JP4733879B2 - 潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたナチュラル感、ドライ感、スパナイズ外観を呈し、さらにストレッチ性能にも優れた布帛を得ることができるポリエステル複合斑糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステル未延伸糸を不完全延伸するとき斑糸が得られることはよく知られている。この斑糸は、斑が強調されればされるほど、当然のことながら風合いなどの特徴が強く出るが、この斑を強調しすぎるとナチュラル感が損なわれたり、低配向の未延伸部残存に起因する取り扱い性や機械的特性が低下するという問題がある。
【0003】
この問題を解消するため、特公平3−77304号公報には、斑糸の太部が特殊な分散状態にあり、糸条としてノーマルテストで得られるスペクトログラフ上の周期50cmの値が最大値の1/2以下である斑糸が提案されている。確かにこの斑糸は、機械的特性や取り扱い性が改善されているものの、用途によっては風合が未だ不十分であり、ナチュラル感、ドライ感及びスパナイズ外観を呈する斑糸の開発が望まれている。
【0004】
一方、近年、衣服の着用快適性に対する要求が高まっており、布帛に適度なストレッチ性を付与することが一般化している。
【0005】
このような理由から、上記風合い、外観の改善と合わせて、ストレッチ性能にも優れた斑糸の開発が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、優れたナチュラル感、スパナイズ外観、ドライ感を呈し、ストレッチ性能にも優れた布帛を得ることのできる新規なポリエステル複合斑糸を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくとも2種類のポリエステル系マルチフィラメントを混繊または交撚してなる複合糸において、糸長方向に太細がある単繊維を含む斑糸と潜在捲縮糸を使用し、集合体構造を巧みに組み合わせることにより、所望の布帛が製造可能な複合斑糸が得られることを知り、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、「糸長方向に太細がある単繊維を含むポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が混繊されてなる複合糸であって、ノーマルテストで得られるスペクトログラフ上に周期4〜10cmと周期50〜150cmにそれぞれピーク値(Pmax1、Pmax2)が存在し、かつそのピーク値比(Pmax1/Pmax2)が1.2〜4.0であることを特徴とする潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。」が提供される。
【0009】
その際、前記潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の熱水収縮率が前記ポリエステル斑糸(A)の熱水収縮率よりも5%以上高いと、複合斑糸が熱処理を受けた際、該複合斑糸において、芯部に潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)、鞘部にポリエステル斑糸(A)が位置するようになり好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸は糸長方向に太細がある単繊維を含むポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が混繊されてなる複合斑糸である。
【0011】
まず、本発明で使用されるポリエステル斑糸(A)は、エチレンテレフタレートを繰返し単位とするポリエチレンテレフタレートを主たる対象とするが、必要に応じて第3成分を少量(通常は全繰返し単位を基準として15モル%以下、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下)共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルであってもよく、また、艶消剤、その他の添加剤を含有していてもよい。なかでも、アルカリ減量処理することによって、繊維表面又は繊維内部に、微細孔又は微細溝を形成される微細孔形成剤を含有している場合には、該孔又は溝の形状によって、吸水性、天然絹様風合、鮮明性、ドライタッチ等の各種効果を発現させることができるので好ましい。
【0012】
例えば、該微細孔形成剤として下記一般式で表されるスルホン酸金属塩を含有している場合には、ドライ感が向上して綿に類似した性能を得ることができる。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、M及びM´は金属であり、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛が好ましく、M及びM´は同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子又はエステル形成性官能基であり、nは1又は2を示す。
【0015】
かかるスルホン酸金属塩は、例えば特公昭61−31231号公報にあげられているものが好ましく用いられ、具体的には3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム−5−カルボン酸ナトリウム、3−ヒドロキシエトキシカルボニルベンゼンスルホン酸ナトリウム−5−カルボン酸1/2マグネシウムをあげることができる。
【0016】
上記スルホン酸金属塩のポリエステルへの添加時期は、ポリエステルを溶融紡糸する以前の任意の段階でよく、例えばポリエステルの原料中に添加配合しても、ポリエステルの合成中に添加してもよい。また、上記化合物の添加量は、少ないと最終的に得られるポリエステル繊維の綿様風合が低下し、一方多いと紡糸時にトラブルが発生しやすくなるので、ポリエステル重量を基準として0.5〜2.5%、特に0.6〜1.2重量%の範囲が適当である。
【0017】
ポリエステル斑糸(A)の見かけの単繊維繊度(太細を長さ方向に平均したもの)や糸条としての総繊度は特に限定されるものではないが、単繊維繊度としては1.5〜5.0dtex、総繊度としては40〜170dtexの範囲が適当である。
【0018】
ポリエステル斑糸(A)の単繊維の横断面形状については特に限定する必要はなく、丸断面でもナチュラルなスパナイズ外観を達成することができるが、三角断面のほうがよりドライ感やスパナイズ外観を付与することができるので好ましい。
【0019】
また、ポリエステル斑糸(A)の熱水収縮率は10%以下(より好ましくは8%以下)であることが好ましい。すなわち、通常の染色仕上げ工程ではファイナルセットを160℃〜200℃で実施する場合が多いので、かかる熱水収縮率を有することにより、熱処理後、潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が芯部に、ポリエステル斑糸(A)が鞘部に配された芯鞘構造糸が得られ易い。
【0020】
さらに、ポリエステル斑糸(A)の伸度は、80%以上(より好ましくは100〜150%)であることが好ましい。かかる伸度を有することにより、ポリエステル斑糸(A)が鞘部に配された芯鞘構造糸となした後において、該芯鞘構造糸に力が加わっても、該鞘部に応力が発生し難いため、優れたストレッチ性能が得られ易い。
【0021】
以上に説明した、本発明で使用されるポリエステル斑糸(A)は、例えば以下に述べる方法により製造することができる。
【0022】
すなわち、前述のポリエステルを温度280〜300℃で溶融し、紡糸口金から溶融吐出し、冷却固化した紡出糸条に油剤を付与し、空気噴射孔が3孔以上のインターレース付与装置を用いて圧力0.1〜0.3MPaの空気を噴射してインターレースを付与した後、ポリエステルのガラス転移温度以下に設定した予熱ローラー及び延伸ローラーを介して半延伸糸(予熱ローラー引取速度:1500〜2500m/min、延伸倍率:1.1〜1.5)としてワインダーに巻き取ることにより得られる。とりわけ、インターレースを付与することが重要であり、かかるインターレースの付与条件を適宜最適化することにより、本発明の目的のひとつである優れたナチュラル感が得られる。また、必要に応じて、得られた半延伸糸を、延伸速度500〜1400m/minで、80〜120℃に加熱した予熱ローラーおよび170〜240℃に設定した非接触ヒーターを経て、0.9〜1.2倍の倍率で弛緩熱処理もしくは延伸してもよい。
【0023】
次に、本発明で使用される潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)は、仮撚加工等の機械的捲縮加工を施すことなく、沸騰水中で捲縮を発現することが可能な複合繊維であって、該捲縮は座屈や角張った部分のない、曲線状の三次元的な捲縮であることが必要である。
【0024】
かかる潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする2種の成分がサイドバイサイド型または偏心シースコアー型に複合紡糸された複合繊維、あるいは固有粘度が異なるポリエチレンテレフタレートがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合紡糸された複合繊維などが例示される。中でも、固有粘度が異なるポリエチレンテレフタレートがサイドバイサイド型に複合紡糸された複合繊維が特に好ましく例示される。
【0025】
なお、上記のポリエチレンテレフタレート系、ポリトリメチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステルは、必要に応じて少量(通常30モル%未満)の共重合成分を有していてもよく、例えば共重合酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等を、また、オキシカルボン酸成分としては、パラヒドロキシ安息香酸等を、さらにジオール成分としては上記の繰り返し単位を形成しているグリコール成分以外のエチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、さらには、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール(フェノール性水酸基にエチレンオキサイドを付加したものでもよい)、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。特に粘度が高い方のポリエステルにイソフタル酸及び/又はビスフェノールAが5〜25モル%、好ましくは8〜15モル%共重合されている場合には、複合繊維の捲縮発現性能がさらに向上するので望ましい。
【0026】
上記潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)は、前記ポリエステル斑糸(A)よりも5%以上(より好ましくは7%以上)高い熱水収縮率を有することが好ましい。該熱水収縮率がかかる値よりも低い場合は、熱処理後、潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が芯部に配置されず、本発明の目的のひとつであるストレッチ性能が得られない恐れがある。
【0027】
また、上記潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の伸度は50%以下(より好ましくは30〜45%)であることが好ましい。
【0028】
さらに、上記潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の160℃における熱応力は前記ポリエステル斑糸(A)よりも大きいことがすることが好ましい。該熱応力の値としては、0.1cN/dtex以上(より好ましくは0.2cN/dtex以上)であることが好ましい。すなわち、前述のように通常の染色仕上げ工程ではファイナルセットを160〜200℃で実施する場合が多く、少なくともこの温度で潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の捲縮が発現することが布帛の着用感を改善するために必要となるからである。このような物性を得るには、未延伸糸を延伸する時の延伸温度や延伸倍率などを適宜調整すればよい。例えば伸度は延伸倍率によって、熱水収縮率は延伸時のセット条件によって、変えることができる。特に高熱水収縮率のものは非接触式ヒーターを用いて延伸することにより得られる。熱応力は延伸倍率や延伸時の加熱温度、さらには未延伸糸の紡糸速度によって変わるので、2500m/min以下の低紡糸速度糸を高倍率延伸してもよいし、2500〜4500m/minで紡糸したものを低倍率延伸してもよい。かかる延伸方法としてはローラーによる直接延伸、空気抵抗を利用した紡糸延伸、一旦、巻き取った糸を別途延伸する方法のいずれでもよい。また、これらの物性を変える別の方法として、ポリマーを変性して加減してもよく、例えばイソフタル酸を共重合すると高い収縮率のものを容易に得ることができる。
【0029】
本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸は上記のポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が混繊された複合糸である。複合方法は特に限定されないが、空気噴射ノズルに通して交絡混繊させる方法が好適に例示される。空気噴射ノズルを用いて混繊を行う場合、空気の噴射方法としては糸条と直角方向に当てる方法や糸条の進行方向に沿って当てる方法がある。前者によれば比較的光沢に優れた製品が得られる。一方、後者によれば比較的ソフトな風合の製品が得られる。この際、オーバーフィード率が大きくなるとループが多数発生し、製織性が低下する恐れがあるので該オーバーフィード率は10%以内にとどめたほうがよい。また、ナチュラル感を向上させるために、両者の間にオーバーフィード率の差をつけたり、少なくとも一方を弛緩熱処理することも好適に例示される。また、上記2種類の繊維を撚糸機上で引き揃えた後撚糸する方法、あるいは撚糸前に引き揃えて巻き取った後撚糸する方法等任意の方法を採用してもよい。さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、上記2種類の繊維以外のマルチフィラメント等を同時に混繊しても構わない。
【0030】
ポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の重量比率は目的に応じて自由に選ぶことができるが、ポリエステル斑糸(A):潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の重量比が80:20〜20:80(より好ましくは75:25〜50:50)であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸において、ポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)はそれぞれ2本以上で構成されていてもよい。あるいは本発明の特性が満足される範囲内であれば、第3の糸条を添えて複合することもできる。例えば金属メッキ繊維やカーボン粒子混入繊維を複合して導電性を付与することもできる。この際、かかる添え糸の重量比率は、複合斑糸全体に対し30wt%以内にとどめておくことが、スパナイズ外観、ナチュラル感、ドライ感、ストレッチ性能を維持する上で好ましい。
【0032】
次に、本発明でいうスペクトログラフとは、スイスのツエルベーガ社で開発されたウスタースペクトログラフのことを意味し、測定条件はノーマルテストとし、測定速度は400m/minとする。このウースタースペクトログラフは、斑内容の迅速な分析を可能とするもので、特に斑のピッチを知るのに有用なものとされ、その詳細は繊維機械学会発行の「むらの理論と実際」第255頁〜第372頁に詳述されている。
【0033】
本発明のポリエステル複合斑糸と従来の斑糸のスペクトログラフの例を図1及び図2に示し、図をもって詳細に説明する。ここで図1は後記する本発明に係る実施例1で得られるポリエステル複合斑糸のスペクトログラフであり、一方図2は従来の斑糸のスペクトログラフである。つまり、図1において、斑の周期が50〜150cmの長い部分と4〜10cmの短い部分との2箇所に極大値が存在するように斑が分散しているので、従来の長周期領域の極大値が存在しない斑糸と比較してよりナチュラルなスパナイズ外観を得ることが可能になる。
【0034】
本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸において、前記のノーマルテストで得られるスペクトログラフ上に周期4〜10cm(好ましくは5〜8cm)と周期50〜150cm(好ましくは80〜120cm)にそれぞれピーク値(Pmax1、Pmax2)が存在し、かつそのピーク値比(Pmax1/Pmax2)が1.2〜4.0(好ましくは1.5〜2.0)であることが肝要である。該ピーク値が一つしかなかったり、あるいは、ピーク値の位置が前記範囲外であったり、さらには、ピーク値比(Pmax1/Pmax2)が前記範囲を外れる場合には、太部のランダム分散性が低下してナチュラル感が低下したり、又は、ドライ感やスパナイズ外観が低下する。
【0035】
また、本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸において、上記スペクトログラフ上の周期20cmでの値P20とピーク値Pmax1との比(Pmax1/P20)が1.5〜4.0(より好ましくは2.0〜3.0)の範囲にある場合は、ナチュラル感、ドライ感、スパナイズ外観等がさらに向上するので好ましい。
【0036】
なお、かかるスペクトログラフ上の周期特性を有する複合斑糸は、前述の製造方法で得られたポリエステル斑糸(A)を使用することにより、容易に得られる。
【0037】
ポリエステル複合斑糸の見掛けの単繊維繊度(太細を長さ方向に平均したもの)や糸条としての総繊度は特に限定されるものではないが、単繊維繊度としては1.5〜5.0dtex、総繊度としては40〜250dtexの範囲が適当である。
【0038】
ポリエステル複合斑糸の熱処理後の捲縮率TCは、布帛にストレッチ性能を付与するために1.0%以上(より好ましくは2.0%以上)であることが好ましい。
【0039】
以上に説明した本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸は、通常、必要に応じて撚りを施され、所望の組織で製織偏される。得られた布帛は、染色加工工程に供され、熱処理を受ける。かかる熱処理により、本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸は、芯部に捲縮糸、鞘部に斑糸が配された芯鞘型構造糸となる。その結果、優れたナチュラル感、スパナイズ外観、ドライ感を呈し、ストレッチ性能にも優れた布帛が得られる。なお、染色加工工程において、必要に応じてアルカリ減量処理を施すことにより、ナチュラル感、ドライ感がさらに向上するので好ましい。
【0040】
本発明において、スパナイズ外観、ナチュラル感、ドライ感、ストレッチ性を意図しているので、複雑な組織に織編成するのは好ましくなく、平織もしくはその変化組織、簡単な綾織もしくはその変化組織、サテン織等に織編成するのが好ましい。また、布帛中に占める本発明の複合斑糸の割合は、必ずしも100%である必要はないが、優れたスパナイズ外観、ナチュラル感、ドライ感、ストレッチ性を得るためにはその割合が高いほど好ましい。
【0041】
【実施例】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<固有粘度>35℃のオルソクロロフェノール溶液で測定した。
<U%>イヴネステスターを使用し、検出端に供給速度100m/分で、3000回/mの撚りをかけながら試料を供給して測定した。
<熱水収縮率(BWS)>JIS L1013測定方法による。
<熱応力(TS)>熱応力測定器と、これに連動した記録装置を用いて測定する。試料をサンプリング治具を用いて5cmの輪を作る。次に熱応力測定器と記録装置を20〜300℃、応力0〜19.6cN(0〜20gf)の範囲が測定可能な状態に準備し、先にサンプリングした試料5cmの輪を熱応力測定器の、上部と下部のフックに掛けて2.94mN×表示テックス(1/30gf×表示デニール)の初荷重を掛けた後、熱応力の測定に入る。昇温速度は300℃/120秒で行う。300℃に昇温した時点で測定を完了する。測定は3回行い、その平均の値を使用する。なお、160℃の熱応力とは160℃点の繊度当たりの応力(cN/dtex)である。
<全捲縮率(TC)>1225/2500mN×9×表示テックス(50mg×表示デニール)の張力をかけてカセ枠に巻取り、約3300dtex(3000de)のカセを作る。カセ作製後、カセの一端に49/2500mN×9×表示テックス+49/25mN×9×表示テックス(2mg×表示デニール+200mg×表示デニール)の荷重を付加し1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、49/25mN×9×表示テックス(200mg×表示デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸騰水中にて20分間処理する。沸水処理後49/2500mN×9×表示テックス(2mg×表示デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に再び49/2500mN×9×表示テックス+49/25mN×9×表示テックス(2mg×表示デニール+200mg×表示デニール)の荷重を付加し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、49/25mN×9×表示テックス(200mg×表示デニール)の荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次の全捲縮率を算出した。
TC(%)=[(L1−L2)/L0]×100
なお、測定は10回行い、その平均値を求めた。
<布帛特性>各評価項目は、熟練した5人のパネラーによる官能評価で、全員が極めて良好と判定したものを(優)、3人以上が良好と判定したものを(良)、3人以上が不良と判定したものを(不良)と、3段階にランク付けした。
【0042】
[実施例1]
炭素数が7〜20で平均炭素数が8であるアルキルスルホン酸ナトリウムを0.75重量%含有した固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートを紡糸口金から溶融吐出し、該吐出糸条を冷却固化させた後に油剤を付与し、次いで、ノズル数が3のインターレース付与装置で圧力0.15MPaの空気を用いてインターレースを付与した後に2250m/minの速度で引き取り、3030m/minの速度で半延伸し、120dtex/36filのポリエステル斑糸(A)として巻き取った。
【0043】
一方、高粘度ポリエステルとしてイソフタル酸成分を10モル%共重合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルを、また低粘度ポリエステルとして固有粘度が0.43のポリエチレンテレフタレートを、複合重量比50:50でサイドバイサイド型に複合溶融紡糸(溶融紡糸温度285℃、溶融粘度差70Pa・sec)し、巻き取り速度1450m/minで巻き取った後、予熱ローラー温度90℃、熱セットヒーター(非接触式)温度230℃、延伸倍率2.7倍、延伸速度1200m/minで55dtex/12filの潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)として巻き取った。
【0044】
得られたポリエステル斑糸(A)を、予熱ローラー温度110℃、熱セットヒーター(非接触式)温度230℃、オーバーフィード率2%、延伸速度600m/minで弛緩熱処理した後、ローラーにて潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)と引き揃えて、インターレース付与装置で複合し、1本の糸条として巻き取り機に巻き取り、175dtex/48filのポリエステル複合斑糸を得た。
【0045】
得られたポリエステル複合斑糸を経糸及び緯糸に用い、羽二重に製織し、常法に従って精錬、熱セット、アルカリ減量加工(減量率15%)、染色を施して無地の染め織物を得た。評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2〜3、比較例1〜5]
ポリエステル斑糸(A)を製造する際の紡糸条件を適宜変更して、表1記載の単繊維断面、伸度、熱水収縮率を有するポリエステル斑糸(A)を得た。その際、主としてインターレース付与装置の空気圧力等の付与条件を変更することにより、該ポリエステル斑糸(A)の斑特性を変えた。続いて実施例1と同じ条件でポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)を混繊処理し、実施例1と同じ繊度、同じフィラメント数のポリエステル複合斑糸を得た。複合斑糸特性及び布帛特性の評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例6]
ポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)を混繊処理する際、ポリエステル斑糸(A)を弛緩熱処理するかわりに同じ温度条件で1.2倍に延伸した。それ以外は実施例1と同様にした。複合斑糸特性及び布帛特性の評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例7]
ポリエステル斑糸(A)のかわりとして、紡糸速度3400m/minで得た未延伸糸を2%の弛緩状態で230℃の加熱したヒーター中で0.7秒間弛緩熱処理したもので、それ以外は実施例1のポリエステル斑糸(A)と同じものを使用した。一方、潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)のかわりとして、紡糸速度1200m/minで得た未延伸糸を85℃で加熱しながら3.1倍に延伸し170℃でセットしたもので、それ以外は実施例1の潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)と同じものを使用した。そして、実施例1と同じ条件で混繊し、同繊度のポリエステル複合斑糸を得た。複合斑糸特性及び布帛特性の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸によれば、従来のポリエステル斑糸には見られなかったナチュラル感、触れた際のドライ感、スパナイズ外観、さらにはストレッチ性能を有する布帛が得られる。また、ポリエステル斑糸中に微細孔形成剤を含有している場合には、深色性、吸汗性、着用時の快適性などの特性にも優れたコットン調布帛を得ることができ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸のスペクトログラフの一例を示す図である。
【図2】従来のポリエステル斑糸のスペクトログラフの一例を示す図である。
Claims (7)
- 糸長方向に太細がある単繊維を含むポリエステル斑糸(A)と潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)が混繊されてなる複合糸であって、ノーマルテストで得られるスペクトログラフ上に周期4〜10cmと周期50〜150cmにそれぞれピーク値(Pmax1、Pmax2)が存在し、かつそのピーク値比(Pmax1/Pmax2)が1.2〜4.0であることを特徴とする潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
- ノーマルテストで得られる上記スペクトログラフ上の周期20cmでの値P20とピーク値Pmax1の比(Pmax1/P20)が1.5〜4.0である請求項1に記載の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
- 長さ方向に太細がある前記単繊維の太部長さが1〜15mmで、複合斑糸としてのウースターノーマルU%が3.5%以上である請求項1又は2記載の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
- 前記潜在捲縮型ポリエステル複合繊維(B)の熱水収縮率が前記ポリエステル斑糸(A)の熱水収縮率よりも5%以上高い請求項1〜3のいずれかに記載の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
- 前記ポリエステル斑糸(A)において、単繊維の横断面形状が三角形である請求項1〜4のいずれかに記載の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
- 前記ポリエステル斑糸(A)中に微細孔形成剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の潜在捲縮性能を有するポリエステル複合斑糸。
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