JP3697369B2 - 磁気素子、磁気メモリ装置、磁気抵抗効果ヘッド、磁気ヘッドジンバルアッセンブリ、及び磁気記録システム - Google Patents

磁気素子、磁気メモリ装置、磁気抵抗効果ヘッド、磁気ヘッドジンバルアッセンブリ、及び磁気記録システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強磁性体と誘電体を含む磁気素子、及びそれを用いた磁気メモリ装置、磁気ヘッド、磁気ヘッドアッセンブリ、及び磁気記録システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気抵抗効果は、ある種の磁性体に磁界を加えることにより電気抵抗が変化する現象である。このような磁性層の磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子(MR素子)は、磁気ヘッド、磁気センサなどに使用されており、さらには磁気記憶素子(磁気抵抗効果メモリ)などが提案されている。このようなMR素子には、外部磁界に対する感度が大きいこと、応答速度が早いことなどが要求されている。
【0003】
強磁性体を用いたMR素子は、温度安定性に優れ、使用温度範囲が広いというような特徴を有しており、従来からNiFe合金などの強磁性合金の薄膜が使用されてきた。しかし、その磁気抵抗変化率は 2〜3%程度と小さいため、これを用いた磁気ヘッドでは十分な感度が得られないという問題があった。
【0004】
一方、近年、磁性層と非磁性層とを数nmの周期で積層した積層膜がスピンの方向に依存して巨大磁気抵抗効果(GMR)を示す材料として注目されている。例えば、Fe/Cr人工格子膜(Phys. Rev. Lett.61, 2472(1988))、Co/Cu人工格子膜(J.Mag. Mag. Mater.94, L1(1991))などの磁性層間の相互作用を反強磁性結合させたものが見出されている。しかし、磁性層間の反強磁性結合を利用した金属人工格子膜は反強磁性交換結合定数が大きいため、飽和磁界が大きく、またヒステリシスも非常に大きいという問題を有している。
【0005】
また、強磁性層/非磁性層/強磁性層のサンドイッチ膜において、非磁性層の膜厚を厚くすると共に、一方の強磁性層に接して反強磁性層などを設け、交換異方性により強磁性層の磁化を固着し、他方の強磁性層の磁化のみを外部磁界で容易にスイッチさせるようにしたスピンバルブ膜が開発されている。しかし、スピンバルブ膜は抵抗が小さく出力電圧が小さいために、大きな出力電圧を得るためにはセンス電流を大きくする必要がある。このため、スピンバルブ膜を使用した磁気ヘッドなどでは、ESDピン反転などの問題が存在する。MR素子を用いたメモリなどを考慮しても、非磁性金属を中間層とした場合には大きな出力電圧が得られないという同様の問題が存在する。
【0006】
また、上述したような多層膜(例えば金属人工格子膜)に対して電流を膜面に垂直方向に流す、いわゆる垂直磁気抵抗効果を利用すると、非常に大きな磁気抵抗変化率が得られることが知られている(Phys. Rev. Lett.66, 3060(1991))。しかし、この場合には電流パスが小さく、また各層が金属であるために抵抗が小さいことから、サブミクロン以下に微細加工しないと室温で磁気抵抗効果を測定できないという問題がある。
【0007】
さらに、上述した多層膜構造とは異なり、非磁性金属マトリックス中に磁性超微粒子を分散させたグラニュラー膜においても、スピンに依存した伝導に基づく巨大磁気抵抗効果が見出されている(Phys. Rev. Lett.68, 3745(1992))。このようなグラニュラー膜においては、磁界を加えない状態では磁性超微粒子の性質により、各磁性超微粒子のスピンが互いに不規則な方向を向いているために電気抵抗が大きく、磁界を加えて各スピンを磁界の方向に揃えると抵抗が低下し、その結果スピンに依存した磁気抵抗効果が発現する。しかし、この場合の磁性超微粒子は超常磁性を示すため、飽和磁界が本質的に非常に大きいという問題を有している。
【0008】
一方、スピン依存散乱とはメカニズムを異にする、強磁性トンネル効果に基く巨大磁気抵抗効果が見出されている。これは 2つの強磁性金属層の間に誘電体層を挿入したサンドイッチ膜において、膜面に垂直に電流を流して誘電体層のトンネル電流を利用するものである。例えば、保磁力の小さい強磁性金属層のスピンのみを反転させると、 2つの強磁性金属層のスピンが互いに平行なときと反平行なときでトンネル電流が大きく異なるために巨大磁気抵抗効果が得られる。
【0009】
このような強磁性トンネル接合素子は、比較的大きな磁気抵抗変化率が得られるものの、数μm 2 程度の微細素子に加工すると抵抗値が 1〜 10MΩと大きくなり、応答速度や雑音などの点で問題がある。さらに、トンネル効果を発現させるためには誘電体層の厚さを数nm以下と薄くする必要があり、そのような誘電体層を均一にしかも安定して作製することは困難であるため、磁気抵抗変化率のバラツキが大きいという問題がある。また、所望の出力電圧値を得るために、強磁性トンネル接合素子に流す電流値を増やすと磁気抵抗変化率がかなり減少するという問題がある(Phys. Rev. Lett.74, 3273(1995))。
【0010】
また、誘電体中に分散させた 2〜 4nm程度のCo微粒子を介した強磁性トンネル接合が提案されている(Phys. Rev. B56(10), R5747(1997))。しかし、このようなCo微粒子は粒径が小さいために超常磁性を示し、前述したグラニュラー膜と同様に、飽和磁界が本質的に大きいという問題を有している。
【0011】
さらに、Fe/Ge/Fe/Ge/強磁性体構造の 2重トンネル接合において、スピン偏極共鳴トンネル効果により大きな磁気抵抗変化率が得られることが理論上予想されている(Phys. Rev. B56, 5484(1997))。しかし、これは8K程度の極低温での結果であり、室温でこのような現象が起こることは予想されていないと共に、 2重トンネル接合を実際に作製した例は報告されていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のスピン依存散乱を利用した磁気抵抗効果素子において、反強磁性結合を利用した金属人工格子膜は、飽和磁界やヒステリシスが非常に大きいという問題を有している。また、スピンバルプ膜では大きなセンス電流を流さないと大きな出力電圧が得られず、ESDピン反転が発生しやすいというような問題がある。さらに、グラニュラー膜は磁性微粒子が超常磁性を示すため、飽和磁界が本質的に大きいという問題を有している。
【0013】
一方、強磁性トンネル接合素子は、室温で比較的大きな磁気抵抗変化率が得られ、また飽和磁界が小さいというような特徴を有する反面、微細素子に加工した際に抵抗が MΩと大きくなり、これにより応答速度や雑音などの点で問題があると共に、所望の出力電圧値を得るために素子に流す電流値を増やすと磁気抵抗変化率が大幅に減少するという問題を有している。
【0014】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、大きな磁気抵抗変化率および小さい飽和磁界を有し、かつ素子抵抗値が比較的小さく、また素子に流す電流(または電圧)値を増やしても磁気抵抗変化率の減少が少なく、大きな出力電圧(または出力電流)が得られ、さらにはバラツキが小さく安定した特性が得られる磁気素子、およびそれを用いた磁気ヘッドや磁気記憶素子などの磁気装置を提磁気部品、電子部品を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載したように、誘電体と、誘電体と同体積以上の強磁性体とを備える強磁性体―誘電体混合層と、強磁性体―誘電体混合層と積層された第一及び第二のトンネル誘電体層と、強磁性体−誘電体混合層と前記第一のトンネル誘電体層を介して近接配置された第1の強磁性層と、強磁性体―誘電体混合層と第二のトンネル誘電体層を介して近接配置された第2の強磁性層とを備え、前記強磁性体−誘電体混合層中の誘電体は、前記強磁性体からなるマトリックス中に分散配置されていることを特徴とする磁気素子を提供する。
【0016】
また、本発明は、請求項2に記載したように、誘電体と、前記誘電体と同体積以上の強磁性体とを備える強磁性体―誘電体混合層と、前記強磁性体―誘電体混合層と積層された第一及び第二の誘電体トンネル障壁と、前記強磁性体−誘電体混合層と前記第一の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第1の強磁性層と、前記強磁性体―誘電体混合層と前記第二の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第2の強磁性層とを備え、前記第一及び第二の誘電体トンネル障壁は同一の誘電体層からなり、前記第1及び第2の強磁性層は前記誘電体層の同一表面に離れて形成されていることを特徴とする磁気素子を提供する。
【0017】
本発明の磁気素子は、強磁性体−誘電体混合層と強磁性層との間に誘電体トンネル障壁を介してトンネル電流を流すと共に、これらのうち保磁力の小さい層のスピンをスイッチさせることにより、磁気抵抗効果を発現させるものである。従って、強磁性体―誘電体混合層の強磁性体はスピン(磁化)の固着あるいは自由回転を持つために、所定の保磁力を備えるものである。
【0018】
また、本発明の磁気素子において、強磁性体−誘電体混合層と誘電体層との積層膜は、複数層の強磁性体−誘電体混合層を有していてもよく、この場合は多重接合を構成し積層膜構造は誘電体層/(強磁性体−誘電体混合層/誘電体層)N (N≧1:積層数)となる。
【0019】
本発明の磁気素子の具体的な構造としては、誘電体層/(強磁性体−誘電体混合層/誘電体層)N 構造の積層膜と強磁性層とを積層配置した構造などが挙げられる。
【0020】
本発明の磁気素子は、磁気抵抗効果ヘッド、磁界センサ、磁気ヘッドアッセンブリ、及び磁気ディスク装置等の磁気記録システムに用いることができ、その高性能化、及び高信頼性化等に大きく寄与するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
まず、第一の実施形態により、本発明の磁気素子が低磁界で大きな磁気抵抗変化率を発現する原理について説明する。
【0022】
図1は本発明の磁気素子の基本構造を示す図であり、電圧供給手段、及び電圧計が接続された強磁性トンネル接合の断面図を示す。強磁性トンネル接合は、強磁性層1と、誘電体トンネル障壁層2/(強磁性体−誘電体混合層3/誘電体トンネル障壁層4)1 の積層膜5と、電極層8をからなる2重の強磁性トンネル接合を備える。図中の矢印はスピン方向を示している。電源9は上記2重トンネル接合に電圧を付与するものであり、電圧計10はその結果、強磁性層1と電極層8との間の電位差を測定する手段である。
【0023】
本実施形態の磁気素子の強磁性体−誘電体混合層3は、例えば図2(a)乃至(c)に示すように、強磁性体6を誘電体7と体積において同等以上含むものであり、超常磁性を示さず有限の保磁力を持つ強磁性体である。理想的には、強磁性体6のスピンは一方向に揃って向いていることが望ましい。
【0024】
このような構造において、強磁性層1と、誘電体層2/(強磁性体−誘電体混合層3/誘電体層4)1 の積層膜5を介して隣接する電極層8との間に電源9を用いて電圧を印加すると、強磁性層1の伝導電子は誘電体トンネル障壁2を介して強磁性体−誘電体混合層3へ伝導し、トンネル電流が流れる。本発明の強磁性体−誘電体混合層3は 2つの薄い誘電体トンネル障壁層2、4によって挟まれており各誘電体トンネル層2、4を介して強磁性体電極層1と強磁性体−誘電体混合層3との間および強磁性体−誘電体混合層3と電極層5との間にそれぞれトンネル電流が流れるように構成されている。
【0025】
各トンネル障壁層を介した電子のトンネル伝導においてスピンの方向は一般に保存される。このように伝導する電子のスピンが保存される状態で外部から磁界を印加することを次に説明する。
【0026】
初期状態では、図1(a)に示すように、強磁性層1と強磁性体6のスピンが同じ方向を向いているものとする。このとき、強磁性層1および強磁性体6のスピンは保存されたままトンネル伝導するので、図3(a)に示すように、状態密度の大きいスピンバンドの電子(図3(a)では↓で示したスピン電子)が大きく伝導に寄与し、電子はトンネル伝導しやすい。すなわち抵抗は小さい。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、強磁性層1と強磁性体3のうち保磁力が相対的に小さい方のスピン(図1では強磁性層1のスピンとした。)のみが反転する程度の小さな外部磁界を印加する。このとき、図3(b)に示すように、各磁性層1、5のいずれのスピンバンドも状態密度が小さいスピンバンドを経るので、電子は図3(a)に比べてトンネル伝導しにくくなる。すなわち抵抗は大きくなる。
【0028】
このように、外部磁界により保磁力の小さい磁性層のスピンのみ反転させることによって、巨大な磁気抵抗変化率を得ることができる。また、以上の機構は強磁性体6の保磁力を強磁性層1のそれよりも小さいものとし、強磁性体6の磁化をスピン反転しても同様である。
保磁力の小さい軟磁性体を材料として選択すれば飽和磁界は小さくなるため、高感度化することが可能である。
【0029】
以上説明したような、強磁性体6を誘電体7と体積にして同等以上含む強磁性体−誘電体混合層3は、超常磁性ではなく、強磁性体であるため、従来のグラニュラーGMR材料やグラニュラーTMR材料のように飽和磁界が大きいという問題はない。
【0030】
また、本発明の誘電体を2層以上含む多重トンネル接合は、通常のトンネル接合に比較して電気抵抗が1桁から2桁小さく、またバラツキが小さく安定した特性が得られる。また、誘電体トンネル障壁層2,4が少なくとも 2層以上存在するため、接合に実効的に付与される電圧が小さく、磁気抵抗変化率の電圧依存性による減少も小さく、所望の出力電圧値を得るために磁気素子に流す電流値を増やしても磁気抵抗変化率の低下が少ない。
【0031】
そして、強磁性体−誘電体混合層3は、誘電体7と同等以上の体積を有する強磁性体6を含むため、強磁性体のスピンが揃いやすくなり、これにより大きな磁気抵抗効果を得ることができる。ここで、強磁性体6と誘電体7との比率(体積比)は、具体的には1:1より強磁性体が多くなるように設定することが好ましい。このような場合において、上記したように強磁性体6のスピンが揃いやすくなり、より大きな磁気抵抗効果を得ることかできる。強磁性体−誘電体混合層3は、特に強磁性体6からなるマトリックス中に誘電体7が分散したような状態(例えば図2(a)や(b)の平面概念図に示したような状態)であることが好ましく、このような場合には強磁性体のスピンが特に揃いやすくなると共に、強磁性体6の結晶性が向上するため、より大きな磁気抵抗効果を得ることが可能となる。
【0032】
本発明の磁気素子は、磁気抵抗効果型磁気ヘッド、磁界センサ、磁気記録素子などに適用することができる。この場合、特に本発明の磁気素子を構成する磁性層には一軸異方性が付与されていることが好ましい。また、これら磁性層のうちの 1層を磁化固着層(ピン層)として設計する場合には、強磁性層1または強磁性体−誘電体混合層3に接して反強磁性層を付与し、バイアス磁界を印加するようにしてもよい。
【0033】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施形態に関る抵抗変化を電流計11にて測定する磁気素子に関る。図4に示す磁気素子は、強磁性体電極層1/誘電体トンネル障壁層1/強磁性体−誘電体混合層3/誘電体トンネル障壁層4/電極層5からなる積層膜16を有している。第2の電極層5は強磁性体金属および非磁性体金属のいずれでもよい。
【0034】
このように、強磁性体電極層1と強磁性体−誘電体混合層3のうち、一方の磁性層のスピンを反転させることによって、巨大磁気抵抗効果が得られる。外部磁界などによりスピン反転させる磁性層は、強磁性体電極層1と強磁性体−誘電体混合層3のうち保磁力が小さい方の磁性層であればよく、特に上記したように強磁性体電極層1に限定されるものではない。
【0035】
尚、図4には便宜的に、抵抗の変化を測定する手段として電流計及び電圧計を共に示したが、用途に応じて適宜いずれかの測定手段を選択して設ければすればよい。図4以降の図面においても同様である。
【0036】
本発明の磁気素子において、強磁性体−誘電体混合層3は1層に限られるものではなく、例えば図5に示すように、複数の強磁性体−誘電体混合層3a、3b、3cと誘電体層2、4a、4b、4cとを交互に積層配置して、3重以上の多重強磁性トンネル接合を有する構成とすることもできる。すなわち、本発明の磁気素子では、強磁性体電極層1/誘電体層2/ (強磁性体−誘電体混合層3/誘電体層4)N /電極層5構造の積層膜(積層数:N≧1)を採用してN+1重トンネル接合とすることができる。
【0037】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に関る、膜面に沿って電流を流すプラーナ型の素子であり、強磁性体−誘電体混合層13と積層された誘電体トンネル層14の上表面上に、強磁性体電極層11、15が分離された状態で配置されている。ここで、強磁性体電極11と強磁性体―誘電体混合層13との間には第一の誘電体トンネル障壁が、強磁性体電極15と強磁性体―誘電体混合層13との間には第二の誘電体トンネル障壁が存在することとなり、誘電体トンネル層14によって二つのトンネル障壁を得ている。電極1、15が同一膜面上に形成されることからここではプラーナ型素子と称する。尚、この素子において、トンネル電流は各トンネル障壁を介して夫々誘電体トンネル層14の主面と垂直方向に流れ、強磁性体―誘電体混合層13中の電流の流れは、膜面と平行方向に流れる。
【0038】
プラーナ型磁気素子は微細加工技術を用いて容易に作製することができるため、安定した特性が得られると共に、素子の高密度化を容易に達成することが可能である。
図6において17は基板であり、この基板17が誘電体からなる場合には、下側の誘電体層を省略することができ、図6に示すように基板17主面上に強磁性体―誘電体混合層13が形成されている。このような場合には、第一及び第2の実施形態の素子において用いられた誘電体層2は必ずしも必要でなく、(強磁性体−誘電体混合層13/誘電体トンネル層14)N の積層膜(積層数N≧1)が用いられる。
【0039】
また、このようなプラーナ型の素子構造においては、図7に示すように誘電体層12/強磁性体−誘電体混合層13/誘電体層14の積層膜の下側に、低抵抗の下地層18を設けてもよい。下地層18は強磁性金属であっても、また非磁性金属であってもよい。
(第4の実施の形態)
プラーナ型磁気素子の応用例としては、図8にその断面図を示すように、エッジ接合型素子構造を適用することもできる。図8に示すエッジ接合型磁気素子において、基板17上には強磁性体電極層11と絶縁層19が順に積層されており、これらの積層膜の端面は基板面に対して所定の角度θで傾斜された傾斜端面である。誘電体層12/(強磁性体−誘電体混合層13/誘電体層14)の積層膜と上側の電極層15は、下側の強磁性体電極層11と絶縁層19との積層膜の傾斜端面を覆うように順に積層形成されている。
【0040】
上記したエッジ接合型磁気素子では、傾斜部において基板面と平行な方向に接続された強磁性体電極層11と強磁性体−誘電体混合層13との接合部がトンネル障壁層12を介して強磁性トンネル接合を構成している。なお、上下 2層の電極層11、15のうち、一方の電極層には強磁性体に代えて非磁性金属を用いてもよい。このようなエッジ接合型磁気素子においても、第3の実施形態において説明したプラーナ型磁気素子と同様な効果が得られる。
【0041】
また、プラーナ型磁気素子やエッジ接合型磁気素子においても、バイアス磁界印加膜(反強磁性層など)を必要に応じて付与することができる。そして、強磁性体電極層11と強磁性体−誘電体混合層13との間にトンネル電流を流し、保磁力の小さい磁性層、例えば強磁性体電極層11のスピンの方向を外部磁界などで変化させることによって、大きな磁気抵抗変化率を発現させることができる。
【0042】
以上、第1乃至第4の実施形態により本発明の磁気素子の基本構造と変形例を説明したが、次に本発明の磁気素子に用いられる好ましい層材料と層構成について、次に説明する。
【0043】
強磁性体電極層1、11や強磁性体−誘電体混合層3、3n、13中の強磁性体6には、種々の強磁性材料を使用することができる。例えば、強磁性体電極層1、11もしくは強磁性体−誘電体混合層3、3n、13を磁化固着層(ピン層)とする場合には、磁気異方性の大きいCo、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−希土類合金などを用いることが好ましい。
【0044】
また、磁化自由層(フリー層)として用いる場合には、特に強磁性材料に制限はなく、Fe、Co、Niおよびそれらを含む合金、スピン分極率の大きいマグネタイト、CrO2 、RXMnO3-y (Rは希土類金属、XはCa、BaおよびSrから選ばれる少なくとも 1種の元素、 yは 0に近い値)などの酸化物系磁性材料、NiMnSb、PtMnSbなどのホイスラー合金などを使用することができる。磁性層に酸化物やホイスラー合金などのハーフメタルを用いると、さらにバイアス電圧に伴う磁気抵抗変化率の低減を抑制することができる。磁性層をソフト層とするために、ハード膜に接してソフト層を付与した 2層以上の積層磁性膜を用いることもできる。また、ソフト磁性層自体に反強磁性結合した 2層以上の多層膜を使用することも可能である。このような反平行に結合させた積層膜によれば、強磁性膜から磁束が外部にもれることを防ぐことができ、例えば記録層をより安定化することができる。
【0045】
なお、上記したような磁性材料は、Ag、Cu、Au、Al、Mg、Si、Bi、Ta、B、C、O、N、Si、Pd、Pt、Zr、Ir、W、Mo、Nbなどの非磁性元素を多少含んでいても、強磁性を失わない限り特に問題はない。
【0046】
磁性層をハード層として膜設計する場合においても、磁性層の磁化を一方向に固着する方法、つまりFeMn、PtMn、PtCrMn、NiMn、IrMn、NiO、Fe2 O3 などの反強磁性膜を付与した場合には、基本的に磁性体に制限はなく、上記したような各種の磁性材料を使用することができる。さらに、磁性層の磁化を一方向に固着する際に、Co/Ru/Co、Co/Ir/Coなどの積層膜を介して反強磁性膜を設けてもよい。
【0047】
また、電極層15には強磁性金属もしくは非磁性金属が用いられる。電極層15を強磁性金属で構成する場合、強磁性体電極層11と必ずしも同じ材料で構成する必要はない。これら強磁性体電極層11、15は単層構造に限らず、非磁性層を介して配置した2以上の強磁性層を有し、これら強磁性層の磁化を互いに反平行となるように結合させた積層膜で構成することもできる。このような反平行に結合させた積層膜によれば、強磁性体電極層11,15から磁束が外部に漏れることを防ぐことができる。
【0048】
強磁性体電極層1、11や強磁性体−誘電体混合層3、3n、13(強磁性体で構成した場合の電極層16を含む)は、それぞれ膜面内に一軸磁気異方性を有することが望ましい。これによって、急峻な磁化反転を起こすことができると共に、磁化状態を安定して保持することができる。
【0049】
強磁性体−誘電体混合層3、3n、13中の誘電体7や誘電体層2、4、4n、12、14には、Al2 O3 、SiO2 、MgO、AlN、Bi2 O3 、MgF2 、CaF2 などの種々の誘電体材料を使用することができる。強磁性体−誘電体混合層13は、このような誘電体7で強磁性体6を分断することにより得られる。なお、上記した酸化物、窒化物、フッ化物などでは、それぞれの元素の欠損が一般的に存在するが、そのような誘電体であっても何等問題はない。
【0050】
強磁性体−誘電体混合層3、3n、13の膜厚は、超常磁性にならない程度の厚さが必要であり、例えば0.4nm以上とすることが好ましい。また、作製上は50nm以下とすることが好ましい。特に、強磁性体−誘電体混合層13の膜厚が3.5nm以下のとき、強磁性体−誘電体混合層13中の薄い強磁性体6(強磁性マトリックス)中に量子準位が形成される。強磁性体電極層11のスピンがマグノン励起により揺らいだスピンは、この量子準位を介してトンネルしにくいため、MR変化率のマグノン励起による低下をさらに抑えることができる。また、強磁性体マトリックス6中に誘電体7を分散させた面内構造を得る上で、強磁性体−誘電体混合層13の膜厚は1.9nm以上とすることが好ましい。
【0051】
また、電極層1、5、11、15の厚さは例えば0.1〜100nm程度とすることが好ましい。誘電体層2、4、4n、12、14の厚さは薄い方が好ましいが、特に制限はなく、作製上10nm以下とすることが好ましい。より好ましくは3nm以下である。基板は特に限定されるものではなく、Si、SiO2 、Al2 O3 、スピネル、MgO、AlNなどの各種基板上に本発明の積層膜を作製することができる。
【0052】
このような各層からなる磁気素子は典型的には薄膜状であり、分子線エピタキシー(MBE)法、各種スパッタ法、蒸着法などの通常の薄膜形成方法を適用して作製することができる。誘電体7と同等以上の強磁性体6を含む強磁性体−誘電体混合層3、3n、13、特に強磁性体マトリックス6中に誘電体7を分散させた強磁性体−誘電体混合層3、3n、13は、強磁性体6と誘電体7を交互積層させることにより容易に作製することができる。
【0053】
誘電体トンネル障壁層は、Al等の金属層、Mgなどの希土類元素層、Si等の半導体層やこれらの元素を含む合金層等を成膜した後、酸素ガスまたは酸素とArなどの希ガスの混合ガスを導入して酸化する方法や、Al等の金属層、Mgなどの希土類元素層、Si等の半導体層やこれらの元素を含む合金層等を成膜した後、酸素ガスまたは酸素とArなどの希ガスの混合ガスを導入してプラズマ酸化する方法や、誘電体ターゲットを用いてダイレクトスパッタする方法や、このダイレクトスパッタを行った後に高純度酸素を用いて酸化する、あるいはプラズマ酸化する等の様々な方法を用いることができる。
【0054】
以上、第一乃至第四の実施形態を通して説明した磁気素子は、続いて説明する磁気抵抗効果ヘッドやこれを搭載した磁気ヘッドアッセンブリ、磁気記録システム、さらには、磁気記憶素子や集積化磁気記憶装置に用いることができる。
【0055】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の素子構造について説明する。図9乃至図11は本発明の磁気素子を磁気抵抗効果ヘッドとして使用する場合の膜構造を示す断面図である。これらの図において、21は強磁性体−誘電体混合層(誘電体と強磁性体―誘電体混合層の多層積層膜で置き換えてもよい)、22は強磁性体電極層、23は例えば強磁性体からなる電極層、24は誘電体トンネル障壁層である。なお、図11において、25は強磁性体−誘電体混合層と誘電体トンネル障壁層との多層積層膜である。このような膜構造において、強磁性体−誘電体混合層21または(強磁性体−誘電体混合層/誘電体トンネル障壁層)からなる積層膜25と、強磁性体電極層22、23との間に実効的に電圧が印加されると、誘電体トンネル障壁層に挟まれた強磁性体の伝導電子はトンネル効果によって伝導する。
【0056】
図9乃至図11に示すように、本発明の磁気素子を磁気ヘッドとして使用する場合には、強磁性体電極層22、23や強磁性体−誘電体混合層21、25に接して、FeMn、PtMn、IrMn、PtCrMn、NiMn、NiO、Fe2 O3 などの反強磁性材料を含む反強磁性膜26を配置し、この反強磁性膜26からバイアス磁界を印加することによって、磁性層のスピンを一方向に固着することが好ましい。
【0057】
また、図9乃至図11に示す膜構造において、各層の磁気特性 (ソフト磁性およびハード磁性)を組合せることで良好な磁気ヘッドを構成することができる。例えば、図9において強磁性体−誘電体混合層21はソフト磁性層、強磁性体電極層22、23はハード磁性層である。図10において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層21と強磁性体電極層23はハード磁性層である。図10において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層と誘電体との多層積層膜25はハード磁性層である。
【0058】
上述の組合せにおいて、磁場中成膜、磁場中熱処理により隣り合う磁性層のスピンを略直交させることによって、HDDの記録媒体からの漏れ磁束に対して良好な線形応答性が得られる。このような構造はいかなる磁気ヘッド構造においても使用することができる。
【0059】
図12は、以上説明したような磁気抵抗効果ヘッドを搭載した磁気ヘッドアッセンブリの斜視図を示す。
【0060】
アクチュエータアームは、磁気ディスク装置内の固定軸に固定されるための穴を有し、アクチュエータアームの一端にはサスペンションが接続されている。
【0061】
サスペンションの先端には上述の各形態にある磁気抵抗効果ヘッドを搭載したヘッドスライダが取り付けられている。また、サスペンションは信号の書き込み及び読み取り用のリード線が配線され、このリード線の一端とヘッドスライダに組み込まれた磁気抵抗効果ヘッドの各電極とが電気的に接続され、リード線の他端は電極パッドに接続されている。
【0062】
図13は、本発明の磁気記録システムの一種である、図12に示す磁気ヘッドアッセンブリを搭載した磁気ディスク装置の内部構造を示す斜視図である。
【0063】
磁気ディスクはスピンドルに装着され、図示せぬ駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示せぬモータにより回転する。磁気ディスクが浮上した状態で情報の記録再生を行うヘッドスライダは薄膜状のサスペンションの先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダは上記磁気抵抗効果再生ヘッドを具備している。
【0064】
磁気ディスクが回転すると、ヘッドスライダの媒体対向面は磁気ディスクの表面から所定量浮上した状態で保持される。
【0065】
サスペンションは図示せぬ駆動コイルを保持するボビン部等を有するアクチュエータアームの一端に接続されている。アクチュエータアームの他端にはリニアモータの1種であるボイスコイルモータが設けられている。ボイスコイルモータはアクチュエータアームのボビン部に巻き上げられた図示せぬ駆動コイルとこのコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0066】
アクチュエータアームは固定軸の上下2ヶ所に設けられた図示せぬボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータにより回転摺動が自在にできるようになっている。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の素子構造について説明する。図14〜図17は本発明の磁気素子を磁気記憶素子として使用する場合の膜構造例を示す断面図である。
【0067】
図14及び図15は破壊読出しを想定した場合の磁気記憶素子の素子構造である。この場合には、強磁性体電極層22、23や強磁性体−誘電体混合層21、25に接して、FeMn、PtMn、IrMn、PtCrMn、NiMn、NiOなどの反強磁性膜26を配置し、この反強磁性膜26からバイアス磁界を印加することによって、磁性層のスピンを一方向に固着することが好ましい。図14において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層21と強磁性体電極層23はハード磁性層である。図15において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層と誘電体との多層積層膜25はハード磁性層である。
【0068】
また、図16および図17は非破壊読出しを想定した場合の磁気記憶素子の素子構造であり、ソフト磁性層とハード磁性層とを適当に組合せることによって、読み出し層および書き込み層を設け、電流磁界でソフト磁性層の磁化を反転させることにより、書き込み層の情報を非破壊で読み出すことができる。図16において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層21と強磁性体電極層23はハード磁性層である。図17において、強磁性体電極層22はソフト磁性層、強磁性体−誘電体混合層21はハード磁性層である。下側の電極層は非磁性金属層27である。
【0069】
図18及び図19は夫々、非破壊読み出しに用いる磁気記憶素子の他の例を示す断面図である。
【0070】
強磁性体電極22、23、強磁性体―誘電体混合層21中の強磁性体の磁化を一方向に固着する手段としてFeMn、PtMn、PtCrMn、NiMn、IrMnなどの反強磁性体材料を含む反強磁性体膜26を積層形成することにより、強磁性体電極22、23や強磁性体―誘電体混合層21は複数回の印加磁界を受けても磁化反転を阻止でき、安定した信号強度を得ることができる。図18に示す構造では、強磁性体―誘電体混合層21が保磁力を有する記憶層である。図19に示す構造では、強磁性体層22が保磁力を有する記録層である。各保磁力は電流磁界の消費エネルギーを小さくするために、100Oe以下であることが好ましい。
【0071】
図18及び図19に示すいずれの構造においても、電圧計10を用いてその絶対値を測定することにより、隣り合った磁性層のスピン方向が平行か反平行か判断できる。尚、図18、図19では、電圧計10を用いた抵抗変化を測定する手段を示したが、電流計を用いて抵抗変化を測定することも可能である。
【0072】
以上、図14乃至図19の断面図を用いて磁気記憶素子の膜構造を説明した。これらの磁気記憶素子(セル)を単一基板上にアレイ状に複数個配置することで集積化された磁気記憶装置が得られる。この際、複数個の磁気記憶素子は一方向(ワード線方向)に互いに隣接する素子(セル)どうしでワード線を共有し、またワード線方向と同一方向あるいは直交する方向に互いに隣接する素子(セル)どうしでビット線を共有することにより集積化され、また低消費電力の磁気記憶装置を提供することが可能となる。
【0073】
図20は図18に示す断面構造を備えるセルを用いて、各セルとビット線及びワード線との配置を説明するための一例の断面図である。
【0074】
反強磁性膜26と強磁性層22の一部22bをビット線34と兼ねることで、微細加工する積層部を強磁性層22a、誘電体トンネル障壁層24、強磁性体―誘電体混合層21のみの薄い膜とすることが可能となり、加工精度の向上、エッチング等による加工ダメージの低減が可能となる。さらに、ピン層である反強磁性膜26と積層された強磁性体層23と、強磁性体―誘電体混合層21の面積を異なるものとしたことで加工精度、加工ダメージを低減することができる。尚、図20では、反強磁性層26と積層した強磁性体層23は、金属下地層30、コンタクトメタルを介して、図示を省略した、Si基板の主表面に形成された半導体技術によるCMOS電界効果トランジスタと接続されている。また、フリー層である強磁性体―誘電体混合層21の磁化反転はビット線(読み出し線)34とワード線35との合成磁界により行うものである。従って、ビット線34とワード線35とは直交する方向に配置され、ワード線35は図20の紙面垂直方向に延びている。既に述べたように、ビット線34は、紙面横方向にアレイ状に配置された他のセルと共有され、一方のワード線35は、紙面垂直方向にアレイ状に配置された他のセルと共有される。各セルの選択は、選択すべきセルにて互いに交叉するワード線35とビット線34に電流を流して行う。
【0075】
図21は、図20に示したセルをアレイ状に配置した回路の回路図である。磁気素子31をトランジスタ32、書き込みライン35、読み出しライン34などと共にアレイ状に複数個(本)微細加工することによって、集積化された磁気記録装置を作製することができる。
【0076】
以上は図20、図21を用いてCMOS電界効果トランジスタと接続された磁気素子について説明したが、次に、図22の斜視図を用いてダイオードと接続された磁気記素子(セル)について説明する。
【0077】
ワード線とビット線とが交叉した領域にSi−ダイオードと接続されたセルが配置されている。CMOS電界効果トランジスタにかえてSi-ダイオードを適用した以外のセルへ電流磁界の与える方法、アレイ状の配置等については、図20において説明した形態と同様とすることが可能であり、その詳細な説明は省略する。
【0078】
このようなダイオードを用いた磁気記憶素子の回路図は、図23(a)に示すようなものとなる。図23において、Isはセンス電流、Ibはビット線電流、Iwはワード線電流を示す。また、図23(b)には、この磁気記憶素子の斜視図を示す。各素子間、及び各信号線間には、互いを電気的に絶縁する層間絶縁膜が配置される。
【0079】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0080】
実施例1
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、Si/SiO2 基板またはSiO2 基板上に2重強磁性トンネル接合を作製した例を示す。
【0081】
まず、幅0.1mmの下部強磁性電極41としてFe(11nm)/Co80Pt20(2nm)を磁場中成膜した。次いで、メタルマスクを交換して下部電極41表面の酸化膜をバイアスエッチングした後、Al2 O3 とCo80Pt20をターゲットとして、Al2 O3 (1.5nm) /Co80Pt20−Al2 O3 混合層(1.7〜3.2nm)/Al2 O3 (2.5nm) の積層膜42を成膜した。成膜は交互スパッタにより実施した。
【0082】
その際、Co80Pt20の成膜時には基板バイアス400Wを印加した。基板バイアスを印加すると、Co80Pt20の膜厚を 2nm以上に厚くしても平坦なCo80Pt20−Al2 O3 混合層が作製できると共に、図2(a)〜(c)に示したように強磁性マトリックス中にAl2 O3 が分散したCoPt−Al2 O3 混合層が得られ、バイアスを印加しないときに比べてMR変化率が向上する。
【0083】
この後、メタルマスクを交換して、上部強磁性電極43としてCo90Fe10 (30nm)を成膜した。各層の成膜はArガス圧 2×10-3Torrのスパッタガス中でスパッタすることにより実施した。
【0084】
このようにして、Fe/Co80Pt20/(Al2 O3 /CoPt−Al2 O3 混合層/Al2 O3 )/Co9 Fe構造の 100μm2 角の 2重トンネル接合を作製した。強磁性体−誘電体混合層であるCoPt−Al2 O3 混合層は、Co80Pt20の設計膜厚 1.7〜 3.2nmに対して、それぞれ図2(a)〜(c)に示した構造を有していた。
【0085】
また、下部強磁性体電極を磁場中成膜して一軸異方性を付与すると、その有効磁場(静磁場)により上部のCoPt−Al2 O3 混合層および上部強磁性体電極(Co9 Fe)にも一軸異方性が付与されることが分かった。
【0086】
このような磁気素子のカー効果を測定した結果、保磁力が大きいCoPtと保磁力が比較的小さいFe/Co80Pt20、Co9 Feのヒステリシス曲線の足し合わせである保磁力差が存在する 2段のヒステリシス曲線が観測された。各試料の磁気抵抗効果曲線を図24〜図26に、また素子電圧の印加電流依存性の測定結果を図27に示す。なお、図24はCoPt−Al2 O3 混合層が図2(a)に示した面内構造を有する場合、図25はCoPt−Al2 O3 混合層が図2 (b)に示した面内構造を有する場合、図26はCoPt−Al2 O3 混合層が図2(c)に示した面内構造を有する場合である。
【0087】
素子抵抗は、通常のAlをプラズマ酸化して作製した 1重トンネル接合に比べて 1桁〜 2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。
【0088】
また、図24〜図26に示した磁気抵抗効果曲線を見ると、FeおよびCo9 Feは数10Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0089】
なお、誘電体としてSiO2 、AlN、MgO、Bi2 O3 、MgF2 、CaF2 を用いた場合においても、同様の傾向を示した。
【0090】
実施例2
スパッタ装置とメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上に下部電極としてNi80Fe10(10nm)/Co8 Pt2 (10nm)を成膜した後、Co80Pt20とSiO2 をターゲットとして、SiO2 /CoPt−SiO2 混合層/SiO2 積層膜の成膜を行った。成膜条件は実施例1と同様とした。この上に、上部電極としてCo90Fe10/Ni80Fe20を成膜した。
【0091】
このようにして、Ni80Fe20/Co80Pt20/(SiO2 /Co80Pt20−SiO2 混合層/SiO2 )/Co90Fe10/Ni80Fe20構造の 100μm2 角の 2重トンネル接合を作製した。強磁性体−誘電体混合層は、図2(b)に示した面内構造を有していた。
【0092】
得られた磁気素子のカー効果を測定した結果、保磁力が大きいCo80Pt20−SiO2 混合層と、保磁力が比較的小さいNi80Fe20/Co80Pt20、Co90Fe10/Ni80Fe20のヒステリシス曲線の足し合わせである保磁力差が存在する 2段のヒステリシス曲線が観測された。この試料の磁気抵抗効果曲線を図28に、規格化された磁気抵抗変化率の印加電流依存性の測定結果を図29に示す。
【0093】
素子抵抗は、通常の 1重トンネル接合に比べて 1桁〜 2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。
【0094】
また、図28に示した磁気抵抗効果曲線を見ると、Ni80Fe20/Co80Pt20およびCo90Fe10/Ni80Fe20は約 7Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0095】
なお、誘電体としてAl2 O3 、AlN、MgO、Bi2 O3 、MgF2 、 CaF2 を用いた場合においても、同様の傾向を示した。
【0096】
実施例3
スパッタ装置とメタルマスク、さらにリフトオフによる微細パターンを用いて、熱酸化Si基板上に図6に示した素子構造を作製した例を示す。
【0097】
まず、熱酸化Si基板上にFe30Co50Pt20とAl2 O3 をターゲットとして、Fe30Co50Pt20とAl2 O3 の交互スパッタを行った。その際、基板にメタルマスクをかぶせ、Fe30Co50Pt20の成膜時にはバイアス400Wをかけながら成膜を行い、 100μm2 角のSiO2 /Fe30Co50Pt20−SiO2 混合層/SiO2 構造の積層膜を作製した。強磁性体−誘電体混合層は図2(a)に示した面内構造を有していた。その他の成膜条件は実施例1と同様とした。
【0098】
その上に、上部強磁性体電極としてCo/Ni80Fe20/Auを成膜し、Crマスク露光器を用いてレジストをパタ−ニングした後、イオンエッチングにより 2μm のギャップ(電極11と電極15間の距離)を作製した。このようにして、図6に示した素子構造の接合を作製した。その後、試料を 200℃にて磁場中熱処理を行い、一軸異方性を付与した。
【0099】
この試料の磁気抵抗効果曲線を図30に、素子電圧の印加電流依存性の測定結果を図31に示す。素子抵抗は通常の 1重トンネル接合に比べて 1桁程度小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。
【0100】
また、図30に示した磁気抵抗効果曲線を見ると、Co/Ni80Fe20層は約 6Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0101】
なお、誘電体としてSiO2 、AlN、MgO、Bi2 O3 、MgF2 、CaF2 を用いた場合においても、同様の傾向を示した。
【0102】
実施例4
スパッタ装置とメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上にPt−Mn(20nm)/Co90Fe10(10nm)をArガス圧2×10-3Torrで成膜した後、Co90Fe10とAl2 O3 、およびNi81Fe19とAl2 O3 をターゲットとして、Co90Fe10とAl2 O3 の交互スパッタ、およびNi81Fe19とAl2 O3 の交互スパッタを行った。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0103】
上記した各交互スパッタによって、Al2 O3 /Co90Fe10−Al2 O3 混合層/Al2 O3 層状積層膜、Al2 O3 /Ni81Fe19−Al2 O3 混合層/Al2 O3 層状積層膜をそれぞれ作製した。これらの上にCo(5nm) /Pt−Mn(20nm)をそれぞれ作製した。
【0104】
このようにして、図10に示した素子構造の 100μm2 角の 2重トンネル接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理を行い、一方向異方性および一軸異方性を付与した。
【0105】
これら各試料の磁気抵抗変化率を図32に、素子電圧の印加電流依存性の測定結果を図33に示す。素子抵抗は通常の 1重トンネル接合に比べて 1桁〜 2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2〜 1/3程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。
【0106】
また、図32に示した磁気抵抗効果曲線を見ると、Co90Fe10層およびNi81Fe19層は約 9Oe 、 5.5Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0107】
なお、誘電体としてSiO2 、AlN、MgO、Bi2 O3 、MgF2 、CaF2 を用いた場合においても、同様の傾向を示した。
【0108】
実施例5
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上に表1に膜構造を示す 100μm 2 角の多重トンネル接合を作製した。これら各試料の磁気抵抗変化率と素子抵抗の測定結果を表1に併せて示す。なお、各素子の作製方法は実施例1と同様にした。
【0109】
【表1】
Figure 0003697369
【0110】
素子抵抗は通常の 1重トンネル接合に比べて 1桁〜2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。これらはMR値が大きくかつ低抵抗の素子を提供できることを示しており、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0111】
実施例6
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上にNi80Fe20/Co90Fe10/Al2 O3 (1.5nm) /CoPt−Al2 O3 (tnm) /Al2 O3 (2nm) /Co90Fe10/Ni80Fe20構造を有する 100μm 2 角の 2重トンネル接合を作製した。このような磁気素子を強磁性体−誘電体混合層の膜厚を変化させて複数作製し、磁気抵抗変化率の強磁性体−誘電体混合層の膜厚に対する依存性を測定、評価した。その結果を図34に示す。各試料の作製方法は実施例1と同様とした。
【0112】
素子抵抗は通常の 1重トンネル接合に比べて 1桁〜 2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の 1重トンネル接合に比べて 1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として用いた場合に有効であることが分かった。
【0113】
また、強磁性体−誘電体混合層の膜厚が 3.5nm以下のとき、強磁性体−誘電体混合層の薄い強磁性体(強磁性体マトリックス)中に量子準位が形成され、強磁性体電極のマグノン励起して揺らいだスピンは、この量子準位を介してトンネルし難くなり、MR変化率のマグノン励起による低下をさらに抑えることができることを示している。これらは、MR値が大きく低抵抗の素子を提供できることを示しており、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
実施例7
スパッタ装置を用いて、シリコン基板主表面の酸化シリコン膜上にTa下地膜を介して、図19の断面図に示すような、NiFe/CoFe強磁性体電極層22、Al23誘電体トンネル障壁層24、CoFe−Al23混合層21、IrMn反強磁性膜26を順次スパッタ法により形成した後、Ta保護層をIrMn膜26上に形成して積層膜とした。初期真空度2×10-7Torrにおいて、公知のフォトリソグラフィー技術、及びイオンミリング法により50μm幅の配線形状に加工して磁気素子を形成した。素子は設計膜厚をTa5nm/NiFe15nm/CoFe5nm/Al231.8nm/CoFe−Al23混合層4nm/Ir22Mn7818nm/Ta5nmとした本実施例のA素子と、その比較例としてB素子:Ta5nm/NiFe15nm/CoFe5nm/Al231.8nm/CoFe3nm/Ir22Mn7818nm/Ta5nmとした。
【0114】
トンネル障壁層24は、純Arガスを導入した真空雰囲気にて、Alターゲットを用いてCoFe層上に連続成膜した後、真空を破ることなく、つまり大気開放せずに酸素を導入してプラズマ雰囲気中にてAlを酸化することにより形成した。また、続く4nmの混合層21の成膜は、CoFeを3nm、Al23を1nmの成膜レートでRFバイアスを印加しながら行うことでCoFeリッチの膜とした。さらに、続くIrMn反強磁性膜26のスパッタ成膜には分圧1×10-3Torrの純Arガスを用いた。
【0115】
これらの層の成膜後、公知のフォトグラフィー技術、及びイオンミリング法によりTa保護膜上にトンネル接合の寸法を規定するレジストパターンを形成して、CoFe−Al23混合層4nm/Ir22Mn7818nm/Ta5nmをこのレジストパターンをマスクとして加工した。そして、このレジストパターンを残したまま300nm厚のAl23膜からなる層間絶縁膜を電子ビーム蒸着法等により蒸着した後、レジストパターンをリフトオフ法により除去した。続いて、上部配線を形成するためのレジストパターンを形成し、その後逆スパッタ法により基板表面をクリーニングを経てAl電極配線を形成した。続いて、ピン層に一方向異方性を導入するために上記積層膜を形成した基板を磁場中熱処理炉に導入して、磁場中にて熱処理することでピン層に一方向異方性を付与した。
【0116】
図35はA素子の印加磁界H(Oe)と得られた抵抗変化率MR(%)による磁気抵抗効果曲線を示す。約17(Oe)という小さい磁場で急峻に磁気抵抗が変化していることがわかる。尚、このような傾向は誘電体トンネル層の材料にSiO2、AlN、MgOを用いた素子でも同様の傾向を示した。
【0117】
また、図36には、A素子とB素子の印加電圧V(V)と規格化された抵抗変化率の関係を示す。A素子の抵抗変化率は印加電圧の変化に伴う減少度合いは、比較例であるB素子に比べて小さく、所望の出力電圧変化を得るために所定の電圧を印加しても磁気抵抗の減少が小さくとどまることがわかる。
実施例8
スパッタ装置を用いて、シリコン基板主表面上に酸化シリコン膜を介してTa50nmの下地膜を形成し、さらに図18に示す積層構造の、FeMn20nm/NiFe5nm/CoFe3nm/Al231.8nm/Co9Fe−Al23混合層3.5nm/Al232.5nm/CoFe3nm/NiFe5nm/FeMn20nmなる2重トンネル接合を備える積層膜を形成した。さらに、この積層膜上にTa5nmの保護層を形成した。その後、実施例7と同一の真空度において、同一技術を用いて50μm幅の下部配線形状にした。尚、Co9Fe−Al23混合層は実施例7と同一方法にて行った。
【0118】
Al23トンネル障壁層は純Arガスを導入し、Alターゲットを用いてAl層を真空中で成膜しその後真空を破ることなく酸素を導入し純酸素に曝すことにより薄く、かつ酸素欠陥のないトンネル障壁層を作成した。
【0119】
次に、実施例7と同一方法によりCoFe3nm/NiFe5nm/FeMn20nm/Ta5nm上に、トンネル接合面積を規定するためのレジストパターンを形成してCo9Fe層までイオンミリングした。さらにこのレジストを残したまま300nm厚のAl23膜からなる層間絶縁膜を電子ビーム蒸着した後、レジストのリフトオフを行った。次に上部配線を形成するためのレジストパターンを形成し、その後、表面を逆スパッタ法を用いてクリーニングした後に、Al電極配線を形成した。そして、続いて磁場中熱処理炉に導入して、ピン層に一方向異方性を導入して磁気素子を形成した。
【0120】
この磁気素子における、印加磁界H(Oe)と得られた抵抗変化率MR(%)による磁気抵抗効果曲線を図37に、また、印加電圧V(V)と規格化された抵抗変化率の関係を図38に示す。素子抵抗は通常のプラズマ酸化の方法に比べて1桁〜2桁小さく、大きなMR変化率が得られた。
【0121】
電圧依存性に伴う磁気抵抗変化率の減少の度合いも通常の1重トンネル接合に比べて1/2程度小さく、所望の電圧変化を得るため電流を流しても磁気抵抗の減少が小さく、磁気抵抗効果ヘッド、磁気センサ、磁気メモリ装置の素子として用いると有効であることがわかる。また、図37によると、Co9Fe−Al23混合層は約30Oeという小さい磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗効果ヘッド、磁気センサ、磁気メモリ装置の素子として用いると有効であることがわかる。尚、誘電体層にSiO2、AlN、あるいはMgOの他の誘電体を用いた素子においても上記と同様の傾向を示した。
実施例9
スパッタ装置を用いて、表面を熱酸化Siで覆われたSi基板主表面上に表1に示す構成の積層膜を形成した。各積層膜の平面形状は100μm2角とした。表1中、No.1〜No.5の積層膜は一重トンネル接合を備え、No.6〜No.11の積層膜は二重トンネル接合を備える。これら各積層膜の磁気抵抗変化率(%)、及び磁気抵抗変化率が半分の値になる電圧V1/2(V)の測定結果を併せて表1に示す。各層の含む材料は実施例1と異なるが、形成方法は実施例1と同一である。
【0122】
【表2】
Figure 0003697369
【0123】
電圧V1/2は一重トンネル接合よりも二重トンネル接合のほうが高く、高電圧においても大きなMR変化率が得られた。所望の電圧変化を得るために電流を流しても磁気抵抗の減少が小さいことから、高い印加電圧を素子に与えても大きい磁気抵抗変化率が得られることを示しており磁気抵抗効果ヘッド、磁気センサ、磁気メモリ素子として有効であることがわかる。
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気素子によれば、大きな磁気抵抗変化率および比較的小さな素子抵抗を得ることができ、さらには磁気抵抗変化率の電圧依存性を抑制することが可能となる。従って、大きな出力電圧が安定して得られる磁気素子が提供でき、このような磁気素子は磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気メモリ装置、磁気ヘッドアッセンブリ、磁気記録システム等の磁気装置の高性能化、及び高信頼性化等に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に関る磁気素子の基本構造図である。
【図2】 本発明の磁気素子における強磁性体−誘電体混合層の面内構造を示す図である。
【図3】 本発明の磁気素子における磁気抵抗効果の発現を説明するための図である。
【図4】 本発明の第2の実施形態に関る磁気素子を示す断面図である。
【図5】 図4に示す磁気素子の変形例を示す断面図である。
【図6】 本発明の第3の実施形態に関るプラーナ型素子の主要部を示す断面図である。
【図7】 図6に示す磁気素子の変形例の主要部を模式的に示す断面図である。
【図8】 本発明の第4の実施形態に関る磁気素子の第3の実施形態の主要部を模式的に示す断面図である。
【図9】 本発明の第5の実施形態に関る磁気抵抗効果へッドの膜構造を示す断面図である。
【図10】 本発明の第5の実施形態に関る磁気抵抗効果へッドの膜構造を示す断面図である。
【図11】 本発明の第5の実施形態に関る磁気抵抗効果へッドの膜構造を示す断面図である。
【図12】 本発明の磁気抵抗効果ヘッドを搭載した磁気ヘッドアッセンブリを示す斜視図である。
【図13】 本発明の磁気抵抗効果ヘッドを搭載した磁気ディスク装置を示す斜視図である。
【図14】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図15】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図16】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図17】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図18】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図19】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ素子の膜構造を示す断面図である。
【図20】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリセルの構造を示す断面図である。
【図21】 本発明の第6の実施形態に関る集積化された磁気メモリ装置の回路図である。
【図22】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ装置を示す断面図である。
【図23】 本発明の第6の実施形態に関る磁気メモリ装置を示す回路図である。
【図24】 本発明の実施例1による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図25】 本発明の実施例1による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図26】 本発明の実施例1による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図27】 本発明の実施例1による磁気素子の規格化された磁気抵抗変化率の印加電圧依存性を示す図である。
【図28】 本発明の実施例2による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図29】 本発明の実施例2による磁気素子の規格化された磁気抵抗変化率の印加電圧依存性を示す図である。
【図30】 本発明の実施例3による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図31】 本発明の実施例3による磁気素子の規格化された磁気抵抗変化率の印加電圧依存性を示す図である。
【図32】 本発明の実施例4による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図33】 本発明の実施例4による磁気素子の規格化された磁気抵抗変化率の印加電圧依存性を示す図である。
【図34】 本発明の実施例6による磁気素子の混合層の膜厚を変化させてえた磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図35】 本発明の実施例7による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図36】 本発明の実施例7による磁気素子の印加電圧と規格化された抵抗変化率との関係を示す。
【図37】 本発明の実施例8による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図38】 本発明の実施例8による磁気素子の印加電圧と規格化された抵抗変化率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1、11…強磁性体電極層
2、4、12、14…トンネル障壁層
3、13…強磁性体−誘電体混合層
8、15…強磁性電極層
6…強磁性体
7…誘電体

Claims (8)

  1. 誘電体と、前記誘電体と同体積以上の強磁性体とを備える強磁性体―誘電体混合層と、前記強磁性体―誘電体混合層と積層された第一及び第二の誘電体トンネル障壁と、前記強磁性体−誘電体混合層と前記第一の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第1の強磁性層と、前記強磁性体―誘電体混合層と前記第二の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第2の強磁性層とを備え、前記強磁性体−誘電体混合層中の誘電体は、前記強磁性体からなるマトリックス中に分散配置されていることを特徴とする磁気素子。
  2. 誘電体と、前記誘電体と同体積以上の強磁性体とを備える強磁性体―誘電体混合層と、前記強磁性体―誘電体混合層と積層された第一及び第二の誘電体トンネル障壁と、前記強磁性体−誘電体混合層と前記第一の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第1の強磁性層と、前記強磁性体―誘電体混合層と前記第二の誘電体トンネル障壁を介して近接配置された第2の強磁性層とを備え、前記第一及び第二の誘電体トンネル障壁は同一の誘電体層からなり、前記第1及び第2の強磁性層は前記誘電体層の同一表面に離れて形成されていることを特徴とする磁気素子。
  3. 前記強磁性体−誘電体混合層中の誘電体は、前記強磁性体からなるマトリックス中に分散配置されていることを特徴とする請求項記載の磁気素子。
  4. 前記第1の強磁性層、前記第2の強磁性層、及び前記強磁性体―誘電体混合層中の強磁性体のいずれか一との交換結合によって、前記いずれか一に交換バイアスを付与する反強磁性膜を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気素子を磁気メモリセルとして基板上に複数個備えることを特徴とする集積化された磁気メモリ装置。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気素子を備えることを特徴とする磁気抵抗効果ヘッド。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気素子を備える磁気抵抗効果ヘッドであって磁気記録媒体に記録された磁気情報を再生する磁気抵抗効果ヘッドと、前記磁気抵抗効果ヘッドを支持するアームを備えることを特徴とする磁気ヘッドジンバルアッセンブリ。
  8. 磁気記録媒体と、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気素子を備える磁気抵抗効果ヘッドであって、前記磁気記録媒体に記録された磁気情報を再生する磁気抵抗効果ヘッドを備えることを特徴とする磁気記録システム。
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