JP3706989B2 - 蛍光x線を用いた膜厚測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光X線を用いた膜厚測定方法に関するものであり、特に、磁気ディスク装置に用いるスピンバルブ膜等の金属多層薄膜の膜厚を高精度で測定するための標準試料に対する感度直線の求め方に特徴のある蛍光X線を用いた膜厚測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、X線を用いて試料の多層膜構造を解析する方法として、X線反射率と蛍光X線測定による金属多層膜の構造解析方法が提案(必要ならば、特願平9−268750号参照)されており、この様な構造解析方法においては、X線反射率測定データの解析により予め各層の付着量を求めた薄膜標準試料における蛍光X線の感度係数を参照して、解析対象となる金属多層薄膜の蛍光X線の強度から膜厚を求めるものであり、この様な膜厚測定法により、±5%の精度で膜厚測定を行えるようになった。
なお、この誤差の多くは、X線反射率の解析誤差による。
【0003】
この場合の薄膜標準試料としては、バックグラウンドに不所望な出力を放出しないSiを基板として用い、このSi基板の上に解析対象となる分析層Xを、分析層Xとの屈折率差の大きな下地層及び保護層となるTa層で挟んだSi/Ta/X/Ta構造を用いている。
この場合、分析層Xの付着量が異なる複数の標準試料を用意し、この複数の標準試料の各々に対してX線反射率解析の結果から求めた理論強度と蛍光X線測定強度との関係から、蛍光X線装置の感度補正を行うことにより膜厚が未知な試料の測定が可能になるものである。
【0004】
ここで用いられる理論強度計算法はFP(Fundamental Parameter)法と呼ばれるものであり、多層構造膜における分析層以外の層での吸収効果や、分析層以外の層からのX線による分析層の励起効果等が取り入れられる。
【0005】
従来の蛍光X線を用いた膜厚測定方法においてFP法を行う際には、標準試料及び未知の解析対象試料の計算モデルは、例えば、標準試料におけるTa層のように、同じ材料からなる層が複数ある場合でも、それらを一層にまとめた構造として計算していたので、この状況を図3を参照して説明する。
【0006】
図3参照
図3における「●」は、Ruを分析対象としたSi/Ta/Ru/Ta構造の標準試料を用い、Ru層の付着量が異なる6つの標準試料を用意し、まず、X線反射率測定法によって、各層からの反射X線強度を測定し、その測定結果に基づいて、最小二乗法を用いてフィッティングすることによって、各層の膜厚及び密度を独立に求め、この膜厚及び密度から各層の付着量(=膜厚×密度)を求める。
【0007】
次いで、標準試料における膜構造がSi/Ru/Ta構造であると仮定して、X線反射率測定・解析によって求めた付着量を基にして、Ta層における吸収効果等を考慮したFP法によって蛍光X線強度を計算することによって理論Net強度(理論ネット強度)を求める。
【0008】
次いで、6つの標準試料に対して蛍光X線の強度測定を行い、測定した蛍光X線強度とFP法によって計算した理論Net強度の相関をグラフ化し、最小二乗法を用いて各測定点が乗る感度直線を得る。
なお、この場合、蛍光X線を得るためには、ターゲットのRhからの連続波長のX線を用いて、また、測定対象のX線、即ち、蛍光X線としては、RuのKα線がターゲットのRh線と重なるため、RuのLα線、即ち、Ru−Lα線を用いる。
【0009】
この得られた感度直線における傾き、即ち、感度係数fは、
f=6.72±1.08
となり、感度係数精度は、±16%(≒1.08/6.72)であった。
この様な感度直線を用いて、解析対象となる多層金属膜における分析層の膜厚を測定することになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のFP法の場合には、同じ材料からなる層が複数層ある場合にも、それらを一層としてまとめた構造として吸収効果等を計算していたので、測定する蛍光X線としてK線に比べて他の層における吸収効果が非常に大きなRu−Lα線等のL線やM線を用いた場合には、吸収効果が正確に計算されず、得られた感度係数の精度が低下し、結果として、解析対象となる分析層の膜厚を精度良く求めることができないという問題がある。
因に、Ru−Lα線は、Ru−Kα線に比べて、Ta層においてかなり吸収される。
【0011】
また、X線反射率測定において、Ruのように、反射率測定の際に照射する特定波長のX線に対する分析層の屈折率が分析層を挟むTaの屈折率と近い場合、両者の界面が良好に分離されないため、X線反射率測定データの解析精度が低下し、膜厚の絶対精度が低下するという問題がある。
【0012】
したがって、本発明は、標準試料を用いて感度直線を作成する際に、成膜時の実際の多層膜構造を反映するように感度を補正し、分析対象における未知の層の膜厚を精度良く測定することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
図1は本発明の膜厚測定方法のフローを示す原理的構成の説明図であり、この図1を参照して本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
(1)本発明は、蛍光X線を用いた膜厚測定方法において、標準試料を、分析層を分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、標準試料のX線反射率測定データにより求まる標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の膜厚及び密度から求めた各層の付着量を用いて感度直線を得ることを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
【0014】
この様に、標準試料を分析層を分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とした場合、図1の▲1▼で測定した蛍光X線の理論強度を計算する際に、図1の▲3▼に示すように、標準試料の成膜時の膜構造モデルを用いることによって、図1の▲4▼で示すように、分析層を挟む同じ材料からなる下地層と保護層における吸収効果を正確に反映した感度直線を得ることができる。
【0016】
この場合、標準試料を構成する各層の付着量を、図1の▲2▼に示すように、標準試料のX線反射率測定データにより求まる各層の膜厚及び密度から求めることによって、付着量を精度良く評価することができる。
なお、この場合、感度直線の傾き、即ち、感度係数には、現在の測定技術では、X線反射率解析による密度の誤差±5%を含んでいる。
【0017】
(2)また、本発明は、上記(1)において、標準試料が、同じ材料からなる下地層及び保護層と分析層との間に介在層を配し、下地層/分析層界面のX線反射率よりも介在層/分析層界面のX線反射率が大きくなるように介在層の材料を選択することを特徴とする。
【0018】
この様に、同じ材料からなる下地層及び保護層と分析層との間に介在層を配し、下地層/分析層界面のX線反射率よりも介在層/分析層界面のX線反射率が大きくなるように介在層の材料を選択することによって、界面におけるX線反射が良好になるので、X線反射率測定を精度良く行うことができる。
なお、このX線反射率は界面におけるX線の屈折率差に依存するので、Ta/Ruの屈折率差以上の屈折率差が必要である。
【0019】
(3)また、本発明は、蛍光X線を用いた膜厚測定方法において、標準試料を、分析層を前記分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、ラザフォード後方散乱分析法により求めた標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の付着量を用いて感度直線を得ることを特徴とする。
【0020】
この様に、標準試料を構成する各層の付着量を求める場合には、ラザフォード後方散乱分析法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)を用いても良いものである。
【0021】
(4)また、本発明は、蛍光X線を用いた膜厚測定方法において、標準試料を、分析層を前記分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、ラザフォード後方散乱分析法により求めた標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の付着量と、標準試料のX線反射率測定データにより求まる標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の膜厚及び密度から求めた各層の付着量を相補的に用いて感度直線を得ることを特徴とする。
【0022】
この様に、付着量を求める際に、RBS法とX線反射率測定法を相補的に用い、RBS法によって得た結果を、X線反射率測定データを解析する際の初期値に用いる等によって、より高精度に膜厚,付着量を求めることができる。
例えば、RBS法によって付着量を求め、X線反射率測定法によって膜厚を求めることによって、密度誤差を±2%に抑えることができる。
【0023】
(5)また、本発明は、上記(1)乃至(4)のいずれかによって求めた感度直線の傾きを用いて、同じ材料からなる層を複数含む金属多層膜を構成する各層の膜厚を測定する際に、複数の同じ材料からなる層について、複数の異なった波長の蛍光X線を用いることによって、複数の同じ材料からなる層の付着量を分離して求めることを特徴とする。
【0024】
この様に、図1の▲5▼に示すように、標準試料によって求めた感度直線の傾き、即ち、感度係数を用いて同じ材料からなる層を複数含む金属多層膜を構成する各層の膜厚を測定する際に、複数の異なった波長の蛍光X線を用いて複数の同じ材料からなる層の付着量を分離して求めることによって、同じ材料からなる層の個別の膜厚を精度良く求めることができる。
例えば、X線入射面に近い層に対しては、他の層における吸収の大きな波長のX線、例えば、L線或いはM線を用い、下層に対しては吸収の小さなK線を用いることによって、FP法によって計算する際に、良好に分離した結果を得ることができる。
【0025】
(6)また、本発明は、上記(1)乃至(4)のいずれかによって求めた感度直線の傾きを用いて、同じ材料からなる層を複数含む金属多層膜を構成する各層の膜厚を測定する際に、複数の同じ材料からなる層の付着量を、一層にまとめた構造モデルによって計算したのち、各層の成膜時間により付着量を分割し、この分割した付着量に基づいて金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚を再計算することを特徴とする。
【0026】
この様に、複数の同じ材料からなる層の付着量を、一層にまとめた構造モデルによって計算したのち、各層の成膜時間により付着量を分割し、この分割した付着量に基づいて金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚を再計算することによって、吸収効果をより正確に反映した結果を得ることができる。
【0027】
(7)また、本発明は、上記(5)及び(6)において求めた付着量を相補的に用いて、金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚を計算することを特徴とする。
【0028】
この様に、異なった波長による分析結果と、成膜時間により分割した結果とを相補的に用いることによって、金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚をより正確に計算することができる。
【0029】
(8)また、本発明は、上記(1)乃至(7)のいずれかにおいて、金属多層膜中の分析対象となる層が、積層フェリスピンバルブ膜におけるRu膜であることを特徴とする。
【0030】
上記の(1)乃至(7)の膜厚測定法は、Taと屈折率が近い薄いRu膜をピンド層の一部として用いている積層フェリスピンバルブ膜、即ち、ピンド層中に2つの磁気モーメントの異なった磁性膜を有するスピンバルブ膜の膜構造解析に好適であり、この様な膜構造解析結果を薄膜磁気ヘッドの量産過程における膜厚管理に用いることによって磁気ディスク装置の品質を向上することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
ここで、図2乃至図5を参照して、本発明の実施の形態の蛍光X線を用いた膜厚測定方法の手順を説明する。
まず、測定対象となる多層薄膜試料として用いるフェリスピンバルブ膜の積層構造を説明すると、(100)面を主面とするシリコン基板上にスパッタリング法を用いて厚さ50ÅのTa膜、厚さ20ÅのNiFe膜からなるフリー層、厚さ15ÅのCoFeB膜からなるフリー層、厚さ30ÅのCu膜からなる中間層、厚さ25ÅのCoFeB膜/厚さ8ÅのRu膜/厚さ15ÅのCoFeB膜の3層構造からなるピンド層、厚さ150ÅのPdPtMn膜からなる反強磁性体層、及び、厚さ60ÅのTa膜を順次積層させ、Si/Ta/NiFe/CoFeB/Cu/CoFeB/Ru/CoFeB/PdPtMn/Taからなる多層薄膜構造を形成し、ピンド層を構成するRu膜を膜厚測定対象とする。
なお、各CoFeB膜におけるB組成比は2%であり、耐熱性の向上のために添加している。
【0032】
図2参照
次いで、この様なフェリスピンバルブ膜の膜厚を測定するための標準試料として、(100)面を主面とするシリコン基板上にスパッタリング法を用いて厚さ50ÅのTa膜、厚さ25ÅのCoFeB膜、厚さXÅのRu膜/厚さ22ÅのCoFeB膜、及び、厚さ60ÅのTa膜を順次積層させ、Si/Ta/CoFeB/Ru/CoFeB/Taからなる多層薄膜構造を形成する。
なお、この場合のRu膜を挟むCoFeBは、X線反射率測定の際に用いる波長が、例えば、λ=1.62Åの単一波長の入射X線に対するTa膜とRu膜の屈折率の差が小さいので、各層の界面の屈折率差を大きくするために挿入しているものである。
また、この場合のRu膜の膜厚XÅとしては、7Å、10Å、20Å、30Å、30Å、50Å、70Å、及び、100Åの8種類の標準試料を用意する。
【0033】
次に、第1の工程として、この8つの標準試料に対して蛍光X線強度測定を行う。
この場合、照射X線としては、ターゲットとしてRhを用いた連続波長X線を用い、分析する蛍光X線としては、Ru−Kα線がターゲットのRh線と重なるため、Ru−Lα線を用いる。
【0034】
次に、第2の工程として、8つの標準試料に対して、出射角2θを0°<2θ<8°としたX線反射率測定を行い、得られた測定データを従来公知の手法により最小二乗フィッティングすることによって、2つのTa膜及びCoFeB膜を、それぞれ一層のTa膜及びCoFeB膜としてまとめた形でTa膜、CoFeB膜、及び、Ru膜の膜厚及び密度を独立に求め、この求めた膜厚及び密度からTa膜、CoFeB膜、及び、Ru膜の付着量(=膜厚×密度)を求める。
【0035】
次いで、求めたTa膜及びCoFeB膜の付着量に基づいてTa膜及びCoFeB膜による吸収効果、特に、Ta膜による吸収効果を取り入れたFP法によってRu膜からの実効的な蛍光X線強度を理論Net強度として求め、この理論Net強度を横軸とし、上記の蛍光X線強度の測定強度を縦軸にすることによって図3に示す感度直線が得られる。
【0036】
図3参照
図3は、この様にして得られた「□」で示す各標準試料における測定点が直線にのるように求めた感度直線を破線で示した図であるが、感度直線の傾き、即ち感度係数fが、従来のSi/Ta/Ru/Ta構造の標準試料と同じであるので、実線と重なっている。
この結果、得られた感度係数fは、
f=6.72±0.33
となり、感度係数精度は±4.9%(≒0.33/6.72)となり、Ta膜とRu膜との間に屈折率差を大きくするためのCoFeB膜を介在させることによって感度係数精度、即ち、膜厚の絶対精度が大幅に向上した。
この結果、膜厚が10Å以下の場合の解析精度が向上することが理解される。
【0037】
次に、X線反射率測定・解析の結果得られたTa膜及びCoFeB膜の付着量を、実際の成膜時の膜構造モデル、即ち、Si/Ta/CoFeB/Ru/CoFeB/Ta構造に対応するように分割した付着量、したがって、膜厚に応じた吸収効果を考慮して感度係数を再計算して補正する。
【0038】
図4参照
図4は、再計算により補正した感度直線を実線とし、破線で表す補正前の感度直線とともに示した図であり、補正の結果、得られた感度係数fは、
f=6.45±0.31
となり、感度係数精度は±4.8%と補正前とほぼ同じであるが、感度係数f自体は約4%程度小さくなった。
【0039】
最後に、この様な標準試料によって求めた補正した感度係数を用いて、測定対象となる多層薄膜試料として用いるフェリスピンバルブ膜の積層構造、特に、ピンド層を構成するRu膜の膜厚を測定するが、この測定の手順を図5を参照して説明する。
【0040】
図5参照
まず、第1に、Si/Ta(50Å)/NiFe(20Å)/CoFeB(15Å)/Cu(30Å)/CoFeB(25Å)/Ru(8Å)/CoFeB(15Å)/PdPtMn(150Å)/Ta(60Å)構造のスピンバルブ膜にターゲットのRhからの連続X線を照射して蛍光X線強度測定を行うが、上下のTa膜については分析線をTa−Lα線とし、PdPtMn膜についてはMn−Kα線とし、Ru膜についてはRu−Lα線とし、3層のCoFeB膜についてはCo−Kα線とし、Cu層についてはCu−Kα線とし、NiFe膜についてはNi−Kα線とする。
【0041】
次いで、第2に、得られた各蛍光X線強度に基づいて、予め求めてあるTa−Lα及びCo−Kαの感度係数を用いてFP法によって、2層のTa膜の合計付着量及び3層のCoFeB膜の合計付着量を求める。
なお、この時点で、図4において●で示したRu−Lαの感度係数から求めたRu膜の膜厚は7.1Åとなる。
【0042】
次いで、第3に、スピンバルブ膜の各層の成膜時の成膜時間に応じて上下のTa膜の付着量及び3層のCoFeB膜の付着量を夫々分離して求める。
この求めた結果により、スピンバルブ膜の膜構造モデルを、Si/Ta(付着量既知)/NiFe/CoFeB(付着量既知)/Cu/CoFeB(付着量既知)/Ru/CoFeB(付着量既知)/PdPtMn/Ta(付着量既知)構造とし、Ru膜、その他のNiFe膜、Cu膜、及び、PdPtMn膜について、それぞれの分析線の感度係数を基にして、上において測定された蛍光X線強度からFP法を用いて、各Ta膜及び各CoFeB膜における吸収効果を取り入れてその付着量を再計算する。
【0043】
図5における右側の数値は、この様に補正した感度係数を用いて再計算した結果得られた各膜の膜厚であり、各膜の膜厚は、成膜時に設定した膜厚より若干薄くなっている。これは、設定した膜厚は、単層膜を同じ成膜条件で比較的厚く堆積させた時の成膜速度から評価しているため、単層膜の膜厚が表面に必然的に形成される自然酸化を含んだ膜厚となり、スピンバルブ膜における実際の膜厚より若干厚くなるためであると考えられる。
【0044】
再計算の結果、Ru膜の膜厚は、再計算前の7.1Åに対して6.9Åとなり、再計算前に比べて約3%補正された。
これは、主に、基板上のTa層(41Å)によるRu−Lα線の吸収を補正したためである。
【0045】
この様に、本発明では蛍光X線を用いて膜厚測定する際に、分析対象となる膜の蛍光X線に対する感度係数を、標準試料の成膜時の膜構造を反映するように補正しているので、分析対象の多層金属膜における膜厚を精度良く測定することが可能になる。
【0046】
また、本発明においては、標準試料を作成する際に、下地層及び保護層となるTa膜との間に、CoFeB膜を介在させて、Ta膜とRu膜の屈折率の差が小さいことによる界面の分離不良を改善しているので、標準試料を構成する各膜の膜厚を測定するためのX線反射率測定における反射X線強度を各膜毎により正確に求めることができ、それによって、膜厚の絶対精度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、本発明においては、分析対象の多層金属膜における膜構造も、成膜時の膜構造を反映するように、同じ材料からなる膜を分離して再計算しているので、対象となる分析層の膜厚を精度良く求めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明は実施の形態に記載した構成に限られるものではなく、各種の変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態の説明においては、標準試料を構成する各膜の付着量をX線反射率測定法を用いて求めているが、RBS法(ラザフォード後方散乱分析法)を用いて求めても良いものである。
【0049】
また、RBS法を用いる場合、X線反射率測定法と相補的に用いても良いものである。
即ち、RBS法によって求めた付着量を、X線反射率測定法によって得たデータを最小二乗フィッティングする際の初期値として用いることによって、付着量をより正確に求めることが可能になる。
【0050】
また、上記の実施の形態においては、スピンバルブ膜の蛍光X線による膜厚測定において、2層存在するTa膜を同じ波長の蛍光X線、即ち、Ta−Lα線を用いて測定し、また、3層存在するCoFeB膜を同じ波長のCo−Kα線を用いて強度測定を行っているが、各層毎に異なった波長の蛍光X線を用いて強度測定を行っても良いものである。
例えば、X線入射面に近いTa膜に対しては、他の層における吸収の大きな波長のTa−Mα線を用い、下層に対しては吸収が相対的に小さなTa−Lα線を用いることによって、FP法によって計算する際に、分離した結果を得ることができる。
【0051】
また、この様な異なった波長の蛍光X線による強度測定の結果と、成膜時の成膜時間に基づいて付着量を分割する手法とを相補的に用いることによって、より精度の高い付着量分離が可能になり、それによって、吸収効果をより正確に反映することが可能になる。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、分析対象となる金属多層膜をフェリスピンバルブ膜とし、その内のピンド層を構成するRu膜の膜厚を測定しているが、Ru膜に限られるものではなく、中間層を構成するCu膜の膜厚、或いは、フリー層を構成するNiFe膜或いはCoFeB膜、さらには、反強磁性層を構成するPdPtMn膜の膜厚測定にも適用されるものであり、さらには、スピンバルブ膜以外の他の金属多層膜にも適用されるものである。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、標準試料においては、互いに隣接する層の間の屈折率差を大きくするためにTa膜とRu膜との間にCoFeB膜を介在させているが、CoFeB膜に限られるものではなく、Bを含まないCoFe膜でも良いし、或いは、Ru膜と屈折率が大きく異なる金属膜を用いても良いものである。
【0054】
また、分析対象となる分析層がRu膜でない場合、標準試料を構成する分析層と分析層を挟む下地層及び保護層との屈折率差が大きな場合、CoFeB膜等の屈折率差を大きくするための膜を介在させる必要は必ずしもない。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、蛍光X線を用いて膜厚測定を行う際に、複数の非分析層における吸収効果を、成膜時の膜構造に応じて分離して考慮しているので、高精度の膜厚測定が可能になり、また、この様な膜厚測定法を積層フェリスピンバルブ膜を用いた薄膜磁気ヘッドの製造ラインの工程管理に適用することによって、品質の均一化、不良品の検査を効果的に行うことができ、ひいては、薄膜磁気ヘッドの低コスト化、高品質化に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態における感度直線作成フロー図である。
【図3】本発明の実施の形態における感度直線図である。
【図4】本発明の実施の形態における試料構造を反映した強度計算モデルによる感度直線図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるスピンバルブ膜の膜厚の測定フロー図である。
Claims (8)
- 標準試料を、分析層を前記分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、前記標準試料のX線反射率測定データにより求まる前記標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の膜厚及び密度から求めた前記各層の付着量を用いて感度直線を得ることを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 上記標準試料が、上記同じ材料からなる下地層及び保護層と分析層との間に介在層を配し、下地層/分析層界面のX線反射率よりも介在層/分析層界面のX線反射率が大きくなるように前記介在層の材料を選択することを特徴とする請求項1記載の蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 標準試料を、分析層を前記分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、ラザフォード後方散乱分析法により求めた前記標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の付着量を用いて感度直線を得ることを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 標準試料を、分析層を前記分析層と異なる同じ材料からなる下地層と保護層とで挟んだ多層構造とし、蛍光X線の理論強度を計算する際に、ラザフォード後方散乱分析法により求めた前記標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の付着量と、前記標準試料のX線反射率測定データにより求まる前記標準試料の成膜時の膜構造モデルによる各層の膜厚及び密度から求めた前記各層の付着量を相補的に用いて感度直線を得ることを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法によって求めた感度直線の傾きを用いて、同じ材料からなる層を複数含む金属多層膜を構成する各層の膜厚を測定する際に、前記複数の同じ材料からなる層について、複数の異なった波長の蛍光X線を用いることによって、前記複数の同じ材料からなる層の付着量を分離して求めることを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法によって求めた感度直線の傾きを用いて、同じ材料からなる層を複数含む金属多層膜を構成する各層の膜厚を測定する際に、前記複数の同じ材料からなる層の付着量を、一層にまとめた構造モデルによって計算したのち、前記各層の成膜時間により付着量を分割し、前記分割した付着量に基づいて前記金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚を再計算することを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 請求項5及び請求項6に記載の方法によって求めた付着量を相補的に用いて、上記金属多層膜中の分析対象となる層の膜厚を計算することを特徴とする蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
- 上記金属多層膜中の分析対象となる層が、積層フェリスピンバルブ膜におけるRu膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光X線を用いた膜厚測定方法。
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Applications Claiming Priority (1)
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JP09955399A JP3706989B2 (ja) | 1999-04-07 | 1999-04-07 | 蛍光x線を用いた膜厚測定方法 |
Publications (2)
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