JP4186569B2 - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、各種被覆物との接着性および耐ブロッキング性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、透明性、電気的特性および耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料およびグラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。
【0003】
しかしながら、一般に、二軸配向ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため、各種被覆物との接着性に乏しいという欠点を有している。このため、従来からポリエステルフィルムの表面に種々の方法で接着性を与えるための検討がなされてきた。接着性を付与する方法としては、基材フィルムであるポリエステルフィルムに、各種の易接着処理、例えばフィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理またはプラズマ処理などを行なう表面活性化法、酸、アルカリまたはアミン水溶液などの薬剤による表面エッチング法などが知られている。
【0004】
また、易接着処理以外の方法としては、フィルム表面に接着性を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂またはポリオレフィン樹脂などの各種樹脂をプライマー層として設ける方法などが知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−198240号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した技術では、紫外線硬化型インキのように硬化収縮を伴うインキやポリビニルアルコールなどの親水性樹脂との接着性を兼ね備えるという点において、いまだ不十分なものであった。また、接着性の両立が達成された場合、フィルムの耐ブロッキング性が低下し、極端な場合にはロール状態にしたフィルムからフィルムを巻き出すことができないといった問題が生じていた。
【0007】
かかる状況に鑑み、本発明は、このような欠点を改良し、従来なし得なかった各種被覆物との接着性および耐ブロッキング性を満足し得る積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂および粒子径の異なる2種類のコロイダルシリカ粒子からなる積層膜が形成され、該2種類のポリエステル樹脂が、ガラス転移点が60〜100℃であるポリエステル樹脂(A)と、ガラス転移点が0℃以上60℃未満であるポリエステル樹脂(B)からなり、該ポリエステル樹脂(B)が、酸成分としてイソフタル酸65〜95モル%、または、ジオール成分としてジエチレングリコール50〜95モル%を含有するものであり、該2種類のコロイダルシリカ粒子が、1<rX/d≦20を満足する粒子(X)と、0.2≦rY/d≦4を満足する粒子(Y)からなることを特徴とする積層ポリエステルフィルム(rX:粒子(X)の平均粒子径、rY:粒子(Y)の平均粒子径、d:積層膜の厚み)である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムの基材フィルムであるポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。ここで、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、エチレン−α,β−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これらの構成成分は、1種のみを用いても、2種以上併用してもよい。中でも、品質、経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが好ましい。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下の範囲で共重合されていてもよい。
【0010】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤および核剤などが、本発明の効果を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0011】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定した)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0012】
上記ポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであることが好ましい。二軸配向したポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理を施して、結晶配向が完了したものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ここで、延伸のタイミングは特に限定されないが、積層膜を設けたあとに二軸延伸、あるいは縦(フィルムの進行方向)延伸後に積層膜を設けさらに横延伸する方法が好ましく用いられる。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、本発明のフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、特に好ましくは30〜210μmである。また、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムの基材フィルムとして白色ポリエステルフィルムを好適に用いることもできる。この白色ポリエステルフィルムは、白色に着色されたポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではないが、白色度は65〜150%が好ましく、より好ましくは80〜120%である。
【0015】
また、光学濃度は100μm換算で、0.5〜5が好ましく、より好ましくは1〜3である。光学濃度が0.5未満の基材フィルムを使用した場合は隠蔽性が低下し、白色度が65%未満の場合はフィルムが汚れて見えることがある。
【0016】
このような白色度と光学濃度を得る方法は特に限定されないが、たとえば無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂の添加により得ることができる。ここで、添加量は特に限定されないが、無機粒子の場合、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜25重量%である。また、ポリエステルと非相溶の樹脂を添加する場合は、好ましくは3〜35重量%、より好ましくは6〜25重量%である。
【0017】
該無機粒子の粒径は特に限定されないが、好ましくは平均粒径0.1〜4μm、より好ましくは0.3〜1.5μmのものが用いられる。具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、タルク、クレーなどあるいはこれらの混合物を使用でき、これらの無機粒子は、他の無機化合物、例えば、リン酸カルシウム、酸化チタン、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどと併用してもよい。
【0018】
上述のポリエステルと非相溶の樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートをポリエステルとして使用する場合は、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂およびポリフェニレンオキシドなどの1種以上を用いることができる。
【0019】
非相溶の樹脂と上述した無機粒子を併用してもよい。例えば、ポリエステルに無機粒子とポリエステルと非相溶の樹脂の両方を混合して2軸延伸し、内部に空洞を有した比重が0.5〜1.3の白色ポリエステルフィルムは、基材フィルム自体が軽量化でき、印刷特性が向上するなどの長所を有しており、より好ましい。
【0020】
また、白色ポリエステルフィルムに、他の色に着色されたフィルムまたは透明なフィルムを積層させ、2層以上の積層体とし、これを基材フィルムとして使用してもよい。
【0021】
本発明において、積層膜とは、基材となるポリエステルフィルムの表面に積層構造的に形成されて存在する膜状のものをいう。該積層膜は、単一層であっても複数層からなるものであってもよい。
【0022】
本発明における積層膜には、ガラス転移点(以降、Tgと略称する)の異なる2種類のポリエステル樹脂を用いるが、2種類のポリエステル樹脂でTgが異なり、かつ、ポリエステル樹脂(A)のTgが60℃以上100℃以下であり、ポリエステル樹脂(B)のTgが0℃以上60℃未満であることを満足する必要がある。
【0023】
ポリエステル樹脂(A)のTgは、耐ブロッキング性の点で、好ましくは70〜90℃であり、また、ポリエステル樹脂(B)のTgは、各種被覆物との接着性の点で好ましくは10〜45℃である。
【0024】
さらに、該ポリエステル樹脂(B)は、酸成分としてイソフタル酸を65〜95モル%、または、ジオール成分としてジエチレングリコールを50〜95モル%含有する必要がある。イソフタル酸およびジエチレングリコール以外の成分は特に限定されず、例えば後述する成分等を使用することができる。Tgを上記の範囲とし、主成分を規定することにより、従来なし得なかった各種被覆物との優れた接着性を得ることができた。イソフタル酸成分量が少なすぎると、特に紫外線硬化型インキのように硬化収縮を伴うインキとの接着性が低下する場合があり、一方、ジエチレングリコール成分量が少なすぎると、特に紫外線硬化型インキのように硬化収縮を伴うインキやポリビニルアルコールなどの親水性樹脂との接着性が低下する場合がある。
【0025】
本発明の積層膜で用いられるポリエステル樹脂(B)においては、イソフタル酸の好ましい範囲は70〜95モル%である。また、該ポリエステル樹脂(B)においては、ジエチレングリコールの好ましい範囲は60〜90モル%である。
【0026】
さらに、本発明の積層膜で用いられるポリエステル樹脂(B)において、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を全ジカルボン酸成分中65〜95モル%、および、ジオール成分としてジエチレングリコールを全ジオール成分中50〜95モル%を同時に満たすことが、より好ましい。
【0027】
さらに、イソフタル酸量とジエチレングリコール量の好ましい組み合わせの範囲は、
(1)イソフタル酸を65〜95モル%、および、ジエチレングリコールを60〜90モル%、
または、
(2)イソフタル酸を70〜95モル%、および、ジエチレングリコールを50〜95モル%、
であり、さらにより好ましい組み合わせの範囲は、
(3)イソフタル酸を70〜95モル%、および、ジエチレングリコールを60〜90モル%、
である。
【0028】
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)は、任意の比率で混合して用いることができる。ポリエステル樹脂(A)/ポリエステル樹脂(B)の比率が、固形分重量比で、10/90〜90/10であることが接着性の点で好ましく、より好ましくは30/70〜80/20、さらに好ましくは40/60〜70/30である。ポリエステル樹脂(A)が少なすぎると耐ブロッキング性が低下する場合があり、逆にポリエステル樹脂(B)が少なすぎると特に紫外線硬化型インキのように硬化収縮を伴うインキとの接着性が低下する場合がある。
【0029】
本発明に使用する積層膜は、前記したTgの異なる2種類のポリエステル樹脂を構成成分としてなるものであり、上記Tgの異なる2種類のポリエステル樹脂の合計が積層膜中において70重量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上である。
【0030】
本発明に係る積層膜の構成成分であるポリエステル樹脂(A)および(B)は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであり、このようなポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものである。
【0031】
ここで、該ポリエステル樹脂(A)および(B)を構成するジカルボン酸成分としては前記した条件を満たす範囲で、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸をそれぞれ任意に選択し使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。また、脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0032】
また、ポリエステル樹脂(A)および(B)の原料として用いられるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAなどを、前記した条件を満たす範囲でそれぞれ任意に選択し用いることができる。
【0033】
また、ポリエステル樹脂(A)および/または(B)を水系樹脂とした塗液を用いて積層膜を形成する場合、ポリエステルフィルムとの接着性を向上させるため、あるいはポリエステル樹脂(A)および/または(B)の水溶化を容易にするため、ポリエステル樹脂(A)および/または(B)は、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合したものであることが好ましい。
【0034】
ここで、スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸等あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)および/または(B)として、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の樹脂、例えば本発明に用いられるポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されていてもよい。更に、本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば架橋剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0037】
本発明に係る積層膜に用いられるポリエステル樹脂(A)および(B)は、公知の製造法によって製造することができる。例えば、酸成分とジオール成分とを直接エステル化反応させる方法、あるいは、エステル交換反応させる第一段階とこの第一段階の反応生成物を重縮合反応させる方法等により製造することができる。この際、反応触媒(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物など)を用いることが一般的である。
【0038】
本発明に使用する積層膜の厚みは、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、特に好ましくは0.05μm〜0.5μmである。積層膜の厚みが薄すぎると接着性不良となったり、厚すぎると易滑性や耐ブロッキング性が低下する場合がある。
【0039】
本発明における積層膜には粒子径の異なる2種類のコロイダルシリカ粒子、すなわち、1<rX/d≦20を満足する粒子(X)と、0.2≦rY/d≦4を満足する粒子(Y)を含む必要がある。ここで、rXは粒子(X)の平均粒子径(μm)、rYは粒子(Y)の平均粒子径(μm)、dは積層膜の厚み(μm)である。粒子径の異なる2種類のコロイダルシリカ粒子を併用することにより易滑性や耐ブロッキング性を飛躍的に向上させることができる。rX/dが20を越えると耐削れ性や耐ブロッキング性が低下し、rY/dが0.2未満では耐ブロッキング性が低下するため好ましくない。
【0040】
特に耐ブロッキング性を向上させるには、粒子(X)のr/dは、2≦rX/d≦20が好ましく、さらには4<rX/d≦20が好ましい。また、粒子(Y)のr/dは、1/2<rY/d≦4が好ましい。
【0041】
また、rX/dおよびrY/dのより好ましい組み合わせの範囲は、
(1).1<rX/d≦20および1/2<rY/d≦4、
または、
(2).2≦rX/d≦20および0.2≦rY/d≦4、
または、
(3).4<rX/d≦20および0.2≦rY/d≦4、
または、
(4).2≦rX/d≦20および1/2<rY/d≦4であり、
さらに好ましくは、
(5).粒子(X)のr/dは、4<rX/d≦20であり、粒子(Y)のr/dは、1/2<rY/d≦4である。
【0042】
コロイダルシリカ粒子としては、コロイダルシリカ、数珠状シリカなどが好ましく用いられる。
【0043】
数珠状シリカとは、数珠状に連結および/または分岐した形状のコロイダルシリカであり、球状のコロイダルシリカが数珠状に連結(複数の球状コロイダルシリカが連鎖状につながった形状)した長鎖の構造を有するもの、および、連結したシリカが分岐したもの、および/または、連結したシリカが屈曲したものである。該数珠状シリカは、球状シリカの一次粒子を金属イオンを介在させ粒子−粒子間を結合させたもので、通常は3個以上100個未満、好ましくは5個以上50個未満、さらに好ましくは7個以上30個未満連結したものをいい、数珠状に連結した粒子が分岐したもの、および/または、数珠状に連結した粒子が屈曲したものを包含する。介在させる金属イオンとしては2価以上の金属イオンが好ましく、例えばCa2+、Zn2+、Mg2+、Ba2+、Al3+、Ti4+などである。特に、Ca2+とした場合には、数珠状に連結および分岐したコロイダルシリカを作成するのに好適である。また、球状シリカの一次粒子径は5〜100nm、好ましくは8〜80nm、さらに好ましくは10〜50nmであり、数珠状に連結されたときの長さは30〜500nm、好ましくは50〜400nmである。この数珠状シリカの例として、日産化学工業(株)製“スノーテックス”UPや“スノーテックス”OUPを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0044】
これらのコロイダルシリカ粒子は、平均粒子径が0.001〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜3μm、さらに好ましくは0.02〜1μmであるが、積層膜の厚みによりそれぞれ、1<rX/d≦20を満足する粒子(X)と、0.2≦rY/d≦4を満足する粒子(Y)が選択される。
【0045】
積層膜を構成する粒子径の異なる2種類のコロイダルシリカ粒子は、積層膜のガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂の合計に対して、粒子(X)は0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%であり、粒子(Y)は、積層膜のガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂の合計に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8重量%である。粒子の添加量が、少なすぎると耐ブロッキング性が低下することがあり、多すぎると積層膜の耐削れ性などが低下することがある。
【0046】
本発明における積層膜の形成方法は特に限定されないが、本発明の積層ポリエステルフィルムを製造する際、基材であるポリエステルフィルムの製造工程中に積層膜形成成分を塗布し、基材フィルムと共に延伸する方法が好ましく用いられる。
【0047】
例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に積層膜形成成分を含む塗液を塗布する。続いて、塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥し、幅方向に2.5〜5倍程度延伸する。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)などによって積層膜を積層した本発明のフィルムを得ることができる。
【0048】
ここで、積層膜形成成分を含む塗布液は、環境汚染や防爆性の点で水系のものが好ましい。基材フィルム上への積層膜形成成分を含む塗布液の塗布方法としては、各種の塗布方法、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0049】
次に、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート、(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。この未延伸フィルムを70〜120℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。続いて、このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、積層膜形成塗液を塗布する。この場合に用いられる塗液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。さらに続いて、この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0051】
なお、基材フィルム中に、積層膜を構成するポリエステル樹脂あるいはこれらの反応生成物から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。この場合は、積層膜と基材フィルムとの接着性が向上し、積層ポリエステルフィルムの易滑性が向上するなどの効果があるため好ましい。ここで、積層膜を構成するポリエステル樹脂あるいはこれらの反応生成物を基材フィルム中に含有させる場合には、1種であれ複数種であれ、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、接着性、易滑性の点で好ましい。
【0052】
ポリエステル樹脂あるいはこれらの反応生成物は、基材フィルム上に設ける積層膜形成組成物(本発明の積層膜を形成したポリエステルフィルムの再生ペレットなどを含む)であってもよい。さらに詳細には、基材フィルム中に含有され得るポリエステル樹脂あるいはこれらの反応生成物は、再生材料として、上記の積層ポリエステルフィルム、あるいは、積層ポリエステルフィルムから生じる屑フィルムを粉砕した粉砕物を溶融押出してペレットとして得ることができる。該再生材料は、前述のポリエステルフィルムを構成するポリエステルと混合して用いることができる。本発明の積層ポリエステルフィルムは、再生材料として使用されるペレットの割合が50重量%以下であることが好ましく、さらには40重量%以下が好ましい。該再生材料の含有量が多すぎると、積層ポリエステルフィルムが着色する場合がある。
【0053】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、各種被覆物との接着性に優れるだけでなく、耐ブロッキング性が良好であるためにハンドリング性に優れている。その用途は特に限定されないが、例えば、カード用、ラベル用、写真、OHP、感熱転写やインクジェット、オフセット印刷などの受容シート基材、ハードコートフィルム、包装用、磁気記録媒体用などに用いることができる。
【0054】
例えば、ラベル用としては、通常、積層膜上の少なくとも一部分に印刷層が設けられ、また、印刷層が設けられていない方の面に粘着剤層が設けられて用いられる。ここで、積層膜上の少なくとも一部分に設けられる印刷層は、表示機能を有するものであれば特に限定されるものではない。印刷層を印刷する方法は特に限定されないが、一般的にはオフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法を用いることができる。また、そのとき用いられる印刷用インキも印刷方式に応じて選択され、特に限定されないが、紫外線硬化型インキ、電子線硬化型インキ、酸化重合型インキ、溶剤型インキ(フレキソインキ、スクリーンインキなど)、水性インキ(フレキソインキなど)などを用いることができる。
【0055】
また、印刷層が設けられていない方の面に設けられる粘着剤層は、粘着特性を有するものであればよく、その組成は特に限定されず、ゴム系、アクリル系、ビニル系、シリコーン系などの粘着剤を使用することができる。中でも、粘着ラベル用としてはゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0056】
ゴム系粘着剤は、一般的に、ゴムエラストマー、軟化剤、粘着付与剤を主成分とし、必要に応じて充填剤、老化防止剤を添加したものである。ここで、ゴムエラストマーとしては、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ブタジエン、スチレンーイソプレンブロック共重合体、スチレンーブタジエンブロック共重合体、再生ゴムなどを用いることができる。
【0057】
また、粘着付与剤の樹脂としては、ロジンおよびロジン誘導体、ガムロジン、テルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などを用いることができ、さらに粘着剤の被着体に対する濡れ性を付与するためポリブテン、液状ゴム、フタル酸系可塑剤、鉱油などを添加することができる。
【0058】
また、軟化剤としては、ミネラルオイル、液状ポリブテン、液状ポリアクリレート、ラノリンなどを用いることができる。さらに、必要に応じて添加される充填剤としては、酸化亜鉛、水和アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレイ、顔料など、老化防止剤としては、ゴム用老化防止剤、ジチオカルバメート、あるいは金属キレートなどを用いることができる。
【0059】
一方、アクリル系粘着剤としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルを主成分とし、これらの成分のみでは柔らかすぎるため、凝集力を調整するモノマー、例えば、酢酸ビニル、エチレンーアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸アルキルエステルなどと共重合させて用いることができる。アクリル系粘着剤に添加できる添加剤としては、上述のゴム系粘着剤に用いられる粘着付与剤、軟化剤、充填剤などを用いることができる。
【0060】
アクリル系粘着剤の場合、耐熱性、耐油性を向上させるために、カルボン酸、水酸基、酸アミドなどを含有する官能性モノマーを導入し、架橋タイプとすることも可能である。ここで、架橋を行うための架橋剤としては、ジイソシアネート、メラミンなどを用いることができる。
【0061】
また、印刷層が設けられていない方の面に設けられる粘着剤層に用いられるシリコーン系の粘着剤としては、ゴム状シロキサンと樹脂状シロキサンの重合物を混合したものを主成分としたものを用いることができ、接着しにくいテフロン(登録商標)やシリコーンラバーにも接着可能であるという特徴を有している。 また、ビニル系の粘着剤としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテルなどを主成分としたものを用いることができる。
【0062】
粘着剤の塗工方法は特に限定されないが、表面基材に直接に粘着剤を塗工し剥離紙と張り合わせる直接法、剥離紙のシリコーン塗布面に粘着剤を塗工して表面基材と張り合わせる間接法などを用いることができる。また、粘着剤の塗布方法も特に限定されず、ドクターコーター、コンマーコーター、キスロールコーター、リバースロールコーターなどを用いることができる。
【0063】
本発明の積層ポリエステルフィルムを用いてインクジェット受容シート基材を作製する場合、積層膜上に受容層を形成する。積層膜上に形成される受容層は、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂を含有し、かつインクジェット用インクを吸収するものであれば、特に限定されない。
【0064】
該水溶性樹脂および/または水分散性樹脂としては特に限定されないが、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、セルロースサルフェート、かんしょデンプン、馬鈴薯デンプン、酸化デンプン、リン酸デンプン、カルボキシル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、シアノエチル化デンプン、アクリル酸グラフトデンプン、デキストリン、コーンスターチ、こんにゃく、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トラガントガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、カラギニン、にかわ、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、アルブミン、完全または部分ケン化ポリビニルアルコール及びそのアニオン、カチオン変性物、アセタール化度またはブチラール化度が30%以下のポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリビニルピロリドン及びその共重合体、ポリ−N−ビニルアセトアミド及びその共重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレンオキサイド、カルボキシル化ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体などを用いることができる。これらの水溶性樹脂または水分散性樹脂は、1種または2種以上を混合してもよい。
【0065】
また、該受容層に、カチオン性物質や粒子、架橋剤を添加することは任意であり、これらの添加によって、インク吸収性や吸着性、発色性などを向上させることができる。該カチオン性物質としては、特に限定されないが、組成物中に4級アンモニウム塩を有し、対イオンとしてクロリド、サルフェート、ナイトレートなどが使用されたものが好ましく、たとえばカチオン性界面活性剤、カチオン基を有するポリマーを適用することができる。また、該粒子としては、特に限定されないが、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、ゼオライト、酸化チタン、カオリン、カオリナイト、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。また、該架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0066】
さらに、該受容層には、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤および核剤などが配合されていてもよい。
【0067】
また、該受容層の厚みは、特に限定されないが、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。受容層が薄すぎると、インク吸収性、画像解像性などが不良となる場合がある。また、受容層が厚すぎると、乾燥速度が遅く生産効率が悪くなる場合がある。
【0068】
上記の受容層は、通常、受容層形成塗液を塗工装置を用いて積層膜上に塗工、乾燥する方法により形成される。塗工方法としては特に限定されないが、例えば、ブレードコート方式、エアナイフ方式、ロールコート方式、ブラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー(スライドビート)方式、カーテンコート方式、スプレー方式などを用いることができる。
【0069】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれに限定さない。
【0070】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法及び効果の評価方法は次の通りである。
【0071】
(1)ガラス転移点(Tg)
ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220(セイコー電子工業(株)製)にSSC5200ディスクステーション(セイコー電子工業(株)製)を接続して測定した。試料10mgをアルミニウムパンに調整後、DSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパン)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素中を用いて急冷処理した。この試料を10℃/分で昇温し、そのDSCチャートからガラス転移点(Tg)を測定した。
【0072】
(2)積層膜の厚み
透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、積層ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30点の平均値とした。
【0073】
(3)平均粒子径
積層膜の表面を、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて、拡大倍率10000倍で観察したときの、粒子20個の粒子直径の平均値を粒子径とした。
【0074】
(4)接着性−1
紫外線硬化型インキとして“ダイキュア”RT−8墨(大日本インキ化学工業(株)製)を用い、ロールコート法で積層膜上に約1.5μm厚みに塗布した。その後、照射強度120W/cmの紫外線ランプを用い、照射距離(ランプとインキ面の距離)12cmで5秒間照射して、印刷層を形成した。23℃、65%RHにて1日間調湿後、印刷層に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて押し付けた(荷重20Nで3往復)後、90度方向に剥離した。
【0075】
接着性は、印刷層の残存した個数により評価した。判定基準は、◎:100、○:80〜99、△:50〜79、×:0〜49であり、◎と○を接着性良好とした。
【0076】
(5)接着性−2
積層膜上にポリビニルアルコール樹脂((株)クラレ製PVA−117)の10%水溶液を用いて、乾燥後の塗布厚みが約7μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、120℃で乾燥した。23℃、65%RHにて1日間調湿後、ポリビニルアルコール樹脂層上に、1mm2 のクロスカットを100個入れ、セロハンテープを張り付けてゴムローラーを用いて押しつけた(荷重20Nで3往復)後、90度方向に剥離した。
【0077】
接着性は、ポリビニルアルコール層の残存した個数により評価した。判定基準は、○:80〜100、△:50〜79、×:0〜49であり、○を接着性良好とした。
【0078】
(6)耐ブロッキング性
積層膜同士を重ね合わせ、3点を支点として(1つの支点が直径1cmの円形でフィルムに接するようにする。)、その3支点上に5kgの重りをのせ、23℃、65%RHで48時間調湿し、荷重を加えた箇所の剥離状態を観察した。
【0079】
評価基準は、◎:容易に剥離し重ね合わせた跡が残らない。○:容易に剥離するが重ね合わせた跡が一部に残る。△:剥離できるが重ね合わせた跡が支点の形に残る。×:剥離するときフィルムが劈開する。であり、◎、○を合格とした。
【0080】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめ未延伸フィルムとした。この未延伸フィルムを85℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、25℃の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸し、更に225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層ポリエステルフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みは50μm、積層膜の厚みは0.08μmであった。
【0081】
ここで用いた積層膜形成塗液は、A1/B1=50/50(固形分重量比)およびC1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)で構成される水分散液であった。A1、B1、C1、C3の組成については、後述する。評価結果を表1に示す。
【0082】
(実施例2)
実施例1の積層膜形成塗液で、A1/B1=30/70(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例3)
実施例1の積層膜形成塗液で、A1/B1=70/30(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例4)
実施例1の積層膜形成塗液で、A1/B2=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例5)
実施例1の積層膜形成塗液で、A2/B2=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例6)
平均粒径0.2μmの二酸化チタンを14重量%、および平均粒径1μmのシリカを0.5重量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめ未延伸フィルムとした。この未延伸フィルムを85℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に実施例1と同様の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、95℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸し、更に210℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層膜を設けた基材フィルムが白色の粘着ラベル用ポリエステルフィルムを得た。このとき、基材白色PETフィルムの厚みは50μm、光学濃度1.5、白色度85%、積層膜の厚みは0.08μmであった。
【0087】
ここで用いた積層膜形成塗液は、A1/B1=50/50(固形分重量比)およびC1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)で構成される水分散液であった。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例7)
実施例1の積層膜形成塗液で、C2が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)2重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例8)
実施例1の積層膜形成塗液で、C1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1.5重量%(固形分重量比)、C4が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)2重量%(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例9)
実施例1の積層膜形成塗液で、C1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)4重量%(固形分重量比)、C4が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)8重量%(固形分重量比)とし、積層膜の厚みが0.05μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例10)
実施例1の積層膜形成塗液で、C1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1重量%(固形分重量比)、C4が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)2重量%(固形分重量比)とし、積層膜の厚みが0.25μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例11)
実施例3の積層膜形成塗液で、C1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)とし、積層膜の厚みが0.05μmとなるようにした以外は、実施例3と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例12)
実施例3の積層膜形成塗液で、C2が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)2重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)とし、積層膜の厚みが0.05μmとなるようにした以外は、実施例3と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0094】
実施例1〜12のフィルムは、いずれも接着性、耐ブロッキング性に優れたフィルムであった。
【0095】
(比較例1)
実施例1の積層膜形成塗液で、A1/B3=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。ポリエステル樹脂(B)の酸成分としてイソフタル酸65〜95モル%を含有せず、ジオール成分としてジエチレングリコール50〜95モル%を含有しないB3を使用した本比較例は、接着性に劣っていた。
【0096】
(比較例2)
実施例1の積層膜形成塗液で、B1/B2=50/50(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。Tgが低い樹脂のみを2種類使用した本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0097】
(比較例3)
実施例1の積層膜形成塗液で、A1のみ使用とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。Tgが高い樹脂のみを使用した本比較例は、接着性に劣っていた。
【0098】
(比較例4)
実施例1の積層膜形成塗液で、B1のみ使用とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。Tgが低い樹脂のみを使用した本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0099】
(比較例5)
実施例1の積層膜形成塗液で、C1のみ(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1.5重量%使用とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。粒子1種類のみを使用した本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0100】
(比較例6)
実施例1の積層膜形成塗液で、C3のみ(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%使用とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。粒子1種類のみを使用した本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0101】
(比較例7)
実施例1の積層膜形成塗液で、C5が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1重量%(固形分重量比)、C3が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。粒子(X)が積層膜厚みに対して大きすぎる本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0102】
(比較例8)
実施例1の積層膜形成塗液で、C1が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)1.5重量%(固形分重量比)、C6が(ポリエステル樹脂A1とB1の合計に対して)5重量%(固形分重量比)とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示す。粒子(Y)が積層膜厚みに対して小さすぎる本比較例は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0103】
ここで、実施例、比較例において、積層膜形成のために用いた樹脂は、以下の通りである。
【0104】
A1:テレフタル酸(88モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(12モル%)、エチレングリコール(95モル%)、ジエチレングリコール(5モル%)から構成されるポリエステル樹脂(Tg80℃)の水分散液。
【0105】
A2:テレフタル酸(99モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(1モル%)、エチレングリコール(70モル%)、ネオペンチルグリコール(30モル%)から構成されるポリエステル樹脂(Tg66℃)の水分散液。
【0106】
B1:イソフタル酸(93モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(7モル%)、エチレングリコール(10モル%)、ジエチレングリコール(90モル%)から構成されるポリエステル樹脂(Tg18℃)の水分散液。
【0107】
B2:イソフタル酸(91モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(9モル%)、エチレングリコール(5モル%)、ジエチレングリコール(80モル%)、シクロヘキサンジメタノール(15モル%)から構成されるポリエステル樹脂(Tg38℃)の水分散液。
【0108】
B3:テレフタル酸(85モル%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(15モル%)、エチレングリコール(75モル%)、ジエチレングリコール(20モル%)、ポリエチレングリコール(分子量1000)(5モル%)から構成されるポリエステル樹脂(Tg45℃)の水分散液。
【0109】
C1:コロイダルシリカ(平均粒子径1μm)の水分散液。
C2:コロイダルシリカ(平均粒子径0.3μm)の水分散液。
C3:コロイダルシリカ(平均粒子径0.08μm)の水分散液。
C4:コロイダルシリカ(平均粒子径0.05μm)の水分散液。
C5:架橋アクリル粒子(平均粒子径5μm)の水分散液。
C6:アルミナ表面処理シリカ(平均粒子径0.005μm)の水分散液。
【0110】
【表1】
【0111】
【発明の効果】
本発明により、各種被覆物との接着性および耐ブロッキング性に優れた積層ポリエステルフィルムが提供できる。
Claims (3)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ガラス転移点の異なる2種類のポリエステル樹脂および粒子径の異なる2種類のコロイダルシリカ粒子からなる積層膜が形成され、該2種類のポリエステル樹脂が、ガラス転移点が60〜100℃であるポリエステル樹脂(A)と、ガラス転移点が0℃以上60℃未満であるポリエステル樹脂(B)からなり、該ポリエステル樹脂(B)が、酸成分としてイソフタル酸65〜95モル%、または、ジオール成分としてジエチレングリコール50〜95モル%を含有するものであり、該2種類のコロイダルシリカ粒子が、1<rX/d≦20を満足する粒子(X)と、0.2≦rY/d≦4を満足する粒子(Y)からなることを特徴とする積層ポリエステルフィルム(rX:粒子(X)の平均粒子径、rY:粒子(Y)の平均粒子径、d:積層膜の厚み)。
- 上記ポリエステル樹脂(B)が、酸成分としてイソフタル酸65〜95モル%、および、ジオール成分としてジエチレングリコール50〜95モル%を含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 粒子(X)の平均粒子径rXが、2≦rX/d≦20である請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
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