JP4758552B2 - 多孔質フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質フィルム、該多孔質フィルムからなる非水電解液電池用セパレーター、及び該セパレーターを有する非水電解液電池に関する。さらに詳しくは、電池の正極負極間に配置されてこれらを隔離させる電池用セパレーター等として好適に用いられる多孔質フィルム、該多孔質フィルムからなる非水電解液電池用セパレーター、及び該セパレーターを有する非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム等の軽金属を電極とする非水電解液電池は、エネルギー密度が高く自己放電も少ないため、電子機器の高性能化、小型化等を背景として利用範囲を大きく広げてきている。このような非水電解液電池の電極としては帯状の正極、負極、及びセパレーターを積層し捲回して構成することにより、広い有効電極面積を確保した渦巻状捲回体が用いられている。セパレーターは、基本的には両極の短絡を防止するとともに、その多孔質構造によりイオンを透過させて電池反応を可能とするものであるが、電池外部での誤接続等により異常電流が発生した場合に電池内部温度の上昇に伴い樹脂が熱変形して多孔質を防ぎ電池反応を停止させる、いわゆるシャットダウン(SD)機能を有するものが安全性向上の観点から採用されている。
【0003】
このようなSD機能を有するセパレーターとしては、例えば、ポリエチレン製多孔質膜やポリエチレンとポリプロピレンとからなる多層構造の多孔質膜等が知られている。
【0004】
しかしながら、昨今のリチウムイオン二次電池等の進歩により、上記SD機能のみならず、高容量化や低コスト化に伴い、内部圧力による電解液の浸出(液がれ現象)や電解液量の減少に対応可能な高い保液性を有するセパレーターが望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、通気性能及び機械的強度に優れるとともに低温でのSD機能と保液性に優れた多孔質フィルム、該多孔質フィルムからなる非水電解液電池用セパレーター、及び該セパレーターを有する非水電解液電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
(1)ポリオレフィン樹脂50〜99重量%と、式(I):
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、Xは−OCONH−、nは11以上の整数を示す)
で表される繰り返し単位を有する櫛形ポリマー1〜50重量%とからなる多孔質フィルム、
(2)前記1記載の多孔質フィルムからなる非水電解液電池用セパレーター、並びに
(3)前記2記載の非水電解液電池用セパレーターを有する非水電解液電池、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質フィルムは、マトリックスとなるポリオレフィン樹脂に加えて、櫛形ポリマーを含有しており、低温SD効果と保液性に優れている。櫛形ポリマーを含有した多孔質フィルムが低温SD効果と保液性に優れる理由は明らかではないが、櫛形ポリマーの側鎖は部分的に弱い結晶構造をとりやすく、かつ、ポリオレフィン類の樹脂と相溶性がよいために櫛形ポリマーがポリオレフィン樹脂中に広く分散されており、この弱い結晶構造部分は低温で易動しやすいため、マトリックス全体の孔閉塞効果が現れるためと考えられる。また、櫛形ポリマーの内部に極性の高いウレタン結合を多く有するため、ポリオレフィン樹脂単体からなる多孔質フィルムより電解液との親和性が高まるために、液を保ちやすいと考えられる。
【0010】
前記櫛形ポリマーは、式(I):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは−OCONH−、nは11以上の整数を示す)
で表される繰り返し単位を有する。式(I)で表される繰り返し単位は、側鎖間の規則的配列が起こりやすいという観点からnが11以上、好ましくは15以上であり、他の樹脂との相溶性や合成上の観点から、32以下が好ましく、より好ましくは26以下である。式(I)で表される繰り返し単位は、櫛形ポリマー中25〜95mol%が好ましく、30〜90mol%がより好ましい。残りの成分としては、−CH2 −、−CH(−OH)−など未反応部分の主骨格である。式(I)で表される繰り返し単位が25mol%以上では、ポリエチレンのように主鎖骨格の剛直な構造をとらないため、柔軟性を高める観点から好ましく、95mol%以下では、長鎖アルキル側鎖に基づく結晶構造により固い構造とならない観点から好ましい。このような櫛形ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールと、式(II):
CH3 (CH2 )n −NCO (II)
(式中、nは11以上の整数を示す)
で表される長鎖アルキルイソシアナートを反応させることにより得ることができる。ここでnは11以上、好ましくは15以上であり、32以下が好ましく、より好ましくは26以下である。反応方法としては、ポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコール100重量部に対して100〜250重量部の長鎖アルキルイソシアナート、例えばオクタデシルイソシアネートを100〜150℃で1〜15時間反応させる。櫛形ポリマーの重量平均分子量は、1万〜300万が好ましく、10万〜250万がより好ましい。
【0013】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、エチレン−アクリルモノマー共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
また、多孔質フィルムの強度を高くするために、ポリオレフィン樹脂として好ましくは重量平均分子量が5×105 以上、好ましくは5×105 〜20×106 、より好ましくは1×106 〜15×106 の超高分子量ポリエチレン等の超高分子量ポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。
【0015】
本発明において、櫛形ポリマーの含有量は樹脂組成物中1〜50重量%の範囲であり、1〜45重量%がより好ましい。櫛形ポリマーの含有量は、十分なSD性能を得る観点から、1重量%以上であり、電池用セパレーターとしての多孔質フィルムの特性を維持する観点から、50重量%以下である。
【0016】
また、ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物中50〜99重量%であり、55〜95重量%が好ましく、55〜90重量%がより好ましい。
【0017】
なお、本発明の多孔質フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、造核剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤が、本発明の目的を損なわない範囲で含有されていてもよい。
【0018】
本発明の多孔質フィルムの空孔率は、50〜80%が好ましい。針突刺強度は、5〜8N(0.75φ)が好ましい。保液率は、70〜90%が好ましい。
【0019】
本発明の多孔質フィルムの厚みは、1〜60μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。その通気度は100〜1000秒/100ccが好ましく、100〜900秒/100ccがより好ましい。そのSD温度は140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。
【0020】
本発明の多孔質フィルムは、乾式成膜法、湿式成膜法等公知の方法を利用して製造することができ、例えば、ポリオレフィン樹脂及び櫛形ポリマーからなる樹脂成分と溶媒とを含有する樹脂組成物を溶融混練し、得られた溶融混練物をシート状に成形し、該シート状成形物を圧延処理した後、延伸及び脱溶媒処理を行うことにより得られる。
【0021】
溶媒としては、例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分等が挙げられ、流動パラフィン等の脂環式炭化水素を多く含む不揮発性溶媒が好ましい。また、溶媒の配合量としては、樹脂組成物中の60〜95重量%であることが好ましい。樹脂組成物と溶媒の混合物を溶融混練し、シート状に成形する工程は、公知の方法により行うことができ、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いてバッチ式で溶融混練し、ついで、冷却された金属板に挟み込み急冷して急冷結晶化によりシート状成形物にしてもよく、Tダイ等を取り付けた押出機等を用いてシート状成形物を得てもよい。なお、溶融混練は、適当な温度条件下であればよく、特に限定されないが、好ましくは100〜200℃である。
【0022】
このようにして得られるシート状成形物の厚みとしては、特に限定されないが、3〜20mmが好ましい。
【0023】
圧延処理は、例えば、ヒートプレスを用いて行うことができる。圧延により、シート状成形物の厚みを均一にして、より高強度を有する多孔質フィルムを得ることができる。圧延処理後のシート状成形物の厚みは、0.5〜3mmが好ましい。また、圧延処理の温度は100〜140℃が好ましい。
【0024】
前記シート状成形物の延伸処理の方式としては、特に限定されるものではなく、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法又はこれらの方法の組み合わせであってもよく、また、一軸延伸、二軸延伸等のいずれの方式をも適用することができる。また、二軸延伸の場合は、縦横同時延伸又は逐次延伸のいずれかでもよい。延伸処理の温度は、100〜140℃であることが好ましい。
【0025】
脱溶媒処理は、シート状成形物から溶媒を除去して多孔質構造を形成させる工程であり、例えば、シート状成形物を溶媒で洗浄して残留する溶媒を除去することにより行うことができる。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の易揮発性溶剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。かかる溶剤を用いた洗浄方法は特に限定されず、例えば、シート状成形物を溶剤中に浸漬して溶媒を抽出する方法、溶剤をシート状成形物にシャワーする方法等が挙げられる。
【0026】
これらの公知の方法によって前記樹脂組成物を成膜して多孔質フィルムを得た後、続いて、熱収縮の防止のため、多孔質フィルムをヒートセット(熱固定)してもよい。該ヒートセットする際の温度は、例えば、110〜140℃で0.1〜2時間程度行えばよい。
【0027】
本発明の多孔質フィルムは低温SD効果及び保液性に優れる非水電解液電池用セパレーターとして使用することで、電池の様々な大きさや用途に対してより安全性を向上させることが期待できる。
【0028】
本発明の非水電解液電池は、前記多孔質フィルムをセパレーターとして有するものであればよく、その構造、構成物質、及び製造方法等については通常の非水電解液電池及びその製造方法に用いられているものであれば特に限定はない。該非水電解液電池は、本発明の多孔質フィルムを用いるので安全性に優れたものである。
【0029】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
【0030】
(フィルムの膜厚)
1/10000シックネスゲージ及び多孔質フィルムの断面の走査型電子顕微鏡により測定する。
【0031】
(空孔率)
フィルムの単位面積S(cm2 )あたりの重量W(g)、平均厚みt(μm)および密度d(g/cm3 )から下式にて算出した。
空孔率(%)=(1−(104 ×W/S/t/d))×100
【0032】
(通気度)
JIS P8117に準拠して測定する。
【0033】
(針突刺強度)
カトーテック(株)製の圧縮試験機KES−G5を用いて測定し、測定により得られた荷重変位曲線より最大荷重を読みとり、針突刺強度値とする。針は、直径1.0mm、先端の曲率半径0.75mmを用い、2cm/秒の速度で行う。
【0034】
(SD温度)
25mmφの筒状の試験室を有し、試験室が密閉可能なステンレス鋼製のセルを使用し、下部電極は20mmφ、上部電極は10mmφの白金板(厚さ1.0mm)を使用する。24mmφに打ち抜いた測定試料を電解液に浸漬させ電解液を含浸し、電極間に挟み、セルにセットする。電極はセルに設けられたばねにて一定の面圧がかかるようにする。電解液はプロピレンカーボネートとジメトキシエタンを容量比で1:1の割合で混合した溶媒に、ホウフッ化リチウムを1.0mol/1の濃度になるように溶解したものを使用する。
【0035】
このセルに熱伝対温度計と抵抗計を接続して、温度と抵抗を測定できるようにし、180℃恒温器中へ投入し、温度と抵抗を測定する。100〜150℃の平均昇速温度は10℃/分である。
この測定により、抵抗が100Ω・cm2 に達した時の温度をSD温度とする。
【0036】
(保液率)
5cm×5cmサイズの多孔質フィルムを用意し、その表面にn−ヘキサデカンを滴下する。n−ヘキサデカンの含浸後、上面に吸液シートを置き、さらに多孔質フィルムの上下をアルミ板で挟んで2.5kg/cm2 の圧力で30秒間加圧する。保液率を下記式から求める。
保液率(%)=(セパレーターに残っていた液量)/(加えた液量)×100
【0037】
実施例1
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量:3×l06 )11重量部、エチレンビニルアルコールとオクタデシルイソシアナートとの重合物である「Peeloil1010」(一方社油脂工業製)4重量部及び流動パラフィン85重量部をスラリー状に均一混合し、160℃の温度で小型ニーダーを用いて約60分間溶融混練を行った。得られた溶融混練物を0℃に冷却された金属板に挟み込み、シート状に急冷した。これらの急冷結晶化させたシート状成形物を、約120℃でシート厚が0.5mmになるまでヒートプレスした。次に、約120℃で同時に縦横3.5×3.5倍に二軸延伸し、ヘプタンを使用して脱溶媒処理を行って、多孔質フィルムを得た。
【0038】
実施例2
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量:3×l06 )12重量部、ポリビニルアルコールとオクタデシルイソシアナートとの重合物である下記の調製例1で得られたポリマー3重量部及び流動パラフィン85重量部を用いてスラリー状に均一混合した以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。
【0039】
調製例1
ポリビニルアルコール100重量部およびオクタデシルイソシアネート150重量部、ジブチルチンジラウレート2重量部をキシレン750重量部に溶解させ、100℃で2時間ついで130℃で2時間、さらに145℃で6時間反応させた。得られた生成物を脱溶媒して固形状の櫛形ポリマーを得た。このポリマーの重量平均分子量は40万であった。
【0040】
比較例1
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量:3×106 )11重量部、高密度ポリエチレン(重量平均分子量:20万)4重量部及び流動パラフィン85重量部を用いてスラリー状に均一混合した以外は、実施例1と同様にして、多孔質フィルムを得た。
【0041】
実施例、比較例で得られた多孔質フィルムの膜厚、空孔率、通気度、針突刺強度、SD温度及び保液率を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明の多孔質フィルムは、透過性能、突刺強度に優れるとともに低温でのSD機能と保液性に優れたものであり、該多孔質フィルムを非水電解液電池用セパレーターとして用いることで、安全性に優れた、様々な大きさや用途の非水電解液電池を提供することができる。
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