JP2015101775A - アルカリ水電解用隔膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一般的にアルカリ水電解に用いられるイオン透過性隔膜に要求される特性(すなわち、(1)イオンの透過性があること、(2)アルカリ水に対して機械的強度および化学的安定性、(3)隔膜を通じてガスの通過がないこと、ならびに(4)電極間での短絡防止性があることが備わっていること)に優れ、かつ、電解時に電極で生成したガスが隔膜表面(最外面)に付着することによる電圧上昇を抑制し得るアルカリ水電解用隔膜の製造方法を提供すること。【解決手段】本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、微多孔膜を備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、アルカリ水電解用隔膜の製造方法に関する。
従来、化石燃料を中心としたエネルギー構図が構築されているが、化石燃料は限りある資源であることに加えて産出可能な地域が限定されているため、今後のエネルギー事情を考慮すると、自然エネルギー利用の必要性が高まっている。また、自然エネルギーを利用した発電は、必要な時に必ずしも発電が行えず、得られた電力を一時的に蓄える蓄電の重要性が高まっている。この蓄電の方法のひとつとして、2次電池を用いる方法が挙げられるが、2次電池の大容量化は高コストとなる問題がある。このような背景から、水を電気分解して、電力を水素に変換して貯蔵する方法が、水素を高効率で電気に再変換出来る燃料電池の技術進歩と相まって、注目されている。水素の工業的製造方法として、高分子電解質を用いた水電解法が挙げられるが、これは白金のような貴金属を触媒として使用するため、コストが高くなる問題がある。そこで、アルカリ水電解法が、高価な貴金属触媒を使用することなく、安価に安定して水素を得られる方法として期待されている。
アルカリ水電解用の隔膜には、アスベスト布やセラミック多孔膜などが知られている。しかし、アスベスト布は100℃以上での耐久性に問題があり、健康被害の問題もある。セラミック多孔膜は、加工時に非常な高温処理の工程を要するという問題があり、厚みが厚く高抵抗となる問題もある。また、アルカリ水電解法に用いられる隔膜として、親水性無機材料を含有するアルカリ水電解用隔膜が提案されている(特許文献1)。このアルカリ水電解用隔膜は、大量に添加された親水性無機材料の濡れ性に基づき水への濡れ性を示し、多孔質であるためイオン透過性を有する。しかし、マトリックスとなっている高分子材料は本質的に疎水性であるためアルカリ水に対する濡れ性が不十分であるという問題があり、アルカリ水を電解液とする電解において、電気抵抗特性および電解性能が不十分であるという問題がある。また、電解時に電極で生成したガスが隔膜に付着することによる電圧上昇が問題となる。
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一般的にアルカリ水電解に用いられるイオン透過性隔膜に要求される特性(すなわち、(1)イオンの透過性があること、(2)アルカリ水に対して機械的強度および化学的安定性、(3)隔膜を通じてガスの通過がないこと、ならびに(4)電極間での短絡防止性があることが備わっていること)に優れ、かつ、電解時に電極で生成したガスが隔膜表面(最外面)に付着することによる電圧上昇を抑制し得るアルカリ水電解用隔膜の製造方法を提供することにある。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、微多孔膜を備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、微多孔膜と、該微多孔膜の片側または両側に配置された多孔性補強体とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜および該多孔性補強体の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、多孔性補強体と、該多孔性補強体の両側に配置された微多孔膜とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることを含む。
1つの実施形態においては、上記微多孔膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンから構成されている。
1つの実施形態においては、上記多孔性補強体が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリフェニレンサルファイドから構成されている。
本発明の別の局面によれば、アルカリ水電解用隔膜が提供される。このアルカリ水電解用隔膜は、上記製造方法により製造される。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、微多孔膜と、該微多孔膜の片側または両側に配置された多孔性補強体とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜および該多孔性補強体の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、多孔性補強体と、該多孔性補強体の両側に配置された微多孔膜とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることを含む。
1つの実施形態においては、上記微多孔膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンから構成されている。
1つの実施形態においては、上記多孔性補強体が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリフェニレンサルファイドから構成されている。
本発明の別の局面によれば、アルカリ水電解用隔膜が提供される。このアルカリ水電解用隔膜は、上記製造方法により製造される。
本発明によれば、微多孔膜に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることにより、アルカリ水に対して優れた濡れ性を示し、その結果、アルカリ水電解において、イオン透過性に優れ(すなわち、電解電圧の低下に寄与し得)、かつ、電解時に生成したガスが隔膜の最外面に付着することを防止して電解電圧上昇を抑制し得るアルカリ水電解用隔膜を製造することができる。また、本発明の製造方法により得られたアルカリ水電解用隔膜は、高濃度のアルカリ水中でも経時の耐久性に優れ、アルカリ水に対する濡れ性を失うことなく、電気抵抗の増大(電解電圧の上昇)を抑制することができる。本発明の製造方法においては、エアロゾルデポジション法を用いることにより、上記金属酸化物を強固に付着させることができ、その結果、得られたアルカリ水電解用隔膜においては、上記の効果が顕著となる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.アルカリ水電解用隔膜の全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態によるアルカリ水電解用隔膜の概略断面図である。図1(a)に示すアルカリ水電解用隔膜100は、微多孔膜10を備える。微多孔膜10には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。図1(b)〜(d)は、本発明の別の好ましい実施形態によるアルカリ水電解用隔膜の概略断面図である。図1(b)に示すアルカリ水電解用隔膜200は、微多孔膜10の片側に多孔性補強体30をさらに備える。図1(c)に示すアルカリ水電解用隔膜300は、微多孔膜10の両側に多孔性補強体30、30をさらに備える。本発明において、多孔性補強体30は、図1(b)に示すように微多孔膜10の片側に配置されていてもよく、図1(c)に示すように微多孔膜10の両側に配置されていてもよい。また、多孔性補強体30が微多孔膜10の片側に配置される場合、本発明のアルカリ水電解用隔膜200は、微多孔膜10をアノード電極側に配置して用いてもよく、カソード電極側に配置して用いてもよい。本発明のアルカリ水電解用隔膜が多孔性補強体を備え、かつ、多孔性補強体がアルカリ水電解用隔膜の外側に位置する場合(図1(b)および(d)に示す形態の場合)、上記金属酸化物は、好ましくは微多孔膜および多孔性補強体に付着している。図1(d)に示すアルカリ水電解用膈膜400は、多孔性補強体30と、多孔性補強体30の両側に配置された微多孔膜10とを備える。この場合においても、微多孔膜10には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。
A.アルカリ水電解用隔膜の全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態によるアルカリ水電解用隔膜の概略断面図である。図1(a)に示すアルカリ水電解用隔膜100は、微多孔膜10を備える。微多孔膜10には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。図1(b)〜(d)は、本発明の別の好ましい実施形態によるアルカリ水電解用隔膜の概略断面図である。図1(b)に示すアルカリ水電解用隔膜200は、微多孔膜10の片側に多孔性補強体30をさらに備える。図1(c)に示すアルカリ水電解用隔膜300は、微多孔膜10の両側に多孔性補強体30、30をさらに備える。本発明において、多孔性補強体30は、図1(b)に示すように微多孔膜10の片側に配置されていてもよく、図1(c)に示すように微多孔膜10の両側に配置されていてもよい。また、多孔性補強体30が微多孔膜10の片側に配置される場合、本発明のアルカリ水電解用隔膜200は、微多孔膜10をアノード電極側に配置して用いてもよく、カソード電極側に配置して用いてもよい。本発明のアルカリ水電解用隔膜が多孔性補強体を備え、かつ、多孔性補強体がアルカリ水電解用隔膜の外側に位置する場合(図1(b)および(d)に示す形態の場合)、上記金属酸化物は、好ましくは微多孔膜および多孔性補強体に付着している。図1(d)に示すアルカリ水電解用膈膜400は、多孔性補強体30と、多孔性補強体30の両側に配置された微多孔膜10とを備える。この場合においても、微多孔膜10には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、上記のように酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が、少なくとも微多孔膜に付着していることにより、アルカリ水に対する濡れ性に優れる。また、本発明のアルカリ水電解用膈膜においては、この濡れ性が長期間にわたり維持される。また、アルカリ水電解用隔膜をアルカリ水電解に用いた場合、抵抗源であるガス(具体的には、電解時に発生したガス)が隔膜の最外面に付着することを防止して、電解電圧を低くすることができ、また、電圧変動が少なく、不要な電圧上昇を抑制することができる。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、好ましくは濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す。なお、本明細書において、「水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す」とは、アルカリ水電解用隔膜を温度80℃/濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液中に100時間浸漬させた場合にも、濡れ性が失われないことをいう。具体的には、上記のように水酸化カリウム水溶液中に浸漬させた後のアルカリ水電解用隔膜の最外面に濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を滴下した際に、滴下した水酸化カリウム水溶液が反対側の面にまで到る場合、該アルカリ水電解用隔膜を「水酸化カリウム水溶液に対して濡れ性を示す」アルカリ水電解用隔膜という。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みは、好ましくは15μm〜1500μmであり、より好ましくは35μm〜1000μmであり、さらに好ましくは55μm〜600μmであり、特に好ましくは80μm〜400μmである。
B.微多孔膜
上記微多孔膜とは、1.0μm以下の平均孔径を有する膜をいう。上記微多孔膜の平均孔径は、好ましくは0.02μm〜1.0μmであり、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。生成ガスの分離性能に優れ、かつ、イオン透過性に優れるアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。微多孔膜の平均孔径は、ASTM F316−86の規定に準拠して測定できる。例えば、当該規定に準拠した自動測定が可能な市販の測定装置(米国Porous Material Inc.より入手可能なPerm−Porometerなど)を、微多孔膜の平均孔径の測定に利用できる。
上記微多孔膜とは、1.0μm以下の平均孔径を有する膜をいう。上記微多孔膜の平均孔径は、好ましくは0.02μm〜1.0μmであり、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。生成ガスの分離性能に優れ、かつ、イオン透過性に優れるアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。微多孔膜の平均孔径は、ASTM F316−86の規定に準拠して測定できる。例えば、当該規定に準拠した自動測定が可能な市販の測定装置(米国Porous Material Inc.より入手可能なPerm−Porometerなど)を、微多孔膜の平均孔径の測定に利用できる。
上記微多孔膜の厚みは、好ましくは10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜150μmである。このような範囲であれば、生成ガスの分離性能に優れ、かつ、イオン透過性に優れるアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。
上記微多孔膜の気孔率は、好ましくは10%〜90%であり、より好ましくは30%〜85%であり、さらに好ましくは50%〜85%である。気孔率が10%より低い場合、イオン透過抵抗が大きくなるおそれがある。気孔率が90%より高い場合、膜の強度が不足して膜が潰れ、イオン透過抵抗の増大を引き起こすおそれがある。膜強度が許容する範囲で気孔率は高い方が、イオン透過抵抗を低くする事が出来るために好ましい。なお、本明細書において、微多孔膜の気孔率とは、{1−(微多孔膜の見掛け密度/微多孔膜を構成する材料の真比重)}×100の式で算出される値をいう。
上記微多孔膜を構成する材料としては、高温の強アルカリ性水溶液中、高電位が加わる条件下で、アルカリ水電解用隔膜として十分な化学的安定性を有し、十分な機械強度を維持し得る材料が好ましく用いられる。より具体的には、濃度10重量%〜40重量%/温度60℃〜100℃の水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液中、1.5V〜3Vの電位が加わる条件下で、アルカリ水電解用隔膜として十分な化学的安定性を有し、十分な機械強度を維持し得る材料が好ましく用いられる。このような材料としては、例えば、フッ素系高分子、オレフィン系高分子、芳香族炭化水素系高分子等が挙げられる。
上記フッ素系高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンである。化学的安定性に優れるからである。
上記オレフィン系高分子としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1、およびこれらの化合物を構成する繰り返し単位を有する共重合体等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1である。化学的安定性に優れるからである。超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は好ましくは50万〜1000万であり、より好ましくは100万〜700万である。なお、上記粘度平均分子量は、ASTMD4020に規定の粘度法により測定することができる。
上記芳香族炭化水素系高分子としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリーレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、およびこれらの化合物を構成する繰り返し単位を有する共重合体等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンである。化学的安定性に優れるからである。
上記微多孔膜は、上記材料を任意の適切な方法で多孔質化して得られる。多孔質化する方法としては、例えば、相転換法(ミクロ相分離法)、抽出法、延伸法、湿式ゲル延伸法等が挙げられる。相転換法(ミクロ相分離法)とは、高分子材料を良溶媒に溶解して得られた溶液により製膜し、これを貧溶媒中で凝固する方法である。抽出法とは、高分子材料に炭酸カルシウムなどの無機粉体を混練して製膜し、製膜後に、該無機粉体を溶解抽出し、必要に応じてさらに延伸する方法である。延伸法とは、所定の結晶構造を有する高分子材料によりフィルムを形成した後、所定の条件で延伸する方法である。湿式ゲル延伸法とは、超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物を流動パラフィンで熱膨潤させてゲル状シートとし、これを2軸延伸したのち流動パラフィンを抽出除去する方法である。
C.金属酸化物
上記微多孔膜には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。図2は、本発明の1つの実施形態において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す模式図である。図2(a)は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が、微多孔膜20から構成される場合において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す。図2(b)は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が、多孔性補強体30と該多孔性補強体30の両側に配置された微多孔膜20とから構成される場合において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す。本明細書において、微多孔膜の表面とは、金属酸化物が付着していない場合における、微多孔膜10を構成する材料と空気との界面をいう。言い換えれば、本明細書において、微多孔膜の表面とは、該微多孔膜の外側の面(外表面)、および微多孔膜の孔を起因として形成されている内側の表面(内表面)の総称である。すなわち、本発明において、金属酸化物20は、微多孔膜10の外表面および内表面に付着して存在し得る。1つの実施形態においては、上記のように孔径の小さい微多孔膜を用い、そのため、金属酸化物は、微多孔膜10の内側深部までは入り込まず、外表面近傍(図2に示す形態においては、アルカリ水電解用隔膜の外側近傍)にのみに付着している。上記金属酸化物は、微多孔膜の外表面の全部を覆うように付着していてもよく、外表面の一部を覆うように付着していてもよい。
上記微多孔膜には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。図2は、本発明の1つの実施形態において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す模式図である。図2(a)は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が、微多孔膜20から構成される場合において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す。図2(b)は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が、多孔性補強体30と該多孔性補強体30の両側に配置された微多孔膜20とから構成される場合において、微多孔膜に金属酸化物が付着している様子を示す。本明細書において、微多孔膜の表面とは、金属酸化物が付着していない場合における、微多孔膜10を構成する材料と空気との界面をいう。言い換えれば、本明細書において、微多孔膜の表面とは、該微多孔膜の外側の面(外表面)、および微多孔膜の孔を起因として形成されている内側の表面(内表面)の総称である。すなわち、本発明において、金属酸化物20は、微多孔膜10の外表面および内表面に付着して存在し得る。1つの実施形態においては、上記のように孔径の小さい微多孔膜を用い、そのため、金属酸化物は、微多孔膜10の内側深部までは入り込まず、外表面近傍(図2に示す形態においては、アルカリ水電解用隔膜の外側近傍)にのみに付着している。上記金属酸化物は、微多孔膜の外表面の全部を覆うように付着していてもよく、外表面の一部を覆うように付着していてもよい。
上記金属酸化物の付着率は、例えば、0.1%〜100%である。付着率が低すぎる場合、アルカリ水に対する濡れ性が不十分となるおそれがある。付着率が高すぎる場合、金属酸化物が微多孔膜の孔を塞ぎイオンの透過性が低下するおそれがある。なお、本明細書において、付着率とは、微多孔膜の重量(後述のように多孔性補強体を有する場合は、微多孔膜と多孔性補強体との合計重量)に対する金属酸化物の重量割合をいい、具体的には、(金属酸化物付着後の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量−金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)/(金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)の式で算出される値をいう。
図2に示すように、微多孔膜がアルカリ水電解用隔膜の外側に位置する場合、金属酸化物の付着厚みは、好ましくは0.01μm〜20μmであり、より好ましくは0.1μm〜10μmである。
D.多孔性補強体
上記のとおり、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、多孔性補強体をさらに備え得る。多孔性補強体により微多孔膜を補強することにより、電解用隔膜としての強度を向上させ、かつ、電極間での短絡防止性を向上させることができる。具体的には、アルカリ水電解において、印加電圧を下げるために隔膜/電極間のギャップを実質的に無くす場合、一般に、電極の凹凸により、隔膜の損傷および短絡が生じやすくなるが、本発明においては、上記のように多孔性補強体を備えることにより、損傷および短絡の生じ難いアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。また、多孔性補強体は、多孔性であるため、イオン透過性を阻害することなく上記効果を発現し得る。さらに、多孔性補強体を備えることで強度が向上し、薄膜化しても、十分な強度を有するアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。なお、上記多孔性補強体は、微多孔膜に比べて孔径の大きい孔を有する。多孔性補強体の平均孔径は、好ましくは1.0μmより大きく、より好ましくは1.0μm〜5000μmである。
上記のとおり、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、多孔性補強体をさらに備え得る。多孔性補強体により微多孔膜を補強することにより、電解用隔膜としての強度を向上させ、かつ、電極間での短絡防止性を向上させることができる。具体的には、アルカリ水電解において、印加電圧を下げるために隔膜/電極間のギャップを実質的に無くす場合、一般に、電極の凹凸により、隔膜の損傷および短絡が生じやすくなるが、本発明においては、上記のように多孔性補強体を備えることにより、損傷および短絡の生じ難いアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。また、多孔性補強体は、多孔性であるため、イオン透過性を阻害することなく上記効果を発現し得る。さらに、多孔性補強体を備えることで強度が向上し、薄膜化しても、十分な強度を有するアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。なお、上記多孔性補強体は、微多孔膜に比べて孔径の大きい孔を有する。多孔性補強体の平均孔径は、好ましくは1.0μmより大きく、より好ましくは1.0μm〜5000μmである。
上記多孔性補強体を構成する材料としては、強度に優れ、かつ、アルカリ水に対して機械的耐久性および化学的耐久性を有する高分子が好ましく用いられる。上記多孔性補強体を構成する材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
上記多孔性補強体は、多孔性である。上記多孔性補強体の形態としては、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュ、焼結多孔膜等が挙げられる。好ましくは不織布、メッシュまたは焼結多孔膜であり、より好ましくは、焼結多孔膜である。焼結多孔膜であれば、強度およびイオン透過性に優れる。焼結多孔膜を得る方法としては、例えば、特開平2−214647号公報に記載された焼結法が挙げられる。
上記多孔性補強体の厚みは、好ましくは30μm〜800μmであり、より好ましくは50μm〜500μmである。このような範囲の厚みを有する多孔性補強体であれば、補強体として十分な強度を有し、十分なイオン透過性を有し、かつ、電極の短絡を防止することができる。
上記多孔性補強体の形態が焼結多孔質膜の場合、上記多孔性補強体の気孔率は、好ましくは10%〜80%であり、より好ましくは20%〜60%である。気孔率が10%より低い場合、イオン透過抵抗が大きくなるおそれがある。気孔率が80%より高い場合、強度が不足するおそれがある。
1つの実施形態においては、上記多孔性補強体には、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着している。より具体的には、上記アルカリ水電解用隔膜の外側に多孔性補強体を備える場合、該多孔性補強体には、上記金属酸化物が付着していることが好ましい。図3は、本発明の1つの実施形態において、多孔性補強体の表面に金属酸化物が付着している様子を示す模式図である。図3(a)は、多孔性補強体30が、微多孔膜20の片側に配置される場合において、多孔性補強体の表面に金属酸化物が付着している様子を示す。図3(b)は、多孔性補強体30が、微多孔膜20の両側に配置される場合において、多孔性補強体の表面に金属酸化物が付着している様子を示す。本明細書において、多孔性補強体30の表面とは、金属酸化物が付着していない場合における、多孔性補強体30を構成する材料と空気との界面をいう。言い換えれば、本明細書において、多孔性補強体の表面とは、該多孔性補強体の外側の面(外表面)、および多孔性補強体の孔を起因として形成されている内側の表面(内表面)の総称である。すなわち、本発明において、金属酸化物20は、多孔性補強体30の外表面および内表面に付着して存在し得る。例えば、図3(a)および(b)に示すように、多孔性補強体30が、アルカリ水電解用隔膜の外側に配置される場合、金属酸化物20は、多孔性補強体30の外表面および内表面に付着し得る。また、多孔性補強体30が、アルカリ水電解用隔膜の外側に配置される場合、該金属酸化物20は、多孔性補強体30の孔を通過して、微多孔膜10に付着する。上記金属酸化物は、多孔性補強体の表面全部を覆うように付着していてもよく、表面の一部を覆うようにして付着していてもよい。
図3に示すように、多孔性補強体がアルカリ水電解用隔膜の外側に位置する場合、金属酸化物の付着厚みは、好ましくは0.01μm〜150μmであり、より好ましくは0.1μm〜50μmである。
E.アルカリ水電解用隔膜の製造方法
本発明の製造方法は、エアロゾルデポジション法により、基材としての微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。
本発明の製造方法は、エアロゾルデポジション法により、基材としての微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が付着させることを含む。
1つの実施形態においては、本発明の製造方法は、微多孔膜から構成されるアルカリ水電解用隔膜(図1(a)に示すアルカリ水電解用隔膜)の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面(好ましくは外表面)に上記金属酸化物を付着させることを含む。別の実施形態においては、本発明の製造方法は、微多孔膜と、該微多孔膜の片側または両側に配置された多孔性補強体とを備えるアルカリ水電解用隔膜(図1(b)または(c)に示すアルカリ水電解用隔膜)の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、微多孔膜の表面(好ましくは外表面)および多孔性補強体の表面に、上記金属酸化物を付着させることを含む。さらに別の実施形態においては、本発明の製造方法は、多孔性補強体と、該多孔性補強体の両側に配置された微多孔膜とを備えるアルカリ水電解用隔膜(図1(d)に示すアルカリ水電解用隔膜)の製造方法であって、エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面(好ましくは外表面)に上記金属酸化物を付着させることを含む。
本発明においては、エアロゾルデポジション法を用いることにより、結晶性の高い金属酸化物を付着させることができる。また、高温状態にすることを要さずに、結晶性の高い金属酸化物を付着させることができるため、基材選択の範囲が広く、基材として多種多様な微多孔膜を用いることができる。例えば、金属基材と比較して耐熱性に劣る樹脂により構成される微多孔膜であっても、結晶性の高い金属酸化物を付着させることが可能となる。また、基材の特性(例えば、柔軟性、エネルギーの吸収性、滑り性等)に起因して、従来の方法(例えば、CVD法、スパッタリング法等)を適用し難い材料(例えば、フッ素系樹脂)により構成される微多孔膜であっても、結晶性が高い金属酸化物を付着させることができる。さらに、付着した金属酸化物は脱離し難く、本発明の製造方法により得られたアルカリ水電解用隔膜は、長期間にわたり、アルカリ水に対する濡れ性が維持される。
上記エアロデポジション法とは、微粒子状の金属酸化物をガス中に分散させてエアロゾルを生成し、該エアロゾルを基材に向けて噴射して衝突させて、該基材(微多孔膜、および多孔性補強体)に金属酸化物を付着させる方法である。該方法によれば、衝突の際に金属酸化物の微粒子の運動エネルギーが、成膜エネルギーに変換することにより、基材/金属酸化物間および金属酸化物間の結合が生じ、基材上に金属酸化物を付着させることができる。以下、エアロデポジション法により金属酸化物を付着させる方法の一例を具体的に説明する。なお、本発明の製造法に用いられるエアロデポジション法においては、下記に例示する態様には限られず、本発明の効果が得られる限りにおいて、装置の構成、および操作の諸条件は、適宜変更され得る。
図4は、本発明の1つの実施形態において用いられるエアロデポジション法装置の概略構成図である。エアロゾルデポジション装置40は、成膜チャンバー41、エアロゾルチャンバー42、およびキャリアガス輸送装置43を備えている。成膜チャンバー41は、基材表面に、金属酸化物を形成するための成膜室であって、基材ホルダー44、成膜チャンバー41内の温度を測定するための温度計(図示せず)、および、成膜チャンバー41内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。基材ホルダー44は、支柱45、台座46、およびステージ47を備えている。支柱45は、台座46およびステージ47を連結させる部材であって、成膜チャンバー41の天井壁を貫通して下方(鉛直方向下方)に突出するように設けられている。台座46は、基板48を成膜チャンバー41内に保持および固定するために、支柱45長手方向一端部(下端部)に設けられている。また、台座46は、成膜チャンバー41内において、その台座46に基板48が配置されたときに、基板が成膜チャンバー41の下方に向かうように、配置されている。
ステージ47は、金属酸化物の形成時において、基板48を任意の方向(x方向(前後方向)、y方向(左右方向)、z方向(上下方向)およびθ方向(回転方向))に移動可能とするための装置であって、成膜チャンバー41の天井壁に上面に設けられ、支柱45の長手方向他端部(上端部)に接続されている。これにより、ステージ47は、支柱45を介して台座46に接続され、ステージ47により、台座46を移動可能としている。また、成膜チャンバー41には、メカニカルブースターポンプ49およびロータリーポンプ50が接続されている。メカニカルブースターポンプ49およびロータリーポンプ50は、成膜チャンバー41内を減圧するとともに、成膜チャンバー41に連結管51(後述)を介して連通されるエアロゾルチャンバー42内を減圧するため、成膜チャンバー41に、順次接続されている。エアロゾルチャンバー42は、金属酸化物を貯留する貯留槽であって、振動装置52、および、エアロゾルチャンバー42内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。振動装置52は、エアロゾルチャンバー42、および、エアロゾルチャンバー42内の金属酸化物を振動させるための装置であって、公知の振盪器が用いられる。また、エアロゾルチャンバー42には、連結管51が接続されている。
連結管51は、エアロゾル化された材料(以下、エアロゾル)を、エアロゾルチャンバー42から成膜チャンバー41に輸送するための配管であって、その一方側(上流側端部)がエアロゾルチャンバー42に接続されるとともに、他方側が成膜チャンバー41の底壁を貫通して台座46に向かって延びるように配置されている。また、成膜チャンバー41内において、連結管51の他方側端部(下流側端部)には、成膜ノズル53が接続されている。
成膜ノズル53は、エアロゾルを基材表面に噴き付けるための噴射装置であって、成膜チャンバー41内において、噴射口が鉛直方向上側の台座46に向かうように、配置されている。具体的には、成膜ノズル53は、その噴射口が台座46と所定間隔(例えば、0.1〜50mm、好ましくは、0.3〜30mm)を隔てるように対向配置されており、これにより、エアロゾルチャンバー42から供給されるエアロゾルを、基材表面に噴き付け可能としている。なお、成膜ノズル53の噴射口形状としては、特に限定されず、エアロゾルの噴射量、噴射範囲などに応じて、適宜設定される。また、連結管51の流れ方向途中には、連結管開閉弁54が介在されている。連結管開閉弁54としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。キャリアガス輸送装置43は、キャリアガスボンベ55を備えている。キャリアガスボンベ55は、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、空気などのキャリアガスを貯留するボンベであって、ガス管56を介して、エアロゾルチャンバー42に接続されている。また、ガス管56の流れ方向途中には、ガス流量計57が介在されている。ガス流量計57は、ガス管56内のガス流量を調整するとともに、その流量を検知するための装置であって、特に限定されず、公知の流量計が用いられる。さらに、ガス管56の流れ方向途中には、ガス流量計57よりも下流側において、ガス管開閉弁58が介在されている。ガス管開閉弁58としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
このようなエアロゾルデポジション装置40により、金属酸化物を形成するためには、まず、台座46に、基材を備える基板48を、その基材が成膜ノズル53側(下側)に向かうように配置する。一方、エアロゾルチャンバー42には、上記した金属酸化物の材料の粉末を投入する。エアロゾルチャンバー42に投入する金属酸化物の平均粒子径(メジアン径)は、例えば、0.2μm〜20μmであり、好ましくは1.0μm〜10μmである。
次いで、上記の金属酸化物粉末を、エアロゾルチャンバー42内において、振動装置52により振動させるとともに、ガス管開閉弁58を開として、キャリアガスボンベ55からキャリアガスをエアロゾルチャンバー42に供給する。これにより、金属酸化物をエアロゾル化させるとともに、発生したエアロゾルを、連結管51を介し成膜ノズル53に輸送することができる。このとき、エアロゾル(金属酸化物)は、成膜ノズル53の内壁に衝突して破砕され、より粒径の小さな粒子となる。なお、このとき、また、ガス流量計57により調整されるキャリアガスの流量は、例えば、3〜10L/minである。
次いで、破砕された金属酸化物の粒子を、成膜ノズル53の噴射口から基材の表面に向けて噴射する。このとき、エアロゾル噴射中の成膜チャンバー41内の圧力は、例えば、5Pa〜1000Paであり、好ましくは、10Pa〜900Paである。また、エアロゾル噴射中のエアロゾルチャンバー42内の温度は、例えば、0℃〜50℃である。また、エアロゾル噴射中、好ましくは、ステージ47を適宜移動させることにより、基材表面に均等にエアロゾルを噴き付ける。ステージ47の移動速度(すなわち、成膜ノズル53の移動速度)は、例えば、0.1mm/sec〜30mm/secであり、好ましくは、0.5mm/sec〜20mm/secである。好ましくは、エアロゾルの噴射は複数回行われる。エアロゾルの噴射回数は、好ましくは2回〜50回であり、より好ましくは5回〜30回である。以上の操作により、基材表面(鉛直方向下側)に、金属酸化物を付着させることができる。
本発明の製造方法においては、基板48に載置する基材は、上記微多孔膜、または、微多孔膜と上記多孔性補強体との積層体(微多孔膜/多孔性補強体、多孔性補強体/微多孔膜/多孔性補強体または微多孔膜/多孔性補強体/微多孔膜)である。なお、該積層体が、外側に多孔性補強体を備える場合、金属酸化物は、上記の操作により、多孔性補強体の孔を通過して、微多孔膜にまで達する。上記微多孔膜、または微多孔膜と上記多孔性補強体との積層体には、その両面から金属酸化物を付着させる処理を行うことが好ましい。両面に金属酸化物を付着させる処理を行う場合、一方の面において、上記の操作により金属酸化物を付着させた後、基材を裏返して他方の面にも、上記の操作により金属酸化物を付着させる。
上記微多孔膜と多孔性補強体との積層体を、エアロゾルデポジション法に供する場合、上記微多孔膜と多孔性補強体とは、例えば熱ラミネート等により、一体化されていることが好ましい。一体化することにより、電解槽組み立て時の作業性が改善され、また、微多孔膜と多孔性補強体との間にガスが溜まることを防止して電解抵抗の増大を防ぐことができる。熱ラミネートは、一対の加熱ロール、熱プレス等により、微多孔膜を構成する材料に融点以上の温度下で所定の圧力をかけることにより行うことができる。また、微多孔膜と多孔性補強体とを接着層を介して一体化してもよい。接着層を構成する接着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な接着剤が用いられ得る。接着層としては、例えば、ポリオレフィン系ホットメルト材を網目状に塗工して得られる接着層等が挙げられる。
一つの実施形態においては、上記のようにして微多孔膜、または微多孔膜と上記多孔性補強体との積層体に金属酸化物を付着させた後、該微多孔膜または該積層体をアルカリ水に浸漬させる。アルカリ水としては、例えば、濃度が10重量%〜40重量%の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液が用いられ得る。アルカリ水の温度は、好ましくは60℃〜120℃であり、より好ましくは70℃〜90℃である。浸漬時間は、好ましくは1時間〜200時間であり、より好ましくは2時間〜100時間である。このように、アルカリ水に浸漬させることにより、アルカリ水(例えば、水酸化カリウム水溶液)に対する濡れ性および耐久性に顕著に優れるアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。このようなアルカリ水電解用隔膜が得られるメカニズムは明らかではないが、アルカリ水に浸漬することにより、微多孔膜または積層体を構成する高分子、ならびに金属酸化物の親水性官能基が増加して濡れ性および耐久性が向上すると考えられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚みの測定
厚みはデジタルアップライトゲージR1−205(尾崎製作所社製;測定子:Φ5mm、測定力:1.1N以下)を使用した。特に断りがない場合は、25±2℃、65±20%RHでの測定値である。
(2)無機酸化物の付着率
無機酸化物の付着率は、下記式により算出した。
付着率(%)=(金属酸化物付着後の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量−金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)/(金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)
(3)金属酸化物付着性
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜の外側をスパチュラにて引掻く事により、金属酸化物の付着性を確認した。表1中、スパチュラで引掻いた場合においても、金属酸化物層が基材面に固着している場合を○、スパチュラで引掻いた場合に金属酸化物が剥離した場合を×とした。
(4)水中における空気の接触角
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜を25℃の純水に10分間浸漬した後、自動接触各測定装置(dataphysics instruments社製の商品名「OCA30」)を用いて、アルカリ水電解用隔膜に付着している空気(気泡)の接触角を測定した。
(5)アルカリ水電解評価
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜のアルカリ水電解評価は、アクリル樹脂製のH型セルを用いて行った。電解液は、濃度25.5重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、電極としては、白金電極を用いた。測定時の液温は25℃に設定した。電流密度を0.2A/cm2とし、定電流を1時間連続して印加した時の電圧を測定し、測定開始から50分後〜1時間後における測定値の平均値により、アルカリ水電解評価を行った。
(6)ガスの遮断性
上記(5)におけるアルカリ水電解を開始して1時間後にカソード側に発生したガスを回収し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社社製、商品名「GC−8A」)によりカソード側に発生したガスの水素純度を測定することにより、ガス遮断性を評価した。表1中、水素純度が、99.9%より高い場合を○とする。
厚みはデジタルアップライトゲージR1−205(尾崎製作所社製;測定子:Φ5mm、測定力:1.1N以下)を使用した。特に断りがない場合は、25±2℃、65±20%RHでの測定値である。
(2)無機酸化物の付着率
無機酸化物の付着率は、下記式により算出した。
付着率(%)=(金属酸化物付着後の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量−金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)/(金属酸化物付着前の微多孔膜および多孔性補強体の合計重量)
(3)金属酸化物付着性
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜の外側をスパチュラにて引掻く事により、金属酸化物の付着性を確認した。表1中、スパチュラで引掻いた場合においても、金属酸化物層が基材面に固着している場合を○、スパチュラで引掻いた場合に金属酸化物が剥離した場合を×とした。
(4)水中における空気の接触角
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜を25℃の純水に10分間浸漬した後、自動接触各測定装置(dataphysics instruments社製の商品名「OCA30」)を用いて、アルカリ水電解用隔膜に付着している空気(気泡)の接触角を測定した。
(5)アルカリ水電解評価
実施例および比較例で得られたアルカリ水電解用隔膜のアルカリ水電解評価は、アクリル樹脂製のH型セルを用いて行った。電解液は、濃度25.5重量%の水酸化カリウム水溶液を用い、電極としては、白金電極を用いた。測定時の液温は25℃に設定した。電流密度を0.2A/cm2とし、定電流を1時間連続して印加した時の電圧を測定し、測定開始から50分後〜1時間後における測定値の平均値により、アルカリ水電解評価を行った。
(6)ガスの遮断性
上記(5)におけるアルカリ水電解を開始して1時間後にカソード側に発生したガスを回収し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社社製、商品名「GC−8A」)によりカソード側に発生したガスの水素純度を測定することにより、ガス遮断性を評価した。表1中、水素純度が、99.9%より高い場合を○とする。
[実施例1]
エアロゾルデポジション装置(キャリアガス:窒素ガス)を用意し、その成膜チャンバー内において、基板ホルダーの台座に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)を、鉛直方向下方を向くように配置した。
なお、このとき、成膜ノズルの噴射口と微多孔膜との間隔が、10mmとなるように調整した。
一方、酸化ジルコニウム粉末(メジアン径:1.5〜4.μm)を用意し、500mLのガラス製エアロゾルチャンバーに投入した。
その後、ガス管開閉弁を閉とし、また、連結管開閉弁を開とするとともに、メカニカルブースターポンプおよびロータリーポンプを駆動させることにより、成膜チャンバー内およびエアロゾルチャンバー内を減圧した。
次いで、窒素ガスの流量が8.0L/minとなるようにガス流量計により調整し、また、エアロゾルチャンバーを振盪器により振動させながら、ガス管開閉弁を開とした。これによって、エアロゾルチャンバー内において、酸化ジルコニウム粉末をエアロゾル化とし、得られたエアロゾルを、成膜ノズルから噴射させた。
そして、基板のステージによって、台座にPTFE微多孔膜を固定して、成膜ノズルから噴射されるエアロゾルを、PTFE微多孔膜に噴き付けた。なお、このときのスキャン数を20スキャンとした。なお、スキャン数とは、基板のステージによって、基材(微多孔膜)が固定された台座を移動速度12mm/secでx−y方向に適宜移動させた時における往復回数を意味する。
次いで、PTFE微多孔膜を裏返して、裏面にも上記と同様の処理を施した。
これにより、PTFE微多孔膜の表面に酸化ジルコニウムが形成されたアルカリ水電解用隔膜Aを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Aを、上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
エアロゾルデポジション装置(キャリアガス:窒素ガス)を用意し、その成膜チャンバー内において、基板ホルダーの台座に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)を、鉛直方向下方を向くように配置した。
なお、このとき、成膜ノズルの噴射口と微多孔膜との間隔が、10mmとなるように調整した。
一方、酸化ジルコニウム粉末(メジアン径:1.5〜4.μm)を用意し、500mLのガラス製エアロゾルチャンバーに投入した。
その後、ガス管開閉弁を閉とし、また、連結管開閉弁を開とするとともに、メカニカルブースターポンプおよびロータリーポンプを駆動させることにより、成膜チャンバー内およびエアロゾルチャンバー内を減圧した。
次いで、窒素ガスの流量が8.0L/minとなるようにガス流量計により調整し、また、エアロゾルチャンバーを振盪器により振動させながら、ガス管開閉弁を開とした。これによって、エアロゾルチャンバー内において、酸化ジルコニウム粉末をエアロゾル化とし、得られたエアロゾルを、成膜ノズルから噴射させた。
そして、基板のステージによって、台座にPTFE微多孔膜を固定して、成膜ノズルから噴射されるエアロゾルを、PTFE微多孔膜に噴き付けた。なお、このときのスキャン数を20スキャンとした。なお、スキャン数とは、基板のステージによって、基材(微多孔膜)が固定された台座を移動速度12mm/secでx−y方向に適宜移動させた時における往復回数を意味する。
次いで、PTFE微多孔膜を裏返して、裏面にも上記と同様の処理を施した。
これにより、PTFE微多孔膜の表面に酸化ジルコニウムが形成されたアルカリ水電解用隔膜Aを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Aを、上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み200μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体b(微多孔膜/多孔性補強体)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体bを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Bを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Bを、上記評価(1)〜(6)に供した。なお、(5)の評価において、PTFE微多孔膜をアノード極側となるよう配した。結果を表1に示す。また、アルカリ水電解用隔膜B断面のSEM写真を図5に示す。
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み200μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体b(微多孔膜/多孔性補強体)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体bを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Bを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Bを、上記評価(1)〜(6)に供した。なお、(5)の評価において、PTFE微多孔膜をアノード極側となるよう配した。結果を表1に示す。また、アルカリ水電解用隔膜B断面のSEM写真を図5に示す。
[実施例3]
(5)の評価において、PTFE微多孔膜をカソード極側に配した以外は、実施例2と同様に、アルカリ水電解用隔膜Bを上記評価(1)〜(6)に供した。評価結果を表1に示す。
(5)の評価において、PTFE微多孔膜をカソード極側に配した以外は、実施例2と同様に、アルカリ水電解用隔膜Bを上記評価(1)〜(6)に供した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み240μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体c(微多孔膜/多孔性補強体/微多孔膜)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体cを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Cを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Cを、上記評価(1)〜(6)に供した。
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み240μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体c(微多孔膜/多孔性補強体/微多孔膜)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体cを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Cを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Cを、上記評価(1)〜(6)に供した。
[実施例5]
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み310μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体d(多孔性補強体/微多孔膜/多孔性補強体)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体dを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Dを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Dを、上記評価(1)〜(6)に供した。
微多孔膜としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微多孔膜(日東電工社製 商品名「テミッシュNTF−1122」、孔径0.2μm、厚み85μm)と、多孔性補強体としての芯鞘構造を有する湿式不織布((廣瀬製紙社製 商品名「HOP−60HCF」、芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレン、目付重量60g/m2、厚み310μm)とを、135℃の加熱ロールにて熱接着して積層体d(多孔性補強体/微多孔膜/多孔性補強体)を得た。
PTFE微多孔膜に代えて、該積層体dを用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ水電解用隔膜Dを得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜Dを、上記評価(1)〜(6)に供した。
[比較例1]
初めに1−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)30gと、フッ化カルシウム(和光純薬社製)12gとを混合してホモミクサーで十分に撹拌した。ここにポリスルホン(BASF社製 商品名「ULTRASON S6010」)4g、を添加して60℃に加温し、再度十分に撹拌、溶解した後、脱泡して懸濁液を調製した。
200メッシュ、厚み190μmのポリエチレン網(ニップ(ポリエチレン)強力網、NBC社製)を、伸長状態で、底面に設置した10cm×10cmのガラス製の枠体上に、上記懸濁液10mlを流し込んだ。その後、懸濁液を流し込んだ枠体ごと25℃の純水中に浸漬し、室温で10分間放置して1−メチル−2−ピロリドンを抽出した。その後、凝固したシート状物を枠体より剥離し、さらに25℃の純水中で30分間洗浄し、25℃で風乾後、80℃の乾燥機で30分間乾燥し、シート状のアルカリ水電解用隔膜を得た。
比較例1で得られたアルカリ水電解用隔膜は、外側に凹凸が多く見られ、膜厚みが570μm〜1170μmとばらついており、シール不良のためアルカリ水電解評価はできなかった。また、外側の凹凸により測定バラツキが大きいため、水中での空気の接触角を評価することもできなかった。
初めに1−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)30gと、フッ化カルシウム(和光純薬社製)12gとを混合してホモミクサーで十分に撹拌した。ここにポリスルホン(BASF社製 商品名「ULTRASON S6010」)4g、を添加して60℃に加温し、再度十分に撹拌、溶解した後、脱泡して懸濁液を調製した。
200メッシュ、厚み190μmのポリエチレン網(ニップ(ポリエチレン)強力網、NBC社製)を、伸長状態で、底面に設置した10cm×10cmのガラス製の枠体上に、上記懸濁液10mlを流し込んだ。その後、懸濁液を流し込んだ枠体ごと25℃の純水中に浸漬し、室温で10分間放置して1−メチル−2−ピロリドンを抽出した。その後、凝固したシート状物を枠体より剥離し、さらに25℃の純水中で30分間洗浄し、25℃で風乾後、80℃の乾燥機で30分間乾燥し、シート状のアルカリ水電解用隔膜を得た。
比較例1で得られたアルカリ水電解用隔膜は、外側に凹凸が多く見られ、膜厚みが570μm〜1170μmとばらついており、シール不良のためアルカリ水電解評価はできなかった。また、外側の凹凸により測定バラツキが大きいため、水中での空気の接触角を評価することもできなかった。
[比較例2]
実施例1で用いたPTFE微多孔膜、すなわち、金属酸化物が付着していない微多孔膜を、上記評価(1)および(4)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
実施例1で用いたPTFE微多孔膜、すなわち、金属酸化物が付着していない微多孔膜を、上記評価(1)および(4)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で用いたPTFE微多孔膜をスパッタ装置に入れ、上記微多孔膜に、ジルコニウム酸化物からなる厚み20nmの金属酸化物層を形成させて積層体を得た。得られた積層体を、上記評価(1)および(3)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
実施例1で用いたPTFE微多孔膜をスパッタ装置に入れ、上記微多孔膜に、ジルコニウム酸化物からなる厚み20nmの金属酸化物層を形成させて積層体を得た。得られた積層体を、上記評価(1)および(3)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、電気抵抗が小さく、イオン透過性に優れる。また、本発明によれば、金属酸化物を付着させることにより、水中における空気の接触角が大きく、すなわち、電解時に生成したガスが付着し難いアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。さらに、表1から明らかなように、本発明においては、金属酸化物が良好に付着して、離脱し難い。これは、エアロゾルデポジション法を用いた本発明に製造方法により付着した金属酸化物の結晶度が高いためであると推測される。
10 微多孔膜
20 金属酸化物
30 多孔性補強体
20 金属酸化物
30 多孔性補強体
Claims (6)
- 微多孔膜を備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることを含む、
アルカリ水電解用隔膜の製造方法。 - 微多孔膜と、該微多孔膜の片側または両側に配置された多孔性補強体とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜および該多孔性補強体の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることを含む、
アルカリ水電解用隔膜の製造方法。 - 多孔性補強体と、該多孔性補強体の両側に配置された微多孔膜とを備える、アルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
エアロゾルデポジション法により、該微多孔膜の表面に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を付着させることを含む、
アルカリ水電解用隔膜の製造方法。 - 前記微多孔膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンから構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
- 前記多孔性補強体が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリフェニレンサルファイドから構成されている、請求項1から4のいずれかに記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法により製造された、アルカリ水電解用隔膜。
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JP2013244656A JP2015101775A (ja) | 2013-11-27 | 2013-11-27 | アルカリ水電解用隔膜の製造方法 |
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---|---|---|---|---|
CN112159989A (zh) * | 2015-06-16 | 2021-01-01 | 川崎重工业株式会社 | 碱性水电解用隔膜及其制造方法 |
CN112584754A (zh) * | 2018-06-19 | 2021-03-30 | 阿威尔斯医疗公司 | 用于测量包括微生物的样本的溶液特性的装置、系统和方法 |
CN114351186A (zh) * | 2021-11-26 | 2022-04-15 | 中国华能集团清洁能源技术研究院有限公司 | 电解水用隔膜亲水改性方法、亲水隔膜及应用 |
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2013
- 2013-11-27 JP JP2013244656A patent/JP2015101775A/ja active Pending
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