JP4781499B2 - 電池用セパレータの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池用セパレータおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ二次電池としては、ニッケルカドミウム電池が主流であったが、高容量で安全性が高く、しかもカドミウムを使用しないという理由から、ニッケル水素電池が、それに代わりつつある。特に、ニッケル水素電池は、円筒型や角型の小型二次電池として、携帯電話、ノートブック型パソコン等に汎用されている。また、ニッケル水素電池は、体積エネルギー密度が高いことから、電気自動車用電池や電力貯蔵用二次電池としての使用が期待されている。
【0003】
アルカリ二次電池に使用される電池用セパレータとしては、例えば、ナイロン等の親水性不織布、親水化処理されたポリオレフィン製不織布が、従来から使用されている。前記親水化処理としては、例えば、界面活性剤の含浸処理、親水性モノマーのグラフト重合処理、スルホン化処理、プラズマ処理などがある。
【0004】
アルカリ二次電池に使用される電池用セパレータは、電解液である強アルカリ水溶液に対する親和性を有し、その内部に前記電解液を充分に保有することが必要である。この特性を、電解液親和性という。また、電池用セパレータは、このように保有した前記電解液を、電池内部のアルカリ電解液中で安定に保持することが必要とされる。この特性を、保液安定性という。前記2つの不織布製の電池用セパレータは、繊維が絡まりあっている構造のため、平均孔径が比較的大きく、初期の電解液親和性は良いが、前記保液安定性が充分でない場合がある。この保液安定性が悪いと、サイクル試験における容量低下や、製造工程における性能のばらつきの増大などの問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、電解液親和性および保液安定性の双方の特性に優れる電池用セパレータの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の電池用セパレータは、超高分子量プラスチック多孔性シートを用いた電池用セパレータであって、前記多孔性シートが、エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方の基を有する重合体を有するという構成である。
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために、まず、電池用セパレータの形成材料を検討したところ、超高分子量プラスチック多孔性シートが、保液安定性に優れていることを突き止めた。しかし、前記多孔性シートは、初期の電解液親和性が充分でなかったため、これを解決するために一連の研究を行ったところ、前記重合体を付着させることにより、この問題を解決できることを見出し、本発明に至った。本発明の電池用セパレータは、アルカリ二次電池に好ましく使用できる。
【0008】
前記超高分子量プラスチック多孔性シートは、複数の超高分子量プラスチック粒子が相互に連結し、前記粒子間の空隙により多孔構造が形成されている多孔性シートであることが好ましい。また、前記超高分子量プラスチックは、超高分子量ポリエチレン(UHPE)であることが好ましく、特に好ましくは、粘度平均分子量が50万〜1600万のUHPEである。
【0009】
前記エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方の基を有する重合体としては、ポリエーテル、ポリビニルピロリドンが好ましく、これらは単独で用いても良く、併用してもよい。
【0010】
本発明において、前記超高分子量プラスチック多孔性シートは、前記重合体に加え、有機スルホン酸塩をも有することが好ましい。前記有機スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩が好ましく、これらは単独で用いても良く、併用してもよい。
【0011】
つぎに、本発明の電池用セパレータの製造方法は、超高分子量プラスチック粉末を、その融点以上の温度で加熱焼結し、この焼結体をシート状に成形して超高分子量プラスチック多孔性シートを製造し、この多孔性シートに、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンの少なくとも一方の溶液または分散液を含浸させた後、これを乾燥させるという方法である。この製造方法において、さらに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の溶液または分散液も前記超高分子量プラスチック多孔性シートに含浸させ、これを乾燥させる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の電池用セパレータ(本発明の製造方法により製造された電池用セパレータを、「本発明の電池用セパレータ」と呼ぶ)は、例えば、以下に示すようにして製造できる。
【0013】
まず、超高分子量プラスチック粉末を、その融点以上の温度で加熱焼結して焼結体を作製する。
【0014】
前記超高分子量プラスチック粉末の平均粒径は、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜180μmの範囲である。この平均粒径を変化させることにより、得られる多孔性シートの孔径を調整できる。
【0015】
前記超高分子量プラスチックとして好ましいのは、前述の様に、UHPEであるが、この他に、例えば、超高分子量ポリプロピレン、超高分子量ポリ塩化ビニル、超高分子量ポリアミド等がある。前記UHPEの粘度平均分子量は、約50万以上であり、前述のように、好ましい粘度平均分子量は50万〜1600万の範囲である。UHPEは、市販品を使用することができ、例えば、三井石油化学工業社製の商品名ハイゼックスミリオン、ヘキスト社製の商品名ホスタレンGUR等がある。前記超高分子量ポリプロピレンの粘度平均分子量は、例えば、約10万〜100万の範囲であり、その市販品としては、例えば、三井石油化学工業社製の商品名ハイボール等がある。前記超高分子量ポリ塩化ビニルの粘度平均分子量は、例えば、約10万〜100万の範囲であり、その市販品としては、信越化学工業社製の商品名TK2500シリーズ等がある。前記超高分子量ポリアミドの粘度平均分子量は、約1万〜10万の範囲であり、その市販品としては、例えば、ダイセル化学工業の商品名ダイアミド等がある。
【0016】
前記超高分子量プラスチック粉末の加熱焼結は、例えば、前記粉末を金型に充填し、この金型を熱風乾燥炉に入れ、その融点以上の温度で加熱することにより実施できる。前記加熱温度は、例えば、80〜250℃であり、加熱時間は、例えば、約4〜50時間である。この加熱焼結の際、前記超高分子量プラスチックが高温空気と接触することによる分子量の低下や機械的強度の低下を防止するために、前記金型を密閉系にして空気を遮断することが好ましい。この他に、前記超高分子量プラスチック粉末を保形具に充填し、これを減圧下に置き(好ましくは空気をほぼ排除した真空状態)、ここに前記融点以上に加熱された水蒸気を導入して加熱焼結してもよい。前記保形具は、水蒸気が侵入するために孔を有する必要があり、例えば、通常の金型に孔を多数穿孔するとともに、その内周面に耐熱多孔性シートを貼着したものが使用できる。前記耐熱多孔性シートとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン多孔性シートや金網シート等が使用できる。前記水蒸気による加熱温度は、例えば、80〜250℃の範囲であり、加熱時間は、例えば、4〜50時間の範囲である。
【0017】
つぎに、得られた焼結体を切削旋盤等で切削して多孔性シートを作製する。前記多孔性シートでは、複数の前記超高分子量プラスチック粒子が相互に連結し、前記粒子間の空隙により多孔構造が形成されている。前記多孔性シートの厚みは、例えば、0.1〜500μmの範囲であり、好ましくは1〜200μmの範囲である。
【0018】
つぎに、この多孔性シートに、前記エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方の基を有する重合体を付着させる。また、前記多孔性シートに、有機スルホン酸塩も付着させることが好ましい。
【0019】
前記重合体としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール等のポリエーテル若しくはその共重合体、ポリアセタール若しくはその共重合体、セルロース若しくはその共重合体、ポリビニルメチルエーテル若しくはその共重合体、ポリビニルホルマール若しくはその共重合体、ポリビニルブチラール若しくはその共重合体、ポリビニルピロリドン若しくはその共重合体が使用できる。これらの重合体若しくは共重合体の重量平均分子量は、例えば、1000〜10000000の範囲であり、好ましくは1000〜5000000の範囲である。これらの重合体若しくは共重合体のなかで、好ましいのは、前述のように、ポリエーテル若しくはその共重合体、ポリビニルピロリドン若しくはその共重合体であり、特に好ましくは、重量平均分子量10000〜5000000のポリエチレンオキサイド、重量平均分子量1000〜1000000のポリプロピレンオキサイド、重量平均分子量1000〜4000000のポリエチレングリコール、重量平均分子量10000〜5000000のポリビニルピロリドンである。
【0020】
前記有機スルホン酸塩としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカンジスルホン酸、アルカントリスルホン酸等の脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンジスルホン酸、アルキルベンゼントリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジナフタレンスルホン酸、アルキルトリナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、ポリビニルスルホン酸若しくはその共重合体、ポリスチレンスルホン酸若しくはその共重合体などのポリマースルホン酸のアルカリ金属塩等がある。前記脂肪族スルホン酸の脂肪鎖の炭素数は、例えば、1〜24個の範囲であり、好ましくは2〜18個の範囲である。前記芳香族スルホン酸における各アルキル基の炭素数は、例えば、1〜24個の範囲であり、好ましくは1〜18個の範囲である。また、前記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムがあるが、好ましいのは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどである。前記有機スルホン酸塩の中で、好ましいのは、前述のように、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩であり、特に好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜18の範囲のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩またはカリウム塩、アルキル基の炭素数が1〜18の範囲のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩またはカリウム塩であり、最適には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩またはカリウム塩、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩またはカリウム塩等である。
【0021】
前記エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方を有する重合体の前記多孔性シートに付着する量は、特に制限されず、前記多孔性シートの通気性が低下しない範囲であれば、多いことが好ましい。例えば、多孔性シート100重量部に対し、前記重合体が0.1〜50重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜20重量部の範囲である。この重合体の付着量は、例えば、その付着処理前後の前記多孔性シートの重量を測定してその差をとることにより測定できる。また、前記有機スルホン酸塩は、本発明において任意成分であるが、前記多孔性シートに対する付着量は、例えば、前記多孔性シート100重量部に対し、前記有機スルホン酸塩が0.1〜20重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。この付着量も、例えば、前述の方法で測定できる。
【0022】
前記付着処理は、例えば、前記エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方の基を有する重合体の溶液若しくは分散液を調製し、この液を前記多孔性シートに含浸させ、その後乾燥すればよい。前記含浸の方法としては、前記溶液若しくは分散液に前記多孔性シートを浸漬する方法、前記溶液若しくは分散液を前記多孔性シートに塗布する方法、前記溶液若しくは分散液を前記多孔性シートに噴霧する方法などがある。この含浸処理は、前記溶液等が前記多孔性シートの孔内部まで充分に浸透するように行うことが好ましい。前記溶液若しくは分散液中の前記重合体の濃度は、前記付着量が達成できる範囲であり、例えば、0.1〜20重量%の範囲である。また、前記溶液若しくは分散液の溶媒は、特に制限されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロエタン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の親水性の溶媒が使用できる。また、前記有機スルホン酸塩を付着させる場合は、これも前記重合体の溶液若しくは分散液に配合して溶解若しくは分散させることが好ましく、その時の濃度は、例えば、0.1〜10重量%の範囲である。なお、別途、前記有機スルホン酸塩の溶液若しくは分散液を調製して、これを前記多孔性シートに含浸させてもよい。その時の溶媒は、前記重合体に使用するものと同様である。
【0023】
前記含浸処理後、前記多孔性シートを乾燥させるが、これは自然乾燥でも熱風を吹き付ける等の強制乾燥のいずれでもよい。この付着処理により、前記多孔性シートの表面(孔内部を含む)に、前記重合体(必要に応じ前記有機スルホン酸塩)が付着し、場合によってはその皮膜が形成され、本発明の電池用セパレータが製造できる。なお、本発明において、前記多孔性シートは、超高分子量プラスチックが主要成分であるが、この機能を阻害しない限り、その他の成分や添加剤を含んでいても良い。
【0024】
本発明の電池用セパレータにおいて、例えば、気孔率は10〜90体積%の範囲、通気性(石鹸膜流量法)は1×10-4〜1×10-2(cm3・cm)/(cm2・Pa・sec)の範囲、電解液親和性は200〜500mg・cm-3の範囲、保液安定性は、50〜100%の範囲、好ましくは、気孔率は20〜90体積%の範囲、通気性(石鹸膜流量法)は5×10-4〜1×10-2(cm3・cm)/(cm2・Pa・sec)の範囲、電解液親和性は210〜400mg・cm-3の範囲、保液安定性は、60〜100%の範囲である。なお、前記諸特性は、下記の方法により測定できる。
【0025】
(気孔率)
電池用セパレータの片面の面積S、厚みdおよび重量mと、その形成材料(超高分子量プラスチック等)の比重rとから、下記の式(数1)により算出する。
【0026】
(数1)
気孔率(体積%)=[1−((m/r)×(S/d))]×100
【0027】
(通気性)
通気性は、12.7mmH2Oの圧力下で電池用セパレータを透過した酸素の透過量を石鹸膜流量法により測定する。図1に、前記石鹸膜流量法に用いる測定装置の一例の概略を示す。
【0028】
図示のように、この装置は、目盛付きガラス管5、石鹸液供給部3、サンプル取り付け部2および酸素供給用のパイプ7を備える。目盛り付きガラス管5の下端と石鹸液供給3の上端とは、パイプ9を介して接続されており、またパイプ9の途中からパイプ8が分岐している。このパイプ8とパイプ7の一端とが、サンプル取り付け部2を介して接続されている。サンプル取り付け部2は、二つの部材から構成されており、これらでサンプル(電池用セパレータ1)を挟持する。この際、サンプル取り付け部2から酸素が漏出しないようにパッキン(図示せず)を使用する。また、パイプ7の他端から、酸素が導入され、このパイプ7の途中には圧力計6が配置されている。石鹸液供給部3は、ゴム材から形成されており、その内部には石鹸液4が入っている。前記石鹸液は、特に制限されず、例えば、Nupro Company社製の商品名Snoop等の界面活性剤溶液等が使用できる。石鹸液の濃度は、特に制限されないが、前記市販品を使用する場合は、原液をそのまま使用する。
【0029】
この装置を用いた石鹸膜流量法による測定方法は、つぎのようにして実施される。まず、電池用セパレータ1をサンプル取り付け部2に取り付ける。そして、矢印Aで示すように、酸素ガスボンベ等によりパイプ7の他端から12.7mmH2Oの圧力で酸素を導入する。導入された酸素は、電池用セパレータ1を通過し、パイプ8およびパイプ9を通って目盛り付きガラス管5に送られる。一方、このように酸素を供給しながら、石鹸液供給部3を圧縮して石鹸液4を目盛り付きガラス管5に送り込み石鹸膜を発生させる。この石鹸膜が、電池用セパレータ1を通過した酸素によって目盛付きガラス管5内を移動する。この移動速度から酸素の透過速度を求める。なお、この時の電池用セパレータ1の酸素透過面積(有効面積)は1.23cm2であり、この通気性の単位は、(cm3・cm)/(cm2・Pa・sec)である。
【0030】
(電解液親和性)
電池用セパレータを5×5cmの正方形にカットしてこれをテスト用サンプルとし、その重量(初期サンプル重量)を測定する。このサンプルを、室温条件下、吸引瓶内の7.2mol/1000ml濃度のKOH水溶液に浸漬する。そして、前記吸引瓶内を水流で20分間以上減圧して、孔の内部までKOH水溶液を充分に浸透させる。その後、前記サンプルをKOH水溶液から引き上げ、2つのろ紙(厚み250μm,アドバンテック社製、No.131)で挟み、この状態で、遠心力30Gで10分間遠心処理する。遠心分離機は、例えば、コクサン社製、H−900型を使用できる。この遠心処理後のサンプルの重量を測定する。この遠心処理後のサンプル重量(W1)、前記初期サンプル重量(W0)およびサンプル体積(V)から、電解液親和性(R0)を、下記の式(数2)から算出する。電解液親和性の単位は、mg・cm-3である。
【0031】
(数2)
R0=(W1―W0)/V
R0:電解液親和性(mg・cm-3)
W0:初期サンプル重量(mg)
W1:遠心処理後のサンプル重量(mg)
V:サンプル体積(cm3)
【0032】
(保液安定性)
電池用セパレータを5×5cmの正方形にカットしてこれをテスト用サンプルとし、その重量(初期サンプル重量)を測定する。このサンプルを、80℃の条件下、密閉容器中の7.2mol/1000ml濃度のKOH水溶液に7日間浸漬する。その後、前記サンプルをKOH水溶液から引き上げ、2つのろ紙(厚み250μm,アドバンテック社製、No.131)で挟んでサンプル表面のKOH水溶液を拭き取った後、再度、新たな前記2つのろ紙で挟み、この状態で、遠心力30Gで10分間遠心処理する。遠心分離機は、例えば、コクサン社製、H−900型を使用できる。この遠心処理後のサンプルの重量を測定する。そして、下記の式(数3)に示すように、前記KOH水溶液7日間浸漬後の電解液親和性を算出し、これから保液安定性(Rx)を算出する。保液安定性(Rx)の単位はパーセント(%)である。
【0033】
(数3)
Rx(%)=(R1/R0)×100
R1=(W2−W0)/V
Rx:保液安定性(%)
R1:前記KOH水溶液7日間浸漬後の電解液親和性(mg・cm-3)
R0:前記式(数2)による電解液親和性(mg・cm-3)
W0:初期サンプル重量(mg)
W2:遠心処理後のサンプル重量(mg)
V:サンプル体積(cm3)
【0034】
【実施例】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0035】
(実施例1)
UHPE粉末a(粘度平均分子量400万、平均粒径130μm、メッシュ分級品)2.0kgとUHPE粉末b(粘度平均分子量750万、平均粒径120μm、メッシュ分級品)2.0kgとをヘンシルミキサーで混合し、これを保形具に充填した。この保形具は、円筒状金型と、この底部に配置される固定用金型とからなる。前記円筒状金型は、多数の孔を有し、またその内周面にはポリテトラフルオロエチレン多孔性シートが貼着されている。前記保形具を、金属製耐熱耐圧容器(水蒸気の導入管およびその開閉バルブを備える)に入れ、真空ポンプにより、内部雰囲気を1.3kPaとした。これに要した時間は30分間であった。前記真空ポンプを停止後、前記バルブを開き、水蒸気(温度145℃、圧力0.4MPa)を前記金属製耐熱耐圧容器に導入し、このまま1時間加熱焼結した後、冷却し、円柱状の多孔質体を得た。この多孔質体を切削旋盤で切削し、厚み193μm、気孔率64体積%のUHPE多孔性シートを得た。この多孔性シートを、ポリエチレングリコール(重量平均分子量20000、和光純薬社製、以下同じ)の水溶液(濃度2.5重量%)に10分間浸漬し、その後引き上げて80℃で15分間の乾燥処理を行い、電池用セパレータを製造した。この電池用セパレータについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同じ方法でUHPE多孔性シートを作製した。この多孔性シートを、2.5重量%のポリエチレングリコールと5.0重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩との混合水溶液に10分間浸漬し、その後引き上げて80℃で15分間の乾燥処理を行い、電池用セパレータを製造した。この電池用セパレータについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同じ方法でUHPE多孔性シートを作製した。この多孔性シートを、2.5重量%のポリビニルピロリドン(重量平均分子量40000、和光純薬社製)と5.0重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩との混合水溶液に10分間浸漬し、その後引き上げて80℃で15分間の乾燥処理を行い、電池用セパレータを製造した。この電池用セパレータについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同じ方法でUHPE多孔性シートを作製した。この多孔性シートについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0039】
(比較例2)
実施例1と同じ方法でUHPE多孔性シートを作製した。この多孔性シートを、5.0重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液に10分間浸漬し、その後引き上げて80℃で15分間の乾燥処理を行った。この多孔性シートについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0040】
(比較例3)
市販のニッケル水素電池を放電した後分解し、中から不織布製の電池用セパレータを取り出し、水洗浄を充分に行った後、乾燥させた。この電池用セパレータについて、電解液親和性、保液安定性および通気性(石鹸膜流量法)を調べた。その結果を、下記の表1に示す。
【0041】
【0042】
前記表1から実施例1、2および3の電池用セパレータは、電解液親和性、保液安定性および通気性の全てに優れていた。これに対し、比較例1の多孔性シートは、KOH水溶液をはじいてしまい、電解液親和性および保液安定性の測定ができなかった。比較例2の多孔性シートは、電解液親和性が低く、保液安定性も実施例と比較したらやや劣っていた。比較例3の不織布製電池用セパレータは、保液安定性が低かった。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電池用セパレータは、超高分子量プラスチック多孔性シートを用いた電池用セパレータであって、前記多孔性シートが、エーテル基およびカルボニル基の少なくとも一方の基を有する重合体を有することにより、電解液親和性および保液安定性の双方の特性に優れる。したがって、本発明の電池用セパレータは、例えば、アルカリ二次電池、特に電気自動車用電池や電力貯蔵用二次電池等の大型アルカリ二次電池に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通気性の測定に使用する装置の一例の概略図である。
【符号の説明】
1 電池用セパレータ
2 サンプル取り付け部
3 石鹸液供給部
4 石鹸液
5 目盛り付きガラス管
6 圧力計
7、8、9 パイプ
Claims (5)
- 超高分子量プラスチック粉末を、その融点以上の温度で加熱焼結し、この焼結体をシート状に成形して超高分子量プラスチック多孔性シートを製造し、この多孔性シートに、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンの少なくとも一方の溶液または分散液を含浸させ、さらに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の溶液または分散液を前記超高分子量プラスチック多孔性シートに含浸させた後、これを乾燥させる電池用セパレータの製造方法。
- 超高分子量プラスチックが、超高分子量ポリエチレンである請求項1に記載の電池用セパレータの製造方法。
- 超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が、50万〜1600万の範囲である請求項2記載の電池用セパレータの製造方法。
- 超高分子量プラスチック多孔性シートが、複数の超高分子量プラスチック粒子が相互に連結し、前記粒子間の空隙により多孔構造が形成されている多孔性シートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用セパレータの製造方法。
- 前記電池用セパレータが、アルカリ二次電池用セパレータである請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池用セパレータの製造方法。
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