[分散剤]
本発明で使用する分散剤は、アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを有効成分として含むことを特徴とする。ポリマーは、疎水基である主鎖と、親水基であるアニオン性極性基を有する。分散剤は、水性媒体の温度を変化させることによって、水性媒体中に樹脂含有粒子を分散させる分散能と、水性媒体中で分散している樹脂含有粒子を凝集させる凝集能とを示す。水性媒体の温度は、スラリーの温度に等しいと考えてよく、スラリーの温度を測定することによって得られる。ここで、本発明で使用する分散剤を、凝集分散剤と称して、以下では説明する。
スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満であるとき、ポリマーのアニオン性極性基は水性媒体中の水分子と水素結合している。これによって、水性媒体中に存在する樹脂含有粒子を分散状態とすることができ、樹脂含有粒子を含むスラリーを得ることができる。また樹脂含有粒子を含むスラリーの温度を上昇させ、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度以上となると、ポリマーのアニオン性極性基の一部と、水分子との水素結合は、スラリーの温度上昇によって切れる。これによってポリマーの水溶性が低下し、スラリー中の樹脂含有粒子が凝集する。
このような分散能および凝集能のいずれをも示す凝集分散剤を用いることによって、分散剤と凝集剤とを個別に用いる必要がなくなる。また分散剤と凝集剤との組合せを考慮する必要がなくなる。またこのような凝集分散剤は、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度よりも低い場合において、アニオン性極性基が水性媒体中の水分子と水素結合するので、粒子凝集体を水性媒体から単離させるときにスラリーの温度を凝集分散剤の凝集開始温度よりも低くすることによって、水洗浄によって凝集分散剤を水性媒体とともに粒子凝集体から除去することができ、洗浄が容易である。これによって、単離後の粒子凝集体に不純物が含まれることを防止できる。
このような凝集分散剤として使用可能なポリマーのアニオン性極性基としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基が特に好ましい。アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーは、たとえば、アニオン性極性基を有する単量体を重合させることによって得られる。またアニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーは、アニオン性極性基を有する単量体と他の単量体とを、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などによって重合させることによっても得られる。
アニオン性極性基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸などが挙げられる。エチレン系不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸などのエチレン系不飽和モノカルボン酸、マレイン酸およびフマール酸などのエチレン系不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸などのエチレン系不飽和カルボン酸無水物、ならびにエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、たとえば、アクリル酸メチルなどのエチレン系不飽和モノカルボン酸の低級アルキルエステル、マレイン酸モノメチルおよびフマール酸モノエチルなどのエチレン系不飽和ジカルボン酸の低級アルキルハーフエステル、マレイン酸ジエチルなどのエチレン系不飽和ジカルボン酸低級アルキルエステルなどが挙げられる。「低級アルキル」とは、炭素数1〜4のアルキルを意味し、「ハーフエステル」とは、「モノエステル」を意味する。
アニオン性極性基を有する単量体のうち、スルホン酸基を有する単量体としては、たとえば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。アニオン性極性基を有する単量体のうち、ホスホン酸基を有する単量体としては、たとえば、2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、2−アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
本発明の凝集分散剤で使用するアニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーは、ポリアクリル酸である。ポリアクリル酸は、アクリル酸を重合させることによって得られる。ポリアクリル酸は主鎖に弱酸であるカルボキシル基を有するポリマーであるので、個々の極性基の影響を可及的に小さくすることができる。またポリアクリル酸は、操作性に優れ、主鎖にアニオン性極性基であるカルボキシル基を有する。これによって、水性媒体の温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満の場合には水性媒体中に粒子を分散させる分散能を示し、また水性媒体の温度が凝集分散剤の凝集開始温度以上の場合には水性媒体中で分散している粒子を凝集させる凝集能を示すことができる。
凝集分散剤に含まれるポリマーの有するアニオン性極性基は、その90モル%以上が塩基で中和されていることが望ましい。すなわち、凝集分散剤に含まれるポリマーは、アニオン性極性基が塩基によって中和されており、アニオン性極性基の塩基による中和度が90モル%以上100モル%以下である。ポリマーのアニオン性極性基が中和されていることによって、ポリマーの水溶性を高め、凝集分散剤の分散能を高めることができる。
アニオン性極性基の中和度が80モル%未満であると、凝集分散剤の水性媒体への馴染みが悪くなるおそれがある。このように凝集分散剤の水性媒体への馴染みが悪くなると、凝集分散剤の水性媒体中での分散能が弱くなるので、たとえば凝集分散剤と粒子とを含む水性媒体中における粒子を主とした固形分濃度、すなわちスラリー中の樹脂混練物を中心とする固形分濃度が30重量%以上である場合、粒子を細粒化するときに、凝集分散剤が充分な分散能力を発揮できず、粒子を充分に細粒化することができないおそれがある。
アニオン性極性基の中和度が100モル%で凝集分散剤自体のpHが7〜9程度になる。それ以上、余分な塩基を凝集分散剤に入れると、スラリー全体がアルカリ性に傾き、樹脂を加水分解するおそれが高まる。すなわちアニオン性極性基の中和度が100モル%を超えると、凝集分散剤に含まれるポリマーが加水分解するおそれが高まり、粒子が樹脂を含有する場合には、粒子中の樹脂が加水分解するおそれも高まる。凝集分散剤の添加量は、たとえばスラリー全体の1重量%程度と、スラリー全体に対して大した量ではないので、アニオン性極性基の中和度が100モル%を超えることによる問題は深刻な問題ではないが、可及的に回避することが好ましい。
前述のようにアニオン性極性基の中和度を80モル%以上100モル%以下することによって、凝集分散剤の水性媒体への馴染みを良好なものとし、また凝集分散剤中のポリマーなどの加水分解を抑えることができるので、一定の分散能および凝集能を有する凝集分散剤を実現することができる。
また、アニオン性極性基の中和度を90モル%以上100モル%以下にすることによって、凝集分散剤の水性媒体への馴染みを一層良好なものとし、凝集分散剤の水性媒体中での分散能を高めることができるので、スラリー中の樹脂混練物を中心とする固形分濃度が30重量%以上40重量%以下であれば、粒子をより確実に細粒化することができる。
アニオン性極性基を中和する塩基は、アルカリ金属塩基であることが好ましい。すなわち、凝集分散剤に含まれるポリマーは、アニオン性極性基がアルカリ金属塩基によって中和されており、アニオン性極性基のアルカリ金属塩基による中和度が80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。アニオン性極性基は、アルカリ金属塩基で中和されて、アルカリ金属塩になる。
ポリマーのアニオン性極性基がアルカリ金属塩基でなく、たとえば高温で揮発してしまうアンモニアで中和されてアンモニウム塩になっている場合、折角の中和度も細粒化工程で高温にさらされることで低下し、80モル%以上の中和度であっても、それを下回ることが容易に想像できる。事実、ポリマーとして、アニオン性極性基がアンモニアで中和されたポリマーを含む凝集分散剤を用いると、アニオン性極性基が同じ中和度でアルカリ金属塩基によって中和されたポリマーを含む凝集分散剤を用いる場合に比べて、細粒化工程で樹脂含有種子が激しく凝集するので、分散能の低下が考えられる。
つまり、ポリマーのアニオン性極性基がアンモニアで中和されてアンモニウム塩になっている場合、凝集分散剤と粒子とを含むスラリーが、粒子を細粒化する工程などで高熱にさらされると、アンモニアが気体として蒸発してしまい、ポリマーの中和度が低下してしまい、分散能が低下してしまうおそれがある。このような塩基の蒸発による中和度の変化を抑えるためには、ポリマーのアニオン性極性基は、揮発性のない塩基で中和されていることが望ましい。
アルカリ金属塩基は、揮発性のない塩基であるので、ポリマーのアニオン性極性基がアルカリ金属塩基によって中和されていることによって、アルカリ金属塩基以外の塩基で中和されている場合に比べて、ポリマーの中和度の変化を抑え、凝集分散剤の分散能を維持することができる。またポリマーのアニオン性極性基がアルカリ金属塩基で中和されていることによって、他の塩基で中和されている場合に比べて、凝集分散剤を水洗などによって容易に除去することができる。したがって前述のようにポリマーのアニオン性極性基がアルカリ金属塩基で中和されていることによって、中和度の変化が抑えられ、一定の分散能を有するとともに、容易に除去することが可能な凝集分散剤が実現される。
「アルカリ金属塩基」とは、水中で解離してアルカリ金属イオンを放出する塩基のことである。アルカリ金属塩基としては、たとえばアルカリ金属の塩化物、水酸化物および炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属としては、たとえば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。これらの中でも、ナトリウムが好ましい。アルカリ金属塩基として用いられる、アルカリ金属の塩化物としては、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩としては、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
アルカリ金属塩基の中でも、炭酸塩および水酸化物、特に水酸化物は、溶解することで溶液が塩基性を呈することがあり、また溶液を加熱することで樹脂粒子の加水分解を引き起こすおそれがあるので、溶液のpHを変化させないアルカリ金属塩基、すなわちアルカリ金属の非塩基性塩が望ましく、具体的にはアルカリ金属塩基の塩化物が望ましい。また前述のアルカリ金属の炭酸塩および水酸化物などの、アルカリ金属の塩基性塩の中でも、水酸化物などの強塩基性の塩よりも、弱塩基性の塩が好ましい。したがって、アルカリ金属の炭酸塩の中でも、強塩基性の炭酸ナトリウムよりも、弱塩基性の炭酸水素ナトリウムの方がより好ましい。
凝集分散剤に含まれるポリマーは、重量平均分子量が4000を超えて90000以下であることが好ましく、重量平均分子量が5000以上70000以下であることがさらに好ましい。ポリマーの重量平均分子量が4000以下であると、重量平均分子量が4000を超える場合に比べて、ポリマーの立体構造が比較的単純になるので、分散能には優れるものの、分散安定性に乏しくなるおそれがある。このように分散安定性に乏しい凝集分散剤を用いて粒子を分散させると、分散された粒子が再び凝集してしまうおそれがある。つまり、ポリマーの重量平均分子量が4000以下であると、樹脂含有粒子の水性媒体中における分散安定性が得られないおそれがある。したがって、ポリマーの重量平均分子量は、4000を超えることが好ましい。特にスラリー中の樹脂含有粒子を主成分とする固形分濃度が30重量%を超える場合には、分散安定性が得られにくいので、ポリマーの重量平均分子量は、4000を超えることが好ましく、5000以上であることがより好ましい。
ポリマーの重量平均分子量が90000を超えると、重量平均分子量が90000以下である場合に比べて、ポリマーが複雑な立体構造を有するので、分散安定性には富むものの、分散能が低くなるおそれがある。また凝集分散剤と粒子とを含むスラリーを調製した場合、ポリマーの重量平均分子量が90000以下である場合に比べて、スラリーの粘性が上昇するので、樹脂含有粒子の分散が困難となる。また、たとえば高圧ホモジナイザを用いてスラリー中の粒子を細粒化する高圧ホモジナイザ法に用いる場合、高圧ホモジナイザのノズルなどの細管部分での詰まりを誘発し易く、不向きである。つまりポリマーの重量平均分子量が90000を超えると、スラリーの粘度が増大し、樹脂含有粒子の分散が困難となる。特にスラリー中の樹脂含有粒子を主成分とする固形分濃度が30重量%を超える場合には、樹脂含有粒子の分散が困難になりやすいので、ポリマーの重量平均分子量は、90000以下であることが好ましく、70000以下であることがより好ましい。
前述のようにポリマーの重量平均分子量を4000を超えて90000以下にすることによって、分散能および分散安定性のいずれにも優れるとともに、スラリーの粘度上昇を抑えることが可能であり、高圧ホモジナイザ法に好適な凝集分散剤を実現することができる。
凝集分散剤に含まれるポリマーは、数平均分子量が1000以上10000以下であることが好ましく、数平均分子量が1500以上5000以下であることがさらに好ましい。ポリマーの数平均分子量が1000未満であると、樹脂含有粒子の水性媒体中における分散安定性が得られないおそれがある。ポリマーの数平均分子量が10000を超えると、スラリーの粘度が増大し、樹脂含有粒子の分散が困難となる。
ポリマーの重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;略称GPC)装置を用いて、試料のポリスチレン換算値として求められる。具体的には、GPC装置(東ソー株式会社製:HLC−8220GPC)を用い、温度40℃において、試料の0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液を試料溶液とし、注入量100mLで測定される。分子量校正曲線は単分散ポリスチレンを用いて作成される。
また凝集分散剤の凝集開始温度は、ポリマーの種類によって異なり、ポリマーを含有する水性媒体の温度を上昇させ、凝集が開始したか否かを目視によって確認する実験によって求めることができる。たとえばポリマーが数平均分子量1500のポリアクリル酸である場合、凝集開始温度は50℃である。したがって、たとえば常温(25℃)で樹脂含有粒子を分散させ、80℃で樹脂含有粒子の凝集を行う。
以上のような本発明で使用する凝集分散剤は、単独でも凝集能および分散能を発揮するけれども、2価以上の金属塩と併用することによって、凝集能および分散能、特に凝集能を一層顕著に発揮することができる。
図1は、本発明で使用する凝集分散剤に含まれるポリマー1の水性媒体中での状態を模式的に示す図である。本発明で使用する凝集分散剤に含まれるポリマー1は、アニオン性極性基2a,2b,2c,…(以下特定のアニオン性極性基を示す場合を除いて「アニオン性極性基2」という)が主鎖3に結合している。図1(a)は、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満であって、スラリーに2価以上の金属塩が添加されていないときのポリマー1の状態を示す。図1(b)は、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満であって、スラリーに2価以上の金属塩が添加されているときのポリマー1の状態を示す。図1(c)は、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度以上であって、スラリーに2価以上の金属塩が添加されているときのポリマー1の状態を示す。
スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満であって、スラリーに2価以上の金属塩が添加されていないとき、ポリマー1は、図1(a)に示すように、スラリー中で、アニオン性極性基2が水性媒体中の水分子と水素結合している。これによってポリマー1が水溶性となり、スラリー中の粒子が分散状態に保たれる。ポリマー1のアニオン性極性基2がアルカリ金属によって中和されてアルカリ金属塩になっている場合、水性媒体中ではアルカリ金属塩が解離してアニオン性極性基2に戻るので、アニオン性極性基2が水性媒体中の水分子と水素結合して、水溶性となり、スラリー中の粒子が分散状態に保たれる。
次いでスラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満であって、粒子が分散状態に保たれている状態のスラリーに2価以上の金属塩を添加すると、図1(b)に示すように、2価以上の金属塩の金属イオン4と一部のアニオン性極性基2aとが結合し、一部のアニオン性極性基2aと水分子との水素結合が切れる。これによってポリマー1の水溶性が低下し、スラリー中の粒子が凝集する。このような2価以上の金属塩の金属イオン4とアニオン性極性基2とが結合する反応は不可逆反応である。ポリマー1のアニオン性極性基2がアルカリ金属によって中和されている場合、水性媒体中にはアルカリ金属イオンが存在するが、2価以上の金属塩に由来する金属イオン4とアニオン性極性基2との結合力は、アルカリ金属イオンとアニオン性極性基2との結合力よりも強いので、スラリーに2価以上の金属塩を添加することで、2価以上の金属塩の金属イオン4と一部のアニオン性極性基2aとの結合が生じる。
2価以上の金属塩の添加後、スラリーを加熱し、スラリーの温度を凝集分散剤の凝集開始温度以上にすると、ポリマー1は、図1(c)に示すような状態となる。すなわちスラリーの温度上昇によってポリマー1の主鎖3と結合する一部のアニオン性極性基2bと、水分子との水素結合が切れる。ポリマー1の主鎖3と結合するアニオン性極性基2としては、図1(c)に示すように、金属イオン4と結合している極性基2a、水分子とも金属イオン4とも結合していない極性基2b、および水分子と水素結合している極性基2cが存在する。金属イオン4と結合している極性基2aおよび水分子とも金属イオン4とも結合していない極性基2bは、ポリマー1の水溶性を低下させ、粒子を凝集させる。これによって、スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度未満である場合に比べて粒子の凝集度合を高めることができる。また一部のアニオン性極性基2cは、水分子との水素結合が切れることなく分散能を保持している。これによって、粒子を適度な凝集度合で凝集させることができ、粒子凝集体の粗大化が防止される。したがって粒子凝集体の大きさおよび形状を好適にすることができる。
また粒子凝集体の形成後、スラリーの温度を凝集分散剤の凝集開始温度未満に戻すと図1(b)の状態に戻り、水分子とも金属イオン4とも結合していない極性基2bが水分子と水素結合する。すなわち一部のアニオン性極性基2aは金属イオン4と結合しており、残りのアニオン性極性基2b,2cは水分子と水素結合している。水素結合しているアニオン性極性基2b,2cは、粒子凝集体を分散させるけれども、粒子凝集体の凝集を解くほどの分散能を発揮しないので、粒子凝集体が好適な分散度合で保持される。
このように、凝集分散剤に加えて2価以上の金属塩をスラリーに添加することによって、粒子の凝集体の大きさおよび形状を制御することができる。粒子の凝集体の大きさおよび形状の制御は、たとえば2価以上の金属塩の添加量を調整することによって行うことができ、詳細については後述する。また2価以上の金属塩を添加することによって、粒子を短時間で凝集させることができ、生産性が向上する。
また凝集分散剤に加えて2価以上の金属塩をスラリーに添加する場合も、水分子と水素結合しているアニオン性極性基2b,2cによってポリマー1が水溶性となっているので、粒子凝集体を水性媒体から単離させるときに、凝集分散剤に含まれるポリマー1を水洗浄によって粒子凝集体から除去することができる。また2価以上の金属塩も、ポリマー1が有するアニオン性極性基2aと金属イオン4とが結合しているので、ポリマー1とともに水洗浄によって粒子凝集体から除去される。これによって、スラリーのpHを変化させるなどの作業を行うことなく容易に水性媒体から粒子凝集体を単離させることができる。
本発明において凝集分散剤とともに使用されるのは、上記のように1価の金属塩ではなく2価以上の金属塩である。たとえばポリマーのアニオン性極性基が1価の極性基である場合、2価以上の金属塩を用いると、2価以上の金属イオン4と、2つ以上の1価のアニオン性極性基2aとが結合することによってポリマー1が架橋される。これによってポリマー1の水溶性がさらに低下するので、樹脂含有粒子の凝集を一層効率よく行うことができる。したがって1価の金属塩を用いることなく2価以上の金属塩を用いる。
本発明で使用する凝集分散剤は、たとえば、水性媒体中にて粒子径がナノオーダーの微細粒子を凝集させて凝集粒子を製造する際に、好適に使用できる。さらに具体的には、本発明の樹脂含有粒子の凝集体の製造方法において、樹脂含有粒子を水性媒体中に均一に分散させた後、凝集させて粒子凝集体を製造するのに特に好適に使用できる。
[樹脂含有粒子の凝集体の製造方法]
本発明の樹脂含有粒子の凝集体の製造方法は、結着樹脂および着色剤を含む樹脂含有粒子を、前記凝集分散剤と、2価以上の金属塩とを用いて凝集させることを特徴とする。本発明の製造方法によって製造される樹脂含有粒子の凝集体は、たとえば複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーとして用いることができる。その他、塗料、コーティング剤などの充填剤などとしても使用できる。
本実施の形態における粒子凝集体の製造方法は、前記凝集分散剤を用いる。また本実施の形態における粒子凝集体の製造方法は、(A)溶融混練工程と、(B)分散工程と、(C)細粒化工程と、(D)凝集工程と、(E)洗浄工程とを含む。
図2は、本発明の樹脂含有粒子の凝集体の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。本実施の形態では、図2に示すフローチャートの製造方法に従って、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーを製造する。
(A)溶融混練工程
溶融混練工程では、結着樹脂と、着色剤とを含有するトナー原料を溶融混練し、得られる混練物を冷却固化させて粉砕し、必要に応じて分級することによって、結着樹脂および着色剤を含む不定形樹脂粒子を製造する。
結着樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。アクリル樹脂は、後述の分散工程における分散が容易であるので、特に好適に用いられる。アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基もしくは親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーおよび/または酸性基もしくは親水性基を有するビニル系モノマーを併用することによって製造できる。
アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステル、置換基を有することのあるメタクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基(水酸基)含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
ポリエステルは透明性に優れ、得られるトナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性、二次色再現性などを付与できるので、カラートナーの結着樹脂に特に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。
多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多価アルコールとしてもポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化温度などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸などの3価以上の多塩基酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができ、変性ポリエステルが得られる。またポリエステルにアクリル樹脂をグラフト化してもよい。
ポリウレタンとしては公知のものを使用でき、たとえば、酸性基または塩基性基含有ポリウレタンを好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有ポリウレタンは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、酸性基または塩基性基含有ジオール、ポリオールおよびポリイソシアネートを付加重合させればよい。酸性基または塩基性基含有ジオールとしては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸およびN−メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。ポリオールとしては、たとえば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これら各成分はそれぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
エポキシ樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基または塩基性基含有エポキシ系樹脂を好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ベースになるエポキシ樹脂にアジピン酸および無水トリメリット酸などの多価カルボン酸またはジブチルアミン、エチレンジアミンなどのアミンを付加または付加重合させることによって製造することができる。
これらの結着樹脂の中でも、後述の細粒化工程において細粒化を容易に実施すること、着色剤および離型剤との混練性、得られるトナー粒子の形状および大きさを均一にすることなどを考慮すると、軟化温度が150℃以下の結着樹脂が好ましく、60℃以上150℃以下の結着樹脂が特に好ましい。その中でも、重量平均分子量が5000以上500000以下の結着樹脂が好ましい。結着樹脂は、1種を単独で使用でき、または、異なる2種以上を併用できる。さらに、同じ樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかがまたは全部が異なるものを複数種使用できる。
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94およびC.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31およびC.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178およびC.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットBおよびメチルバイオレットレーキなどが挙げられる。青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16およびC.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGおよびC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白および硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して3重量部以上10重量部以下である。
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナー原料に用いられる結着樹脂と同種の結着樹脂、またはトナー原料に用いられる結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して着色剤30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒子径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。着色剤がマスターバッチとして使用されると、結着樹脂中での着色剤の分散性が向上し、後述の分散工程で得られる樹脂含有粒子中に、着色剤を均一に微分散させることができる。
また本実施の形態では、トナー原料は離型剤を含む。トナー原料に離型剤を含ませることによって、高温オフセットを防止することができる。高温オフセットとは、定着用加熱ローラでトナーを加熱して定着を行う熱ローラ定着法において、定着時にトナーが過剰に溶融されて、溶融されたトナーの一部が定着用加熱ローラに融着して取去られることである。
離型剤としては、たとえば、ワックスなどが挙げられる。ワックスとしては、たとえば、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックス、パラフィンワックスなどの石油系ワックス、アルコール系ワックス、エステル系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、結着樹脂との親和性に優れるカルナバワックスが好ましい。
離型剤の融点は、80℃以下であることが好ましい。離型剤の融点が80℃を超えると、加熱ローラでトナーを加熱して記録媒体に定着させるときに、離型剤が溶融せず、記録媒体にトナーが定着されない低温オフセットを発生するおそれがある。したがって融点が80℃以下の離型剤を用いることによって、低温オフセットを防止することができる。また離型剤の融点が80℃以下であると、トナー全体としての軟化温度が低下し、低温定着性が向上する。これによって、ヒータなどの加熱手段を用いて定着させる定着手段による消費電力を低減することができる。
また離型剤の融点は、60℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。離型剤の融点が60℃未満であると、溶融混練工程において離型剤が溶融し、離型剤の粘性と結着樹脂の粘性との差が大きくなるので、結着樹脂中に離型剤を分散させることが困難となるおそれがある。また画像形成装置内でトナー粒子同士が凝集し、保存安定性が低下するおそれがある。したがって融点が60℃以上80℃以下の離型剤を用いることによって、離型剤が結着樹脂中に均一に分散して保存安定性に優れるとともに、低温オフセットを防止することができるトナーを得ることができる。
離型剤は、結着樹脂100重量部に対して3重量部以上15重量部以下の割合で含まれることが好ましい。離型剤が3重量部未満であると、離型性を充分に発揮することができず、高温オフセットが発生するおそれがある。離型剤が15重量部を超えると、感光体表面に離型剤の薄い膜を形成するフィルミングが発生するおそれがある。したがって離型剤の割合を、結着樹脂100重量部に対して3重量部以上15重量部以下とすることによって、フィルミングおよび高温オフセットの発生を防止することができる。また離型剤は、結着樹脂100重量部に対して5重量部以上15重量部以下の割合で含まれることがさらに好ましい。離型剤がこのような割合で含まれると、フィルミングおよび高温オフセットの発生を確実に防止することができる。
またトナー原料には、帯電制御剤などの添加剤が加えられてもよい。帯電制御剤を加えることによって、環境変化に対する帯電量を安定制御できる。帯電制御剤としては電子写真分野で常用される正帯電制御剤および負帯電制御剤を使用できる。正帯電制御剤としては、たとえば、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。
溶融混練工程では、まず前述の結着樹脂、着色剤および離型剤、ならびに必要に応じて用いられる帯電制御剤などの添加剤を含むトナー原料を、混合機で乾式混合する。その後、結着樹脂の軟化温度以上、熱分解温度未満の温度に加熱して溶融混練する。これによって結着樹脂が軟化され、結着樹脂中に着色剤、離型剤などが分散される。結着樹脂、着色剤および離型剤を含むトナー原料は、乾式混合されることなくそのまま溶融混練されてもよいけれども、乾式混合した後に溶融混練を行う方が、着色剤、離型剤などの結着樹脂以外のトナー原料の結着樹脂中での分散性を向上させ、得られるトナーの帯電性能などの特性を均一にすることができるので好ましい。
乾式混合に用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
溶融混練には、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボプラストミルなどの混練機を用いることができ、このような混練機としては、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機などが挙げられる。溶融混練は、複数の混練機を用いて行っても構わない。
溶融混練工程では、結着樹脂、着色剤および離型剤ならびに必要に応じて加えられる添加剤を溶融混練することによって、着色剤、離型剤および添加剤を結着樹脂中に均一に分散させる。溶融混練工程では、着色剤および離型剤が、製造すべき樹脂含有粒子の粒子径(0.4μm以上2.0μm以下)よりも充分に小さくなるように、着色剤および離型剤を結着樹脂中に均一に分散させることが好ましい。着色剤および添加剤を結着樹脂中に均一に分散させるためには、溶融混練工程における混練温度を好適な温度に設定することが好ましい。以下オープンロール方式の混練機を例として、好適な混練温度について説明する。
図3は、オープンロール方式の混練機(以下「オープンロール式混練機」という)11における要部の構成を概略的に示す斜視図である。オープンロール式混練機11は、テーブルフィーダーなどによって定量的かつ連続的に原料混合物の供給を受けるホッパ部12と、内部にらせん状のスクリューが内蔵された原料供給部13と、原料混合物を溶融混練する加熱ロール14および冷却ロール15と、加熱ロール14の下部に設けられ、加熱ロール14の表面に付着する原料混合物の溶融混練物を加熱ロール14表面から掻き取り落下させる円形状のストリップカッターを有する溶融混練物取出部16と、落下物を捕集する回収ボックス17とを含んで構成される。
加熱ロール14および冷却ロール15は、それぞれのロールを支持する軸心部材である不図示の加熱ロール軸および冷却ロール軸が不図示のロール支持部に回転自在にそれぞれ支持される。加熱ロール14および冷却ロール15は、図示しない駆動手段により、その軸線回りに矢符18および矢符19の方向に互いに逆向きになるように回転駆動される。加熱ロール14および冷却ロール15の表面には、らせん状の溝が設けられているが、溝がないロールを使用する構成であってもよい。
加熱ロール軸および冷却ロール軸は、図示しないけれども、内部が中空状に形成される。加熱ロール軸にはオイルなどの加熱媒体を循環させることができ、冷却ロール軸には水などの冷却媒体を循環させることができる。加熱媒体は、加熱ロール14の原料混合物供給側20の温度を検知する不図示の温度センサからの検知結果に応じて不図示の供給制御手段により温度制御され、加熱ロール軸に供給される。このことによって、加熱ロール14を原料混合物供給側20と溶融混練物取出側21とでの加熱温度を調整することができる。加熱ロール14と同様に冷却ロール15も冷却温度が調整される。このようにして加熱温度と冷却温度とが調整されることにより、混練温度を安定化させることができる。冷却ロール15によって充分な冷却がなされない場合、溶融混練物の温度が上昇して低粘度化し、充分なせん断力を溶融混練物に付与することが困難になる。その結果、結着樹脂中での着色剤などの分散が不充分になるので、生産性の低下を招来する。
なお、溶融混練工程での混練温度とは溶融混練された原料混合物、すなわち溶融混練物の温度であり、オープンロール式混練機11における溶融混練物の温度は、加熱ロール14の原料混合物供給側20の温度と略等しい温度となる。
加熱ロール14および冷却ロール15を支持する不図示のロール支持部には、加熱ロール14および冷却ロール15の駆動手段、油圧シリンダ、加熱媒体および/または冷却媒体を回転軸に供給する手段などが収容される。
原料供給部13から矢符22の方向に供給される原料混合物は、加熱ロール14および冷却ロール15の回転によって、原料混合物供給側20から溶融混練物取出側21に移送される。その際、ロール14,15により圧縮され、加熱ロール14の表面温度によって加熱されて溶融し、さらに加熱ロール14表面に付着した状態で、ロール14,15間で急激に圧縮力、せん断力を付与されて原料混合物が均質化および分散され、均質な溶融混練物になる。
原料混合物および溶融混練物の移送は、原料混合物が連続的に供給され、原料供給部13下方のロール14,15間に滞留する原料混合物が、ロール14,15の他の部分に滞留する量よりも常に多くなるため、円滑に進行する。つまり、ロール14,15間に形成されるバンク(溶融混練物滞留品)量は原料供給部13の下方周辺で最も多いので、軸方向に圧力差を生じ、これが移送の推進力となる。さらにロール14,15表面部に設けられるらせん状の溝によりスクリュー効果が発生し、これも推進力の一部になる。このようにして、ロール14,15間にて繰り返し圧縮、せん断を連続的に受けることによって、着色剤などが結着樹脂中に均一に分散した溶融混練物が加熱ロール14表面に付着した状態で形成される。
溶融混練物取出部16は、送給される原料混合物の溶融混練物を、矢符23の方向、すなわち回収ボックス17側に排出する。回収ボックス17は、加熱ロール14および冷却ロール15から落下する溶融混練物を捕集する。
オープンロール式混練機11によれば、まず、原料混合物が、原料供給部13から加熱ロール14と冷却ロール15との間に供給される。供給された原料混合物は、加熱ロール14および冷却ロール15の回転によって、原料混合物供給側20から溶融混練物取出側21に移送される。その間に、原料混合物は、圧縮、せん断、溶融、均質化および分散を受け、均質な溶融混練物になる。この溶融混練物は、加熱ロール14表面から掻き取られ、溶融混練物取出部16から回収ボックス17に排出される。
このようなオープンロール式混練機11を用いる溶融混練工程では、ロール14,15の原料混合物供給側20および溶融混練物取出側21の温度を適宜設定することによって、結着樹脂中に着色剤および離型剤を微分散させることができる。溶融混練の温度は、加熱ロール14の原料混合物供給側20の温度が結着樹脂の軟化温度以上、熱分解温度未満の温度以下となるように設定されることが好ましい。また具体的には、たとえば結着樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度;56℃、軟化温度;110℃)が用いられる場合、加熱ロール14の原料混合物供給側20の温度を140℃以上170℃以下に設定し、冷却ロール15の原料混合物供給側20の温度を40℃以上70℃以下に設定することが好ましい。このように混練温度を好適に設定することによって、溶融混練物の粘度を好適にすることができ、充分なせん断力を溶融混練物に付与することができるので、着色剤および添加剤を、製造すべき樹脂含有粒子の粒子径(0.4μm以上2.0μm以下)よりも充分に小さい大きさで結着樹脂中に均一に分散させることができる。樹脂含有粒子中で分散する着色剤は、着色剤粒子の分散径が10nm(0.01μm)以上500nm(0.5μm)以下であることが好ましい。
溶融混練工程で得られた結着樹脂、着色剤および離型剤を含む溶融混練物は、冷却固化の後、粗粉砕されて不定形樹脂粒子とされる。本実施の形態では、分散工程の前に、溶融混練物の固化物を予め粗粉砕し、好ましい大きさの不定形樹脂粒子とする。粗粉砕の程度は、高圧ホモジナイザの種類などによって決定されるけれども、不定形樹脂粒子の体積平均粒子径を100μm程度とするように、粗粉砕することが好適である。体積平均粒子径が100μmよりも大きくなり過ぎると、後述の分散工程においてスラリー中での不定形樹脂粒子の沈降速度が大きくなり、不定形樹脂粒子の分散状態を均一に保つことが困難である。また敢えて工程数を増加させて100μmよりも小さくなり過ぎる程度まで処理する必要はない。溶融混練物の固化物の粗粉砕方法は特に限定されない。溶融混練物の固化物の粗粉砕は、たとえば、クラッシャー、ハンマーミル、アトマイザー、フェザーミル、ジェットミルなどを用いて行う。また不定形樹脂粒子の粗粉砕は、次の分散工程で得られたスラリーを耐圧ノズルに通過させることによって行われてもよい。
(B)分散工程
分散工程では、溶融混練工程で得られた溶融混練物の固化物の粗粉砕物であり、結着樹脂および着色剤を含む不定形樹脂粒子と、水性媒体と、前述の本発明の凝集分散剤とを混合し、たとえば常温環境にて前述の本発明の凝集分散剤の存在下、水性媒体中に不定形樹脂粒子を分散させて、不定形樹脂粒子のスラリーを得る。水性媒体としては、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができる純水を用いることが好ましい。
分散工程において、不定形樹脂粒子は、水性媒体100重量部に対して3重量部以上50重量部以下の割合で使用されることが好ましい。また不定形樹脂粒子は、水性媒体100重量部に対して5重量部以上25重量部以下の割合で使用されることがさらに好ましい。ここで不定形樹脂粒子は後述の細粒化工程で細粒化されて樹脂含有粒子となるので、不定形樹脂粒子の使用割合と樹脂含有粒子との使用割合は一致する。
不定形樹脂粒子の割合が3重量部未満であると、粒子濃度が希薄であり、後述の凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。また不定形樹脂粒子の使用割合が50重量部を超えると、後述の細粒化工程において不定形樹脂粒子が細粒化されてなる樹脂含有粒子同士の距離が短くなり過ぎ、好ましい凝集度合とすることが困難となるおそれがある。またスラリーの粘度が高くなり過ぎ、後述の高圧ホモジナイザに備えられるノズルにスラリーを通したときに、ノズルの目詰まりが生じるおそれがある。したがって不定形樹脂粒子の割合を上記範囲とすることによって、後述の凝集工程における粒子の凝集度合を好適にすることができる。これによって、好適な大きさの粒子凝集体を得ることができる。
本発明において凝集分散剤は、不定形樹脂粒子100重量部に対して5重量部以上20重量部以下の割合で使用されることが好ましい。また凝集分散剤は、不定形樹脂粒子100重量部に対して8重量部以上15重量部以下で使用されることがさらに好ましい。凝集分散剤の使用割合が5重量部未満であると、不定形樹脂粒子に対して凝集分散剤の量が少なくなり過ぎ、不定形樹脂粒子の分散性が低下する。また凝集分散剤の使用割合が20重量部を超えると、不定形樹脂粒子に対して凝集分散剤の量が多くなり過ぎ、不定形樹脂粒子の分散性が高くなり過ぎて後述の凝集工程における樹脂含有粒子の凝集が困難となるおそれがある。
分散工程は、たとえば、後述の図4に示す高圧ホモジナイザ31のタンク35内に水性媒体、凝集分散剤および不定形樹脂粒子を投入し撹拌することによって行われる。分散工程が実施される時間は、特に制限されないけれども、好ましくは5分以上30分以下である。分散工程の実施時間をこのような範囲とすることによって、不定形樹脂粒子を水性媒体中に充分に分散させることができる。
(C)細粒化工程
分散工程で得られる不定形樹脂粒子のスラリーは、細粒化工程に供される。細粒化工程では、スラリーに含まれる不定形樹脂粒子を細粒化し、樹脂含有粒子のスラリーを得る。具体的には、結着樹脂および着色剤を含む不定形樹脂粒子をさらに細粒化して、不定形樹脂粒子の体積平均粒子径を0.4μm以上2.0μm以下とする。体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下にまで細粒化された不定形樹脂粒子を、以下「樹脂含有粒子」という。本実施の形態では、不定形樹脂粒子の細粒化は、高圧ホモジナイザ法によって行われる。高圧ホモジナイザ法による細粒化工程は、粉砕段階と、冷却減圧段階とを含む。
高圧ホモジナイザ法とは高圧ホモジナイザを用いて合成樹脂、離型剤などを含む不定形樹脂粒子の微粉化または粒状化を行う方法であり、高圧ホモジナイザとは加圧下に粒子を粉砕する装置である。高圧ホモジナイザとしては、市販品、特許文献に記載のものなどを使用できる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)などが挙げられる。また特許文献に記載の高圧ホモジナイザとしては、たとえば、国際公開第03/059497号パンフレットに記載のものが挙げられる。これらの中でも、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザが好ましい。
図4は、本発明のトナーの製造方法に好適に用いられる高圧ホモジナイザ31を簡略化して示す系統図である。高圧ホモジナイザ31は、細粒化ユニット32と、凝集・加熱ユニット33と、配管34とを含む。
細粒化ユニット32は、タンク35と、送りポンプ36と、加圧ユニット37と、加熱ユニット38と、耐圧性容器39と、切換部40と、第1〜第3の耐圧ノズル41a,41b,41cと、冷却モジュール42と、減圧モジュール43とを含む。凝集・加熱ユニット33は、タンク35と、送りポンプ36と、加圧ユニット37と、加熱ユニット38と、耐圧性容器39と、切換部40と、耐圧ノズル44と、第1〜第3の減圧モジュール45a,45b,45cと、冷却モジュール46とを含む。
細粒化ユニット32と凝集・加熱ユニット33とにおいて、タンク35、送りポンプ36、加圧ユニット37、加熱ユニット38、耐圧性容器39および切換部40は共用である。配管34は、細粒化ユニット32、細粒化ユニット32に含まれる各構成部材、凝集・加熱ユニット33および凝集・加熱ユニット33に含まれる各構成部材を機械的に接続する。配管34に付される矢符の向きは、スラリーの流下方向を示す。また図4において、第1〜第3の耐圧ノズル41a,41b,41cは配管34を介して接続されるけれども、配管34を介することなくノズル同士が直接連結されてもよい。細粒化工程では、高圧ホモジナイザ31の細粒化ユニット32が使用される。
細粒化ユニット32は、スラリーの流下する順番に、タンク35、送りポンプ36、加圧ユニット37、加熱ユニット38、耐圧性容器39、切換部40、第1の耐圧ノズル41a、第2の耐圧ノズル41b、第3の耐圧ノズル41c、冷却モジュール42、および減圧モジュール43が順に配置されて構成される。
細粒化工程において、細粒化ユニット32に含まれるタンク35には、分散工程で得られた樹脂含有粒子のスラリーが収容される。タンク35内には、スラリーを撹拌する撹拌手段が備えられる。
加圧ユニット37は、たとえば、プランジャーと、プランジャーによって吸入吐出駆動されるポンプ部とを備えるプランジャーポンプによって構成される。加熱ユニット38は、たとえば、スラリーが流下する配管34を加熱するコイルなどの加熱手段を備える加熱炉によって構成される。加圧条件および加熱条件の詳細については後述する。
耐圧性容器39は、耐圧性を有する密閉容器である。耐圧性容器39は、内部に収容されるスラリーを撹拌する撹拌手段を備えることが好ましい。切換部40は、細粒化工程と、凝集工程とのいずれの工程を行うかに応じて、スラリーを細粒化ユニット32の第1の耐圧ノズル41aと、凝集・加熱ユニット33の耐圧ノズル44とのいずれに送給するかを切換える。細粒化工程では、切換部40は、スラリーが第1の耐圧ノズル41aに送給されるように切換える。
第1〜第3の耐圧ノズル41a,41b,41c(以下特定の耐圧ノズルを示す場合を除いて、単に「耐圧ノズル41」という)としては、たとえば、液体流下路を複数有する多重ノズルを好ましく使用できる。多重ノズルの液体流下路は多重ノズルの軸心を中心とする同心円状に形成されてもよく、または複数の液体流下路が多重ノズルの長手方向にほぼ平行に形成されてもよい。本発明の製造方法において使用する多重ノズルの一例としては、入口径および出口径0.05〜0.35mm程度、並びに長さ0.5〜5cmの液体流下路が1または複数、好ましくは1〜2程度形成されたものが挙げられる。また耐圧ノズルとして、図5に示すものが挙げられる。
図5は、耐圧ノズル41の構成を模式的に示す断面図である。耐圧ノズル41はその内部に液体流下路51を有する。液体流下路51は鉤状に屈曲し、矢符52の方向から液体流下路51内に進入する粒子のスラリーが衝突する衝突壁53を少なくとも1つ有する。粒子を含むスラリーは衝突壁53に対してほぼ直角に衝突し、これによって粒子が粉砕され、より小径化された粒子となって耐圧ノズル41から排出される。このような液体流下路51を有する耐圧ノズル41によれば、粒子の小径化を安定的に実施できるとともに、小径化した粒子同士の接触による粒子の凝集および粗大化を防止することができる。本実施の形態では、耐圧ノズル41は、入口径と出口径とが同寸法に形成されるけれども、これに限定されることなく、出口径が入口径よりも小さく形成されてもよい。また本実施の形態では、耐圧ノズル41は、3個が連結されて設けられるけれども、これに限定されることなく、1個が設けられてもよく、また2個以上が連結されて設けられてもよい。
冷却モジュール42は、耐圧構造を有する一般的な液体冷却機である。冷却モジュール42としては、たとえば、スラリーが流下する配管34を水冷によって冷却する冷却機を用いることができる。冷却モジュール42としては、蛇管式冷却機のように冷却面積の大きい冷却機を用いることが好ましい。また冷却機入口から冷却機出口に向けて、冷却勾配が小さくなるように(または冷却能力が低くなるように)構成するのが好ましい。これによって、不定形樹脂粒子の小径化が一層効率的に達成される。また不定形樹脂粒子を細粒化して得た樹脂含有粒子同士の再付着による粗大化を防止し、小径化された樹脂含有粒子の収率を向上させ得る。耐圧ノズル41から排出される小径化された樹脂含有粒子のスラリーは、冷却モジュール42に導入され、冷却勾配を有する冷却モジュール42での冷却を受け、冷却モジュール42から排出される。その後減圧モジュール43に導入される。冷却モジュール42は1つを設けてもよくまたは複数を設けてもよい。
減圧モジュール43としては、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の多段減圧装置を用いるのが好ましい。この多段減圧装置は、樹脂含有粒子を含む加圧されたスラリーを多段減圧装置内に導入する入口通路と、入口通路に連通するように形成されて、樹脂含有粒子を含む減圧されたスラリーを該多段減圧装置の外部に排出する出口通路と、入口通路と出口通路との間に設けられて、連結部材を介して2以上の減圧部材が連結されてなる多段減圧手段とを含んで構成される。
多段減圧装置において、多段減圧手段に用いられる減圧部材としては、たとえば、パイプ状部材が挙げられる。連結部材としては、たとえば、リング状シールが挙げられる。内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シールにて連結することによって多段減圧手段が構成される。たとえば、入口通路から出口通路に向けて、同じ内径を有するパイプ状部材を2〜4個連結し、次にこれらよりも2倍程度内径の大きなパイプ状部材を1個連結し、さらに、2倍程度内径の大きなパイプ状部材よりも5〜20%程度内径の小さなパイプ状部材を1〜3個程度連結することによって、パイプ状部材内を流下する樹脂含有粒子を含むスラリーが徐々に減圧され、最終的にはバブリングが起こらない程度の圧力、好ましくは大気圧まで減圧される。
多段減圧手段の周囲に冷媒または熱媒を用いる熱交換手段を設け、樹脂含有粒子を含むスラリーに付加される圧力値に応じて、冷却または加熱を行ってもよい。多段減圧装置は1つ設けてもよくあるいは複数を直列または並列に設けてもよい。また減圧モジュール43の減圧部材としては、図6に示すものが挙げられる。
図6は、減圧モジュール43の減圧部材の構成を模式的に示す断面図である。減圧モジュール43の減圧部材は、その内部に液体流下路54を有する。液体流下路54は、出口径が入口径よりも小さく形成される。さらに本実施の形態では、液体流下路54は、スラリーの流下方向である矢符55に垂直な断面が、入口から出口に近づくにつれて徐々に小さくなり、かつ矢符55に垂直な断面の中心が、スラリーの流下方向に平行な同一軸線上に存在する。減圧モジュール43では、矢符55の方向で液体流下路54内に進入したスラリーを、液体流下路54内を流下させる間に減圧する。
細粒化工程では、以上のような高圧ホモジナイザ31の細粒化ユニット32を用いて、粉砕段階および冷却減圧段階を行う。細粒化工程では、分散工程において水性媒体中に分散している状態の不定形樹脂粒子を、所望の粒子径、たとえば体積平均粒子径0.4μm以上2.0μm以下の樹脂含有粒子となるまで細粒化する。
粉砕段階では、分散工程で得られる樹脂含有粒子のスラリーを加熱加圧下で耐圧ノズル41に通過させる。これによって、不定形樹脂粒子を粉砕して得られた樹脂含有粒子を含むスラリーであって、加熱加圧状態にあるスラリーを得る。
不定形樹脂粒子は、分散工程によって水性媒体中に分散され、スラリーの状態でタンク35に収容されている。タンク35に収容される不定形樹脂粒子を含むスラリー(以下「不定形樹脂粒子スラリー」という)は、送りポンプ36によって送出され、加圧ユニット37および加熱ユニット38によって加熱加圧される。
加圧ユニット37および加熱ユニット38による不定形樹脂粒子スラリーの加圧加熱条件は、特に制限されないけれども、50MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ50℃以上に加熱されるのが好ましく、50MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ不定形樹脂粒子の軟化温度以上に加熱されるのがさらに好ましく、50MPa以上250MPa以下に加圧され、かつ不定形樹脂粒子の軟化温度以上、不定形樹脂粒子の軟化温度+25℃以下に加熱されるのが特に好ましい。不定形樹脂粒子の軟化温度とは、フローテスターの1/2軟化温度である。具体的に述べると、不定形樹脂粒子の軟化温度は、流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを、ダイ(ノズル)から押出されるように荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えながら、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度として求められる。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものが用いられる。
加圧ユニット37による不定形樹脂粒子スラリーへの加圧力が50MPa未満では、せん断エネルギーが小さくなり、小粒径化が充分に出来ないおそれがある。また不定形樹脂粒子が凝集するおそれがある。加圧ユニット37による不定形樹脂粒子スラリーへの加圧力が250MPaを超えると、実際の生産ラインにおいて危険性が大きくなり過ぎ、現実的ではない。不定形樹脂粒子スラリーは、前記範囲の圧力および温度で耐圧ノズルの入口から耐圧ノズル内に導入される。本実施の形態では、不定形樹脂粒子スラリーを210MPaに加圧し、かつ120℃に加熱する。
以上のようにして不定形樹脂粒子スラリーが加熱ユニット38によって加熱されるとき、不定形樹脂粒子スラリーが、凝集分散剤の凝集開始温度以上に加熱される場合がある。しかしながらここでは加圧ユニット37によって50MPa以上の圧力にまでスラリーが加圧されているので、不定形樹脂粒子スラリーの温度が凝集分散剤の凝集開始温度以上になっても、凝集分散剤の分散能は低下しない。したがって加圧ユニット37および加熱ユニット38で加熱加圧されたスラリーの状態は、不定形樹脂粒子が水性媒体中で分散している状態である。
凝集分散剤にガラス転移温度(Tg)が存在する場合、すなわち凝集分散剤に含まれるポリマーにガラス転移温度(Tg)が存在する場合には、あまりにも凝集分散剤中のポリマーのガラス転移温度(Tg)とかけ離れた温度に加熱ユニット38で不定形樹脂粒子スラリーを加熱すべきではない。瞬間的に凝集分散剤が高温高圧に曝される分には問題ないが、後述するように減圧工程および冷却工程も段階的に、すなわち叙々に行われるので、不定形樹脂粒子スラリーの最高到達温度が高すぎると、最終的に常温常圧に戻されるまでの間に、不定形樹脂粒子スラリーの温度が、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超えた状態が長く続くことになる。このように不定形樹脂粒子スラリーの温度が、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超えた状態が長く続くと、凝集分散剤中のポリマーが分解または失活することで、配管内に凝集が起こり、スラリー作製が困難になる。
目安としては、スラリーの最高到達温度と凝集分散剤中のポリマーのガラス転移温度(Tg)との差が100℃未満である。スラリーの最高到達温度と凝集分散剤中のポリマーのガラス転移温度(Tg)との差が100℃未満であれば、スラリー中の固形分濃度が30重量%であっても、この問題に起因する配管詰まりは回避できると考えられる。実際には、加熱ユニット38による不定形樹脂粒子スラリーの加熱温度は、前述のように、不定形樹脂粒子の軟化温度に基づいて設定されるべきである。したがって、凝集分散剤は、不定形樹脂粒子の軟化温度を考慮して選択されることが好ましく、具体的には、加熱ユニット38による不定形樹脂粒子スラリーの加熱温度が前記範囲内にあるとき、すなわち不定形樹脂粒子の軟化温度以上、不定形樹脂粒子の軟化温度+25℃以下にあるときに、不定形樹脂粒子スラリーの最高到達温度と凝集分散剤中のポリマーのガラス転移温度(Tg)との差が100℃未満になるようなガラス転移温度を有する凝集分散剤を選択することが好ましい。
つまり、細粒化工程における不定形樹脂粒子スラリーの温度は、前記凝集分散剤のガラス転移温度Tg[℃]に100[℃]を加算した基準温度(Tg+100[℃])未満である。細粒化工程におけるスラリーの温度が基準温度以上であると、凝集分散剤が分散能を失った状態で不定形樹脂粒子の細粒化が行われるおそれがあり、分散工程で分散された不定形樹脂粒子が、細粒化工程で再び凝集し、所望の粒径の樹脂含有粒子が得られないおそれがある。また高圧ホモジナイザを用いて細粒化が行われる場合には、凝集した不定形樹脂粒子が配管を詰まらせてしまうおそれがある。前述のように細粒化工程におけるスラリーの温度を基準温度未満にすることによって、凝集分散剤の分散能を維持して、細粒化工程における不定形樹脂粒子の再凝集を防ぐことができるので、所望の粒径の樹脂含有粒子をより確実に得ることができる。また高圧ホモジナイザを用いて細粒化が行われる場合に配管が詰まってしまうことを防ぐことができる。
加圧ユニット37および加熱ユニット38で加熱加圧されたスラリーは、耐圧性容器39に送給される。耐圧性容器39に送給されたスラリーは、直ちに耐圧ノズル41に導入され排出される。
耐圧ノズル41に導入されるスラリーは、耐圧ノズル41を通過し、スラリー中の不定形樹脂粒子が粉砕されて小径化される。本実施の形態では、耐圧ノズル41は3つが設けられるけれども、耐圧ノズル41は1つが設けられてもよく、また3つ以外の複数が設けられてもよい。不定形樹脂粒子が耐圧ノズル41を流下する粉砕段階が終了すると、冷却減圧段階に進む。
冷却減圧段階では、粉砕段階で得られるスラリーを、冷却し、バブリングが発生しない圧力まで徐々に減圧する。本実施の形態では、まず冷却モジュール42によってスラリーを冷却し、その後減圧モジュール43によってバブリングが発生しない圧力まで徐々に減圧する。減圧は、段階的に徐々に行うのが好ましい。冷却温度および圧力には制限はないけれども、本実施の形態では、冷却モジュール42によって40℃以下にまで冷却し、減圧モジュール43によってスラリーを大気圧にまで減圧する。このように、粉砕段階の直後に冷却モジュール42でスラリーを冷却し、引き続いて減圧モジュール43でスラリーを泡の発生(バブリング)が起こらない圧力まで減圧することによって、スラリー中でのバブリングひいては樹脂含有粒子の再凝集による粗大化が防止される。冷却モジュール42および減圧モジュール43によって冷却および減圧されたスラリーは、減圧モジュール43外に排出され、配管34を介してタンク35に戻される。
このような粉砕段階と冷却減圧段階とを含む細粒化工程は、必要に応じて複数回が繰返し実施されてもよい。細粒化工程は、スラリー中の不定形樹脂粒子の体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下の樹脂含有粒子となるまで実施される。樹脂含有粒子の体積平均粒子径が0.4μm未満であると、樹脂含有粒子が小さくなりすぎ、樹脂含有粒子の結着樹脂中に着色剤および離型剤が均一に分散されていないおそれがある。また樹脂含有粒子の体積平均粒子径が2.0μmを超えると、たとえば4μm以上8μm以下の小粒径のトナーを形成することが困難となるおそれがある。上記のような小粒径のトナーの形成には、樹脂含有粒子の体積平均粒子径が0.4μm以上1.0μm以下であることがさらに好ましい。
樹脂含有粒子の体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下となるまで不定形樹脂粒子の細粒化が行われ、タンク35に体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下の樹脂含有粒子を含むスラリーが収容されると、凝集工程に移る。
(D)凝集工程
凝集工程では、樹脂含有粒子のスラリーに2価以上の金属塩を添加し、樹脂含有粒子を凝集させる。本実施の形態の凝集工程は、金属塩添加段階と、加熱凝集段階とを含む。凝集工程では、高圧ホモジナイザ31の凝集・加熱ユニット33が使用される。
凝集・加熱ユニット33は、スラリーの流下する順番に、タンク35、送りポンプ36、加圧ユニット37、加熱ユニット38、耐圧性容器39、切換部40、耐圧ノズル44、第1の減圧モジュール45a、第2の減圧モジュール45b、冷却モジュール46、第3の減圧モジュール45cが順に配置されて構成される。タンク35、送りポンプ36、加圧ユニット37、加熱ユニット38、耐圧性容器39および切換部40については、細粒化ユニット32と共用されるので、その説明を省略する。また本工程の説明において特定の減圧モジュールを示す場合を除き、第1〜第3の減圧モジュール45a,45b,45cを「減圧モジュール45」という。
凝集・加熱ユニット33の耐圧ノズル44は、たとえば図3に示す耐圧ノズル41と同様のノズルを用いることができる。凝集・加熱ユニット33の耐圧ノズル44は、後述の凝集剤によって凝集されたスラリー中の粒子を粉砕し、粒子が凝集し過ぎることを防止する。凝集・加熱ユニット33の冷却モジュール46としては、細粒化ユニット32の冷却モジュール42と同様のものを用いることができる。凝集・加熱ユニット33の減圧モジュール45としては、図7に示す減圧部材を備えるものが挙げられる。
図7は、凝集・加熱ユニット33の減圧モジュール45の減圧部材の構成を模式的に示す断面図である。図7(a)は凝集・加熱ユニット33に含まれる第1の減圧モジュール45aの減圧部材の構成を模式的に示す断面図であり、図7(b)は凝集・加熱ユニット33に含まれる第2の減圧モジュール45bの減圧部材の構成を模式的に示す断面図であり、図7(c)は凝集・加熱ユニット33に含まれる第3の減圧モジュール45cの減圧部材の構成を模式的に示す断面図である。
第1〜第3の減圧モジュール45は、減圧部材の内部形状が異なること以外は、前述の減圧モジュール45と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。第1の減圧モジュール45aの減圧部材は、図7(a)に示すように、その内部に液体流下路56を有する。液体流下路56はスラリーの流下方向である矢符57の方向に垂直な方向の流路断面が小さい部分と大きい部分とが交互に形成される。本実施の形態では、液体流下路56は、出口径が入口径よりも大きく形成され、スラリーの流下方向である矢符55に垂直な断面の中心が、スラリーの流下方向に平行な同一軸線上に存在する。第1の減圧モジュール45aでは、矢符57の方向で流下路56内に進入したスラリーを、液体流下路56内を流下させる間に減圧する。第2の減圧モジュール45bの減圧部材は、図7(b)に示すように、第1の減圧モジュール45aと同様の構成を有するので説明を省略する。第3の減圧モジュール45cの減圧部材は、図7(c)に示すように、その内部に液体流下路58を有する。液体流下路58は、出口径が入口径よりも大きく形成される。さらに本実施の形態では、液体流下路58は、スラリーの流下方向である矢符59に垂直な断面が、入口から出口に近づくにつれて徐々に大きくなり、かつ矢符59に垂直な断面の中心が、スラリーの流下方向に平行なスラリーの流下方向に平行な同一軸線上に存在する。第3の減圧モジュール45cでは、矢符59の方向で流体流下路58内に進入したスラリーを、液体流下路58内を流下させる間に減圧する。
凝集工程では、以上のような高圧ホモジナイザ31の凝集・加熱ユニット33を用いて、細粒化工程で得られる体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下の樹脂含有粒子を凝集させる。
細粒化工程で得られた体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下の樹脂含有粒子を含むスラリーは、常温環境下でタンク35に収容されている。細粒化工程終了時におけるポリマーは、前述の図1(a)に示すように、スラリー中で、アニオン性極性基が水性媒体中の水分子と水素結合してポリマーが水溶性を示し、スラリー中の樹脂含有粒子が分散状態に保たれる。
金属塩添加段階では、タンク35内の樹脂含有粒子のスラリーに2価以上の金属塩を添加して、樹脂含有粒子の凝集物を含むスラリーを得る。
2価以上の金属塩としては、水溶性の金属塩が好ましく、たとえば、バリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウムなどの硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。このような2価以上の金属塩は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。2価以上の金属塩としては、マグネシウムの塩化物である塩化マグネシウムが好ましい。
このような2価以上の金属塩をスラリーに添加することによって、前述の図1(b)に示すように、2価以上の金属塩の金属イオンと一部のアニオン性極性基とが結合し、一部のアニオン性極性基と水分子との水素結合が切れる。これによってポリマーの水溶性が低下し、スラリー中の樹脂含有粒子が凝集する。
2価以上の金属塩は、ポリマーが有するアニオン極性基の全価数が、2価以上の金属塩の金属イオンの全価数よりも多くなる量で添加されることが好ましい。また2価以上の金属塩の金属イオンの全価数が、ポリマーが有するアニオン極性基の全価数の20%以上60%以下であることがさらに好ましい。このような量で2価以上の金属塩が添加されると、金属イオンと結合しないアニオン性極性基を存在させることができ、適度な分散性を保持したまま樹脂含有粒子を凝集させることができる。また上記のような量で2価以上の金属塩が添加されると、凝集工程後の洗浄工程において、粒子凝集体からのポリマーの除去を容易に行うことができる。
2価以上の金属塩は、凝集分散剤100重量部に対して65重量部以上300重量部以下の割合で樹脂含有粒子のスラリーに添加されることが好ましく、100重量部以上260重量部以下であることがさらに好ましい。2価以上の金属塩が65重量部未満であると、スラリー中で樹脂含有粒子を凝集させる力が小さくなり過ぎ、樹脂含有粒子を凝集させることが困難となるおそれがある。また2価以上の金属塩が300重量部を超えると、スラリー中で樹脂含有粒子を凝集させる力が大きくなり過ぎ、凝集体粒子が粗大化するおそれがある。したがって2価以上の金属塩の使用割合を凝集分散剤100重量部に対して65重量部以上300重量部以下とすることによって、樹脂含有粒子の凝集が不充分となること、および樹脂含有粒子が凝集し過ぎることを防止することができ、粒子凝集体の凝集度合を好適にすることができる。
また前述のように、2価以上の金属塩の金属イオンとアニオン性極性基とが結合する反応は不可逆反応である。したがって樹脂含有粒子の凝集体の大きさおよび形状を制御するためには、金属イオンとアニオン性極性基とを可及的に穏やかに反応させることが必要である。しかしながら金属イオンとアニオン性極性基との反応を可及的に穏やかにすると、処理時間が長くなり、生産性が低下する。したがって金属イオンとアニオン性極性基との急速な反応を防止しつつ、処理時間を短縮できるように、2価以上の金属塩を添加することが望まれる。
金属イオンとアニオン性極性基との急速な反応を防止しつつ、処理時間を短縮するために、2価以上の金属塩は、水性媒体を溶媒とする溶液の形態で使用されることが好ましい。これによって、操作性が向上し、適量の2価以上の金属塩をスラリーに添加することができるので、適量の金属イオンをアニオン性極性基と結合させることができ、樹脂含有粒子の凝集が不充分となること、および樹脂含有粒子が凝集し過ぎることを防止することができる。
2価以上の金属塩の溶液は、2価以上の金属塩の濃度が5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。濃度が5重量%未満であると、使用する溶液量が増大するとともに、好適な量の2価以上の金属塩を添加するための処理時間が延び、生産性が低下するおそれがある。濃度が30重量%を超えると、少量の溶液によって凝集度合を制御しなくてはならず、樹脂含有粒子が凝集し過ぎるなど、操作性が悪化する。これによって粒子凝集体が粗大化するおそれがある。したがって溶液の濃度を上記範囲とすることによって、操作性を向上させることができ、樹脂含有粒子の凝集が不充分となること、および樹脂含有粒子が凝集し過ぎることを防止することができる。これによって粒子凝集体の凝集度合を好適にすることができ、好ましい大きさの粒子凝集体を得ることができる。
また上記範囲の濃度である2価以上の金属塩の溶液は、0.05mL/分以上0.20mL/分以下の滴下速度で、樹脂含有粒子のスラリーに滴下されることが好ましい。また滴下速度は、0.08mL/分以上0.15mL/分以下であることがさらに好ましい。滴下速度が0.05mL/分未満であると、好適な量の2価以上の金属塩を添加するための処理時間が延び、生産性が低下する。また滴下速度が0.20mL/分を超えると、2価以上の金属塩とアニオン性極性基とが急速に反応するので、樹脂含有粒子が急速に凝集し、粒子凝集体ごとの凝集度合にばらつきが生じる。
金属塩添加段階におけるスラリーの温度は、10℃以上50℃以下であることが好ましい。スラリーの温度が高いとき、たとえば50℃を超えるときに2価以上の金属塩を添加すると、2価以上の金属塩とアニオン性極性基とが結合する反応が急激に進行し、2価以上の金属塩とアニオン性極性基とが結合する反応の進行度合がスラリー中においてばらつくおそれがある。またスラリーの温度が10℃未満であると、スラリーの流動性が悪くなり、均一に金属塩を混合することができなくなるおそれがある。したがって金属塩添加段階におけるスラリーの温度を10℃以上50℃以下の温度とし、2価以上の金属塩とアニオン性極性基との反応の進行度合をスラリー中において均一にすることが好ましい。また2価以上の金属塩の添加は無撹拌下に行ってもよいけれども、撹拌下に行うのが好ましい。
前述のように、凝集分散剤を用いると、凝集分散剤のみによって分散能と凝集能とを発揮することができるので、凝集剤と分散剤とが個別に用いられる必要がなくなるけれども、凝集分散剤に加えて2価以上の金属塩をスラリーに添加することによって、樹脂含有粒子の凝集体の大きさおよび形状を制御することができる。また2価以上の金属塩の添加量などを調整することによって、樹脂含有粒子を短時間で凝集させることができ、生産性が向上する。
金属塩添加段階において樹脂含有粒子を含むスラリーに2価以上の金属塩が添加されると、スラリーを加熱し、樹脂含有粒子をさらに凝集させる加熱凝集段階に進む。
加熱凝集段階では、2価以上の金属塩が添加された樹脂含有粒子を含むスラリーを加熱する。この加熱によって、樹脂含有粒子の凝集度合をさらに高める。また加熱によって樹脂含有粒子を軟化させて樹脂含有粒子同士を融着させる。
タンク35には、2価以上の金属塩が添加されたスラリーが収容されている。タンク35に収容されるスラリーは、送りポンプ36によって送出され、加圧ユニット37および加熱ユニット38によって加熱加圧される。このときの加熱温度は特に制限されないけれども、凝集開始温度以上の温度であって、好ましくは結着樹脂のガラス転移温度付近の温度である。本実施の形態では、加圧ユニット37および加熱ユニット38によって、樹脂含有粒子の凝集体のスラリーを加熱加圧する。本実施の形態では、樹脂含有粒子の凝集体のスラリーを40MPaに加圧し、かつ70℃に加熱する。
加圧ユニット37および加熱ユニット38によって加熱加圧されたスラリーは、耐圧性容器39に送給される。耐圧性容器39内において、スラリーは結着樹脂のガラス転移温度付近の温度に保持される。この保持時間(以下「加熱時間」という場合がある)は、特に制限されないけれども、好ましくは5分以上である。加熱時間が5分未満であると、樹脂含有粒子が軟化せず、樹脂含有粒子同士の付着力を増大させることができないおそれがある。また加熱温度および加熱時間を適宜調整することによって、得られるトナー粒子の粒子径を調整できる。また加熱時間は30分以下であることが好ましい。加熱時間が30分を超えると、樹脂含有粒子の粉砕および融着が繰返され、この回数が多くなることによって、溶融混練工程にて結着樹脂中に分散させた着色剤および離型剤が、結着樹脂から放出されるおそれがあり、着色剤および離型剤の結着樹脂中での分散性を低下させるおそれがある。
耐圧性容器39内において結着樹脂のガラス転移温度付近の温度に保持されるスラリーは、撹拌手段によって撹拌されることが好ましい。本実施の形態では、スラリーは、撹拌手段によって2000rpm(毎分2000回転)で撹拌される。加熱されたスラリーを撹拌下で保持することによって、樹脂含有粒子の凝集体の大きさおよび形状を略均一にすることができる。また樹脂含有粒子の凝集体同士が不必要に融着し、樹脂含有粒子の凝集体が粗大化することを防止できる。
スラリーが加圧ユニット37および加熱ユニット38によって加熱加圧されるとき、スラリー中の凝集分散剤に含まれるポリマーは、前述の図1(c)に示すような状態となる。すなわち金属イオンと結合している極性基および水分子とも金属イオンとも結合していない極性基は、ポリマーの水溶性を低下させ、樹脂含有粒子を凝集させる。また一部のアニオン性極性基は、水分子との水素結合が切れることなく分散能を保持している。これによって、樹脂含有粒子を適度な凝集度合で凝集させることができ、粒子凝集体の粗大化が防止される。これによって粒子凝集体の大きさおよび形状を好適にすることができる。
さらにスラリーがたとえば結着樹脂のガラス転移温度付近の温度に保持されることによってスラリーに含まれる樹脂含有粒子を融着させ、凝集した樹脂含有粒子同士の付着力を高めることができる。また粒子凝集体を加熱することによって、粒子凝集体、すなわちトナーの形状を略球形状とすることができるので、粒子凝集体がトナーとして用いられる場合の帯電安定性が一層向上する。
その後、凝集・加熱ユニット33の耐圧ノズル44からスラリーを噴出することによって、凝集分散剤および2価の金属塩の添加によって凝集され、樹脂含有粒子同士が凝集し過ぎて粗大化したスラリー中の粒子凝集体を粉砕する。次いで、第1および第2の減圧モジュール45a,45bを通して多段減圧を行う。本実施の形態では、耐圧ノズル44の手前で160MPaに加圧されたスラリーは、ノズル通過後に約30MPaにまで減圧され、第1の減圧モジュール45aによってさらに減圧され、たとえば10MPaにまで減圧され、また第2の減圧モジュール45bによってさらに減圧され、たとえば3MPaにまで減圧される。第1および第2の減圧モジュール45a,45bによって減圧されたスラリーは、凝集・加熱ユニット33の冷却モジュール46によって冷却され、常温(25℃)程度の温度まで冷却される。凝集・加熱ユニット3の冷却モジュール46によって冷却されたスラリーは、第3の減圧モジュール45cによって大気圧(1.013×105Pa)程度にまで減圧される。
このような金属塩添加段階と加熱凝集段階とを含む凝集工程とによって、粒子凝集体であるトナー粒子が形成される。凝集工程のうち加熱凝集段階は、必要に応じて複数回が実施されてもよい。加熱凝集段階は、スラリー中の樹脂含有粒子の凝集体の体積平均粒子径が4μm以上8μm以下となるまで実施するのが好ましい。凝集工程が行われ、樹脂含有粒子の凝集体が好ましい大きさ、たとえば樹脂含有粒子の凝集体の体積平均粒子径が4μm以上8μm以下となると、洗浄工程に移る。
(E)洗浄工程
洗浄工程では、凝集工程の後得られる粒子凝集体を含むスラリーから粒子凝集体を単離し、純水で洗浄する。その後粒子凝集体を乾燥させてトナーを得る。スラリーから粒子凝集体を単離する方法としては、濾過、遠心分離などの一般的な分離手段が挙げられる。洗浄に用いる純水は、導電率が20μS/cm以下であることが好ましい。このような純水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができる。また純水の水温は10〜80℃程度が好ましい。洗浄は、たとえば、洗液(洗浄後の水)の導電率が50μS/cm以下になるまで行えばよい。洗浄終了後、粒子凝集体を洗液から単離し、乾燥させることによってトナーを得る。
凝集工程後、洗浄工程前の段階では、ポリマーは前述のように図1(b)に示すような状態であり、水分子と水素結合するアニオン性極性基が存在していることによってポリマーが水溶性となっているので、粒子凝集体を水性媒体から単離させるときに、凝集分散剤に含まれるポリマーを水洗浄によって粒子凝集体から容易に除去することができる。また2価以上の金属塩も、ポリマーが有するアニオン性極性基と金属イオンとが結合しているので、ポリマーとともに水洗浄によって粒子凝集体から除去される。
したがって本発明において凝集分散剤を用いると、スラリーのpHを変化させるなどの作業を行うことなく容易に水性媒体から粒子凝集体を単離させることができるので、スラリーのpHを変化させて洗浄する場合に生じる問題、たとえば、トナーとして用いられる粒子凝集体中の結着樹脂が架橋して透明度が低下する問題、結着樹脂が加水分解するなどによって結着樹脂の性質が悪化するという問題などの種々の問題が発生することを防止できる。
以上のような粒子凝集体の製造方法は、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、分散工程および凝集工程の加熱凝集段階を、バッチ式の乳化機、分散機などの一般的な混合装置を用いて行ってもよい。混合装置には、加熱手段、トナー原料混合液に剪断力を付与できる撹拌手段および/または回転手段、保温手段を有する混合槽などが備えられている。混合装置の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)、TKホモミックラインフロー(商品名、特殊機化工業株式会社製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名:太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)が挙げられる。
本実施の形態の粒子凝集体の製造方法では、アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを含む凝集分散剤によって分散させ、不定形樹脂粒子の大きさを体積平均粒子径0.4μm以上2.0μm以下とする。次いでこのような大きさの不定形樹脂粒子、すなわち樹脂含有粒子を、2価以上の金属塩をたとえば常温のスラリーに添加することによって、凝集させる。さらに2価以上の金属塩が添加されたスラリーを加熱することによって、樹脂含有粒子の凝集をさらに進行させるとともに、加熱によって樹脂含有粒子中の結着樹脂などの成分を軟化させて粒子凝集体に含まれる樹脂含有粒子同士の付着力を向上させる。その後粒子凝集体をスラリーから単離させ、乾燥させてトナーを得る。
本実施の形態では、凝集分散剤の加熱だけでなく、2価以上の金属塩を添加することによって、凝集速度を高めるとともに、凝集度合を制御している。凝集度合の制御は、前述のように、たとえば金属塩溶液の濃度、滴下速度、滴下量などを調整することによって行われる。また本実施の形態では、2価以上の金属塩の添加だけでなく、凝集分散剤の加熱によっても樹脂含有粒子を凝集させている。これによって、2価以上の金属塩の使用量を低減できるとともに、水による洗浄を可能とし、トナーとして用いられる粒子凝集体から不純物を除去し、粒子凝集体の性質が変化することを防止することができる。
以上のような本発明の樹脂含有粒子の凝集体の製造方法によって、本発明のトナーが製造される。本発明の樹脂含有粒子の凝集体の製造方法では、樹脂含有粒子を、凝集分散剤と2価以上の金属塩とを用いて凝集させて、樹脂含有粒子の凝集体を製造する。本発明において凝集分散剤は、樹脂含有粒子を含む水性媒体の温度を変化させることによって、分散能および凝集能を調整することができるので、水性媒体の温度を凝集分散剤の凝集開始温度よりも低くすることによって、分散能が調整できない分散剤を用いて樹脂含有粒子を分散させる場合に比べて、水性媒体中における樹脂含有粒子の固形分濃度を高くすることができる。これによって、樹脂含有粒子を凝集させるときに、樹脂含有粒子同士間の距離が短くなり、凝集しやすくなるので、水性媒体に添加する2価以上の金属塩の量を減らすことができる。したがって、樹脂含有粒子の凝集体であるトナーの内部に含まれる2価以上の金属塩の量を少なくすることができるので、金属塩によるトナーの帯電性への悪影響を抑え、帯電性に優れるトナーを実現することができる。また環境安定性にも優れるトナーを実現することができる。また前述のように水性媒体中における樹脂含有粒子の固形分濃度を高くできることは、製造コスト面からみても好ましく、使用する水性媒体の量およびトナーの製造に要する時間の観点からも有利である。つまり、前述のように樹脂含有粒子の固形分濃度を高くしてトナーを製造することができることによって、製造に使用する水性媒体の量を少なくし、また同量のトナーを製造するのに要する時間を短縮することができるので、前述のような優れたトナーを安価に提供することができる。
また、以上のような粒子凝集体の製造方法によってトナーを製造すると、樹脂含有粒子の凝集体であり、着色剤粒子および離型剤粒子が結着樹脂中に好適な分散径で分散するトナーが得られる。具体的には、トナーである凝集体を形成する樹脂含有粒子は、着色剤粒子および離型剤粒子が結着樹脂中に分散してなり、かつ体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下である。またこのような凝集体によって形成されるトナーにおいて、分散径が0.01μm以上0.5μm以下の着色剤粒子は、トナーに含まれる全着色剤粒子の70個数%以上である。また分散径が0.1μm以上1.0μm以下である離型剤粒子は、トナーに含まれる全離型剤粒子の50個数%以上である。
このようなトナーは、着色剤粒子および離型剤粒子が結着樹脂中に分散してなるので、結着樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子が凝集してなる粒子凝集体に比べて、着色剤粒子および離型剤粒子が、凝集体表面において露出する量を少なくすることができる。これによって、トナーが画像形成装置の内部で熱凝集することによって発生するブロッキングを防止することができ、トナーの保存安定性を向上することができる。またトナーの帯電安定性を向上することができる。
また樹脂含有粒子の体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下であるので、たとえばスラリー中の樹脂含有粒子の凝集体の体積平均粒子径を4μm以上8μm以下とすることが容易である。これによってトナーの体積平均粒子径が4〜8μm程度となる。つまり、樹脂含有粒子の体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下であることによって、樹脂含有粒子の凝集体であるトナーの大きさを、たとえば体積平均粒子径が4〜8μm程度と小径化することができる。
トナーの体積平均粒子径が4μm以上8μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。トナーの体積平均粒子径4μm未満であると、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナーの体積平均粒子径が8μmを超えると、高精細な画像を得ることができないおそれがある。またトナーの粒子径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
また本発明のトナーにおいて、0.01μm以上0.5μm以下という好適な分散径で結着樹脂中に分散される着色剤粒子が、トナーに含まれる全着色剤粒子の70個数%以上であるので、トナー粒子の帯電のし易さが均一になり、帯電安定性に優れる。これによって、トナー像の感光体から記録媒体への転写効率、感光体から中間媒体への転写効率、中間媒体から記録媒体への転写効率などが向上し、トナー消費量の低減化を達成できる。またトナーの帯電不良に伴う画像かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。さらにトナー粒子における着色剤粒子の含有量のばらつきを低減することができ、色再現性が向上する。
また本発明のトナーにおいて、0.1μm以上1.0μm以下という好適な分散径で結着樹脂中に分散される離型剤粒子が、トナーに含まれる全離型剤粒子の50個数%以上であるので、感光体へのフィルミング、高温域でのオフセット現象などが発生することを確実に防止できる。また0.1μm以上1.0μm以下という好適な分散径で離型剤粒子が均一に結着樹脂中に分散すると、離型剤粒子のトナーからの脱離が非常に起こり難くなり、保存安定性を向上することができる。
また本発明のトナーは、樹脂含有粒子の凝集体が、加熱されてなるので、樹脂含有粒子同士の付着力を高められている。したがって、画像形成装置の内部で凝集していた樹脂含有粒子が解離することによるトナーの微粉の発生が防止される。また樹脂含有粒子の凝集体が加熱されて得られるので、トナーの形状を略球形状とすることができ、トナーの帯電安定性が向上する。
本発明のトナーは、外添剤を添加して表面改質を施してもよい。外添剤としては公知のものを使用できる。外添剤としては、たとえば、シリカ、酸化チタン、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理したシリカ、酸化チタンなどが挙げられる。さらに外添剤の使用量は好ましくはトナー100重量部に対して1〜10重量部である。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても二成分系現像剤としても使用することができる。本発明のトナーは、帯電性および環境安定性に優れるので、本発明のトナーを含む本発明の現像剤、すなわち本発明のトナーを含む一成分系現像剤および二成分系現像剤は、特性の安定性が高く、高画質の画像を安定して形成することができる。また本発明のトナーは、透明性に優れるので、本発明のトナーとしてカラートナーを含む本発明の現像剤は、色再現性に優れる。また本発明のトナーは、離型性に優れるので、本発明のトナーを含む本発明の現像剤は、高温域でのオフセット現象などを防止することができ、高画質の画像を安定して形成することができる。このような本発明の現像剤を用いることによって、高精細で高解像度の高画質画像を形成することができる。
本発明のトナーは、像担持体に潜像として形成される静電荷像を現像する静電荷像現像用トナー、より詳細には電子写真法による画像形成において形成される静電荷像を現像する静電荷像現像用トナーとして好適に使用される。本発明のトナーは、静電荷像に限定されず、他の潜像の現像に用いられてもよく、たとえば磁気潜像の現像に用いられてもよい。
本発明のトナーを一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いず、トナーのみで使用し、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることで搬送して画像形成を行う。
また本発明のトナーを二成分系現像剤として使用する場合、トナーはキャリアとともに用いられる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガンおよびクロムなどからなる単独または複合フェライト、および前述の単独または複合フェライトから成るキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、および樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。樹脂被覆キャリアにおける被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。樹脂被覆キャリアにおける被覆物質および樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂はいずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、体積平均粒子径が、好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2のおもりによって荷重を掛け、おもりと容器の底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。キャリアの抵抗率が低い、具体的には108Ω・cm未満であると、現像剤担持体である現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、像担持体である感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さを表す最大磁化は、好ましくは10emu/g以上60emu/g以下であり、さらに好ましくは15emu/g以上40emu/g以下である。キャリアの最大磁化は、現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においてキャリアの最大磁化が10emu/g未満であると、磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また最大磁化が60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎるので、非接触現像の場合には、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像の場合には、トナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア中における樹脂の密度が密度5〜8g/cm2である樹脂被覆キャリアを例にとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%以上30重量%以下含まれることが好ましく、2重量%以上20重量%以下含まれることがより好ましい。
二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%以上80%以下であることが好ましい。トナーによるキャリアの被覆率は、キャリアの全表面積、すなわちキャリアの表面のうちでトナーに被覆されているトナー被覆部の表面積と、トナーに被覆されていない非被覆部の表面積との合計の表面積Sに対する、キャリアのトナー被覆部の表面積S1の比率S1/Sを百分率で表したものである。
トナーによるキャリアの被覆率は、以下の方法によって、間接的に測定される。現像槽内からキャリアをサンプリングし、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;略称SEM,商品名:S−5500、株式会社日立製作所製)によって任意の複数個のキャリア粒子について表面のSEM写真を撮影する。そして得られたSEM写真画像を、トナー被覆部が黒、トナー非被覆部が白となるように2値化処理し、キャリアの全表面積Sに相当するキャリアの全画素数(黒の画素数と白の画素数との合計)と、トナー被覆部の表面積S1に相当するトナー被覆部の画素数(黒の画素数)とをカウントし、キャリアの全画素数Sに対するトナー被覆部の画素数S1の比率S1/Sの平均値を求め、これを百分率で表したものを、トナーによるキャリアの被覆率とする。上記方法では、1個のキャリアにおいて、その半球部分、すなわち半分の表面積のみを測定しているが、複数のキャリア粒子における前記比率S1/Sの平均値を求めているので、キャリア粒子全体の表面積を測定して算出した結果と同等の結果が得られる。
図8は本発明の実施の一形態である現像装置114を備える画像形成装置101の構成を示す透視側面図であり、図9は本発明の実施の一形態である現像装置114の構成を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置101は、電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置101は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置101においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置101は、トナー像形成手段102と、転写手段103と、定着手段104と、記録媒体供給手段105と、排出手段106とを含む。
本実施形態の画像形成装置101は、互いに異なる色の複数のトナー像が重ね合わされた多色画像を形成可能に構成される。より詳細には、本実施形態の画像形成装置101は、多色画像として、ブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の4色から選ばれる2色以上のトナー像が重ね合わされた多色画像を形成可能に形成される。トナー像形成手段102を構成する各部材および転写手段103に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段102は、像担持体であるドラム状の感光体(以下「感光体ドラム」という)111と、帯電手段112と、露光ユニット113と、現像手段である現像装置114と、クリーニングユニット115とを含む。帯電手段112および露光ユニット113は、潜像形成手段として機能する。帯電手段112、現像装置114およびクリーニングユニット115は、感光体ドラム111まわりに、この順序で配置される。帯電手段112は、現像装置114およびクリーニングユニット115よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム111は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しないが、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。本実施形態において電荷発生層および電荷輸送層は、この順に導電性基体に積層される。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン
系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボ
ネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。また本実施形態において電荷発生層および電荷輸送層は、この順に導電性基体に積層されるが、電荷輸送層および電荷発生層の順に導電性基体に積層されてもよい。
帯電手段112は、感光体ドラム111を臨み、感光体ドラム111の長手方向に沿って感光体ドラム111表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム111表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段112には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段112は感光体ドラム111表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段112として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
露光ユニット113は、露光ユニット113から出射される各色情報の光が、帯電手段112と現像装置114との間を通過して感光体ドラム111の表面に照射されるように配置される。露光ユニット113は、画像情報を該ユニット内でブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の各色情報の光に分岐し、帯電手段112によって一様な電位に帯電された感光体ドラム111表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット113には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
現像装置114は、図9に示すように、現像剤規制ブレード119と現像槽120とトナーホッパ121と現像ローラ122と供給ローラ123と撹拌ローラ124とを含む。現像槽120は、容器状部材であり、感光体ドラム111表面を臨むように配置される。現像槽120は、その内部空間に、本発明の現像剤を収容し、かつ現像ローラ122、供給ローラ123および撹拌ローラ124を収容して回転自在に支持する。現像槽120の感光体ドラム111を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム111に対向する位置に現像ローラ122が回転駆動可能に設けられる。
現像ローラ122は、現像剤を担持して搬送する現像剤搬送担持体である。現像ローラ122は、いわゆるマグネットローラであり、固定磁石体を内包する。この固定磁石体の磁力によって現像剤中のキャリアが現像ローラ122に磁気的に吸着され、これによって現像剤が現像ローラ122に担持される。現像ローラ122は、ローラ状部材であり、感光体ドラム111との圧接部または最近接部において感光体ドラム111表面の静電潜像にトナーを供給する。トナーの供給に際しては、現像ローラ122表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」という)として印加される。これによって、現像ローラ122表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。現像ローラ122の表面に担持される現像剤の量は、現像剤規制ブレード119によって規制される。現像装置114は、感光体ドラム111の表面に形成された静電潜像に、現像ローラ122によってトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する。
供給ローラ123は、ローラ状部材であり、現像ローラ122を臨んで回転駆動可能に設けられ、現像ローラ122周辺にトナーを供給する。撹拌ローラ124は、ローラ状部材であり、供給ローラ123を臨んで回転駆動可能に設けられ、トナーホッパ121から現像槽120内に新たに供給されるトナーおよび現像槽120内に貯留されていたトナーを撹拌して供給ローラ123周辺に送給する。供給ローラ123は、現像ローラ122にトナーを供給する供給手段として機能し、撹拌ローラ124は、現像槽120内のトナーを撹拌して供給手段である供給ローラ123に送給する撹拌送給手段である。供給手段および撹拌送給手段は、本実施形態ではローラ状部材であるが、これに限定されず、たとえばスクリュー状部材であってもよい。
トナーホッパ121は、その鉛直方向下部に形成されるトナー補給口151と、現像槽120の鉛直方向上部に形成されるトナー受入口152とが連通するように設けられ、現像槽120のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ121を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
図8に戻って、クリーニングユニット115は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム111の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム111の表面を清浄化する。クリーニングユニット115には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本実施形態の画像形成装置101においては、感光体ドラム111として、有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット115による擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット115を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット115を設けなくてもよい。
トナー像形成手段102によれば、帯電手段112によって均一な帯電状態にある感光体ドラム111の表面に、露光ユニット113から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置114からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト125に転写した後に、感光体ドラム111表面に残留するトナーをクリーニングユニット115で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段103は、感光体ドラム111の鉛直方向上方に配置され、中間転写体である中間転写ベルト125と、駆動ローラ126と、従動ローラ127と、中間転写ローラ128(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット129、転写ローラ130とを含む。
中間転写ベルト125は、駆動ローラ126と従動ローラ127とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト125が、感光体ドラム111に接しながら感光体ドラム111を通過する際、中間転写ベルト125を介して感光体ドラム111に対向配置される中間転写ローラ128から、感光体ドラム111表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム111の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト125上へ転写される。多色画像の場合、各感光体ドラム111で形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト125上に順次重ねて転写されることによって、多色画像が形成される。
駆動ローラ126は、図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト125を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ127は、駆動ローラ126の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト125が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト125に付与する。中間転写ローラ128は、中間転写ベルト125を介して感光体ドラム111に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ128は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム111表面のトナー像を中間転写ベルト125に転写する機能を有する。
転写ベルトクリーニングユニット129は、中間転写ベルト125を介して従動ローラ127に対向し、中間転写ベルト125の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム111との接触によって中間転写ベルト125に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット129が中間転写ベルト125表面のトナーを除去し回収する。
転写ローラ130は、中間転写ベルト125を介して駆動ローラ126に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ130と駆動ローラ126との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト125に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段105から送給される記録媒体に転写される。中間転写ベルト125に多色画像が形成される場合、形成された多色画像は、転写ローラ130によって記録媒体に一括して転写される。このようにしてトナー像が転写された記録媒体は、定着手段104に送給される。
転写手段103によれば、感光体ドラム111と中間転写ローラ128との圧接部において感光体ドラム111から中間転写ベルト125にトナー像が転写され、この転写されたトナー像が、中間転写ベルト125の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段104は、転写手段103よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ131と加圧ローラ132とを含む。定着ローラ131は、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ131の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ131表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ131を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ131表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ131の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。
加圧ローラ132は、定着ローラ131に圧接するように設けられ、加圧ローラ132の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ132は、定着ローラ131によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ131と加圧ローラ132との圧接部が定着ニップ部である。定着手段104によれば、転写手段103においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ131と加圧ローラ132とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段105は、自動給紙トレイ135と、ピックアップローラ136と、搬送ローラ137と、レジストローラ138、手差給紙トレイ139を含む。自動給紙トレイ135は画像形成装置101の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ136は、自動給紙トレイ135に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。
搬送ローラ137は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ138に向けて搬送する。レジストローラ138は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ137から送給される記録媒体を、中間転写ベルト125に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
手差給紙トレイ139は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置101内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ139から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ137によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ138に送給される。記録媒体供給手段105によれば、自動給紙トレイ135または手差給紙トレイ139から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト125に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段106は、搬送ローラ137と、排出ローラ140と、排出トレイ141とを含む。搬送ローラ137は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段104によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ140に向けて搬送する。排出ローラ140は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置101の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ141に排出する。排出トレイ141は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置101は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置101の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置101の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置101内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。
記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置101に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDDVD(High-
Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結
果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置101内部における各装置にも電力を供給する。
以上の本実施形態によれば、現像装置114は、本発明の現像剤を用いて、感光体ドラム111に形成される静電潜像を現像して、トナー像を形成する。本発明の現像剤は、前述のように帯電性および環境安定性に優れる本発明のトナーを含むので、特性の安定性が高く、高画質の画像を安定して形成することができる。また本発明の現像剤は、前述のように透明性および離型性に優れる本発明のトナーを含むので、色再現性に優れ、また高温域でのオフセット現象などを防止することができる。現像装置114では、このような本発明の現像剤を用いて静電潜像を現像するので、感光体ドラム111に高画質のトナー像を安定して形成することができ、また高精細で高解像度の高画質画像を形成することができる現像装置114が実現される。
また本実施形態では、このような現像装置114によって現像が行なわれるので、高画質の画像を安定して形成することができ、高精細で高解像度の高画質画像を形成することができる画像形成装置101が実現される。
本実施形態の画像形成装置101は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であるが、これに限定されず、たとえば複写機、プリンタまたはファクシミリ装置として用いられてもよい。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「部」および「%」は特に断らない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
〔体積平均粒子径および変動係数〕
トナー粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(商品名、コールター株式会社製)を用いて測定した結果から算出した。測定粒子数は50000カウントとし、アパーチャ径は100μmとした。変動係数は、測定された粒子径から得られた体積平均粒子径およびその標準偏差に基づいて、下記式(1)より算出した。
変動係数 = 標準偏差 / 体積平均粒子径 ×100 [%] …(1)
また樹脂含有粒子の体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて上記と同様にして求めた。樹脂含有粒子の変動係数についても、上記式(1)によって算出した。
〔結着樹脂の軟化温度〕
結着樹脂の軟化温度は、以下のようにして測定した。流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを、ダイ(ノズル)から押出されるように荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えながら、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化温度として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
〔結着樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は以下のようにして測定した。示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
〔着色剤および離型剤の分散径〕
着色剤の分散径として、結着樹脂中で分散する着色剤粒子の最大長さを求めた。具体的には、粒子凝集体をエポキシ樹脂に埋包して約100μmに切片化し透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electoron Microscope)によって倍率10000倍で粒子凝集体の観察を行い、写真撮影した。この写真20点(20個の粒子凝集体)を画像評価することによって着色剤の分散径を測定し、個数平均分散径を算出した。離型剤の分散径は、着色剤の分散径と同様の方法によって測定した。離型剤は、四酸化ルテニウムで染色した後、透過型電子顕微鏡によって観察した。
[不定形樹脂粒子の作製]
(不定形樹脂粒子aの作製)
ポリエステル樹脂(ガラス転移温度:57℃)2580部、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)240部、ポリエチレンワックス(商品名:HNP−10、日本精蝋株式会社製)150部、帯電制御剤(商品名:N4P−SFG、クラリアントジャパン株式会社製)30部をヘンシェルミキサにて混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を、図3に示すオープンロール式混練機に準ずるオープンロール機(商品名:ニーデックス、三井鉱山株式会社製)を用いて溶融混練し、溶融混練物を室温まで冷却した後、アトマイザーで粗粉砕し、不定形樹脂粒子aを作製した。不定形樹脂粒子aにおける着色剤の分散径は352nmであった。またオープンロール式混練機による溶融混練条件は、次のようであった。
〈溶融混練条件〉
加熱ロールの原料混合物供給側の温度を150℃に、冷却ロールの原料混合物供給側の温度を50℃にそれぞれ設定した。また溶融混練時における加熱ロールの混練物取出側の温度は90℃であり、冷却ロールの混練物取出側の温度は50℃であった。
(不定形樹脂粒子bの作製)
溶融混練条件を表1に示す条件に変更したこと以外は不定形樹脂粒子aと同様にして、不定形樹脂粒子bを作製した。不定形樹脂粒子bにおける着色剤の分散径は567nmであった。
(不定形樹脂粒子cの作製)
溶融混練条件を表1に示す条件に変更したこと以外は不定形樹脂粒子aと同様にして、不定形樹脂粒子cを作製した。不定形樹脂粒子cにおける着色剤の分散径は784nmであった。
(不定形樹脂粒子dの作製)
溶融混練条件を表1に示す条件に変更したこと以外は不定形樹脂粒子aと同様にして、不定形樹脂粒子dを作製した。不定形樹脂粒子dにおける着色剤の分散径は1027nmであった。
不定形樹脂粒子a〜dの作製における溶融混練条件、および不定形樹脂粒子a〜dの着色剤分散径を合わせて表1に示す。
[樹脂含有粒子スラリーの作製]
(スラリーAの作製)
不定形樹脂粒子a300部、ポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:ディスロールH14−N、日本乳化剤株式会社製、以下「ポリアクリル酸(1)」という)30部、イオン交換水(導電率0.5μS/cm)2670部を用い、分散工程および細粒化工程を実施した。細粒化工程には、図4に示す高圧ホモジナイザに準ずる微粒子製造装置(商品名;nano3000、株式会社美粒製)を用いた。また細粒化工程では、スラリーを加圧ユニットにて150MPaに加圧し、加熱ユニットにて70℃に加熱した。以上のような分散工程および細粒化工程によって、樹脂含有粒子Aが10%含まれるスラリーAを得た。ポリアクリル酸(1)は、アニオン性極性基であるカルボキシル基が水酸化ナトリウム(NaOH)で中和された中和物であり、カルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は70モル%である。
(スラリーBの作製)
不定形樹脂粒子aを不定形樹脂粒子bに変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Bが10%含まれるスラリーBを得た。
(スラリーCの作製)
不定形樹脂粒子aを不定形樹脂粒子cに変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Cが10%含まれるスラリーCを得た。
(スラリーDの作製)
不定形樹脂粒子aを不定形樹脂粒子dに変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Dが10%含まれるスラリーDを得た。スラリーDの樹脂含有粒子Dは、結着樹脂粒子と、着色剤粒子とを含むものであった。
(スラリーEの作製)
ポリアクリル酸(1)30部をドデシルベンゼンスルホン酸30部に変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Aが10%含まれるスラリーEを得た。ドデシルベンゼンスルホン酸は、スルホン酸基を水酸化ナトリウム(NaOH)で中和度が70モル%になるように中和して用いた。
(スラリーFの作製)
不定形樹脂粒子aの配合量を600部に変更し、イオン交換水の配合量を2370部に変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Aが20%含まれるスラリーFを得た。
(スラリーGの作製)
不定形樹脂粒子aの配合量を900部に変更し、イオン交換水の配合量を2070部に変更したこと以外はスラリーAと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーGの作製を試みたが、微粒子製造装置の配管が詰まり、細粒化処理を完遂することができず、スラリーGを得ることはできなかった。
(スラリーHの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(2a)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーHの作製を試みたが、微粒子製造装置の配管が詰まり、細粒化処理を完遂することができず、スラリーHを得ることはできなかった。
ポリアクリル酸(2a)は、ポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:ジュリマーAC−10L、日本純薬株式会社製、以下「ポリアクリル酸(2)」という)の中和物である。ポリアクリル酸(2)は、カルボキシル基が中和されていない未中和物であるので、そのまま凝集分散剤として使用すると、水との馴染みが悪く、充分に効力を発揮することができない。そこで、ポリアクリル酸(2)を10規定(10N)−NaOH水溶液(10モル%NaOH水溶液)と混合することで、所望の中和度に調製し、ポリアクリル酸(2a)として用いた。ポリアクリル酸(2a)のカルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は、80モル%である。
(スラリーIの作製)
ポリアクリル酸(1)30部を前述のポリアクリル酸(2a)45部に変更し、イオン交換水の配合量を2055部に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーIを得た。
(スラリーJの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(2b)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーJを得た。
ポリアクリル酸(2b)は、ポリアクリル酸(2)の中和物であり、ポリアクリル酸(2a)と同様にして調製される。ポリアクリル酸(2b)のカルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は、90モル%である。
(スラリーKの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(2c)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーKを得た。ポリアクリル酸(2c)は、ポリアクリル酸(2)の中和物であり、ポリアクリル酸(2a)と同様にして調製される。ポリアクリル酸(2c)のカルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は、95モル%である。
(スラリーLの作製)
ポリアクリル酸(1)をポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AC−107、日本純薬株式会社製、以下「ポリアクリル酸(3)」という)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーLの作製を試みたが、細粒化処理において分散安定性を保つことができなくなって微粒子製造装置の配管が詰まり、スラリーLを得ることはできなかった。これは、後述する表2に示すようにポリアクリル酸(3)の重量平均分子量が4000と小さすぎるためであると考えられる。ポリアクリル酸(3)は、カルボキシル基が水酸化ナトリウムで中和された中和物であり、カルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は95モル%である。
(スラリーMの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(4)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーMを得た。ポリアクリル酸(4)は、ポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AC−20L、日本純薬株式会社製)を、10N−NaOH水溶液で中和して、中和度を95%に調製したものである。
(スラリーNの作製)
ポリアクリル酸(1)をポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AT−613、日本純薬株式会社製、以下「ポリアクリル酸(5)」という)に変更した以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーNの作製を試みたが、細粒化処理において分散安定性を保つことができなくなって微粒子製造装置の配管が詰まり、スラリーNを得ることができなかった。これは、後述する表2に示すようにポリアクリル酸(5)のカルボキシル基の中和塩がアンモニウム塩であるので、細粒化処理中にアンモニアが蒸発し、中和度が低下したためであると考えられる。ポリアクリル酸(5)は、カルボキシル基が塩化アンモニウムで中和された中和物であり、カルボキシル基の塩化アンモニウムによる中和度は90モル%である。
(スラリーOの作製)
ポリアクリル酸(1)をポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AC−20H、日本純薬株式会社製、以下「ポリアクリル酸(6)」という)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーOの作製を試みたが、細粒化処理においてスラリーの粘度が高すぎて微粒子製造装置の配管が詰まり、スラリーOを得ることができなかった。これは、後述する表2に示すようにポリアクリル酸(6)の数平均分子量が100000と大きすぎるためであると考えられる。ポリアクリル酸(6)は、カルボキシル基が水酸化ナトリウムで中和された中和物であり、カルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は95モル%である。
(スラリーPの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(7)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーPを得た。ポリアクリル酸(7)は、ポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AC−203、日本純薬株式会社製)を10N−NaOH水溶液で中和して、中和度を95%に調製したものである。
(スラリーQの作製)
ポリアクリル酸(1)を以下に示すポリアクリル酸(8)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーQを得た。ポリアクリル酸(8)は、ポリアクリル酸(凝集分散剤、商品名:AC−10N、日本純薬株式会社製)を10N−NaOH水溶液で中和して、中和度を95%に調製したものである。
(スラリーRの作製)
ポリアクリル酸(1)をポリイタコン酸(凝集分散剤、商品名:AC−70N、日本純薬株式会社製)に変更したこと以外はスラリーGと同様にして、樹脂含有粒子Aが30%含まれるスラリーRを得た。前述のポリイタコン酸AC−70Nは、カルボキシル基が水酸化ナトリウム(NaOH)で中和された中和物であり、カルボキシル基の水酸化ナトリウムによる中和度は95モル%である。
スラリーA〜Rにそれぞれ含まれる樹脂含有粒子A〜Dの種類、スラリー中の濃度、体積平均粒子径および変動係数、ならびに凝集分散剤の種類およびスラリー中の濃度を、表2に示す。表2には、凝集分散剤中のポリマー、すなわちポリアクリル酸(1)〜ポリアクリル酸(8)およびポリイタコン酸の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、カルボキシル基の中和度、およびカルボキシル基の中和塩におけるカウンターカチオンを併せて記載する。表2では、重量平均分子量を「Mw」と表記し、ガラス転移温度を「Tg」と表記する。
<試験例1>
スラリーA2940部、塩化マグネシウム60部を5Lのセパラブルフラスコに投入して良く混合し、プロペラ羽根を用いて1時間撹拌しながら、塩化マグネシウムが添加されたスラリーAの温度が室温(25℃)から70℃となるまで昇温させた。塩化マグネシウムは、イオン交換水を溶媒として作製した20%濃度の溶液を滴下することによって添加した。滴下速度は、30mL/分であった。
その後30分間スラリーAの温度を70℃に保持した後、フラスコ内に氷水を投入するとともにフラスコ自体を氷水に浸漬することによって、スラリーAを50℃まで冷却し、樹脂含有粒子Aの凝集を停止させた。樹脂含有粒子Aが凝集してなる粒子凝集体を含むスラリーを、イオン交換水にて充分洗浄して粒子凝集体を単離し、粒子凝集体を乾燥させて試験例1のトナーを得た。
<試験例2>
スラリーAを2970部、塩化マグネシウムを30部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例2のトナーを得た。
<試験例3>
スラリーAを2925部、塩化マグネシウムを75部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例3のトナーを得た。
<試験例4>
スラリーAをスラリーBに変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例4のトナーを得た。
<試験例5>
スラリーAをスラリーCに変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例5のトナーを得た。
<試験例6>
塩化マグネシウムを塩化カルシウムに変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例6のトナーを得た。
<試験例7>
スラリーAを2985部、塩化マグネシウムを15部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例7のトナーを得た。
<試験例8>
スラリーAを2910部、塩化マグネシウムを90部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例8のトナーを得た。
<試験例9>
スラリーA2940部をスラリーF2955部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を45部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例9のトナーを得た。
<試験例10>
スラリーA2940部をスラリーI2970部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を30部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例10のトナーを得た。
<実施例1>
スラリーA2940部をスラリーJ2963部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を37部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして実施例1のトナーを得た。
<実施例2>
スラリーA2940部をスラリーK2955部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を45部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして実施例2のトナーを得た。
<試験例11>
スラリーA2940部をスラリーM2970部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を30部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例11のトナーを得た。
<実施例3>
スラリー2940部をスラリーP2970部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を30部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして実施例3のトナーを得た。
<試験例12>
スラリーA2940部をスラリーQ2955部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を45部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例12のトナーを得た。
<試験例13>
スラリーA2940部をスラリーR2955部に変更し、塩化マグネシウムの配合量を45部に変更したこと以外は、試験例1と同様にして試験例13のトナーを得た。
<比較例1>
塩化マグネシウムを塩化ナトリウムに変更したこと以外は、試験例1と同様にして比較例1のトナーを得た。
<比較例2>
スラリーAをスラリーDに変更したこと以外は、試験例1と同様にして比較例2のトナーを得た。
<比較例3>
スラリーAをスラリーEに変更したこと以外は、試験例1と同様にして比較例3のトナーを得た。
以上のようにして得た試験例、実施例および比較例のトナーの物性値と、試験例、実施例および比較例のトナーの製造条件とを表3に示す。表3における金属塩添加量とは、ポリアクリル酸またはドデシルベンゼンスルホン酸100部に対する金属塩の割合(重量部)である。また試験例、実施例および比較例のトナーの特性を以下のようにして評価し、評価結果を表3に併せて示す。トナーの特性のうち、環境安定性および長期ランニング性は、キャリアであるフェライト粒子(パウダーテック社製、体積平均粒子径60μm)とトナーとを95:5(キャリア:トナー)の重量割合で混合して作製した現像剤を用いて評価した。
〔環境安定性〕
得られた現像剤を、(a)気温20℃、湿度80%の常温高湿(NH)環境下および(b)気温10℃、湿度20%の低温低湿(LL)環境下において、それぞれボールミルにて30分間撹拌した後、トナーの帯電量を測定した。(b)の低温低湿(LL)環境下でのトナーの帯電量に対する(a)の常温高湿(NH)環境下でのトナーの帯電量の比率(NH/LL)を帯電変化率として求め、環境安定性の評価指標とした。環境安定性は、帯電変化率が0.85以上である場合を非常に良好(◎)と評価し、0.80以上0.85未満である場合を良好(○)と評価し、0.70以上0.80未満である場合を利用可(△)と評価し、0.70未満である場合を不良(×)と評価した。帯電変化率が0.70以上であれば、実使用上における合格レベルと判断される。表3では、帯電変化率を「NH/LL」と表記する。
〔長期ランニング性〕
得られた現像剤を、市販のデジタルフルカラー複合機(商品名:MX−2000F、シャープ株式会社製)の現像槽に投入し、気温20℃、湿度50%の常温常湿(NN)環境下において、前述のデジタルフルカラー複合機で、A4サイズの白紙画像を10000枚印刷し、10000枚目に形成された白紙画像の白紙部分におけるかぶりの有無およびかぶりの程度を目視観察によって判断した。目視観察の結果に基づいて、トナーの長期ランニング性を評価した。トナーの長期ランニング性は、かぶりが確認されない、またはほぼかぶりが確認されない場合を良好(○)と評価し、少しかぶりが確認される程度である場合を利用可(△)と評価し、容易にかぶりが確認できる場合を不良(×)と評価した。
〔変動係数〕
前述のコールター株式会社製のコールターマルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)で測定して得られたトナーの体積粒度分布の変動係数を以下の基準で評価した。
◎:非常に良好。変動係数が25%以下である。
○:良好。変動係数が25%より大きく30%以下である。
△:利用可。変動係数が30%より大きく40%以下である。
×:不良。変動係数が40%より大きい。
〔総合評価〕
トナーの環境安定性、長期ランニング性および変動係数の評価結果を総合して、トナーの特性の総合評価を行なった。総合評価は、各評価項目における評価結果に以下の基準で点数を付け、各項目の合計点数を計算し、合計点数を評価指標として評価した。
◎:非常に良好。・・・3点
○:良好。・・・・・・2点
△:利用可。・・・・・1点
×:不良。・・・・・・0点
総合評価の評価基準は以下のようである。
A:非常に良好。各項目の合計点数が7〜9点である。
B:良好。各項目の合計点数が5〜6点である。
C:利用可。各項目の合計点数が3〜4点である。
D:不良。各項目の合計点数が0〜2点である。
表3に示すように、結着樹脂および着色剤を含む樹脂含有粒子を、アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを含む本発明の凝集分散剤と、2価以上の金属塩とを用いて凝集させて得た実施例1〜3、試験例1〜13のトナーは、変動係数が35以下と小さく、均一な大きさを有するものであった。また実施例1〜3、試験例1〜6および試験例9〜13では、2価以上の金属塩の添加量が65〜300重量部にあり、好適であるので、体積平均粒子径が4〜8μmの範囲にある粒子凝集体を得ることができ、画像形成に好ましい粒子径のトナーを得ることができた。
2価以上の金属塩を用いる代わりに1価の金属塩を用いた比較例1のトナーは、粒子凝集体の大きさにばらつきがあるとともに、金属塩の添加による樹脂含有粒子の凝集度合が小さく、粒子凝集体の大きさが小さくなったので、トナーとして使用するには不適であった。また着色剤粒子の分散径が大きく、結着樹脂粒子と着色剤粒子とを含む樹脂含有粒子Dを用いた比較例2のトナーは、変動係数が大きく、均一な粒子径の粒子凝集体を作製することができなかった。また分散剤として分子中にスルホン基を1つ有するドデシルベンゼンスルホン酸を用いた比較例3のトナーは、粒子凝集体の大きさにばらつきがあるとともに、2価以上の金属塩を使用しても樹脂含有粒子の凝集度合が小さく、粒子凝集体の大きさが小さくなったので、トナーとして使用するには不適であった。