JP3722278B2 - 親水化オレフィン組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、親水化工程の前に酸処理をすることによって、アルカリ電解液中で中和されないで残存した酸性基を有することが可能となり、この結果不純物捕捉機能を効果的に発現させ、自己放電を大幅に低減することを可能にしたアルカリ二次電池用セパレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ二次電池では、充電状態の電池を保存すると、時間の経過とともに容量が低下していく自己放電現象の存在が知られており、負極として水素吸蔵合金を用いたニッケル−水素電池においては特に顕著な問題となっている。特に従来のポリアミド系繊維をセパレータとして用いた場合には、ポリアミド系繊維が電解液によって加水分解され、分解生成物である硝酸根などの窒素化合物によって、自己放電現象が促進されるという欠点を有していた。
【0003】
また、自己放電の原因物質である硝酸根としては、前記のセパレータ分解物のほかに、電池内に混入したアンモニアの酸化によっても生成する。従って電池系内のアンモニア量を低減すれば硝酸根も減少し、自己放電の抑制が期待できるのであるが、アンモニアは電極の製造工程においても混入され易く電池内へのアンモニア混入を完全に防ぐことは極めて困難である。
【0004】
そこで、電解液中でも分解生成物を生じず、電池内のアンモニアを捕捉する能力を持ったセパレータとして、ポリオレフィン系繊維を親水化したものを主成分とする方法が検討されてきた。この親水化の処理方法としては、例えばスルホン化処理、親水性単量体のグラフト重合などがある。これらの親水化処理においては、スルホン基およびカルボン酸基等のイオン交換能を有する官能基をポリオレフィン系繊維に導入することで、その結果これらの官能基が電池内に含まれる窒素化合物、特にアンモニアを捕捉して自己放電現象を抑制させると考えられている。
【0005】
従来ポリオレフィン系繊維に親水性単量体にグラフト重合やスルホン化処理によって、高いイオン交換量を保持させるセパレータについての検討が多数報告されている(特開平10-326607号、特開平10-116600号)。
【0006】
しかしながら、グラフト重合処理によるセパレータは耐熱性に劣り、例えば60℃以上の比較的高温な環境下においては、カルボン酸基の脱落等が生じる。このため、アンモニア捕捉性の低下により自己放電現象を抑止することが困難になるという問題がある。
【0007】
これに対して、スルホン化処理によるセパレータは、比較的高温の環境下でも官能基が安定であるという利点を有している。しかし、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維は、元来耐酸性に優れ、スルホン化処理する場合においては、スルホン化しにくい繊維であるため、内部までスルホン基を導入しようとすると、繊維の強度低下を招くという問題がある。このため高いアンモニア捕捉性を主眼に置いて、ポリオレフィン系繊維の内部へのスルホン基導入について検討した例はこれまでに報告されていない。
【0008】
またポリスチレンなどの比較的スルホン化しやすい樹脂繊維をスルホン化して親水化させる試みについても検討されている。しかし、この場合もスルホン基の導入が主に繊維表面に集中しやすく、高いイオン交換量を有しているにもかかわらず、アンモニア捕捉性に乏しく、これをセパレータとして用いた電池の自己放電も大きいという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、優れたアンモニア捕捉性を有する電池用セパレータを提供し、またこのセパレータを使用することにより高い容量保持性能を有する電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の発明を見出すに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)アルカリ電解液に浸漬後において、中和されていない酸性基量が1×10-3mol/m2以上、5×10-2mol/m2以下、好ましくは、2×10-3mol/m2以上である事を特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。ここで酸性基量とは、セパレータ中の総酸性官能基量を指し、このうちアルカリ電解液中においてカリウムイオンで置換される繊維表面の官能基量を、親水性の指標であるイオン交換量で表わす。酸性基量よりイオン交換量を差し引いた値が、中和されないで繊維内部に残存する酸性基量として、アンモニア捕捉能力の指標として用いることができる。
【0012】
(2)加えて本発明は(1)における酸性基が、スルホン基である事を特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。
【0013】
(3)また、本発明は(1)または(2)において、含有する総硫黄量が5000〜50000ppm、好ましくは、10000ppm以上である事を特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。
【0014】
(4)さらに本発明は(1)〜(3)のいずれかにおいて、イオン交換量が、1.0meq/m2以上、10meq/m2以下である事を特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。
【0015】
(5)さらに加えて本発明は、(1)〜(4)のいずれかにおいて、親水化されたポリオレフィン系樹脂の極限粘度が、0.2以上、1.0dl/g以下の範囲である事を特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。
【0016】
(6)さらに加えて本発明は(1)〜(5)のいずれかにおいて、スルホン化処理の前処理として、硫酸への浸漬が行なわれていることを特徴とするアルカリ電池用セパレータに関するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルカリ電池用セパレータにおいては、電解液中で中和されずに残存するスルホン基が、1×10-3mol/m2以上存在する必要があり、より好ましくは5×10-3mol/m2以上である。これは、スルホン基がアンモニアあるいはアンモニウムイオンよりも、カリウムイオンに対して高い反応選択性を持つことに起因するものであり、電解液中のカリウムイオンによって中和されカリウム塩を形成してしまったスルホン基は、アンモニア捕捉能力を失ってしまうからである。したがって、アンモニア捕捉に有効な非中和状態のスルホン基が1×10-3mol/m2以下では電解液中のアンモニアを十分に捕捉できず、自己放電を抑止することができないものである。
【0018】
本明細書において、有効スルホン基とは、電解液中で中和されていないスルホン基を意味するものである。この有効スルホン基の量は、硫黄濃度より求められた全スルホン基量と、イオン交換量より得られる中和されたスルホン基量の差として求めることができる。
【0019】
スルホン化して導入される硫黄濃度は5000ppm以上50000ppm以下、好ましくは10000ppm以上である。これは5000ppm以下ではスルホン化が繊維表面だけにとどまり、繊維内部に有効なスルホン基が形成されないためである。50000ppm以上であれば、繊維表面の剥離や強度低下という問題を生じる。
【0020】
電解液中で中和されるスルホン基の量は、カリウムイオン交換量を測定することによって知ることができる。このイオン交換量という指標は、従来よりセパレータと電解液の親和性に対する指標として用いられてきたものであり、1.0meq/m2以上10meq/m2未満の範囲であることが望ましい。1.0meq/m2未満の場合にはセパレータと電解液との親和性が失われるため電池性能が低下する。また、10meq/m2以上のイオン交換量を付与させた場合には、有効スルホン基量が低下するばかりか、樹脂表面を集中的にスルホン化するためにセパレータとして必要な強度を得ることが困難になる。
【0021】
有効スルホン基を樹脂に付与する方法としては、スルホン化の前処理として樹脂を硫酸に一度浸漬しておき、続いてスルホン化処理をおこなうのが最も有効である。この前処理によって有効スルホン基が多く付与されるようになる機構に関しては不明な点も多いが、樹脂中に含有されている酸化防止剤などの添加剤や低分子量成分のうち、特に樹脂の表面付近のものが硫酸浸漬によって脱落し、微細孔が形成され、この微細孔を通じてスルホン化剤が樹脂内部へ侵入するものと推測される。
【0022】
この前処理工程において使用される硫酸は、濃度90%以上の濃硫酸であることが望ましい。またこの処理において樹脂表面がスルホン化されてしまうことのないような温度であることが必要であり、例えばポリプロピレン樹脂を用いる場合には50℃以下である必要がある。
【0023】
また、前処理後の樹脂をスルホン化する際のスルホン化処理剤としては硫酸、濃硫酸、発煙硫酸、SO3ガスなどが使用できるが、濃硫酸が処理時間などの面から最も望ましい。また濃硫酸処理を行う場合には、濃硫酸の温度は100℃以上であることが望ましく、120℃以上、特に130℃以上、135℃の範囲で、処理時間も10分以下、好ましくは、5分以下、3分以下であればさらに望ましい。また、濃硫酸の濃度は、95%以上、好ましくは97%以上がよい。これは高温で処理するほど内部へのスルホン化が短時間で進行し、不織布強度の低下を抑えることができるからである。
【0024】
また、これらポリオレフィン系樹脂は極限粘度が0.2以上、1.0dl/g以下の範囲であることが望ましく、さらに好ましくは0.4以上0.9dl/g以下の範囲である。この範囲内であれば硫酸浸漬によって微細孔を発現させやすく、有効スルホン基を導入しやすくなる。ポリオレフィン系樹脂は極限粘度が1.0dl/g以上であれば、この樹脂は非常に耐酸性に優れたものとなり、樹脂表面をむりやり集中的にスルホン化することになる。この結果、集中的にスルホン基が導入された部分の強度が低くなり、セパレータの強度低下を招く。またこの樹脂表面のスルホン化部分が崩壊して剥離を生じる場合がある。この結果としてスルホン基量を増やすことが困難となる。これ以下の極限粘度であれば、セパレータとしての強度を維持することは困難である。
【0025】
本発明の電池用セパレータを構成する樹脂は、任意の有機系樹脂材料を用いることができるが、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン単独からなる樹脂、またはオレフィンとその他の単量体との共重合体とからなる樹脂であり、ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエチレン−プロピレン、ポリエチレン−ブテン−プロピレン等を挙げることができ、また、オレフィンと共重合が可能なその他の単量体としては、スチレン、酪酸ビニル、酢酸ビニル等を挙げることができ、特に限定されるものではないが、電解液に対する耐性、耐酸化性、スルホン化処理時の耐熱性等の面からポリプロピレンであることが望ましい。
【0026】
本発明の電池用セパレータにおいてその形態は、不織布であることが望ましいが、それ以外の多孔質体、例えば、織物、編物などの繊維集合体、フィルム型多孔質体、又は発泡体型多孔質体なども使用可能である。不織布を用いる場合には、その製法は特に限定されるものではなく、一般に知られている不織布の製法であればいずれも使用可能であるが、均一性やコストの面からはスパンボンド法やメルトブロー法が望ましい。また、単一の製法である必要はなく、異なる製法による不織布を積層したような多層構造を持つものも使用可能である。
【0027】
本発明の電池用セパレータに用いる多孔質体の目付量は、20〜60g/m2の範囲であることが望ましく、30〜50g/m2の範囲であれば更に望ましい。これは20g/m2以下であると電池製造に必要な強度が得られないためであり、60g/m2以上では必要な通気度が得られないためである。
【0028】
本発明における実施例、比較例中の各特性は、次の方法によって測定した。
【0029】
・極限粘度(IV)
溶媒としてテトラリンを使用し、試料を該テトラリンに溶解し、該溶解液をガラス濾過器で濾過した後、Ubbelohdeの粘度計を用いて135±0.1℃の温度で測定を行う。尚使用するテトラリンには、予め0.2質量%のBHT(2,4−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)を添加しておき、試料が溶解する際の酸化劣化を防止する。試料の溶解液の濃度としては、1g/1000cm3とする。Huggins定数(k′)としては0.35の値を用いる。尚該測定法は「実験化学講座8高分子化学(上),第5章粘度,日本化学会,1963年5月15日」に準じている。
【0030】
・総硫黄量
「基礎分析化学講座,第11巻,日本分析化学会(共立出版),第34〜43頁,1965年9月」に記載の方法に準じ、フラスコ燃焼法により実施する。
【0031】
・イオン交換量
30cm2の試験片を1mol/dm3のHCl溶液に1時間浸漬した後、イオン交換水でpHが6〜7になるまで数回洗浄した。次いで、60℃の送風乾燥機で2時間乾燥し、室温まで冷却した。冷却後の試験片を0.01mol/dm3のKOH溶液100cm3に浸漬し、45℃で1時間振とうした後、試験片を取り出し、溶液25cm3を採取して、0.01mol/dm3のHCl溶液で中和滴定した。ブランク溶液も同様に滴定し、式1より、カリウムイオン交換量を算出した。
【0032】
イオン交換量(meq/m2)={(V0−V1)×100×0.01×f}/(0.003×25) ・・・(式1)
ただし、
V1:サンプルの滴定に要したHCl溶液量(cm3)
V0:ブランク溶液の滴定に要したHCl溶液量(cm3)
f :HCl溶液のファクター
【0033】
・有効スルホン基量
前述の総硫黄量とイオン交換量の測定値を用い、下記式2により算出した。
有効スルホン基量(mol/m2)=(総硫黄量(ppm)×目付(g/m2)/32.66/1000−イオン交換量(meq/m2))/1000・・・(式2)
【0034】
・アンモニアトラップ率
ナス型フラスコに8mol/dm3−水酸化カリウム溶液1000cm3と、セパレータ20cm2を投入し、真空脱気することによりセパレータ内の空気を抜き、該セパレータを完全に上記水酸化カリウム溶液に漬す。真空脱気を解いた後、1mol/dm3−アンモニア水溶液を0.3cm3投入し、アンモニア濃度を3×10-4モルに調整する。次いで完全に密栓し、45℃に72時間放置した後、残存するアンモニア量を測定し、この値から検量線に基づいてセパレー夕にトラップされたアンモニア量を算出する。アンモニアトラップ率は、トラップされたアンモニア量の初期存在量に対する百分率(%)で表す。尚アンモニア濃度の測定は、JIS K0102.42.2に準じて吸光光度法により行う。
【0035】
アンモニアを既にトラップ済みのセパレータを測定する場合は、前処理として、先ず純水でセパレータを水洗し、その後セパレータの200倍の重量の1mol/dm3−塩酸中に10時間以上浸漬し、再度水洗を行い、次いで60℃,2Paの条件で20時間真空乾燥して再生する。その後、上述の様にしてアンモニア量を測定し、アンモニアトラップ率を求める。
【0036】
・容量保持率
先ずペースト式水酸化ニッケル正極とペースト式水素吸蔵合金負極、及びセパレータを渦巻き状に捲回し、SCサイズの密閉型電池(容量2400mAh)を作製する。尚この電池の電解液としては、水酸化リチウムを添加した水酸化カリウム水溶液を用いる。
【0037】
前準備の初期活性化処理として、45℃で6時間保持する。その後20℃の空気雰囲気下において0.2Cで6時間充電の後、0.2C放電(放電終止電圧1.0V)し、この充電・放電の操作を7回繰り返す。
【0038】
次に0.2Cで6時間充電し、1時間休止の後、0.2C放電(終止電圧1.0V)での放電容量を測定し、測定値C0とする。そして0.2Cで6時間充電して45℃の空気雰囲気下で168時間保存し、その後20℃で6時間放冷し、0.2C放電(終止電圧1.0V)での放電容量を測定して測定値C1とする。次いで0.2Cで6時間充電し、1時間休止の後、0.2C放電(終止電圧1.0V)での放電容量を測定し、測定値C2とする。尚上記0.2C放電とは、密充電した電池を5時間かけて放電することであり、この際放電の電流値を適切な値に設定する。
【0039】
上記測定値を基に下記式3により容量保持率を算出する。
容量保持率(%)=C1×2/(C0+C2)×100 …(式3)。
【0040】
なお自己放電量(%)と容量保持率(%)との関係は、下記式4で表される。
容量保持率=100−自己放電量 ・・・(式4)。
【0041】
【実施例】
本発明を実施例により詳説するが、本発明は決してこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
極限粘度0.58dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、オリフイスからの押出温度を220℃、単孔吐出量を0.5g/minとし、250℃,0.6kg/cm2の空気流で牽引細化させて上記ポロプロピレン樹脂を繊維化しつつ(メルトブロー法)、捕集コンベアー上で不織布化を行う。これを25℃の98質量%の濃硫酸に10分間浸漬した後に135℃の98質量%の濃硫酸に3分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は13000ppm、イオン交換量は1.50meq/m2であった。
【0043】
<実施例2>
極限粘度0.78dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、上記実施例1と同様の方法により、不織布化した。これをこれを25℃の98質量%の濃硫酸に10分間浸漬した後に130℃の98質量%の濃硫酸に4分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は12000ppm、イオン交換量は1.75meq/m2であった。
【0044】
<実施例3>
極限粘度0.58dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、上記実施例1と同様の方法により、不織布化した。これを25℃の98質量%の濃硫酸に10分間浸漬した後で一度水洗乾燥し、SO3ガスを1体積%含む窒素ガス(25℃)中に、上記不織布を120分間放置し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は8900ppm、イオン交換量は6.00meq/m2であった。
【0045】
<実施例4>
極限粘度1.15dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、240℃で溶融したポリプロピレン樹脂をノズルから押し出し、エアージェットにより延伸して繊維化し(スパンボンド法)、捕集コンペア上において不織布化を行う。これをこれを25℃の98質量%の濃硫酸に10分間浸漬した後に135℃の98質量%の濃硫酸に3分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は8400ppm、イオン交換量は2.5meq/m2であった。
【0046】
<実施例5>
極限粘度0.58dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、オリフイスからの押出温度を220℃、単孔吐出量を0.5g/min.とし、250℃,0.6kg/cm2の空気流で牽引細化させて上記ポロプロピレン樹脂を繊維化しつつ(メルトブロー法)、捕集コンベアー上で不織布化を行う。この際、捕集コンベアー上にポリプロピレン製不織布[旭化成工業(株)製PU5020](極限粘度1.03dl/g)を配置しておくことにより、B層上にA層が積層される。次いで100℃で熱プレスすることでA層とB層を一体化し、その後これをこれを25℃の98質量%の濃硫酸に10分間浸漬してから135℃の98質量%の濃硫酸に3分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータのA層の総硫黄量は13000ppm、B層の総硫黄量は3500ppm、イオン交換量は0.60meq/m2であった。
【0047】
<比較例1>
極限粘度0.58dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、オリフイスからの押出温度を220℃、単孔吐出量を0.5g/min.とし、250℃,0.6kg/cm2の空気流で牽引細化させて上記ポロプロピレン樹脂を繊維化しつつ(メルトブロー法)、捕集コンベアー上で不織布化を行う。これを135℃の98質量%の濃硫酸に3分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は6500ppm、イオン交換量は9.10meq/m2であった。
【0048】
<比較例2>
極限粘度1.35dl/gのポリプロピレン樹脂を用い、240℃で溶融したポリプロピレン樹脂をノズルから押し出し、エアージェットにより延伸して繊維化し(スパンボンド法)、捕集コンペア上において不織布化を行う。その後130℃の98質量%の濃硫酸に3分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は1200ppm、イオン交換量は1.00meq/m2であった。
【0049】
<比較例3>
極限粘度0.58dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、上記実施例1と同様の方法により、不織布化した。SO3ガスを10体積%含む窒素ガス(25℃)中に、上記不織布を10分間放置し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は10200ppm、イオン交換量は15.0meq/m2であった。
【0050】
<比較例4>
極限粘度0.78dl/gのポロプロピレン樹脂を用い、上記実施例1と同様の方法により、不織布化した。これを120℃の95質量%の濃硫酸に10分間浸漬し(スルホン化処理)、セパレータを得る。該セパレータの総硫黄量は1400ppm、イオン交換量は1.25meq/m2であった。
【0051】
上記実施例1〜4及び比較例1〜3のセパレータの各種物性、及び上記各ニッケル水素二次電池の容量保持率の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1から分かる様に、実施例1〜5のセパレータは有効スルホン基量が多く、よってアンモニアトラップ率が高くなったと考えられ、また実施例1〜5は電池の容量保持率が高い。
【0054】
これに対して比較例1および3のセパレータは高い硫黄量を有してはいるが、有効スルホン基量が少ないためにアンモニアトラップ率が低く、電池の容量保持率が低くなっている。
【0055】
また比較例2および4のセパレータはもともとのスルホン基量が少ないため、有効スルホン基量が少なくなり、アンモニアトラップ率が低く、電池の容量保持率が比較的低いものであった。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る電池用セパレータは、アンモニア捕捉に有効なスルホン基を多く有していることにより、自己放電を効果的に抑制し、高い容量保持率の電池を実現するものである。
Claims (7)
- 濃硫酸の濃度が95%以上、処理温度が120℃以上で処理してなることを特徴とし、アルカリ液に浸漬後、中和されない酸性基量が1×10-3mol/m2以上、5×10-2mol/m2以下である、親水化処理された事を特徴とするポリプロピレンを主体とするポリオレフィン系樹脂組成物。
- 酸性基がスルホン基である事を特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 含有する総硫黄量が5000ppm以上50000ppm以下の範囲にある事を特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- イオン交換量が、1.0meq/m2以上、10meq/m2以下である事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオレフィン系樹脂組成物。
- 親水化されたポリオレフィン系樹脂で中和されない酸性基を有する樹脂の極限粘度が、0.2dl/g以上、1.0dl/g以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- スルホン化処理の前処理として、硫酸への浸漬が行なわれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなることを特徴とするアルカリ電池用セパレータ。
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