JP3724050B2 - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは、各種塗料やインキとの易接着性、特にワックス系バインダーとの易接着性に優れた積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、電気的性質などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、OA、FA用途の感熱転写材の記録シートや受像シートなどの基材フィルムとしても著しい伸びを示している。
【0003】
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため、各種塗料、インキ、特に、感熱転写用途で使用されるワックス系バインダーとの接着性に乏しいという欠点を有している。このため従来からポリエステルフィルム表面に種々の方法で易接着性を与えるための検討がなされてきた。
【0004】
易接着化の方法としては、例えば、基材ポリエステルフィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などを行う表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法、フィルム表面にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの各種樹脂をプライマ層として設ける方法(特開昭55−15825号公報、特開昭58−78761号公報、特開昭60−248232号公報、特開昭61−255941号公報など)などが知られている。中でも、特に、塗布によって上記プライマ層を設け易接着性を付与する方法として、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに上記樹脂成分を含有する塗剤を塗布し、乾燥後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が工程簡略化や製造コストの点で有力視され、当業界で行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。
【0006】
接着性を付与するため水溶性あるいは水分散性のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などを基材ポリエステルフィルム上に設けた場合には、基材ポリエステルフィルムとの接着性は良好であるが、ワックス系バインダーとの十分な接着性が得られないという欠点があった。
【0007】
また、ポリオレフィン樹脂を基材ポリエステルフィルム上に設けた場合には、ワックス系バインダーとは比較的良好な接着性を示す反面、基材ポリエステルフィルムとの接着性に劣り、ポリオレフィン樹脂にポリエステル樹脂などを混合し、双方の効果を引き出そうとしたものも、ワックス系バインダーとの接着性の点で満足するものは得られていない。
【0008】
本発明はこれらの欠点を解消せしめ、基材ポリエステルフィルムと積層膜との接着性のみならず、各種インキ、中でもワックス系バインダーとの接着性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明の感熱転写用積層ポリエステルフィルム(以下、積層ポリエステルフィルムと言うこともある。)は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ワックス系組成物と、ネオペンチルグリコールが18〜25モル%共重合されたポリエステル樹脂を主たる構成成分とする積層膜が設けられてなり、かつ、積層膜中にワックス系組成物が40〜70重量%含まれ、該積層膜の水に対する接触角が70〜110度であることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等から選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが特に好ましい。また、感熱記録用シート、各種印刷などの受像シートなど、基材に熱が作用する用途においては、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0011】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0012】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0013】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo-クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0014】
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0015】
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、熱伝導性の点から、通常0.5〜500μm、好ましくは1〜300μmである。また、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせ、更に厚いフィルムとすることもできる。
【0016】
また、受像シート用途などにおいては、基材フィルムとして白色ポリエステルフィルムが好適に用いられるが、この白色ポリエステルフィルムは、白色に着色されたポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではなく、好ましくは白色度が85〜150%、より好ましくは90〜130%であり、光学濃度が好ましくは0.5〜5、より好ましくは1.2〜3の場合である。例えば、白色度が小さい基材フィルムを使用した場合、反対面の模様や着色が透過し表面の印刷層の美観が損なわれ易く、一方、光学濃度が小さい場合、十分な光線反射が得られず、肉眼で見た場合白さが減少する、反対面の影響を受けるなど好ましくない。
【0017】
このような光学濃度、白色度を得る方法は、特に限定されないが、通常は無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂の添加により得ることができる。添加する量は特に限定されないが、無機粒子の場合、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜25重量%である。一方、非相溶性の樹脂を添加する場合は、好ましくは5〜35体積%、より好ましくは8〜25体積%である。
【0018】
該無機粒子は特に限定されないが、好ましくは平均粒径0.1〜4μm、より好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子などをその代表的なものとして用いることができる。具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、クレー等あるいはこれらの混合物を使用でき、これらの無機粒子は他の無機化合物、例えばリン酸カルシウム、酸化チタン、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどと併用されてもよい。また、上述した無機粒子の中でもモース硬度が5以下、好ましくは4以下のものを使用する場合、白色度が更に増すためより好ましい。
【0019】
上述のポリエステルと非相溶の樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートと混合する場合についていえば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシドなどを用いることができ、当然、上述した無機粒子と併用してもよい。例えば特に、無機粒子やポリエステルと非相溶の樹脂を混合して2軸延伸し、内部に空洞を有する、比重が0.5〜1.3の白色ポリエステルフィルムは印刷特性が良好になるので好ましい。
【0020】
本発明に係る積層膜の構成成分であるワックス系組成物について説明する。ワックス系組成物については、府瀬川健蔵監修、「ワックスの性質と応用」、((株)幸書房昭和58年発行)を参考にすることができる。
【0021】
本発明において、用いられるワックス系組成物としては、常温で固体または半固体の有機物からなる組成物であれば特に限定されないが、例えば、天然ワックス、合成ワックス、あるいは配合ワックスなどである。
【0022】
天然ワックスは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、あるいは石油ワックスなどに分類され、合成ワックスは、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトンなどに分類される。また、配合ワックスは、上記ワックスに合成樹脂類を配合したものである。
【0023】
植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックスなどを用いることができる。
【0024】
動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス、coccus cacti wax、水鳥ワックスなどを用いることができる。
【0025】
鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどを用いることができる。
【0026】
石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどを用いることができる。
【0027】
本発明においては、上記ワックス系組成物であれば特に限定されずに用いることができるが、接着性の点で石油ワックスが好ましく、特に好ましくはパラフィンワックスである。
【0028】
用いられるパラフィンワックスの分子量は、インキ接着性の点で、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、最も好ましくは1000以上である。すなわち、本発明者らの知見によれば、パラフィンワックスの分子量は1000以上とすること、また、その上限は100000程度までとするのが最も好ましい。
【0029】
本発明の積層ポリエステルフィルムを製造するに際しては、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに積層膜形成塗液を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法によることが、高温での熱処理が可能であることや、より均一で薄膜の積層膜が得ることができるので特に好ましい。上記方法によって積層膜を形成する場合には、環境汚染や防爆性の点で、ワックス系組成物は水に溶解、乳化、あるいは懸濁させた水系のワックス系組成物とすることが好ましい。
【0030】
ワックス系組成物を水に溶解あるいは乳化、懸濁させ水系化する方法としては、可溶化(転相)を用いる方法、機械力を用いる方法、酸化による乳化方法などを用いることができる。
【0031】
本発明に用いられるパラフィンワックスの水系塗液は、以下の方法によって製造することができる。
【0032】
例えば、可溶化を用いる方法としては、パラフィンワックス、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどの界面活性剤、水を用意し、これらを全量容器にいれ、加熱撹拌し、可溶化を経て、パラフィンワックスエマルジョンを作ることができる。
【0033】
機械力を用いる方法としては、パラフィンワックス、ステアリン酸、トリエタノールアミンなどの分散剤、水を用意し、これらを全量容器にいれ、加熱、ホモミキサーで撹拌する。十分に均一になった後、ホモジナイザーでパラフィンワックス乳化液を作ることができる。
【0034】
また、パラフィンワックスを酸化し、カルボキシル基や水酸基を付加し、これに界面活性剤を使用しパラフィンワックス乳化液とすることができる。この場合、パラフィンワックスに官能基としてカルボキシル基や水酸基が導入されるため、積層膜の強度や接着性が向上する。更に、架橋剤を併用したときには、該官能基は架橋性官能基として働き、その効果は更に向上するので好ましい。
【0035】
本発明に係る積層膜の構成成分であるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものである。このようなポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得ることができるものである。
【0036】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、積層膜の強度や耐熱性の点で、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上のものを用いるのがよい。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0037】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。この中でもネオペンチルグリコールを用いることが重要である。
【0038】
また、ポリエステル樹脂を水系樹脂とした塗液として用いる場合、ポリエステル樹脂の接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂の水溶性化を容易にするため、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましいが、疎水性のパラフィンワックスとの相溶性の点でカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが望ましい。
【0039】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、ポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。
【0042】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などであり、ネオペンチルグリコールを含むことが重要である。
【0043】
本発明に係る積層膜に用いられるポリエステル樹脂は、以下の製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法等により製造することができる。
【0044】
この際、反応触媒として、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物等が用いられる。また、カルボン酸を末端及び/又は側鎖に多く有するポリエステル樹脂を得る方法としては、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合した樹脂により製造することができるが、むろんこれら以外の方法であってもよい。
【0045】
また、本発明に係る積層膜のポリエステル樹脂の固有粘度は特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。ポリエステル樹脂のガラス転移点は、積層膜の基材フィルムとの接着性や被覆物との接着性の点で−5〜50℃であることが好ましく、より好ましくは0〜45℃、最も好ましくは5〜35℃である。
【0046】
ワックス系組成物とポリエステル樹脂は任意の比率で混合して用いることができるが、本発明の効果をより顕著に発現させるには、以下の比率で混合する。ワックス系組成物/ポリエステル樹脂が、固形分重量比で、40/60〜70/30である。
【0047】
本発明において、積層膜の主たる構成成分とは、該成分が積層膜中において60重量%以上であるものをいうが、もっとも本発明においては、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めて該主たる構成成分が存在していることが望ましいものである。
【0048】
また、積層膜中には本発明の効果が損なわれない範囲内で、他の樹脂、例えば本発明以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されてもよい。
【0049】
更に、積層膜中には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、架橋剤などが配合されてもよい。
【0050】
特に、架橋剤の添加は、積層膜の強靱化、積層膜と基材フィルムとの接着性向上などの点で好ましい。用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、メラミン系、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などを用いることができる。
【0051】
また、本発明を実施するにあたり、塗液中に無機粒子を添加配合し二軸延伸したものは、易滑性が向上するので更に好ましい。
【0052】
添加する無機粒子としては、代表的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.01〜10μmであるものが好ましく、より好ましくは0.05〜5μm、最も好ましくは0.08〜2μmであり、塗剤中の固形分に対する配合比は特に限定されないが、重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0053】
本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面にコロナ放電処理などを施し、該表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、積層膜の基材フィルムとの接着性を向上させることができるので好ましく用いることができる。
【0054】
また、本発明を実施するにあたり、塗液の塗布方法は、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0055】
積層膜の厚みは特に限定されないが、通常は好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05μm〜0.5μmである。特に、積層膜の厚みが薄すぎると接着性不良となる場合がある。
【0056】
なお、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいては、上記したワックス系組成物とポリエステル樹脂を主たる構成成分とすることによって、積層膜表面の水との接触角を、70度以上110度以下とする。
【0057】
次に、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の上述したワックス系バインダーとの接着性に優れた積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ワックス系組成物とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする積層膜を設けることによって製造することができる。
【0059】
より具体的には、例えば、極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作成した。この未延伸フィルムを70〜120℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に本発明の積層膜形成塗液を塗布した。この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させた。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。また、ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、1〜300μmが好ましく用いられる。この場合に用いられる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
【0060】
なお、上記例において、積層膜が設けられる基材フィルムにもワックス系組成物、ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。この場合は、積層膜と基材フィルムとの接着性が向上する、積層ポリエステルフィルムの易滑性が向上するなどの効果がある。ワックス系組成物、ポリエステル樹脂を含有させる場合には、1種であれ複数種であれ、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、易接着性、易滑性の点で好ましい。もちろん、ワックス系組成物、ポリエステル樹脂は基材フィルム上に設ける積層膜形成組成物(本発明の積層ポリエステルフィルムの再生ペレットなどを含む)であってもよい。
【0061】
このようにして得られた積層ポリエステルフィルムは、各種塗料やインキ、特に感熱転写用途で使用されるワックス系バインダーとの接着性に優れる。従って、本発明の積層ポリエステルフィルムは、種々の用途に有用であり、特に感熱記録用シートや受像シートなどに適している。
【0062】
【特性の測定方法および効果の評価方法】
本発明における特性の測定方法及び効果の評価方法は、次の通りである。
【0063】
(1)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、積層膜を設けた二軸配向ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0064】
(2)接着性−1
ポリエステルフィルムの積層面に、下記の組成からなる熱溶融インキをホットメルト法により塗布し、厚さ3μmの熱溶融インキ層を設けた。
【0065】
「熱溶融インキ層」
・カルナバワックス 100重量部
・マイクロクリスタリンワックス 25重量部
・エチレン・酢酸ビニル共重合体 15重量部
・カーボンブラック 20重量部
該インキ層に、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、指で押し付けた後、90度方向に剥離し、そのインキの残存状態により4段階評価(◎:インキが全く取れない、○:インキが少し取れる、△:インキがかなり取れる、×:インキがほとんど取れるか完全に取れる)を行った。(◎)、(○)を接着性良好とした。
【0066】
(3)接着性−2
ダイフェラコートCAD4301(大日精化工業(株)製)100重量部にスミジュールN−75(住友バイエル(株)製)1重量部を加え、バーコータを用いて塗布し、100℃で5分間乾燥し、積層膜上に8μm厚みとした。
【0067】
塗料乾燥膜に1mm2 のクロスカットを100個入れ、日東電工(株)製ポリエステル粘着テープをその上に貼り付け、指で押し付けた後、90度方向に剥離し、塗料乾燥膜の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49)した。(◎)、(○)を接着性良好とした。
(4)印刷特性
前記(2)で、インキ塗布面の反対面にスティック防止層(アミノ変性シリコーン/エポキシ変性シリコーン=3/2(固形分重量比)からなる)を設けて作成した熱溶融インキ転写材の印刷特性を、オートニクス(株)製熱転写プリンターBC−8MK〓を用いて印刷し、その印刷状態を目視で観察し、熱溶融インキ転写材として以下の基準で評価した。
【0068】
◎:印刷状態が極めて良好
○:印刷特性良好
△:やや不良
×:著しく不良
(5)水との接触角測定
常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)を用い、同様の条件に保管しておいた蒸留水を用いて接触角を測定した。測定は10個の平均値を用いた。
【0069】
(6)ガラス転移点(Tg)
パーキンエルマ(株)製のDSC(示差走査熱量計)II型を用いて測定した。DSCの測定条件は次の通りである。即ち、試料10mgをDSC装置にセツトし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点(Tg)を検知する。
【0070】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0071】
実施例1
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を52mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引き続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが6μm、積層膜の厚みが0.16μmであった。結果を表1に示す。
【0072】
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0073】
(A)/(B)=40/60(固形分重量比)で混合し、積層膜形成塗液とした。
【0074】
実施例2
実施例1の積層膜形成塗液を用い、混合比を(A)/(B)=70/30(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0075】
実施例3
実施例2において、積層膜の厚みを0.07μmとした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
実施例1の積層膜形成塗液で、ポリエステル樹脂を添加せず用いた以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0077】
比較例2
実施例1の積層膜形成塗液で、ワックス系組成物を添加せず用いた以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0078】
実施例4
実施例2の塗剤のポリエステル樹脂の代わりに、下記成分の共重合ポリエステル樹脂とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0079】
上記酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:32℃)のアンモニウム塩型水分散体。
【0080】
参考例1
実施例2のポリエステル樹脂の代わりに、下記成分のポリエステル樹脂とし、混合比を(A)/(B)=5/95(固形分重量比)とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0081】
上記酸成分とグリコール成分からなる、側鎖にカルボン酸基を有さないポリエステル樹脂(Tg:72℃)の水分散体。
【0082】
実施例5
実施例2において、ポリエステルフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムからポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下PENと略称する)フィルムに変えた以外は、実施例2と同様にして積層PENフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0083】
実施例6
実施例2の塗液のワックス系組成物の代わりに、カルナバワックスを用いた以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0084】
比較例3
実施例2のワックス系組成物の代わりにポリプロピレン樹脂エマルジョンを用い、ポリエステル樹脂を添加せずに用いた以外は実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0085】
比較例4
実施例2のワックス系組成物の代わりにポリプロピレン樹脂エマルジョンを用い、混合比を(A)/(B)=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表2に示す。
【0086】
実施例7
基材フィルムとして、実施例2で得られた積層PETフィルムを粉砕し、ペレット化したものを、ポリエチレンテレフタレートに30重量%添加し、溶融押し出しした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。塗剤としては実施例2で用いたものと同様のものを用いた。
【0087】
かくして得られたフィルムの特性を表1に示すが、易接着性に優れると同時に、易滑性にも優れていた。
【0088】
【表1】
【0089】
【発明の効果】
本発明に係る積層ポリエステルフィルムは、ワックス系組成物とポリエステル樹脂を主体とする組成物が積層されてなることにより、各種塗料やインキとの接着性に優れた効果を発現するものである。
Claims (7)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ワックス系組成物と、ネオペンチルグリコールが18〜25モル%共重合されたポリエステル樹脂を主たる構成成分とする積層膜が設けられてなり、かつ、積層膜中にワックス系組成物が40〜70重量%含まれ、該積層膜の水に対する接触角が70〜110度であることを特徴とする感熱転写用積層ポリエステルフィルム。
- ワックス系組成物が、パラフィンワックスであることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 積層膜中のポリエステル樹脂のガラス転移点が、−5〜50℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 積層膜中のポリエステル樹脂が、側鎖にカルボン酸基および/またはその塩基を有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムが、ワックス系組成物、ポリエステル樹脂の少なくとも1種を、合計で5ppm以上20重量%未満含有した組成物からなることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、積層膜形成塗液を塗布して後、少なくとも一方向に延伸、熱処理を施すことにより、積層膜が形成されてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の積層ポリエステルフィルム。
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