JP3455055B2 - 磁気素子とそれを用いた磁気ヘッドおよび磁気記憶装置 - Google Patents

磁気素子とそれを用いた磁気ヘッドおよび磁気記憶装置

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JP3455055B2 JP11899197A JP11899197A JP3455055B2 JP 3455055 B2 JP3455055 B2 JP 3455055B2 JP 11899197 A JP11899197 A JP 11899197A JP 11899197 A JP11899197 A JP 11899197A JP 3455055 B2 JP3455055 B2 JP 3455055B2
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    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/3227Exchange coupling via one or more magnetisable ultrathin or granular films

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘電体マトリック
ス中に超常磁性を示さない強磁性微粒子を分散させたグ
ラニュラー磁性膜を有する磁気素子、およびそれを用い
た磁気ヘッドと磁気記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気抵抗効果は、ある種の磁性体に磁界
を加えることにより電気抵抗が変化する現象であり、磁
界センサや磁気ヘッド等に利用されている。例えば、強
磁性体を用いた磁気抵抗効果素子は温度安定性に優れ、
かつ使用範囲が広いという特徴を有している。
【0003】従来より、磁性体を用いた磁気抵抗効果素
子にはパーマロイ合金等の薄膜が広く使用されてきた。
これをハードディスク等の再生へッドに使用することで
高密度磁気記録が達成されている。しかし、パーマロイ
薄膜の磁気抵抗変化率は 2〜3%程度と小さいため、さら
なる高密度記録を達成しようとすると十分な感度が得ら
れないという問題があった。
【0004】一方、近年、磁気抵抗効果を示す新しい材
料として、磁性層と非磁性金属層とを数オングストロー
ムから数十オングストロームのオーダーの周期で交互に
積層した構造を有し、非磁性層を介して相対する磁性層
の磁気モーメントを反平行状態で磁気的に結合させた人
工格子膜が、巨大な磁気抵抗効果を示すとして注目され
ている。例えばFe/Crの人工格子膜(Phys. Rev. L
ett.61, 2472(1988))や、Co/Cuの人工格子膜(J.
Mag. Mag. Mater.94, L1(1991), Phys. Rev.Lett.66,
2152(1991) )等が見出されている。
【0005】このような人工格子膜は、数 10%という従
来のパーマロイ合金薄膜よりも格段に大きな磁気抵抗変
化率を示す。このような巨大磁気抵抗効果は磁性層のス
ピンの向きに依存した電子の散乱に起因している。しか
しながら、このような人工格子は、大きな磁気抵抗効果
を得るためには積層数を多くする必要があるという問題
や、飽和磁界(抵抗値が飽和する磁界)が数テスラ(T)
以上と大きく、このままでは磁気ヘッド等への応用には
不向きであるという問題を有している。
【0006】飽和磁界を小さくする目的で、強磁性層/
非磁性層/強磁性層のサンドイッチ構造の積層膜を有
し、一方の強磁性層に交換バイアスを及ぼして磁化を固
定し、他方の強磁性層を外部磁界により磁化反転させる
ことにより、 2つの強磁性層の磁化方向の相対角度を変
化させる、いわゆるスピンバルブ膜が開発されている。
しかし、スピンバルブ膜は磁気抵抗変化率が 3〜4%程度
とあまり大きくなく、また積層膜の抵抗そのものが数10
μΩcmと小さいため、外部磁界を検出するためには比較
的大きな電流を流す必要があるという問題を有してい
る。
【0007】また、多層膜に対して電流を膜面に垂直方
向に流す、いわゆる垂直磁気抵抗効果を利用すると、非
常に大きな磁気抵抗効果が得られることが知られている
(Phys. Rev. Lett.66, 3060(1991))。しかし、この場
合には電流パスが小さく、また各層が金属であるために
抵抗が小さいことから、サブミクロン以下に微細加工し
ないと室温での磁気抵抗効果を測定できないという問題
がある。
【0008】さらに、以上述べたような人工格子膜とは
異なり、非磁性金属マトリックス中に磁性超微粒子を分
散させた、いわゆるグラニュラー磁性膜もスピンに依存
した伝導に基く巨大磁気抵抗効果を示すことが見出され
ている(Phys. Rev. Lett.68,3745(1992))。このような
グラニュラー磁性膜は、磁界を加えない状態では磁性超
微粒子の性質により各磁性超微粒子のスピンが互いに不
規則な方向を向いているために抵抗が高く、磁界を加え
て各スピンを磁界の方向に揃えると抵抗が低下し、その
結果スピン依存散乱に基く磁気抵抗効果が発現する。グ
ラニュラー磁性膜は人工格子膜等に比べて作製が容易で
あることから次世代の磁気抵抗効果素子として基体され
ているものの、この場合の磁性超微粒子は超常磁性を示
すため、飽和磁界が本質的に非常に大きいという問題を
有している。
【0009】一方、スピン依存散乱とはメカニズムを異
にする、強磁性トンネル効果に基く巨大磁気抵抗効果が
見出されている。これは強磁性層/絶縁層/強磁性層の
3層積層膜からなり、一方の強磁性層の保磁力が他方の
強磁性層の保磁力よりも小さい構造において、両強磁性
層間に電圧を印加してトンネル電流を発生させるもので
ある。このとき、保磁力の小さい強磁性層のスピンのみ
を反転させると、 2つの強磁性層のスピンが互いに平行
なときと反平行なときでトンネル電流が大きく異なるた
めに、巨大磁気抵抗効果が得られる。
【0010】このような強磁性トンネル接合素子は構造
が簡単であり、しかも室温で 20%程度の大きな磁気抵抗
変化率が得られるという特徴がある。しかしながら、ト
ンネル効果を発現させるためには絶縁層の厚さを数nm以
下と薄くする必要があり、そのような薄い絶縁層を均質
に、しかも安定して作製することが困難であるため、磁
気抵抗変化率のバラツキが大きくなってしまうという問
題がある。また、絶縁層の抵抗が高すぎると、これを記
憶素子等に用いた場合に、一般に素子の高速動作が得ら
れず、また雑音が増大してS/N比の大きい素子が得ら
れない等の問題が予測されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、マト
リックス中に磁性超微粒子を分散させたグラニュラー磁
性膜は、人工格子膜に比べて作製が容易であり、磁気抵
抗変化率も室温で 10%程度の大きな値が得られる。さら
に、超微粒子は粒径が数十オングストローム程度以下と
小さく単磁区であるため、磁気抵抗曲線のヒステリシス
が小さく、従って磁気抵抗効果素子として用いた場合に
バルクハウゼンノイズが小さいことが期待される。しか
し、この場合の超微粒子は超常磁性を示すため、飽和磁
界が本質的に非常に大きく、実用上の課題となってい
る。
【0012】一方、強磁性トンネル接合素子は、室温で
20%程度の大きな磁気抵抗変化率が得られ、また飽和磁
界が小さいというような特徴を有する反面、絶縁層の膜
厚に起因して安定した特性をもつ素子の作製が困難であ
ると共に、抵抗が高すぎるために記憶素子等に用いた場
合に雑音が大きく、スイッチング速度が遅い等の問題が
ある。
【0013】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、磁気抵抗変化率が大きく、飽和磁界
が小さく、素子抵抗を適当な値に調整することができ、
しかもバラツキが小さい安定した特性が得られる磁気素
子、およびそれを用いた磁気ヘッドおよび磁気記憶装置
を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気素子は、誘
電体マトリックスと、この誘電体マトリックス中に分散
した強磁性微粒子とを有し、かつ超常磁性を示さず室温
で保磁力を持つと共に、スピンの方向が実質的に一方向
に揃っているグラニュラー磁性膜と、前記グラニュラー
磁性膜と近接配置された強磁性膜とを具備し、前記グラ
ニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネル電流を
流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜の
うち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を変化させ
ることにより、前記トンネル電流に対して磁気抵抗効果
が発現することを特徴としている。
【0015】
【0016】
【0017】本発明の磁気素子におけるグラニュラー磁
性膜と強磁性膜との具体的な近接配置構造としては、前
記グラニュラー磁性膜と強磁性膜とを積層配置した構
造、前記グラニュラー磁性膜と強磁性膜とを基板面に沿
って配列した構造等が挙げられる。なお、グラニュラー
磁性膜と強磁性膜とは、基本的には接触配置するものと
するが、それらの間にトンネル電流が流れる程度の厚さ
の絶縁膜を介在させることも可能である。
【0018】本発明の磁気ヘッドは、上記した本発明の
磁気素子を具備することを特徴としている。本発明の磁
気記憶装置は、上記した本発明の磁気素子を具備するこ
とを特徴としている。
【0019】以下に、本発明の磁気素子が低磁界で巨大
磁気抵抗効果を発現する原理について説明する。図1お
よび図2は本発明の磁気素子の基本構造の概念図であ
り、強磁性膜Fとグラニュラー磁性膜Gとからなる強磁
性トンネル接合を構成している。図中矢印は磁化方向を
示している。ここで、本発明の磁気素子におけるグラニ
ュラー磁性膜Gは、誘電体マトリックス中に分散させた
強磁性微粒子を有するものであり、超常磁性を示さず有
限の保磁力を持つ強磁性体である。理想的にはそのスピ
ンは図1および図2に示すように、一方向に揃って向い
ていることが望ましい。スピンの方向は図1に示す状態
および図2に示す状態のいずれであってもよい。
【0020】このような構造において、強磁性膜Fとグ
ラニュラー磁性膜Gとの間に例えば電極を介して電圧を
印加すると、強磁性膜Fの伝導電子はグラニュラー層中
の磁性微粒子間をトンネル効果によって伝導し、トンネ
ル電流が流れる。このとき、スピンの向きは一般に保存
される。このような状態で外部から磁界を印加すること
を考える。初期状態は、図1(a)および図2(a)に
示すように、両磁性膜F、Gのスピンが同じ方向を向い
ているものとする。このとき、強磁性膜Fおよびグラニ
ュラー磁性膜Gのスピンが保存されたままトンネル伝導
するので、図3(a)に示すように、各状態密度の大き
いスピンバンドの電子(図3では↓で示すスピン電子)
の方が大きく伝導に寄与し、電子はトンネルしやすい。
すなわち抵抗は小さい。
【0021】次に、図1(b)および図2(b)に示す
ように、両磁性膜F、Gのうち保磁力が相対的に小さい
方の磁性膜のスピン(図1および図2では強磁性膜Fの
スピン、以下同じとする)のみが反転する程度の小さな
外部磁界を印加する。このとき、図3(b)に示すよう
に、各磁性膜F、Gのいずれのスピンバンドも状態密度
が小さいスピンバンドを経るので、電子は図3(a)に
比べてトンネルしがたくなり、従って抵抗は大きくな
る。
【0022】このようにして、外部磁界により保磁力の
小さい磁性膜のスピンのみを反転させることによって、
巨大磁気抵抗を得ることができる。このとき、例えば強
磁性膜Fに保磁力の小さい軟磁性体を選定すれば、飽和
磁界は小さくなるため、本発明の磁気素子による磁気抵
抗効果素子は高感度化することができる。
【0023】本発明の磁気素子におけるグラニュラー磁
性膜は、超常磁性ではなく、強磁性体であるため、従来
のグラニュラーGMR材料のような飽和磁界が大きいと
いう問題はない。また、本発明によるグラニュラー磁性
材料は誘電体マトリックス中に強磁性微粒子を分散させ
ているため、絶縁層を有する強磁性トンネル接合に比べ
て電気抵抗が小さい。さらに、グラニュラー磁性膜の電
流パス方向(膜厚方向あるいは膜面内方向)の長さ、あ
るいは磁性微粒子の体積充填率、大きさ、分散状態等を
制御することによって、電気抵抗を適当な値に制御でき
る。従って、応用用途に応じて、本発明の磁気素子は電
気抵抗を調整することができる。
【0024】本発明の磁気素子は、磁気抵抗効果型磁気
ヘッド、磁気記憶装置、磁界センサ等に適用することが
できる。この場合、特に磁気記憶装置では膜面内に磁気
異方性が付与されていることが望ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について、図面を参照して説明する。
【0026】図4は本発明の磁気素子の一実施形態の構
造を模式的に示す図である。図4に示す磁気素子1は、
基板2上に形成したグラニュラー磁性膜3と、このグラ
ニュラー磁性膜3上に積層形成された強磁性膜4とを有
している。これらグラニュラー磁性膜3と強磁性膜4と
の積層膜5において、積層順は特に限定されるものでは
ない。また、積層膜5の構成は、例えば図5に示すよう
に、 2層の強磁性膜4a、4bでグラニュラー磁性膜3
を挟持した構造、すなわち第1および第2の強磁性膜4
a、4bがグラニュラー磁性膜3を挟んで対向配置され
た構造であってもよい。これら積層膜5は強磁性トンネ
ル接合を構成するものである。
【0027】このように、積層型の磁気素子1は少なく
とも 1層のグラニュラー磁性膜3と少なくとも 1層の強
磁性膜4とを積層した積層膜5を有していればよく、例
えばグラニュラー磁性膜3と強磁性膜4とをさらに多層
積層した積層膜を適用することも可能である。なお、グ
ラニュラー磁性膜3と強磁性膜4との間には、トンネル
電流が流れる程度の厚さの絶縁膜を介在させてもよく、
この絶縁膜により電気抵抗を制御することもできる。
【0028】グラニュラー磁性膜3は、誘電体マトリッ
クス6中に磁性微粒子7を分散させた構造を有してい
る。このグラニュラー磁性膜3は超常磁性を示さず、有
限の保磁力を持つ強磁性体である。また、グラニュラー
磁性膜3中の磁性微粒子7は、それら微粒子間でトンネ
ル電流が流れるように分散されている必要があり、粒子
間隔は 3nm以下とすることが好ましい。
【0029】磁性微粒子7には種々の強磁性材料を使用
することができるが、誘電体マトリックス6中に磁性微
粒子7を分散させたグラニュラー磁性材料では、バルク
に比べて一般に保磁力がかなり小さくなるので、それを
防ぐためには磁性微粒子7として特に磁気異方性の大き
いCo、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−
希土類合金等を用いることが好ましい。
【0030】また、保磁力があまり大きくないグラニュ
ラー磁性材料を使用する場合には、例えば図6に示すよ
うに、グラニュラー磁性膜3の両端部に一対の硬磁性膜
8を隣接配置し、この硬磁性膜8からグラニュラー磁性
膜3にバイアス磁界を印加することによりスピンを固定
してもよい。なお図6において、9は絶縁層である。ま
た、図6における膜4、4は少なくとも一方が強磁性膜
であればよく、このように一方のみを強磁性膜とした場
合、他方はCr等の非磁性金属からなる電極とすること
ができる。バイアス磁界印加膜としては硬磁性膜8に限
らず、例えば図7に示すように、グラニュラー磁性膜3
と積層形成したFeMnやIrMn等からなる反強磁性
膜10を使用することも可能である。
【0031】例えば、RXMnO3-y (Rは希土類金
属、XはCa、BaおよびSrから選ばれる少なくとも
1種の元素、 yは 0に近い値)粒子を分散させたグラニ
ュラー磁性材料は、保持力は小さいものの、100%のスピ
ン分極率を有している。よって、RXMnO3-y 磁性材
料を磁性微粒子7として用いると、トンネル電流のスピ
ン依存性が非常に大きくなるため、非常に大きな磁気抵
抗効果を得ることができる。このようなグラニュラー磁
性材料を使用する場合に、上記したようなバイアス構造
は有効である。さらに、強磁性膜4のスピンのみを反転
させる場合、グラニュラー磁性膜3のスピンを強く固定
する上で、硬磁性膜8や反強磁性膜10等からなるバイ
アス磁界印加膜は有効である。
【0032】グラニュラー磁性膜3における磁性微粒子
7の粒径は、超常磁性が発現せず、強磁性が維持される
大きさ、例えば数nm以上とする必要がある。ただし、あ
まり磁性微粒子7が大きいと粒子間隔が増大するため、
磁性微粒子7の粒径は 5〜10nm程度とすることが好まし
い。また、誘電体マトリックス6としては、Al
2 3 、SiO2 、MgO、ΜgF2 、B2 3 、Al
N、CaF2 等の種々の誘電体材料を使用することがで
き、このような誘電体膜中に上記したような磁性微粒子
7を分散させることでグラニュラー磁性膜3が得られ
る。なお、上記した酸化膜、窒化膜、フッ化膜等では、
それぞれの元素の欠損が一般的に存在するが、そのよう
な誘電体膜であっても何等問題はない。
【0033】一方、強磁性膜4としてはその目的からグ
ラニュラー磁性膜との間で保磁力に大小関係を有してい
ればよく、例えばパーマロイに代表されるFe−Ni合
金、強磁性を示すFe、Co、Niおよびそれらを含む
合金、NiMnSb、PtMnSb等のホイスラー合金
のハーフメタル、CrO2 、マグネタイト等の酸化物系
のハーフメタル、アモルファス合金等の種々の軟磁性材
料から、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−
希士類合金等の硬磁性材料まで、種々の強磁性材料を使
用することができる。ハーフメタルは一方のスピンバン
ドにエネルギーギャップが存在するので、一方向のスピ
ンを持つ電子しか伝導に寄与しない。従って、このよう
な材料を強磁性膜4として使用することで、より大きな
磁気抵抗効果を得ることができる。
【0034】また、図5に示したように、 2層以上の強
磁性膜4a、4bを使用する場合には、これらは必ずし
も同じ材料で構成する必要はなく、それぞれがグラニュ
ラー磁性膜3と保磁力の違いを有していればよい。 2層
の強磁性膜4a、4bの保磁力が異なる場合には、例え
ば多値メモリとして使用することができる。
【0035】強磁性膜4は単層構造に限らず、例えば図
8に示すように、非磁性層11を介して配置した 2つの
強磁性層12、13を有し、これら強磁性層12、13
の磁化を互いに反平行となるように結合させた積層膜
で、強磁性膜4を構成することができる。このような反
平行に結合させた積層膜によれば、強磁性膜4から磁束
が外部に漏れることを防ぐことができ、好ましい形態と
いうことができる。このような反平行に結合した強磁性
層12、13を得るためには、強磁性層と非磁性層とを
交互に積層し、交換結合や静磁結合を利用すればよい。
強磁性層の積層数は 2層に限らず、それぞれ非磁性層を
介してさらに多層化してもよい。
【0036】また、強磁性層と半導体層とを交互に積層
した積層膜を、強磁性膜4として用いることもできる。
この場合には、熱や光照射によりスピンを反転させるこ
とができるため、磁界が不要になるという特徴がある。
このような積層膜に用いる半導体としては、B20構造
のFeSi合金等が挙げられる。なお、これら強磁性層
と非磁性層とを交互に積層した積層膜や強磁性層と半導
体層とを交互に積層した積層膜は、図9に示すように、
グラニュラー磁性膜3を介して配置した 2つの強磁性膜
4のうちの一方に適用してもよい。
【0037】上述したグラニュラー磁性膜3および強磁
性膜4は、それぞれ膜面内に一軸磁気異方性を有するこ
とが望ましい。これによって、急峻な磁化反転を起こす
ことができると共に、磁化状態を安定して保持すること
ができる。これらは特に磁気記憶装置に適用する場合に
有効である。また、グラニュラー磁性膜3および強磁性
膜4の膜厚は、 0.5〜 100nmの範囲とすることが好まし
い。このうち、グラニュラー磁性膜3の膜厚はできるだ
け薄い方が好ましいが、作製上均一な膜厚を維持するこ
とができ、またトンネル電流に対して悪影響を及ぼさな
い膜厚であればよく、例えば50nm以下であればよい。
【0038】このような各層からなる磁気素子1は典型
的には薄膜状であり、分子線エピタキシー(ΜBE)
法、各種スパッタ法、蒸着法等の通常の薄膜形成方法を
適用して作製することができる。なお、本発明の磁気素
子では、積層膜5に磁性材料または非磁性材料からなる
下地層、または非磁性材料からなるオーバーコー卜層等
を設けてもよい。
【0039】上述した磁気素子1においては、グラニュ
ラー磁性膜3と強磁性膜4のうち保磁力が小さい磁性
膜、例えば強磁性膜4のスピンの方向を外部磁界等によ
り変化させることによって、前述したように磁気抵抗効
果を発現させることができる。すなわち、グラニュラー
磁性膜3と強磁性膜4のスピンが同じ方向を向いている
状態において、積層膜5の抵抗は最小となり、この状態
から保磁力が小さい一方の磁性膜、例えば強磁性膜4の
みのスピン方向を外部磁界等により反転させることによ
って、積層膜5の抵抗は最大となる。この際、他方の磁
性膜例えばグラニュラー磁性膜3のスピンは、強磁性膜
4のスピンを反転させる外部磁界等に対して、実質的に
固定されているようにする。
【0040】このようなグラニュラー磁性膜3と強磁性
膜4との積層膜5における一方の磁性膜のスピンの反転
によって、磁気抵抗変化率が例えば 20%以上というよう
な巨大磁気抵抗効果が得られる。外部磁界等によりスピ
ン反転させる磁性膜は、グラニュラー磁性膜3と強磁性
膜4のうち保磁力が小さい方の磁性膜であればよく、特
に上記したように強磁性膜4に限定されるものではな
い。ただし、保磁力の調節等が容易な強磁性膜4のスピ
ン方向を外部磁界等により反転させることが好ましい。
【0041】上記したような巨大磁気抵抗効果を示す積
層膜5に対して積層方向にセンス電流し、グラニュラー
磁性膜3と強磁性膜4との間にトンネル電流を流す。 2
層の強磁性膜を用いた場合には、第1の強磁性膜4a、
グラニュラー磁性膜3および第2の強磁性膜4bの間に
トンネル電流を流す。このようなトンネル電流を含むセ
ンス電流の電圧を測定することによって、信号磁界等の
外部磁界を検出することができる。この外部磁界の検出
機能は、従来の磁気抵抗効果素子と同様に、磁気抵抗効
果型の磁気ヘッドや磁界センサ等に利用することができ
る。また、グラニュラー磁性膜3と強磁性膜4のうち保
磁力が小さい磁性膜を記録層とし、他方をスピン固定層
とし、同様なセンス電流で記録層の磁化方向を判定する
ことによって、記録層に書き込まれたデータを読み取る
ことができる。これは磁気記憶装置として利用すること
ができる。
【0042】このような磁気素子1においては、グラニ
ュラー磁性膜3は超常磁性ではなく強磁性体であるた
め、従来のグラニュラーGMR材料のような飽和磁界が
大きいという問題を解消することができる。加えて、例
えば強磁性膜4に保磁力の小さい軟磁性体を選定すれ
ば、さらに飽和磁界を小さくすることができるため、磁
気抵抗効果を利用した磁気素子の高感度化を図ることが
できる。
【0043】また、グラニュラー磁性膜3は誘電体マト
リックス6中に磁性微粒子7を分散させているため、絶
縁層を有する従来の強磁性トンネル接合に比べて電気抵
抗をが小さい。さらに、グラニュラー磁性膜3の電流パ
ス方向(膜厚方向)の長さ、あるいは磁性微粒子7の体
積充填率、大きさ、分散状態等を制御することによっ
て、電気抵抗を適当な値に制御することができる。これ
らによって、例えば記憶素子等に用いた場合、素子の高
速動作やS/N比の増大等を図ることができる。そし
て、磁気抵抗効果を発現させる強磁性トンネル接合(積
層膜5)は、グラニュラー磁性膜3をトンネル障壁と
し、この積層膜5のトンネル電流は有限の保磁力を有す
るグラニュラー磁性膜3中の強磁性微粒子7に基くもの
であるため、従来の強磁性トンネル接合における絶縁層
ほどグラニュラー磁性膜3を薄くする必要はない。すな
わち、グラニュラー磁性膜3の膜厚は、作製上均質な状
態が得られる程度とすることができるため、バラツキが
小さい安定した特性を再現性よく得ることができる。
【0044】上述した積層型の磁気素子1の具体的な素
子構造としては、例えば図10に示すように、基板2上
に形成された下側の強磁性膜4a上に、この下側の強磁
性膜4aの一部を覆うように、それと直交させたグラニ
ュラー磁性膜3および上側の強磁性膜4bを順に積層形
成した構造が挙げられる。この際、基板2上には下側の
強磁性膜4aに代えて、Cr等の非磁性金属からなる電
極を形成しておいてもよい。また、上側の強磁性膜4b
上には必要に応じて、Cu、Au、Ag等の良導体から
なる電極を形成する。このような構造の磁気素子1にお
いては、グラニュラー磁性膜3と強磁性膜4とが重なり
合う部分(例えば直交部分)に強磁性トンネル接合が形
成され、その部分に膜厚方向にセンス電流を流すことに
よって、グラニュラー磁性膜3を含む強磁性トンネル接
合の磁気抵抗効果を利用することができる。
【0045】また、積層型の磁気素子においては、グラ
ニュラー磁性膜3と強磁性膜4との積層領域は 1つに限
られるものではなく、例えば図11に示すように、グラ
ニュラー磁性膜3上に互いに分離された 2つの以上の強
磁性膜4-1、4-2を並列配置するようにしてもよい。図
11に示す構造では、グラニュラー磁性膜3と強磁性膜
4との積層部分が 2つ形成されている。このような構造
においては、グラニュラー磁性膜3の下側に、それより
低抵抗の下地層14を設けることが好ましい。この下地
層14は、強磁性金属膜であっても、また非磁性金属膜
であってもよく、これらによりグラニュラー磁性膜3の
膜面内に沿って流れるトンネル電流を抑制することがで
きる。
【0046】上記したような構造の磁気素子において
は、グラニュラー磁性膜3と強磁性膜4との積層部分を
複数利用することができるため、抵抗変化率の増大を図
ることが可能となる。またこの場合、電流は下地金属層
14を流れるが、この部分の抵抗は小さく、素子面積を
微細化すればグラニュラー磁性膜3を横切る抵抗に比べ
て無視できるため、グラニュラー磁性膜3を横切る電流
パスが 2倍になる分だけ電気抵抗が増大する等、各種特
性を調整することができる。
【0047】次に、本発明の磁気素子の他の実施形態に
ついて説明する。図12は基板面に沿って電流を流すプ
レーナ型構造を適用した本発明の磁気素子の基本構造の
一例を模式的に示す図である。図12に示すプレーナ型
磁気素子15において、基板2上にはグラニュラー磁性
膜3とそれを挟持する 2つの強磁性膜4、4とが基板面
に沿って配列されている。すなわち、グラニュラー磁性
膜3を挟んで対向配置された 2つの強磁性膜4、4(第
1および第2の強磁性膜)が基板面に沿って配列されて
いる。この基板面と平行な方向に接続されたグラニュラ
ー磁性膜3と強磁性膜4との接合部(平行配列型接合
部)が強磁性トンネル接合を構成している。なお、一方
の強磁性膜4に代えて、電極として利用される非磁性金
属膜を配置してもよい。
【0048】また、図13はプレーナ型構造のうち特に
エッジ接合型の磁気素子の構造を模式的に示す図であ
る。図13に示すエッジ接合型磁気素子16において、
基板2上にはまず強磁性膜4と絶縁層17とが順に積層
されており、この積層膜の端面は基板面に対して所定の
角度で傾斜された傾斜端面とされている。グラニュラー
磁性膜3と上側の強磁性膜4は、下側の強磁性膜4と絶
縁層17との積層膜の傾斜端面を少なくとも覆うように
順に積層形成されている。このエッジ接合型磁気素子1
6では、傾斜部において基板面と平行な方向に接続され
たグラニュラー磁性膜3と強磁性膜4との接合部が強磁
性トンネル接合を構成している。なお、上下 2層の強磁
性膜4、4のうち、一方の強磁性膜4に代えて非磁性金
属膜を配置してもよい。
【0049】上記したプレーナ型の磁気素子(プレーナ
型磁気素子15およびエッジ接合型磁気素子16)にお
ける各層の具体的な構成や付加的な構成等は、前述した
積層型の磁気素子1と同様であり、例えばバイアス磁界
印加膜も必要に応じて配置することができる。そして、
プレーナ型の磁気素子15、16は、グラニュラー磁性
膜3と強磁性膜4との間のトンネル電流を含むセンス電
流を、基板面に沿って流す以外は前述した積層型の磁気
素子1と同様に、グラニュラー磁性膜3と強磁性膜4の
うち保磁力が小さい磁性膜、例えば強磁性膜4のスピン
の方向を外部磁界等により変化させることによって、巨
大磁気抵抗効果を発現させることができる。
【0050】このようなプレーナ型の磁気素子15、1
6によれば、前述した積層型の磁気素子1と同様な効果
を得ることができる。さらに、プレーナ型は微細加工技
術を用いて容易に作製できるため、安定した特性が得ら
れやすいと共に、素子の高密度化を容易に達成すること
が可能である。
【0051】上述した各実施形態の磁気素子1、15、
16は、それぞれ磁気抵抗効果型磁気ヘッド、磁気記憶
装置、磁界センサ等に適用することができる。
【0052】各実施形態の磁気素子1、15、16を用
いた磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、従来の磁気抵抗効果
ヘッドと同様に構成することができる。すなわち、グラ
ニュラー磁性膜3と強磁性膜4のうち保磁力が小さい磁
性膜を感磁層として利用し、この感磁層の磁化方向を例
えば信号磁界に応じて変化させる。その際の積層接合
部、平行配列型接合部またはエッジ接合部の抵抗を測定
することによって、信号磁界等を検出することができ
る。これは磁気記録装置等の再生ヘッドとして有効であ
る。また、磁界センサ等としても使用可能である。
【0053】次に、各実施形態の磁気素子1、15、1
6を磁気メモリ等の磁気記憶装置に適用する場合につい
て説明する。
【0054】この場合、グラニュラー磁性膜3と強磁性
膜4のうち保磁力が小さい磁性膜を記録層、他方をスピ
ン固定層とする。例えば、強磁性膜4を記録層とした場
合、再生は記録層である強磁性膜4とグラニュラー磁性
膜3間の誘起電圧を測定することにより実施される。す
なわち、記録層のスピンを反転させ、グラニュラー磁性
膜3のスピンと平行あるいは反平行に対応して“1”、
“0”を指定する。再生は記録層4とグラニュラー磁性
膜3間の電圧を測定すれば、磁気抵抗効果のために
“1”または“0”によって再生電圧が異なるので、そ
れを識別できることになる。強磁性膜4への“1”また
は“0”の記録は、例えば強磁性膜4の上方にワード線
を設け、それにパルス電流を流し、その向きをスイッチ
することによって行うことができる。この動作におい
て、グラニュラー磁性膜3のスピンは、そのより大きな
保磁力のために向きを変えない。
【0055】上記したような磁気記憶装置は、積層型の
磁気素子1、プレーナ型の磁気素子15、16のいずれ
を用いても同様に構成することができる。なお、グラニ
ュラー磁性膜3を記録層に用い、強磁性膜4をスピン固
定層としてもよい。
【0056】本発明の磁気記憶装置は不揮発性の固体メ
モリであり、ΗDDのような可動部がないために信頼性
が高く、またより高速に動作させることができる。しか
も、電気抵抗を広い範囲で制御でき、さらに非破壊によ
って記録情報を読み出すことができる。さらには出力が
大きいという特徴がある。
【0057】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について説明する。
【0058】実施例1 図10に示すような構造のグラニュラー磁性膜をトンネ
ル障壁とする強磁性トンネル接合膜を、高周波スパッタ
法を用いて作製した。まず、ガラス基板2上に図10の
強磁性膜4aに代えて、下部電極となる長さ10mm、幅
0.5mmの短冊状Cr膜を作製し、その上にCr膜の一部
を覆うようにグラニュラー磁性膜3を作製し、さらにそ
の上にCr膜と直交するように、Cr膜と同形状の強磁
性膜4bを作製した。次に、上部電極としてAu膜を作
製し、下部電極との間に電圧を印加して磁気抵抗効果を
測定した。
【0059】グラニュラー磁性膜3としては、Co80
20合金とSiO2 をターゲットとし、Arガス圧 0.3
Pa、基板バイアス400Wの条件下で、Co80Pt20とSi
2を同時スパッタして、SiO2 中にCo80Pt20
金粒子を分散させた膜(膜厚10nm)を作製した。この状
態において電子顕微鏡を用いて構造観察を行った結果、
Co80Pt20合金粒子がSiOx マトリックス中に約 5
0%分散しており、成膜中のバイアス印加によってCo80
Pt20合金粒子が成長し、粒径は約 8nm、粒間距離は約
1.5nmであった。また、試料振動型磁力計を用いて磁化
測定を行った結果、保磁力は2kOe と大きく明瞭なヒス
テリシスが得られ、超常磁性的挙動は観測されなかっ
た。
【0060】上記したグラニュラー磁性膜3上に強磁性
膜4bとして、厚さ20nmのCo90Fe10合金膜を成膜し
た。得られた直交積層膜の磁化曲線を図14に示す。S
iOx マトリックス中にCo80Pt20合金粒子を分散さ
せたグラニュラー磁性膜3の大きな保磁力と、Co90
10合金膜からなる強磁性膜4bの20Oe という小さな
保磁力を反映して、明瞭な 2段ヒステリシスが観測され
た。
【0061】磁気抵抗効果の測定においては、初めにマ
イナスの方向に大きな磁場を印加してCo90Fe10合金
膜とグラニュラー磁性膜のスピンをマイナスの方向に揃
え、その後磁場を減じてプラス方向に印加した。得られ
た磁気抵抗変化率の磁場依存性を図15に示す。磁化曲
線に対応して約20Oe という小さな正の磁場で急峻に抵
抗が増大しており、この小さな磁場はCo90Fe10合金
膜の磁化反転が磁気抵抗効果に寄与していることを示し
ている。より大きな正の磁場を印加するとグラニュラー
磁性膜のスピンも反転して抵抗は減少した。最大の抵抗
率は 2.8Ω、磁気抵抗変化率は 14%であった。
【0062】このように、本発明の磁気素子は非常に高
感度であり、しかも抵抗が絶縁膜を障壁とする従来の強
磁性トンネル接合素子よりも小さいことが明らかであ
る。
【0063】比較例1 グラニュラー磁性膜を作製する際に、基板バイアスを印
加しなかったことを除いて、実施例1と同じ材料を用い
た同形状の積層膜を作製した。この場合の磁化曲線は図
16に示すように、Co90Fe10合金膜の磁化曲線と超
常磁性の磁化曲線が重畳した形を示し、Co90Fe10
金膜の磁化反転に伴う明確な磁気抵抗効果は2%程度であ
った。これは、グラニュラー磁性膜が超常磁性であるた
め、Co90Fe10合金膜とのスピンの反平行状態が実現
できなかったためである。
【0064】実施例2 図13に示したエッジ接合型の強磁性トンネル接合膜を
高周波スパッタ法を用いて作製した。まず、図13の下
側の強磁性膜4に代えて、ガラス基板2上に実施例1と
同様の条件で、長さ10mm、幅 0.5mm、厚さ20nmのCr膜
を作製し、その上にAlN絶縁層17を成膜した。次い
で、収束イオンビームを用いて、Cr膜とAlN絶縁層
17との積層膜の端面に斜めからイオンビームを照射
し、この積層膜の端面を斜めに加工した。この後、上記
した傾斜端面を覆うように、SiOx マトリックス中に
Co80Pt20合金粒子を分散させた厚さ10nmのグラニュ
ラー磁性膜3を形成し、さらにその上に厚さ20nmのCo
90Fe10合金膜を強磁性膜4として形成した。
【0065】上記したエッジ接合型の強磁性トンネル接
合膜において、Cr膜とCo90Fe10合金膜との間にセ
ンス電流を流し、その電圧を測定して磁気抵抗効果を評
価した。その結果、Co90Fe10合金膜の磁化反転に伴
う磁気抵抗効果が観測された。磁気抵抗変化率は 22%、
磁化反転磁場は20Oe であった。
【0066】実施例3 図7に構造を示した積層膜を高周波スパッタ法を用いて
作製した。まず、ガラス基板2上に強磁性膜4として、
Feをターゲットとし、Arガス圧 0.3Pa、基板バイア
ス400Wの条件下で厚さ20nmのFe膜を成膜した。その上
にグラニュラー磁性膜3として、(La70Sr30ΜnO
3 80(Bi2 3 20をターゲットとして上記条件下
でスパッタし、Bi2 3 中に強磁性の(La0.7 Sr
0.3 )MnO3 粒子を分散させた膜(膜厚10nm)を作製
した。次に、このグラニュラー磁性膜3上に膜厚20nmの
FeMn反強磁性膜10を成膜した。
【0067】次に、FeMn反強磁性膜10上にAu電
極をスパッタし、これとFe膜間に電圧を印加して磁気
抵抗効果を測定した。磁気抵抗変化率は 33%、磁化反転
磁場は50Oe であった。このように、スピン偏極度100%
の(La0.7 Sr0.3 )MnO3 粒子をグラニュラー磁
性材料に用いることによって、磁気抵抗変化率が増大
し、より高い感度が得られた。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気素子
によれば、素子構造が簡単であり、安定して良好な特性
が得られ、電気抵抗を広い範囲で制御することができ、
かつ小さな磁場で大きい磁気抵抗変化率を容易に得るこ
とができる。従って、本発明の磁気素子を用いた磁気ヘ
ッドや磁界センサ等は、出力電圧の増大を図ることがで
きると共に、高感度化することが可能となる。また、本
発明の磁気素子を用いた磁気記憶装置によれば、高速で
出力の大きい不揮発性の固体磁気メモリを提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気素子の基本構造の概念図であ
る。
【図2】 本発明の磁気素子の基本構造の他の概念図で
ある。
【図3】 本発明の磁気素子が磁気抵抗効果を発現する
ことを説明するための模式図である。
【図4】 本発明における積層型磁気素子の一実施形態
の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】 本発明における積層型磁気素子の他の実施形
態の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】 積層型磁気素子にバイアス磁界を印加する場
合の一構造例を模式的に示す断面図である。
【図7】 積層型磁気素子にバイアス磁界を印加する場
合の他の構造例を模式的に示す断面図である。
【図8】 本発明の磁気素子における強磁性膜の変形例
を模式的に示す断面図である。
【図9】 図8に示す磁気素子の変形例を模式的に示す
断面図である。
【図10】 本発明における積層型磁気素子の具体的な
素子構造の一例を示す図である。
【図11】 本発明における積層型磁気素子のさらに他
の実施形態の構造を模式的に示す断面図である。
【図12】 本発明におけるプレーナ型磁気素子の一実
施形態の構造を模式的に示す断面図である。
【図13】 本発明におけるプレーナ型磁気素子の他の
実施形態の構造を模式的に示す断面図である。
【図14】 本発明の実施例1による磁気素子の磁化曲
線の測定結果を示す図である。
【図15】 本発明の実施例1による磁気素子の磁気抵
抗効果の測定結果を示す図である。
【図16】 比較例1による磁気素子の磁化曲線の測定
結果を示す図である。
【符号の説明】
1………積層型磁気素子 3、G……グラニュラー磁性膜 4、F……強磁性膜 5………積層膜 6………誘電体マトリックス 7………磁性微粒子 15……プレーナ型磁気素子 16……エッジ接合型磁気素子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荻原 英夫 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (72)発明者 市原 勝太郎 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平8−264858(JP,A) 特開 平8−250330(JP,A) 特開 平8−316548(JP,A) 特開 平7−307013(JP,A) 特開 平6−97534(JP,A) 特開 平9−246623(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 10/32 G11B 5/39 H01F 10/16 H01L 43/08

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した強磁性微粒子とを有し、かつ超常
    磁性を示さず室温で保磁力を持つと共に、スピンの方向
    が実質的に一方向に揃っているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜とを
    具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  2. 【請求項2】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した強磁性微粒子とを有し、かつ超常
    磁性を示さず室温で保磁力を持つと共に、スピンの方向
    が実質的に一方向に揃っているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜であ
    って、非磁性層を介して積層配置されていると共に、互
    いに反平行に結合している2層の強磁性層を有する強磁
    性膜とを具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  3. 【請求項3】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した強磁性微粒子とを有し、かつ超常
    磁性を示さず室温で保磁力を持つと共に、スピンの方向
    が実質的に一方向に揃っているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜にバイアス磁界を印加するバイ
    アス磁界印加膜とを具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  4. 【請求項4】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した強磁性微粒子とを有し、かつ超常
    磁性を示さず室温で保磁力を持つと共に、隣接する前記
    強磁性微粒子の間隔が3nm以下であり、スピンの方向が
    実質的に一方向に揃っているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜とを
    具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  5. 【請求項5】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した、Co−Pt合金、Fe−Pt合
    金および遷移金属−希土類合金から選ばれる少なくとも
    1種からなる強磁性微粒子とを有し、かつ超常磁性を示
    さず室温で保磁力を持つと共に、スピンの方向が実質的
    に一方向に揃っているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜とを
    具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  6. 【請求項6】 誘電体マトリックスと、この誘電体マト
    リックス中に分散した、粒径が5〜10nmの範囲である強
    磁性微粒子とを有し、かつ超常磁性を示さず室温で保磁
    力を持つと共に、スピンの方向が実質的に一方向に揃っ
    ているグラニュラー磁性膜と、 前記グラニュラー磁性膜と近接配置された強磁性膜とを
    具備し、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜との間にトンネ
    ル電流を流すと共に、前記グラニュラー磁性膜と前記強
    磁性膜のうち、保磁力が小さい磁性膜のスピンの方向を
    変化させることにより、前記トンネル電流に対して磁気
    抵抗効果が発現することを特徴とする磁気素子。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし請求項6のいずれか1項
    記載の磁気素子において、 前記強磁性膜は、前記グラニュラー磁性膜を挟んで対向
    する第1および第2の強磁性膜を有し、前記グラニュラ
    ー磁性膜と前記第1および第2の強磁性膜との間にトン
    ネル電流を流すことが可能であることを特徴とする磁気
    素子。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし請求項7のいずれか1項
    記載の磁気素子において、 前記グラニュラー磁性膜と前記強磁性膜のうち、前記強
    磁性膜のスピンの方向を外部磁界で変化させることによ
    り、前記磁気抵抗効果が発現することを特徴とする磁気
    素子。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれか1項
    記載の磁気素子を具備することを特徴とする磁気ヘッ
    ド。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし請求項8のいずれか1
    項記載の磁気素子を具備することを特徴とする磁気記憶
    装置。
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