JP4178593B2 - 感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二軸延伸ポリエステルフイルムをベースとする、カラープリンター用等の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムに関し、とくに、画像の画質の向上が可能な感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、とくにバリアブルドット型カラー熱転写プリンターや昇華型プリンター等において、カラー写真に匹敵するほどの高精細で鮮明な画像の得られるフルカラープリンターが実現されつつあるが、さらに、一層の画質の向上が求められている。
【0003】
このようなカラープリンターにおいて、より高画質を達成するためには、感熱転写プリンターリボンがサーマルヘッドにより均一に接触できることが重要になる。サーマルヘッドとの接触にむらがあると、印字物にざらつきが出て画質が悪化する。また、感熱転写プリンターリボンの背面コート層の一部がサーマルヘッドに付着すると画質を悪化させる原因となる。
【0004】
背面コート層のサーマルヘッドへの付着を抑えるために、背面コート層を薄くすることが考えられるが、単に薄くするだけでは、リボンが熱変形した際の印字感度が低下し、それによって画質が低下する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、フイルムやリボンの熱寸法特性を向上し、その熱変形を問題のないレベルにまで小さく抑えつつ、背面コート層の極薄化を可能とし、それによって印字画質の向上をはかることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムは、厚み1.5〜13μmの二軸延伸ポリエステルフイルムの一方の面にワックス系組成物を含有する背面コート層を設け、他方の面に熱溶融性インキ層を設けてなる感熱転写フイルムであって、該フイルムの縦方向の温度寸法変化曲線の勾配が負から正に変化する点が存在し、該点(Tinf)における温度が220℃以上であり、かつ該点におけるフイルムの原長に対する寸法変化率が−5〜+1%であり、かつ、前記熱溶融性インキ層側の表面の三次元中心面平均粗さSRaが15〜35nmの範囲にあり、前記背面コート層が0.001〜0.01g/m2 の割合で設けられていることを特徴とするものからなる。
【0007】
すなわち、本発明においては、前記課題を解決するために、リボン用ベースフイルムである二軸延伸ポリエステルフイルムの厚みを最適な範囲として、サーマルヘッドの熱による変形を抑えつつ、フイルムのとくに縦方向の熱寸法変化率を特定の範囲に制御し、リボンを熱変形しにくいようにしたうえで、背面コート層を極薄層に構成し、印字画質を向上できるようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに、詳細に説明する。
本発明に係る感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムは、二軸延伸ポリエステルフイルムからなる。未延伸フイルムや一軸延伸フイルムでは、縦および横方向の両方向において、所望の高い機械特性が得られない。
【0009】
本発明においてポリエステルとは、二塩基酸とグリコールを構成成分とするポリエステルであり、芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などを用いることができる。また、脂肪族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノン、テトラプロモビスフェノールAなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
【0010】
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で3官能以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸などを共重合してもよく、また単官能化合物、例えばo−ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸等を添加反応させてもよい。またポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルやポリカプロラクトンに代表される脂肪族ポリエステルなどを共重合してもよい。
【0011】
ポリエステルは2種以上のものをブレンドしてもよく、例えば50%以上がポリエステルであれば、ポリエステル以外のものをブレンドしてもよい。
【0012】
本発明に係る感熱転写カラープリンターリボン用ポリエステルフイルムを構成する二軸延伸ポリエステルフイルムの厚みは、1.5〜13μmの範囲にあり、好ましくは、2〜6μmの範囲である。厚みが1.5μmよりも薄いと、熱によってリボンが変形し、画質が悪化する。また、13μmよりも厚いと、サーマルヘッドのエネルギーを高くしなければならず、サーマルヘッドの寿命が短くなり、印画時間も長くなる。
【0013】
また、本発明に係る二軸延伸ポリエステルフイルムには、特定の縦および横方向の温度寸法変化特性、なかでも縦方向の温度寸法変化特性が要求される。すなわち、二軸延伸ポリエステルフイルムの縦方向の温度寸法変化曲線の勾配が負から正に変化する点が存在し、該点(Tinf)における温度が220℃以上(望ましくは、225℃以上)であり、かつ該点のおけるフイルムの原長に対する寸法変化率が−5〜+1%(望ましくは、−4.5〜−1%)であることが必要である。
【0014】
Tinfが220℃未満あるいは、寸法変化率が上記範囲よりも小さい、すなわち収縮率が大きくなると、印字時にリボンが熱変形をおこし、印刷物に目玉状の欠点が生じたり、しわが転写したり、更にはサーマルヘッドとリボンの距離が変化して印刷の階調表現が不十分になる。
【0015】
逆に寸法変化率が大きい、すなわちフイルムが伸びやすくなると、リボンが印字時に伸びてしまい、同様にリボンにしわが発生し印刷物にしわが転写し、また印字後のリボンの巻き取り不良となるため張力が変動し、新たなしわの原因ともなる。
【0016】
横方向についても、上記二軸延伸ポリエステルフイルムの横方向の温度寸法変化率が、温度寸法変化曲線の勾配が負から正に変化する点(Tinf)において−3〜+3%(望ましくは、−1〜+3%)であることが好ましい。この範囲に制御することにより、上記縦方向におけるのと実質的に同様の作用、効果が得られる。
【0017】
本発明においては、上記のようにとくに二軸延伸ポリエステルフイルムの縦方向の温度寸法変化特性を規定したうえで、背面コート層が0.001〜0.01g/m2 の割合の極薄層として設けられる。望ましくは、0.004〜0.008g/m2 の割合である。背面コート層が0.001g/m2 よりも薄いと、サーマルヘッドとスティックを起こすおそれがある。背面コート層が0.01g/m2 よりも厚いと、サーマルヘッドに背面コート層成分が付着していき、印字を阻害するおそれがある。
【0018】
このように本発明においては、二軸延伸ポリエステルフイルムの厚みを特定の最適な範囲とし、かつ、とくに二軸延伸ポリエステルフイルムの縦方向の温度寸法変化特性を最適な特性に規定したうえで、背面コート層を特定の極薄層とすることにより、サーマルヘッドからの熱による変化が小さく、サーマルヘッドに背面コート層成分が付着しない、高画質の印字が可能な感熱転写プリンターリボンが得られる。
【0019】
本発明に係る感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムにおいては、さらに次のような特性を備えていることが好ましい。
【0020】
すなわち、前記二軸延伸ポリエステルフイルムの熱溶融性インキ層側の表面の三次元中心面平均粗さSRaが15〜35nmの範囲であることが必要であり、望ましくは20〜30nmの範囲にあることが好ましい。表面粗さSRaが15nmよりも小さいと、印字時にインクとの剥離不良が起こり、印字がかすれたりリボンが切れたり、あるいは剥離音のため印字時の騒音の問題がでるおそれがある。表面粗さSRaが35nmよりも大きいと、印字画面がざらつき、鮮明度が落ちる。
【0021】
このように、背面コート層側の表面に対し熱溶融性インキ層側の表面の粗さを特定の範囲に制御するためには、あるいは、各面を最適化するためには、単層のフイルムでも可能ではあるが、少なくとも2層構造を有する二軸延伸ポリエステルフイルムとすることが好ましく、これによって、各面をより容易に最適化できる。
【0022】
背面コート層はサーマルヘッドに対しスティック防止層として機能できる。この背面コート層には、薄膜でも良好なスティック防止効果を有することから、アルコキシシラン加水分解物やシリコーン重合体、シリコーングラフト重合体、メラミン系の樹脂、さらには、ケイ素官能型シリルイソシアネート、溶剤可溶型ポリイミドポリマーや溶剤可溶型ポリパラバン酸ポリマー等を用いることができる。これらは、コーティング膜や乾燥皮膜として設けられ、また、これらは2種以上併用してもよい。
【0023】
また、背面コート層の表面特性を所望の特性に制御するために、背面コート層として粒子を含む層がコーティングされてもよい。また、背面コート層は、ワックス系組成物を含有することが必要であり、ワックス系組成物を主成分とする層に構成することも好ましい。
【0024】
ワックス系組成物とは市販の各種のワックス、例えば石油系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、動物系ワックス、低分子量ポリオレフィン類などを使用することができ、特に制限されるものではないが、本発明においては石油系ワックス、植物系ワックスの使用が耐スティック性の点で好ましい。
【0025】
石油系ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックスの使用が表面突起形成性の点で特に好ましい。また植物系ワックスとしてはキャンデリラワックス、カルナウパワックス、木ロウ、オリキューリーワックス、さとうきびロウ、ロジン変性ワックスなどを用いることができるが、本発明においては特に下記化合物から成る組成物が好ましい。すなわち{ロジン又は不均化ロジン、又は水添ロジン・α、β置換エチレン(α置換基:カルボキシル、β置換基:水素またはメチルまたはカルボキシル)付加物}・アルキル又はアルケニル(各炭素数1〜8)ポリ(繰り返し単位:1〜6)アルコールのエステル付加物を用いるのが易滑性や離型性の点で好ましく、更に上記酸化ワックスとの混合系で用いるとより好ましい。すなわち、上記組成物を塗布後、1方向に延伸することにより微細な細長い突起を形成させることが好ましく、突起成形性の点、および防爆性、環境汚染防止の点から水に溶解、乳化、懸濁させたワックスが特に好ましい。
【0026】
石油系ワックス/植物系ワックスの混合重量比率は10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、更に好ましくは30/70〜70/30とするのが好ましい。植物系ワックスを10重量%以上とするのは高温時における易滑性、および離型性の付与、および水に乳化あるいは懸濁させる場合の均一分散性が良好で均一な塗布膜を得るのに好適であることによる。また石油系ワックスを10重量%以上とするのは塗布膜の突起形成による易滑性が良好で、高速印字時の走行性が良いことによる。
【0027】
また本発明では上記ワックス系組成物に更にオイル状物質を加えた混合物とした時には高パルス幅領域での印字走行性が特に優れたものとすることができる。ここでオイル状物質とは常温で液体あるいはペースト状のオイルであり、植物油、樹脂、鉱物油、合成潤滑油などを用いることができる。植物油としてはアマニ油、かや油、サフラー油、大豆油、シナギリ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヌカ油、綿実油、オリーブ油、サザンカ油、つばき油、ヒマシ油、落花生油、バーム油、椰子油などを用いることができる。油脂としては牛脂、豚油、羊油、カカオ油などであり、鉱物油としてはマシン油、絶縁油、タービン油、モーター油、ギヤ油、切削油、流動パラフィンなどを用いることができる。合成潤滑油としては化学大辞典(共立出版社)に記載の要件を満たすものを任意に使用することができ、例えばオレフィン重合油、ジエステル油、ポリアルキレングリコール油、シリコーン油などを用いることができる。これらの中でも高パルス幅領域での走行性の良好な鉱物油、合成潤滑油が好適である。またこれらの混合系であってもよい。
【0028】
上記オイル状物質は前記ワックス系組成物100重量部に対し1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部添加するのが好ましい。オイル状物質が1重量部未満の場合には昇華型プリンターのような高パルス幅領域での走行性が低下する傾向にあり、100重量部を越える場合には逆に低パルス幅領域での走行性が低下する傾向にある。上記範囲とした場合には広範囲のパルス幅のプリンターでスティックが起こらず走行性が良好となり特に好ましい。
【0029】
上記組成物中には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加剤を併用することができる。例えば帯電防止剤、耐熱剤、耐酸化防止剤、有機、無機の粒子、顔料などを用いることができる。
【0030】
また塗料中には水への分散性を向上したり、塗布性を向上させる目的で各種添加剤、例えば分散助剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを添加してもよい。
【0031】
さらに、本発明に係る感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムにおいては、階調表現を滑らかに出すために、高画質のカラー用のインクとポリエステルベースフイルムとの良好な接着性を付与することが好ましく、そのためには、二軸延伸ポリエステルフイルムの少なくとも片面に易接着コーティングを施すことが望ましい。例えば、ウレタン系、ポリエステル系およびアクリル系の水溶性または水分散性樹脂群の中から選ばれた塗布層を設けることが好ましく、とくにこれらのうち少なくとも2種類が塗布されていることが好ましい。
【0032】
上記のうち、塗布層として用いるウレタン系樹脂は、それを構成する成分として、以下のようなポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤などを用いることができる。ポリオールとしては、たとえば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどを用いることができる。鎖長延長剤あるいは架橋剤としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などを用いることができる。
【0033】
また、塗布層として用いるポリエステル樹脂としては、それを構成する成分として以下のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を用いることができる。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソディウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上選択して、常法の重縮合反応によりポリエステル系樹脂を合成する。また、上記の他、いわゆるアクリルグラフトポリエステルや、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタンなどのポリエステル成分を有する複合高分子も用いることができる。
【0034】
さらに、塗布層として用いるアクリル系樹脂としては、アルキルアクリレートあるいはアルキルメタクリレートを主要な成分とするものが好ましく、当該成分が30〜90モル%であり、共重合可能でかつ官能基を有するビニル単量体成分70〜10モル%を含有する水溶性あるいは水分散性樹脂である。アルキルアクリレートあるいはアルキルメタクリレートと共重合可能でかつ官能基を有するビニル単量体は、官能基としてカルボキシル基またはその塩、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基あるいはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などを有するビニル単量体である。これらの中でも特に好ましいものはカルボキシル基またはその塩、酸無水物基、エポキシ基などである。これらの基は樹脂中に二種類以上含有されていてもよい。アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル基としては、たとえば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などを用いることができる。
【0035】
次に本発明に係るポリエステルフイルムの製造方法について説明するが、かかる例に限定されるものではない。
乾燥したポリマーチップを押出機に供給し、該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをスリット状の吐出口を有するTダイから押し出し、冷却ロールに密着固化してキャストフイルムを得る。溶融シートと冷却ロールの密着性を向上させるには、通常、静電印加密着法および/または液面塗布密着法を採用することが好ましい。該キャストフイルムは更に二軸に延伸される。好ましくは、ポリマーのガラス転移温度以上、例えば40〜130℃に加熱したロール群で長手方向(縦方向)に2.3〜7倍延伸し、次いで幅方向(横方向)に好ましくは45〜130℃で3〜7倍に延伸する。なお、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を用いることができるが、その場合も最終的な延伸倍率が上記範囲に入ることが好ましい。また、前記キャストフイルムを、面積倍率が6〜30倍になるように同時二軸延伸することも好ましい。
【0036】
かくして得られたフイルムを熱処理するが、必要に応じ熱処理を行う前または後に再度縦及び/または横方向に延伸してもよい。熱処理温度は150〜250℃、好ましくは200〜235℃であり、熱処理時間は通常1秒〜5分である。この熱処理条件で熱収縮特性を調整することができる。また、熱処理後のフイルムの冷却速度も熱収縮特性に影響する。例えば、熱処理後、フイルムを急冷あるいは徐冷、あるいは中間冷却ゾーンを設けることで加熱収縮応力を調整することができる。また、特に特定の熱収縮特性を付与するために、熱処理時あるいはその後の徐冷ゾーンにおいて縦方向及び/または横方向に弛緩してもよい。
【0037】
フイルムには必要に応じコーティングを施すこともできる。本発明の場合、フイルムに塗布層を設けることにより、特にインク層との接着性を向上できる。塗液には防爆性や環境汚染の点で水溶解、乳化または懸濁したものが用いられる。塗布層は結晶配向完了後の二軸延伸フイルムに塗布する方法あるいは結晶配向完了前のフイルムに塗布した後延伸する方法があるが、本発明の効果をより顕著に発現させるためには後者の方法が特に好ましい。塗布する方法は特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、バーコーター等を用いて塗布するのが好ましい。また、塗布する前に必要に応じて塗布面に空気中その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理を施しておいてもよい。
【0038】
また、本発明における塗布層には、前述の如く必要に応じて消泡剤、塗布性架橋剤、増粘剤、有機系潤滑剤、無機系粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発砲剤、染料、顔料等を含有せしめてもよい。
【0039】
このように製造された二軸延伸ポリエステルフイルムの一方の面に背面コート層を設け、他方の面に熱溶融性インキ層を設けることにより、感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムが形成される。
【0040】
〔物性の測定法〕
以下に、本発明の規定、評価に用いた物性の測定法について説明する。
(1)温度寸法曲線
PERKIN ELMER社製のTMA(サーマルメカニカルアナライザー)を用いて測定した。ただし、昇温速度は10℃/分、測定サンプル長さは14mm、幅は5mm、張力は50mNとした。
【0041】
(2)三次元表面中心面平均粗さSRa
(株)小坂研究所製、微細形状測定器(型式:ET−30HK)を使用し、触針径円錐型2μR、カットオフは0.25mm、測定長(X方向)0.5μm、Y方向送りピッチ5μm、記録本数80本とした。
【0042】
(3)背面コート層厚み
X線光電子分光法で求めた。装置はESCALABiXL(英国VG)、励起X線としては、monochromatic Al Kα1,2線(1486eV)、X線径1mm、光電子脱出角度90度とした。
また、参照資料としてフイルム厚みが4.5μmのコーティングを施していないフイルムおよびコーティング成分を用いた。尚、コート層厚みdは、2層モデルを仮定した[1]式の関係から求めた。
I1/I2=n1 ・(1-exp(-d/(r1・sin θ))) /[n2・ exp(-d/(r2・sin θ))][1]
ここで、
I1:C1sピーク中でのコーティング成分の割合
I2:C1sピーク中でのポリエステル成分の割合
n1:コーティング層中での炭素原子数密度
n2:ポリエステルフイルム中での炭素原子数密度
r1:コーティング層中でのC1s光電子の平均自由行程[nm]
r2:ポリエステルフイルム中でのC1s光電子の平均自由行程[nm]
θ:光電子脱出角度
である。
θ=90度、n1=n2、r1=r2=3とした。
【0043】
転写材の特性は、フイルムを10cm幅のテープスリットとして感熱転写リボンとし、サーマルプリンタにかけて実用評価した。
【0044】
(4)印字じわ
感熱転写リボンと加熱ヘッドとの融着の有無を見て、次の基準で判定した。
×・・・リボンの搬送不良が見られ、リボン20cm当たり10本以上のしわが発生し実用上問題あり
△・・・リボン20cm当たり3〜10本のしわが発生するが、実用可
○・・・リボン20cm当たり1〜3本のしわが発生し、良好
◎・・・全く問題なく良好
【0045】
(5)画質・階調性
サーマルプリンターに印字・印刷された画像の濃淡およびにじみをみて、次の基準で判定した。
×・・・画像に濃淡の斑があり、にじみも強く実用不可
△・・・わずかに濃淡の差があり、にじみもあるが、実用可
○・・・わずかににじみがみられるが、濃淡はなく良好
◎・・・濃淡もにじみもなく非常に良好
【0046】
【実施例】
実施例1
平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子0.3重量%および平均粒径1.5μmの二酸化ケイ素粒子0.04重量%を含有した固有粘度(オルソクロロフェノール中、25℃で測定)0.65のポリエチレンテレフタレートを押出機を用いて溶融し、口金からシート状に溶融押出し、回転冷却ドラムに密着させて冷却固化し、非晶質シートを得た。
【0047】
この非晶質シートを加熱したロールを用いて縦方向に120℃で2倍、次いで115℃で2.1倍延伸して一軸延伸フイルムとした。このフイルムの片面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で下記組成の水分散塗料を二軸延伸後の塗布厚みが0.007g/m2 となるように塗布した。
【0048】
[塗料組成]
(a)植物系ワックス 100重量部
{水添ロジン・αβ置換エチレン(α置換基:カルボキシル、β置換基:メチル)不可物}・アルキル(炭素数:6)ポリ(繰り返し単位:5)アルコールのエステル化合物
上記(a)を水分散体とするため非イオン性界面活性剤、リン酸エステル(ブトキシエチル化物)、オレイン酸アンモニウム、2−アミノ−2−メチルプロパノールを各1重量部添加し、水中で強攪拌し、更に超音波分散機で全固形分比率が0.4重量%の水分散液を作成した。
【0049】
上記水分散塗料が塗布された一軸延伸フイルムをステンター内で110℃で水分を乾燥させた後、横方向に115℃で4倍延伸し、続いて232℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩して、厚さ4.5μmの二軸延伸フイルムを得た。
【0050】
実施例2
実施例1の塗料組成中に植物系ワックスと同量の100重量部の酸化ワックス、および平均粒径0.2μmの球状シリカ粒子を1重量部加えて全固形分比率を0.4重量%とした塗料を作成した。この塗料を用いて実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸フイルムを得た。
【0051】
比較例1
実施例1と同様の塗料で全固形分比率が1.5重量%の水分散液とし、実施例1と同様にして二軸延伸フイルムを得た。塗布厚みは0.029g/m2 であった。
【0052】
比較例2
平均粒径1.4μmの二酸化ケイ素粒子を0.3重量%を含有した固有粘度(オルソクロロフェノール中、25℃で測定)0.65のポリエチレンテレフタレートを押出機を用いて溶融し、口金からシート状に溶融押出し、回転冷却ドラムに密着させて冷却固化し、非晶質シートを得た。
【0053】
この非晶質シートを加熱したロールを用いて縦方向に120℃で2倍、次いで115℃で2.1倍延伸して一軸延伸フイルムとした。このフイルムの片面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で実施例1と同様の水分散塗料を二軸延伸後の塗布厚みが0.007g/m2 となるように塗布した。塗布された一軸延伸フイルムをステンター内で110℃で水分を乾燥させた後、横方向に115℃で4倍延伸し、続いて232℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩して、厚さ4.5μmの二軸延伸フイルムを得た。
【0054】
比較例3
平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を0.3重量%および平均粒径1.5μmの二酸化ケイ素粒子を0.04重量%を含有した固有粘度(オルソクロロフェノール中、25℃で測定)0.65のポリエチレンテレフタレートを押出機を用いて溶融し、口金からシート状に溶融押出し、回転冷却ドラムに密着させて冷却固化し、非晶質シートを得た。
【0055】
この非晶質シートを加熱したロールを用いて縦方向に120℃で2倍、次いで115℃で2.1倍延伸して一軸延伸フイルムとした。このフイルムの片面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で実施例1と同様の水分散塗料を二軸延伸後の塗布厚みが0.007g/m2 となるように塗布した。塗布された一軸延伸フイルムをステンター内で110℃で水分を乾燥させた後、横方向に115℃で4.3倍延伸し、続いて220℃で熱固定し、その際幅方向に3.5%弛緩して、厚さ4.5μmの二軸延伸フイルムを得た。
【0056】
実施例3
ポリマは実施例1と同じものを用い、非晶質シートをコロナ放電処理したのち、実施例1と同様の塗料を用いて塗布を行い、次いで同時二軸延伸装置を用い、110℃で水分を乾燥させた後、120℃で縦方向に4.5倍、横方向に4.5倍同時二軸延伸を行い、更に230℃で熱固定し、その際幅方向に3.5%、縦方向に3%弛緩して、厚さ4.5μmの二軸延伸フイルムを得た。塗布厚みは0.003g/m2 であった。
【0057】
得られたフイルムの表面(易接着コートをしていない面)に、アクリルシリコーンコートとシリコーンオイルが80/20に混合されたコーティング液をコーティングし、さらにその反対側に、
カルナウバワックス :30重量%
エステルワックス :35重量%
カーボンブラック :12重量%
ポリテトラヒドロフラン:10重量%
シリコーンオイル : 3重量%
からなる転写インキ層を、加熱ロールによるホットメルトコーティング法により厚み5μmとなるように塗布し、転写材を得た。
【0058】
各実施例、比較例におけるフイルムの特性および転写材の特性を表1、表2に示す。各実施例に比べ、比較例1では、サーマルヘッドに背面コート層成分が付着して、画質が悪化した。比較例2では、印刷画像全体にざらつきが見られた。比較例3では、リボンに印字じわが発生し、印刷面にもしわの転写が見られた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルムによれば、転写材のベースとなる二軸延伸ポリエステルフイルムの厚みを特定の範囲に規定するとともに、特に縦方向の温度寸法変化特性を特定の範囲に規定するとともに、背面コート層を特定の極薄層としたので、優れた画質を確保することができる。
Claims (5)
- 厚み1.5〜13μmの二軸延伸ポリエステルフイルムの一方の面にワックス系組成物を含有する背面コート層を設け、他方の面に熱溶融性インキ層を設けてなる感熱転写フイルムであって、該フイルムの縦方向の温度寸法変化曲線の勾配が負から正に変化する点が存在し、該点(Tinf)における温度が220℃以上であり、かつ該点におけるフイルムの原長に対する寸法変化率が−5〜+1%であり、かつ、前記熱溶融性インキ層側の表面の三次元中心面平均粗さSRaが15〜35nmの範囲にあり、前記背面コート層が0.001〜0.01g/m2 の割合で設けられていることを特徴とする感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム。
- 前記二軸延伸ポリエステルフイルムの横方向の温度寸法変化率が、温度寸法変化曲線の勾配が負から正に変化する点(Tinf)において−3〜+3%である、請求項1記載の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム。
- 前記二軸延伸ポリエステルフイルムが少なくとも2層構造を有する、請求項1または2記載の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム。
- 背面コート層が粒子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム。
- 前記二軸延伸ポリエステルフイルムが同時二軸延伸によって製造されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の感熱転写プリンターリボン用ポリエステルフイルム。
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