本発明は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するコア粒子と、被覆樹脂および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含有し、かつコア粒子の表面に形成される被覆層とを含んで構成されるトナーであって、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、被覆樹脂によって被覆層の表面にしないように被覆層に固定化される。これによって、高速画像形成装置において使用した場合においても、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の脱離や埋没を防ぐことができる。
また、被覆樹脂の少なくとも一部は、コア粒子と融着する。これによって、コア粒子と被覆層とが強固に結合したトナーが得られるので、高速画像形成装置において使用した場合においても、被覆層がコア粒子から脱離してコア粒子が露出することを防止できる。
したがって、本発明のトナーは、高速画像形成装置において使用した場合においても、トナーの表面抵抗と流動性とを長期にわたって良好な状態に維持できる。
このように、被覆層がコア粒子の表面積の実質全面を被覆することによって、コア粒子の露出を最小限に抑えることができるため、トナーの流動性を長期にわたって良好に維持することができる。被覆層によって被覆される部分がコア粒子の表面積の80%未満であると、コア粒子の露出面積が大きくなるために、トナーの流動性が悪化するおそれがある。
コア粒子の表面積は、コア粒子を球体とみなし、コア粒子の体積平均粒径を測定することによって算出できる。また被覆層が形成される部分のコア粒子の面積は、電子顕微鏡による撮影画像から、画像解析装置などを用いて算出できる。コア粒子の表面の大部分、たとえばコア粒子の表面積の80%を被覆するように被覆層が形成される場合には、コア粒子の表面全面、すなわちコア粒子の表面積の100%を被覆するように被覆層が形成される場合と同様の効果が得られるので、以下の記載では被覆層がコア粒子の表面全面に形成される場合を例に説明する。
また本発明のトナーにおいて、被覆層は、被覆樹脂を微粒子化した複数の微小樹脂粒子のうち少なくとも一部が、隣合う他の微小樹脂粒子と融着することによって形成されることが好ましい。このように、複数の微小樹脂粒子が融着しあって一体化することによって、微小樹脂粒子の被覆層からの脱離が起こりにくくなり、強固な被覆層が形成される。
以下、本発明のトナーの製造方法の一例について説明する。図1は、本発明のトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。本発明のトナーの製造方法は、図1に示すように、ステップS1のコア粒子作製工程と、ステップS2の微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程と、ステップS3のコーティング工程とを含む。ステップS1のコア粒子作製工程と、ステップS2の微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程とは、時間的な順序が逆になってもよい。
本発明のトナーは、ステップS1〜ステップS3の各工程によって、コア粒子と、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との付着力を増大させる付着補助剤の存在下に、コア粒子と、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物とを接触させることで製造することができる。このように、付着補助剤を用いることで、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコア粒子に対する濡れ性を向上させることができるので、コア粒子の表面に、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含有する被覆層をより容易に形成できるようになる。
以下、ステップS1〜ステップS3の各工程について詳細に説明する。
[コア粒子作製工程]
ステップS1のコア粒子作製工程では、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むコア粒子を作製する。本発明のトナーに用いられるコア粒子は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、さらに離型剤、帯電制御剤などのその他のトナー添加成分を含有していてもよい。
以下に、コア粒子を構成する各原料について説明する。
(a)結着樹脂
結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として常用されるものであれば特に限定されず、たとえば、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。また同一種の樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれか1つまたは複数が異なる樹脂を複数種併用することができる。
ポリエステルは透明性に優れ、凝集粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また多塩基酸として無水トリメリット酸を用いることで、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。なお、ポリエステルの少なくとも主鎖または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させたポリエステルも使用できる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
上記のポリエステルの他に、結晶性ポリエステルを用いても良い。結晶性ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸成分としては、たとえば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基もしくは親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーおよび/または酸性基もしくは親水性基を有するビニル系モノマーを併用することによって製造できる。アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタアクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステル、置換基を有することのあるメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基(水酸基)含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
スチレン−アクリル樹脂としては、たとえば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
結着樹脂は、ガラス転移点(Tg)が30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移点が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
(b)着色剤
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部、さらに好ましくは0.2重量部〜10重量部である。
(c)離型剤
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部〜20重量部、さらに好ましくは0.5重量部〜10重量部、特に好ましくは1.0重量部〜8.0重量部である。
(c)帯電制御剤
帯電制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。帯電制御剤は、コア粒子中に含有させてもよく、後述のコーティング工程において微小樹脂粒子からなる被覆層中に混ぜて使用してもよい。帯電制御剤を、コア粒子中に含有させる場合、帯電制御剤は、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部〜3重量部であることが好ましい。
(コア粒子の作製方法)
コア粒子は、一般的なトナーの製造方法に従って製造できる。一般的なトナーの製造方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法や、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法および溶融乳化法などの湿式法が挙げられる。以下粉砕法によるコア粒子の作製方法について説明する。
粉砕法によれば、少なくとも結着樹脂および着色剤を含み、必要に応じて離型剤、帯電制御剤などのその他のトナー添加成分を含む粉体混合物を混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。次いで、溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、得られた固化物を粉砕機によって粉砕する。その後、必要に応じて分級などの粒度調整を行うことで、コア粒子を作製できる。
混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としては、公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。
粉砕機としては、公知のものを使用でき、たとえば、カッターミル、フェザーミル、ジェットミル、スピードミルなどを使用できる。たとえば、溶融混練物の固化物をスピードミルで粗粉砕した後、ジェットミルで粉砕することによって、所望の体積平均粒径を有するコア粒子を得ることができる。
粉砕物の分級には、遠心力による分級や風力による分級によって微粉や粗粉を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、エルボージェット分級機、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
着色剤などの合成樹脂用添加剤は、合成樹脂用添加剤を混練物中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また合成樹脂用添加剤の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、合成樹脂用添加剤の2種以上に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際に粉体混合物に混入される。
得られるコア粒子は、体積平均粒径が3μm以上10μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。コア粒子の体積平均粒径が3μm以上10μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。コア粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、コア粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。コア粒子の体積平均粒径が10μmを超えると、コア粒子の粒径が大きいので、高精細な画像を得ることができない。またコア粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
[微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程]
ステップS2の微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程では、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を作製する。またコア粒子と、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との付着力を増大させる付着補助剤を調製する。微小樹脂粒子は、被覆樹脂を微粒子化することで得られる。
(a)微小樹脂粒子
微小樹脂粒子を構成する被覆樹脂としては、特に限定されることなく、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン樹脂などを用いることができる。被覆樹脂としては、上記例示した樹脂の中でも、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂またはポリエステルを含むことが好ましい。アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂またはポリエステルは、軽量で高い強度を有し、さらに透明性も高く、安価であるなど多くの利点を有する。
被覆樹脂としては、コア粒子の結着樹脂と同じ種類であってもよく、違う種類の樹脂であってもよいけれども、トナーの表面改質を行う点において、違う種類の樹脂が用いられることが好ましい。被覆樹脂として、コア粒子の結着樹脂と違う種類の樹脂が用いられる場合、被覆樹脂の軟化点(Tm)が、コア粒子の結着樹脂の軟化点よりも高いものを用いることが好ましい。これによって、保存中にトナー同士が融着することが防止され、保存安定性を向上させることができる。また、被覆樹脂の軟化点(Tm)は、トナーが使用される画像形成装置にもよるけれども、80℃以上140℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の被覆樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えるトナーが得られる。
被覆樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上80℃以下であることが好ましい。これにより、被覆層の膜厚調整が容易となる。ガラス転移温度が80℃を超えるものは、被覆層の膜厚を薄くすることが難しくなり、定着性が劣化する。ガラス転移温度が50℃未満のものは、トナー同士の凝集により、トナーの保存性、耐久性が低下する。
被覆樹脂を微粒子化することで得られる微小樹脂粒子は、たとえば、被覆樹脂用のモノマーを重合することによって得ることができる。また、被覆樹脂の各原料をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることもできる。
微小樹脂粒子の体積平均粒径は、コア粒子の体積平均粒径よりも充分に小さいことが必要である。微小樹脂粒子の体積平均粒径は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、さらには、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。微小樹脂粒子の体積平均粒径が0.05μm以上1μm以下であることによって、好適な厚さの被覆層がコア粒子表面に形成される。これによって、たとえばトナー内の低軟化成分を増やしてもトナー表面への低軟化性成分の露出を抑制することが可能となり、定着性を損なわずに表面硬度を高くして保存性、機械的強度を向上させることができる。
微小樹脂粒子の体積平均粒径が0.05μm未満であると、形成される被覆層の厚さが薄くなり、トナーの保存性が悪化するおそれがある。また粒子の大きさが小さくなり過ぎて微小樹脂粒子の取扱性が悪くなるおそれがある。また後述のコーティング工程において微小樹脂粒子と付着補助剤とを含む微小樹脂粒子分散液を同一の噴霧ノズルから噴霧させる場合に、微小樹脂粒子分散液中での微小樹脂粒子の分散性が低下するおそれがある。
微小樹脂粒子の体積平均粒径が1μmを超えると、これによってトナー中に占める被覆層の割合が大きくなる。トナー中に占める被覆層の割合が大きくなると、被覆層を形成する材料にもよるけれども、画像形成時における被覆層の影響が大きくなり過ぎ、所望の画像を形成することができなくなるおそれがある。また、均一にコア粒子表面に融着被覆させることが困難になる。
(b)酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物に含まれる二酸化ケイ素は、トナーの流動性を良好にし、さらにトナーの表面抵抗を高くしてトナーの帯電量を大きくする働きをする。一方、酸化アルミニウムは、トナーの表面抵抗を低くしてトナーの帯電量を小さくする働きをする。したがって、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含有させることによって、トナーの帯電性と流動性とを制御することができる。
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、特に限定されるものではないが、平均一次粒径が5nm以上25nm以下のものであることが好ましい。これによって、トナーに対してより適度な流動性および帯電性を付与することができる。平均一次粒径が5nm未満であると、凝集粒子が多くなって被覆層に均一に固定化することが難しくなり、トナーの表面抵抗のばらつきが発生するおそれがある。そのため、帯電均一性が損なわれ、画質低下を招くおそれがある。また、平均一次粒径が25nmを超えると、被覆層から脱離しやすくなるため、トナーの表面抵抗および流動性の長期安定性が損なわれるおそれがある。
上述の平均一次粒径は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、およびDLS−800(商品名、株式会社大塚電子製)やコールターN4(商品名、コールターエレクトロニクス社製)などの動的光散乱を利用する粒径分布測定装置などによって測定可能である。これらの測定装置の中でも、疎水化処理後の粒子の二次凝集を解離することが困難であることを考慮すると、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られる写真画像を画像解析することによって、平均一次粒径を直接求めることが好ましい。
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、気相法で製造したものであってもよいし、湿式法で製造されたものであってもよい。酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の製造方法としては、たとえば気相法では特開2000−181130号公報に記載される熱分解法が挙げられる。この方法によれば、所望の粒径の酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を得ることができる。
また、特開平6−199516号公報に記載される火炎加水分解法も挙げられる。火炎加水分解法によれば、塩化アルミニウムとケイ素ハロゲン化物とを共に炎中で蒸気相酸化させることで、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を製造できる。このとき塩化アルミニウムとケイ素ハロゲン化物との供給比率を変えることにより、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素とが任意の割合で含有される酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を製造することができる。また、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との含有割合を変えることによって、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の粒径を制御することもできる。
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物における酸化アルミニウムの組成比率は、特に限定されるものではないが、40重量%以上70重量%以下であることが好ましい。これによって、トナーの流動性と帯電量とを長期にわたって最適に維持できる。酸化アルミニウムの組成比率が40重量%未満であると、トナーの表面抵抗が高くなりすぎるため、画像濃度が不均一になりかぶりなどが発生するおそれがある。また、50重量%を超えると、トナーの流動性が悪化するおそれがある。ここで、酸化アルミニウムの組成比率は、トナーを蛍光X線分析することによって求められる値である。
(c)付着補助剤
付着補助剤とは、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコア粒子に対する濡れ性を向上させることができる液体であり、コア粒子と、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との付着力を増大させる。付着補助剤は、コア粒子を溶解しない液体であることが好ましい。また付着補助剤は、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティング後に除去される必要があるので、蒸発しやすい液体であることが好ましい。
付着補助剤としては、水または低級アルコールを含むことが好ましい。これによって、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコア粒子に対する濡れ性をより一層高めることができ、コア粒子の表面に微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含む被覆層を形成することがより一層容易になる。また、付着補助剤を除去するための乾燥時間をより一層短縮することができる。
低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
また付着補助剤としては、上記例示のものに限定されることなく、たとえば、ブタノール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類などを用いてもよい。
[コーティング工程]
ステップS3のコーティング工程では、コア粒子と、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との付着力を増大させる付着補助剤を用いて、コア粒子に、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物とを付着させ融着させる。これによって、コア粒子に微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物をコーティングし、被覆層を形成できる。
コーティング工程は、たとえば表面改質装置を用いて行われる。表面改質装置は、コア粒子、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を内部に収容する容器と、容器内部に付着補助剤を噴霧する噴霧手段とを備える装置である。また本実施形態において、表面改質装置の容器は、容器内のコア粒子を撹拌する撹拌手段を備える。
コア粒子、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を内部に収容する容器としては、閉鎖系の容器を用いることができる。噴霧手段は、付着補助剤を貯留する付着補助剤貯留部と、キャリアガスを貯留するキャリアガス貯留部と、付着補助剤とキャリアガスとを混合し、得られる混合物を容器内に収容されるコア粒子に向けて噴射し、付着補助剤の液滴をコア粒子に噴霧する液体噴霧ユニットとを備える。キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。液体噴霧ユニットとしては、市販品を用いることができ、たとえば、付着補助剤をチューブポンプ(商品名:MP−1000A、東京理化器械株式会社製)を通して二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続したものを使用することができる。撹拌手段としては、衝撃力を主体とする機械的および熱的エネルギーをコア粒子に付与することができる撹拌ロータなどが用いられる。
撹拌手段を備える容器としては、市販品を用いることができ、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。このような混合機の容器内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この混合機を本実施形態の表面改質装置として用いることができる。
コア粒子への微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングは、次のようにして行う。まず、コア粒子、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の所定量を容器に投入し、撹拌手段によってコア粒子、微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を撹拌状態とした後、容器内部に付着補助剤を噴霧する。コア粒子および微小樹脂粒子は、付着補助剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化する。これに、撹拌手段による機械的衝撃力が付加されて、コア粒子表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とが固着するとともに、微小樹脂粒子の一部が、コア粒子および隣合う他の微小樹脂粒子のうち少なくともいずれか一方と融着する。これによってコア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とを付着させることができ、コア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とを融着させることができる。
表面改質装置の容器内の温度は、コア粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移点未満であることが好ましい。容器内の温度がコア粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上であると、トナー製造時に容器内でコア粒子が溶融し過ぎ、コア粒子の凝集が発生するおそれがある。したがってコア粒子の凝集を防止するために、表面改質装置の容器内が必要に応じて冷却されることが好ましい。
さらに付着補助剤は、コア粒子が容器内において浮遊する状態で噴霧されることが好ましい。コア粒子が容器内で浮遊する状態で、付着補助剤が噴霧されると、付着補助剤が噴霧されたコア粒子同士が接触する機会を減らすことができる。これによって、トナー製造時におけるトナーの凝集を防止することができ、粗大粒子の発生が防止されるので、粒径の整ったトナーを得ることができる。コア粒子が容器内において浮遊する状態は、たとえば、撹拌手段による撹拌、エアの供給などによって実現できる。
微小樹脂粒子の使用割合は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる使用割合であることが必要である。したがって、微小樹脂粒子は、コア粒子100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の使用割合で用いられることが好ましい。微小樹脂粒子の使用割合が1重量部未満であると、コア粒子の表面全面を被覆層で被覆することができないおそれがある。また、30重量部を超えると、被覆層の厚みが大きくなり過ぎ、微小樹脂粒子の構成材料によっては、トナーの定着性が低下するおそれがある。
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、被覆樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下の割合で含有されるように添加されることが好ましく、さらには、0.8重量部以上3重量部以下の割合で含有されるように添加されることが好ましい。これによって、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の機能を充分に発揮できるので、トナーの表面抵抗と流動性とをより良好な状態で長期にわたって安定して維持することができる。酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物が0.5重量部未満では、存在量が少なすぎて、適度な流動性を確保できず、さらにトナーの表面抵抗も調整できなくなるおそれがある。トナーの表面抵抗と流動性とを調整することができなくなるおそれがある。また、5重量部を超えると、被覆層からの脱離が起こりやすくなり、トナーの表面抵抗および流動性の長期安定性が損なわれるおそれがある。
また付着補助剤の使用量は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を濡らす程度の量であることが好ましい。付着補助剤の使用量は、コア粒子の使用量によって決定される。また付着補助剤は、噴霧手段による噴霧時間、噴霧回数などによってその量を調整することができる。したがってコア粒子の体積平均粒径、コア粒子と微小樹脂粒子との使用割合、コア粒子の材料および微小樹脂粒子の材料などに応じて噴霧手段による単位時間当りの噴霧量を適宜設定し、たとえば容器内の微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のほとんどがコア粒子に付着した時点で、噴霧手段による付着補助剤の噴霧を終了すればよい。
コア粒子への微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングは、コア粒子を内部に収容する容器と、容器内部に微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤との混合物を噴霧する噴霧手段とを備える表面改質装置によって行われてもよい。このような表面改質装置としては、付着補助剤貯留部に付着補助剤と微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物が貯留されること以外は、前述の装置と同様のものを用いることができる。
このような表面改質装置によるコア粒子への微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングは、次のようにして行う。まずコア粒子を容器に投入し、撹拌手段によってコア粒子を撹拌状態とし、そこへ付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子との混合物を噴霧する。コア粒子は、付着補助剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化する。また微小樹脂粒子は、付着補助剤とともに混合されており、容器内部に噴霧された後、撹拌されて熱的エネルギーが加えられ、コア粒子と同様にその表面が膨潤軟化した状態となる。これに、撹拌手段による機械的衝撃力が付加されて、コア粒子表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とが固着するとともに、微小樹脂粒子の一部が、コア粒子および隣合う微小樹脂粒子のうち少なくともいずれか一方と融着する。これによってコア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とを付着させることができ、コア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とを融着させることができる。
付着補助剤と微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物を噴霧する場合、付着補助剤は、微小樹脂粒子1重量部に対して1重量部以上99重量部以下の割合で、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、微小樹脂粒子100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下で使用されることが好ましく、より好ましくは0.8重量部以上3重量部以下である。付着補助剤と微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物であるコーティング液は、微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程において調製しておく。微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤との混合物を同一の噴霧手段から噴霧する場合に、上記割合で微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤とが混合される混合物が用いられることによって、微小樹脂粒子のコア粒子に対する濡れ性を充分に高めることができるとともに、付着補助剤を除去するための時間を短縮することができる。また混合物の粘度が好適であり、噴霧手段による混合物の噴霧が容易である。付着補助剤が1重量部未満であると、混合物の粘度が高くなり過ぎ、噴霧ユニットのノズル孔が詰まるおそれがある。付着補助剤が99重量部を超えると、付着補助剤の含有率が高くなり過ぎ、付着補助剤を除去するための時間が長くなり過ぎる。
微小樹脂粒子と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤との混合物の使用量は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる量の微小樹脂粒子を含む量であることが必要である。コア粒子の表面全面を被覆することができる微小樹脂粒子の好ましい量は、前述と同様にコア粒子100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であるので、混合物の使用量は、混合物中における微小樹脂粒子の含有率に応じて決定される。
コア粒子への微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングは、コア粒子および微小樹脂粒子を内部に収容する容器と、容器内部に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤との混合物を噴霧する噴霧手段とを備える表面改質装置によって行われてもよい。このような表面改質装置としては、付着補助剤貯留部に付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物が貯留されること以外は、前述の装置と同様のものを用いることができる。
このような表面改質装置によるコア粒子への微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングは、次のようにして行う。まずコア粒子および微小樹脂粒子を容器に投入し、撹拌手段によってコア粒子および微小樹脂粒子を撹拌状態とし、そこへ付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物を噴霧する。コア粒子および微小樹脂粒子は、付着補助剤が噴霧され、かつ撹拌による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化した状態となる。これに、撹拌手段による機械的衝撃力が付加されて、コア粒子表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とが固着するとともに、微小樹脂粒子の一部が、コア粒子および隣合う微小樹脂粒子のうち少なくともいずれか一方と融着する。これによってコア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と微小樹脂粒子とを付着させることができ、コア粒子の表面に酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含む微小樹脂粒子を融着させることができる。
付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物を噴霧する場合、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、付着補助剤100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8重量部以上3重量部以下の割合で用いられることが好ましい。付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物であるコーティング液は、微小樹脂粒子、酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物および付着補助剤調製工程において調製しておく。付着補助剤と酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物との混合物を同一の噴霧手段から噴霧する場合に、上記割合で酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤とが混合される混合物が用いられることによって、コア粒子および微小樹脂粒子の濡れ性を充分に高めることができる。酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物が0.5重量部未満であると、付着補助剤の含有率が高くなり過ぎ、付着補助剤を除去するための時間が長くなり過ぎる。酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物が5重量部を超えると、混合物の粘度が高くなり過ぎ、噴霧ユニットのノズル孔が詰まるおそれがある。
微小樹脂粒子の使用割合は、特に限定されないけれども、コア粒子の表面全面を被覆することができる使用割合であることが必要である。コア粒子の表面全面を被覆することができる微小樹脂粒子の好ましい量は、前述と同様に、コア粒子100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下である。
酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物と付着補助剤との混合物の使用量は、特に限定されないけれども、トナーの表面抵抗および流動性を所望の程度に調整することができる量の酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を含む量であることが必要である。トナーの表面抵抗および流動性を所望の程度に調整することができる酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物の好ましい量は、前述と同様に被覆樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8重量部以上3重量部以下であるので、混合物の使用量は、混合物中における微小樹脂粒子の含有率に応じて決定される。
コア粒子の表面全面に対する微小樹脂粒子のコーティングが終了すると、付着補助剤の除去を行う。付着補助剤の除去は、たとえば乾燥機で付着補助剤を気化させることによって行われる。付着補助剤の除去には、たとえば、熱風受熱式乾燥機、伝導伝熱式乾燥機、凍結乾燥機などの通常用いられる乾燥機が用いられる。
上述のようにして製造される本発明のトナーには、外添剤が添加されてもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。またこれらは、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー100重量部に対して1重量部〜10重量部であることが好ましい。
本発明のトナーは、一成分現像剤としても二成分現像剤としても使用することができる。一成分現像剤として使用するには、キャリアを用いることなくトナー単独で使用する。またこの場合には、ブレードおよびファーブラシを用いて、現像ローラで摩擦帯電させて現像ローラ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。一方、二成分現像剤として使用する場合には、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライト、キャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。樹脂被覆キャリアに用いられる被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては、特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれの被覆物質および樹脂においても、トナー成分に応じて適宜選択することが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。また、キャリアの体積平均粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm〜100μm、さらに好ましくは20μm〜50μmである。このように、キャリアの体積平均粒径を20μm〜50μmにすることにより、トナーとキャリアとの接触機会が増え、個々のトナー粒子の帯電を適正に制御できるために、非画像部かぶりが発生せず、かつ高画質な画像を達成することができる。
さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像ローラ(現像スリーブ)にバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着しやすくなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こりやすくなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g〜60emu/g、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体である感光体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れやすくなるおそれがある。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5g/cm2〜8g/cm2)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、キャリアに対するトナーの被覆率は、40%〜80%であることが好ましい。
本発明の二成分現像剤は、本発明のトナーとキャリアとを含むことによって、トナーの表面抵抗と流動性とを長期にわたって良好な状態に維持することができる。
[画像形成装置]
図2は、本発明の画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および中間転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、少なくとも導電性粒子または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の悪化を防止する、少なくとも低温または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、少なくともフローレン環またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部〜500重量部、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、さらに好ましくは0.1μm〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部〜300重量部、さらに好ましくは30重量部〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と記す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれることが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm〜50μm、さらに好ましくは15μm〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
図3は、本発明の現像装置14の構成の一例を模式的に示す断面図である。現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容し、かつ現像ローラ20a、供給ローラ20b、撹拌ローラ20cなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ20aが回転駆動可能に設けられる。現像ローラ20aは、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ20a表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ20a表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ20bは現像ローラ20aを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ20a周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ20cは供給ローラ20bを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ20b周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置1においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電手段12によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15による擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29と、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向、すなわち感光体ドラム11と接する面が感光体ドラム11yから感光体ドラム11bに向かう方向に移動するように回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、定着ローラ31の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38と、手差給紙トレイ39とを含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。
記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
このように、本発明の現像装置14は、本発明の二成分現像剤を用いて現像を行うことによって、感光体ドラム11上にトナー像を長期にわたって安定して形成することができる。
また、本発明の画像形成装置1は、本発明の現像装置14を備えることによって、再現性の良い高画質画像を長期にわたって安定して形成することができる。
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。なお、以下「酸価アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物粒子」を、単に「Al2O3−SiO2」と記す。
[物性値測定方法]
実施例および比較例における各物性値は、以下に示すようにして測定した。
〔ガラス転移点(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
〔軟化点(Tm)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点とした。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
〔コア粒子の体積平均粒径および変動係数(CV値)〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に試料粒子の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径をコア粒子の体積平均粒径(μm)とした。また、体積粒度分布における標準偏差(μm)を求めて、下記式(1)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを意味する。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)}
×100…(1)
〔微小樹脂粒子の体積平均粒径〕
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(商品名:LA−920、株式会社堀場製作所製)を用いて、体積基準で50%頻度粒子径(メジアン径)を測定し、これを微小樹脂粒子の体積平均粒径(μm)とした。
〔Al2O3−SiO2におけるAl2O3の組成比率〕
Al2O3の組成比率は、蛍光X線分析装置(商品名:ZSX・PrimusII、理学電機工業株式会社製)を用いて測定した特性X線強度の値に基づいて算出した。測定は、X線源のターゲットをRh、X線源への印加電圧を40kV、電流値を50mAとし、光学系の分光結晶にはLiF(対象:Al2O3粒子)を用い、検出器にはシンチレーションカウンタとフォトカウンタとを用いた。分光器の走査にはスキップスキャン法を用い、1ステップあたり0.05度の角度に設定して行った。
〔Al2O3−SiO2の平均一次粒径〕
走査型電子顕微鏡(商品名:S−4300SE/N、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて50000倍に拡大した画像を、前記走査型電子顕微鏡の視野を変えて100個の粒子について撮影し、得られた写真画像を画像解析することによって一次粒子および一次粒子の凝集体の粒径を測定した。得られた測定値から平均一次粒径および一次粒子の凝集体の平均粒径を算出した。
(実施例1)
[コア粒子作製工程]
(マスターバッチの作製)
ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン400重量部、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン380重量部およびテレフタル酸330重量部を原料モノマーとして用い、触媒としてジブチルチンオキサイド3重量部を用いて合成したポリエステル樹脂(ガラス転移点(Tg):64℃、軟化点(Tm):95℃)に、着色剤として銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)を加え、温度140℃に設定されたニーダーにて40分間溶融混練して、着色剤濃度40重量%のマスターバッチを作製した。ここでポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)1.0モルに対して、プロピレンオキサイドが平均2.0モル付加した化合物のことである。またポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)1.0モルに対して、エチレンオキサイドが平均2.0モル付加した化合物のことである。
(コア粒子の作製)
上述のマスターバッチの作製に用いたものと同じポリエステル樹脂(ガラス転移点(Tg):64℃、軟化点(Tm):95℃)79.5重量%(100重量部)、上述のようにして作製したマスターバッチ(着色剤濃度40重量%)12.5重量%(15.7重量部)、離型剤(カルナバワックス、融点:82℃)8重量%(10重量部)をヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)にて3分間混合分散し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を、二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)を用いて溶融混練し、混練物を調製した。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料供給速度20kg/時間とした。得られた混練物を冷却ベルトにて冷却固化後、カッティングミル(商品名:VM−16、菱興産業株式会社製)にて粗粉砕した。
そして、得られた粗粉砕物をカウンタジェットミル(商品名:カウンタジェットミルAFG、ホソカワミクロン株式会社製)にて粉砕し、さらにロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉、粗粉を取除くことで、体積平均粒径6.9μm、変動係数(CV値、%)22%のコア粒子を作製した。
[微小樹脂粒子、Al2O3−SiO2および付着補助剤調製工程]
(Al2O3−SiO2の調製)
微小樹脂粒子として、体積平均粒径が0.1μmであるスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子(ガラス転移点(Tg):80℃、軟化点(Tm):126℃)を用意した。また、以下のようにして製造したAl2O3−SiO2を用意した。さらに、付着補助剤としてエタノールを用意した。
(Al2O3−SiO2の製造)
欧州特許第0585544号明細書の実施例1に記載されている公知のバーナー配列に従って、核水素(Kernwasserstoff)または反応水素(Reaktionswasserstoff)1.4Nm3/hを空気5.5Nm3/hおよびあらかじめ蒸発させたSiCl41.30kg/hと共に約200℃で混合した。この約200℃の熱混合物中に、さらにあらかじめ300℃で蒸発させたガス状のAlCl30.90kg/hを供給した。得られた混合物を炎管中で燃焼させ、その際、これらの炎管中に、空気12Nm3/hを供給した。炎管通過後に生じた粉末をフィルターまたはサイクロン中で、塩酸含有ガスから分離した。付着した塩酸残留物を、高温で処理することにより生じた混合酸化物から分離することで、Al2O3の組成比率が40重量%であり、平均一次粒径が20nmであるAl2O3−SiO2を製造した。
[コーティング工程]
容器内に液体を噴霧できる二流体ノズルを取付けた表面改質装置(商品名:ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、コア粒子100重量部、微小樹脂粒子5重量部、およびAl2O3−SiO20.15重量部(微小樹脂粒子100重量部に対して3重量部)を投入し、回転数8000rpmで10分間滞留させた後、二流体ノズルに圧縮エアを送り、付着補助剤であるエタノールを0.5g/分で噴霧するように調整し、40分間噴霧して、コア粒子の表面全面に微小樹脂粒子およびAl2O3−SiO2のコーティングを行った。
コア粒子の表面全面に微小樹脂粒子およびAl2O3−SiO2がコーティングされることによって被覆層が形成されたコア粒子を凍結乾燥させることで、実施例1のトナーを製造した。
なお、実施例1のトナーの表面状態を電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって10,000倍の倍率にて観察したところ、被覆層の表面に露出しているAl2O3−SiO2は見られなかった。
(参考例1)
微小樹脂粒子、Al2O3−SiO2および付着補助剤調製工程、ならびにコーティング工程を、以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、参考例1のトナーを製造した。
[微小樹脂粒子、Al2O3−SiO2および付着補助剤調製工程]
微小樹脂粒子として、体積平均粒径が0.1μmであるスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子(ガラス転移点(Tg):80℃、軟化点(Tm):126℃)を用意した。
また付着補助剤として用意したエタノール中に、実施例1と同様にして製造した酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物を2.5重量%となるように加え、ホモジナイザー(商品名:ポリトロンPT−MR3100、キネマティカ社製)を用いて8000rpmで20分間撹拌混合し、コーティング液を調製した。
[コーティング工程]
容器内に液体を噴霧できる二流体ノズルを取付けた表面改質装置(商品名:ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、コア粒子100重量部および微小樹脂粒子5重量部を投入し、回転数8000rpmで10分間滞留させた後、二流体ノズルに圧縮エアを送り、二流体ノズルから酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物とエタノールとからなる混合物であるコーティング液を0.5g/分で噴霧するように調整し、40分間噴霧して、コア粒子の表面全面に微小樹脂粒子および酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物のコーティングを行った。酸化アルミニウム−二酸化ケイ素混合酸化物は、コア粒子100重量部に対して0.15重量部(微小樹脂粒子100重量部に対して3重量部)用いた。そして、コア粒子の表面全面に微小樹脂粒子およびAl2O3−SiO2がコーティングされることによって被覆層が形成されたコア粒子を凍結乾燥させることで、参考例1のトナーを製造した。
なお、参考例1のトナーにおいては、一部のAl2O3−SiO2が被覆層の表面に露出している様子が観察された。
(実施例2)
コーティング工程にて、Al2O3−SiO2を0.025重量部(微小樹脂粒子100重量部に対して0.5重量部)投入した以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナーを製造した。なお、実施例2のトナーにおいては、被覆層の表面に露出しているAl2O3−SiO2は見られなかった。
(実施例3)
コーティング工程にて、Al2O3−SiO2を0.1重量部(微小樹脂粒子100重量部に対して2重量部)投入した以外は、実施例1と同様にして実施例3のトナーを製造した。なお、実施例3のトナーにおいては、被覆層の表面に露出しているAl2O3−SiO2は見られなかった。
(実施例4)
コーティング工程にて、Al2O3−SiO2を0.25重量部(微小樹脂粒子100重量部に対して5重量部)投入した以外は、実施例1と同様にして実施例4のトナーを製造した。なお、実施例4のトナーにおいては、被覆層の表面に露出しているAl2O3−SiO2は見られなかった。
(比較例1)
コーティング工程にて、Al2O3−SiO2を投入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナーを製造した。
(比較例2)
コーティング工程にて、微小樹脂粒子を投入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のトナーを製造した。なお、比較例2のトナーにおいては、Al2O3−SiO2がトナー表面に露出している様子が観察された。
実施例1〜5および比較例1,2のトナーにおける、二流体ノズルからの噴霧条件、微小樹脂粒子のコア粒子100重量部に対する含有量(表1中、単に「含有量」と記す)、Al2O3−SiO2の被覆層表面に露出している部分の有無(表1中「表面露出の有無」と記す)および微小樹脂粒子100重量部に対する含有量(表1中、単に「含有量」と記す)について表1に示す。
[評価]
実施例1〜4、参考例1および比較例1,2のトナーについて、以下のようにして保存安定性および帯電性(ライフ安定性、立ち上がり性)を評価した。各評価結果および総合評価を表2に示す。なお、表2において、評価項目の説明に記載されている「◎」、「○」、「△」、「×」などの記号は、評価結果を示す記号である。「◎」は非常に優れていることを示し、「○」は優れていることを示し、「△」は実用可能であることを示し、「×」は実用が困難であることを示す。
〔保存安定性〕
トナーを50mlのポリ瓶3本に、1本当り28g〜30g入れる。次いで、ポリ瓶の蓋を閉めた状態で50℃、10%RHに設定した恒温恒湿槽に入れて24時間毎に1本ずつ取り出し、嵩比重測定器(商品名、筒井理化学器械株式会社製)を用い、JIS K−5101−12−1に従って、トナーの嵩密度を測定した。初期、24時間後、48時間後、72時間後の嵩密度を測定して下記式(2)に基づいて変動率を算出した。変動率の値が小さいトナーほど保存安定性が良好であることを示す。
(変動率)=((72時間後の嵩密度)/(初期の嵩密度))×100…(2)
保存安定性の評価基準は次のとおりである。
○:変動率が90%以上である。
△:変動率が80%以上90%未満である。
×:変動率が80%未満である。
〔帯電性〕
(a)ライフ安定性
キャリアとして、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対する実施例1〜5および比較例1,2のトナーの被覆率がそれぞれ60%となるように、キャリアと前記トナーとをV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間混合して、二成分現像剤を作製した。
上述のようにして得られた二成分現像剤を市販の複写機(商品名:MX−4500N、シャープ株式会社製)にセットし、常温常湿下において3分間空転した後、二成分現像剤を採取し、吸引式帯電量測定装置(商品名:210H−2A Q/M Meter、TREK社製)によって初期帯電量を測定した。次いで、常温常湿下において、上記複写機によりベタ画像を50,000枚実写した後、二成分現像剤を採取し、初期帯電量と同様にして50,000枚実写後の帯電量を測定した。得られた50,000枚実写後の帯電量と初期帯電量との差|ΔQ1|(μC/g)を求め、以下に示す評価基準にしたがってライフ安定性を評価した。
○:5≧|ΔQ1|である。
△:7≧|ΔQ1|>5である。
×:|ΔQ1|>7である。
(b)立ち上がり性
キャリア(体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリア)0.95gとトナー0.05gとを含む二成分現像剤が入った5mlのガラス瓶を32rpmに設定した回転培養機にて1分間撹拌した後、二成分現像剤を採取し、吸引式帯電量測定装置(商品名:210H−2A Q/M Meter、TREK社製)によって1分間攪拌後の帯電量を測定した。次いで、同様にして3分間撹拌した後、二成分現像剤を採取し、3分間攪拌後の帯電量を測定した。得られた1分間攪拌後の帯電量と3分間攪拌後の帯電量との差|ΔQ2|(μC/g)を求め、以下に示す評価基準にしたがって立ち上がり性を評価した。
○:5≧|ΔQ2|である。
△:7≧|ΔQ2|>5である。
×:|ΔQ2|>7である。
〔総合評価〕
総合評価の評価基準は次のとおりである。
◎:評価結果が全て○である。
○:評価結果に×がなく、△が1個ある。
△:評価結果に×がなく、△が2個以上ある。
×:評価結果に×が1個以上ある。
表2に示した結果から、本発明における実施例1〜4のトナーは、比較例1,2のトナーと比較して以下のように優れていることが明らかである。
実施例1〜4のトナーは、被覆層にAl2O3−SiO2と微小樹脂粒子とを含有し、Al2O3−SiO2は被覆層に固定化され、微小樹脂粒子被覆樹脂の少なくとも一部は、コア粒子と融着していたために、保存安定性および帯電性(ライフ安定性および立ち上がり性)において、良好な結果を示した。
一方、比較例1のトナーは、被覆層にAl2O3−SiO2を含有していなかったために、帯電の立ち上がり性が悪化した。
また比較例2のトナーは、被覆層に微小樹脂粒子を含有していなかったために、保存安定性と帯電のライフ安定性が悪化した。