JP3731286B2 - バリアブルドット用溶融型感熱転写材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バリアブルドット方式で印刷する際の印刷特性に優れたバリアブルドット用溶融型感熱転写材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、寸法安定性、耐熱性、電気的性質などに優れた性質を有することからOA、FA用のプリンターなどの感熱転写材の基材フィルムとして広く利用されている。
【0003】
特に近年、印刷物のカラー化に伴い、主にバーコードなどの汎用用途に用いられてきた溶融型感熱転写方式においても、色の3原色(イエロー、マゼンダ、シアン)のインキを利用した単純なカラー化(3原色とその混色(赤、青、緑、黒)の7色)に続き、更に各々の色の階調表現を利用した高精細なフルカラー化が急速に進んでいる。
【0004】
ところで、溶融型感熱転写方式による記録はドット記録であり、ドットで階調を表現するには網点効果を利用し、例えば、ドットの粗密あるいはその大小で表現することなどができる。すなわち、網点による階調表現としては、
(1)ドット面積を一定にしてインキの盛り量を変える濃度変調法、
(2)インキの盛り量を一定にしてドットの粗密を変える密度変調法、
(3)インキ盛り量を一定にしてドットの面積を変える面積変調法、
などがある。
【0005】
このうち、(3)のドット面積を変える方法(以下、「バリアブルドット方式」と呼ぶ)が、高精細なフルカラー表現を得るのに有効な方法として急速に用いられ始めている。
【0006】
このバリアブルドット方式においては、サーマルヘッドのドットごとに、与えるエネルギーに応じて溶融型インキ層(転写材の熱によって溶融するインキ層)の転写面積を変えて被転写紙に転写させ階調性を出すため、溶融型インキ層と基材フィルムとの間には接着性が要求される。例えば、接着性が不足すると、加熱した部分の溶融型インキ層のみならず、周りの部分の溶融型インキ層が必要以上に被転写紙に移行し、色のにじみやボケが起こり、鮮明な画像が得られない、あるいは、与えられたエネルギーに応じたインキ転写が行われず、目的とする階調表現が得られず、高精細な画像が得られないなど、印刷特性が悪くなる。
【0007】
特に、高精細なフルカラープリンターなどにおいては、この現象が発生することは致命的であり、基材フィルムと溶融型インキ層との接着性はこれまで以上に重要視されている。
【0008】
しかし、一般に、二軸配向ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため接着性に乏しく、直接、溶融型インキ層を塗布しても全く接着せず、上記したような問題が生じる。このため溶融型インキ層との接着性を得るために、従来からポリエステルフィルム表面に種々の方法で易接着性を与えるための検討がなされてきた。
【0009】
易接着化の方法としては、例えば、基材ポリエステルフィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などを行う表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法が行われている。また、溶融型インキと近似した組成物を設けることにより接着性を得る方法として、各種ワックスやポリオレフィン樹脂などをプライマー層としてフィルム表面に設ける方法(特開昭61−255941号公報など)などが知られている。特に、塗布によって上記プライマー層を設け易接着性を付与する方法として、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに上記樹脂成分を含有する塗剤を塗布し、乾燥後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が工程簡略化や製造コストの点で有力視され、当業界で行われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した接着性付与のための従来の技術には次のような問題点がある。
【0011】
表面活性化法や表面エッチング法は接着性付与の点で弱く、またその効果も永続しない。また、ポリオレフィン樹脂を基材ポリエステルフィルム上に設けた場合には、溶融型インキ層とは良好な接着性を示すものの、印刷特性の点で満足するものは得られていない。
【0012】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、バリアブルドット方式で印刷する際に高精細な画像を得ることのできる印刷特性に優れたバリアブルドット用溶融型感熱転写材を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
掛かる目的を達成する本発明のバリアブルドット用溶融型感熱転写材は、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に易接着層を介して熱溶融インキ層が積層され、反対面にはスティック防止層が設けられた溶融型感熱転写材において、該易接着層がポリエステル樹脂を主たる構成成分としてなり、かつ、該易接着層の表面の中心線平均粗さが、4nm以上、40nm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが好ましい。また、感熱記録用シートなど基材に熱が作用する用途においては、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0015】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0016】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0017】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0018】
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムとは、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度二軸延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは二軸同時延伸いずれでもよい。また、縦、横延伸後、更に縦、横いずれかの方向あるいは縦と横の両方向に再延伸してもよい。
【0019】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、機械的強度、熱伝導性の点から、通常は1〜30μm、好ましくは2〜15μmである。
【0020】
また、ポリエステルフィルムは搬送性などの点で、表面がある程度粗面化されたものが好ましく、JIS−B−0601−1976に準じて測定(カットオフ:0.25mm)した中心線平均粗さが、0.05〜0.4μmである表面状態を有するものが好ましい。
【0021】
本発明に係る易接着層の構成成分であるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものである。このようなポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得ることができるものである。
【0022】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、易接着層の強度や耐熱性の点で、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上のものを用いるのがよい。脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などおよびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0023】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0024】
また、ポリエステル樹脂を水系樹脂とした塗液として用いる場合、基材フィルムとの接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂の水溶性化を容易にするため、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましく、印刷特性の点や疎水性のワックス系組成物と混合して用いる場合などにおいては、相溶性の点でカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが望ましい。
【0025】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
また、ポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
【0028】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などである。
【0029】
本発明に係る易接着層に用いられるポリエステル樹脂は、以下の製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法などにより製造することができる。
【0030】
この際、反応触媒として、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などが用いられる。
【0031】
また、カルボン酸を末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂を得る方法としては、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合した樹脂により製造することができるが、むろんこれら以外の方法であってもよい。
【0032】
また、本発明に係る易接着層のポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されないが、基材フィルムとの接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。ポリエステル樹脂のガラス転移点(以後、「Tg」と略称する)は、易接着層の基材フィルムとの接着性や印刷特性の点で−5〜50℃であることが好ましく、より好ましくは0〜45℃、最も好ましくは5〜35℃である。
【0033】
本発明においては、易接着層がポリエステル樹脂を主たる構成成分としてなることを特徴とするものであるが、該易接着層中にワックス系組成物を添加することにより、更に印刷特性を向上させることができる。
【0034】
ワックス系組成物については、府瀬川健蔵監修、「ワックスの性質と応用」、((株)幸書房昭和58年発行)を参考にすることができる。
【0035】
本発明において、用いられるワックス系組成物としては、常温で固体または半固体の有機物からなる組成物であれば特に限定されないが、例えば、天然ワックス、合成ワックス、あるいは配合ワックスなどである。
【0036】
天然ワックスは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、あるいは石油ワックスなどに分類され、合成ワックスは、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトンなどに分類される。また、配合ワックスは、上記ワックスに合成樹脂類を配合したものである。
【0037】
植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックスなどを用いることができる。
【0038】
動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス、coccus cacti wax、水鳥ワックスなどを用いることができる。
【0039】
鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどを用いることができる。
【0040】
石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、酸化ワックスなどを用いることができる。
【0041】
本発明においては、上記ワックス系組成物であれば特に限定されずに用いることができるが、印刷特性の点で天然ワックスが好ましく、より好ましくはパラフィンワックス、酸化ワックス、カルナバワックス、ロジン変性ワックスであり、特に好ましくはパラフィンワックスである。
【0042】
用いられるワックス系組成物の分子量は、印刷特性の点で、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、最も好ましくは1000以上である。
【0043】
すなわち、本発明者らの知見によれば、ワックス系組成物の分子量は1000以上とすること、また、その上限は100000程度までとするのが最も好ましい。
【0044】
本発明のバリアブルドット用溶融型感熱転写材の基材フィルムとなる易接着層を有する二軸配向ポリエステルフィルムを製造するに際しては、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに易接着層形成塗液を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法によることが、高温での熱処理が可能であることや、より均一で薄膜の易接着層が得ることができるので特に好ましい。上記方法によって易接着層を形成する場合には、環境汚染や防爆性の点で、ワックス系組成物は水に溶解、乳化、あるいは懸濁させた水系のワックス系組成物とすることが好ましい。
【0045】
ワックス系組成物を水に溶解あるいは乳化、懸濁させ水系化する方法としては、可溶化(転相)を用いる方法、機械力を用いる方法、酸化による乳化方法などを用いることができる。
【0046】
本発明に用いられるパラフィンワックスの水系塗液は以下の方法によって製造することができる。
【0047】
例えば、可溶化を用いる方法としては、パラフィンワックス、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどの界面活性剤、水を用意し、これらを全量容器にいれ、加熱撹拌し、可溶化を経て、パラフィンワックスエマルジョンを作ることができる。
【0048】
機械力を用いる方法としては、パラフィンワックス、ステアリン酸、トリエタノールアミンなどの分散剤、水を用意し、これらを全量容器にいれ、加熱、ホモミキサーで撹拌する。充分均一になった後、ホモジナイザーでパラフィンワックス乳化液を作ることができる。
【0049】
また、パラフィンワックスを酸化し、カルボキシル基や水酸基を付加し、これに界面活性剤を使用しパラフィンワックス乳化液とすることができる。この場合、パラフィンワックスに官能基としてカルボキシル基や水酸基が導入されるため、易接着層の強度や基材フィルムとの接着性が向上する。更に、架橋剤を併用したときには、該官能基は架橋性官能基として働き、その効果は更に向上するので好ましい。
【0050】
本発明においては、ポリエステル樹脂にワックス系組成物を添加して用いることにより更に印刷特性を向上させることができる。この場合、ワックス系組成物の添加量は特に限定されず、任意の比率で添加して用いることができるが、本発明の効果をより顕著に発現させるには、以下の比率で添加するとよい。固形分重量比で、ポリエステル樹脂/ワックス系組成物が100/0〜30/70であることが印刷特性の点で好ましく、より好ましくは99.5/0.5〜50/50、最も好ましくは99/1〜70/30である。
【0051】
また、易接着層中には本発明の効果が損なわれない範囲内で、他の樹脂、例えば、本発明以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されてもよい。
【0052】
更に、易接着層中には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、架橋剤などが配合されてもよい。
【0053】
特に、架橋剤の添加は、易接着層の強靱化、易接着層と基材フィルムとの接着性向上などの点で好ましい。用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、メラミン系、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などを用いることができる。
【0054】
また、本発明を実施するにあたり、塗液中に無機粒子を添加配合し二軸延伸したものは、易滑性が向上するので更に好ましい。
【0055】
添加する無機粒子としては、代表的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.01〜10μmであるものが好ましく、より好ましくは0.05〜5μm、最も好ましくは0.08〜2μmであり、塗液中の固形分に対する配合比は特に限定されないが、重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0056】
本発明においては、印刷後の画像のザラツキを抑える点で、易接着層の表面の中心線平均粗さを、4nm以上、40nm以下とし、最も好ましくは5nm以上、30nm以下である。
【0057】
本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面にコロナ放電処理などを施し、該表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、易接着層の基材フィルムとの接着性を向上させることができるので好ましく用いることができる。
【0058】
また、本発明を実施するにあたり、塗液の塗布方法は、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0059】
易接着層の厚みは特に限定されないが、通常は好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05μm〜0.5μmである。特に、易接着層の厚みが薄すぎると印刷特性が悪くなる場合がある。
【0060】
ポリエステルフィルムの易接着層が設けられた面の反対面には、ポリエステルフィルムとサーマルヘッドとの融着(スティック)を防止するためスティック防止層が設けられる。スティック防止層としては、シリコーン化合物、フッ素化合物、およびこれらの変性物、共重合物、有機や無機の滑剤などを使用することができるが、特に以下の組成物としたとき、より顕著な効果を発現する。すなわち、ワックス系組成物とオイル状組成物との混合物を主成分とする塗液によって形成させた塗膜であって、特に、塗膜厚みがスティック防止層を設けた面の中心線平均粗さより薄く、かつ0.001μm以上となるように設けた場合、顕著なスティック防止効果を発現するものである。
【0061】
更に、スティック防止層の表面に上記組成物より形成された突起であって、かつポリエステルフィルムの長手方向と幅方向との比が3以上の細長い突起が20個/100μm2 以上存在させた場合、印字の際に極めて優れた走行性を有するものとなる。このような細長い突起を有するスティック防止層は、塗布して後、少なくとも一方向に延伸することによって、より顕著に発現させることができる。すなわち、結晶配向前のポリエステルフィルムの溶融型インキ層を設ける面とは反対面に塗布し、乾燥して後、延伸し、結晶配向を完了させる方法を用いることである。この方法によれば、上述した易接着層とスティック防止層は、フィルム製造工程で連続的に塗布することができ、別々に塗布する場合に比べて経済的に有利である。
【0062】
上記スティック防止層中には、本発明の効果を損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、帯電防止剤などを配合してもよいが、該スティック防止層の主成分も含め、サーマルヘッドの破壊を防止する点で、塩素やアルカリ金属を含むもの、サーマルヘッドを摩耗する可能性がある無機粒子を含有させないようにすることが望ましい。
【0063】
なお、本発明においては、印刷時にサーマルヘッドとの接触を良好にし、熱伝導率を向上させる観点から、スティック防止層の表面の中心線平均粗さを、1nm以上、60nm以下とすることが好ましく、より好ましくは3nm以上、40nm以下である。スティック防止層の表面の中心線平均粗さを上記範囲にすることで、印刷濃度や階調性、更にはザラツキの抑制といった印刷特性を向上させることができる。
【0064】
易接着層上に設けられる溶融型インキ層は、特に限定されず、バインダーとしてのワックス成分と着色剤とを含有するものであり、必要に応じて各種の添加剤を加えたものを用いることができる。
【0065】
ワックス成分としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ロウ、パームワックス、オウリキュリーワックス、みつろう、ラノリン、セラックワックス、モンタンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス、水素化ワックス、ポリエチレンやポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトンなどを用いることができる。更に、上記ワックス成分に熱可塑性樹脂を混合して、溶融型インキ層の接着性を向上させることが好ましい。用いられる熱可塑性樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどである。
【0066】
着色剤としては、各種の有機あるいは無機の顔料や染料などの記録材料として良好な特性を有するものを用いることができ、中でも、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度などにより変色や退色などが起こらないものが好ましい。例えば、カーボンブラック、三酸化四鉄などの各種酸化鉄、シアニンブルー、アルカリブルー、ローズベンガル、ブリリアントグリーンなどを好適に用いることができる。
【0067】
また、溶融型インキ層に熱伝導性を付与するためにカーボンブラックなどの炭素系物質、アルミニウム、銅などの金属あるいはその酸化物などを添加剤として用いることが好ましい。
【0068】
設けられる溶融型インキ層の厚みは、特に限定されないが、通常は0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmである。
【0069】
次に、本発明のバリアブルドット用溶融型感熱転写材の製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明の上述したバリアブルドット方式で印刷する際の印刷特性に優れたバリアブルドット用溶融型感熱転写材は、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に易接着層を介して熱溶融インキ層が積層され、反対面にはスティック防止層を設けることによって製造することができる。
【0071】
より具体的には、例えば、極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作成した。この未延伸フィルムを70〜120℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に本発明の易接着層形成塗液を塗布した。この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させた。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向あるいは縦、横の両方向に再延伸してもよい。また、ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、1〜30μmが好ましく用いられる。この場合に用いられる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
【0072】
なお、上記例において、易接着層が設けられる基材フィルムにもポリエステル樹脂、ワックス系組成物から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。この場合は、易接着層と基材フィルムとの接着性が向上する、基材フィルムの易滑性が向上するなどの効果がある。ポリエステル樹脂、ワックス系組成物を含有させる場合には、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、易接着性、易滑性の点で好ましい。もちろん、ポリエステル樹脂、ワックス系組成物は基材フィルム上に設ける易接着層形成組成物(本発明に係る易接着性PETフィルムの再生ペレットなどを含む)であってもよい。
【0073】
このようにして得られた易接着性ポリエステルフィルムの易接着層側に上述した各色からなる溶融型インキ層を設け、また、反対面にはスティック防止層を設けて、所定の幅にスリットし、本発明のバリアブルドット用溶融型感熱転写材を得る。なお、スティック防止層は易接着層を形成する塗液と同様に、製膜工程中に設けられてもよい。
【0074】
【特性の測定方法および効果の評価方法】
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
【0075】
(1)塗布層の厚み
易接着層を設けたフィルムあるいは易接着層上に熱溶融インキ層を設けたフィルム、更にはそれらにスティック防止層が設けられたフィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4 染色、OsO4 染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、透過型電子顕微鏡で観察、写真撮影を行った。その断面写真から易接着層、熱溶融インキ層、およびスティック防止層の厚みを測定した。5点測定し、その平均値を持って、各層の厚みとした。
【0076】
観察方法
・装置:透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調製:凍結超薄切片法
【0077】
(2)印刷特性
本発明によって得られたバリアブルドット用溶融型感熱転写材の印刷特性を、セイコー電子工業(株)製カラープリンター“Professional Color Point 2”を用いて、セイコー電子工業(株)製“Color Point 2”用白PETフィルムCH−885に高品位モード(バリアブルドット方式)で印刷し、印刷特性として、印刷濃度、階調性、印刷画像のザラツキを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0078】
「印刷濃度」および「階調性」
◎:極めて良好
○:良好
△:やや不良
×:著しく不良
「印刷画像のザラツキ」
◎:ザラツキがなく、極めて良好
○:良好
△:やや不良
×:著しく不良
【0079】
なお、このときの印刷は、“階調テストパターンプリント”モードで行った。このモードは、例えば、以下のような手順で設定することができる。
【0080】
▲1▼プリンターの電源を投入する。必要に応じて、上記高品位モードおよび白PETフィルム使用可能状態にする。
【0081】
▲2▼「ON LINE」キーを操作し、オンライン状態を解除する。
【0082】
▲3▼「MENU」キーを1回押した後、「+」キーを2回、続いて「−」キーを2回押し、更に「MENU」キーを9回押し、『PRINT ENGINE』を表示させる。
【0083】
▲4▼「ENTER」キーを1回押し、イニシャライズさせ、『A4/A LOW』を表示させる。
【0084】
▲5▼この後、「TEST」キーを1回押した後、「ENTER」キーを押すことで、印刷パターンを選択できる状態になるので、「+」キー、あるいは「−」キーを適当回数押して、『>PATTERN=PALMIX』を表示させた後、「ENTER」キーを2回押し、印刷させる。
【0085】
(3)表面粗さ
(株)小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用い、JIS−B0601の方法に従って、中心線平均粗さ(「Ra」と略称する)、最大高さ(「Rt」と略称する)を測定した。条件は下記の通りであり、10回の測定の平均値をもってその値とした。
【0086】
・触針先端半径:0.5μm
・触針荷重 :5mg
・測定長 :2mm
・カットオフ値:0.08mm
【0087】
(4)ポリエステル樹脂のガラス転移点(「Tg」と略称する)
セイコー電子工業(株)製“ロボット”DSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続して測定した。DSCの測定条件は次の通りである。即ち、試料10mgをアルミニウムパンに調整後、DSC装置にセツトし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパン)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素中を用いて急冷処理をする。この試料を10℃/分で昇温し、そのDSCチャートからガラス転移点(Tg)を検知する。
【0088】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0089】
実施例1
平均粒径0.6μmのカオリンを0.5重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面に下記の易接着層形成塗液を塗布した。なお、塗布厚みは結晶配向完了後において0.1μmとなるようにした。
【0090】
「易接着層形成塗液」
ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 28モル%
イソフタル酸 9モル%
トリメリット酸 10モル%
セバシン酸 3モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 15モル%
ネオペンチルグリコール 18モル%
1,4−ブタンジオール 17モル%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0091】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した易接着性PETフィルムを作成した。このとき、基材PETフィルム厚みが4.5μmであった。このフィルムの易接着層側に下記の溶融型インキを乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、反対面に下記のスティック防止層形成塗剤を乾燥後の厚みが0.2μmになるように塗布し、この後、スリットしてバリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。
【0092】
「溶融型インキ」
・パラフィンワックス(軟化点:80℃) 25重量部
・カルナバワックス 10重量部
・エチレン・酢酸ビニル共重合体 5重量部
・シリカ粒子 2重量部
・ローズベンガル 20重量部
「スティック防止層形成塗剤」
・アミノ変性シリコーン/エポキシ変性シリコーン/エタノール/イソプロピルアルコール=3/2/45/50(重量比)で混合した塗剤。
【0093】
結果を表1に示す。
【0094】
実施例2
実施例1において、易接着層の厚みを0.06μmとした以外は、実施例1と同様にして、溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0095】
比較例1
実施例1において、易接着層形成塗液を塗布しないPETフィルムを作成した以外は、実施例1と同様にして、溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0096】
実施例3
実施例1の塗液のポリエステル樹脂の代わりに、下記成分の共重合ポリエステル樹脂とした以外は、実施例1と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0097】
ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 5モル%
イソフタル酸 35モル%
5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ
フルフリル)−3−メチル−3−シク
ロヘキセン−1,2−ジカルボン酸 10モル%
・グリコール成分
ジエチレングリコール 20モル%
ネオペンチルグリコール 25モル%
1,4−ブタンジオール 5モル%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:32℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0098】
実施例4
実施例1で易接着層形成塗液として下記の塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0099】
「易接着層形成塗液」
(A):ポリエステル樹脂
・酸成分
テレフタル酸 28モル%
イソフタル酸 9モル%
トリメリット酸 10モル%
セバシン酸 3モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 15モル%
ネオペンチルグリコール 18モル%
1,4−ブタンジオール 17モル%
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0100】
(B):ワックス系組成物
パラフィンワックス水分散体
上記各成分を(A)/(B)=80/20(固形分重量比)で混合し、易接着層形成塗液とした。
【0101】
実施例5
実施例4の易接着層形成塗液を用い、混合比を(A)/(B)=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例4と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0102】
実施例6
実施例4の塗液のワックス系組成物の代わりに、カルナバワックスを用いた以外は、実施例4と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0103】
実施例7
平均粒径0.6μmのカオリンを0.15重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0104】
参考例8
平均粒径2.5μmの湿式シリカを0.3重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0105】
実施例9
実施例4において、ポリエステルフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムからポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、「PEN」と略称する)フィルムに変えた以外は実施例4と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0106】
実施例10
実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを作成した。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面の一方の面に実施例1の易接着層形成塗液を、反対面に下記のスティック防止層形成塗剤を塗布した。塗布厚みは、結晶配向完了後において、易接着層が0.1μm、スティック防止層が0.01μmとなるようにした。
【0107】
「スティック防止層形成塗剤」
・酸化ワックス/ポリエチレンワックス/合成潤滑油=60/35/5(固形分重量比)で混合した水系塗剤。
【0108】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを作成した。このとき、基材PETフィルム厚みが4.5μmであった。このフィルムの易接着層側に実施例1の溶融型インキを乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、この後、スリットしてバリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0109】
実施例11
基材フィルムとして、実施例1で溶融型インキ層、スティック防止層を設ける前の易接着性PETフィルムを粉砕し、ペレット化したものを、ポリエチレンテレフタレートに30重量%添加し、溶融押し出しした以外は、実施例1と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。
【0110】
かくして得られたバリアブルドット用溶融型感熱転写材の特性を表1に示すが、基材フィルムとなる易接着性PETフィルムは易滑性にも優れていた。
【0111】
比較例2
実施例1において、易接着層形成塗液としてポリエチレン樹脂エマルジョンを用いた以外は実施例1と同様にして溶融型インキ層、スティック防止層を設け、バリアブルドット用溶融型感熱転写材を得た。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【発明の効果】
本発明によって作成されるバリアブルドット用溶融型感熱転写材は、バリアブルドット方式で印刷する際に、印刷特性に優れたものとなる。
Claims (10)
- 二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に易接着層を介して熱溶融インキ層が積層され、反対面にはスティック防止層が設けられた溶融型感熱転写材において、該易接着層がポリエステル樹脂を主たる構成成分としてなり、かつ、該易接着層の表面の中心線平均粗さが、4nm以上、40nm以下であることを特徴とするバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- スティック防止層の表面の中心線平均粗さが、10nm以上、26nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- 易接着層中のポリエステル樹脂のガラス転移点が、−5℃以上、50℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- 易接着層中にワックス系組成物が含まれてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- ワックス系組成物が、天然ワックスであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- ワックス系組成物が、パラフィンワックス、酸化ワックス、カルナバワックス、ロジン変性ワックスの少なくとも1種から選ばれたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- 易接着層中のポリエステル樹脂が、側鎖にカルボン酸基および/またはその塩基を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- ポリエステルフィルムが、ワックス系組成物、ポリエステル樹脂の少なくとも1種を、合計で5ppm以上20重量%未満含有した組成物からなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
- 易接着層を設けるに際し、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、易接着層形成塗液を塗布後、少なくとも一方向に延伸、熱処理を施すことによって得られたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のバリアブルドット用溶融型感熱転写材。
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