JP4134789B2 - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するためのトナーに関し、更に詳しくは、微粒子の副生を防止して生産性、耐久性を向上させ、更に、重合開始剤の分解物や残存モノマー量を抑制して印刷時に臭気を感じず、安全性の高いトナーを製造する方法及びそのトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真装置や静電記録装置等においては、例えば、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着させている。静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有させた着色粒子を含んでなっている。その製造方法として重合法がある。
【0003】
重合法では、一般に、重合性単量体、着色剤などを均一に溶解又は分散せしめた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水又は水を主体とする水性媒体中に投入し、高剪断力を有する混合装置を用いて分散し、重合性単量体組成物を微小な液滴とした後、重合して必要に応じて会合してトナー用着色粒子を得ている。懸濁又は乳化重合法では、低粘度の液体状重合性単量体中に着色剤などを分散させるので、高粘度の溶融樹脂中に着色剤を添加する粉砕法に比べて、充分な均一分散性が確保される。また、重合法では、極めてシャープな粒径分布を有する着色粒子を含んでなるトナーを高収率で得ることができる。
【0004】
ところが重合法では、目的とする粒径の着色粒子だけでなく、微粒子が副生することがある。微粒子が副生すると、得られた着色粒子を濾過する際に濾過速度が大幅に低下、又は濾過できないという問題となる。また、微粒子を含有するトナーは、流動性が低下するため、現像剤として使用した場合に、補給性、帯電性が低下する。更に、現像剤中に微粒子が蓄積され、その結果、現像剤の耐久性が悪化する。
【0005】
重合法において、微粒子の副生を防止する方法として、特許文献1には、五酸化バナジウム、塩化第二銅を水相重合禁止剤として用いる方法が開示されている。しかし、これらの重合禁止剤はトナー表面に残留し、得られるトナーの耐湿性を低くする。
特許文献2には、水系懸濁重合において水溶性メルカプタン化合物を添加することが開示されている。しかし、この方法では、樹脂粒子あるいは排水に異臭が付着してしまい、さらにこの異臭は、容易に洗浄できないという問題がある。
特許文献3には、水溶性ニグロシンを添加して懸濁重合を行う方法が開示されている。しかし、この方法では、帯電性の均一なトナーを得ることは困難である。
特許文献4にはラジカル重合性単量体、該ラジカル重合性単量体に可溶でかつアルカリ性水系媒体に可溶のラジカル重合禁止剤、及び着色剤を含有する組成物を、アルカリ性の水系媒体中で懸濁させる工程、及び該懸濁液中に存在する液滴の重合性単量体を重合させる工程を経ることにより、微粒子の副生を防止できるとの開示がある。しかし、この方法では、微粒子の副生防止が充分でなく高温高湿下でのカブリ、耐久性の低下による白すじの発生などがおき、また、残留モノマーや重合開始剤の分解物などにより、印刷時に臭気が発生する問題がある。また、残存モノマー量が多いと、臭気の問題だけでなく、トナーの内部に存在するワックスなどの成分がトナー表面に出てくることがあり、トナーの凝集を助長し、感光体へのフィルミング等が発生し易いという問題があった。
特許文献5には、少なくともニトロ基、スルホン基ナトリウム塩及び2級アミノ基をそれぞれ1つ以上有する芳香族化合物の存在下に懸濁重合を行う方法が開示されている。しかし、得られるトナーは、前記芳香族化合物が有色であるため、フルカラートナーとしては使用できず、耐湿性にも問題がある。
【特許文献1】
特開昭60−8302号公報
【特許文献2】
特開昭61−25535号公報
【特許文献3】
特開平5−61253号公報
【特許文献4】
特開平5−100484号公報
【特許文献5】
特開平7−316209号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微粒子の副生が少なく、洗浄が容易で生産性に優れ、印刷時に白すじなどの画質不良がなく、高温高湿度下においてもトナーの帯電量が低下せずカブリの発生がなく、かつ印刷時において残留モノマー、重合開始剤の分解物等の臭気が少なく、かつ安全性の高い重合法トナーの製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、前記課題を克服するために鋭意研究した結果、ビニル系単量体及び着色剤を含有してなる重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水性媒体中に懸濁又は乳化させ、重合禁止剤と重合開始剤の存在下に重合するトナーの製造方法において、重合開始剤として10時間半減期温度が30℃以上120℃以下でありニトリル基を置換基に持たないアゾ化合物を用い、重合禁止剤としてハイドロキノン系化合物を用いることよって、上記目的を達成できることを見いだし、この知見によって、本発明を完成するに到った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、(1)ビニル系単量体及び着色剤を含有してなる重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水性媒体中に懸濁又は乳化させ、重合禁止剤と重合開始剤の存在下に重合する工程を含み、前記重合開始剤として10時間半減期温度が30℃以上120℃以下でありニトリル基を置換基に持たないアゾ化合物を用い、前記重合禁止剤としてハイドロキノン系化合物を用い、且つ前記重合性単量体組成物を水性媒体に懸濁又は乳化させている途中に又は終了後に重合禁止剤を添加するトナーの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(2)重合開始剤がジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)である1記載のトナーの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、(3)更にカプセル化する工程を有する1又は2記載のトナーの製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、(4)1、2又は3記載の製造方法により得られる、印刷時のカルモア値が100以下であるトナーが提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる重合性単量体組成物は、ビニル系単量体及び着色剤を含有してなるものである。
(ビニル系単量体)
本発明で用いられるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸又はメタクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;等が挙げられる。これらのビニル系単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することにより、重合体のガラス転移温度(以下「Tg」と略す)を所望の範囲に調整する。これらのうち、スチレン系単量体又はアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体が、好適である。更に、スチレン、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択されるものが好適である。
【0010】
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉、オイルブラック、チタンホワイトの他、あらゆる顔料及び/又は染料を挙げることができる。黒色のカーボンブラックは、一次粒径が20〜40nmであるものが好適である。粒径がこの範囲にあることにより、カーボンブラックをトナー中に均一に分散でき、カブリも少なくなるので好ましい。
【0011】
フルカラートナーを得る場合、通常、マゼンタ着色剤、シアン着色剤、及びイエロー着色剤を使用する。フルカラートナー用マゼンタ着色剤としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、150、163、185、202、206、207、209、238、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0012】
フルカラートナー用シアン着色剤としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、6、7、15、15:1,15:2,15:3,15:4、16、17、60、62及び66等が挙げられる。
【0013】
フルカラートナー用イエロー着色剤としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、138、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3及び20等が挙げられる。
これら着色剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。これら着色剤は、単独、若しくは2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明においては、必要に応じてその他の添加剤を重合性単量体組成物に含有させる事ができる。
(滑剤・分散助剤)
本発明では、重合性単量体組成物中において着色剤を均一に分散させるために、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、脂肪酸とNa、K、Ca、Mg、Zn等の金属とからなる脂肪酸金属塩などの滑剤;シラン系又はチタン系カップリング剤等の分散助剤;などを含有させても良い。
このような滑剤や分散助剤の量は、着色剤の重量を基準として、通常、1/1000〜1/1程度である。
【0015】
(離型剤)
本発明では、離型剤を重合性単量体組成物に含有させることが特に好ましい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート及びジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの離型剤のうち、合成ワックス、多官能エステル化合物が好ましい。これらの中でも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜150℃、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは50〜80℃の範囲にある多官能エステル化合物が、定着−剥離性バランスの良いトナーが得られるので好ましい。特に、分子量が800以上であり、25℃でスチレン100重量部に対し5重量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるものは定着温度低下に顕著な効果を示すので更に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
離型剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、1〜25重量部、好ましくは5〜15重量部、より好ましくは8〜12重量部である。
離型剤をこの範囲の量で含有すると帯電が安定し、耐オフセット性が向上し、感光体表面へのトナーフィルミングが発生しずらくなり、更に定着温度が低下するので好ましい。
【0016】
(帯電制御剤)
本発明ではトナーの帯電性を調整するために、各種の正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を重合性単量体組成物中に含有させることが好ましい。帯電制御剤としては、例えば、カルボキシル基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン、帯電制御樹脂などが挙げられる。
具体例としては、ニグロシンN−01(オリエント化学社製)、ニグロシンEX(オリエント化学社製)、スピロブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)などの帯電制御剤;4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、スルホン酸(塩)基含有共重合体、スチレン/アクリル樹脂(藤倉化成株式会社製、商品名「FCA−626N」)等の帯電制御樹脂;等を挙げることができる。中でも、重合性単量体との相溶性が高く、無色であり高速でのカラー連続印刷において帯電性が安定したトナーを得ることができるので、帯電制御樹脂が好ましい。
【0017】
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、通常2,000〜50,000、好ましくは4,000〜40,000、更に好ましくは6,000〜30,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、カラートナーの彩度や透明性を維持することができる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度は、通常40〜80℃、好ましくは45〜75℃、更に好ましくは45〜70℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、トナーの保存性と定着性をバランスよく向上させることができる。
帯電制御剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。帯電制御剤をこの範囲の量で含有すると、トナーの帯電量を制御し易く、カブリの発生を少なくすることができるので好ましい。
【0018】
(マクロモノマー)
本発明では、重合性単量体組成物中にマクロモノマーを含有させるのが好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマー又はポリマーである。数平均分子量が小さいものを用いると、着色粒子の表面部分が柔らかくなり、保存性が低下するようになる。逆に数平均分子量が大きいものを用いると、マクロモノマーの溶融性が悪くなり、定着性及び保存性が低下するようになる。マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、ビニル系単量体との共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好ましい。
【0019】
本発明に用いるマクロモノマーは、前記ビニル系単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものが好適である。
ビニル系単量体を重合して得られる重合体とマクロモノマーとの間のTgの高低は、相対的なものである。例えば、ビニル系単量体がTg=70℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、Tgが70℃を越えるものであればよい。ビニル系単量体がTg=20℃の重合体を形成するものである場合には、マクロモノマーは、例えば、Tg=60℃のものであってもよい。なお、マクロモノマーのTgは、通常のDSC等の測定機器で測定される値である。
【0020】
マクロモノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独で又は2種以上を重合して得られる重合体;ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー、特開平3−203746号公報の第4頁〜第7頁に開示されているものなどを挙げることができる。
これらマクロモノマーのうち、親水性のもの、特にメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを単独で又はこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が好ましい。
【0021】
マクロモノマーの量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、更に好ましくは0.05〜1重量部である。
マクロモノマーがこの範囲の量で含有すると、保存性を維持したままで、定着温度を低下させたトナーが得られるので好ましい。
【0022】
(架橋性モノマー)
本発明では、任意の架橋性モノマーをビニル系単量体との共重合成分として用いることが好ましい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
架橋性モノマーの量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜1重量部である。
架橋性モノマーは、重合性単量体組成物に含有させてもよいが、該重合性単量体組成物を水性媒体に懸濁又は乳化している途中に又は終了後に反応系に添加することが好ましく、特に懸濁又は乳化している途中で重合開始剤添加前に反応系に添加するのが好ましい。
【0023】
(分子量調整剤)
本発明では、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合性単量体組成物に含有させてもよいが、該重合性単量体組成物を水性媒体に懸濁又は乳化している途中に又は終了後に反応系に添加することが好ましく、特に懸濁又は乳化している途中で重合開始剤添加前に反応系に添加するのが好ましい。
分子量調整剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0024】
ビニル系単量体に、着色剤、必要に応じて他の添加剤(例えば、離型剤、帯電制御剤、マクロモノマー)を添加してビーズミル等により粉砕混合し、各成分が均一に分散ないしは溶解した重合性単量体組成物を調製する。
【0025】
(水性媒体)
本発明に用いる水性媒体は、水に分散安定剤を含有させたものである。必要に応じてその他の添加剤(例えばアルコールなどの親水性溶媒)を含有させてもよい。
【0026】
(分散安定剤)
分散安定剤としては、例えば、炭酸塩;リン酸塩;金属酸化物;などの金属化合物や、金属水酸化物;水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
これらのうち、難水溶性金属化合物のコロイドを含有するものが好ましい。難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等を挙げることができる。これらのうち、難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、また分散安定剤の洗浄後の残存性が少なく、画像の鮮明性が向上するので好適である。
【0027】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物とアルカリ金属水酸化物との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。
【0028】
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると懸濁重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
分散安定剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部である。
分散安定剤の量が上記範囲にあることで、充分な重合安定性が得られ、重合凝集物の生成が抑制され、所望の粒径のトナーを得ることができるので好ましい。
【0029】
本発明においては、必要に応じて、分散安定剤として水溶性高分子を水に含有させることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等を例示することができる。本発明においては、界面活性剤を使用する必要はないが、帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲で重合を安定に行うために使用することができる。
【0030】
本発明の製法では、前記重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水性媒体中に懸濁又は乳化させる。懸濁又は乳化の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)、高速乳化・分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK
II型」)などの強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0031】
(重合禁止剤)
本発明で用いられる重合禁止剤は、ハイドロキノン系化合物である。
ハイドロキノン系化合物の具体例としては、ヒドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノン、2メチル−1,4−ベンゼンジオール等が挙げられ、中でも、ハイドロキノンが好ましい。
重合禁止剤は、重合性単量体組成物に含有させてもよいが、該重合性単量体組成物を水性媒体に懸濁又は乳化している途中に又は終了後に反応系に添加することが好ましく、特に懸濁又は乳化している途中で重合開始剤添加前に反応系に添加するのが好ましい。
重合禁止剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。ハイドロキノン系化合物の量がこの範囲にあると微粒子の副生が防止され、均一に重合が進行する。
【0032】
(重合開始剤)
本発明では、重合開始剤としてアゾ化合物が用いられる。このアゾ化合物は10時間半減期温度が30℃以上120℃以下、好ましくは60〜80℃である。重合開始剤の10時間半減期温度が低すぎると、開始剤を添加する段階で重合が部分的に開始してしまい、均一に重合を行うことができない。開始剤の10時間半減期温度が高すぎると、重合温度を重合体のTg以上に反応温度を上げなければならず、重合体の会合を招く。更に、重合容器を耐圧容器にする必要が生じる。
又、このアゾ化合物は、ニトリル基を置換基に持たないアゾ化合物である。好適なアゾ化合物は、分子量が250以下のものである。
具体例としては、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等を例示することができる。
これらのうちジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が印刷時に臭気を生じず、更に、トナーの保存性等に優れるトナーが得られることから好ましい。
重合開始剤の量は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
重合開始剤の量が上記範囲にあることで、適度な重合速度と適度な分子量を有するトナーを得ることができるので好ましい。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、重合性単量体組成物を水性媒体中に懸濁又は乳化している途中又は終了後に添加することが好ましい。
重合開始剤を添加する好適な時期は、目的とする着色粒子により異なるが、重合性単量体組成物を水性媒体に投入後、攪拌により形成される重合性単量体組成物の液滴の粒径(体積平均粒径)が、通常50〜1000μm、好ましくは100〜500μmとなった時点である。また、重合性単量体組成物の投入から重合開始剤の添加までの時間が長いと、液滴の形成が完了してしまい、重合性単量体組成物と重合開始剤とが均一に混合せず、着色粒子ごとの重合度や架橋度等の樹脂特性を均一にすることが困難となる。
【0033】
重合開始剤の添加時からその後の液滴の形成工程(即ち重合開始前)での水性媒体の温度は、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内に調整する。この温度が高すぎると系内で部分的に重合反応が開始してしまう。逆にこの温度が低すぎると系の流動性が低下して、液滴の形成に支障を来すおそれが生じる。重合開始剤を添加した後、更に攪拌を継続して、その後の重合によって通常0.1〜10μm、好ましくは4〜8μm程度の体積平均粒径の着色粒子が形成する程度にまで液滴を微細化する。液滴の形成時間は、重合性単量体、添加剤、重合開始剤等の種類と添加量、液滴の形成温度、液滴の形成機の種類、所望の粒径などにあわせて、任意に設定することができる。
【0034】
上記操作によって得られた重合性単量体組成物の分散液を、液滴が分離や沈降しない程度の攪拌を維持しながら、所定の温度に昇温して重合を開始し、一定時間重合を継続した後、反応を停止して着色粒子の水分散液を得る。
重合性単量体組成物の重合温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜90℃であり、重合時間は、1〜20時間、好ましくは2〜10時間である。
【0035】
本発明では、更にカプセル化又はコアシェル化することが好ましい。
カプセル化するための具体的な方法としては、(1)前記重合反応で得られた着色粒子の水分散液にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、(2)前記重合反応においてシェル用の樹脂を重合性単量体組成物に含有させる方法などを挙げることができる。(1)の方法において、シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加するか、又はプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加することができる。
【0036】
(1)の方法において、カプセル化する時に用いるコア用の着色粒子は、通常、それを構成する重合体のガラス転移温度を80℃以下、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃とすることが好ましい。そのガラス転移温度が80℃を越える場合には、定着温度が高くなり、OHP透過性が低下し、高速印刷に適しない傾向になる。
シェル用重合性単量体としては、コア粒子を形成する重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を形成し得る単量体を用いることが好ましい。例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を越える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性の重合開始剤を添加することがコアシェル型着色粒子を得やすくなるので好ましい。
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。
水溶性重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0038】
重合後又はカプセル化後に着色粒子の水分散液から未反応の重合性単量体を除去し、更に重合時に使用した分散安定剤を着色粒子から除去するために、洗浄と脱水を繰り返し行い、次いで乾燥することによって、トナーを得ることができる。
【0039】
洗浄は、着色粒子の水分散液に酸又はアルカリを添加して、分散安定剤を水に溶解して除去することが好ましい。分散安定剤として、難水溶性金属水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0040】
濾過脱水の方法は、特に限定されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち遠心濾過法が好ましい。濾過脱水装置としては、ピーラーセントリフュージ、サイホンピーラーセントリフュージなどを挙げることができる。遠心濾過法においては、遠心重力を、通常、400〜3000G、好ましくは800〜2000Gに設定する。脱水後の含水率は、通常、5〜30重量%、好ましくは8〜25重量%である。含水率がこの範囲であると、乾燥工程に時間を要さず、乾燥によって不純物が濃縮されないため現像剤の環境依存性が減るため好ましい。
【0041】
(外添剤)
本発明では、乾燥工程後、着色粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。
本発明に用いる外添剤としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子;メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがメタクリル酸エステル共重合体で、シェルがスチレン重合体で形成されたコアシェル型重合体粒子等の有機樹脂粒子などが挙げられる。これらのうち、無機酸化物粒子、特に二酸化ケイ素粒子が好適である。また、これらの粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理された二酸化ケイ素粒子が特に好適である。外添剤の量は、特に限定されないが、着色粒子100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。
【0042】
外添剤は2種以上を組み合わせて用いても良い。外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる2種の無機酸化物粒子又は有機樹脂粒子を組み合わせるのが好適である。具体的には、平均粒子径5〜20nm、好ましくは7〜18nmの微粒子(好適には無機酸化物粒子)と、平均粒子径20nm超過2μm以下、好ましくは30nm〜1μmの微粒子(好適には無機酸化物粒子)と、を組み合わせて付着させることが好適である。なお、外添剤用の粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で該粒子を観察し、無作為に100個選び、その粒子径を測定し、その測定値の平均値である。
【0043】
平均粒子径5〜20nmの微粒子の量は、着色粒子100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部であり、平均粒子径20nm超過2μm以下の微粒子の量は、通常、0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。平均粒子径5〜20nm微粒子と平均粒子径20nm超過2μm以下微粒子との重量比は、通常、1:5〜5:1の範囲、好ましくは3:10〜10:3の範囲である。外添剤の付着は、通常、外添剤と着色粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて攪拌して行う。
【0044】
本発明の製造法によって得られるトナーは、体積平均粒径(dv)が3〜10μm、好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。粒径が小さいと流動性が低下して、転写性が低下したり、カスレが発生したりし、また印字濃度が低下することがある。逆に大きいと、画像の解像度が低下することがある。体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)は1.0〜1.3であり、1.0〜1.2であると更に好ましい。粒径分布が大きいとカスレが発生したり、転写性、印字濃度及び解像度が低下することがある。
トナーの体積平均粒径及び粒径分布は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)などを用いて測定することができる。
【0045】
本発明の製造方法によって得られるトナーは、印字を開始してから10枚目の紙が排出される時に、プリンター本体排紙部より1cmの場所での臭気を臭気測定装置(株式会社カルモア製、商品名「カルモアΣ」)を用いて測定した値(カルモア値)が100以下であることが好ましい。カルモア値が100以下であると、鼻の良い人でもほとんど臭気を感じることがない。
【0046】
本発明のトナー製造方法では、副生する微粒子が少ないため、着色粒子の洗浄、乾燥が、容易であり、残留モノマー量も低減することができる。また、本発明のトナー製造法によるトナーは、微粒子が少ないため耐久性が高く、印刷時に白すじなどの画質不良がない。また、高温高湿度下においてもトナーの帯電量が低下せずカブリの発生がない。更に、印刷時において残留モノマー、重合開始剤の分解物等の臭気が感じられず、かつ安全性が高い。
【0047】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0048】
(1) 副生微粒子(濾液透過率)
重合終了後の着色粒子スラリーを硫酸にてpH6に調整し15分保持した。次いで減圧濾過機にて前記スラリーを濾紙(東洋濾紙株式会社製、商品名「東洋ろ紙No2」)を用いて含水率約35%程度まで脱水した。
脱水後の着色粒子ケーキを固形分濃度20%になるように水を添加して15分間攪拌、次いで減圧濾過機にて上記スラリーを濾紙(東洋濾紙株式会社製、商品名「東洋ろ紙No2」)を用いて脱水した。
以後、上記の水による洗浄操作を3回繰り返した。
分光光度計(株式会社日立製作所製、商品名「スペクトロフォトメーター U−1100」)を用いて、1cmセルで500nmにおける各脱水時の濾液の光線透過率を測定しイオン交換水の光線透過率を100%としたときの相対透過率を測定した。
この際、測定した透過率が70%以上である場合は、濾液に副生微粒子がほとんどないことを示している。
(2) 副生微粒子(走査電子顕微鏡(SEM)観察)
乾燥した着色粒子の表面を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名「JSM−5300」)で3500倍に拡大して観察した。
各サンプルについて5視野撮影し、各視野において無作為に10個の着色粒子を選び、その着色粒子表面に観測される副生微粒子の個数を数えた。その後着色粒子10個あたりの副生微粒子個数の平均を求めた。
【0049】
(3) 残留モノマー等
以下の条件で残留モノマー等の分析を行った。
(サンプル調整)
1) 重合直後の着色粒子スラリーを均一に分散させた状態でサンプリングして、100mlねじ口付きガラス瓶に約3gを10mgまで精秤する。
2) ジメチルホルムアミド 27g±0.1gを加え、スターラーにて攪拌して完全に溶解させる。
3) メタノール 13g±0.1gを加え、引き続き約10分間攪拌して高分子成分を析出させる。
4) 攪拌を停止し、析出物を沈殿させる。
5) 上澄みを注射筒に抜き取り、フィルター(アドバンテック社製、商品名「メンブランフィルター25JP020AN」)を注射筒に装着して沈殿物を濾過したサンプル液を得、そのサンプル液をガスクロマトグラフィー測定する。
6) 重合直後の着色粒子スラリーを均一に分散させた状態でサンプリングして、直径5cmのアルミ皿に約2g精秤し、105℃のオーブンで2時間乾燥して放冷後、重量を測定し、固形分濃度を求めた。
7) 乾燥着色粒子単位重量あたりの残留スチレン量(ppm)を、スチレンで予め検量線を引いておいた値から求め、C11成分(ppm)については、スチレンとみなして、スチレンの検量線からC11成分量(ppm)を算出した。本明細書においてC11成分とは、ガスクロマトグラフィー分析において、保持時間がブチルヘプチルエーテルの保持時間付近に検出される成分をいう。
(分析条件)
装置 :GC−2010(株式会社島津製作所製)
カラム : TC−WAX(ジーエルサイエンス株式会社製)df=0.5μm 0.25mmI.D.×60m
検出器 :FID
キャリアーガス:ヘリウム(線速度 21.3cm/sec)
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
オーブン温度 :100℃で2分保持後、5℃/分の速度で150℃まで温度上昇させ、150℃で6分保持
サンプリング量:2μl
【0050】
(4) 定着時カルモア試験
トナーを市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(株式会社沖データ製、商品名「MICROLINE 3010C」)に搭載して黒べた印字を連続して行い、印字を開始してから10枚目の紙が排出される時に、プリンター本体排紙部より1cmの場所での臭気を、臭気測定装置(株式会社カルモア製、商品名「カルモアΣ」)を用いて測定した。印字開始前に同位置で測定したカルモア値は0である。カルモア値が低いほど臭気を感じない。
【0051】
(5) 画質評価
ア.環境安定性(カブリ)
前述したプリンターを用いて、温度28℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度で連続印字を行い、20,000枚印字後に、ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、白色度計(日本電色工業株式会社製 商品名「SE2000」)で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた新しい印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、カブリ値とした。この値の小さい方が、カブリが少ないことを示す。
イ. 耐久性(白すじ)
上記のプリンターに評価するトナーを入れ、温度23℃、湿度50%(N/N)環境下でー昼夜放置後、5%印字濃度で連続印字を行い、5000枚印字後に黒ベタ印字をさせて、印字用紙の白すじの有無を確認した。
【0052】
[実施例1]
スチレン89部、n−ブチルアクリレート11部、顔料C.I.ピグメントブルー15:3(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「FASTGEN BLUE CT−BX121」)5部、帯電制御剤(スチレン/アクリル樹脂、藤倉化成株式会社製、商品名「FCA−626N」)4部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業株式会社製、商品名「AA6」)0.25部を高速乳化・分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)10000回転×10分で分散を行い均一混合液を得た。次いで離型剤(ジペンタエリスリトールヘキサミリステート)10部を該混合液に添加してスリーワンモーターにて攪拌溶解した。
【0053】
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0054】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、上記コア用重合性単量体組成物を投入、攪拌後、分子量調整剤(t−ドデシルメルカプタン)1.75部、架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)0.25部、重合禁止剤(ハイドロキノン)0.2部の5%水溶液及び重合開始剤(ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート))3部を順次投入した。次いで(インライン型)乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)を用いて高剪断攪拌して、コア用重合性単量体組成物の液滴を形成した。
【0055】
コア用重合性単量体組成物液滴の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に移し入れ、85℃で重合反応を開始させ、重合転化率95%に達したときに、系内温度を85℃に維持しながら、シェル用重合性単量体(メチルメタアクリレート)1部及びイオン交換水10部に溶解した2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(和光純薬工業株式会社製、商品名「VA086」)0.1部を添加した。次いで、系内温度を90℃に昇温して、温度を90℃に維持しながら3時間反応を継続した後、反応を停止し、コアシェル型着色粒子の水分散液を得た。水分散液のpHは9.5であった。
【0056】
上記により得たコアシェル型着色粒子の水分散液(着色粒子スラリー)の残留モノマー等をガスクロマトグラフィー分析した後、攪拌しながら硫酸にてpH6に調整し15分保持した。次いで、減圧濾過機にて上記スラリーを濾紙(東洋濾紙株式会社製、商品名「東洋ろ紙No2」)を用いて含水率約35%程度まで脱水した。
脱水後の着色粒子ケーキを固形分濃度20%になるようにイオン交換水を添加し15分間攪拌、次いで減圧濾過機にて上記スラリーを濾紙(東洋濾紙株式会社製、商品名「東洋ろ紙No2」)を用いて脱水した。
以後、上記の水による洗浄操作を3回繰り返した。
この操作において脱水時の各濾液について透過率を測定した。その結果を表1に示す。
その後、脱水を行って固形分を濾過分離し、乾燥機にて40℃で2昼夜乾燥を行い、トナーを得た。
得られたトナーをSEMで観察した。その結果を表1に示す。
【0057】
上記により得られたコアシェル型着色粒子100部に、疎水化処理したコロイダルシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「RX300」)1部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合してトナーを調製した。このようにして得られたトナーの定着時カルモア試験、(H/H)環境安定性試験、耐久性試験を行った。評価結果を表1に示した。
【0058】
[実施例2]
実施例1において、ハイドロキノンの添加量を0.5部に代えた他は、実施例1と同様にして着色粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。
【0059】
[比較例1]
実施例1において、ハイドロキノンの添加量を0部に代えた他は実施例1と同様にして着色粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。
【0060】
[比較例2]
実施例2において、ハイドロキノンを亜硝酸ナトリウムに代えた他は実施例2と同様にして着色粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。
【0061】
[比較例3]
比較例1において、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 5部に代え、水による洗浄を更に2回繰り返した他は比較例1と同様にして着色粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。なお、水洗浄6回目の濾液透過率は70%であった。
【0062】
[比較例4]
実施例2において、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代えた他は実施例2と同様にして着色粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。
【0063】
【表1】
実施例1及び2では、洗浄時に濾液へ副生微粒子がほとんど流出しておらず、トナー表面にも副生微粒子がほとんど付着していなかった。このことから、微粒子の副生が少なく、洗浄も容易であったことを示している。重合後に残留スチレンが観測されたが、通常の洗浄・乾燥工程を経ることよって、印刷時には残留スチレンの臭気はなかった。定着時のカルモア値も低く、臭気が感じられなかった。また、耐久性についても良好な結果が得られた。比較例1では、重合禁止剤を用いていないので、微粒子が大量に副生した。水洗浄により副生微粒子が除去されてゆき、水洗浄を繰り返すと徐々に濾液に流出してくる副生微粒子が減っていったが、4回の洗浄ではトナー表面に副生微粒子が残り、耐久性が悪く、印刷時に臭気も感じられた。比較例2では、ハイドロキノン系化合物以外の重合禁止剤を用いているため、微粒子が大量に副生し、洗浄が困難で、トナー表面に副生微粒子が残り、また、残留スチレンが多く、印刷時に臭気があった。比較例3では、重合開始剤として過酸化物を用いており、重合禁止剤を用いていない。副生した微粒子は、6回の水洗浄によりほぼ除去でき、残留スチレン量も少ないが、臭気があった。比較例4では、重合開始剤としてニトリル基を置換基に持つアゾ化合物を用いている。この場合は、微粒子が大量に副生し、洗浄が困難で、トナー表面に副生微粒子が残り、耐久性が悪く、印刷時の臭気も高かった。
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、微粒子の副生が少なく、洗浄が容易で生産性に優れ、画像特性に優れたトナーを得ることができる。本発明により得られるトナーは、印刷時の補給性、帯電性に優れ、かつ印刷時の残留モノマー、重合開始剤の分解物等の臭気が少なく、かつ安全性の高いものである。
Claims (4)
- ビニル系単量体及び着色剤を含有してなる重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水性媒体中に懸濁又は乳化させ、
重合禁止剤と重合開始剤の存在下に重合する工程を含み、
前記重合開始剤として10時間半減期温度が30℃以上120℃以下でありニトリル基を置換基に持たないアゾ化合物を用い、
前記重合禁止剤としてハイドロキノン系化合物を用い、且つ前記重合性単量体組成物を水性媒体に懸濁又は乳化させている途中に又は終了後に重合禁止剤を添加するトナーの製造方法。 - 重合開始剤がジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)である請求項1記載のトナーの製造方法。
- 更にカプセル化する工程を有する請求項1又は2記載のトナーの製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の製造方法により得られる、印刷時のカルモア値が100以下であるトナー。
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