以下、本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
[トナーの製造方法]
図1は、本発明のトナーの第1の製造方法を説明するためのフローチャートである。本発明のトナーの第1の製造方法によれば、溶融混練物を極性が互いに逆である分散剤で分散させ、2種の分散液を調製し、ヘテロ凝集させる。本発明のトナーの第1の製造方法によって製造されるトナーは、たとえば、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられる。本発明のトナーの第1の製造方法は、結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs1)と、溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)と、溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs3)と、ヘテロ凝集工程(ステップs4)とを含む。
<結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs1)>
結着樹脂、着色剤および離型剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られる溶融混練物を冷却固化させて粉砕し、必要に応じて分級することによって、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む溶融混練物を製造する。
[結着樹脂]
結着樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。アクリル樹脂は、分散が容易であるので、特に好適に用いられる。アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基もしくは親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーまたは酸性基もしくは親水性基を有するビニル系モノマーを併用することによって製造できる。アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタアクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステル、置換基を有することのあるメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基(水酸基)含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
ポリエステルは透明性に優れ、得られるトナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性、二次色再現性などを付与できるので、カラートナーの結着樹脂に特に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多価アルコールとしてもポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。またポリエステルにアクリル樹脂をグラフト化してもよい。
ポリウレタンとしては公知のものを使用でき、たとえば、酸性基または塩基性基含有ポリウレタンを好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有ポリウレタンは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、酸性基または塩基性基含有ジオール、ポリオールおよびポリイソシアネートを付加重合させればよい。酸性基または塩基性基含有ジオールとしては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸およびN−メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。ポリオールとしては、たとえば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これら各成分はそれぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
エポキシ樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基または塩基性基含有エポキシ系樹脂を好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ベースになるエポキシ樹脂にアジピン酸および無水トリメリット酸などの多価カルボン酸またはジブチルアミン、エチレンジアミンなどのアミンを付加または付加重合させることによって製造することができる。
これらの結着樹脂の中でも、細粒化を容易に実施すること、着色剤および離型剤との混練性、得られるトナー粒子の形状および大きさを均一にすることなどを考慮すると、軟化点が150℃以下の結着樹脂が好ましく、60〜150℃の結着樹脂が特に好ましい。その中でも、重量平均分子量が5000〜500000の結着樹脂が好ましい。結着樹脂は、1種を単独で使用でき、または、異なる2種以上を併用できる。さらに、同じ樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかがまたは全部が異なるものを複数種使用できる。
[着色剤]
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94およびC.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31およびC.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178およびC.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットBおよびメチルバイオレットレーキなどが挙げられる。青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16およびC.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGおよびC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白および硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して3〜10重量部使用する。
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナー原料に用いられる結着樹脂と同種の結着樹脂、またはトナー原料に用いられる結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒子径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。着色剤がマスターバッチとして使用されると、結着樹脂中での着色剤の分散性が向上し、後述の工程を経て得られるトナー中に、着色剤を均一に微分散させることができる。
[離型剤]
また本実施の形態では、トナー原料は離型剤を含む。トナー原料に離型剤を含ませることによって、高温オフセットを防止することができる。高温オフセットとは、定着用加熱ローラでトナーを加熱して定着を行う熱ローラ定着法において、定着時にトナーが過剰に溶融されて、溶融されたトナーの一部が定着用加熱ローラに融着して取去られることである。
離型剤としては、たとえば、ワックスなどが挙げられる。ワックスとしては、たとえば、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックス、パラフィンワックスなどの石油系ワックス、アルコール系ワックス、エステル系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、結着樹脂との親和性に優れるカルナバワックスが好ましい。
離型剤の融点は、80℃以下であることが好ましい。離型剤の融点が80℃を超えると、加熱ローラでトナーを加熱して記録媒体に定着させるときに、離型剤が溶融せず、記録媒体にトナーが定着されない低温オフセットを発生するおそれがある。したがって融点が80℃以下の離型剤を用いることによって、低温オフセットを防止することができる。また離型剤の融点が80℃以下であると、トナー全体としての軟化点が低下し、低温定着性が向上する。これによって、ヒータなどの加熱手段を用いて定着させる定着手段による消費電力を低減することができる。
また離型剤の融点は、60℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。離型剤の融点が60℃未満であると、溶融混練工程において離型剤が溶融し、離型剤の粘性と結着樹脂の粘性との差が大きくなるので、結着樹脂中に離型剤を分散させることが困難となるおそれがある。また画像形成装置内でトナー粒子同士が凝集し、保存安定性が低下するおそれがある。したがって融点が60℃以上80℃以下の離型剤を用いることによって、離型剤が結着樹脂中に均一に分散して保存安定性に優れるとともに、低温オフセットを防止することができるトナーを得ることができる。
離型剤は、結着樹脂100重量部に対して3重量部以上15重量部以下で含まれることが好ましい。離型剤が3重量部未満であると、離型性を充分に発揮することができず、高温オフセットが発生するおそれがある。離型剤が15重量部を超えると、感光体表面に離型剤の薄い膜を形成するフィルミングが発生するおそれがある。したがって離型剤の割合を、結着樹脂100重量部に対して3重量部以上15重量部以下とすることによって、フィルミングおよび高温オフセットの発生を防止することができる。また離型剤は、結着樹脂100重量部に対して5重量部以上15重量部以下の割合で含まれることがさらに好ましい。離型剤がこのような割合で含まれると、フィルミングおよび高温オフセットの発生を確実に防止することができる。
[帯電制御剤]
またトナー原料には、帯電制御剤などの添加剤が加えられてもよい。帯電制御剤を加えることによって、環境変化に対する帯電量を安定制御できる。帯電制御剤としては電子写真分野で常用される正帯電制御剤および負帯電制御剤を使用できる。正帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
まず前述の結着樹脂、着色剤および離型剤、ならびに必要に応じて用いられる帯電制御剤などの添加剤を含むトナー原料を、混合機で乾式混合する。その後、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して溶融混練する。これによって結着樹脂が軟化され、結着樹脂中に着色剤、離型剤などが分散される。結着樹脂、着色剤および離型剤を含むトナー原料は、乾式混合されることなくそのまま溶融混練されてもよいけれども、乾式混合した後に溶融混練を行う方が、着色剤、離型剤などの結着樹脂以外のトナー原料の結着樹脂中での分散性を向上させ、得られるトナーの帯電性能などの特性を均一にすることができるので好ましい。
乾式混合に用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
溶融混練には、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミルなどの混練機を用いることができ、このような混練機としては、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機などが挙げられる。溶融混練は、複数の混練機を用いて行っても構わない。
結着樹脂、着色剤および離型剤ならびに必要に応じて加えられる添加剤を溶融混練することによって、着色剤、離型剤および添加剤を結着樹脂中に均一に分散させる。着色剤および離型剤が、製造すべき溶融混練物の体積平均粒子径0.4〜2.0μmよりも充分に小さくなるように、着色剤および離型剤を結着樹脂中に均一に分散させることが好ましい。着色剤および離型剤を結着樹脂中に均一に分散させるためには、混練温度を好適な温度に設定することが好ましい。
オープンロール方式の混練機を例として、好適な混練温度について説明する。オープンロール式混練機を用いる場合、ロールの原料混合物供給側および溶融混練物取出側の温度を適宜設定することによって、結着樹脂中に着色剤および離型剤を微分散させることができる。溶融混練の温度は、加熱ロールの原料混合物供給側の温度が結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度以下となるように設定されることが好ましい。また具体的には、たとえば結着樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移点:56℃、軟化点:110℃)が用いられる場合、加熱ロールの原料混合物供給側の温度を140℃以上170℃以下に設定し、冷却ロールの原料混合物供給側の温度を40℃以上70℃以下に設定することが好ましい。このように混練温度を好適に設定することによって、溶融混練物の粘度を好適にすることができ、充分なせん断力を溶融混練物に付与することができるので、着色剤および離型剤を、製造すべき溶融混練物の体積平均粒子径0.4〜2.0μmよりも充分に小さい大きさで結着樹脂中に均一に分散させることができる。トナー中で分散する着色剤は、着色剤粒子の分散径が100nm(0.01μm)以上500nm(0.5μm)以下であることが好ましい。
得られた結着樹脂、着色剤および離型剤を含む溶融混練物は、冷却固化の後、粗粉砕されることが好ましい。溶融混練物を分散剤によって分散させる前に、溶融混練物の固化物を予め粗粉砕し、好ましい大きさとする。粗粉砕の程度は、高圧ホモジナイザの種類などによって決定されるが、溶融混練物の体積平均粒子径を100μm程度とするように、粗粉砕することが好適である。体積平均粒子径が100μmよりも大きくなり過ぎると、後述の溶融混練物のアニオン分散液作製工程および溶融混練物のカチオン分散液作製工程の分散工程においてアニオン分散液およびカチオン分散液中での溶融混練物の沈降速度が大きくなり、溶融混練物の分散状態を均一に保つことが困難である。また敢えて工程数を増加させて100μmよりも小さくなり過ぎる程度まで処理する必要はない。溶融混練物の固化物の粗粉砕方法は特に限定されない。溶融混練物の固化物の粗粉砕は、たとえば、クラッシャー、ハンマーミル、アトマイザー、フェザーミル、ジェットミルなどを用いて行う。
溶融混練物の粗粉砕は、次の溶融混練物のアニオン分散液作製工程および溶融混練物のカチオン分散液作製工程で、溶融混練物と水性媒体とを混合後に行われてもよい。
<溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)>
溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)は、分散段階と、細粒化段階とを含む。
分散段階では、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む溶融混練物と、水性媒体と、アニオン系分散剤とを混合し、たとえば常温環境にてアニオン系分散剤の存在下、水性媒体中に溶融混練物を分散させて、溶融混練物の分散液を得る。水性媒体としては、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができる純水を用いることが好ましい。
細粒化段階では、さらに分散液を加熱加圧下で剪断力を与えながら攪拌することによって、溶融混練物を所望の大きさにまで細粒化する。
溶融混練物は、水性媒体100重量部に対して3重量部以上40重量部以下の割合で使用されることが好ましい。また溶融混練物は、水性媒体100重量部に対して5重量部以上25重量部以下の割合で使用されることがさらに好ましい。
溶融混練物の割合が3重量部未満であると、溶融混練物の濃度が希薄であり、後述のヘテロ凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。また溶融混練物の使用割合が40重量部を超えると、溶融混練物同士の距離が短くなり過ぎ、好ましい凝集度合とすることが困難となるおそれがある。また分散液の粘度が高くなり過ぎ、充分に分散液を攪拌することができなくなる。したがって溶融混練物の割合を上記範囲とすることによって、後述のヘテロ凝集工程における粒子の凝集度合を好適にすることができる。これによって、好適な大きさのトナーを得ることができる。
アニオン系分散剤としては公知のものを使用できるけれども、スルホン酸型アニオン系分散剤、硫酸エステル型アニオン系分散剤、ポリオキシエチレンエーテル型アニオン系分散剤、リン酸エステル型アニオン系分散剤、ポリアクリル酸塩などが挙げられる。アニオン系分散剤の具体例としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどを好ましくは使用できる。アニオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
特にアニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを含むアニオン系分散剤であることが好ましい。このようなアニオン系分散剤の存在下で粒子を水性媒体に添加すると、アニオン性極性基が水性媒体中の水分子と水素結合するので、水性媒体中に投入された粒子が分散する。これによって粒子の分散液が得られる。またドデシルベンゼンスルホン酸に代表される低分子量のアニオン系分散剤を少量添加して併用することも出来る。
アニオン系分散剤は、溶融混練物100重量部に対して3重量部以上10重量部以下の割合で使用されることが好ましい。アニオン系分散剤の使用割合が3重量部未満であると、溶融混練物に対してアニオン系分散剤の量が少なくなり過ぎ、溶融混練物の分散性が低下する。またアニオン系分散剤の使用割合が10重量部を超えると、溶融混練物に対してアニオン系分散剤の量が多くなり過ぎ、溶融混練物の分散性が高くなり過ぎて後述のヘテロ凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。
分散段階は、たとえば、高圧ホモジナイザまたはコロイドミルのタンク内に水性媒体、アニオン系分散剤および溶融混練物を投入し撹拌することによって行われる。分散段階が実施される時間は、特に制限されないけれども、好ましくは5分間以上30分間以下である。分散段階の実施時間をこのような範囲とすることによって、溶融混練物を水性媒体中に充分に分散させることができる。
あるいは分散段階は、たとえば高圧ホモジナイザまたはコロイドミルのタンク内に水性媒体および溶融混練物を投入し、溶融混練物をよく粉砕してから、さらにアニオン性分散剤を投入し攪拌することによって行われる。分散段階が実施される時間は、特に制限されないけれども、アニオン性分散剤を投入する前の粉砕時間は好ましくは5分間以上30分間以下である。またその後の攪拌時間は好ましくは5分間以上30分間以下である。分散段階の実施時間をこのような範囲とすることによって、溶融混練物を水性媒体中に充分に分散させることができる。
分散段階で得られる分散液は、細粒化段階に供される。細粒化段階では、分散液に含まれる溶融混練物を細粒化する。具体的には、溶融混練物をさらに細粒化して、溶融混練物の体積平均粒子径を0.4μm以上2.0μm以下とする。細粒化段階では、加熱加圧下で分散液内の溶融混練物を粉砕した後、分散液を冷却減圧する。
細粒化段階は、たとえば高圧ホモジナイザ法によって行われる。高圧ホモジナイザ法とは高圧ホモジナイザ等を用いて加圧下に溶融混練物の細粒化を行う方法であり、高圧ホモジナイザとは加熱加圧下に粒子を粉砕する装置である。
次いで、溶融混練物が粉砕された後の分散液を冷却し、気泡が発生しない圧力まで徐々に減圧する。減圧は、段階的に徐々に行うのが好ましい。冷却温度および圧力には制限はないけれども、40℃以下にまで冷却し、分散液を大気圧にまで減圧することが好ましい。このように、粉砕直後に分散液を冷却し、引き続いて分散液を気泡の発生が起こらない圧力まで減圧することによって、分散液中での気泡の発生ひいては溶融混練物の再凝集による粗大化が防止される。
このような粉砕と冷却減圧とを行う細粒化段階は、必要に応じて複数回が繰返し実施されてもよい。細粒化段階は、分散液中の溶融混練物の体積平均粒子径が0.4μm以上2.0μm以下になるまで実施される。溶融混練物の体積平均粒子径が0.4μm未満であると、溶融混練物が小さくなりすぎ、溶融混練物の結着樹脂中に着色剤および離型剤が均一に分散されていないおそれがある。また溶融混練物の体積平均粒子径が2.0μmを超えると、たとえば4μm以上8μm以下の小粒径のトナーを形成することが困難となるおそれがある。上記のような小粒径のトナーの形成には、溶融混練物の体積平均粒子径が0.4μm以上1.0μm以下であることがさらに好ましい。
分散段階および細粒化段階で用いられる高圧ホモジナイザとしては、市販品など公知のものを使用できる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、泡レスミキサー(商品名、株式会社美粒製)などが挙げられる。
また回転力または回転力と剪断力との付与を行う高速回転分散型造粒機を用いることもできる。高速回転分散型造粒機は、たとえば市販品では、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、T.K.ホモミクサーMARK II(商品名、プライミクス株式会社製)などが挙げられる。このような造粒機は、ダブルモーション方式またはシングルモーション方式の造粒機または乳化機とも呼ばれる。これらは、ポンプの役割も兼ねる。これらの造粒機は、タービンの高速回転によって生じる吸入口と吐出口との間の圧力差を利用して、処理液(分散液)を吸入口より吸入する。吸入された分散液はタービンの回転によって生じる強力な剪断力・破砕・衝撃・乱流などの作用によって、微粒化・混合・攪拌・乳化・分散を行うことができる。
その他に、バッチ式の乳化機、分散機などの一般的な混合装置を用いてもよい。乳化機および分散機には、加熱手段、分散液に剪断力を付与できる撹拌手段、回転手段、保温手段を有する混合槽などが備えられている。乳化機および分散機の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、T.K.オートホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、T.K.パイプラインホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、T.K.ホモミックラインフロー(商品名、プライミクス株式会社製)、T.K.フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名:太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、T.K.フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)が挙げられる。
<溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs3)>
前述した溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)と重複する記載は省略する場合がある。
カチオン系分散剤としては公知のものを使用できるけれども、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤などが好ましい。これらの中でも、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤がさらに好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤の具体例としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。カチオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
特に1価〜3価の金属塩を含むことが好ましい。このようなカチオン系分散剤の存在下で粒子を水性媒体に添加すると、水性媒体中に投入された粒子が分散する。これによって粒子の分散液が得られる。
たとえば1価では塩化ナトリウムなどナトリウムを含むものが挙げられる。2価では塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどのマグネシウムやカルシウムを含むものが挙げられる。3価では塩化アルミニウムなどのアルミニウムを含むものが挙げられる。2価のものの中で特に炭酸カルシウムは、水への溶解度が低く、効果が穏やかであるので補助的に用いると好ましい。一方水酸化物などの強塩基性を示すものは、加熱することによって、樹脂が加水分解を起こすので好ましくない。
カチオン系分散剤は、溶融混練物100重量部に対して2重量部以上6重量部以下の割合で使用されることが好ましい。カチオン系分散剤の使用割合が2重量部未満であると、溶融混練物に対してカチオン系分散剤の量が少なくなり過ぎ、溶融混練物の分散性が低下する。またカチオン系分散剤の使用割合が6重量部を超えると、溶融混練物に対してカチオン系分散剤の量が多くなり過ぎ、溶融混練物の分散性が高くなり過ぎて後述のヘテロ凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。
またステップs2で用いられるアニオン系分散剤と、ステップs3で用いられるカチオン系分散剤との使用割合は特に制限されない。ただし、凝集粒子の粒径制御の容易性、凝集の起こり易さ、過凝集の発生防止、凝集粒子の粒度分布幅のさらなる狭小化などを考慮すると、アニオン系分散剤とカチオン系分散剤とを、重量比で、好ましくは3:2〜5:1の割合で用いるのがよい。
<へテロ凝集工程(ステップs4)>
溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)で得られたアニオン分散液と、溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs3)で得られたカチオン分散液とを混合して、ヘテロ凝集させる。
各溶融混練物は、それぞれアニオン系分散剤またはカチオン系分散剤によって分散させられているので、それぞれ負または正に帯電してイオンとなって分散液中に分散している。各溶融混練物は互いに反対符号のイオンの吸着により中和されることによって、凝集する。
ヘテロ凝集は、融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)や、溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs3)を行うために用いた装置と同じもので行うことができる。
ヘテロ凝集工程では、凝集剤を添加することが好ましい。本発明では、分散剤が凝集剤としても作用するが、凝集剤の添加がなければ、凝集力が弱いので、後述する体積平均粒子径が4μm以上8μm以下のトナーにまで成長させるためには凝集剤を加えることが好ましい。凝集剤としては、金属塩を用いることが好ましい。金属塩としては、1価の金属では、たとえばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、2価の金属では、たとえばカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の2価の金属塩、3価の金属では、鉄、アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。これら金属塩の具体例として、1価の金属塩としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等、2価の金属塩としては塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化亜鉛等、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、3価の金属塩としては塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄等を用いることが可能である。これらは目的に応じて適宜選択される。これらの中でも、ナトリウム塩はイオンの価数が1価で、イオン価数が2価であるマグネシウム塩等およびイオン価数が3価であるアルミニウム塩等よりも凝集速度が緩やかで、凝集粒子の粒子径を制御するには最適である。金属塩は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。凝集剤の使用量は、結着樹脂と着色剤と離型剤との合計量100重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜18重量部、特に好ましくは1.0〜18重量部である。0.5重量部未満では凝集効果が不十分になるおそれがあり、20重量部を超えるとトナーが大きくなりすぎるおそれがある。
トナーが好ましい大きさ、たとえば体積平均粒子径が4μm以上8μm以下になると、分散液からトナーを単離し、純水で洗浄する。その後トナーを乾燥させる。分散液からトナーを単離する方法としては、濾過、遠心分離などの一般的な分離手段が挙げられる。洗浄に用いる純水は、導電率が20μS/cm以下であることが好ましい。このような純水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができる。また純水の水温は10〜80℃程度が好ましい。洗浄は、たとえば、洗液(洗浄後の水)の導電率が50μS/cm以下になるまで行えばよい。
このようなトナーの製造方法によれば、分散剤によって、溶融混練物を分散させているので、溶融混練物の分散性を向上させ、溶融混練物の造粒をより容易に行なうことができる。さらに極性が互いに逆である分散剤で溶融混練物を分散させた2種の分散液を混合してヘテロ凝集させているので、溶融混練物が凝集するときに、極性が互いに逆である分散剤によって極性が互いに逆になっている溶融混練物同士が互いに引き寄せ合い、凝集しやすくなる。このように分散剤が凝集剤としても作用する。したがって凝集剤の添加量を少なくすることができ、凝集剤のトナー内部残存量を最小限に抑えることができる。これによって多量の凝集剤によって、過凝集が起こり必要以上に粒径が大きいトナーが生成することを防ぎ、粒度分布の幅が広くなることを防ぐ。このようにして製造されるトナーは、トナー中の着色剤や離型剤の分布の偏りがなく、高度に微分散されているため、定着性が良好で、透明性が高く、着色力も高い。また極性が互いに逆である溶融混練物を短時間で凝集させることができ、生産性が向上する。
図2は、本発明のトナーの第1の製造方法を説明するための概略図である。
図2(a)は、ヘテロ凝集前の溶融混練物1と溶融混練物2とを示す。溶融混練物1および2は、それぞれ結着樹脂3a,3b、着色剤4a,4b、離型剤5a,5bを含んで構成される。着色剤および離型剤は結着樹脂中に分散されている。溶融混練物1は、アニオン系分散剤6によって、負に帯電しており、溶融混練物2は、カチオン系分散剤7によって、正に帯電している。
図2(b)は、ヘテロ凝集後の凝集体8を示す。溶融混練物1および2が複数凝集して、凝集体8が形成される。
図2(c)は、凝集体8を加熱後のトナー9を示す。凝集体8は加熱されることによって、融着し、円形状のトナー9が形成される。
図3は、本発明のトナーの第2の製造方法を説明するためのフローチャートである。本発明のトナーの第2の製造方法によれば、溶融混練物と離型剤とを極性が互いに逆である分散剤で分散させ、2種の分散液を調製し、ヘテロ凝集させる。本発明のトナーの第2の製造方法は、結着樹脂および着色剤含有溶融混練物作製工程(ステップs5)と、溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs6)と、離型剤のカチオン分散液作製工程(ステップs7)と、ヘテロ凝集工程(ステップs8)とを含む。
前述した本発明のトナーの第1の製造方法と重複する記載は省略する場合がある。
<結着樹脂および着色剤含有溶融混練物作製工程(ステップs5)>
溶融混練物が離型剤を含有しないこと以外は、結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs1)と同様である。
<溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs6)>
溶融混練物が結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物ではなく結着樹脂および着色剤含有溶融混練物であること以外は、溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)と同様である。
<離型剤のカチオン分散液作製工程(ステップs7)>
離型剤のカチオン分散液作製工程では、離型剤と、水性媒体と、カチオン系分散剤とを混合し、たとえば常温環境にてカチオン系分散剤の存在下、水性媒体中に離型剤を分散させて、離型剤の分散液を得る。離型剤は、ステップs1と同様ものを用いることができる。水性媒体としては、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などの公知の方法によって得ることができる純水を用いることが好ましい。
離型剤は、溶融混練物100重量部に対して3重量部以上50重量部以下の割合で使用されることが好ましい。また離型剤は、溶融混練物100重量部に対して5重量部以上25重量部以下の割合で使用されることがさらに好ましい。
離型剤の割合が3重量部未満であると、離型剤の濃度が希薄であり、後述のヘテロ凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。また離型剤の使用割合が50重量部を超えると、離型剤同士の距離が短くなり過ぎ、好ましい凝集度合とすることが困難となるおそれがある。また分散液の粘度が高くなり過ぎ、充分に分散液を攪拌することができなくなる。したがって離型剤の割合を上記範囲とすることによって、後述のヘテロ凝集工程における粒子の凝集度合を好適にすることができる。これによって、好適な大きさのトナーを得ることができる。
カチオン系分散剤としては公知のものを使用できるけれども、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤などが好ましい。これらの中でも、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤がさらに好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤の具体例としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。カチオン系分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
特に1価〜3価の金属塩を含むことが好ましい。このようなカチオン系分散剤の存在下で粒子を水性媒体に添加すると、水性媒体中に投入された粒子が分散する。これによって粒子の分散液が得られる。
たとえば1価では塩化ナトリウムなどナトリウムを含むものが挙げられる。2価では塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどのマグネシウムやカルシウムを含むものが挙げられる。3価では塩化アルミニウムなどのアルミニウムを含むものが挙げられる。2価のものの中で特に炭酸カルシウムは、水への溶解度が低く、効果が穏やかであるので補助的に用いると好ましい。一方水酸化物などの強塩基性を示すものは、加熱することによって、樹脂が加水分解を起こすので好ましくない。
カチオン系分散剤は、離型剤100重量部に対して2重量部以上6重量部以下の割合で使用されることが好ましい。カチオン系分散剤の使用割合が2重量部未満であると、離型剤に対してカチオン系分散剤の量が少なくなり過ぎ、離型剤の分散性が低下する。またカチオン系分散剤の使用割合が6重量部を超えると、離型剤に対してカチオン系分散剤の量が多くなり過ぎ、離型剤の分散性が高くなり過ぎて後述のヘテロ凝集工程における凝集が困難となるおそれがある。
またステップs6で用いられるアニオン系分散剤と、ステップs7で用いられるカチオン系分散剤との使用割合は特に制限されない。ただし、凝集粒子の粒径制御の容易性、凝集の起こり易さ、過凝集の発生防止、凝集粒子の粒度分布幅のさらなる狭小化などを考慮すると、アニオン系分散剤とカチオン系分散剤とを、重量比で、好ましくは3:2〜5:1の割合で用いるのがよい。
離型剤のカチオン分散液作製工程は、たとえば、高圧ホモジナイザまたはコロイドミルのタンク内に水性媒体、カチオン系分散剤および離型剤を投入し撹拌することによって行われる。分散段階が実施される時間は、特に制限されないけれども、好ましくは5分間以上30分間以下である。分散段階の実施時間をこのような範囲とすることによって、離型剤を水性媒体中に充分に分散させることができる。
あるいは分散段階は、たとえば高圧ホモジナイザまたはコロイドミルのタンク内に水性媒体および離型剤を投入し、離型剤をよく粉砕してから、さらにカチオン性分散剤を投入し攪拌することによって行われる。分散段階が実施される時間は、特に制限されないけれども、カチオン性分散剤を投入する前の粉砕時間は好ましくは5分間以上30分間以下である。またその後の攪拌時間は好ましくは5分間以上30分間以下である。分散段階の実施時間をこのような範囲とすることによって、離型剤を水性媒体中に充分に分散させることができる。
高圧ホモジナイザとしては、市販品など公知のものを使用できる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、泡レスミキサー(商品名、株式会社美粒製)などが挙げられる。
また回転力または回転力と剪断力との付与を行う高速回転分散型造粒機を用いることもできる。高速回転分散型造粒機は、たとえば市販品では、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、T.K.ホモミクサーMARK II(商品名、プライミクス株式会社製)などが挙げられる。このような造粒機は、ダブルモーション方式またはシングルモーション方式の造粒機または乳化機とも呼ばれる。これらは、ポンプの役割も兼ねる。これらの造粒機は、タービンの高速回転によって生じる吸入口と吐出口との間の圧力差を利用して、処理液(分散液)を吸入口より吸入する。吸入された分散液はタービンの回転によって生じる強力な剪断力・破砕・衝撃・乱流などの作用によって、微粒化・混合・攪拌・乳化・分散を行うことができる。
その他に、バッチ式の乳化機、分散機などの一般的な混合装置を用いてもよい。乳化機および分散機には、加熱手段、分散液に剪断力を付与できる撹拌手段、回転手段、保温手段を有する混合槽などが備えられている。乳化機および分散機の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、T.K.オートホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、T.K.パイプラインホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、T.K.ホモミックラインフロー(商品名、プライミクス株式会社製)、T.K.フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名:太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、T.K.フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)が挙げられる。
<ヘテロ凝集工程(ステップs8)>
ヘテロ凝集工程(ステップs4)と同様である。
また、特に離型剤を含む分散液に、混練物を含む分散液を混合してヘテロ凝集させることが好ましい。これによって確実に離型剤を内包化させることができる。また処理液の粘度を適度な範囲に調整できるため、トナー粒径の制御が容易となる。
このようなトナーの製造方法によれば、分散剤によって、溶融混練物および離型剤を分散させているので、溶融混練物の分散性を向上させ、溶融混練物の造粒をより容易に行なうことができる。さらに極性が互いに逆である分散剤で溶融混練物と、離型剤とを分散させた2種の分散液を混合してヘテロ凝集させているので、溶融混練物と離型剤とが凝集するときに、極性が互いに逆である分散剤によって、極性が互いに逆になっている溶融混練物と離型剤とが互いに引き寄せ合い、凝集しやすくなる。このように分散剤が凝集剤としても作用する。したがって凝集剤の添加量を少なくすることができ、凝集剤のトナー内部残存量を最小限に抑えることができる。これによって多量の凝集剤によって、過凝集が起こり必要以上に粒径が大きいトナーが生成することを防ぎ、粒度分布の幅が広くなることを防ぐ。このようにして製造されるトナーは、トナー中の着色剤や離型剤の分布の偏りがなく、高度に微分散されているため、定着性が良好で、透明性が高く、着色力も高い。また離型剤を溶融混練物に内包させることができるため、トナー表面における離型剤の含有量が少なくなり、ワックスブリードやブロッキング等を防止することができる。また極性が互いに逆である溶融混練物と離型剤とを短時間で凝集させることができ、生産性が向上する。
このように、負帯電用トナーを作製する場合は、離型剤がカチオン系分散剤で分散させられることが好ましい。
負帯電用トナーの場合、カチオン系分散剤によって分散させられている離型剤は、アニオン系分散剤によって分散させられている溶融混練物に内包されているので、トナー表面にはアニオン系分散剤が多く含まれている。トナー表面にアニオン系分散剤が残存してしまっていても、トナーの極性と分散剤の極性が同じなので、トナーの帯電性への影響を少なくすることができる。
逆に、正帯電用トナーを作製する場合は、離型剤がアニオン系分散剤で分散させられることが好ましい。
正帯電用トナーの場合、アニオン系分散剤によって分散させられている離型剤は、カチオン系分散剤によって分散させられている溶融混練物に内包されているので、トナー表面にはカチオン系分散剤が多く含まれている。トナー表面にカチオン系分散剤が残存してしまっていても、トナーの極性と分散剤の極性が同じなので、トナーの帯電性への影響を少なくすることができる。
図4は、本発明のトナーの第2の製造方法を説明するための概略図である。
図4(a)は、ヘテロ凝集前の溶融混練物11と離型剤12とを示す。溶融混練物11は、結着樹脂13、着色剤14を含んで構成される。着色剤は結着樹脂中に分散されている。溶融混練物11は、アニオン系分散剤16によって、負に帯電しており、離型剤12は、カチオン系分散剤17によって、正に帯電している。
図4(b)は、ヘテロ凝集後の凝集体18を示す。溶融混練物11および離型剤12が複数凝集して、凝集体18が形成される。
図4(c)は、凝集体18を加熱後のトナー19を示す。凝集体18は加熱されることによって、融着し、円形状のトナー19が形成される。
図5は、トナー19の概略図である。離型剤12は、溶融混練物11に内包されている。
離型剤12の体積平均粒径をa(μm)、溶融混練物11の体積平均粒径をb(μm)、トナー19中の離型剤12の含有率をc(%)、トナー19の体積平均粒径をdとするとき、a,b,cおよびdの関係が、下記式(1)および(2)を満たすことが好ましい。
a/10≦b≦(d−a)/2 …(1)
100{a/(a+2b)}3≧c …(2)
式(1)を満たしていれば、離型剤12と溶融混練物11が凝集しやすくなり、離型剤12を溶融混練物11に内包させることができるため、トナー19表面における離型剤12の含有量が少なくなり、ワックスブリードやブロッキング等の発生を防止することができる。bがa/10未満だと、離型剤12と溶融混練物11とが凝集しにくくなる。またbが(d−a)/2を超えると、離型剤12を十分に溶融混練物11に内包させることができていないため、ワックスブリードやブロッキング等が発生するおそれがある。
式(2)を満たしていれば、離型剤12を十分に溶融混練物11に内包させることができているので、ワックスブリードやブロッキング等の発生を防止することができる。
式(1)について説明する。少なくとも離型剤12の周りに、溶融混練物11の層が1層形成されていれば、dが、a+2bよりも小さくなることはないので、下記式(3)の関係が成り立つ。
d≧a+2b …(3)
式(3)をbについて解くと、下記式(4)となる。
b≦(d−a)/2 …(4)
式(4)において、両辺が等しいときは、離型剤12の表面に混練物11の層が1層存在する。左辺の値が右辺の値の2分の1のときは、離型剤12の周りに混練物11の層が2層存在する。
またbの下限については、aに比べてあまりに小さいと凝集しにくくなるので、たとえばaの1/10以上とすることが好ましい。bがaの1/10未満になるまで、凝集前の混練物11を粉砕すると、混練物11の微粒子からさらに微粉が発生することになり、混練物11の粒度分布の幅が広くなり好ましくない。
式(2)について説明する。離型剤含有率cは、下記式(5)のように表すことができる。
c=100(a/d)3 …(5)
式(3)および式(5)から、式(2)を導き出すことができる。
式(2)において、両辺が等しいときは、離型剤12の周りを混練物11の層が1層存在する。また離型剤12の周りを混練物11の層が2層以上存在すると、bの値は小さくなるので、左辺括弧内の分母が小さくなり、左辺の値は右辺の値よりも大きくなる。したがって両辺が等しいとき、bは最大値をとるので左辺の値は最小値をとり、bが小さくなると左辺の値は大きくなる。
図6は、本発明のトナーの第3の製造方法を説明するためのフローチャートである。本発明のトナーの第3の製造方法は、上述の本発明のトナーの第1または2の製造方法に、さらに加熱工程を含む。本発明のトナーの第3の製造方法は、結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs9)と、溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs10)と、溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs11)と、ヘテロ凝集工程(ステップs12)と、加熱工程(ステップ13)とを含む。
<結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs9)>
結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製工程(ステップs1)と同様である。
<溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs10)>
溶融混練物のアニオン分散液作製工程(ステップs2)と同様である。
<溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs11)>
溶融混練物のカチオン分散液作製工程(ステップs3)と同様である。
<ヘテロ凝集工程(ステップs12)>
ヘテロ凝集工程(ステップs4)と同様である。
<加熱工程(ステップs13)>
加熱工程では、分散液を加熱することによって、トナーの形状を制御する。加熱することによって、トナー形状を球形から異形まで広く制御することが可能となり、優れた帯電性、転写性およびクリーニング性が得られる。
加熱工程での加熱温度は結着樹脂のガラス転移温度以上で、かつ結着樹脂の軟化点以下である。このような温度範囲で造粒することにより、トナー形状を球形から異形まで広く制御することが可能となり、転写性やクリーニング性に優れた、所望の形状をしたトナーを得ることができる。
加熱方法としては、反応容器を電熱線によって加熱する方法や、反応容器の周りに一層空間層を設けて、その空間層に蒸気やホットオイルを流して加熱する方法がある。
加熱の際には、反応容器内の粒子に剪断力を加えることによって、粒子を分散混合しながら加熱することが好ましい。
たとえば流速の遅い配管を配管外側から加熱すると、加熱箇所の配管内側に粒子の過凝集物が付着し、過凝集物の複雑な表面に新たな過凝集物が成長する基点が多く存在するために、さらに過凝集が進み、過凝集塊が成長して粗粒が発生してしまう。このようなことを防ぐために、粒子を分散状態に保っておくことが好ましい。
また反応容器内に粒子が互いに融着しあうほどの粘度を示すときに、剪断力を加えることによって、粒子同士が融着して粗粒が発生することを防ぎ、粒度分布の悪化を防ぐことができる。これらのことは、逆の冷却工程においても同じことがいえる。
本発明のトナーの第1〜3の製造方法で得られるトナーに、外添剤を添加して表面改質を施してもよい。外添剤としては公知のものを使用できる。外添剤としては、たとえば、シリカ、酸化チタン、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理したシリカ、酸化チタンなどが挙げられる。さらに外添剤の使用量は好ましくはトナー100重量部に対して1重量部以上10重量部以下である。
前述の製造方法によって製造されたトナーは、トナー中の着色剤や離型剤の分布の偏りがなく、高度に微分散されているため、定着性が良好で、透明性が高く、着色力も高い。
透明シート上にトナー膜として成膜された状態で、波長域400nm〜700nmにおける最大吸収波長の透過率が3%となる膜厚を有するトナー膜の最大透過波長の透過率が85%以上である。このようなトナーは、透明性が高い。
トナーの分光透過特性は、以下のようにして測定される。少なくとも結着樹脂および着色剤を含んで成るカラートナーを透明シート上に均一に載せた後、結着樹脂の軟化温度よりも20℃〜60℃高い温度に設定されたオーブン中に所定時間放置して定着させることによって、膜厚Lの平滑なトナー膜を形成する。形成されたトナー膜について、一般的な分光光度計(商品名:U−3200、株式会社日立製作所製など)を用い、波長400nm〜700nmにおける分光透過特性を測定する。なお、透明シートには、OHP用の透明シート(以下「OHPシート」という)、たとえばシャープ株式会社製のCX7A4C(品番)などを用いる。
このようにして測定される分光透過特性の測定結果から、最大吸収波長の透過率(%)が以下のようにして求められる。トナー膜の波長400nm〜700nmにおける分光透過特性の測定結果を、横軸に光の波長(nm)、縦軸に透過率T(%)をプロットしたグラフと、横軸に光の波長(nm)、縦軸に吸光度をプロットしたグラフとに表す。吸光度のプロットされたグラフから、吸光度が最大の値を示す波長を最大吸収波長として求め、この最大吸収波長の透過率(%)を、透過率T(%)のプロットされたグラフから求める。
次に、膜厚の異なる数種類のトナー膜について、前述のようにして最大吸収波長の透過率T(%)を求める。トナー膜の膜厚は、5〜20μmの範囲から任意に選択される。トナー膜の膜厚(μm)に対する最大吸収波長の透過率(%)の常用対数値(logT)から、最小二乗近似によってトナー膜の膜厚(μm)と最大吸収波長の透過率(%)の常用対数値(logT)との相関関係を表す1次直線の式を算出する。
前記の式において最大吸収波長の透過率が3%となる膜厚を有するトナー膜の最大透過波長の透過率は、以下のようにして求められる。前述の最小二乗近似によって算出された1次直線の式から、最大吸収波長の透過率が3%となる膜厚を算出する。算出された膜厚を有するトナー膜を前述のようにして透明シート上に形成する。形成されたトナー膜について、前述のようにして波長400nm〜700nmにおける分光透過特性を測定し、測定結果を、横軸に光の波長(nm)、縦軸に透過率T(%)をプロットしたグラフに表す。得られたグラフから、透過率Tが最大値を示す波長を最大透過波長として求め、この波長の透過率Tを最大透過波長の透過率(%)として求める。
トナーは、一成分系現像剤としても二成分系現像剤としても使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いず、トナーのみで使用し、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることで搬送して画像形成を行う。
またトナーを二成分系現像剤として使用する場合、トナーはキャリアとともに用いられる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガンおよびクロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられ、トナー成分に応じて選択するのが好ましい。また被覆物質は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの体積平均粒子径は、好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm2)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
図7は、画像形成装置100の構成の一例を模式的に示す断面図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置100は、トナー像形成手段20と、転写手段30と、定着手段40と、記録媒体供給手段50と、排出手段60とを含む。トナー像形成手段20を構成する各部材および転写手段30に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段20は、感光体ドラム21と、帯電手段22と、露光ユニット23と、現像手段24と、クリーニングユニット25とを含む。帯電手段22、現像手段24およびクリーニングユニット25は、感光体ドラム21まわりに、この順序で配置される。帯電手段22は、現像手段24およびクリーニングユニット25よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム21は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む潜像担持体である。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、少なくとも導電性粒子または導電性ポリマーのいずれかを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けることが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、少なくとも低温環境下または低湿環境下のいずれかにおける感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光層表面を保護する保護層を設けた耐久性に優れる三層構造の積層感光層であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、少なくともフローレン環またはフルオレノン環のいずれかを含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部〜500重量部、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、さらに好ましくは0.1μm〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送層中の結着樹脂100重量部に対して10重量部〜300重量部、さらに好ましくは30重量部〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と記す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれることが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm〜50μm、さらに好ましくは15μm〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段22は、感光体ドラム21を臨み、感光体ドラム21の長手方向に沿って感光体ドラム21表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム21表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段22には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段22は感光体ドラム21表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段22として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラム21とが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、また帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット23は、露光ユニット23から出射される各色情報の光が、帯電手段22と現像手段24との間を通過して感光体ドラム21の表面に照射されるように配置される。露光ユニット23は、画像情報を該ユニット内でブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の各色情報の光に分岐し、帯電手段22によって一様な電位に帯電された感光体ドラム21表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット23には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図8は、現像手段24の構成の一例を模式的に示す断面図である。現像手段24は、現像槽26とトナーホッパ27とを含む。現像槽26は感光体ドラム21表面を臨むように配置され、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽26は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ26a、供給ローラ26b、撹拌ローラ26cなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽26の感光体ドラム21を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム21に対向する位置に現像ローラ26aが回転駆動可能に設けられる。現像ローラ26aは、感光体ドラム21との圧接部または最近接部において感光体ドラム21表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ26a表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ26a表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ26bは現像ローラ26aを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ26a周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ26cは供給ローラ26bを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ27から現像槽26内に新たに供給されるトナーを供給ローラ26b周辺に送給する。トナーホッパ27は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽26の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽26のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ27を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット25は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム21の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム21の表面を清浄化する。クリーニングユニット25には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム21として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電手段22によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット25よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット25を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット25を設けなくてもよい。
トナー像形成手段20によれば、帯電手段22によって均一な帯電状態にある感光体ドラム21の表面に、露光ユニット23から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段24からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト28に転写した後に、感光体ドラム21表面に残留するトナーをクリーニングユニット25で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段30は、感光体ドラム21の上方に配置され、中間転写ベルト28と、駆動ローラ29と、従動ローラ31と、中間転写ローラ32b,32c,32m,32yと、転写ベルトクリーニングユニット33、転写ローラ34とを含む。中間転写ベルト28は、駆動ローラ29と従動ローラ31とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向、すなわち感光体ドラム21と接する面が感光体ドラム21yから21bに向う方向に移動するように回転駆動する。
中間転写ベルト28が、感光体ドラム21に接しながら感光体ドラム21を通過する際、中間転写ベルト28を介して感光体ドラム21に対向配置される中間転写ローラ32から、感光体ドラム21表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト28上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム21y,21m,21c,21bで形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト28上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ29は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト28を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ31は駆動ローラ29の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト28が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト28に付与する。中間転写ローラ32は、中間転写ベルト28を介して感光体ドラム21に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ32は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム21表面のトナー像を中間転写ベルト28に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット33は、中間転写ベルト28を介して従動ローラ31に対向し、中間転写ベルト28の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム21との接触によって中間転写ベルト28に付着し、記録媒体に転写されずに残留するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット33が中間転写ベルト28表面の残留トナーを除去し回収する。転写ローラ34は、中間転写ベルト28を介して駆動ローラ29に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ34と駆動ローラ29との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト28に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段50から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段40に送給される。転写手段30によれば、感光体ドラム21と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム21から中間転写ベルト28に転写されるトナー像が、中間転写ベルト28の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段40は、転写手段30よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ35と加圧ローラ36とを含む。定着ローラ35は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ35の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ35表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ35を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ35表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ35の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。定着条件制御手段は、記憶部に書き込まれた検知結果に基づいて、加熱手段の動作を制御する。加圧ローラ36は定着ローラ35に圧接するように設けられ、定着ローラ35の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ36は、定着ローラ35によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ35と加圧ローラ36との圧接部が定着ニップ部である。定着手段40によれば、転写手段30においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ35と加圧ローラ36とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段50は、自動給紙トレイ37と、ピックアップローラ38と、搬送ローラ39a,39bと、レジストローラ41と、手差給紙トレイ42とを含む。自動給紙トレイ37は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ38は、自動給紙トレイ37に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ39aは互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ41に向けて搬送する。レジストローラ41は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ39aから送給される記録媒体を、中間転写ベルト28に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ42は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ42から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ39bによって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ41に送給される。記録媒体供給手段50によれば、自動給紙トレイ37または手差給紙トレイ42から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト28に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段60は、搬送ローラ39cと、排出ローラ43と、排出トレイ44とを含む。搬送ローラ39cは、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段40によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ43に向けて搬送する。排出ローラ43は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ44に排出する。排出トレイ44は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機、ビデオレコーダ、DVD( Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
本発明のトナー、二成分現像剤、現像装置、画像形成装置を用いて画像形成することにより、高濃度で高画質の画像を形成することができる。
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、特に限定されるものではない。以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における結着樹脂のガラス転移点および軟化点、離型剤の融点は、以下のようにして測定した。
[離型剤および溶融混練物の体積平均粒径]
粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラック粒度分布測定装置 9320HRA(X−100)、日機装株式会社製)を用いて測定を行い,試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径を求めた。
[離型剤含有率]
離型剤1gについて、示差走査熱量分析を行い、得られたDSC曲線から、離型剤の融解ピークの面積A1を求めた。また、トナー粒子1gについて、示差走査熱量分析を行い、得られたDSC曲線から、離型剤の融解ピークに相当する融解ピークの面積A2を求めた。測定結果から、下記式(6)に基づいて、トナー粒子中の離型剤含有率W1(%)を算出した。
W1=(A2/A1)×100 …(6)
[結着樹脂のガラス転移点(Tg)]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
[結着樹脂の軟化点(Tm)]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを、ダイ(ノズル)から押出されるように荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えながら、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化点として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
(実施例1)
[結着樹脂、着色剤および離型剤含有溶融混練物作製]
ポリエステル(結着樹脂、商品名:FC1469、三菱レーヨン株式会社製、
ガラス転移点60℃、軟化点110℃) 82.0部
帯電制御剤(商品名:N5P、クラリアントジャパン株式会社製) 2.0部
ポリエステル系ワックス(離型剤、商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製、
融点85℃) 7.5部
着色剤(KET.BLUE111、大日本インキ株式会社製) 8.5部
上記の材料をヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)にて前混合し、混合粉末をオープンロール機(商品名:MOS 140−800、三井鉱山株式会社製)にて溶融混練し、溶融混練物を得た。
[溶融混練物のアニオン分散液作製]
溶融混練物 400部
イオン交換水 1424部
上記材料をコロイドミル(商品名:PUCコロイドミル、日本ボールバルブ株式会社製)にて3000rpmで5分間粉砕を行った。次に、下記の材料を加えて泡レスミキサー(商品名、株式会社美粒製)にて3000rpmで5分間の調製処理をして、混練物スラリーを得た。
ポリアクリル酸(アニオン系分散剤、商品名:ディスロールH−14−N、
日本乳化剤株式会社製) 133部
エアロール(界面活性剤、商品名:エアロールCT−1p、
東邦化学工業株式会社製) 2.4部
キサンタンガム(増粘剤) 40部
ここで、ポリアクリル酸は、アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを含むアニオン系分散剤である。
次に、上記の混練物スラリーをNANO3000(商品名、株式会社美粒製)に投入し、室温で50MPaにて2回通して前処理を行った。さらに、この前処理品を150℃で167MPaにて微細化処理を行い、溶融混練物のアニオン分散液を作製した。
[溶融混練物のカチオン分散液作製]
溶融混練物のアニオン分散液の作製に用いたポリアクリル酸(アニオン系分散剤、商品名、H−14−N、日本乳化剤株式会社製)をアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(カチオン系分散剤、商品名:サニゾールB−50、花王株式会社製)に変更した以外は、溶融混練物のアニオン分散液と同様にして溶融混練物のカチオン分散液を作製した。
[ヘテロ凝集]
溶融混練物のアニオン分散液と溶融混練物のカチオン分散液とを、それぞれ300部ずつ混合し、塩化ナトリウム3部を加えてクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)にて80℃、10000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集をおこなって、実施例1のトナーを得た。
(実施例2)
[結着樹脂および着色剤含有溶融混練物作製]
ポリエステル(結着樹脂、商品名:FC1469、三菱レーヨン株式会社製、
ガラス転移点60℃、軟化点110℃) 82.0部
帯電制御剤(商品名:N5P、クラリアントジャパン株式会社製) 2.0部
着色剤(KET.BLUE111、大日本インキ株式会社製) 8.5部
上記の材料をヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)にて前混合し、混合粉末をオープンロール機(商品名:MOS 140−800、三井鉱山株式会社製)にて溶融混練し、溶融混練物を得た。
[溶融混練物のアニオン分散液作製]
溶融混練物を変更した以外は、実施例1の溶融混練物のアニオン分散液と同様にして、実施例2の溶融混練物のアニオン分散液を得た。
[離型剤のカチオン分散液作製]
ポリエチレンワックス(離型剤、商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製)、
融点85℃) 180部
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(カチオン系分散剤、
商品名:サニゾールB−50、花王株式会社製) 60部
イオン交換水 360部
上記の材料をクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)に投入し、80℃、8000rpmにて10分間攪拌して離型剤のカチオン分散液を得た。
[ヘテロ凝集]
溶融混練物のアニオン分散液 571.4部
離型剤のカチオン分散液 28.6部
塩化ナトリウム 6.0部
上記の材料を、離型剤のカチオン分散液、溶融混練物のアニオン分散液の順にクレアミックス(エム・テクニック株式会社製)に投入し、80℃、10000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集を行なって、実施例2のトナーを得た。
(実施例3)
ヘテロ凝集工程以外は、実施例2と同様にして、実施例3のトナーを得た。
[ヘテロ凝集]
溶融混練物のアニオン分散液 571.4部
離型剤のカチオン分散液 28.6部
塩化ナトリウム 6.0部
上記の材料を、溶融混練物のアニオン分散液、離型剤のカチオン分散液の順にクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)に投入し、80℃、10000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集を行なって、実施例3のトナーを得た。
(実施例4)
ヘテロ凝集工程以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
[ヘテロ凝集]
溶融混練物のアニオン分散液と溶融混練物のカチオン分散液とを、それぞれ300部ずつ混合し、塩化ナトリウム3部を加えてクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)にて85℃、15000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集をおこなって、実施例4のトナーを得た。
(実施例5)
ヘテロ凝集工程以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
[ヘテロ凝集]
溶融混練物のアニオン分散液と溶融混練物のカチオン分散液とを、それぞれ300部ずつ混合し、塩化ナトリウム3部を加えてクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)にて77℃、9000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集をおこなって、実施例5のトナーを得た。
(比較例1)
結着樹脂および着色剤含有溶融混練物作製工程の代わりに、結着樹脂および着色剤含有混合物作製工程を行い、溶融混練物の代わりに混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして比較例1のトナーを得た。
[混合物作製]
ポリエステル(結着樹脂、商品名:C1469、三菱レーヨン株式会社製、
ガラス転移点60℃、軟化点110℃) 82.0部
帯電制御剤(商品名:N5P、クラリアントジャパン株式会社製) 2.0部
着色剤(KET.BLUE111、大日本インキ株式会社製) 8.5部
上記の材料をヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)にて混合し、混合物を得た。
(比較例2)
溶融混練物のアニオン分散液作製工程を以下のように変更し、溶融混練物のカチオン分散液作製工程は行わず、ヘテロ凝集工程の代わりに凝集工程を行うこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のトナーを得た。
[溶融混練物のアニオン分散液作製]
ポリアクリル酸(アニオン系分散剤、商品名:ディスロールH−14−N、日本乳化剤株式会社製)の代わりに、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(アニオン系分散剤、商品名:ニューコール220L(65)、日本乳化剤株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、溶融混練物のアニオン分散液を作製した。
ここで、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩は、アニオン性極性基を主鎖に結合するポリマーを含むアニオン系分散剤である。
[凝集]
溶融混練物のアニオン分散液300部に、塩化ナトリウム2.4部を加えてクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)にて80℃、10000rpmで30分間攪拌し、凝集を行って、比較例2のトナーを得た。
(比較例3)
[結着樹脂および着色剤溶融混練物作製]
実施例2と同様にして、比較例3の溶融混練物を得た。
[離型剤のアニオン分散液作製]
ポリエチレンワックス(離型剤、商品名:HNP−10、日本精鑞株式会社製、
融点85℃) 180部
ポリアクリル酸(アニオン系分散剤、商品名:ディスロールH−14−N、
日本乳化剤株式会社製) 60部
イオン交換水 360部
上記の材料をクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)に投入し、80℃、8000rpmにて10分間攪拌して離型剤のアニオン分散液を得た。
[溶融混練物のカチオン分散液作製]
溶融混練物 400部
イオン交換水 1424部
上記材料をコロイドミル(商品名:PUCコロイドミル、日本ボールバルブ株式会社製)にて3000rpmで5分間粉砕を行った。次に、下記の材料を加えて泡レスミキサー(商品名、株式会社美粒製)にて3000rpmで5分間の調製処理をして、混練物スラリーを得た。
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(カチオン系分散剤、
商品名:サニゾールB−50、花王株式会社製) 133部
エアロール(界面活性剤、商品名:エアロールCT−1p、
東邦化学工業株式会社製) 2.4部
キサンタンガム(増粘剤) 40部
次に、上記の混練物スラリーをNANO3000(商品名、株式会社美粒製)に投入し、室温で50MPaにて2回通して前処理を行った。さらに、この前処理品を150℃で167MPaにて微細化処理を行い、溶融混練物のカチオン分散液を作製した。
[ヘテロ凝集]
離型剤のアニオン分散液 28.6部
溶融混練物のカチオン分散液 571.4部
塩化ナトリウム 6.0部
上記の材料を、離型剤のアニオン分散液、溶融混練物のカチオン分散液の順にクレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)に投入し、80℃、10000rpmで30分間攪拌し、ヘテロ凝集を行なって、比較例3のトナーを得た。
以上のようにして作製した実施例および比較例のトナーに対して、評価を行った。
[トナーの体積平均粒径および粒度分布]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター株式会社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)により超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製する。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター株式会社製)を用い、アパーチャ径100μm、測定粒子数50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径および体積粒度分布における標準偏差を求める。変動係数(CV値、%)は、下記式(7)に基づいて算出する。
CV値(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100…(7)
[転写性]
転写効率で評価する。1次転写において感光体ドラム表面から中間転写ベルトに転写されたトナーの割合を転写効率とし、転写前の感光体ドラムに存在するトナー量を100%として算出する。転写前の感光体ドラムに存在するトナーを、帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて吸引し、この吸引したトナーの量を測定することによって得る。また中間転写ベルトに転写されたトナー量も、同様にして得る。評価基準は次の通りである。
◎:非常に良好。転写効率が95%以上。
○:良好。転写効率が90%以上95%未満。
△:実使用可。転写効率が85%以上90%未満。
×:実使用不可。転写効率が85%未満。
[離型剤含有率]
上記式(6)に基づいて、トナー粒子中の離型剤含有率W1(%)を算出した。評価基準は次の通りである。
○:離型剤含有率が6.87%以上。
×:離型剤含有率が6.87%未満。
[クリーニング性]
実施例および比較例で得られたトナーを含む二成分現像剤を市販複写機(商品名:AR−C150、シャープ株式会社製)に充填し、日本工業規格(JIS)P0138に規定されるA4判の記録用紙上に、印字率が5%のチャートを連続印字し、3万枚印字後にテストチャートを形成する。テストチャートとして、全面ベタ画像、細線チャートおよび白紙(印字率0%)の3種類を形成する。この3種類のテストチャートの画像欠陥を目視で確認し、評価を行なう。評価基準は次の通りである。
○:良好。3種類のテストチャートすべてに画像欠損が発生していない。
△:実使用可。1種類以上のテストチャートに画像欠損が認められるものの、実使用上問題ない程度である。
×:実使用不可。1種類以上のテストチャートに画像欠損が発生している。
[耐フィルミング性]
画像面積率5%のチャートを連続10万枚印字後の感光体および形成画像を目視で観察し、フィルミングの有無を評価する。
◎:非常に良好。フィルミングの発生が全く認められない。
○:良好。付着物痕跡僅かに有り。画像への影響なし。
△:実使用可。付着物痕跡有り。画像への影響なし。
×:実使用不可。フィルミング発生有り。画像への影響有り
[耐ブロッキング性]
トナー5gを容量100ccのビーカーに入れ、温度50℃の乾燥器中に24時間静置する。次に静置後のトナーの凝集度を、パウダーテスター(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)の振動ふるい機を用いて測定し、耐ブロッキング性の評価を行なう。測定方法としては、振動台に上から100、200、400メッシュのふるいの順に重ねてセットし、100メッシュのふるい上に先の試料を加え、振動台への印加電圧が15Vになるように設定し、その際の振動台の振幅が0.5mmの範囲に入るように調整し、約15秒間振動を加え、その後、各ふるい上に残ったトナーの凝集物の重量を測定し下記式(8)によりトナーの凝集度を得る。
凝集度=(100メッシュふるい上の試料重量×1
+200メッシュふるい上の試料重量×0.6
+400メッシュふるい上の試料重量×0.2)/投入量×100…(8)
静置前後の凝集度の変化率
=(静置前の凝集度−24時間静置後の凝集度)/静置前の凝集度
◎:非常に良好。凝集度の変化率が0%以上10%以下。
○:良好。凝集度の変化率が10%より大きく20%以下。
△:実使用可。凝集度の変化率が20%より大きく30%以下。
×:実使用不可。凝集度の変化率が30%より大きい。
[耐高温オフセット性]
画像形成装置の定着温度を変化させ、高温オフセット発生温度を求める。
◎:非常に良好。高温オフセット発生温度が210℃以上。
○:良好。高温オフセット発生温度が200℃以上210℃未満。
△:実使用可。高温オフセット発生温度が190℃以上200℃未満。
×:実使用不可。高温オフセット発生温度が190℃未満。
[透明性]
色度と彩度を最適化する現像、定着条件で得られたOHPシート(商品名:OHPフィルム、型番:IJ188OHP、シャープドキュメントシステム株式会社製)画像サンプルについて、ヘーズメーター(有限会社東京電色製)を用いて曇り価を測定した。曇り価は小さい程透明性がよいことを示しており、20以下が良好であり、15以下は極めて透明性が高い。一方、曇り価が25以上になればカラートナーとしての実用性に欠ける。各色のカラートナーの彩度は、以下の表1にしたがって評価した。
◎:非常に良好。曇り価が15未満。
○:良好。曇り価が15以上20未満。
△:実使用可。曇り価が20以上25未満。
×:実使用不可。曇り価が25以上。
[透過性]
フルカラー複合機(商品名:AR−C260、シャープ株式会社製)から定着器を取除いて得られた試験用画像形成装置を用い、作製された各トナーによって、OHPシート(商品名:CX7A4C、シャープ株式会社製)上に未定着のべた画像を形成した。形成されたべた画像を、温度150℃に設定されたオーブン中に荷重を加えながら5分間放置し、膜厚5〜15μmの平滑なトナー膜を形成し、これを測定サンプルとした。測定サンプルは、各トナーについて、膜厚の異なる数種類のものを作製した。
分光光度計(商品名:U−3200、株式会社日立製作所製)を用い、作製された各測定サンプルの波長域400nm〜700nmにおける分光透過率を測定した。測定結果から、各測定サンプルの最大吸収波長の透過率を求め、最大吸収波長の透過率が3%となる膜厚を有する測定サンプルを選定した。該測定サンプルの最大透過波長の透過率を求め、透過性を評価した。
○:良好。最大透過率が85%以上。
△:実使用可。最大透過率が80%以上85%未満。
×:実使用不可。最大透過率が80%未満。
[総合評価]
◎:非常に良好。評価結果すべて◎または○である。
○:良好。評価結果に×がなく、△が1つある。
△:実使用可。評価結果に×がなく、△が1つより多い。
×:実使用不可。評価結果に×がある。
実施例1のトナーは、耐フィルミング性を除く評価項目で、良好であった。耐フィルミング性についても、実使用可であり、画像への影響は見られなかった。実施例2のトナーは、すべての評価項目で、良好または非常に良好であった。離型剤が溶融混練物に内包されているためであると考えられる。
実施例3のトナーも、実施例2と同様に離型剤が溶融混練物に内包されているトナーであるが、溶融混練物の分散液に離型剤の分散液を添加しているので、離型剤の分散液に溶融混練物の分散液を添加している実施例2と比較して、やや評価が低くなっている。
実施例4のトナーは、実施例1のトナーの製造時に比べて、ヘテロ凝集時の回転数が大きくなり、温度が高くなっているので、トナーはより球形に近づき、転写性が向上した。逆に実施例5のトナーは、実施例1のトナーの製造時に比べて、ヘテロ凝集時の回転数が小さくなり、温度が低くなっているので、トナーはより球形から離れて異形になっている。これによって、クリーニング性が向上した。
比較例1のトナーは、溶融混練物でなく混合物を用いているので、透明性が低下した。比較例2のトナーは、ヘテロ凝集を行っていないので、凝集剤の使用量が増加し、これに伴って全体的に特性が低下した。比較例3のトナーは、離型剤のアニオン分散液と、溶融混練物のカチオン分散液とをヘテロ凝集させたトナーである。トナーの表面にカチオンが残留するので、トナーの帯電性が低下し、フィルミングが発生しやすくなった。