JP4032595B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真の現像に用いられるトナーの製造方法の改良に関し、特に造粒工程における撹拌条件の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナーの製造方法として、(1)結着樹脂を着色剤、帯電制御剤、離型剤などと混練、粉砕、分級して得られる粉砕法と、(2)重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、離型剤等の混合物を懸濁重合、乳化重合又は分散重合して着色重合体微粒子を直接に得る重合法とがある。
重合法によりトナーを得ようとする場合には、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する単量体組成物と分散安定剤を含有する水系媒体中で適当な攪拌機を用いて単量体組成物を適当な粒径の液滴に造粒し、予め添加されている重合開始剤又は新たに加えられた重合開始剤によって重合性単量体を重合させる。
この重合法によって得られるトナーは、粒子の形状が球形であるため流動性に優れ、粒径分布が粉砕法トナーと比較して格段にシャープである等の特徴を有する。
現在、トナー粒子に要求されている粒子径は1〜10μmであり、かつ粒径分布は、体積平均粒径/個数平均粒径(dv/dp)が1.0〜1.4程度であると言われている。しかし粒径分布がシャープであると言われている懸濁重合法により得られるトナーであっても、この粒径分布の要求レベルを満足するためには、工業的な大量生産においては分級工程を必要とする場合があった。
【0003】
分級工程を経ると、収率が下がり生産性に悪影響を及ぼす。そこで、分級不要なほどに粒径分布のシャープなトナーを得るために、トナー材料の面からの検討の他、造粒条件における検討が行われている。例えば、タービン型撹拌機を用いて造粒する方法(特開昭63−165869号公報)、同心上に配置された櫛歯形状の回転子及び固定子を高速で回転させて、その回転子内側から固定子外側に分散液を流通させて回転子と固定子との間隙で分散液を撹拌させ造粒する方法(特開平2−32363号公報)、高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンにより生じるせん断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション及びポテンシャルコアの作用によって造粒する方法(特開平8−305084号)、分散液を遠心力によって造粒槽側壁に押し付けて、液膜を形成し、該液膜に超高速で回転する撹拌具の先端が触れることによって造粒する方法(特開平11−167222号公報)などが提案されている。
しかしながら、このような造粒能力の高い装置を使って液滴造粒を行っても、液滴の合一は充分に抑制されないため、重合によって得られる着色重合体粒子には、所望の粒径範囲から外れる粗大な粒子が含まれていることがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、粗大粒子が含まれない、分級工程が要らない、粒径分布がシャープなトナーを収率よく得る方法を提供することにある。
本発明者らは、造粒から重合に到る工程を徹底的に検討した結果、造粒装置に供給する分散液を貯蔵する撹拌槽や、造粒装置を通過した分散液を受け入れる撹拌槽において、その攪拌翼の設置位置と翼の先端速度とを特定の範囲にすることによって、または撹拌槽から抜き出した分散液を高速撹拌装置を通過させた後、撹拌槽に一定の循環回数だけ戻すことによって、着色重合体粒子に粗大粒子が含まれなくなることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、(1)水面から撹拌翼上端までの深さHと撹拌槽の槽径Dとの比(H/D)が0.1以上、および 撹拌翼の先端の速度が5m/s以下、の条件で、重合性単量体、着色剤及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で分散撹拌して、分散液を得、(2)該分散液を前記撹拌槽から抜き出して高速撹拌装置を通過させ造粒し、(3)次いで、造粒された単量体組成物を重合して着色重合体粒子を得ることを含むトナーの製造方法、が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーの製造方法は、(1)攪拌翼を備えた撹拌槽中で、水面から攪拌翼上端までの深さをH、槽径をDとした場合のH/Dが0.1以上の位置に撹拌翼が存在し、該攪拌翼の先端の速度が5m/s以下の条件で、重合性単量体、着色剤及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に分散させた分散液を撹拌し、(2)該撹拌槽から、該分散液を抜き出して高速撹拌装置を通過させ造粒し、(3)重合性単量体を重合して着色重合体粒子を得ることを含むものである。
【0007】
本発明において、攪拌翼先端速度は5m/s以下、好ましくは4m/s以下であり、より好ましくは3m/s以下である。攪拌翼先端速度の下限は、特に制限されないが、攪拌効果と攪拌効率の観点から、好ましくは0.3m/s以上、より好ましくは0.5m/s以上である。この値が5m/sを超える場合、粒径分布がブロードになり、粒径分布がシャープなトナーを得ることは困難になる。
【0008】
本発明においては、水面から攪拌翼上端までの深さHと槽径(撹拌槽内径)Dとの比であるH/Dが0.1以上、好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上の深さに翼が設置されていることが必要である。また、攪拌翼が多段翼の場合、最上段の翼は、H/Dが1以下、好ましくは0.6以下となるように位置するのが望ましい。尚、本発明でいう水面から攪拌翼上端までの深さHは、撹拌中の最低水位の水面と攪拌翼最上部との間の距離である(図1参照)。攪拌翼の水面からの深さHと槽径Dとの比であるH/Dが小さすぎると、すなわち液面近くに攪拌翼がある場合、粒径分布がブロードになり、粒径分布がシャープな重合法トナーを得ることは困難になる。
【0009】
本発明における攪拌翼は、一般的な撹拌装置に用いられるものであれば特に制限されないが、具体例としては傾斜パドル翼、平パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、ファドラー翼、タービン翼、ブルマージン翼、マックスブレンド翼(住友重機械工業製)、フルゾーン翼(神鋼パンテック製)、リボン翼、スーパミックス翼(佐竹化学機械工業製)、A310翼(LIGHTNIN製)、A320翼(LIGHTNIN製)、インターミグ翼(エカート製)等が例示される。
これらの中でも、攪拌時の翼近傍の剪断速度を低下させながら、均一混合及び除熱能力を確保するため、傾斜パドル翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパミックス翼、 A310翼、A320翼、インターミグ翼が好ましく、生産性の観点から傾斜パドル翼が特に好ましい。
【0010】
攪拌翼の大きさについては特に制限されず、製造設備に応じた大きさを選択することができる。好適な攪拌翼の大きさは、重合反応容器の内径Dと撹拌翼の回転直径(d)との関係d/Dが、通常0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.7である。
攪拌翼は一段で使用しても良いし、多段に配置して使用しても良く、更には異なる翼を組み合わせて使用しても良いが、特に攪拌効率の観点から、同型の翼を2〜3段組み合わせた多段翼が好ましい。
【0011】
本発明において、好適な攪拌条件は、攪拌により消費される動力P[kw]を、撹拌槽中の分散液の体積V[m]で割った攪拌所要動力Pv[kw/m]が、通常0.01〜0.6、好ましくは0.05〜0.5、特に好ましくは0.08〜0.4である。
Pv値が大き過ぎると、攪拌が強すぎて、液滴の合一が進行し粒径分布がブロードになることがある。また逆に、Pv値が小さ過ぎると、分散物の混合不良による造粒効率の低下で粒径分布がブロードになることがある。
本発明においては、このPvを適切な範囲にコントロールすることにより、得られるトナー粒子の粒径分布をよりシャープにすることができる。
【0012】
本発明に用いる分散液は、重合性単量体、着色剤及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に分散させたものである。本発明に用いる重合性単量体の主成分としてモノビニル系単量体を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、着色重合体粒子を構成する結着樹脂となる。
モノビニル系単量体の具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの不飽和カルボン酸エステル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル単量体;等のモノビニル系単量体が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらのモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸の誘導体などが好ましく、特にスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステルが好適に用いられる。
【0013】
これらのモノビニル系単量体とともに任意の架橋性モノマーを重合性単量体として用いると、定着性、特にオフセット性が向上する。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、架橋性モノマーを、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
【0014】
また、本発明では、重合性単量体としてマクロモノマーを使用することができる。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。
マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。
マクロモノマーの量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。この範囲であれば保存性と定着性との良好なバランスが得られる。
【0015】
着色剤は、一般にトナー用の着色剤として周知の染料や顔料を使用することができる。
黒色着色剤として、カーボンブラック、ニグロシンベースの染顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。カーボンブラックを用いる場合、一次粒径が20〜40nmであるものを用いると良好な画質が得られ、またトナーの環境への安全性も高まるので好ましい。
カラートナー用の着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤などがある。
イエロー着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、83、90、93、97、120、138、155、180及び181等が挙げられる。
【0016】
マゼンタ着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド48、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、C.I.ピグメントバイオレット19、等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物等が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、及び60等が挙げられる。
これら着色剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
【0017】
帯電制御剤として、各種の正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることが可能である。例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン等が挙げられる。より具体的には、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンN−01(オリエント化学社製 )、コピーブルー−PR(ヘキスト社製)等の帯電制御剤及び/または4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、スルホン酸(塩)基含有共重合体等の帯電制御樹脂を用いることができる。上記帯電制御剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、特に0.03〜8重量部用いることが好ましい。
【0018】
単量体組成物にはさらに、分子量調整剤、重合開始剤、離型剤などの他の配合物を含有させることができる。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類;分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレン及びこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレン及びこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトララウレートなどのペンタエリスリトールエステルやジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサラウレートなどのジペンタエリスリトールエステル等多官能エステル化合物;など1種あるいは2種以上が例示される。
【0019】
これらのうち、合成ワックス、末端変性ポリオレフィンワックス類、石油系ワックス及びその変性ワックス、多官能エステル化合物などが好ましい。多官能エステル化合物のなかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは50〜180℃、60〜160℃の範囲にあるペンタエリスリトールエステルや、同吸熱ピーク温度が50〜80℃の範囲にあるジペンタエリスリトールエステルなどの多価エステル化合物が、トナーとしての定着−剥離性バランスの面で特に好ましい。とりわけ分子量が1000以上であり、スチレン100重量部に対し25℃で5重量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるジペンタエリスリトールエステルは、定着温度低下に著効を示す。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、特に1〜15重量部用いることが好ましい。
【0020】
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;を例示することができる。これらの分子量調整剤は、単量体組成物に含有させてもよいし、重合開始前、あるいは、重合の途中で反応系に添加してもよい。上記分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部用いる。
【0021】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーブチルネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1’,3,3’−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。
また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。このうち、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、場合によっては、造粒工程終了後の懸濁液に添加することもできる。
【0022】
本発明に用いる水系分散媒は、水を主成分する分散媒であり、これに分散安定剤が含まれているものである。
分散安定剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物; 水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。特に架橋性モノマーを共重合させなかった場合には、難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤が、重合中の重合体粒子の分散安定性ならびに、トナーの定着性と保存性とを改善するために好適である。
【0023】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることが好ましい。
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下することがある。
分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の割合で使用する。この割合が少ないと充分な重合安定性を得ることが困難であり、凝集物が生成し易くなる。逆に、この割合が多いとトナー粒径が細かくなりすぎるので好ましくないことがある。
【0024】
本発明に用いる水系分散媒には、分散安定剤の他に、水溶性の有機化合物、あるいは無機化合物を含有されていてもよい。
特に水溶性オキソ酸塩が含有されていると、粒径分布がシャープになり好ましい。水溶性オキソ酸塩としては、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩等が挙げられ、好ましくはホウ酸塩又はリン酸塩が、特に好ましくはホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸塩としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム;四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム十水和物、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム四水和物、ペルオキソホウ酸ナトリウム四水和物、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム八水和物などが挙げられる。リン酸塩としては、ホスフィン酸ナトリウム一水和物、ホスホン酸ナトリウム五水和物、ホスホン酸水素ナトリウム2.5水和物、リン酸ナトリウム十二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、次リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸二水素二ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム六水和物、三リン酸ナトリウム、cyclo−四リン酸ナトリウム、ホスフィン酸カリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム三水和物、メタリン酸カリウムなどが挙げられる。水溶性オキソ酸塩の量は、難水溶性無機化合物コロイド100重量部に対して、通常0.1〜1000重量部、好ましくは1〜100重量部である。水溶性オキソ酸塩は、溶解させて水系分散媒中に含有させる。
【0025】
本発明に用いる高速撹拌装置は、特に限定されず、例えば、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)に代表されるタービン型撹拌機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)に代表される同心上に配置された櫛歯形状の回転子及び固定子を高速で回転させて、その回転子内側から固定子外側に分散液を流通させて回転子と固定子との間隙で分散液を撹拌させる装置、クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニック社製)に代表される高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンにより生じるせん断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション及びポテンシャルコアの作用によって造粒する装置、TKフィルミックス(特殊機化工業社製)に代表される液を遠心力によって造粒槽側壁に押し付けて、液膜を形成し、該液膜に超高速で回転する撹拌具の先端が触れることによって造粒する装置などが挙げられる。
分散液は前記撹拌槽から抜き出され、前記の高速撹拌装置を通過させられる。前記高速撹拌装置に通過させる分散液の量は、滞留時間表示で、通常0.5〜300秒、好ましくは 1〜250秒、より好ましくは 2〜240秒である。
【0026】
前記高速攪拌装置の回転部の先端速度は、一般に5〜90m/s、好ましくは10〜60m/s、より好ましくは20〜50m/sである。
また、前記高速攪拌装置として前述のエバラマイルダーを使用する場合の回転子および固定子の組合わせは、粗歯−中歯または細歯−中歯または細歯の3段でも、粗歯−中歯または細歯の2段でも、粗歯、中歯、細歯から選ばれる1段、のいずれの組合わせも可能である。この中でも粗歯と中歯および/または細歯の2ないし3段の組合わせが好ましい。
本発明においては、高速撹拌装置を通過させた分散液は、前記の撹拌槽に戻すことが好ましい。分散液を戻すことによって、撹拌槽の水位が一定に保たれ、前記の撹拌条件を安定的に維持できるので、重合によって得られる着色重合体粒子の粒径分布がシャープになる。 攪拌槽に分散液を戻しながら処理する場合の循環回数(高速攪拌装置を通過した総処理液量/仕込みの処理液量として算出する)は2〜50回であり、好ましくは3〜30回である。
【0027】
水系分散媒中に造粒された単量体組成物中の重合性単量体は重合開始剤で重合され、それによって着色重合体粒子が得られる。
着色重合体粒子が得られた後、該粒子表面にさらに重合体を被せることができる。重合体を被せる方法としては、着色重合体粒子を得た反応液に、被覆重合に使用する単量体(シェル用重合性単量体)を添加させて、引き続き重合する方法や、一旦、着色重合体粒子を得た後、任意の重合体成分を添加して当該粒子に重合体成分を吸着または固着させる方法などがある。着色重合体粒子をシェル重合体に比較して軟質なもの(ガラス転移温度の低いもの)にした、コア・シェル型重合体粒子によってトナーを製造した場合には、低温定着性と高温保存性のバランスの良好な、いわゆるカプセルトナーを得ることもできる。
【0028】
重合後、着色重合体粒子は、洗浄、脱水、乾燥される。洗浄においては、トナー中の残留金属(イオン)量を制限するようにするのが望ましい。特にマグネシウムやカルシウムなどの金属(イオン)がトナー中に残留していると、高湿条件下では吸湿を起こしトナーの流動性を低下させたり画質に悪影響を及ぼすことがある。こうしたトナー中に残留したマグネシウムやカルシウム(以下、単に残留金属という)のトナー中の含有量の少ないものは、高温高湿条件下でも、1分間に30枚以上を印刷できる高速機で高い印字濃度、カブリのない良好な画質を与えることができる。残留金属量は、好ましくは170ppm以下、より好ましくは150ppm以下、特に好ましくは120ppm以下である。残留金属を低減させるには、例えば、粒子を洗浄脱水するときに、連続式ベルトフィルターやサイホンピーラー型セントリヒュージなどの洗浄脱水機などを用いて脱水、洗浄、そして乾燥する。乾燥後の粒子は、必要に応じて分級することができる。
【0029】
本発明の製造方法によって得られるトナーは、実質的に球形であり、体積平均粒径(dv)は1〜10μm、好ましくは3〜8μmであり、体積平均粒径と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)は1〜1.5、好ましくは1〜1.3であり、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)は1〜1.3の範囲であり、かつBET比表面積(A)[m/g]、個数平均粒径(dn)[μm]及び真比重(D)の積(A×dn×D)は5〜10の範囲のものであるのが望ましい。
特に好ましいトナーは、120℃での溶融粘度が10万ポイズ以下、好ましくは0.1〜10万ポイズ、より好ましくは1〜8万ポイズである。粘度測定はフローテスターを用いて測定すればよい。このような溶融粘度を持つトナーによれば高速での印刷によっても高画質が実現する。
【0030】
さらに着色重合体粒子に外添処理を行うことができる。粒子の表面に添加剤(以下、外添剤という)を付着、埋設等させることによって、粒子の帯電性、流動性、保存安定性などを調整することができる。
外添剤としては、無機粒子、有機酸塩粒子、有機樹脂粒子などが挙げられる。無機粒子としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられる。有機酸塩粒子としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがメタクリル酸エステル共重合体でシェルがスチレン重合体で形成されたコアシェル型粒子などが挙げられる。これらのうち、無機粒子、特に二酸化ケイ素粒子が好適である。また、これらの粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理された二酸化ケイ素粒子が特に好適である。外添剤の量は、特に限定されないが、着色重合体粒子100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。外添剤は2種以上を組み合わせて用いても良い。外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる無機粒子同士または無機粒子と有機樹脂粒子を組み合わせる方法が好適である。外添剤を前記重合体粒子に付着させるには、通常、外添剤と着色重合体粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合器に仕込み、撹拌して行う。本発明によれば、外添後の流動性が20%以上、好ましくは30%以上の実質的に球形のトナーであり、上述した方法により得ることができる。
【0031】
【実施例】
本発明の製造方法を実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において行った評価は、以下の方法によって行った。
(粒径、粒径分布、粗粉と微粉の割合)
重合体粒子(トナー粒子)の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、粒径分布測定装置(SALD2000A型、島津製作所株式会社製)により測定した。この粒径分布測定装置による測定においては、屈折率=1.55−0.20i、超音波照射時間=5分間、粒径測定時の分散媒として蒸留水を用いて行った。
この測定装置を用いて得られる体積平均粒径の積算カーブより15.2μm以上割合を粗粉割合(体積%)として求め、個数平均粒径の積算カーブより4.6μm以下の割合を微粉割合(個数%)として求めた。
【0032】
実施例1
スチレン80.5部及びn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用重合性単量体(これらの単量体を共重合して得られた共重合体のTg=55℃)、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25B」)7部、帯電制御剤(保土ヶ谷化学社製、商品名「スピロンブラックTRH」)1部、離型剤(フィッシャートロプシュワックス、サゾール社製、商品名「パラフリント スプレイ 30」、吸熱ピーク温度:100℃)2部を、メデヤ型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物Aを得た。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液Aを調製した。
【0033】
一方、メチルメタクリレート(Tg=105℃)2部と水65部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液Aを得た。
翼径(d)103mmの45度傾斜パドル翼を二段に配置した、内径(D)205mmの重合反応器に撹拌槽に、水酸化マグネシウムコロイド分散液Aを仕込み、それにコア用重合性単量体組成物Aを添加し、翼近傍のフローパターンがダウンフローになるように先端速度 1.19m/sで回転させた。撹拌中の水面から攪拌翼上端までの深さHは72mmであり、H/Dは0.35であった。そこに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−イソブチレート(日本油脂社製、商品名「パーブチルIB」)6部添加した。
【0034】
前記撹拌槽底部から分散液を抜き出し、15,000rpmで回転するエバラマイルダー(荏原製作所社製:商品名MDN303V)を総滞留時間3秒で通過させ、通過させた分散液を元の撹拌槽に循環回数4回で戻し、単量体組成物の液滴を造粒した。この造粒した単量体組成物の水分散液を、翼径(d)103mmの45度傾斜パドル翼を上段、下段に配置した内径(D)205mmの重合反応器に入れ、翼近傍のフローパターンがダウンフローになるように回転させて95℃で重合反応を開始させた。撹拌中の撹拌中の水面から攪拌翼上端までの深さHは72mmであり、H/Dは0.35であった。
重合転化率がほぼ100%に達した後、前記シェル用重合性単量体の水分散液Aに水溶性開始剤(和光純薬社製、商品名「VA−086」=2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド))0.3部を溶解し、それを反応器に入れた。4時間重合を継続した後、反応を停止し、重合体粒子の水分散液を得た。
この重合体粒子の水分散液を酸洗浄した後、脱水、乾燥して、重合体粒子を得た。得られた粒子100部に、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名「RX−100」;日本アエロジル社製)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナーを得た。評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004032595
【0036】
(実施例2〜5)
造粒工程の攪拌槽の内径、攪拌翼径、撹拌中の撹拌中の水面から攪拌翼上端までの深さH、攪拌翼の先端速度を表1に示す条件とした以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。評価結果を表1に示す。
(比較例1〜4)
造粒工程の攪拌槽の内径、攪拌翼径、撹拌中の撹拌中の水面から攪拌翼上端までの深さH、攪拌翼の先端速度を表2に示す条件とした以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。評価結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 0004032595
【0038】
【発明の効果】
本発明の製法によって、粗大粒子及び微細粒子の発生が抑制され、シャープな粒径分布をもったトナーを得ることができ、収率の向上のみならず、分級工程を省略することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】攪拌翼と攪拌槽に関する測定個所を説明する図面である。
【符号の説明】
H:水面から攪拌翼上端までの深さ
D:糟径(重合反応容器内径)
d:翼の中心を通る翼の支柱から翼の先端までの長さ
1:攪拌翼
2:液面
3:撹拌槽
4:翼の支軸

Claims (3)

  1. (1)水面から撹拌翼上端までの深さHと撹拌槽の槽径Dとの比(H/Dが0.1以上、および 撹拌翼の先端の速度が5m/s以下の条件で、重合性単量体、着色剤及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で分散撹拌して、分散液を得
    (2)該分散液を前記撹拌槽から抜き出して高速撹拌装置を通過させ造粒し、
    (3)次いで、造粒された単量体組成物を重合して着色重合体粒子を得ることを含むトナーの製造方法。
  2. 撹拌槽の撹拌翼の撹拌所要動力Pvが0.01〜0.6kw/m 3 であり、
    高速撹拌装置の回転部の先端速度が5〜90m/sであり、且つ
    高速撹拌装置を通過した分散液を前記撹拌槽に戻し、高速撹拌装置を通過した総分散液量/撹拌槽に仕込まれた分散液量の比で表される循環回数が2〜50回である、請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 撹拌翼が傾斜パドル翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパミックス翼、A310翼、A320翼、またはインターミグ翼である請求項1または2に記載の製造方法。
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