JP5137165B2 - アルカリ二次電池用セパレータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ二次電池用セパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などのアルカリ二次電池は、電気・電子機器等に汎用されている。特に、ニッケル水素電池は、カドミウムを使用せず、しかも体積エネルギー密度が高くて高容量であることから、最近では、電気自動車用電池や電力貯蔵用二次電池としての用途が期待されている。
【0003】
アルカリ二次電池において、正負両極の短絡を防止するために、電池用セパレータが使用されている。アルカリ二次電池用セパレータとしては、従来から、ポリアミド製不織布や親水化処理したポリオレフィン製不織布(特開平4−167355号公報等)が使用されている。しかしながら、従来の不織布を用いた電池用セパレータは、電気自動車用電池等の大型電池に用いる場合に、以下の問題が指摘されていた。
【0004】
まず、ニッケル水素電池においては、高濃度アルカリ水溶液が使用されるため、耐アルカリ性および耐酸化性が要求されるが、ポリアミド製不織布は、この特性が不十分であった。また、高容量化が要求される電気自動車用電池などでは、電池活物質を多く担持させる必要があるが、これに伴い、それに使用される電池用セパレータに対し薄膜化が要求される。しかし、従来の不織布を用いた電池用セパレータは、厚みを150μm以下にすると、厚みのばらつきが大きくなり、また強度も著しく低下するおそれがある。そして、電池の高容量化を達成するためには、優れた自己放電特性が求められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、耐アルカリ性、耐酸化性および自己放電特性に優れ、しかも薄膜化が可能なアルカリ二次電池用セパレータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、超高分子量ポリエチレン(UHPE)粉末の焼結により得られた超高分子量ポリエチレン多孔性シートを用いたアルカリ二次電池用セパレータであって、前記UHPE多孔性シートが、エチレンモノマー単位数20〜1100個当たりにつき1個のスルホン酸基を有し、かつ、下記式で表す自己放電特性が70%以上である
自己放電特性(%)=(B/A)×100
前記Aは、前記アルカリ二次電池用セパレータを組み込んだニッケル水素電池の初期充放電を5回繰り返した後の電池容量であり、
前記Bは、満充電状態の前記電池を45℃で1週間放置した後の電池容量である。
このアルカリ二次電池用セパレータを開発した経緯は、以下のとおりである。
【0007】
本発明者らは、まず、薄膜化が可能な材料の検討を行ったところ、ポリオレフィン多孔性シートが、この目的に適していることを見出した。しかし、ポリオレフィンは疎水性であるため、アルカリ二次電池用セパレータとして用いるためには、親水化処理をする必要がある。親水化処理には、界面活性剤処理、アクリル酸等の親水性モノマーのグラフト重合処理、プラズマ処理、スルホン化処理がある。そこで、ポリオレフィン多孔性シートについて、これらの親水化処理をそれぞれ検討したところ、つぎのような問題があった。
【0008】
まず、界面活性剤処理では、初期の濡れ性に関しては有効であるが、自己放電特性に関して問題があった。また、親水性モノマーのグラフト重合処理の場合は、親水化に関しては問題がないが、耐酸化性および自己放電特性に問題があった。プラズマ処理は、親水性が経時的に低下するという問題があり、また耐酸化性および自己放電特性にも問題がある。そして、スルホン化処理は、種々の親水化処理のなかで、最も自己放電特性に優れていたが、スルホン化処理によりポリオレフィン多孔性シートが劣化し、強度が低下するという問題があった。強度が低下すれば、電池に組み込む際に電池用セパレータの破損が生じるおそれがあり、短絡の可能性もある。この劣化の問題を解決するためには、スルホン酸基の導入量を少なくすればよいが、このようにすると親水性が低下し、出力特性が劣るようになる。また、スルホン酸基の導入量が少ないと、自己放電特性も悪くなり、電池の初期容量を大幅に割ってしまい、容量保持することができなくなる。
【0009】
そこで、これらの問題を解決するために、スルホン化処理の条件とポリオレフィンの種類との関係を重点的に検討した。その結果、ポリオレフィンとしてUHPEを使用し、またスルホン酸基の導入量を前記所定の範囲に限定すれば、スルホン酸基導入に伴う劣化の問題が解決されるとともに、親水性、耐アルカリ性、耐酸化性および自己放電特性に優れ、しかも薄膜化が可能であることを見出し、本発明をするに至ったのである。さらに、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、強度が強く、アルカリ二次電池の電極膨張による圧縮に対しつぶれ難いという特性も有する。このため、アルカリ二次電池の充放電サイクルを重ねても、セパレーターが電極により押しつぶされて中の電解液が絞り出されることによって起きる、いわゆる「液枯れ」現象による容量低下を起こすこともなく、優れた充放電サイクル特性を示す。このような高性能の本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、通常のアルカリ二次電池に好ましく使用できることはもちろん、特にニッケル水素電池に好ましく使用でき、高容量化が必要な電気自動車用電池や電力貯蔵用二次電池等に最適である。
【0010】
本発明において、前記スルホン酸基の導入割合は、UHPE多孔性シートのエチレンモノマー単位数20〜1100個当たりにスルホン酸基1個が存在する割合が好ましく、特に好ましくは、UHPE多孔性シートのエチレンモノマー単位数100〜1100個当たりにスルホン酸基1個が存在する割合である。また、UHPEの粘度平均分子量は、50万〜1600万の範囲が好ましく、特に好ましくは200万〜1000万の範囲である。
【0011】
本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、UHPE多孔性シート100重量部に対し0を超え1重量部以下の範囲で界面活性剤を有することが好ましい。この割合で界面活性剤を有していれば、自己放電特性の低下なしに親水性をさらに向上させることができる。前記界面活性剤の好ましい含有割合は、0.01〜0.8重量部の範囲である。なお、界面活性剤の含有量は、界面活性剤処理前後のアルカリ二次電池用セパレータの重量を測定し、その差を取れば求めることができる。
【0012】
本発明において、スルホン酸基の含有量は、例えば、以下の方法により測定できる。
【0013】
まず、スルホン化処理されたUHPE多孔性シートを下記の方法により、十分洗浄して、スルホン化処理で付着した不純物を除去する。前記洗浄方法としては、その孔内部まで濡らすことができる水混和性溶媒(メタノール、エタノール等)を用いて十分に洗浄し、前記溶媒を含浸させた状態で、UHPE多孔性シートをイオン交換水に浸漬する方法がある。その他の洗浄方法としては、0.1N程度の弱アルカリ水溶液に、UHPE多孔性シートを浸漬した後、イオン交換水に浸漬する方法等がある。
【0014】
つぎに、前記UHPE多孔性シートを約80℃で15分間程度乾燥させた後、全反射吸収法(ATR法)により、フーリエ変換赤外線スペクトル(FT−IRスペクトル)を測定することにより、スルホン酸基を同定する。つづいて、蛍光X線分析により、硫黄(S)元素の含有率を求める。スルホン化ポリエチレンは下記の示性式(化1)で表されるから、この示性式にしたがって、スルホン化ポリエチレン全体に対する硫黄元素の含有率を重量%で表す式は、以下の(数1)となる。なお、下記式(数1)は、C=12.011,H=1.008,O=16.00,S=32.06として、導いた式である。また、下記式(数1)において、S含有率とは、スルホン化ポリエチレン全体における硫黄(S)の含有率(重量%)を示す。また、下記示性式(化1)および下記式(数1)において、xは、スルホン化ポリエチレン中のスルホン酸基を有するエチレンモノマー単位のモル分率を示す。
【0015】
【化1】
Figure 0005137165
【0016】
(数1)
S含有率(重量%)=3206x/(80.06x+28.05)
【0017】
そして、S含有率(重量%)は、蛍光X線分析から直接得られるので、この値を前記示性式(数1)に代入すれば、スルホン酸基を有するエチレンモノマー単位のモル分率xが得られ、このモル分率xの逆数が、スルホン酸基1個当たりのエチレンモノマー単位数である。
【0018】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、例えば、以下の方法により製造できる。
【0019】
まず、UHPE多孔性シートを準備する。例えば、UHPE粉末を保形具に充填し、その融点以上に加熱された水蒸気により焼結し、この焼結体を所定の厚みに切削することにより、UHPE多孔性シートが得られる。このUHPE多孔性シートは、複数のUHPE粒子が相互に連結し、前記粒子間の空隙により多孔構造が形成されたものである。前記焼結温度は、通常、130〜190℃であり、またUHPE粒子の平均粒径は、通常、10〜300μmの範囲であり、好ましくは20〜200μmの範囲である。この平均粒径を変化させることにより、得られるUHPE多孔性シートの平均孔径を調整できる。
【0020】
つぎに、前記UHPE多孔性シートに対し、スルホン化処理を行う。このスルホン化処理は、前記所定の割合でスルホン酸基を導入できれば、特に制限されず、発煙硫酸の濃硫酸溶液を用いる湿式法、無水硫酸のジクロルエタン溶液を用いた有機溶剤系湿式法、気体状の無水硫酸を乾燥空気若しくは不活性ガス等で希釈して処理する気相法等の従来公知の方法により実施できる。このスルホン化処理において、前記所定の割合のスルホン酸基導入率を達成するためには、発煙硫酸、無水硫酸等のスルホン化剤の濃度や反応温度、これとUHPE多孔性シートとの接触時間を調整すればよい。
【0021】
このようにして得られる本発明のアルカリ二次電池用セパレータにおいて、その厚みは、通常、20〜250μmの範囲、好ましくは50〜200μmの範囲であり、その空孔率は、通常、30〜70体積%の範囲、好ましくは50〜70体積%の範囲であり、石鹸膜流量法による通気性は、通常、1×10-4〜1×10-2cm3・cm/cm2・Pa・secの範囲、好ましくは5×10-4〜1×10-2cm3・cm/cm2・Pa・secの範囲であり、KCl透過性は、通常、1×10-7〜1×10-5cm2/secの範囲、好ましくは5×10-7〜1×10-5cm2/secの範囲である。前記空孔率は、電池用セパレータの片面の面積S(cm2)、厚みd(cm)および重量m(g)と、その形成材料の比重r(g/cm3)とから、下記の数式(数2)により算出できる。また、前記石鹸膜流量法による通気性は、12.7mmH2Oの圧力条件下で、電池用セパレータを透過した酸素の透過量を、膜の有効面積1.23cm2で測定したものである。そして、前記KCl透過性は、セパレーターのイオン透過性を表すパラメータであり、下記の方法により測定される。
【0022】
(数2)
空孔率(体積%)=[1−((m/r)/(S×d))]×100
【0023】
(KCl透過性の測定方法)
電池用セパレータを隔膜として用いてガラスセル内を仕切り、二つのセル部を形成する。前記両セル部に、水面が同じ高さになるように蒸留水を入れ、前記両セル部とも攪拌子で攪拌する。片側(供給側)のセル部に1.0mol/リットルKCl水溶液を1ml添加し、その反対側(透過側)のセル部にイオン伝導度計を設置して、溶液の伝導度変化を測定する。そして、得られた伝導度をイオン濃度に換算してKClイオン(K+,Cl-)の透過係数を求める。
【0024】
前述のように、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、界面活性剤を前記範囲で有することができる。用いる界面活性剤の種類は、特に制限されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれもが使用できる。但し、水酸基やアミノ基等の酸化還元反応を受ける可能性がある官能基を有するものは、スルホン化により付与された優れた自己放電特性を損なうおそれがあるから、使用を避けた方がよい。本発明において、好ましく使用できる界面活性剤としては、例えば、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどがある。界面活性剤を担持させるには、例えば、界面活性剤溶液に本発明のアルカリ二次電池用セパレータを浸漬し、これを引き上げ乾燥させればよい。
【0025】
【実施例】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0026】
(実施例1および比較例1)
UHPE粉末(粘度平均分子量500万、融点135℃、平均粒径約30μm、メッシュ分級品)を保形具に充填した。この保形具は、多数の孔を有する円筒状金型の内周面にポリテトラフルオロエチレン多孔性フィルムを貼ってなる外型と、この外型の底部に配置され、前記外型を固定する固定型とから構成される。前記保形具を、金属製耐熱耐圧容器(水蒸気の導入管およびその開閉バルブを備える)に入れ、真空ポンプにより雰囲気圧を10torrとした。この時に要した時間は、30分間であった。そして、真空ポンプを停止後、バルブを開き、水蒸気(温度160℃、圧力5kg/cm2)を導入し、このまま1時間加熱焼結した後、冷却し、円柱状の多孔質体を得た。この多孔質体を切削旋盤により厚み200μmに切削して、ロール状に捲いた多孔性シートを作製した。この多孔性シートの空孔率は、55体積%であった。
【0027】
つぎに、この多孔性シートに対し、以下に示すようにして、スルホン化処理を行った。まず、密閉式ステンレス反応容器を準備した。この反応容器は、ロール状シートの繰り出し機構および引き取り機構と、シート導入窓および導出窓と、無水硫酸ガスと乾燥空気とを混合して導入するための導入口とを備える。また、この反応容器は、無水硫酸ガスを反応容器から回収する装置も有し、ブロワーにより、無水硫酸ガスが前記反応容器と配管との間を循環できるような構成になっている。そして、無水硫酸の貯蔵タンクを40℃に加熱してγ型無水硫酸ガスを発生させ、これと乾燥空気とを混合し(無水硫酸ガス濃度:20体積%)、ブロワーにより、前記反応容器内に送り込んだ。そして、前記繰り出し機構等により、UHPE多孔性シートを7段階の速度(0.05m/分、0.1m/分、0.25m/分、0.5m/分、1.0m/分、1.5m/分、2.0m/分)で前記容器内を通過させた。前記通過速度を変えることにより、無水硫酸ガスとUHPE多孔性シートとの接触時間を調整することができ、スルホン酸基の導入量を所定の範囲にすることができる。スルホン化処理前のUHPE多孔性シートは、白色であったが、スルホン化処理により褐色になった。また、このスルホン化処理により、UHPE多孔性シートの切断は起こらなかった。このようにして得られたUHPE多孔性シートにおいて、厚みは200μmであり、空孔率は55体積%であり、石鹸膜流量法による通気性は2.6×10-3cm3・cm/cm2・Pa・secであり、KCl透過性は3.0×10-6cm2/secであり、長手方向引張り強度は140kg/cm2であった。
【0028】
前記スルホン化処理した多孔性シートにおいて、前記7種類の通過速度に対応する部分から、それぞれ10×10cmの大きさに切り出したものをサンプルとした。このサンプルを、1リットルビーカー中のメタノールに浸漬して17時間放置した。その後、メタノールが含浸した状態で、前記サンプルをガラスビーカー中のイオン交換水中に入れ、マグネットスターラーで攪拌しながら5時間放置した。なお、この放置において、イオン交換水は、1時間おきに新しいものに交換した。そして、このサンプルをろ紙(No.2、アドバンテック東洋社製)で挟んだ状態で80℃の乾燥器に2時間入れて乾燥させた。乾燥したサンプルについて、前述の方法により、スルホン酸基1個当たりのエチレンモノマー単位数を求めた。この結果を、下記の表1に示す。なお、同表において、サンプル1から6までが実施例1であり、サンプル7が比較例1である。
【0029】
また、前述と同様にして洗浄した7種類のサンプル(1〜7)から、それぞれ短冊状に切り出したものをアルカリ二次電池用セパレータとした。そして、これをニッケル水素電池に組み込み、自己放電特性を調べた。自己放電特性は、初期充放電を5回繰り返した後の電池容量(A)に対する、満充電状態の電池を45℃で1週間放置後の電池容量(B)の比(B/A)で評価し、それをパーセント(%)で表した。この結果を下記の表1に示す。なお、アルカリ二次電池の分野において、前記電池容量比が70%以上の場合、自己放電特性が実用レベルであると評価される。
【0030】
Figure 0005137165
【0031】
前記表1から分かるように、本発明の所定割合でスルホン酸基を有する実施例1(サンプル1〜6)では、自己放電特性が全て70%以上であった。これに対し、スルホン酸基1個当たりのエチレンモノマー単位数が1100を超えた比較例1(サンプル7)では、自己放電特性が62.2%であり、実用レベルの自己放電特性ではなかった。
【0032】
また、実施例1(サンプル1〜6)および比較例1(サンプル7)について、以下の方法により耐アルカリ性および耐酸化性を評価した。
【0033】
(耐アルカリ性の評価方法)
サンプルを30重量%KOH水溶液中に浸漬して80℃の熱風循環式恒温槽中に一週間放置した後、前記サンプルを取り出してイオン交換水により3回洗浄した。これを80℃で15分間乾燥した後、その重量(Y1)を秤量下限0.01mgの電子天秤(以下、同じ)により測定した。そして、アルカリ水溶液に浸漬する前のサンプル重量(Y0)に対する浸漬後の重量(Y1)の割合[(Y1/Y0)×100]を、重量保持率(%)として表した。前記重量保持率は、100%に近いほど耐アルカリ性に優れると評価できる。前記サンプル1〜7についての耐アルカリ性の評価結果を下記表2に示す。
【0034】
(耐酸化性の評価方法)
サンプルを65℃の下記処理液Aに5分間浸漬し、これを水洗浄した後、80℃で15分間乾燥し、前記電子天秤によりサンプルの初期重量(Z0)を測定した。次に、前記サンプルを50℃の下記処理液Bに1時間浸漬した後、さらに65℃の前記処理液Aに5分間浸漬させた。そして、これを十分水洗浄してから80℃で15分間乾燥させ、その重量(Z1)を測定して前記初期重量(Z0)に対する割合[(Z1/Z0)×100]を、重量保持率(%)として求めた。前記重量保持率は、100%に近いほど耐酸化性に優れると評価できる。前記サンプル1〜7についての耐酸化性の評価結果を下記表2に併せて示す。
【0035】
(処理液A(水溶液))
シュウ酸2水和物 4.7 重量%
硫酸 0.85重量%
【0036】
(処理液B(水溶液))
過マンガン酸カリウム 4.0 重量%
水酸化カリウム 4.8 重量%
【0037】
Figure 0005137165
【0038】
前記表2に示すように、実施例1(サンプルNo.1〜6)は、優れた耐アルカリ性および耐酸化性を示した。
【0039】
(実施例2および比較例2)
円柱状多孔質体を膜厚95μmに切削する以外は、前記実施例1および比較例1と同様にしてスルホン化処理した多孔性シートを作製し、前述と同様に前記7種類の各通過速度に対応するサンプル8〜14を得た。そして、前記実施例1等と同様にして、スルホン酸基1個当たりのエチレンモノマー単位数および自己放電特性を調べた。この結果を下記表3に示す。なお、同表において、サンプル9〜13までが実施例2であり、サンプル8および14が比較例2である。
【0040】
Figure 0005137165
【0041】
前記表3から分かるように、本発明の所定割合でスルホン酸基を有する実施例2(サンプル9〜13)では、自己放電特性が全て70%以上であった。これに対し、スルホン酸基1個当たりのエチレンモノマー単位数が1100を超えた比較例(サンプル14)では、自己放電特性が63.5%であり、前記エチレンモノマー単位数が20未満の比較例(サンプル8)では、自己放電特性が65%であり、共に実用レベルの自己放電特性ではなかった。また、これらのサンプルについて、前記実施例1と同様にして耐アルカリ性および耐酸化性の評価を行なった結果、前記両項目において重量保持率は全て98%以上であり、優れた結果が得られた。このように、膜厚が100μm以下であっても、本発明によれば優れた特性を示すことが確認できた。
【0042】
(比較例3)
ポリプロピレン多孔性シート(商品名:セルガード、ヘキスト−セラニーズ社製、厚み30μm)を準備した。これは、ポリプロピレンをシート状に押出成形し、この成形物を一軸延伸して得られたものである。この多孔性シートについて、実施例1および比較例1と同様に、前記サンプル1〜7の条件で無水硫酸による気相スルホン化処理を行った。なお、前記反応容器へのシートの導入は、前記ポリプロピレン多孔性シートを7枚準備し、これら7枚の多孔性シートのそれぞれと実施例1で得られたUHPE多孔性シートとをヒートシールで接続し、前記UHPE多孔性シートを先導シートとして行った。
【0043】
前記サンプル1〜4の条件でのスルホン化処理では、反応槽に入った瞬間に、前記ポリプロピレン多孔性シートが切断して処理が不可能であった。また、前記サンプル5〜7の条件では、シートが切断されることなくスルホン化処理できたが、前記ポリプロピレン多孔性シートの劣化が著しく、引張強度が20kgf/cm2以下と大幅に低下しており、非常に脆かった。そして、前記サンプル7と同じ条件でスルホン化処理したポリプロピレン多孔性シートを、実施例1と同様に、ニッケル水素電池に組み込み、自己放電特性を評価しようとしたが、電池作製時に破断してしまい、電池が製作できなかった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、UHPE多孔性シートを用いたアルカリ二次電池用セパレータであって、前記UHPE多孔性シートが、エチレンモノマー単位数20〜1100個当たりにつき1個のスルホン酸基を有することにより、耐アルカリ性、耐酸化性および自己放電特性に優れ、しかも薄膜化が可能である。したがって、本発明のアルカリ二次電池用セパレータは、通常のアルカリ二次電池に好ましく使用できることはもちろん、高容量化が要求される電気自動車の駆動用電池に特に好ましく使用できる。

Claims (6)

  1. 超高分子量ポリエチレン粉末の焼結により得られた超高分子量ポリエチレン多孔性シートを用いたアルカリ二次電池用セパレータであって、前記超高分子量ポリエチレン多孔性シートが、エチレンモノマー単位数20〜1100個当たりにつき1個のスルホン酸基を有し、かつ、下記式で表す自己放電特性が70%以上であるアルカリ二次電池用セパレータ。
    自己放電特性(%)=(B/A)×100
    前記Aは、前記アルカリ二次電池用セパレータを組み込んだニッケル水素電池の初期充放電を5回繰り返した後の電池容量であり、
    前記Bは、満充電状態の前記電池を45℃で1週間放置した後の電池容量である。
  2. 厚みが50〜200μmである請求項1記載のアルカリ二次電池用セパレータ。
  3. 超高分子量ポリエチレン多孔性シートが、エチレンモノマー単位数100〜1100個当たりにつき1個のスルホン酸基を有する請求項1または2に記載のアルカリ二次電池用セパレータ。
  4. 超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が、50万〜1600万の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池用セパレータ。
  5. 超高分子量ポリエチレン多孔性シート100重量部に対し0を超え1重量部以下の範囲で界面活性剤を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池用セパレータ。
  6. その用途が、電気自動車用アルカリ二次電池用である請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ二次電池用セパレータ。
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