JP2019139986A - 亜鉛電池用負極及び亜鉛電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極を提供する。【解決手段】亜鉛を含む活物質を含有する負極材22と、負極材22に接した多孔体層24と、を有し、多孔体層24の平均細孔径が37nm以下である、亜鉛電池用の負極20。【選択図】図1
Description
本発明は、亜鉛電池用負極及び亜鉛電池に関する。
亜鉛負極を用いる亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が知られている。例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)への適用可能性が検討されている。
ニッケル亜鉛電池の充放電反応は、例えば、下記式に従って進行する(放電反応:右向き、充電反応:左向き)。
(正極)2NiOOH+2H2O+2e− → 2Ni(OH)2+2OH−
(負極)Zn+2OH− → Zn(OH)2+2e−
(正極)2NiOOH+2H2O+2e− → 2Ni(OH)2+2OH−
(負極)Zn+2OH− → Zn(OH)2+2e−
前記式に示されるように、亜鉛電池では、放電反応により水酸化亜鉛(Zn(OH)2)が生成する。水酸化亜鉛は電解液に可溶であり、水酸化亜鉛が電解液に溶解すると、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)4]2−)が電解液中に拡散する。その結果、負極の形態変化が進行すると共に充電電流の分布が不均一となること等により、負極上の局所で亜鉛の析出が起こり、デンドライト(樹枝状結晶)が発生する。亜鉛電池では、充放電の繰り返しによりデンドライトが成長した場合、デンドライトがセパレータを貫通して短絡が発生することにより寿命性能(サイクル寿命性能)が劣化する場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。
このような亜鉛電池に対しては、更に優れた寿命性能を得ることが求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極、及び、当該負極を備える亜鉛電池を提供することを目的とする。
本発明に係る亜鉛電池用負極は、亜鉛を含む活物質を含有する負極材と、前記負極材に接した多孔体層と、を有し、前記多孔体層の平均細孔径が37nm以下である。
本発明に係る亜鉛電池用負極によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。
前記多孔体層の平均細孔径は、0.5〜37nmであることが好ましい。
前記多孔体層は、前記負極材の表面の全体に接していることが好ましい。
本発明に係る亜鉛電池は、上述の亜鉛電池用負極を備える。
本発明に係る亜鉛電池は、正極及びセパレータを更に備え、前記セパレータが、前記正極と前記亜鉛電池用負極との間に配置されている態様であってもよい。本発明に係る亜鉛電池は、正極を更に備え、前記多孔体層が前記正極に更に接している態様であってもよい。
本発明に係る亜鉛電池は、ニッケル亜鉛電池であってよい。
本発明によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態に係る亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が挙げられる。本実施形態に係る亜鉛電池の基本構成としては、従来の亜鉛電池と同様の構成を用いることができる。
本実施形態に係る亜鉛電池における負極(亜鉛電池用負極)は、亜鉛を含む活物質を含有する負極材と、前記負極材に接した多孔体層と、を有し、前記多孔体層の平均細孔径が37nm以下である。このような負極を用いることにより、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。
すなわち、亜鉛電池の負極では、放電反応によって水酸化亜鉛(Zn(OH)2)が生成する。そして、水酸化亜鉛が電解液に溶解すると、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)4]2−)が生成する。ここで、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオンが拡散して大きく移動可能である場合、充放電サイクルの進行に伴い、負極の外部にテトラヒドロキシ亜鉛酸イオンが拡散すること、及び、電解液中のテトラヒドロキシ亜鉛酸イオンから水酸化亜鉛、亜鉛等が負極材の一部に局所的に析出して負極活物質の脱落が生じることがある。この場合、充放電サイクルの進行に伴い負極活物質の損失によって容量が低下するため、寿命性能が劣化する。一方、本実施形態に係る負極では、多孔体層が負極材に接していること、及び、多孔体層の平均細孔径が37nm以下であることにより、負極材の表面からテトラヒドロキシ亜鉛酸イオンが大きく移動することが抑制されている。これにより、負極活物質が損失することが抑制されるため、優れた寿命性能を得ることができる。
ところで、亜鉛電池に対しては、寿命性能の劣化の抑制のみならず、優れた高率放電性能を得ることも求められる。亜鉛電池では、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオンよりも小さな水酸化物イオンが正極及び負極間を移動することにより電池反応が進行する。この水酸化物イオンの移動が阻害される(拡散抵抗が増加する)と、高率放電性能が劣化する。一方、本実施形態に係る負極では、多孔体層の平均細孔径が0.5nm以上であることにより、水酸化物イオンが多方向に充分に移動できるため、優れた高率放電性能を得ることができる。
以下、本実施形態に係る亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池について説明する。
本実施形態に係る亜鉛電池は、例えば、電槽、電解液及び電極群(例えば極板群)を備えている。電解液及び電極群は、電槽内に収容されている。本実施形態に係る亜鉛電池は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
電解液は、例えば、溶媒及び電解質を含有している。溶媒としては、水(例えばイオン交換水)等が挙げられる。電解質としては、塩基性化合物等が挙げられ、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。本実施形態に係る亜鉛電池は、アルカリ電解液を用いたアルカリ亜鉛電池として用いることができる。電解液は、溶媒及び電解質以外の成分を含有してもよく、例えば、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン等を含有してもよい。
電極群は、例えば、セパレータと、当該セパレータを介して対向する正極(正極板等)及び負極(負極板等)によって構成されている。電極群において、正極同士及び負極同士は、例えば、ストラップで連結されている。セパレータは、例えば正極及び負極の双方に接しているが、正極及び負極の少なくとも一方に接していなくてもよい。
セパレータは、例えば、平板状、シート状等の形状を有するセパレータであってもよい。セパレータとしては、ポリオレフィン系微多孔膜、ナイロン系微多孔膜、耐酸化性のイオン交換樹脂膜、セロハン系再生樹脂膜、無機−有機セパレータ、ポリオレフィン系不織布等が挙げられる。
正極は、例えば、正極集電体と、当該正極集電体に支持された正極材と、を有している。
正極集電体は、正極材からの電流の導電路を構成する。正極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。正極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。正極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、正極の反応電位でも安定である材料(正極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、正極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し酸素ガスが発生するが、酸素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。正極集電体を構成する材料の具体例としては、白金;ニッケル;ニッケル等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼等)などが挙げられる。
正極材は、層状(正極材層)であってもよい。例えば、正極集電体上に正極材層が形成されていてもよく、正極集電体が3次元網目構造を有する場合には、正極集電体の網目の間に正極材が充填されて正極材層が形成されていてもよい。
正極材は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル等が挙げられる。正極材は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質の含有量は、例えば、正極材の全質量を基準として50〜95質量%であってもよい。
正極材は、添加剤を含有することができる。添加剤としては、結着剤、導電剤等が挙げられる。結着剤としては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)などが挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01〜5質量部であってもよい。導電剤としては、コバルト化合物(金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して1〜20質量部であってもよい。
負極は、例えば、負極集電体と、当該負極集電体に支持された負極材と、負極材に接した多孔体層と、を有している。
負極集電体は、負極材からの電流の導電路を構成する。負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。負極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、負極の反応電位でも安定である材料(負極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、負極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し水素ガスが発生するが、水素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、亜鉛;鉛;スズ;スズ等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼、ニッケル等)などが挙げられる。
負極材は、層状(負極材層)であってもよい。例えば、負極集電体上に負極材層が形成されていてもよく、負極集電体が3次元網目構造を有する場合には、負極集電体の網目の間に負極材が充填されて負極材層が形成されていてもよい。
本実施形態において負極材は、亜鉛を含む負極活物質を含有する。本実施形態に係る負極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
亜鉛を含む負極活物質としては、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。負極材は、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。
負極活物質の含有量は、負極材の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。負極活物質の含有量は、優れた寿命性能を得やすい観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。負極活物質の含有量は、優れた寿命性能を得やすい観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、負極活物質の含有量は、50〜95質量%が好ましい。
負極材は、負極活物質以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、結着剤等が挙げられる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部であってもよい。
多孔体層は、負極材の少なくとも一部に接していればよい。多孔体層は、優れた寿命性能を得やすい観点から、負極材の表面の全体に接していることが好ましい。多孔体層は、負極材の表面の一部に接していてもよい。図1及び図2は、亜鉛電池の例を示す模式断面図である。図1及び図2に示す亜鉛電池100、100a、100bは、正極10と、負極20と、正極10と負極20との間に配置されたセパレータ30と、を備えている。負極20は、例えば、長尺矩形状の負極材22を有している。
図1において負極20は、負極材22と多孔体層24とを有しており、多孔体層24は、負極材22の表面の全体に接している。図2(a)において負極20は、負極材22と多孔体層24aとを有しており、多孔体層24aは、負極材22の表面のうち、負極材22における一方の主面(図2(a)では、負極材22におけるセパレータ30と対向する主面)のみに接しており、負極材22とセパレータ30との間のみに配置されている。図2(b)において負極20は、負極材22と多孔体層24bとを有しており、多孔体層24bは、負極材22の表面のうち、負極材22における一端面(例えば、長手方向の一端面)以外の表面の全体に接している。
多孔体層は、電解液の接触面に多孔体層を配置する観点から、負極材22における少なくとも一つの面(例えば、長手方向における少なくとも一方の面)に接していることが好ましい。負極材における一端面が電解液に浸漬される場合には、当該一端面に多孔体層が接していることが好ましい。負極材における一端面(亜鉛電池に組み込まれた負極材における鉛直方向上方の端面)が電解液に浸漬されない場合には、当該一端面に多孔体層が接していなくてもよい。多孔体層は、負極材とセパレータとの間に配置されていなくてもよい。
多孔体層は、多孔質材料を含むことができる。多孔質材料としては、有機材料、無機材料、有機無機材料等が挙げられる。多孔質材料としては、ポーラスカーボン、ポーラスチタニア、多孔性配位高分子(PCP/MOF。例えばMOF−5)、ポーラス金属等が挙げられる。
多孔体層は、多孔質材料と結着剤とを含むことができる。結着剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、多孔質材料及び結着剤の合計100質量部に対して、20〜90質量部であってもよく、25〜70質量部であってもよく、30〜50質量部であってもよい。
多孔体層は、耐アルカリ性を有している。セパレータを構成可能な材料により多孔体層が構成されている場合、正極と負極との間にセパレータが配置されていなくてもよい。例えば、多孔体層は、負極材に加えて正極に更に接していてもよい。
多孔体層の平均細孔径は、優れた寿命性能を得る観点から、37nm以下である。平均細孔径が37nm以下であると、水酸化物イオンの移動を阻害することなく、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオンの過剰な移動を抑制することができる。多孔体層の平均細孔径は、優れた寿命性能を得やすい観点から、35nm以下が好ましく、32nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。多孔体層の平均細孔径は、0.3nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましく、2nm以上が特に好ましく、5nm以上が極めて好ましく、10nm以上が非常に好ましく、15nm以上がより一層好ましく、20nm以上が更に好ましく、25nm以上が特に好ましい。これらの観点から、多孔体層の平均細孔径は、0.3〜37nmであることが好ましく、0.5〜37nmであることがより好ましい。多孔体層の平均細孔径は、ガス吸着法や水銀圧入法により測定することができる。多孔体層の平均細孔径は、例えば、多孔体層を構成する成分(金属イオン、有機配位子等)の種類を変えることにより調整できる。
多孔体層の厚さは、優れた寿命性能を得やすい観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましく、20μm以上が特に好ましく、25μm以上が極めて好ましく、30μm以上が非常に好ましい。多孔体層の厚さは、優れた寿命性能を得やすい観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましく、50μm以下が特に好ましく、45μm以下が極めて好ましく、40μm以下が非常に好ましい。これらの観点から、多孔体層の厚さは、5〜100μmが好ましい。
本実施形態に係るニッケル亜鉛電池の製造方法は、例えば、電極(正極及び負極)を得る電極製造工程と、電極を含む構成部材を組み立ててニッケル亜鉛電池を得る組立工程と、を備える。
電極製造工程では、正極及び負極を製造する。例えば、電極材(正極材及び負極材)の原料に対して溶媒(例えば水)を加えて混練することによりペースト状の電極材(電極材ペースト)を得た後、電極材ペーストを用いて電極材層を形成する。
正極材の原料としては、正極活物質の原料(例えば水酸化ニッケル)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。負極材の原料としては、負極活物質の原料(例えば金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。
電極材層を形成する方法としては、例えば、電極材ペーストを集電体に塗布又は充填した後に乾燥することで電極材層を得る方法が挙げられる。電極材層は、必要に応じて、プレス等によって密度を高めてもよい。
組立工程では、例えば、まず、電極製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層し、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成のニッケル亜鉛電池を得る。
負極材に接する多孔体層は、電極製造工程において、多孔体層用の塗布液を負極材に塗布及び乾燥して形成してもよく、多孔体層を構成する材料の前駆体を負極材に接触させた後に当該前駆体を反応(例えば、結晶成長)させて形成してもよい。多孔体層用の塗布液をセパレータ又は正極に塗布及び乾燥して多孔体層を形成した後に、組立工程において当該多孔体層を負極材に接触させてもよい。多孔体層のシートを作製した後に、組立工程において、負極と、セパレータ又は正極との間に当該シートを配置してもよい。
次いで、電解液を未化成のニッケル亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することによりニッケル亜鉛電池を得る。化成条件は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の性状に応じて調整することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)の例を説明したが、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
空気亜鉛電池の空気極としては、空気亜鉛電池に使用される公知の空気極を用いることができる。空気極は、例えば、空気極触媒、電子伝導性材料等を含む。空気極触媒としては、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いることができる。
空気極触媒としては、空気亜鉛電池における正極として機能するものを用いることが可能であり、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒としては、酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料(黒鉛等)、酸化還元触媒機能を有する金属材料(白金、ニッケル等)、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物材料(ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等)などが挙げられる。空気極触媒の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状であってもよい。空気極における空気極触媒の含有量は、空気極の合計量に対して、5〜70体積%であってもよく、5〜60体積%であってもよく、5〜50体積%であってもよい。
電子伝導性材料としては、導電性を有し、かつ、空気極触媒とセパレータとの間の電子伝導を可能とするものを用いることができる。電子伝導性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類;鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類;ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料;これらの任意の混合物などが挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子状であってもよく、その他の形状であってもよい。電子伝導性材料は、空気極において厚さ方向に連続した相をもたらす形態で用いられることが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は、空気極触媒との混合物又は複合体の形態であってもよく、前述したように、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒であってもよい。空気極における電子伝導性材料の含有量は、空気極の合計量に対して、10〜80体積%であってもよく、15〜80体積%であってもよく、20〜80体積%であってもよい。
銀亜鉛電池の酸化銀極としては、銀亜鉛電池に使用される公知の酸化銀極を用いることができる。酸化銀極は、例えば酸化銀(I)を含む。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<ニッケル亜鉛電池の作製>
(実施例1)
正極集電体として空隙率90%の発泡ニッケルを用意した。次いで、水酸化ニッケル粉末、金属コバルト、水酸化コバルト、CMC、PTFE、及び、イオン交換水を混合して得られた混合液を攪拌することにより正極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を「水酸化ニッケル:金属コバルト:水酸化コバルト:CMC:PTFE=85:8:5:1:1」に調整した。正極材ペーストの水分量は、正極材ペーストの全質量基準で27.5質量%に調整した。次いで、正極材ペーストを正極集電体上に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、正極材層を有する正極を得た。
(実施例1)
正極集電体として空隙率90%の発泡ニッケルを用意した。次いで、水酸化ニッケル粉末、金属コバルト、水酸化コバルト、CMC、PTFE、及び、イオン交換水を混合して得られた混合液を攪拌することにより正極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を「水酸化ニッケル:金属コバルト:水酸化コバルト:CMC:PTFE=85:8:5:1:1」に調整した。正極材ペーストの水分量は、正極材ペーストの全質量基準で27.5質量%に調整した。次いで、正極材ペーストを正極集電体上に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、正極材層を有する正極を得た。
負極集電体として、空隙率60%のスズメッキを施した鋼板パンチングメタルを用意した。次いで、酸化亜鉛、金属亜鉛、PTFE、及び、イオン交換水を混合して得られた混合液を攪拌することにより負極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を「酸化亜鉛:金属亜鉛:PTFE=80:15:5」に調整した。負極材ペーストの水分量は、負極材ペーストの全質量基準で32.5質量%に調整した。次いで、負極材ペーストを負極集電体上に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形して長尺矩形状の負極材層を得た。
次に、ポーラスチタニア(多孔質材料)65質量部と、ポリテトラフルオロエチレン(結着剤)35質量部とを混合して多孔体層用の塗布液を調製した。そして、負極材層の全面に前記塗布液を塗布した後、60℃で10分乾燥した。これにより、負極材層と、負極材層の表面の全体に接する多孔体層と、を有する負極を得た。XRD測定、ガス吸着法や水銀圧入法により、多孔体層が3次元細孔構造を有していることを確認した。走査型電子顕微鏡により多孔体層の厚さを確認したところ、30μmであった。走査型電子顕微鏡を用いて多孔体層の5箇所の厚さを測定し、その平均値を多孔体層の厚さとした。ガス吸着法により多孔体層の平均細孔径を測定したところ、0.4nmであった。
セパレータには、微多孔膜(平均細孔径が37nmを超える膜)としてCelgard2500、不織布としてVL100(ニッポン高度紙工業株式会社製)をそれぞれ用いた。微多孔膜は、電池組立て前に界面活性剤Triton−X100(ダウケミカル株式会社製)で親水化処理した。親水化処理は、Triton−X100が1質量%の量で含まれる水溶液に微多孔膜を24時間浸漬した後に室温で1時間乾燥する方法で行った。さらに、微多孔膜は、所定の大きさに裁断し、それを半分に折り、側面を熱溶着することで袋状に加工した。袋状に加工した微多孔膜に、正極及び負極のそれぞれを1枚収納した。不織布は、所定の大きさに裁断したものを使用した。
袋状の微多孔膜に収納された正極と、袋状の微多孔膜に収納された負極と、不織布とを積層した後、同極性の電極同士をストラップで連結させて電極群(極板群)を作製した。電極群は、正極1枚及び負極2枚で、正極と負極との間に不織布を配置した構成とした。電極の長手方向が鉛直方向を向くようにこの電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成のニッケル亜鉛電池を得た。次いで、イオン交換水に水酸化カリウム(KOH)及び水酸化リチウム(LiOH)を混合することにより電解液(水酸化カリウム濃度:30質量%、水酸化リチウム濃度:1質量%)を調製した。そして、正極及び負極の全体が電解液に浸漬するように電解液を未化成のニッケル亜鉛電池の電槽内に注入した後、24時間放置した。その後、16mA、15時間の条件で充電を行い、公称容量160mAhのニッケル亜鉛電池を作製した。
(実施例2〜6)
表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(実施例7〜12)
負極材層の表面における鉛直方向上方の面以外の全体(図2(b)の態様)に多孔体層用の塗布液を塗布することにより、表1の多孔体層を得たこと以外は実施例1〜6と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
負極材層の表面における鉛直方向上方の面以外の全体(図2(b)の態様)に多孔体層用の塗布液を塗布することにより、表1の多孔体層を得たこと以外は実施例1〜6と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(比較例1)
多孔体層を形成しなかったことにより、表1の多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
多孔体層を形成しなかったことにより、表1の多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(比較例2〜3)
表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(比較例4〜5)
負極材に代えて正極材に接する多孔体層を得たこと、及び、表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
負極材に代えて正極材に接する多孔体層を得たこと、及び、表1の細孔径を有する多孔体層を得たこと以外は実施例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(比較例6〜7)
正極材層の表面における鉛直方向上方の面以外の全体に多孔体層用の塗布液を塗布することにより、表1の多孔体層を得たこと以外は比較例4〜5と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
正極材層の表面における鉛直方向上方の面以外の全体に多孔体層用の塗布液を塗布することにより、表1の多孔体層を得たこと以外は比較例4〜5と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
<電池性能評価>
前記ニッケル亜鉛電池を用いてサイクル寿命性能の評価を行った。
前記ニッケル亜鉛電池を用いてサイクル寿命性能の評価を行った。
(サイクル寿命性能評価:耐短絡性試験)
25℃、30mA(0.5C)、1.9Vの定電圧で10時間保持することによりニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで120mA(0.2C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行うことを1サイクルとする試験を最大で100サイクル行った。充電末端の電流値が1サイクル目の充電末端の電流値に対して200%を超えた場合に短絡が発生したものとして試験を終了し、試験終了までに行ったサイクル数によってサイクル寿命性能を評価した。試験終了までに行ったサイクル数を表1に示す。短絡がない場合を良好であると判断した。
25℃、30mA(0.5C)、1.9Vの定電圧で10時間保持することによりニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで120mA(0.2C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行うことを1サイクルとする試験を最大で100サイクル行った。充電末端の電流値が1サイクル目の充電末端の電流値に対して200%を超えた場合に短絡が発生したものとして試験を終了し、試験終了までに行ったサイクル数によってサイクル寿命性能を評価した。試験終了までに行ったサイクル数を表1に示す。短絡がない場合を良好であると判断した。
前記「C」とは、満充電状態から定格容量を定電流放電するときの電流の大きさを相対的に表したものである。前記「C」は、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。例えば、定格容量を1時間で放電させることができる電流を「1C」、2時間で放電させることができる電流を「0.5C」と表現する。
表1に示されるように、実施例では、比較例と比べて優れた寿命性能を得ることができることが確認される。
10…正極、20…負極、22…負極材、24、24a、24b…多孔体層、30…セパレータ、100、100a、100b…亜鉛電池。
Claims (7)
- 亜鉛を含む活物質を含有する負極材と、前記負極材に接した多孔体層と、を有し、
前記多孔体層の平均細孔径が37nm以下である、亜鉛電池用負極。 - 前記多孔体層の平均細孔径が0.5〜37nmである、請求項1に記載の亜鉛電池用負極。
- 前記多孔体層が、前記負極材の表面の全体に接している、請求項1又は2に記載の亜鉛電池用負極。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜鉛電池用負極を備える、亜鉛電池。
- 正極及びセパレータを更に備え、
前記セパレータが、前記正極と前記亜鉛電池用負極との間に配置されている、請求項4に記載の亜鉛電池。 - 正極を更に備え、
前記多孔体層が前記正極に更に接している、請求項4に記載の亜鉛電池。 - ニッケル亜鉛電池である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の亜鉛電池。
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JP2018022905A JP2019139986A (ja) | 2018-02-13 | 2018-02-13 | 亜鉛電池用負極及び亜鉛電池 |
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JP7283854B1 (ja) | 2022-02-07 | 2023-05-30 | Fdk株式会社 | 亜鉛電池 |
WO2023112516A1 (ja) | 2021-12-14 | 2023-06-22 | Fdk株式会社 | 亜鉛電池 |
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2018
- 2018-02-13 JP JP2018022905A patent/JP2019139986A/ja active Pending
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