JP2006208657A - 重合法トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 揮発性有機化合物を留去する工程において凝集物の発生が少なく、残留重合性単量体が少なくて環境安全性に優れた電子写真用カラートナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】 外部に加熱循環ラインを備えた蒸発器に、重合法で得られた着色重合体粒子の水系分散液を入れ、該加熱循環ラインによりこれを加熱循環しながらストリッピングして、揮発性有機化合物を留去した後に、脱水、洗浄、および乾燥することにより乾燥した着色重合体粒子とし、重合法トナーを製造する方法において、該加熱循環ラインが、ストレーナー、ポンプ、および熱交換器を有しており、該着色重合体粒子がカラーの着色重合体粒子であり、該ストレーナーにおける流量が0.02m/秒以下であり、該ストレーナーの目開きが0.6mm以上であることを特徴とする重合法トナーの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真の現像に用いられるカラートナーの製造方法に関し、更に詳しくは、揮発性有機化合物を留去する工程において凝集物の発生が少なく、残留重合性単量体が少なくて環境安全性に優れた電子写真用カラートナーの製造方法に関する。
一般に、電子写真用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、予め重合して得られた結着樹脂を着色剤、帯電制御剤、および離型剤などと混練、粉砕、および分級して得られる粉砕法トナーと、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、および離型剤等の混合物を、懸濁重合、乳化重合、または分散重合などの方法で重合した粒子として得られる着色重合体粒子からなる重合法トナーに大別される。また、電子写真が白黒からカラーになるに従い、トナーには従来からの黒トナーに加え、イエロー色、マゼンタ色およびシアン色のカラートナーが使われてきている(本発明ではイエロー色、マゼンタ色およびシアン色のトナーをカラートナーという。)。
粉砕法トナーと重合法トナーの何れにおいても、重合工程で用いる重合性単量体を完全に反応させることは困難であり、僅少ではあっても未反応の重合性単量体が得られるトナー中に残留してしまう(本発明では、残留する重合性単量体を残留重合性単量体という)。残留重合性単量体を含むトナーを静電画像形成装置で使用すると、画像定着時の加熱等により、残留重合性単量体がトナー中から揮発して作業環境を悪化させたり、不快な臭気を発生させたりする。また、残留重合性単量体の多い電子写真用トナーは、保存中にブロッキングが発生しやすかったり、画像定着時にオフセットしやすかったり、静電画像現像装置の部材上にフィルミングしやすかったりするなどの問題がある。粉砕法トナーの場合は、結着樹脂の製造段階で、結着樹脂から残留重合性単量体を除去することができるため、着色剤、帯電制御剤、および離型剤などの影響を受けることがなく、トナーから、残留重合性単量体を低減することが比較的容易である。更に、結着樹脂と着色剤、その他の添加剤を混合し、加熱混練を行うので、この混練工程でも大幅に残留重合性単量体は低減される。一方、重合法トナーでは、着色剤、帯電制御剤、および離型剤などの成分と、これらのマトリックスとしての重合体との混合物(本発明では着色重合体粒子という。)から、残留重合性単量体を除去しなければならないが、重合性単量体はこれらの成分に吸着され易く、残留重合性単量体の低減が比較的に困難である。近年、低温での定着が可能な重合法トナーへの市場での要求が高まっており、重合法トナーから残留重合性単量体を一層低減することが求められている。
重合法トナーの製造方法において、重合反応によって得られた着色重合体粒子を処理する一般的な工程としては、洗浄工程、脱水工程、乾燥工程、および必要に応じて分級工程と外添工程がある。重合法トナーから残留重合性単量体を減らすために、各工程で着色重合体粒子から残留重合性単量体を除去すること提案されている。例えば、(1)乾燥工程後の着色重合体粒子から除去する方法、(2)脱水工程後、乾燥工程前の着色重合体粒子から除去する方法、(3)脱水工程前の着色重合体粒子の水系分散液中にある着色重合体粒子から除去する方法がある。
(1)の方法として、乾燥工程後の着色重合体粒子を、さらに減圧加熱する方法(特許文献1)がある。しかし、乾燥した着色重合体粒子をさらに減圧加熱すると、着色重合体粒子どうしが熱により凝集する傾向にあり、特に低温定着トナーにおいてはこの傾向が大きな問題となる。又、温度を高くすることができないので、時間をかけて実施する割には残留重合性単量体量の低減は充分でない。この方法は低温定着に適したトナーにおいては実用的ではない。
(2)の方法として、脱水工程後、乾燥工程前の着色重合体粒子を、気体を注入しながら真空乾燥を行う方法が提案されている(特許文献2)が、当該文献の実施例によれば、この方法でも残留重合性単量体は、着色剤などに吸着されて除去されにくく、約100ppmまでにしか除去されていない。また、脱水後の処理であるため、前述した(1)の場合と同様、低温定着トナーの製造に際しては、着色重合体粒子どうしの凝集がおきやすいという問題がある。又、温度を高くすることができないので、時間をかけて実施する割には残留重合性単量体量の低減は充分でない。
以上のように、乾燥し、粒子がばらばらとなった状態の着色重合体粒子から、減圧や加熱により残留着色重合体粒子を除去しようとすると、着色重合体粒子どうしの凝集がおきやすいという問題がある。従って、(3)の方法が適切である。(3)の方法としては、重合後、脱水工程前の着色重合体粒子の水系分散液に飽和蒸気を吹き込むこと(スチームストリッピング法、特許文献3)が提案され、この方法によれば残留重合性単量体量は70ppm程度まで低減されることが実施例に報告されている。しかし、この方法では、飽和蒸気がトナー粒子と接触した際のせん断力によって、着色重合体粒子の水系分散液中で着色重合体粒子の凝集が発生しやすく、スケールや凝集塊が増大しやすいという傾向があった。このため、生産性が低下するだけでなく、得られる重合法トナーの流動性が低下しやすいという問題があった。
このようなスチームによる加熱の不都合を改善するために、特許文献4のように、外部に熱交換器を有する加熱循環ライン備えた蒸発器により、着色重合体粒子の水系分散液を穏和な条件で加熱しながら、減圧により残留重合性単量体を低減する技術が提案されている。この文献には、外部の熱交換器を通過した後の循環ラインからの戻りの着色重合体粒子の水系分散液の一部を蒸発器中の液相に戻す工夫がされており、実施例では得られた黒色トナー中の残留重合性単量体が60〜29ppmまで低減されたことが報告されている。
特開平7−92736号公報 特開平10−207122号公報 特開平5−100485号公報 特開2002−108014
しかしながら、本発明者らが、特許文献4の技術を黒色以外のカラートナーに適用したところ、予期していなかった不具合が生じることが分かった。カラートナー用の着色重合体粒子の水系分散液を、外部に熱交換器を有する加熱循環ラインを備えた蒸発器に入れ、加熱しながら、減圧にし、または常圧若しくは加圧下で不活性ガスを容器底部より吹き込み、加過熱しながら残留重合性単量体を留去したところ、加熱循環ライン中に設けたストレーナーにおいて、着色重合体粒子どうしが凝集して凝集塊が発生した。この結果、加熱循環ラインが目詰まりしたため、工程を停止して凝集塊を除去する必要が生じ生産性が低下しただけではなく、収率が低下するという問題がおきた。
本発明の目的は、ストレーナーでの目詰まりがなくて生産性がよく、且つトナーの性能を損なわずに残留重合性単量体の少ない重合法のカラートナーを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、カラートナー用の着色重合体粒子を、カラートナー用の着色重合体粒子の水系分散液を、外部に熱交換器を有する加熱循環ラインを備えた蒸発器に入れ、加熱しながら、減圧にし、または常圧若しくは加圧下で不活性ガスを容器底部より吹き込み、残留重合性単量体を留去する場合には、加熱循環ライン中に設けたストレーナーにおいて、黒色トナーの場合とは異なる条件とすることが必要であることを見出した。ストレーナーは、蒸発器中の着色重合体粒子の水系分散液中にあるかもしれない異物(重合工程で発生していたかもしれないスケールや、着色重合体粒子の凝集物など)を取り除き、以降のトナーの生産工程に異物が入らないように、および熱交換器で目詰まりが発生しないようにするために加熱循環ラインに設置される。一般に、トナー用の着色重合体粒子は数μ〜数十μの大きさであるため、着色重合体粒子が関与する工程で用いられるストレーナーは、この様な着色重合体粒子よりも大きな異物を取り除くことができればよく、また、小さな異物は以降の工程(分級工程など)でも取り除けることから、ストレーナーの目開きは、通常0.1〜1mmの間で程度のほどほどの値に設定される。例えば、文献4では記載がないが、本発明者らが調査したところでは、当該技術で使用されていたストレーナーの目開きは0.8mmであった。一方、加熱循環ラインを用いて、蒸発器内部の着色重合体粒子の水系分散液を加熱するのであるから、生産性の観点から加熱に要する時間をある程度短縮する必要があり、加熱循環ライン中の着色重合体粒子の水系分散液の流量はある程度早く設定される。ストレーナーの目開き部分を通過する際の流量は通常は0.025〜0.4m/秒の範囲で適宜設定される。例えば、文献4では記載がないが、本発明者らが調査したところでは、当該技術で使用されていたストレーナーの目開き部での流量は0.025m/秒であった。
本発明者らは、カラートナー用の着色重合体粒子の水系分散液をストリッピングする場合には上記の操業条件では不適当で、ストレーナーの目開きをもっと大きめにし、流量をもっと小さめにする必要があり、このような条件とすれば、ストレーナーでの目詰まりが発生せず、生産性よく、且つトナーの性能を損なわずに残留重合性単量体の少ない重合法のカラートナーを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、
外部に加熱循環ラインを備えた蒸発器に、
着色重合体粒子の水系分散液を入れ、
該加熱循環ラインによりこれを加熱循環しながらストリッピングして、揮発性有機化合物を留去した後に、
脱水、洗浄、および乾燥することにより乾燥した着色重合体粒子とし、重合法トナーを製造する方法において、
該加熱循環ラインが、ストレーナー、ポンプ、および熱交換器を有しており、
該着色重合体粒子がカラーの着色重合体粒子であり、
該ストレーナーにおける流量が0.02m/秒以下であり、
該ストレーナーの目開きが0.6mm以上である
ことを特徴とする重合法トナーの製造方法が提供される。この製造方法において、前記着色重合体粒子の水系分散液に分散剤を添加したあと、前記ストリッピングしてもよい。カラーの着色重合体粒子が、マゼンタ色またはシアン色の着色重合体粒子である場合に、本発明の重合法トナーの製造方法は好適に適用できる。
本発明により、ストレーナーでの目詰まりがなくて生産性がよく、且つトナーの性能を損なわずに残留重合性単量体の少ない重合法のカラートナーを製造する方法が提供される。
本発明では、重合法で得られた着色重合体粒子の水系分散液に、ストリッピングする。重合法では、重合性単量体と着色剤を含む成分を混合して、重合性単量体組成物とし、これを分散剤が添加された水系媒体に分散させて液滴とする。この重合性単量体組成物の液滴が分散した分散液に、重合開始剤を添加して、重合することにより着色重合体粒子の水系分散液が得られる。本発明の特徴であるストリッピングは、この段階の着色重合体粒子の水系分散液に対して行うことができる。または、得られた着色重合体粒子をコア粒子として、その分散液に、さらにシェル用重合性単量体を加えて、該着色重合体粒子(この場合コア粒子ということもある)のまわりにシェル層の形成して、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液とし、この段階の着色重合体粒子の水系分散液に対して、本発明の特徴であるストリッピングを行ってもよい。
(重合性単量体組成物)
重合性単量体は、重合反応性を有する化合物であり、モノビニル系単量体、架橋性単量体及びマクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、着色重合体粒子中の結着樹脂成分となる。
モノビニル系単量体は、ビニル基を一つ有する化合物であり、その具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの不飽和カルボン酸エステル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル単量体;等が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらのモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸の誘導体などが好ましく、特にスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステルが好適に用いられる。
これらのモノビニル系単量体とともに、任意の架橋性単量体を併用して用いることができ、その場合、得られる重合法トナーの定着性と、特にオフセット性が向上するので好ましい。架橋性単量体は、重合性を有する基を複数有する化合物であり、その具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。架橋性単量体は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部の割合で用いる。
モノビニル系単量体とともに、マクロモノマーを併用して用いることができる。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合性基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。マクロモノマー分子鎖の末端の重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、モノビニル系単量体との共重合のしやすさの観点から、メタクリロイル基が好適である。マクロモノマーの量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。この範囲であれば、得られる重合法トナーの保存性と定着性とが、良好なバランスとなる。
本発明では、カラーの着色重合体粒子の水系分散液をストリッピング処理するので、重合性単量体組成物に用いる着色剤もカラーの着色剤である。カラーの着色剤には、イエロー色、マゼンタ色、及びシアン色のものがある。
イエロー色の着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー3、同12、同13、同14、同15、同17、同62、同65、同73、同74、同83、同90、同93、同97、同120、同138、同155、同180、同181、同185及び同186等が挙げられる。
マゼンタ色の着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド31、同48、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同144、同146、同149、同150、同163、同170、同184、同185、同187、同202、同206、同207、同209、及び同251、並びにC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン色の着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物等が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、及び60等が挙げられる。
本発明の技術では、カラーの顔料を使用した場合のみに適用できるが、黒色顔料に対しては適用できない。カラーの顔料の中でも、マゼンタ色、またはシアン色の顔料を使用した場合に好適に適用できる。これは、顔料の色により化学的構造が大きく異なり、得られる着色重合体粒子の化学的性質、とくに凝集のしやすさや、ストレーナーの目開きを通過する際の影響の受けやすさが違うためと考えられる。着色剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
重合性単量体組成物には、重合性単量体および着色剤の他、分子量調整剤、帯電制御剤、離型剤などのその他の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;を例示することができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で反応系に添加することができる。分子量調整剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で用いる。
帯電制御剤として、各種の正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることが可能である。例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン等が挙げられる。より具体的には、製品名スピロンブラックTRHや同T−77(保土ヶ谷化学社製)、製品名ボントロンS−34、同E−84および同N−01(オリエント化学社製)、製品名コピーブルー−PR(クラリアント社製)等の帯電制御剤、並びに4級アンモニウム基またはその塩の基を含有する含有共重合体、およびスルホン酸またはその塩の基を含有する共重合体等の帯電制御樹脂などを用いることができる。これらの帯電制御剤および帯電制御樹脂は、一種単独でまたは二種以上を併用して用いることができ、その使用する量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜8重量部である。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類;分子末端を酸化した低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレンおよびこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレン、およびこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、およびペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、およびオゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの多官能エステル化合物などが例示される。これらは一種単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。これらの離型剤のうち、合成ワックス(特にフィッシャートロプシュワックス)、合成ポリオレフィン、低分子量ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが好ましい。なかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは50〜180℃、60〜160℃の範囲にあるものが、得られる重合法トナーの定着−剥離性のバランスが良好となるため、特に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。離型剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部用いる。
重合性単量体組成物の調製において、重合性単量体に着色剤を十分に分散性良く分散させてから、上記のその他の成分を加えることが好ましい。重合性単量体に着色剤を分散させる方法は、公知の各種の方法を採用することができるが、メディア式分散機を用いた方法が特に好ましく、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機を用いた方法が特に好ましい。得られた混合物に、上記のその他の成分を加えて重合性単量体組成物とする。
(着色重合体粒子の水系分散液)
以上のようにして得られた重合性単量体組成物を、水系媒体中で重合することにより、本発明で用いる着色重合体粒子の水系分散液が得られる。重合は公知の方法を採用すればよく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等が挙げられるが、ドット再現性の良好な画質の画像を形成できる重合法トナーを得られることからら、懸濁重合法を採用することが好ましい。さらに、重合性単量体の重合は、一段で行なってもよいし、二段階に分けて行なってもよい。例えば、二段階に分けて重合する方法では、一段目に重合する単量体(コア用重合性単量体という。)と二段目に重合する単量体(シェル用重合性単量体という。)の組成を変えて、一段目の重合で比較的に低いTgを有するコア層を形成し、二段目の重合で比較的に高いTgを有するシェル層を形成することができ、この場合に得られる着色重合体粒子はコア・シェル型の着色重合体粒子となる。コア・シェル型の着色重合体粒子からは、コア・シェル型の重合法トナーが製造でき、低温定着性と高温保存性のバランスされ好ましい。本発明の特徴となるストリッピングは、一段で重合を行う場合の着色重合体粒子の水系分散液に対しても、二段で重合を行う場合のコア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液に対しても有効である。以下、主に懸濁重合法での、着色重合体粒子の水系分散液の製造方法について説明する。
懸濁重合は、水系媒体中で、上記の重合性単量体組成物を分散させて液滴状態とし、重合開始剤を添加して加熱することにより行う。水系媒体とは、水を主成分とする媒体であり、必要に応じてアルコール類などの親水性の有機溶剤等を少量含んでいてもよい。本発明では、水系媒体中に分散質が分散した状態の液を水系分散液と呼ぶ。
懸濁重合に用いる上記の水系媒体は、分散剤を含んでいることが好ましい。分散剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、得られる着色重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、これを用いた重合法トナーにより得られる画像の鮮明性が向上するので好適である。特に、重合性単量体として、架橋性単量体を併用しない場合には、難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤を用いると、ストリッピング中に着色重合体粒子が凝集しにくくなり、得られる重合法トナーの定着性と保存性とが良好となるため好適である。
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることが好ましい。難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が、この範囲にある場合に、重合の安定性が良好となり、また得られる重合法トナーの保存性が良好となる。
分散剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の割合で使用する。少なすぎると、得られる重合法トナーの粒径が大きくなって所望の粒径分布を有するトナーを得ることが困難になる上、充分な重合安定性やストリッピング中の分散安定性を得ることが困難となり、得られる重合法トナー中に微少な凝集物が生成し易くなる。逆に、多すぎると重合法トナー粒径が小さくなって所望の粒径分布を有する重合法トナーを得ることが困難になるので好ましくない。
液滴を形成する方法としては、従来懸濁重合法で用いられている方法を用いることができ、例えば、上記の分散剤が添加された水系媒体に、上記の重合性単量体組成物を添加して、その混合物に重合開始剤を添加し、溶解後、造粒機(例えばエバラ製作所社製、製品名エバラマイルダー)を用いて高剪断攪拌することにより、細かい粒径の液滴を形成できる。
形成された液滴の水系媒体への分散液、必要により加熱することにより重合反応が進行し、液滴が着色重合体粒子になり、着色重合体粒子の水系分散液が得られる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。このうち、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。重合反応開始時の温度と、重合反応中の温度は使用する重合開始剤に適した温度に適宜設定される。
上記の重合反応の重合転化率(重合性単量体が重合体に変化した率)が、通常は95%以上、好ましくは98%以上になった時点で、温度を下げることにより反応を停止させて、着色重合体粒子の水系分散液が得られる。
または、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液を得ようとする場合には、上記の重合反応を一段目の重合反応と位置づけ、その重合転化率が90%以上、好ましくは95%以上となった時点で、シェル用の重合性単量体と、必要に応じてそれに適した重合開始剤を添加することにより、二段目の重合反応を行う。コア・シェル型の着色重合体粒子を製造する場合には、シェル用の重合性単量体は、それを単独で重合した場合に、コア層用の重合性単量体を単独で重合した場合の重合体よりも高いガラス転移温度を有する重合体となるように選択することが好ましい。シェル用の重合性単量体は、好ましくは、上述と同様の、分散剤を含む水系媒体中に分散して用いる。二段目の重合反応で用いられる重合開始剤は上述の重合開始剤と同様であり、水溶性重合性開始剤が好ましい。シェル用の重合性単量体の重合転化率が通常は95%以上、好ましくは98%以上になった時点で、温度を下げるかまたは重合停止剤を添加することにより重合反応を停止させて、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液が得られる。二段目の反応の時間中にも、一段目の反応も進行するため、重合反応の停止時点での一段目の(コア用の)重合性単量体の重合転化率は、通常は95%以上、好ましくは98%以上となっている。
重合反応を停止した後に、ストリッピング処理を行うが、その前に、分散剤を更に添加することができ、好ましい。この時点で用いることができる分散剤と、好ましい分散剤、好ましい添加量は上述の分散剤と同様であり、重合の段階で用いた分散剤と同じであってもよく異なっていてもよい。このように分散剤を再度添加することにより、本発明の効果が一層顕著になり好ましい。
(ストリッピング)
ついで、着色重合体粒子の水系分散液に、ストリッピングを行う。ストリッピングとは、着色重合体粒子の水系分散液を蒸発器に入れ、気相部分を減圧にし、または常圧若しくは加圧下で不活性ガスを容器底部より吹き込み、着色重合体粒子またはその水系分散液中の揮発性有機化合物を留去する処理をいう。ここで、留去される揮発性有機化合物には、コア用およびシェル用の重合性単量体、着色重合体粒子の水系分散液中の水系媒体中の有機溶剤、残留重合開始剤、並びに重合性単量体組成物の調製工程や重合工程で使われたその他の揮発性有機化合物、およびこれらの工程の途中で分解反応によって生じた揮発性有機化合物などである。これらのうち、最も重要で、得られる重合法トナーの性能に大きく影響するのは、コア用およびシェル用の重合性単量体であり、これに注目して、同時に他の揮発性有機化合物も低減することが好ましい。本発明では、着色重合体粒子の水系分散液中に残留する重合性単量体を残留重合性単量体という。
本発明では、ストリッピングに、外部に加熱循環ラインを備えた蒸発器を用いる。この加熱循環ラインは、ストレーナー、ポンプ、および熱交換器を有している。図1を用いて、ストリッピングに用いる装置の構成を説明する。蒸発器[1]は、ストリッピングに必要な減圧あるいは加圧に耐える強度を有する容器であり、重合工程で用いた容器(反応器という。)と共通であってもよいし、異なっていてもよい。蒸発器[1]は、内部の着着色重合体粒子の分散液を攪拌するための撹拌翼[14]を備えていることが好ましく、また、その外面に、重合段階での加熱や冷却、およびストリッピングでの補充的な加熱等をするためのジャケット[9]を備えていてもよい。蒸発器[1]には、ストレーナー[3]、ポンプ[4]および熱交換器[2]を備えた加熱循環ラインが備えてある。蒸発器[1]の中の、着色重合体粒子の水系分散液の液相から、ストレーナー[3]を介してポンプ[4]の力で、その一部が抜き出され、熱交換器へのライン[5]を通って、熱交換器[2]に供給され、加熱される。加熱された後の着色重合体粒子の水系分散液は、戻りのライン[7]または[8]を通って、蒸発器[1]内の液相[12]または気相[13]にそれぞれ戻る。液相および気相に戻す量の割合を適宜変えることができ、その割合は、液相/気相の比で、通常10/0〜0/10の範囲であり、好ましくは9/1〜1/9、さらに好ましくは8/2〜2/8などとすることもできる。加熱循環ライン[1,3,4,5,2,7または8]中の、ストレーナー[3]、ポンプ[4]、および熱交換器[2]の順番は特に限定されないが、この順番であることが好ましい。ポンプ[4]からのアウトは、全てが熱交換器へのライン[5]を通って熱交換器[2]に送り込まれてもよいが、その一部がポンプアウトからの戻りのライン[6]を通って、熱交換器[2]を通ることなく、蒸発器[1]に戻されてもよい。蒸発器[1]には、内部を減圧にし、揮発性有機化合物を含む気体を排気するための排気ライン[11]が設けられている。蒸発器[1]の内部の圧力を適当な範囲に保ち、ストリッピングの効率を上げるために、ストリッピング中に、不活性の気体を吹き込んでもよい。この場合、気体は、蒸発器[1]の液相[12]中に吹き込むことが好ましく、蒸発器[1]には、このために必要な気体吹き込みライン[10]が設けてあってもよい。
熱交換器を通過し加熱された後、着色重合体粒子の水系分散液の温度は、蒸発器[1]内の着色重合体粒子の水系分散液の温度に比較して高く設定するのが通常であり、温度差は通常1〜50℃、好ましくは1〜20℃である。温度差を小さめにして加熱後の着色重合体粒子の水系分散液の温度をあまり高くしないことにより、蒸発器[1]内の着色重合体粒子の水系分散液の温度を上げるのに時間がかかり、ストリッピングに比較的長い時間を要するようになるが、上記のような温度差の範囲とすることにより、本発明の効果がより顕著に達成できるので好ましい。熱交換器の形式は特に限定されるものではないが、着色重合体粒子の水系分散液の加熱や加熱循環中の着色重合体粒子の不安定化による凝集等を抑制するためには、加熱のための接触面積が大きく、熱媒温度が低くても効率的に加熱可能なプレート型熱交換器が好適である。
ポンプとしては、遠心ポンプ、斜流ポンプ、および軸流ポンプなどのターボ型ポンプ、並びにダイアフラムポンプなどの容積型ポンプなどを使うことができるが、ターボ型ポンプが好ましく、遠心ポンプが特に好ましい。
ストレーナーは、加熱循環ラインの途中に設置されるものであり、ライン中の着色重合体粒子の流れの向きに開口した目開き部を有するメッシュと、それを収納するハウジングからなる。本発明では、メッシュの目開き(流れの方向に対して垂直方向の開口部の大きさ、円形であれば直径で表し、方形であれば平均の辺の長さで表す)が、0.6mm以上であり、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。メッシュは目開き部が色々なサイズのものが、○○メッシュ(○○には1桁〜3桁の数字が入る)という規格で種々市販されており、必要なものを選択して用いることができる。
メッシュの目開き部を通過する際の、着色重合体粒子の流量(通過する体積を、目開き部の面積の総計で除した値)は0.02m/秒以下であり、好ましくは0.01m/秒以上である。このような範囲にある場合に、本発明の効果が得られ、生産性良く、ストリッピングすることができる。図1において、ストレーナーは一つしか図示されていないが、複数を直列または並列に設置することができ、好ましくは複数を並列に設置することにより、ストリッピングを運転しながら、ストレーナーのメンテナンスが可能となる。
着色重合体粒子の水系分散液の戻りをライン[8]を介して気相に行う場合には、着色重合体粒子の水系分散液を蒸発器上部より下部に向けて、その一部を噴出させる操作(以下、フラッシングという)を行うことが、液面発泡を抑制しながら揮発性有機化合物の蒸発が効率的に行われる点で好ましい。この操作を行うと、揮発性有機化合物の蒸発に伴う液面発泡を、蒸発器[1]上部から液面へのフラッシングによって機械的に抑制する効果することができるので好ましい。
ストリッピングの途中で、着色重合体粒子の水系分散液に、追加で水系媒体を添加することができる。水系媒体を追加で添加する場合、その量は、着色重合体粒子の水系分散液に対して、通常1〜200体積%、好ましくは5〜100体積%である。この範囲にあると、本発明の効果を得つつ、ストリッピング後の洗浄・濾過等の工程を生産性良く実施することができるので好ましい。
ストリッピング処理では、水系媒体及び揮発性有機化合物の蒸発、回収によって、系内の着色重合体粒子の水系分散液の濃縮が同時に行われる。着色重合体粒子の水系分散液のストリッピングの処理において、一般的に、処理初期の段階では分散媒中に溶出した揮発性有機化合物が水系媒体とともに気液平衡支配下で高い速度で除去され、処理後期では着色重合体粒子中から水系媒体中への揮発性有機化合物の溶出が律速となり除去速度が低下する。また、本発明においては、ストリッピングの供給熱量を、段階的または連続的に増加させて、水系媒体とともに揮発性有機化合物を効率的に留去することができる。これにより、処理初期において揮発性有機化合物の除去速度を抑制することが可能になり、水系媒体の発泡を少なくすることができ、それにより、凝集物の発生や前記気液平衡支配下での除去効率の低下を防ぐことが可能となる。ストリッピング処理初期の着色重合体粒子1kg当たりの供給熱量は、通常5〜50kcal/hr、好ましくは10〜40kcal/hrである。処理初期時間は、処理開始から、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜4時間とすることが望ましい。ここで、ストリッピング処理の開始時は、処理を行う所定温度に達した後、蒸発器内が飽和水蒸気圧に達した時をいう。供給熱量が少ないと、処理中の発泡はないものの揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがあり、逆に多いと、液面からの発泡抑制が困難になることがある。上記供給熱量での処理時間が短いと、液面からの発泡抑制が困難になることがあり、逆に長いと、揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがある。また、ストリッピング処理後期の着色重合体粒子1kg当たりの供給熱量は、通常20〜200kcal/hr、好ましくは30〜100kcal/hrとすることが望ましい。これが少ないと、揮発性有機化合物の除去速度が遅くなり効率的な処理ができなくなることがあり、逆に多いと、蒸発量が多くなり液面からの発泡抑制が困難になることがある。供給熱量を増加させる方法としては、上述した熱交換器[2]の供給熱量の設定を増加させる方法の他に、蒸発器[1]の外面に熱媒を循環したジャケット[9]を設けて用いる方法、他の熱交換器を蒸発器[1]の内部に設けて用いる方法、蒸発器[1]内に気体吹込みライン[10]を介して加熱した気体を吹込む方法等が挙げられ、またはこれらの方法の組合せによって行うこともできる。これらの方法のうち、熱交換器の供給熱量を制御する方法と蒸発器内に加熱した気体を吹込む方法との組合せが、揮発性有機化合物の除去効率と発泡抑制を両立させことができ、好ましい。
ストリッピング中の着色重合体粒子の水系分散液の温度については、着色重合体粒子の水系分散液の温度Ts(℃)と当該着色重合体粒子のガラス転移温度Tg(℃)の関係が、通常Tg≦Ts<100℃、好ましくはTg+5℃≦Ts≦100℃でほぼ一定となるようにすることが望ましい。TsがTgよりも低いと蒸発が少なくなる上、着色重合体粒子中での揮発性有機化合物の移動が極端に遅くなるため、揮発性有機化合物の除去速度が著しく低下する。この観点からTsはTgより5℃以上高く設定するのが望ましい。また、Tsが100℃より高いと熱により着色重合体粒子の分散安定性が低下して処理中に凝集物、蒸発器の缶壁や攪拌翼へのスケール付着が増大する。熱交換器[2]の戻り少なくとも一部を、ライン[8]を介して蒸発器[1]の気相に入れて、フラッシングを繰り返すことにより、着色重合体粒子の水系分散液が徐々に加熱されて前述の温度に達してもよいし、あらかじめ着色重合体粒子の水系分散液の温度を前述の温度にしてからフラッシングさせてもよい。なお、上述の温度設定では、重合性単量体の重合によって生成する結着樹脂のTgが2点以上ある場合、一番低いTgを基準とする。ここでTgは、示差走査熱量計(DSC)によって測定される値である。
着色重合体粒子中の残留重合性単量体が所望の量以下になった時点で、ストリッピング処理の終了することができる。具体的には、得られる重合法トナーを用いた印字中の臭気等の観点から、乾燥後の着色重合体粒子中の残留重合性単量体量が80ppm以下、好ましくは70ppm以下となるようにすべきであり、この場合、ストリッピング処理後の着色重合体粒子中の残留重合性単量体量は100ppm以下とすることが好ましい。
蒸発器[1]内の圧力は、系内の温度と水系媒体の蒸気圧の関係で決定されるが、本発明においては、ゲージ圧で−90〜+90kPaの範囲が好適である。このような範囲とすることにより、効率的にストリッピングすることができ、熱交換器部分での着色重合体粒子の水系分散液中の分散安定性が良好で、蒸発器内の着色重合体粒子の水系分散液内部からの水系媒体やその他の揮発性成分の沸騰による発泡を抑えて、安定なストリッピング処理をすることができる。
気体吹き込みライン[10]から、蒸発器内の液相に気体を吹込みながらストリッピング処理することができる。このことにより、着色重合体粒子の水系分散液中の、着色重合体粒子と水系媒体の界面更新を促進して揮発性有機化合物の蒸発を促すことができる。蒸発器内の温度や圧力のバランスを不安定化させない範囲であれば、吹込む気体は特に限定されるものではなく、水蒸気、乾燥空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、不燃性気体であることが好ましい。また、上記気体を吹込む際、着色重合体粒子の凝集防止の目的から、気体の温度は100℃以下の温度が好ましい。
(ストリッピングの後の工程、重合法トナー)
ストリッピングの処理の後、必要に応じて着色重合体粒子を凝集させて粒径を肥大化させ、次いで、重合法トナーの製造方法における常法に従い、脱水、洗浄、および乾燥を行って、乾燥した着色重合体粒子を得る。得られた乾燥した着色重合体粒子の残留重合性単量体は80ppm以下、好ましくは70ppm以下である。乾燥した着色重合体粒子を、そのまま、または必要に応じて常法に従い外添したり分級したりして重合法トナーが得られる。外添は、着色重合体粒子の表面に微粒子の添加剤(外添剤という。)を付着または埋設等させる工程であり、これにより重合法トナー粒子の帯電性、流動性、および保存安定性などを調整することができる。外添剤には、無機粒子と有機樹脂粒子があり、好ましい例としてはシリカ粒子および酸化チタン粒子が挙げられ、特に好ましくは疎水化処理されたシリカ粒子が挙げられる。外添剤を前記着色重合体粒子に付着させるには、通常、外添剤と着色重合体粒子を、ヘンシェルミキサーなどの混合機で混合・撹拌すればよい。
本発明の製造方法で得られる好ましい重合法トナーは、流動性が55%以上、好ましくは60%以上で、実質的に球形であり、このような好ましい重合法トナーは、重合段階で懸濁重合法を採用することにより製造することができる。また、得られる重合法トナーは、体積平均粒径(dv)が3〜15μm、好ましくは5〜10μmであり、体積平均粒径と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1〜1.4、好ましくは1〜1.3であり、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1〜1.3の範囲であり、かつBET比表面積(A、単位:m/g)、個数平均粒径(dpn、単位:μm)および真比重(D)の積(A×dn×D)が5〜10の範囲のものであることが望ましい。特に好ましい重合法トナーは、120℃での溶融粘度が10万ポイズ以下、好ましくは0.1〜10万ポイズ、より好ましくは1〜8万ポイズである。溶融粘度の測定は高化式フローテスターを用いて行うことができる。このような溶融粘度を持つ重合法トナーを用いると、高速で印刷しても高画質の画像を得ることができる。
着色重合体粒子としてコア・シェル型の着色重合体粒子を用いることにより、コア・シェル型の重合法トナーを製造することができる。コア・シェル型の重合法トナーは、カプセル型の重合法トナーとも呼ばれ、保存安定性が良好であるため好ましい。
本発明の製造方法を実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(液面発泡性)
ストリッピング中の蒸発器内部を目視観察することにより、以下の基準で表した。
○:着色重合体粒子の水系分散液の液面上にほとんど泡の滞留が見られないか、若干の発泡層が形成されるにとどまっている安定な状態。
△:着色重合体粒子の水系分散液の液面上に常時泡の滞留が見られ、泡先端が蒸発器上部の排気ノズルに到達しない範囲で変動している不安定な状態。
×:泡先端が蒸発器上部の排気ノズルに達するまで泡が成長し、系内が不安定で連続処理が不可能な状態。
(ストレーナーの目視観察)
ストレーナーを分解し、メッシュの目開きを目視観察し、以下の基準で表した。
○:ストリッピング終了後に、目開き部に目詰まりがほとんど見られず、目開き部が概ね80面積%以上開いている状態。
△:ストリッピング終了後に、目開き部に目詰まりが顕著に見られ、目開き部が概ね50面積%以下で10面積%以上しか開いていない状態。
×:ストリッピングの途中で停止してメッシュの洗浄を要したか、または目詰まりが段々と激しくなってストリッピング終了後に、目開き部に目詰まりが激しく、目開き部が概ね10面積%以下しか開いておらず、ほとんど塞がった状態。
(粒径)
着色重合体粒子または重合法トナーの粒子の、体積平均粒径(dv)はベックマン・コールター社製、製品名マルチサイザーにより測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:100,000個の条件で行った。
(ガラス転移温度)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、製品名SSC5200)を用いて、ASTMD 3418−97に準じて、試料10mgを精秤し、これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲:室温〜150℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行った。
(残留重合性単量体の量)
ガスクロマトグラフィーにより、下記条件と方法で測定した。
カラム:GLサイエンス社製、製品名TC−WAX、0.25mm×30m
カラム温度:80℃
インジェクション温度:200℃
FID検出側温度:200℃
脱水処理後乾燥前の湿潤した状態の着色重合体粒子、または乾燥後の着色重合体粒子約3gを1mg単位まで精秤し、n,n−ジメチルホルムアミド27gを加えて15分間攪拌した後、メタノール13gを加えて更に10分間攪拌してから静置して不溶分を沈澱させた。その後、上澄み液2μリットルをガスクロマトグラフィーに注入して残留重合性単量体の量を測定した。定量用標準試料は、各重合性単量体のn,n−ジメチルホルムアミド/メタノール溶液とした。脱水後乾燥前の着色重合体粒子中の残留重合性単量体量は、湿潤した試料中の純固形分に対する比率として算出した。なお、純固形分は、同時に分取した試料約1gを1mg単位まで精秤し、これを赤外ランプで約200℃、30分間加熱して得た固形分重量を精秤し、乾燥前後の重量差から算出した。この純固形分の割合を、残留重合性単量体量測定のために用いた湿潤した着色重合体粒子重量に乗じて、純固形分に対する残留重合性単量体の量として算出した。乾燥後の着色重合体粒子中の残留重合性単量体量は、そのまま当該着色重合体粒子に対する量として表示した。
(残留重合性単量体の低減速度Rsの算出方法)
上記残留重合性単量体の量をストリッピングの1時間毎に測定し、処理時間(x)対残留重合性単量体量(y)を、yを対数とする片対数プロットした。xとyに直線の関係が得られたので、指数近似式y=a・e−bxから、Rs=100・(1−e−b)として残留重合性単量体低減速度Rs(%/hr)を算出した。
(臭気の試験)
得られた重合法トナーを、市販のA4サイズのカラー印刷機(印刷速度20枚/分)し、各試料となる重合法トナーの単色となる印刷を行った。印刷紙出口付近での重合性単量体の臭気を、健康な人5名で官能試験し、以下の基準で表した。
○:単量体の臭気を感じる人がいない
△:単量体の臭気を感じる人が1〜2人いる
×:単量体の臭気を感じる人が3人以上いる
<実施例1>
(コア用重合性単量体組成物の調製)
重合性単量体としてスチレン80部、メタクリル酸n−ブチル20部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(ガラス転移温度(以下、Tgという。)94℃、東亜合成化学工業社製、製品名AA6)0.5部、および架橋性単量体ジビニルベンゼン0.3部;分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.2部;マゼンタ色の着色剤(C.I.ピグメントレッド31と同150の混合物、富士色素社製、製品名Carmin528−1)5.5部;帯電制御剤(藤倉化成社製、製品名FCA−207P)2部;顔料分散剤(味の素ファインテック社製、製品名AL−M)0.275部;及び離型剤(日本油脂社製、製品名W663)8部を、メディア型湿式粉砕機に供給して、湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物を調製した。
(分散剤を含む水系媒体の調製)
イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)15.45部を溶解した水溶液に;イオン交換水80部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)6.2部を溶解した水溶液;を攪拌しながら徐々に添加して、分散剤である水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)の水(水系媒体)への分散液を調製した。この際の塩化マグネシウムに対する水酸化ナトリウムの化学当量比(水溶性多価金属塩に対するアルカリ金属水酸化物の化学当量比)は0.66[(8.64/(40×2))/(15.45/95.22)]であった。
(シェル用重合性単量体組成物の水系分散液の調製)
メタクリル酸メチル0.7部及びイオン交換水100部を超音波乳化機を用いて微分散化して、シェル用の重合性単量体の水(水系媒体)への分散液を調製した。
(重合性単量体組成物の水系分散液の調製)
上記の分散剤を含む水系媒体(水酸化マグネシウムコロイドの分散液)に、コア用重合性単量体組成物を投入し、均一になるまで攪拌した。次いで、これに、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、製品名パーブチルO)5部を添加した後、乳化分散機(荏原製作所社製、エバラマイルダー)を用いて高速剪断攪拌を行い、コア用の重合性単量体組成物の水系分散液を調製した。
(重合)
上記コア用の重合性単量体組成物の水系分散液を、攪拌機を備えた反応器に入れ、ここに、分散安定剤としてホウ砂1部とイオン交換水24部からなるホウ砂水溶液を添加し、さらにハイドロキノン0.1部とイオン交換水24部からなる水溶液を添加した。89℃に昇温して重合反応を開始させた。重合反応は、重合転化率が99%に達するまで行った。次いで、シェル用の重合性単量体組成物の水系分散液、添加し、その後、水溶性重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド(和光純薬社製、商品名VA−086)0.07部を溶解したものを上記の反応器に、その内容物を攪拌しながら添加した。さらに89℃で、4時間重合反応を継続した後、冷却して重合反応を停止し、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液を製造した。この着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度は、25%であり、残留重合性単量体(スチレン)量は、921ppmであった。
(分散剤の追加添加)
得られた着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度を、イオン交換水で18%に調整し、全量を図1に示す蒸発器[1]に入れた。次いで、イオン交換水9.17部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)0.57部を溶解した水溶液を攪拌しながら、ここに、イオン交換水2.94部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)0.32部を溶解した水溶液を、徐々に添加して、分散剤として水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)を含む分散液を調製した。前記の蒸発器に、この分散剤を含む分散液を13部添加し(分散剤の追加添加という)、さらに消泡剤(サンノプコ社製、製品名SNデフォーマー180)0.1部を添加した。
(ストリッピング)
図1に示すストリッピング装置を用いて、着色重合体粒子の分散液から、揮発性有機化合物を以下の条件で除去した。蒸発器[1]には、撹拌翼[14]、気体吹き込み口[10]及び排気ライン[11]が設けてあり、ポンプアウトからの戻りライン[6]と加熱後の液相への戻りライン[7]は設けていない。ストレーナー[3]のメッシュサイズは20メッシュ(目開き0.8mm)である。着色重合体粒子の分散液を撹拌翼[14]で攪拌しながら、ターボ型の遠心ポンプ[4]で、熱交換器[2]で75m/時間の流量で送り、図中に示す[3,4,5,2,8]の加熱循環ラインにより加熱した。目開きと、加熱循環ラインの流量から計算されるストレーナー[3]における流量は0.020m/秒であった。この間、循環の初期には熱交換器[2]のアウト側の液温は、蒸発器[1]内の液温よりも5℃高く設定した。1時間かけて、蒸発器[1]内の液温を78℃まで上げた。次いで、熱交換器[2]の設定を92℃に上げ初期の温度差14℃とし、気体吹き込みライン[10]から、25℃の窒素を90標準m/hrで吹き込み続け、排気ライン[11]から排気することにより、蒸発器[1]内の圧力を(ゲージ圧で)+0kPaに設定して、ストリッピングを開始し、着色重合体粒子の分散液[12]から、スチレン等の残留重合性単量体やその他の揮発性有機化合物を除去した。ストリッピング処理を32時間継続した。この間じゅう、蒸発器内の液面発泡性は○であり、ストレーナーへの目詰まりが発生することによる加熱循環ラインの停止は無く、ストリッピング終了後に、ストレーナーを観察したところ状態は○であった。このストリッピングの処理中、2時間毎に、蒸発器内の着色重合体粒子の水系分散液をサンプリングし、その中に残留するスチレン(残留重合性単量体)の量を測定し、除去レートを求めた。除去レートRsは53%/hrであった。
(ストリッピング後、重合法トナー)
ストリッピングの終了後に、蒸発器[1]内の内容物を、放冷により25℃まで冷却した。蒸発器に、その内容物を攪拌しながら、硫酸を添加して酸洗浄する操作を25℃で10分間行い、着色重合体粒子の水系分散液のpHを5.7に調整した。次に、内容物を連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、製品名イーグルフィルター)お用いて、脱水し、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化して、水洗浄を行った。その後、これらの脱水と水洗浄を数回繰り返し行った後、固形分を濾過分離した。乾燥機を用いて、この固形分を45℃で10時間乾燥して、体積平均粒径dvが8.72μmの着色重合体粒子を得た。乾燥後の着色重合体粒子中のスチレン量を測定したところ、検出限界以下(50ppm以下)であった。
(非磁性一成分の重合法トナーの調製と試験)
乾燥後の着色重合体粒子100部に、疎水化処理した平均粒子径14nmのシリカ(日本エアロジル社製、製品名RX200)0.8部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、静電荷像現像用の非磁性一成分現像剤(重合法トナー)を調製した。得られた重合法トナーについて、臭気の試験を行ったところ、結果は○であった。重合法トナーについて、引き続き、一般的な画像形成試験を行ったが、保存性、印字濃度、カブリ及びベタ印字テストのいずれにおいても、良好な結果が得られた。
<実施例2>
追加の分散剤を添加しなかった他は、実施例1と同様にして、実験を行った。コア用の重合性単量体組成物の重合反応は、重合転化率が99%に達するまで行った。得られた、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度は、25%であり、残留重合性単量体(スチレン)量は、300ppmであった。ストリッピング処理の条件は実施例1と同様であったが、処理中の蒸発器内の液面発泡性は○であり、ストレーナーへの目詰まりが発生することによる加熱循環ラインの停止は無く、ストリッピング終了後に、ストレーナーを観察したところ状態は○であった。スチレンの除去レートRsは38%/hrであった。同様に、脱水、水洗、濾過および乾燥し、体積平均粒径dvが8.2μmの着色重合体粒子を得た。乾燥後の着色重合体粒子中のスチレン量を測定したところ、検出限界以下(50ppm以下)であった。実施例1と同様に、調製した重合法トナーについて、臭気の試験を行ったところ、結果は○であった。引き続き、行った画像形成試験の結果は、保存性、印字濃度、カブリ及びベタ印字テストのいずれにおいても、良好であった。
<比較例1>
追加の分散剤を添加せず、ストレーナーの目開きにおける流速を0.025m/秒とした他は、実施例1と同様にして、実験を行った。コア用の重合性単量体組成物の重合反応は、重合転化率が99%に達するまで行った。得られた、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度は、25%であり、残留重合性単量体(スチレン)量は、○500ppmであった。ストリッピング処理を、行ったところ、処理中の蒸発器内の液面発泡性は△であり、ストレーナーへの目詰まりが発生し加熱循環ラインが8回も停止し、安定した処理が出来なかった。ストリッピングが停止した際に目視で観察したストレーナーの状態は×であった。以降の実験を中止した。
<比較例2>
着色剤として、カーボンブラック(三菱化学社製、製品名#25)7部を用いた他は比較例1と同様の実験を行った。コア用の重合性単量体組成物の重合反応は、重合転化率が99%に達するまで行った。得られた、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度は、25%であり、残留重合性単量体(スチレン)量は、1200ppmであった。ストリッピング処理を、行ったところ、処理中の蒸発器内の液面発泡性は○であり、ストレーナーへの目詰まりが発生することによる加熱循環ラインの停止は無く、ストリッピング終了後に、ストレーナーを観察したところ状態は○であった。スチレンの除去レートRsは21%/hrであった。ここまで確認した時点で、以降の実験を中止した。
<実施例3>
着色剤として、シアン色の着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3、大日本インキ工業社製、製品名CT−BX121)5重量部を用いた他は、実施例1と同様にして、実験を行った。コア用の重合性単量体組成物の重合反応は、重合転化率が99%に達するまで行った。得られた、コア・シェル型の着色重合体粒子の水系分散液の固形分濃度は、25%であり、残留重合性単量体(スチレン)量は、300ppmであった。ストリッピング処理の条件は実施例1と同様であったが、処理中の蒸発器内の液面発泡性は○であり、ストレーナーへの目詰まりが発生することによる加熱循環ラインの停止は無く、ストリッピング終了後に、ストレーナーを観察したところ状態は○であった。スチレンの除去レートRsは62%/hrであった。同様に、脱水、水洗、濾過および乾燥し、体積平均粒径dvが7.2μmの着色重合体粒子を得た。乾燥後の着色重合体粒子中のスチレン量を測定したところ、検出限界以下(50ppm以下)であった。実施例1と同様に、調製した重合法トナーについて、臭気の試験を行ったところ、結果は○であった。引き続き、行った画像形成試験の結果は、保存性、印字濃度、カブリ及びベタ印字テストのいずれにおいても、良好であった。
以上の実施例と比較例から、以下のことが分かる。カラートナーの製造方法において、黒色のトナーの場合(比較例2)と同一の条件で、ストリッピング処理を行う(比較例1)と、目詰まりが発生し、揮発性有機化合物を生産性良く留去することができない。マゼンタ色のトナー(実施例1および2)やシアン色のトナー(実施例3)などのカラートナーの製造方法において、ストレーナーにおける流量と目開きを所定の範囲にすることにより、ストリッピング処理で目詰まりが発生せず、揮発性有機化合物を生産性良く留去することができができる。
本発明の製造方法により、揮発性有機化合物を留去する工程において凝集物の発生が少なく、残留重合性単量体が少なくて環境安全性に優れた電子写真用カラートナーの製造方法が提供される。この製造方法により製造されるカラートナーは、カラー印刷やカラーコピーなどの電子写真に用いることができる。
ストリッピングのための装置の例を示した図である。
符号の説明
1 蒸発器
2 熱交換器
3 ストレーナー
4 ポンプ
5 熱交換器へのライン
6 ポンプアウトからの戻りライン
7 加熱後の液相への戻りライン
8 加熱後の気相への戻りライン
9 ジャケット
10 気体吹き込みライン
11 排気ライン
12 液相
13 気相
14 撹拌翼

Claims (4)

  1. 外部に加熱循環ラインを備えた蒸発器に、
    重合法で得られた着色重合体粒子の水系分散液を入れ、
    該加熱循環ラインによりこれを加熱循環しながらストリッピングして、揮発性有機化合物を留去した後に、
    脱水、洗浄、および乾燥することにより乾燥した着色重合体粒子とし、重合法トナーを製造する方法において、
    該加熱循環ラインが、ストレーナー、ポンプ、および熱交換器を有しており、
    該着色重合体粒子がカラーの着色重合体粒子であり、
    該ストレーナーにおける流量が0.02m/秒以下であり、
    該ストレーナーの目開きが0.6mm以上である
    ことを特徴とする重合法トナーの製造方法。
  2. 前記着色重合体粒子の水系分散液に、分散剤を添加したあと、前記ストリッピングをすることを特徴とする請求項1記載の重合法トナーの製造方法。
  3. 前記カラーの着色重合体粒子が、マゼンタ色の着色重合体粒子である請求項1または2に記載の重合法トナーの製造方法。
  4. 前記カラーの着色重合体粒子が、シアン色の着色重合体粒子である請求項1または2に記載の重合法トナーの製造方法。
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