1、トナー製造方法
本発明に係るトナー製造方法は、特定のトナー製造装置を用いて行われる製造方法であって、回転攪拌手段を所定の回転数で回転させて、トナー母粒子と樹脂微粒子とを、粉体流路内で流動させる攪拌工程と、樹脂微粒子を可塑化させる液体を、噴霧手段によって、キャリアガスとともに噴霧する噴霧工程とを含む。特定のトナー製造装置とは、粉体が流動可能な粉体流路と、当該粉体流路内へキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、粉体流路内に、所定の物質をキャリアガスとともに噴霧する噴霧手段と、粉体流路内に設けられ、当該粉体流路内の粒子を攪拌して当該粒子を粉体流路内で流動させる回転攪拌手段と、粉体流路内の気体を排出する排気手段とを備えるトナー製造装置である。
以下では、本発明に係るトナー製造方法の実施形態であるトナー製造工程を説明する。図1は、トナー製造工程を表す工程図である。トナー製造工程は、粒子調製工程S1と、温度調整工程S2と、攪拌工程S3と、噴霧工程S4と、回収工程S5とを含む。
粒子調製工程S1では、トナー母粒子および樹脂微粒子をそれぞれ調製する。温度調整工程S2では、後述する図2に示すトナー製造装置201内の温度を調整する。攪拌工程S3では、トナー母粒子および樹脂微粒子をトナー製造装置201内で流動させて、トナー母粒子表面に樹脂微粒子を付着させる。噴霧工程S4では、トナー製造装置201内に、樹脂微粒子を可塑化させる液体(以下、「噴霧液体」と称する)を噴霧し、これによってトナー母粒子に付着した樹脂微粒子を可塑化させて、トナー母粒子表面に樹脂層を形成させる。回収工程S5では、樹脂層が表面に形成されたトナー母粒子(トナー粒子)を回収する。以下では、各工程S1〜S5を詳細に説明する。
(1)粒子調製工程S1
粒子調製工程S1では、トナー母粒子および樹脂微粒子をそれぞれ調製する。
(i)トナー母粒子の調製
トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含む粒子であり、公知の調製方法によって得ることができる。トナー母粒子の調製方法は特に限定されない。トナー母粒子の調製方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法が挙げられる。以下では、粉砕法によるトナー母粒子の調製について説明する。
(トナー母粒子原料)
結着樹脂は特に限定されるものではなく、黒トナーまたはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂が挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
結着樹脂は、ガラス転移点が30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングが発生しやすくなり、トナーの保存安定性が低下してしまう。結着樹脂のガラス転移点が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生してしまう。
上記の結着樹脂のうち、ポリエステルは透明性に優れ、凝集粒子に、良好な粉体流動性、低温定着性、および2次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の結着樹脂として好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物が挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
多価アルコールとしては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は公知の方法によって行うことができる。重縮合反応は、たとえば、有機溶媒の存在下、または有機溶媒の非存在下かつ重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了される。このような重縮合反応によってポリエステルが得られる。
また、多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、これによって、得られるポリエステルの特性を変性できる。また、多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができ、これによって、変性ポリエステルが得られる。ポリエステルの主鎖および側鎖の少なくとも1つにカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させ、水中での自己分散性を有するポリエステルとしてもよい。また、ポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化してもよい。
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部、さらに好ましくは5重量部〜10重量部である。
また、トナー母粒子には、添加剤として電荷制御剤が含まれてもよい。電荷制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用のもの、または負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸ならびにその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸が挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用でき、または必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部〜3重量部である。
また、トナー母粒子には、添加剤として離型剤が含まれてもよい。離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸が挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部〜20重量部、さらに好ましくは0.5重量部〜10重量部、特に好ましくは1.0重量部〜8.0重量部である。
(トナー母粒子の調製方法)
粉砕法によるトナー母粒子の調製では、結着樹脂、着色剤、およびその他の添加剤を含むトナー母粒子原料が、混合機で乾式混合された後、混練機によって溶融混練される。溶融混練によって得られる混練物は冷却固化され、固化物が粉砕機によって粉砕される。その後、必要に応じて分級などの粒度調整が行われ、トナー母粒子が得られる。
乾式混合では、着色剤を含むマスターバッチ、添加剤を含む複合粒子を用いてもよい。複合粒子は、たとえば、添加剤の2種以上と、適量の水と、低級アルコールとを混合し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチ、複合粒子を用いることで、着色剤、添加剤を、混練物中に均一に分散させることができる。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)が挙げられる。
混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、2軸押出し機、3本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)、PCM−30(商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
粉砕機としては公知のものを使用でき、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などが挙げられる。
分級機としては、遠心力による分級、風力による分級などによって過粉砕トナー母粒子を除去する公知の分級機を使用でき、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などが挙げられる。
(トナー母粒子)
トナー母粒子は、体積平均粒径が4μm以上8μm以下であることが好ましい。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm以上8μm以下であると、トナー母粒子から製造されるトナーは、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm未満であると、トナー粒子の粒径が小さくなりすぎ、トナーの高帯電化および低流動化が起きてしまう。トナーの高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生してしまう。
一方、トナー母粒子の体積平均粒径が8μmを超えると、トナー粒子の粒径が大きくなりすぎ、形成画像の層厚が大きくなって著しく粒状性を感じる画像となってしまう。また、トナー粒子の粒径が大きくなりすぎると、高精細な画像を得ることができなくなってしまう。また、トナー粒子の粒径が大きくなりすぎると、比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生してしまう。
また、トナー母粒子の体積平均粒径が4μm以上8μm以下であると、トナー粒子を小粒径化することができるので、感光体へのトナーの付着体積量が少なくても高い画像濃度が得られ、よって、現像装置のトナー容量を削減することができる。
(ii)樹脂微粒子の調製
樹脂微粒子は、トナー母粒子表面を被覆する被覆材料として用いられる。本実施形態において、樹脂微粒子は、公知の乾燥方法によって得られる2次凝集体として用いられる。この2次凝集体は、攪拌工程S3において解砕され、1次粒子に近いサイズの微粒子としてトナー製造装置201内を循環し、トナー母粒子表面に付着する。
トナー母粒子に樹脂微粒子を付着させて、トナー母粒子を被覆することで、たとえば、トナーの保存の際に、トナー母粒子に含まれる低融点の離型剤などが融解することによるトナーの凝集を防止することができる。また、樹脂微粒子の形状がトナー母粒子表面に残るので、平滑な表面を有するトナー粒子に比べて、クリーニング性に優れるトナー粒子を得ることができる。
(樹脂微粒子原料)
樹脂微粒子に用いられる樹脂としては、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体などを用いることができる。樹脂微粒子は、上記の樹脂の中でも、アクリル樹脂およびスチレン−アクリル共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。アクリル樹脂およびスチレン−アクリル共重合体は、軽量で高い強度を有する、透明性が高い、安価である、粒径の揃った樹脂微粒子を得やすいなどの多くの利点を有する。
樹脂微粒子に用いられる樹脂は、トナー母粒子に用いられる結着樹脂と同じ種類の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよいけれども、トナーの表面改質を行う点から、異なる種類の樹脂が好ましい。樹脂微粒子に用いられる樹脂として、異なる種類の樹脂を用いる場合、樹脂微粒子に用いられる樹脂の軟化点が、トナー母粒子に用いられる結着樹脂の軟化点よりも高いことが好ましい。このような軟化点の樹脂を用いることによって、トナーの保存の際にトナー同士の融着を防止でき、トナーの保存安定性を向上させることができる。また、樹脂微粒子に用いられる樹脂の軟化点は、トナーが使用される画像形成装置によるけれども、80℃以上140℃以下であることが好ましい。軟化点がこのような温度範囲内にある樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えるトナーを得ることができる。
(樹脂微粒子の調製方法)
樹脂微粒子は、たとえば、樹脂微粒子原料をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができる。また、樹脂微粒子は、モノマーの重合によって得ることもできる。
調製した樹脂微粒子は、公知の乾燥方法によって乾燥される。乾燥方法は特に限定されず、たとえば熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などが挙げられる。
樹脂微粒子の乾燥方法によって、樹脂微粒子の2次凝集体の形状、粒径分布などは異なる。また、保存条件、保存方法などによっても、2次凝集体の形状、粒径分布などは異なってくる。一般に、保存時間が長くなると樹脂微粒子の凝集性は増し、解砕することが困難になる。よって、樹脂微粒子の凝集性を高くしないために、乾燥の際は、樹脂微粒子の温度を上げ過ぎないことが好ましい。乾燥の際に温度を上げない乾燥方法として、凍結乾燥法などが挙げられる。
(樹脂微粒子)
樹脂微粒子の体積平均粒径は、トナー母粒子の体積平均粒径よりも充分に小さいことが必要である。樹脂微粒子の体積平均粒径は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。樹脂微粒子の体積平均粒径が0.05μm以上1μm以下であることによって、好適な大きさの突起部がトナー母粒子表面に形成される。この突起部によって、トナーを除去する際にトナー粒子がクリーニングブレードに引っ掛かり易くなるので、トナーのクリーニング性を向上させることができる。
また、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。2次凝集体の体積平均粒径をこの範囲内にすることで、2次凝集体の取り扱いが容易となり、ハンドリング性が向上する。さらに、2次凝集体を解砕する効率も向上する。
(2)トナー製造装置
温度調整工程S2の説明の前に、温度調整工程S2、およびこれ以降の工程S3〜S5において用いられるトナー製造装置201について説明する。
図2は、トナー製造装置201の正面図である。図3は、トナー製造装置201を切断面線A200−A200で切断したときの断面図である。図4は、トナー製造装置201の側面図である。トナー製造装置201は、粉体流路202と、噴霧部203と、回転攪拌部204と、粉体投入部206と、粉体回収部207と、図示しない温度調整用ジャケットとを備える。
粉体流路202は、トナー母粒子、樹脂微粒子、キャリアガスなどが流動するための内部空間を有する。粉体流路202は、攪拌室208と、粉体流過部209とからなる。
攪拌室208は、内部空間を有する略円柱形状の容器状部材である。攪拌室208には、開口部210,211が形成される。開口部210は、攪拌室208の軸線方向一端壁部である壁部208aの略中央部において、壁部208aを厚み方向に貫通するように形成される。開口部211は、攪拌室208の壁部208aに垂直な壁部である壁部208bを厚み方向に貫通するように形成される。また、攪拌室208には、貫通孔221が形成される。貫通孔221は、攪拌室208の壁部208aに平行な壁部である壁部208cを厚み方向に貫通するように形成される。また、攪拌室208内には、回転攪拌部204が設けられる。
回転攪拌部204は、回転軸部218と、円盤状の回転盤219と、複数の攪拌羽根220と、ガス排出部222とを含む。回転軸部218は、攪拌室208の軸線に一致する軸線を有し、かつ、貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しない駆動モータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転軸部218は、駆動モータに電流が印加されることによって回転する。回転軸部218には、図示しない電流計が設けられ、駆動モータに印加される電流の電流値を計測することができる。
回転軸部218は、回転攪拌部204の最外周における周速度を50m/sec以上にして回転可能である。ここで、回転攪拌部204の最外周とは、回転軸部218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部218の軸線との距離が最大となる攪拌羽根220の一部分である。
また、回転軸部218は、攪拌室208内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段である。回転軸部218には、図示しないキャリアガス供給量制御手段が設けられ、供給するキャリアガスの単位時間当たり供給量を調整することができる。また、回転軸部218には、図示しないフロート式の流量計が設けられ、キャリアガスの供給量を測定することができる。回転軸部218は、攪拌室208内にキャリアガスを送り込むことによって、トナー粒子などがガス排出部222から粉体流路202外へ排出されるのを防ぐことができる。これによって、トナーの収率低下を防止するとともに、駆動モータへのトナーの流れ込みを防止し、トルクの増大による消費電力の増加、駆動モータの故障などを防ぐことができる。キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。
回転盤219は、その軸線が回転軸部218の軸線に一致するように回転軸部218に支持され、回転軸部218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の攪拌羽根220は、回転盤219によって支持され、回転盤219の回転に伴って回転する部材である。回転軸部218、回転盤219、および攪拌羽根220は、回転攪拌することによって粉体、キャリアガスなどに衝撃力を付与し、粉体、キャリアガスなどを粉体流路202内で流動させる回転攪拌手段である。粉体、キャリアガスなどは、矢符214で示すように、開口部211から攪拌室208を出て、開口部210から攪拌室208に入るように流動する。
ガス排出部222は、粉体流路202内の気体を排出する排気手段である。粉体流路202内の気体は、キャリアガス、後述する噴霧部203によって噴霧された噴霧液体の蒸気などからなる。ガス排出部222によって噴霧液体の蒸気を排出することによって、粉体流路202内の噴霧液体の乾燥速度を速め、未乾燥の噴霧液体による粉体の凝集を防止することができる。また、ガス排出部222には、図示しないガス検知器が設けられ、粉体流路202外へ排出される気体中の噴霧液体の蒸気の濃度を測定することができる。ガス排出部222は複数設けられてもよい。
粉体流過部209は、内部空間を有する筒状部材であり、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって、攪拌室208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。粉体流過部209には、噴霧部203と、粉体投入部206と、粉体回収部207とが設けられる。
粉体投入部206は、トナー母粒子および樹脂微粒子を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備える。ホッパから供給されるトナー母粒子および樹脂微粒子は、電磁弁213によって供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して粉体流路202に供給される。粉体流路202に供給されるトナー母粒子および樹脂微粒子は、回転攪拌部204による攪拌によって、矢符214で示す流動方向に流動する。また、電磁弁213によって供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、トナー母粒子および樹脂微粒子は粉体流路202に供給されない。
粉体回収部207は、回収タンク215と、回収タンク215と粉体流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備える。電磁弁217によって回収管216内の流路が開放されている状態において、粉体流路202内を流動するトナー粒子は回収管216を介して回収タンク215に回収される。また、電磁弁217によって回収管216内の流路が閉鎖されている状態においては、粉体流路202内を流動するトナー粒子は回収されない。
噴霧部203は、粉体流過部209の開口部211付近に設けられる噴霧手段である。噴霧部203は、図示しない液体貯留部と、図示しないキャリアガス供給部と、二流体ノズル205と、図示しない噴霧量制御手段とを備える。
キャリアガス供給部は、粉体流過部209内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段である。キャリアガス供給部には、図示しないフロート式の流量計が設けられ、キャリアガスの供給量を測定することができる。
液体貯留部は、噴霧液体を貯留する。また、液体貯留部は、図示しない送液ポンプを備え、設定値の量の揮発性液体を、二流体ノズル205へ送り出す。
液体貯留部に貯留される噴霧液体は、樹脂微粒子を可塑化させるものである。噴霧液体は、トナー母粒子および樹脂微粒子を溶解しないことが好ましい。また、樹脂微粒子を可塑化させ、かつ、溶解しない噴霧液体は、特に限定されないけれども、噴霧液体の噴霧後に除去される点から、蒸発し易い揮発性液体であることが好ましい。
揮発性液体は低級アルコールを含むことが好ましい。低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これら低級アルコールの含有量は、充分に速く蒸発し、かつ、充分に樹脂微粒子を可塑化させるために、揮発性液体全体に対して90%以上であることが好ましい。これら低級アルコールを含む揮発性液体を用いることで、樹脂微粒子のトナー母粒子に対する濡れ性を高めることができる。これによって、トナー母粒子の表面全面または大部分に樹脂微粒子を付着させ、さらに変形、膜化させることが容易となる。
また、アルコールは乾燥速度が大きいので、揮発性液体の除去にかかる時間を一層短縮することができる。これによって、トナー母粒子同士の凝集を抑えることができる。また、アルコールを含む揮発性液体は、樹脂を溶解しにくいので、トナー母粒子の溶解を抑えることができる。
さらに、低級アルコールとしては、沸点が樹脂微粒子のガラス転移点±20℃以内であるアルコールを選択することが好ましい。揮発性液体に含まれるアルコールの沸点が、樹脂微粒子のガラス転移点±20℃の範囲内であると、当該アルコールは樹脂微粒子のガラス転移点付近で速やかに蒸発し、樹脂微粒子の温度上昇を効果的に抑えることができる。
また、揮発性液体の粘度は5cP以下であることが好ましい。ここで、揮発性液体の粘度は、25℃において測定される値である。揮発性液体の粘度は、たとえば、コーンプレート型回転式粘度計によって測定することができる。粘度が5cP以下の揮発性液体で好ましいものとしては、上記アルコール(メタノール、エタノールなど)が挙げられる。これらのアルコールは粘度が小さく、かつ、蒸発し易いので、噴霧部203による噴霧液滴径が粗大化することなく、微細な噴霧が可能となる。これによって、均一な液滴径で、揮発性液体の噴霧が可能となる。また、トナー母粒子と液滴との衝突によって、さらに液滴の微細化を促進することができる。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子表面が均一に濡れ馴染み、揮発性液体と衝突エネルギーとの相乗効果で樹脂微粒子を軟化することができるので、層厚が均一な樹脂層が形成されたトナーを製造することができる。
したがって、噴霧液体としてアルコールを含む揮発性液体を用いれば、トナー母粒子表面に均一な層厚の樹脂層を形成することができる。また、トナー母粒子および樹脂微粒子による凝集体の発生、およびトナー母粒子および樹脂微粒子のトナー製造装置201内壁面への付着を抑えることができる。
二流体ノズル205は、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられる。二流体ノズル205は、噴霧液体とキャリアガスとを混合し、混合物を粉体流路202内に噴霧する。二流体ノズル205からの噴霧液体の噴霧方向と、粉体の流動方向との成す角度θは、0°以上45°以下であることが好ましい。ここで、噴霧液体の噴霧方向とは、二流体ノズル205の軸線の方向である。角度θがこのような範囲内であると、噴霧液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳することが防止され、樹脂層が表面に形成されたトナー母粒子(トナー粒子)の収率を一層向上することができる。
角度θが45°を超えると、噴霧液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳し易くなって、噴霧液体が滞留し易くなる。これによって、トナー母粒子の凝集が発生し、トナーの収率が低下する。二流体ノズル205は、角度θ=0°となるように、すなわち粉体の流動方向と噴霧液体の噴霧方向とが平行になるように設けられることが、より好ましい。これによって、噴霧部203からの噴霧液滴が粉体と同方向に流動するので、より反跳が抑えられる。
また、二流体ノズル205による噴霧の拡がり角度φは、20°以上90°以下であることが好ましい。拡がり角度φがこの範囲から外れると、トナー母粒子に対する噴霧液体の均一な噴霧が困難となってしまう。
噴霧量制御手段は、液体貯留部から供給される噴霧液体の単位時間当たりの噴霧量と、キャリアガス供給部から供給されるキャリアガスの単位時間当たりの供給量とを、それぞれ調整する。
温度調整用ジャケットは、粉体流路202壁部の少なくとも一部に設けられる。温度調整用ジャケットは、粉体流路202壁部の外壁面に設けられ、ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通すことで、粉体流路202内温度を一定に調整してトナー母粒子の付着を防止する。温度調整用ジャケットは、粉体流路202壁部の、トナー母粒子が付着しやすい部分に設けられることが好ましい。
たとえば、温度調整用ジャケットは、粉体流過部209壁部の、噴霧部203より流動方向下流の部分に設けられる。このように温度調整用ジャケットを設けることによって、噴霧された噴霧液体が乾燥せずに滞留する状態を防ぐことができる。これによって、滞留した噴霧液体による、トナー母粒子の粉体流路202内壁面への付着およびトナー母粒子同士の凝集を防ぐことができる。
また、温度調整用ジャケットは、攪拌室208壁部の、開口部210付近の部分に設けられる。このように温度調整用ジャケットを設けることによって、開口部210から攪拌室208に流入するトナー母粒子と、攪拌室208内を流動するトナー母粒子との衝突による、トナー母粒子の、開口部210付近への付着を防ぐことができる。さらに、温度調整用ジャケットは、粉体流過部209壁部全部および攪拌室208壁部の一部に設けられることが好ましく、粉体流路202壁部全部に設けられることがより好ましい。このように温度調整用ジャケットを設けることによって、トナー母粒子の粉体流路202内壁面への付着を一層確実に防止することができる。
上述したようなトナー製造装置201は、市販品の攪拌装置と噴霧装置とを組合せて得ることができる。粉体流路および回転攪拌部を備える市販の攪拌装置としては、たとえば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような攪拌装置に噴霧液体を噴霧する噴霧装置を取付けることによって、トナー製造工程に用いるトナー製造装置201とすることができる。
(3)温度調整工程S2
温度調整工程S2では、回転攪拌部204が回転しながら、粉体流路202内温度が、攪拌工程S3における初期温度に調整される。温度調整工程S2において、回転攪拌部204は、温度調整工程S2の始期を除き、所定の回転数で回転する。
粉体流路202内温度は、粉体流路202壁部の外壁面に設けられる温度調整用ジャケットに水などの温度調整用媒体を通すことによって調整される。これによって、粉体流路202内の温度を、攪拌工程S3において投入されるトナー母粒子および樹脂微粒子が軟化変形しない温度に制御することができる。
温度調整工程S2では、粉体流路202内温度は55℃以下に調整されることが好ましい。これによって、攪拌工程S3において樹脂微粒子の2次凝集体を充分に解砕することができる。また、樹脂微粒子の解砕後、トナー母粒子および樹脂微粒子を攪拌することによる、粉体流路202内温度の上昇を利用して、樹脂微粒子をトナー母粒子表面に付着および固定化することができる。したがって、噴霧工程S4において、層厚がより均一な樹脂層をトナー母粒子表面に形成することができる。また、攪拌工程S3において、回転攪拌部204および粉体流路202内への、トナー母粒子および樹脂微粒子の付着を防止することができるので、トナーの収率をより向上させることができる。
本実施形態において、温度調整工程S2にかかる時間は、1分間〜3分間であり、温度調整工程S2中の粉体流路202内温度は、温度調整用ジャケットによって、15℃〜30℃に調整される。
(4)攪拌工程S3
温度調整工程S2が終了すると、攪拌工程S3が開始される。攪拌工程S3では、粉体投入部206からトナー母粒子および樹脂微粒子が粉体流路202に供給され、回転攪拌部204が回転する。攪拌工程S3中、回転攪拌部204は、温度調整工程S2における所定の回転数を維持し、一定の回転数で回転する。
粉体流路202に供給されたトナー母粒子および樹脂微粒子は、回転攪拌部204によって攪拌され、粉体流過部209を矢符214の示す方向に流動する。このとき、トナー母粒子は樹脂微粒子とともに流動することで、その表面に樹脂微粒子が付着する。
より具体的には、2次凝集体として投入された樹脂微粒子が、回転攪拌部204によって粉体流路202内を循環する。樹脂微粒子を粉体流路202内に投入している間、および投入完了直後、回転攪拌部204から衝撃力を付与された樹脂微粒子は、1次粒子のサイズ近くの微粒子にまで解砕される。
樹脂微粒子が解砕されると、粉体流路202内の粉体数が増え、粉体の粘性が増大するので、回転攪拌部204にかかる負荷は増加する。トナー母粒子および樹脂微粒子の投入完了後は、攪拌工程S3中、粉体流路202内に存在する粉体の全質量はほぼ変化しないので、回転攪拌部204にかかる負荷は、粉体数のみに影響されることになる。以下では、攪拌工程S3中において回転攪拌部204にかかる負荷をFとする。
一方、仮に、粉体流路202内温度、回転攪拌部204の回転数などの攪拌工程S3における各条件を同一条件としたままで、トナー母粒子のみを粉体流路202内に投入した場合には、粉体数はほとんど増加しない。すなわち、回転攪拌部204を所定の回転数で回転させて、トナー母粒子のみを、粉体として、粉体流路202内で流動させた場合において回転攪拌部204にかかる負荷をFcoreとすると、トナー母粒子の投入中および投入完了直後を除き、Fcoreは一定の値となる。
また、同一条件で粉体を投入しない場合、すなわち、回転攪拌部204を所定の回転数で回転させて空転させた場合において、回転攪拌部204にかかる負荷をF0とすると、F0は当然一定の値となる。負荷F、Fcore、F0から、(F−F0)は、攪拌工程S3における回転攪拌部204にかかる負荷の増加分を示し、(Fcore−F0)は、トナー母粒子による回転攪拌部204にかかる負荷の増加分を示すことがわかる。
この回転攪拌部204にかかる負荷F(およびFcore、F0)は、回転攪拌部204を一定の回転数で回転させるために回転攪拌部204に加えられるトルクと、大きさが等しく向きが異なる回転力である。よって、回転攪拌部204に加えられるトルクを計測することによって、これらの負荷を計測することができる。
また、このトルクの大きさと、回転攪拌部204に備えられる駆動モータに印加される電流値との間には比例関係が成り立つ。よって、この電流値をIとすると、以下の関係式が成り立つ。
I = αF (αは比例定数)
したがって、電流値Iを計測することによって、負荷F(およびFcore、F0)を計測することもできる。回転攪拌部204に加えられるトルクを計測する場合と比較して、電流値Iを計測する方が、容易に、かつ、精密に、回転攪拌部204にかかる負荷F(およびFcore、F0)を測定することができるので、電流値Iによって負荷F(およびFcore、F0)を計測することが好ましい。本実施形態では、回転軸部218の駆動モータに取り付けられる電流計によって計測される電流値Iによって、負荷F(およびFcore、F0)が計測される。
トナー製造装置201の様々な条件によって、比例定数αは異なるけれども、比例定数αを「1」とすれば、F=Iとなる。また、比例定数αが「1」の場合であって、Fの添え字とIの添え字とが同一の場合、Fの値とIの値とは等しい。すなわち、Fcore=Icoreであり、F0=I0である。
上述したように、攪拌工程S3中、回転攪拌部204は一定の回転数で回転するので、負荷Fが増加すれば、トルク(および電流値I)が増加する。よって、負荷Fが増加すれば、トナー製造装置201が消費するエネルギーが増加することになる。消費されたエネルギーは、結果として、粉体流路202内温度の上昇として現れる。すなわち、回転攪拌部204が一定の回転数で回転している場合に電流値Iが増加していれば、粉体流路202内温度が上昇しているということである。
このように、攪拌工程S3では、温度調整工程S2と比較して、粉体流路202内温度が上昇する。攪拌工程S3では、回転攪拌部204によって付与される衝撃力のみではなく、粉体流路202内温度の上昇に伴う樹脂微粒子の可塑化との相乗効果によって、樹脂微粒子をトナー母粒子表面へ付着させている。なお、樹脂微粒子の付着が進行し、粉体流路202内の粉体数が減少していくと負荷Fは減少し、電流値Iも減少する。
攪拌工程S3では、粉体流路202内温度は樹脂微粒子のガラス転移点以下であることが好ましい。さらに、粉体流路202内温度は、トナー母粒子のガラス転移点以下であることがより好ましい。これによって、樹脂微粒子の2次凝集体を安定して解砕することができる。また、トナー母粒子および樹脂微粒子の、流動および攪拌に起因する粉体流路202内温度の上昇によってトナー母粒子および樹脂微粒子が過度に軟化することを抑えることができる。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子の凝集、ならびにトナー母粒子および樹脂微粒子の粉体流路202内壁面への付着を防止することができる。
本実施形態において、攪拌工程S3にかかる時間は、5分間〜15分間であり、攪拌工程S3中の粉体流路202内温度は、温度調整用ジャケットによって、30℃〜60℃に調整される。
また、攪拌工程S3において、トナー母粒子および樹脂微粒子は、回転盤219に対して垂直に回転盤219と衝突することが好ましく、回転盤219に対して垂直に回転軸部218と衝突することがより好ましい。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子が回転盤219に対して平行に衝突する場合と比較して、トナー母粒子および樹脂微粒子が充分に攪拌される。したがって、樹脂微粒子はトナー母粒子表面により均一に付着する。よって、より均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを得ることができる。
(5)噴霧工程S4
攪拌工程S3が終了すると、噴霧工程S4が開始される。噴霧工程S4では、まず、回転攪拌部204を回転しながら、噴霧部203から噴霧液体が噴霧される。噴霧工程S4では、回転攪拌部204の回転数は、攪拌工程S3のように一定であってもよいし、噴霧工程S4の途中から変化してもよい。
噴霧工程S4の開始時期は、回転攪拌部204の回転中であって、樹脂微粒子の粉体流路202内への投入完了後、下記式(1)を満たす期間内である。
1.7 ≦ (F−F0) / (Fcore−F0) ≦ 5.7 …(1)
(以下、(F−F0)/(Fcore−F0)=fを、「負荷係数f」と称する)
なお、噴霧工程S4の開始は、噴霧部203による噴霧液体の噴霧の開始と等しい。
トナー母粒子および樹脂微粒子は、粉体流路202内を流動している状態で噴霧部203から噴霧液体が噴霧されることで、それぞれの表面に噴霧液体が付着する。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子が可塑化する。トナー母粒子表面の、可塑化した樹脂微粒子は、回転攪拌部204によって付与される衝撃力と、粉体流路202内における流動および回転攪拌部204による攪拌によって加わる熱的エネルギーとの相乗効果によって軟化変形して、トナー母粒子表面上で連続した膜となる。このようにして、トナー母粒子表面に樹脂層が形成される。
このとき、トナー母粒子に付着せずに孤立した状態で流動している樹脂微粒子が残っていれば、樹脂微粒子のトナー母粒子表面への固定化が進行するので、粉体流路202内の粉体数が減少する。したがって、回転攪拌部204を一定の回転数で回転させても、粉体流路202内温度が上昇しにくくなる。また、このとき、噴霧液体が蒸発して、粉体流路202内の熱エネルギーが奪われる。これによって、粉体流路202内温度は上昇しにくくなる。
しかしながら、噴霧工程S4の開始が遅過ぎると、粉体流路202内温度は上昇し過ぎて、トナー母粒子の融解が起きてしまう。その結果、トナー母粒子に含まれる、離型剤などの添加剤が、トナー母粒子表面の樹脂層に染み出してしまう。このような離型剤の染み出し(以下、「ワックスブリード」と称する)が起こると、流動性、保存安定性などの、トナーの特性が著しく低下してしまう。
一方、噴霧工程S4の開始が早過ぎると、充分な量の樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着する前に、樹脂微粒子が可塑化する。可塑化した樹脂微粒子は、トナー母粒子表面だけではなく、粉体流路202内壁面にも付着しやすくなる。よって、充分な量の樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着しないまま、樹脂層の形成が行われる。その結果、樹脂層の層厚が不均一なトナーとなってしまう。
そこで、充分な量の樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着した状態で、かつ、ワックスブリードが生じる前に、噴霧工程S4が開始される必要がある。しかしながら、樹脂微粒子のトナー母粒子表面への付着進行具合、およびワックスブリードが発生する時期は、樹脂微粒子の特性、トナー母粒子の特性、およびトナー製造装置201の運転条件によって変わってくるものであり、従来の方法では見極めは難しいものである。
特に、樹脂微粒子に関しては、2次凝集体の大きさによって解砕後の微粒子の大きさ、形状が異なるものであり、樹脂微粒子の付着進行具合は、この解砕後の微粒子の大きさ、形状に影響される。樹脂微粒子の2次凝集体の大きさは、乾燥状態、保存条件によってバラつきが生じるものであるので、常に同一の時期に噴霧工程S4が開始されると、特性が低下したトナーが製造されてしまう可能性が高い。
上述したように、負荷F(および電流値I)と樹脂微粒子の付着進行具合とは、密接に関連している。また、負荷Fは、粉体流路202内温度とも関連しているので、負荷Fとワックスブリード発生時期との間にも関連がある。ただし、負荷Fは、粉体の条件、トナー製造装置201の条件などの様々な条件によって異なってくる。よって、負荷Fの大小によって噴霧工程S4の開始時期を決定することはできない。
本実施形態では、負荷係数fによって、噴霧工程S4の開始時期を決定する。負荷係数fは、攪拌工程S3における回転攪拌部204にかかる負荷の増加分(F−F0)と、トナー母粒子による回転攪拌部204にかかる負荷の増加分(Fcore−F0)との比である。よって、負荷係数fは、粉体の条件によらずに樹脂微粒子の付着進行具合を示す指標となる。
また、負荷Fを電流値Iによって表す場合、比例定数αの値が必要となるけれども、負荷係数fは比例定数αに依存しない。すなわち、負荷係数fはトナー製造装置201の条件によらないことがわかる。
具体的には、本実施形態では、負荷係数fが、5.7以下であるときに、噴霧工程S4が開始される。すなわち、トナー製造装置201に投入される樹脂微粒子の2次凝集体の大きさによらず、2次凝集体の状態から解砕された樹脂微粒子が、トナー母粒子表面に充分に付着した後に、樹脂微粒子を可塑化させる噴霧液体の噴霧が開始される。
また、負荷係数fが1.7以上であるときに、噴霧工程S4が開始される。すなわち、過度に加熱されることによる、トナー母粒子および樹脂微粒子の融解が進行する前に、樹脂微粒子を可塑化させる噴霧液体の噴霧が開始される。よって、トナー母粒子に含まれる離型剤などの添加剤が、トナー母粒子表面へ染み出すことを防ぐことができる。
このように、本実施形態によれば、流動性、保存安定性などの特性が優れ、かつ、層厚が均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを製造することができる。
さらに、噴霧工程S4の開始時期は、回転攪拌部204の回転中であって、樹脂微粒子の粉体流路202内への投入完了後、下記式(2)を満たす期間内であることが好ましい。
2.15 ≦ (F−F0) / (Fcore−F0)≦ 4.15 …(2)
(上記のように、(F−F0)/(Fcore−F0)=fを、「負荷係数f」と称する)
負荷係数fが4.15以下であるときに噴霧工程S4が開始されると、2次凝集体の状態から解砕された樹脂微粒子が、トナー母粒子表面により充分に付着した後に、樹脂微粒子を可塑化させる噴霧液体の噴霧が開始される。また、負荷係数fが2.15以上であるときに噴霧工程S4が開始されると、トナー母粒子および樹脂微粒子が融解してしまう前に、樹脂微粒子を可塑化させる液体の噴霧が開始される。
したがって、流動性、保存安定性などの特性がより優れ、かつ、層厚がより均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを製造することができる。
また、噴霧工程S4は、粉体流路202におけるトナー母粒子および樹脂微粒子の流動速度が安定してから、開始されることが好ましい。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子に噴霧液体を均一に噴霧することができる。したがって、層厚がより均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを製造することができる。
噴霧工程S4における噴霧液体の噴霧中、噴霧部203および回転軸部218から、粉体流路202内にキャリアガスが供給される。噴霧部203および回転軸部218から供給されるキャリアガスは、ガス排出部222からトナー製造装置201外へ排出される。このとき、噴霧部203および回転軸部218からのキャリアガス供給量と、ガス排出部222からのキャリアガス排出量とは略同一であることが好ましい。
キャリアガス供給量と比較してキャリアガス排出量が少な過ぎると、トナー製造装置201内に存在する気体中の噴霧液体の蒸気濃度が過度に上昇し、噴霧液体の蒸発が進まなくなる。その結果、トナー母粒子および樹脂微粒子の凝集が起こったり、粉体流路202内壁面に付着した噴霧液体にトナー母粒子または樹脂微粒子が付着し、付着した粒子を核として、これ以外の粒子の堆積が起こったりしてしまう。また、粒子の堆積によって、粉体が流動するための流路が狭くなり、トナー母粒子および樹脂微粒子の孤立流動が妨げられるので、樹脂層の層厚が不均一になってしまう。
一方、キャリアガス供給量と比較してキャリアガス排出量が多過ぎると、ガス排出部222からの粉体のトナー製造装置201外への流出が顕著となり、収率が低下してしまう。また、回転軸部218への粉体の流れ込みが生じ、駆動モータの負荷増大、消費電力の増加などを引き起こしてしまう。
また、噴霧工程S4において噴霧された噴霧液体は、粉体流路202内において一定の蒸気濃度になるように蒸発することが好ましい。これによって、噴霧液体の蒸気濃度が一定に保たれていない場合と比較して、噴霧液体の乾燥速度を速めることができる。よって、未乾燥の噴霧液体によるトナー母粒子の凝集をより抑制することができる。したがって、トナーの収率をより一層向上させることができる。
このとき、粉体流路202内の噴霧液体の蒸気は、キャリアガスとともに、貫通孔221を通って粉体流路202外へ排出されることが好ましい。これによって、粉体流路202内の蒸気濃度を一定に保つことができる。
また、ガス排出部222において測定される噴霧液体の蒸気濃度は、10%以下であることが好ましく、0.1%以上3.0%以下であることがより好ましい。噴霧液体の蒸気濃度がこの範囲内であると、トナーの生産性を低下させることなく、トナー母粒子の凝集を防止することができる。
噴霧工程S4では、噴霧液体の噴霧が完了した後も、所定時間、回転攪拌部204が回転し続け、トナー母粒子および樹脂微粒子が粉体流路202内を繰り返し循環する。所定時間、回転攪拌部204が回転した後、回転攪拌部204の回転が停止する。
噴霧工程S4を通じて、粉体流路202内温度は、トナー母粒子のガラス転移点以下であることが好ましく、30℃以上トナー母粒子のガラス転移点以下であることがより好ましい。粉体流路202内温度は、トナー母粒子の流動によって、粉体流路202内のどの部分においても略均一となる。粉体流路202内温度がトナー母粒子のガラス転移点を超えると、粉体流路202内でトナー母粒子が軟化し過ぎ、トナー母粒子の凝集が発生してしまう。また、粉体流路202内温度が30℃未満であると、噴霧液体の乾燥速度が遅くなりトナーの生産性が低下してしまう。
本実施形態において、噴霧液体の噴霧にかかる時間は10分間〜45分間であり、その後、回転攪拌部204が回転する所定時間は5分間〜15分間である。また、本実施形態において、噴霧工程S4中の粉体流路202内温度は、温度調整用ジャケットによって、40℃〜60℃に調整される。
(6)回収工程S5
噴霧工程S4が終了すると、回収工程S5が開始される。回収工程S5では、粉体回収部207によって、樹脂層が表面に形成されたトナー母粒子(トナー粒子)が、トナー製造装置201外へ排出され回収される。本実施形態において、回収工程S5にかかる時間は、1分間〜2分間であり、回収工程S5中の粉体流路202内温度は、温度調整用ジャケットによって、30℃〜50℃に調整される。
このように、S1〜S5の工程からなるトナー製造工程によれば、噴霧工程S4の前に、攪拌工程S3において樹脂微粒子の2次凝集体が解砕されるので、解砕された状態の樹脂微粒子がトナー母粒子表面へ付着する。その後、噴霧液体の噴霧によって樹脂微粒子が展延されるので、樹脂層の層厚を均一にすることができ、トナー母粒子表面の露出を防ぐことができる。
樹脂微粒子の2次凝集体が解砕されないままの状態で、トナー母粒子および樹脂微粒子に噴霧液体が噴霧されると、凝集した樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着して膜化するので、層厚の不均一な樹脂層が形成されてしまう。
また、トナー製造工程において、トナー母粒子の投入が完了し、回転攪拌部204にかかる負荷がFcoreとなって安定した後に、樹脂微粒子の投入が開始されることが好ましい。これによって、トナー母粒子の流動が安定した状態で処理を行うことができるため、攪拌工程S3において樹脂微粒子の2次凝集体がより細かく解砕され、樹脂層の層厚をより均一にすることができる。
また、工程S2〜S4を通じて、回転攪拌部204の最外周の周速度は、30m/sec以上であることが好ましく、50m/sec以上であることがより好ましい。最外周の周速度が30m/sec以上であると、粉体に対して充分な衝撃力が付与されるので、より層厚が均一な樹脂層を形成することができる。
また、本実施形態によれば、温度調整工程S2が行われることで、攪拌工程S3が行われる前に、粉体流路202内温度を好適な温度に調整することができる。これによって、攪拌工程S3以降に、トナー母粒子および樹脂微粒子が粉体流路202内壁面に付着することをより抑えながら、層厚が均一な樹脂層を形成することができる。
また、本実施形態では、温度調整用ジャケットを備えるトナー製造装置201を用いてトナーの製造が行われるので、ジャケット内部に加温媒または冷却媒が通されることで、各工程S2〜S5中において粉体流路202内温度の調整を行うことができる。
具体的には、攪拌工程S3において、粉体流路202内が所定の温度に調整されることによって、トナー母粒子および樹脂微粒子が軟化変形しない温度下で、トナー母粒子表面に樹脂微粒子を付着させることができる。これによって、トナー母粒子への樹脂微粒子の付着を円滑に進めることができる。したがって、その後の噴霧工程S4において均一な層厚の樹脂層を形成することができる。また、攪拌工程S3において、粉体流路202内温度の調整が行われることによって、トナー母粒子および樹脂微粒子の粉体流路202内壁面への付着を抑えることができる。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子によって粉体流路202内が狭くなることを防止することができる。
また、具体的には、噴霧工程S4において、粉体流路202内が所定の温度に調整されることによって、トナー母粒子、樹脂微粒子、および噴霧液体の温度のバラつきを少なくすることができる。これによって、トナー母粒子および樹脂微粒子を安定して流動させることができる。また、噴霧工程S4において、粉体流路202内温度の調整が行われることによって、過度の温度上昇によるトナー母粒子および樹脂微粒子の粉体流路202内壁面への付着を抑えることができる。また、噴霧液体が粉体流路202内に滞留することによるトナー母粒子および樹脂微粒子の粉体流路202内壁面への付着を防止することができる。
さらに、攪拌工程S3において工程開始時から一定時間経過して安定した粉体流路202内温度である攪拌安定温度は、噴霧工程S4において工程開始時から一定時間経過して安定した粉体流路202内温度である噴霧安定温度以下であることが好ましい。これによって、攪拌工程S3において、樹脂微粒子を、トナー母粒子表面の露出を少なくして、トナー母粒子表面に固定化することができるとともに、噴霧工程S4において、樹脂微粒子の展延処理を安定的に行うことができる。したがって、層厚の均一な樹脂微粒子層が形成されたトナーを製造することができる。
さらに、攪拌工程S3において工程開始時から所定時間経過後の粉体流路202内温度は、噴霧工程S4において工程開始時から同一の所定時間経過後の粉体流路202内温度以下であることが好ましい。これによって、攪拌工程S3において、樹脂微粒子が過度に軟化することを抑えることができるとともに、樹脂微粒子の2次凝集体を充分に解砕することができる。したがって、解砕された樹脂微粒子をトナー母粒子表面に均一に付着させることができる。
また、これによって、噴霧工程S4において、トナー母粒子表面に均一に付着した樹脂微粒子の展延処理を安定的に行うことができる。したがって、層厚の均一な樹脂微粒子層が形成されたトナーを製造することができる。
2.トナー
本発明に係るトナーは、本発明に係るトナー製造方法によって得られるものである。本発明に係るトナーの実施形態としては、上述したトナー製造工程によって得られたトナーが挙げられる。
トナー製造工程によって得られたトナーは、樹脂層の層厚が均一であって、添加剤の染み出しが抑えられたトナーである。したがって、このトナーは、トナー粒子の内包成分が保護され、耐久性および保存安定性に優れる。また、このトナーは、個々のトナー粒子間において、樹脂微粒子の付着量が均一であるので、個々のトナー粒子間における、帯電特性などのトナー特性が均一となる。よって、このトナーを用いると、高精細で、かつ、濃度ムラのない良好な画質の画像を、長期にわたって形成することができる。
また、このトナーは、外添剤が添加されたものであってもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。また、これらの外添剤は、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー100重量部に対して1重量部〜10重量部であることが好ましい。
3.1成分現像剤
本発明に係る1成分現像剤は、本発明に係るトナーを含む。本発明に係る1成分現像剤の実施形態としては、上述したトナーのみからなるものが挙げられる。このような1成分現像剤によれば、高精細であり、濃度ムラのない良好な画質の画像を、長期にわたって安定して形成することができる。
上述したトナーを1成分現像剤として使用する場合、ブレード、ファーブラシなどを用いてトナーを摩擦帯電させ、現像スリーブ上に付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
4.2成分現像剤
本発明に係る2成分現像剤は、本発明に係るトナーと、キャリアとを含む。本発明に係る2成分現像剤の実施形態としては、上述したトナーと、公知のキャリアとを含むものが挙げられる。このような2成分現像剤によれば、高精細で、かつ、濃度ムラのない良好な画質の画像を、長期にわたって形成することができる。
公知のキャリアとしては、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライト、キャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。
また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれの樹脂も、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。また、キャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm〜100μm、さらに好ましくは20μm〜50μmである。さらに、キャリアの抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。
キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読み取って得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。また、バイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g〜60emu/g、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となってしまう。また、磁化強さが60emu/gを超えるとキャリアの穂立ちが高くなり過ぎるので、非接触現像の場合には像担持体と非接触状態を保つことが困難になり、接触現像の場合にはトナー像に掃き目が現れ易くなってしまう。
トナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5g/cm2〜8g/cm2)を例にとれば、2成分現像剤中に、トナーが2成分現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いる。また、2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%〜80%であることが好ましい。
5.現像装置および画像形成装置
本発明に係る現像装置は、本発明に係る1成分現像剤、または本発明に係る2成分現像剤を用いて現像を行う。また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る現像装置を備える。以下では、本発明に係る現像装置の実施形態である現像装置14、および本発明に係る画像形成装置の実施形態である画像形成装置100を説明する。
図5は、画像形成装置100の断面を概略的に示す模式図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100は、コピアモード(複写モード)、プリンタモード、およびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。
画像形成装置100は、トナー像形成部2と、転写部3と、定着部4と、記録媒体供給部5と、排出部6とを含む。トナー像形成部2を構成する各部材および転写部3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。このように、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別する。また、各部材について総称する場合は、参照符号の末尾にアルファベットを付さない。
トナー像形成部2は、感光体ドラム11と、帯電部12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電部12、現像装置14、およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11周りに、この順序で配置される。帯電部12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および導電性ポリマーの少なくとも一方を含有する樹脂組成物が挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸が被覆され、感光層表面が平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化が防止される、低温および低湿の少なくとも一方の環境下における感光層の帯電特性が向上するといった効果が得られる。また、最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環およびフルオレノン環の少なくとも一方を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。
電荷発生物質は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部〜500重量部、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または必要に応じて2種以上を併用できる。
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂、ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、さらに好ましくは0.1μm〜2.5μmである。
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質が挙げられる。
電荷輸送物質は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送層用の結着樹脂100重量部に対して10重量部〜300重量部、さらに好ましくは30重量部〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以下「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称する)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびこれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
酸化防止剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂、ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないけれども、好ましくは10μm〜50μm、さらに好ましくは15μm〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
本実施形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、これに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電部12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電部12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施形態では、帯電部12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、これに限定されない。たとえば、帯電部12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電部12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電部12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットなどを用いてもよい。
図6は、現像装置14の断面を概略的に示す模式図である。現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像装置14に用いられる現像剤は、上述した1成分現像剤または2成分現像剤である。
現像槽20は、感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間に現像剤を収容しかつ現像ローラ50、供給ローラ51、攪拌ローラ52などの、ローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部53が形成され、開口部53を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ50が回転駆動可能に設けられる。
現像ローラ50は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体ドラム11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ50表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下「現像バイアス」と称する)として印加される。これによって、現像ローラ50表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ51は現像ローラ50を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ50周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ52は供給ローラ51を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ51周辺に送給する。
トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口54と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口55とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。また、トナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、画像形成装置100においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電部12によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。しかしながら、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、これに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
トナー像形成部2によれば、帯電部12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を後述する中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
転写部3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28(b、c、m、y)と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。
中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ26は、図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。
従動ローラ27は、駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。
中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、上述したように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給部5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着部4に送給される。
転写部3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
定着部4は、転写部3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。
定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後述する定着条件制御処理によって制御される。定着条件制御処理による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御ユニット部の記憶部に書き込まれる。
加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、定着ローラ31の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
定着部4によれば、転写部3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下で記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
記録媒体供給部5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38と、手差給紙トレイ39とを含む。
自動給紙トレイ35は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。
ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路A1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む部材であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路A2内を通過し、レジストローラ38に送給される。
記録媒体供給部5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体は、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給される。
排出部6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、記録媒体の搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着部4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
画像形成装置100は、図示しない制御ユニット部を含む。制御ユニット部は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における鉛直方向上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御ユニット部の記憶部には、画像形成装置100の鉛直方向上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種処理を実行するプログラムが書き込まれる。各種処理とは、たとえば、記録媒体判定処理、付着量制御処理、定着条件制御処理などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)レコーダ、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種処理のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御ユニット部は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御ユニット部だけでなく、画像形成装置100内部における各部材にも電力を供給する。
現像装置14および画像形成装置100によれば、高精細で、かつ、濃度ムラのない良好な画質の画像を、長期にわたって形成することができる。
最後に、本発明の範囲は、上述した実施形態の範囲ではなく、特許請求の範囲によって示される。上述した実施形態の説明はすべての点で例示であり、本発明の範囲は他のすべての実施形態を含むものである。すなわち、本発明は、上述した実施形態の一部または全部を、特許請求の範囲内および特許請求の範囲と均等の範囲内において変更した、すべての実施形態を含む。
以下に、本発明のトナー製造方法の実施例を示す。
<各値の定義>
以下において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。実施例および比較例における噴霧液体の粘度、結着樹脂およびトナー母粒子のガラス転移点、結着樹脂の軟化点、離型剤の融点、トナー母粒子の体積平均粒径、ならびに樹脂微粒子の体積平均粒径および2次凝集体の体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
[結着樹脂およびトナー母粒子のガラス転移点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
[結着樹脂の軟化点]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化点(Tm)とした。
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
[トナー母粒子の体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:20μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
[樹脂微粒子および2次凝集体の体積平均粒径]
レーザ回折式粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラック、日機装社製)を用い、測定透過濃度:0.01〜0.1の条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
<トナー製造装置>
トナー製造装置としては、図2に示すトナー製造装置201に準ずるハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−3型、株式会社奈良機械製作所製)に、液体噴霧ユニットを取付けた装置を用いた。液体噴霧ユニットとしては、揮発性液体(エタノール)を、送液ポンプ(商品名:SP11−12、株式会社フロム製)を通して二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続したものを用いた。液体噴霧方向と、粉体流動方向とのなす角度が0°(平行)になるように、二流体ノズルの取付け角度を設定した。ガス排出部222には、ガス検知器(商品名:XP−3110、新コスモス電機株式会社製)を設けた。温度調整用ジャケットは粉体流路202全壁部に設けた。粉体流路202には温度センサを取り付けて、粉体流路202内温度をモニタした。また、駆動モータには電流計を取り付けて、駆動モータに印加される電流値Iをモニタした。
<実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例15>
以下の、実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例15によって、トナーをそれぞれ調製した。
[実施例1]
〔トナー母粒子の調製〕
・ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移点55℃、軟化点130℃)
87.5%(100部)
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.0%(5.7部)
・離型剤(カルナウバワックス、融点82℃) 6.0%(6.9部)
・帯電制御剤(ボントロンE84、オリエント化学工業株式会社)
1.5%(1.7部)
以上のトナー母粒子原料を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて前混合した後、2軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)にて溶融混練した。この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、体積平均粒径6.5μmであり、ガラス転移点が56℃のトナー母粒子を作製した。
〔樹脂微粒子の調製〕
スチレンとアクリル酸ブチルとを重合し、スラリー状の樹脂微粒子として、体積平均粒径が0.1μmであるスチレン−ブチルアクリレート共重合体微粒子(ガラス転移点64℃、軟化温度126℃)のスラリー溶液を得た。
このスラリーを凍結乾燥により取り出し、乾燥微粒子を得た。さらに、凍結乾燥した粒子を回転式ボールミルにより粉砕し、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径の測定を行った。
この樹脂微粒子の2次凝集体の粒径分布を測定するにあたり、純水50mlに、試料200mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して、測定用試料を調製した。
樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径は4.8μmであった。
〔攪拌工程〕
粉体流路202内温度を30℃に調整し、回転攪拌部204を回転数3200rpm(最外周の周速度80m/sec)で空転させた。このとき、回転軸部218の駆動モータに印加される電流値I0は28Aであった。
その後、粉体流路202内温度および回転攪拌部の回転数を維持したまま、粉体投入部206からトナー母粒子400gを投入した。トナー母粒子の投入完了時から所定時間経過後、回転軸部218の駆動モータに印加される電流値Icoreは31Aとなって安定した。
トナー母粒子の投入完了時から所定時間経過後、粉体流路202内温度および回転攪拌部の回転数を維持したまま、樹脂微粒子40gを投入した。樹脂微粒子の投入完了時から3分後、回転軸部218の駆動モータに印加される電流値Iは45.1Aであった。F∝I、F0∝I0、Fcore∝Icoreから、負荷係数f=(F−F0)/(Fcore−F0)=(I−I0)/(Icore−I0)は、5.70と計測された。
〔噴霧工程〕
攪拌工程における樹脂微粒子の投入完了時から3分後(負荷係数f=5.70)に、エタノールの噴霧を開始した。このとき、回転攪拌部204を回転数4000rpm(最外周の周速度100m/sec)で回転させた。また、このとき、噴霧部203による単位時間当たりのキャリアガスの供給量を5L/minとし、回転軸部218による単位時間当たりのキャリアガスの供給量を5L/minとし、ガス排出部222による単位時間当たりの気体排出量を10L/minとした。ガス排出部222から排出された気体中のエタノールガスの濃度は、1.5vol%であった。
エタノールの噴霧を30分間行なった後、エタノールの噴霧を停止して、さらに10分間攪拌した後攪拌を止め、実施例1によるトナーを得た。噴霧工程中、粉体流路202内温度は、攪拌工程と同様に、30℃に調整した。
[実施例2]
樹脂微粒子の投入完了時から4分後(負荷係数f=4.13)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2によるトナーを得た。
[実施例3]
樹脂微粒子の投入完了時から5分後(負荷係数f=2.83)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3によるトナーを得た。
[実施例4]
樹脂微粒子の投入完了時から6分後(負荷係数f=1.73)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4によるトナーを得た。
[実施例5]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から2分後(負荷係数f=5.53)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5によるトナーを得た。
[実施例6]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から3分後(負荷係数f=3.47)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6によるトナーを得た。
[実施例7]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から4分後(負荷係数f=2.17)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7によるトナーを得た。
[比較例1]
樹脂微粒子の投入完了時(負荷係数f=7.40)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1によるトナーを得た。
[比較例2]
樹脂微粒子の投入完了時から1分後(負荷係数f=7.37)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2によるトナーを得た。
[比較例3]
樹脂微粒子の投入完了時から2分後(負荷係数f=6.93)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3によるトナーを得た。
[比較例4]
樹脂微粒子の投入完了時から7分後(負荷係数f=1.17)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4によるトナーを得た。
[比較例5]
樹脂微粒子の投入完了時から8分後(負荷係数f=1.03)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例5によるトナーを得た。
[比較例6]
樹脂微粒子の投入完了時から9分後(負荷係数f=0.93)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例6によるトナーを得た。
[比較例7]
樹脂微粒子の投入完了時から10分後(負荷係数f=0.90)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例7によるトナーを得た。
[比較例8]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時(負荷係数f=7.37)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例8によるトナーを得た。
[比較例9]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から1分後(負荷係数f=7.10)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例9によるトナーを得た。
[比較例10]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から5分後(負荷係数f=1.57)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例10によるトナーを得た。
[比較例11]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から6分後(負荷係数f=1.27)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例11によるトナーを得た。
[比較例12]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から7分後(負荷係数f=1.07)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例12によるトナーを得た。
[比較例13]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から8分後(負荷係数f=1.00)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例13によるトナーを得た。
[比較例14]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から9分後(負荷係数f=0.93)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例14によるトナーを得た。
[比較例15]
2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用い、樹脂微粒子の投入完了時から10分後(負荷係数f=0.87)に噴霧工程を開始したこと以外は実施例1と同様にして、比較例15によるトナーを得た。
実施例1〜実施例7、および比較例1〜比較例15のトナー製造工程について、表1の左欄および表2の左欄に、それぞれの噴霧開始時刻、電流値I、負荷増加分I−I0、負荷係数fを示す。表1は、2次凝集体の体積平均粒径が4.8μmである樹脂微粒子を用いたトナー製造工程(実施例1〜4、比較例1〜7)について示し、表2は、2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用いたトナー製造工程(実施例5〜7、比較例8〜15)について示している。噴霧開始時刻は、樹脂微粒子投入完了時を0分とした。
また、図7は、2次凝集体の体積平均粒径が4.8μmである樹脂微粒子を用いたトナー製造工程における噴霧開始時刻と負荷係数fとの関係を示すグラフである。図8は、2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmである樹脂微粒子を用いたトナー製造工程における噴霧開始時刻と負荷係数fとの関係を示すグラフである。図7および図8において、縦軸は負荷係数fを表し、横軸は噴霧開始時刻を表す。
<評価>
以下のようにして、実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例15によるトナーをそれぞれ評価した。それぞれのトナーについて、評価結果を、表1の右欄および表2の右欄に示す。
[保存安定性]
調製されたトナー20gをポリ容器に密閉し、50℃で48時間放置した後、トナーを取り出して#230メッシュのふるいに掛けた。ふるい上に残存するトナーの重量を測定し、この重量のトナー全重量に対する割合である残存率を求めた。残存率の数値が低いほど、トナーは保存安定性が高く、ブロッキングを起こしにくいトナーである。すなわち、残存率の数値が低いほど、樹脂層の均一性が良好であり、ワックスブリードの少ないトナーである。
保存安定性の評価基準は以下の通りである。
◎:凝集なし。 0[%]≦残存率≦0.5[%]
○:凝集微量。0.5[%]<残存率≦1.5[%]
△:凝集少量。1.5[%]<残存率≦2.0[%]
×:凝集多量。2.0[%]<残存率
<考察>
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例15から、1.7≦負荷係数f≦5.7を満たす期間内に噴霧工程を開始すると、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径によらずに、保存安定性の高いトナーが得られることがわかる。すなわち、樹脂層の層厚の均一性が高く、かつ、ワックスブリードが抑えられたトナーが得られることがわかる。また、ワックスブリードが抑えられていれば、トナーの流動性も高くなる。
したがって、1.7≦負荷係数f≦5.7を満たす期間内に噴霧工程を開始すると、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径によらずに、流動性、保存安定性などの特性が優れ、かつ、層厚が均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを製造できることがわかる。
これに対し、負荷係数fを考慮せず、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径が異なっていても、常に一定の時刻に噴霧工程を開始すると、場合によっては特性が低下したトナーとなってしまうことがわかる。たとえば、2次凝集体の体積平均粒径が4.8μmの場合、樹脂微粒子の投入完了時から5分後に噴霧工程を開始すると、非常に特性の良いトナー(実施例3)が得られるけれども、2次凝集体の体積平均粒径が3.7μmの場合、樹脂微粒子の投入完了時から5分後に噴霧工程を開始すると、特性が低下したトナー(比較例10)となってしまう。
また、実施例2,3,6,7から、2.15≦負荷係数f≦4.15を満たす期間内に噴霧工程を開始すると、樹脂微粒子の2次凝集体の体積平均粒径によらずに、流動性、保存安定性などの特性がより優れ、かつ、層厚がより均一な樹脂層がトナー母粒子表面に形成されたトナーを製造できることがわかる。