を、残留重合性単量体量測定のために用いた湿潤した重合体粒子重量に乗じて求めた。
乾燥後のトナー粒子中の残留重合性単量体量は、当該トナー重量に対する比率として算出した。
【0051】
(残留重合性単量体低減速度Rsの算出方法)
上記残留重合性単量体の量をストリッピング処理1時間毎に測定し、処理時間(x)対残留モノマー量(y)をプロットした。その結果、yを対数とする片対数グラフとすることでxとyに直線の関係が得られた。 このプロットを元に指数近似式y=a・e−bxを得、下式より残留重合性単量体低減速度Rs(%/hr)を算出した。
Rs=100・(1−e−b
【0052】
(臭気の評価)
前述の画質評価において、印字紙出口付近での単量体の臭気を健康な5人で官能試験を行い、以下の基準で評価した。
○:単量体の臭気を感じる人がいない
△:単量体の臭気を感じる人が1〜2人いる
×:単量体の臭気を感じる人が3人以上いる
【0053】
(実施例1)
スチレン80.5部およびn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用重合性単量体(これらの単量体を共重合して得られた共重合体のTg=55℃)、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25B」)7部、帯電制御剤(保土ヶ谷化学社製、商品名「スピロンブラックTRH」)1部、離型剤(フィッシャートロプシュワックス、サゾール社製、商品名「パラフリントH1」、吸熱ピーク温度:100℃)2部を、メディア型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物Aを得た。
【0054】
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液Aを調製した。生成した上記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.35μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.84μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器による測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0055】
一方、メチルメタクリレート(Tg=105℃)3部と水100部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水系分散液Aを得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、D90が1.6μmであった。
【0056】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに、コア用重合性単量体組成物Aを投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこに重合開始剤:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)6部添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、単量体混合物の液滴を造粒した。この造粒した単量体混合物の水系分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達した後、前記シェル用重合性単量体の水系分散液Aに水溶性開始剤(和光純薬社製、商品名「VA−086」=2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド))0.3部を溶解し、それを反応器に入れた。4時間重合を継続した後、反応を停止し、重合体粒子の水系分散液を得た。
【0057】
攪拌機付き蒸発器に、上記により得た重合体粒子の水系分散液を投入し、分散液を攪拌ならびに系内循環しながらプレート型外部熱交換器により70℃まで加熱した。その際、外部熱交換器から蒸発器内に循環させる分散液は、総循環量の70%を蒸発器底部から液相に噴出させ、残り30%を蒸発器上部から液面に向けて噴出させて循環した。その後、蒸発器内のゲージ圧で−62kPaまで減圧にし、更に外部熱交換器を使用して、加熱後の液温を78℃、蒸発器内の液温を74℃となるように制御した。その際、供給熱量を重合体乾燥重量1kgあたり32kcal/hrとし、供給熱量に見合う量の揮発性有機化合物及び分散媒体(水)を蒸発させて、系外に排出した。この条件を保持したまま、減圧ストリッピングを10時間行い、その後、熱供給を停止して減圧を解き、分散液を25℃まで冷却した。
このストリッピング処理の間、1時間毎にサンプリングを行い、残留重合性単量体量を測定した。減圧ストリッピング後の重合体分散液中の凝集物量増大ならびに蒸発器内および熱交換器中へのスケールの付着は認められなかった。
【0058】
上記により得たコア・シェル型重合体粒子の水系分散液を、撹拌しながら、硫酸により洗浄(25℃、10分間)して、系のpHを4.5以下にした。この水系分散液を濾過し、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて脱水、洗浄し、固形分を濾過分離した。その後、乾燥機にて45℃で10時間乾燥し、コア・シェル型重合体粒子を得た。
乾燥機にて乾燥する前及び後の重合体粒子中の残留重合性単量体量を測定した。
【0059】
上記により得られた重合体粒子100部に、疎水化処理した平均粒子径14nmのシリカ(日本アエロジル社製、商品名「RX200」)0.8部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、電子写真用トナーとした。
得られたトナーについて、評価を行った。
測定結果、評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004092528
【0061】
(実施例2〜4)
蒸発器内に循環する液相と気相の液温、比率及び減圧ストリッピングの処理時間を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用トナーを製造した。
(比較例1)
プレート熱交換器からの循環をせず、蒸発器底部から液相への減圧スチーム供給のみのストリッピング処理を実施した。スタート時の供給熱量を重合体乾燥重量1kgあたり29kcal/hrで12時間ストリッピングを行った以外は、実施例1と同様にして電子写真用トナーを製造した。
この時、減圧ストリッピング中の凝集物の増加ならびに蒸発器内および熱交換器中へのスケールの付着は見られた。
【0062】
表1の結果から、以下のことがわかる。
本発明の方法によれば、実施例1〜4に示した通り、ストリッピング処理をの液面発泡の問題なしに高い除去効率で行うことができ、残留重合性単量体が少なく定着時の臭気のないトナーを容易に得ることができる。一方、比較例1ではストリッピング処理中に液面が発泡し、処理を安定に行えないためにこれ以上の熱供給量を増加させることができず、結果として残留重合性単量体の除去が不十分で定着時の臭気に問題のあるトナーしか得られなかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られた電子写真用トナーを用いることにより、臭気などの環境への影響が少ない状態での連続高速印刷が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、減圧ストリッピングで使用する蒸発器及びそれに用いる配管の概略図である。

Claims (1)

  1. 少なくとも重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合し、次いで得られた重合体粒子の水系分散液の一部を抜き出し、それを外部熱交換器で加熱し、その加熱された水系分散液を蒸発器内の液相に循環させながら重合体の水系分散液を蒸発器で減圧ストリッピングして、揮発性有機化合物を留去することを特徴とする重合法トナーの製造方法。
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