JP3757710B2 - 潜在捲縮発現性ポリエステル繊維および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた捲縮発現能力により布帛にストレッチ性を与えることのでき、さらにカチオン可染により発色性に優れ、しかも糸斑が小さな潜在捲縮発現性ポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは機械的特性をはじめ様々な優れた特性を有しているため衣料用途をはじめ各種分野に利用されている。そして、ポリエステル布帛にストレッチ性を与えるため種々の方法が採用されている。
【0003】
例えば、織物中にポリウレタン系の繊維を混用し、ストレッチ性を付与する方法がある。しかしながら、ポリウレタン系繊維は、ポリウレタン固有の性質として風合いが硬く、織物の風合いやドレープ性が低下する問題があった。さらに、ポリウレタン系繊維はポリエステル用の染料には染まり難く、ポリエステル繊維と併用したとしても、染色工程が複雑になるばかりか所望の色彩に染色することが困難であった。
【0004】
また、ポリエステル繊維に仮撚加工を施し、加撚/解撚トルクを発現させた繊維を用いることにより、織物にストレッチ性を付与する方法がある。しかし、このトルクは織物表面のシボに転移し易い傾向があり、織物欠点となり易い問題があった。このため、熱処理やS/Z撚りとすることでトルクバランスを取り、ストレッチ性とシボ立ちによる欠点をバランスさせることも行われているが、概ねストレッチ性が低下しすぎることが問題となっていた。
【0005】
このため、ポリウレタン系繊維や仮撚加工糸を用いない方法として、サイドバイサイド複合を利用した潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が種々提案されている。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは熱処理により捲縮が発現する、あるいは熱処理前より微細な捲縮が発現する能力を有するポリエステル繊維のことを言い、通常の仮撚加工糸とは区別されるものである。
【0006】
例えば、特公昭44−2504号公報や特開平4−308271号公報には固有粘度差あるいは極限粘度差(Δ[η])を有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)のサイドバイサイド複合糸、特開平5−295634号公報にはホモPETとそれより高収縮性の共重合PETのサイドバイサイド複合糸が記載されている。このような潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いれば、織物にした際ストレッチ性が発現し、ストレッチ性織物を得ることができる。しかしながら、分散染料でしか染色できないため発色性という点では不充分であった。そのため、発色性を高めることを目的とし、低い延伸倍率を採用し繊維構造をルーズにすることによって染料吸尽率を高める方法もあるが、この方法では延伸倍率が低いため糸斑が発生しやすく染め斑等の欠点となるばかりか、捲縮特性が大きく低下してしまう問題があった。
【0007】
ところで、極限粘度差サイドバイサイド複合糸ではΔ[η]を高くするほど捲縮特性としては向上するが、いわゆるベンディング(口金直下でのポリマー流曲がり)のため取り得る極限粘度差には限界がある(Δ[η]≦0.50)。ここでベンディングとは以下のことを言うものである。すなわち、大きな極限粘度差があるポリマーの組み合わせを用い、平行合流タイプ口金(図2a)から複合ポリマー流を吐出する際大きなポリマー流速の違いが発生し、吐出直後に、流速の大きな低粘度ポリマーが高粘度ポリマーを押し、顕著な複合ポリマー流の曲がりが発生する。そのため、複合ポリマー流が口金に接着し紡糸不可能となる。そのため、このような大きな粘度差を有するポリマーの組み合わせでは、口金に種々の工夫が施されてきたが、いづれの口金でもベンディングの抑制が不充分であった。さらに、特殊な口金であるため紡糸パック内、口金内でのポリマー流路が複雑となり、ポリマーの異常滞留による熱劣化ポリマーが発生しやすく、紡糸や延伸工程といった製糸工程での糸切れが頻発する問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来問題となっていた発色性を改善し、しかも糸斑の小さなストレッチ性に優れた布帛を得ることができる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートと金属塩スルホネート基を有する構成単位を全酸成分に対し1〜7mol%共重合した改質ポリエステルからなる複合繊維であって、捲縮伸長率が3%以上、収縮応力が0.22cN/dtex以上、ウースター斑が2%以下であることを特徴とする潜在捲縮発現性ポリエステル繊維により達成される。
【0010】
捲縮伸長率(%)=[(L1−L2)/L1]×100%
L1:繊維かせに0.9×10−3cN/dtexの荷重を吊したまま、沸騰水処理を15分間施した後、さらに180℃乾熱処理を15分間施した後、180×10−3cN/dtex荷重を吊した時のかせ長
L2:L1測定後の繊維かせから180×10−3cN/dtexを取り外し、0.9×10−3cN/dtexの荷重をかけたときのかせ長
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
【0012】
ポリプロピレンテレフタレート(以下PPTと略す)またはポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略す)は、ジオール成分および酸成分の一部が各々15mol%以下の範囲で他の共重合可能な成分で置換されたものであってもよい。なお、ポリエチレングリコール(以下PEGと略す)を共重合する場合は10重量%以下である。また、これらは艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。
また、改質ポリエステルとは前記ポリエステルに金属塩スルホネート基を有する構成単位を全酸成分に対し1〜7mol%共重合したものをいうものである。金属塩スルホネート基を有する構成単位とは、具体的には5−スルホネートイソフタル酸のナトリウム塩やリチウム塩等の金属塩、またホスホニウム塩等の有機塩が挙げられるが、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が最も汎用的であり好ましい。改質ポリエステルの金属塩スルホネート基を有する構成単位の共重合量は全酸成分に対し1〜7mol%共重合であれば、充分なカチオン染色性が得られ、優れた発色性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が得られる。金属塩スルホネート基を有する構成単位の共重合量は1〜3mol%であればさらに流動性が向上するため、製糸性が向上し好ましい。金属塩スルホネート基を有する構成単位の共重合量は多い方がカチオン染色性は向上するが、7mol%より高くする等、過度に多いとアルカリ減量速度が高くなりすぎ、複合するポリエステルとのバランスが悪化してしまう。また、カチオン染料の染着量を増加させるためPEG等ソフト成分を共重合することも可能である。PEG等のソフト成分の共重合量は3重量%以下で充分な効果を発現する。
【0013】
本発明は2種類のポリマーからなる複合糸であり、サイドバイサイド複合あるいは偏心芯鞘複合の形態を採ることが好ましい。本発明において繊維断面形状は何等限定されるものではないが、例えば図3のような断面形状が挙げられる。このうち、捲縮発現性と風合いのバランスが取れているものは丸断面の半円状サイドバイサイドであるが、ドライ風合い狙う場合は三角断面、軽量、保温を狙う場合は中空サイドバイサイド等用途に合わせて適宜断面形状を選択することができる。
【0014】
また、ポリマーの複合比は重量%で30/70〜70/30であれば良好なストレッチ性が得られるが、好ましくは40/60〜60/40、さらに好ましくは50/50である。
改質ポリエステルの極限粘度は0.75以下であればポリマーの流動性が良好であり、口金やパック内でのポリマーの異常滞留がほとんど無く優れた製糸性が得られる。極限粘度(以下[η]と略す)は好ましくは0.70以下である。一方、得られる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の収縮応力を高め、ストレッチ性を確保するためには極限粘度は0.55以上であることが好ましい。
【0015】
また、改質ポリエステル側を捲縮の内側とする場合には、改質ポリエステルの極限粘度を高く設定すると、紡糸/延伸過程で改質ポリエステル側に応力集中し、延伸糸段階で改質ポリエステル側が捲縮の内側に入り、その後布帛成形後の熱処理により収縮差(改質ポリエステルが高収縮)によりさらに捲縮が強くなるという、2重の効果が発現し好ましい。なお、改質ポリエステル側を捲縮の外側とする場合は、捲縮の内側となるポリエステルとしてポリプロピレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートを用いると捲縮伸長率が向上し好ましい。
【0016】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維のストレッチ性は繊維の捲縮特性に依存しており、捲縮伸長率で3%以上が必要である。捲縮伸長率は好ましくは5%以上、より好ましくは9%以上である。ここで捲縮伸長率とは、図1に示すように糸かせに0.9×10−3cN/dtex(1mg/d)の荷重を吊した状態で熱処理を行い、処理した後の繊維の捲縮の伸びを表す量であり、値が高いほど捲縮特性が高い、すなわちストレッチ性が良好である。
【0017】
また、織物拘束に打ち勝って捲縮発現するためには収縮応力も重要であり、収縮応力の極大値が0.22cN/dtex(0.25g/d)以上であることが必須である。好ましくは応力の極大値は0.26cN/dtex(0.30g/d)以上である。また収縮応力の極大値を示す温度は、撚糸の撚り止め熱セット時の寸法安定性を考慮すると、110℃以上が好ましい。110℃以上とすると撚糸の撚り止め熱セット時に過度な収縮や捲縮が発生を抑制し、またそれを布帛にした際も不均一なシボが発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の強度は2.0cN/dtex以上とすることが布帛の引き裂き強力を確保する点から好ましい。また、繊維の伸度は、20〜50%とすることが糸の取り扱い性の点から好ましい。より好ましくは25〜40%である。また、布帛形成後の取り扱い性を考慮すると、繊維の直線収縮率は20%以下であることが好ましい。直線収縮率はより好ましくは15%以下である。
【0019】
本発明ではウースター斑(以下U%と略す)が2%以下であることが必須である。U%が2%より大きくなると、特に長繊維の場合、布帛にした際、染色斑、また捲縮斑による布帛表面の荒れ等の欠点が発生してしまう。このような欠点が発生してしまうと商品価値が大きく低下してしまうのである。U%は好ましくは1.5%以下である。より好ましくは1.0%以下である。
【0020】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は製造方法には何ら限定されるものではないが、例えば以下のような方法で得ることができる。すなわち、PPTまたはPBTと5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜7mol%共重合したPETをサイドバイサイド複合糸、あるいは偏心芯鞘複合糸として紡糸し、それを延伸倍率NDR×1.2以上として延伸することにより本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を得ることができる。
【0021】
また、紡糸速度は2500m/分以上とし、紡糸過程である程度複合糸の配向結晶化を進めておくと、延伸により捲縮を付与しやすく好ましい。また、延伸温度は85℃以上とすることで、分子鎖のモビリティーを充分大きくすることが可能であり、糸斑の小さな潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を得ることができ好ましい。また、延伸倍率は高いほど捲縮特性が向上するが、NDR×1.2以上とすると、充分な捲縮特性を得ることができ好ましい。延伸倍率はより好ましくはNDR×1.3以上である。ここで、NDRとはいわゆる自然延伸倍率のことを意味し、図4にように{1+(定応力伸長領域長(%)/100(%)}として定義されるものである。また、延伸は2段以上の多段延伸を採用すると、捲縮特性が向上し、好ましい。また、延伸糸の結晶化が抑制されているとポリエステルと改質ポリエステルの収縮差が大きくなり、捲縮特性が向上する。このため、延伸後の熱セット温度は90℃以下とすることも可能である。
【0022】
また、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は無撚りで織物に使用すると、捲縮による収縮が大きくなりすぎ織物表面が荒れてしまう傾向がある。そのため、本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維においても撚糸を施すことが好ましく、撚り係数K=8000〜25000の中撚から強撚とすることが好ましい。より好ましくはK=10000〜17000である。
【0023】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は単独で用いることも可能であるが、沸騰水収縮率が3%以下の低収縮性ポリエステル繊維と混繊して用いると、ストレッチ性に、ふくらみ感や反発感を付加することができ好ましい。低収縮性ポリエステル繊維の沸騰水収縮率はより好ましくは1%以下、さらに好ましくは−2%以下である。また、このような混繊糸として用いる際はふくらみ感を強調するためK≦7000の甘撚りで用いることが好ましい。より好ましくはK≦5000である。また無撚りで用いることも可能であるが、混繊糸の工程通過性を考慮するとKの下限は2000程度であることが好ましい。
【0024】
また本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いた布帛は70℃以上の温度で収縮させると、織りクリンプが高度に発現しストレッチ性が向上し好ましい。収縮温度の上限は特に限定されないが、100℃までとすると常圧で加工できるため好ましい。
【0025】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、織物や編物中で大きなストレッチ性とかさ高性を得るために、長繊維であることが好ましい。
【0026】
本発明は、シャツ、ブラウス、パンツ、スーツ、ブルゾン等に好適に用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.捲縮伸長率
繊維かせに0.9×10−3cN/dtex(1mg/d)の荷重を吊したまま沸騰水処理を15分間施した後、さらに180℃乾熱処理を15分間施す。そして以下の処理後長L1、L2を測定し以下の式で計算した(図1)。
【0028】
捲縮伸長率(%)=[(L1−L2)/L1]×100%
L1:繊維かせに180×10−3cN/dtex荷重を吊した時のかせ長
L2:繊維かせに0.9×10−3cN/dtex荷重を吊した時のかせ長
B.収縮応力
カネボウエンジニアリング社製熱応力測定器で、昇温速度150℃/分で測定した。
サンプルは10cm×2のループとし、初期張力は繊度(デシテックス)×0.9×(1/30)gfとした。
C.極限粘度([η])
オルソクロロフェノール中、25℃で測定した。
D.直線収縮率
直線収縮率(%)=[(L0−L1’)/L0)]×100%
L0:繊維かせを初荷重0.18cN/dtex下で測定したかせの原長
L1’:L0を測定したかせを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水処理を15分間施し、さらに160℃乾熱処理を15分間施す。その後初荷重0.18cN/dtex下でのかせ長すなわち、比較的重い荷重により捲縮を完全に引き延ばした時の繊維の乾熱収縮率である。
E.ウースター斑(U%)
Zellweger社製 USTER TESTER 1 ModelCを使用し、25m/分の速度で糸を給糸しながらノーマルモードで測定を行った。
F.強度および伸度
初期試料長=50mm、引っ張り速度=50mm/分とし、JIS L1013にしたがい荷重−伸長曲線を求めた。次に、荷重−伸長曲線において最高到達荷重を初期繊度で割り強度(cN/dtex)とし、最高到達荷重での伸びを初期試料長で割り伸度(%)とした。
G.自然延伸倍率(NDR)
初期試料長=50mm、引っ張り速度=50mm/分とし、JIS L1013にしたがい荷重−伸長曲線を求めた。次に、荷重−伸長曲線において、降伏点以後の一定荷重値を示す領域を定応力伸長領域とし、その一定荷重値を初期の繊度で割り定応力伸長領域応力、定応力伸長領域の終了点の伸度を100%で割り、定応力伸長領域長とした。そしてNDR=1+定応力伸長領域長とした(図4)。
H.布帛評価
得られた潜在捲縮発現性ポリエステル繊維に撚り係数15000の強撚を施し、S/Z交互配置としたものを経糸および緯糸に用いて平織りを作製した。それに90℃温水中ででリラックス精練により収縮を施した後180℃で中間セットを行った。そして、常法にしたがい10重量%のアルカリ減量を施した後、やはり常法にしたがいカチオン染料を用い青色に染色、洗浄を施した。そして、得られた布帛のストレッチ性、発色性、染め斑、布帛表面の審美性について官能評価を1〜5級で行い、3級以上を合格とした。
実施例1
[η]=1.50の酸化チタンを含まないホモPPTと[η]=0.65の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2mol%、PEGを1重量%共重合し酸化チタンを0.03wt%含む改質PETをそれぞれ295℃、300℃で別々に溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用い別々に濾過を行った後、孔数12の特開平9−1579415号公報記載の挿入タイプ口金(図2b)から複合比50重量%/50重量%のサイドバイサイド複合糸(図3(b))として紡糸温度300℃で吐出した。紡糸−延伸後56dtexとなるよう吐出量を調整し、紡糸速度3000m/分で12フィラメントの未延伸糸を巻き取った(図5)。その後ホットーローラーを有する延伸機を用い、第1ホットーローラー(1HR)の温度80℃、熱板(HPL)温度を145℃(L=15cm)、延伸倍率を1.70倍(NDR×1.30)として延伸を行った(図6)。得られた繊維の物性値を表1に示すが、優れた捲縮発現能力を示し、糸斑も問題無いレベルであった。この潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用い、布帛評価を行ったところ、ストレッチ性、発色性が優れていた。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
実施例2
ホモPPTの代わりに[η]=1.86の酸化チタンを含まないホモポリブチレンテレフタレートを用い、紡糸温度を295℃とした以外は実施例1と同様に紡糸を行った。この未延伸糸を用い、延伸倍率を1.40(NDR×1.30)、1HR温度を80℃、HPL温度を145℃とした以外は実施例1と同様に延伸を行った。得られた繊維の物性値を表1に示すが、非常に優れた捲縮発現能力を示し、糸斑も問題無いレベルであった。この潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用い、布帛評価を行ったところ、ストレッチ性、発色性は優れていた。
比較例1
[η]=0.46と[η]=0.77の酸化チタンを0.03wt%含むホモPETをそれぞれ275℃、290℃で別々に溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用い別々に濾過を行った後、孔数12の特開平9−157941号公報記載の挿入タイプ口金(図2b)から複合比50重量%/50重量%のサイドバイサイド複合糸(図3a)として紡糸温度290℃で吐出した。この時の溶融粘度比は20.3であった。紡糸速度1500m/分で154dtex、12フィラメントの未延伸糸を巻き取り、その後1HR温度90℃、HPL温度を150℃、延伸倍率2.20(NDR×1.05)として延伸を行った。紡糸、延伸とも製糸性は不良であり糸切れが多発した。双方のポリエステルがカチオン染料に不染のため、分散染料で染色したが発色性に劣るものであった。また、延伸倍率が低いため捲縮伸長率が低いものであった。この潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用い、布帛評価を行ったところ、ストレッチ性、発色性、染め斑に劣るもであった。
比較例2
[η]=0.63の酸化チタンを含まないホモPETと[η]=0.65の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2mol%、PEGを1重量%共重合し酸化チタンを0.03wt%含む改質PETをそれぞれ290℃、300℃で別々に溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用い別々に濾過を行った後、孔数12の平行合流タイプ複合紡糸口金(図2a)から複合比50重量%/50重量%のサイドバイサイド複合糸(図3(b))として紡糸温度300℃で吐出した。紡糸−延伸後56dtexとなるよう吐出量を調整し、紡糸速度3000m/分で12フィラメントの未延伸糸を巻き取った(図5)。その後ホットーローラーを有する延伸機を用い、第1ホットーローラー(1HR)の温度90℃、熱板(HPL)温度を150℃(L=15cm)、延伸倍率を1.40倍(NDR×1.08)として延伸を行った(図6)。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり糸切れは無かった。得られた繊維の物性を表1に示すが、捲縮伸長率が低いものであった。この潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用い、布帛評価を行ったところ、ストレッチ性に劣るものであった。
【0032】
【発明の効果】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いると、従来問題となっていた発色性を改善し、しかも糸斑の小さなストレッチ性に優れた布帛を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】捲縮伸長率の測定法を示す図である。
【図2】口金を示す図である。
【図3】本発明のポリエステル繊維の繊維断面形状を示す図である。
【図4】未延伸繊維の強伸度曲線を現す図である。
【図5】紡糸、巻き取り装置を示す図である。
【図6】延伸装置を示す図である。
【符号の説明】
1:スピンブロック
2:不織布フィルター
3:口金
4:チムニー
5:糸条
6:給油ガイド
7:交絡ガイド
8:第1ゴデットローラー
9:第2ゴデットローラー
10:巻き取り糸
11:未延伸糸
12:フィードローラー
13:第1ホットローラー
14:熱板
15:ドローローラー
16:延伸糸
Claims (10)
- ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートと、金属塩スルホネート基を有する構成単位を全酸成分に対し1〜7mol%共重合した改質ポリエステルからなるサイドバイサイド複合糸または偏心芯鞘複合糸であって、捲縮伸長率が3%以上、収縮応力が0.22cN/dtex以上、ウースター斑が2%以下であることを特徴とする潜在捲縮発現性ポリエステル繊維。
捲縮伸長率(%)=[(L1−L2)/L1]×100%
L1:繊維かせに0.9×10−3cN/dtexの荷重を吊したまま、沸騰水処理を15分間施した後、さらに180℃乾熱処理を15分間施した後、180×10−3cN/dtex荷重を吊した時のかせ長
L2:L1測定後の繊維かせから180×10−3cN/dtexを取り外し、0.9×10−3cN/dtexの荷重をかけたときのかせ長。 - 捲縮の内側がポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである請求項1記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維。
- ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートの極限粘度が1.5以上である請求項1記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維。
- 収縮応力の極大値を示す温度が110℃以上である請求項1記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維。
- 直線収縮率が15%以下である請求項1記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維。
- 極限粘度が1.5以上であるポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートと、金属スルホネート基を有する構成単位を全酸成分に対し1〜7mol%共重合した改質ポリエステルを、30重量%/70重量%〜70重量%/30重量%の複合比でサイドバイサイド複合糸または偏心芯鞘複合糸として紡糸した後、延伸倍率をNDR×1.2以上として延伸することを特徴とする潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造方法。
- 撚り係数K=8000〜25000の中撚または強撚を施した請求項1〜5のいずれか1項記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いたストレッチ性に優れたポリエステル布帛。
K=T×[マルチフィラメントの繊度(dtex)×0.9]1/2
T:1mあたりの撚り数 - 請求項1〜5のいずれか1項記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維と沸騰水収縮率が3%以下の低収縮性ポリエステル繊維からなるポリエステル混繊糸。
- 撚り係数K≦7000の甘撚りを施した、あるいは無撚りの請求項8記載のポリエステル混繊糸よりなるポリエステル布帛。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維または請求項8記載のポリエステル混繊糸を用いた布帛、または請求項7または9記載のポリエステル布帛を、70℃以上の温度で潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を収縮させることを特徴とするポリエステル布帛の製造方法。
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