JP3946355B2 - 磁気素子とそれを用いた磁気センサおよび磁気記憶装置 - Google Patents

磁気素子とそれを用いた磁気センサおよび磁気記憶装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果を利用した磁気素子とそれを用いた磁気センサおよび磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気抵抗効果は、ある種の磁性体に磁界を加えることにより電気抵抗が変化する現象である。このような磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す)は、磁気ヘッド、磁気センサなどに使用されており、さらには磁気抵抗効果メモリなどの磁気記憶装置が提案されている。このようなMR素子には、外部磁界に対する感度が大きいこと、応答速度が早いことなどが要求されている。
【0003】
強磁性体を用いたMR素子は、温度安定性に優れ、使用温度範囲が広いというような特徴を有しており、従来からNiFe合金などの強磁性合金の薄膜が使用されてきた。しかし、その磁気抵抗変化率は 2〜3%程度と小さいため、これを用いた磁気ヘッドでは十分な感度が得られないという問題があった。
【0004】
一方、近年、スピンの方向に依存して巨大磁気抵抗効果を示す材料として、強磁性金属層と非磁性金属層とを数nmの周期で積層した積層膜が注目されている。例えば、Fe/Cr人工格子膜(Phys. Rev. Lett.61, 2472(1988))、Co/Cu人工格子膜(J.Mag. Mag. Mater.94, L1(1991))などの強磁性層間の相互作用を反強磁性結合させたものや、強磁性金属層/非磁性金属層/強磁性金属層のサンドイッチ積層膜の一方の強磁性金属層に交換バイアスを及ぼして磁化を固定し、他方の強磁性金属層のスピンのみを外部磁界で容易にスイッチできるようにしたスピンバルブ膜などが見出されている。
【0005】
しかし、強磁性金属層間の反強磁性結合を利用した金属人工格子膜は、反強磁性交換結合定数が大きいために、飽和磁場が大きく、またヒステリシスも非常に大きいという問題を有している。また、上述したような巨大磁気抵抗効果(GMR)を示す積層膜において、大きな磁気抵抗変化率が得られるCoやCo−FeなどのCo合金を用いると、保磁力が大きいために良好な軟磁気特性が得られないという問題がある。
【0006】
そこで、上述したようなGMR素子の磁気抵抗効果曲線をソフト化するために、Ni−FeやFeなどの軟磁性層を付与する構造が提案されている(特開平5- 206540号公報など参照)。しかし、このような軟磁性層を付与した構造では、製造プロセスにおける各種熱処理、あるいはHDD内の温度上昇や電流による発熱などによって、巨大磁気抵抗効果を示す積層膜と軟磁性層との間でミキシングなどが起こり、GMR素子の特性が劣化してしまうという問題がある。
【0007】
このような問題に対して、例えばNiFe層の表面を酸化してNiやFeの酸化物を存在させ、その上にスピンバルブ膜などのGMR膜を形成することによって、NiやFeの酸化物を原子拡散バリヤとして機能させることが提案されている。例えば、CoZrNb/NiFe/(Ni−O,Fe−O)/Co9 Fe/Cu/Co9 Fe/FeMn構造のスピンバルブ膜に対し、磁場中熱処理により隣り合う磁場層(Co9 Fe)のスピンを略直交させる初期アニールを施した場合、MR変化率が増大すると共にソフト化されることが報告されている(J.Appl. Phys.79(8), p.6399,(1996))。
【0008】
しかしながら、NiFe層のような軟磁性層の表面を酸化した後に、Co合金などを使用したGMR膜を成膜すると、初期アニールや製造プロセスなどによる磁気抵抗変化率の劣化の度合いは抑えられるものの、高温ではCoの方がNiに比べて酸化しやすいため(J.Iron steel Inst.160, 261(1948)、Physical Chemistry of Metals McGraw Hill, NewYork, 1953)、HDD内の温度上昇や電流による発熱などによって、磁気抵抗効果を発現するGMR膜中のCo9 Fe層自体が酸化してしまい、磁気抵抗効果特性や感度が劣化してしまうという問題が生じるおそれがある。
【0009】
一方、スピン依存散乱とはメカニズムを異にする、強磁性トンネル効果に基づく巨大磁気抵抗効果が見出されている。これは 2つの強磁性金属層間に誘電体層を挿入したサンドイッチ膜において、膜面に垂直に電流を流して誘電体層のトンネル電流を利用するものである。このようなトンネル電流を利用した磁気抵抗効果素子、いわゆる強磁性トンネル接合素子は構造が簡単であり、また比較的大きな磁気抵抗変化率が得られるものの、上述したスピンバルブ膜などと同様な問題を有している。
【0010】
つまり、大きな磁気抵抗効果が得られるスピン分極率の大きな強磁性層を用いた積層膜をソフト化するために、強磁性層に軟磁性層を付与した場合、強磁性層の軟磁性化に対しては効果を示すものの、製造プロセスにおける各種熱処理や電流による発熱などによって、トンネルMRに寄与する強磁性層と軟磁性層との間でミキシングが起こり、スピン分極率が低下して磁気抵抗効果特性や感度が劣化してしまうという問題が発生する。さらに、前述したような原子拡散バリヤ層では強磁性層自体の酸化を招くおそれがあり、この強磁性層の酸化により磁気抵抗効果特性や感度が劣化してしまう。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、スピンバルブ膜などのスピン依存散乱に基づく磁気抵抗効果素子や、強磁性トンネル接合素子に代表される強磁性トンネル効果を利用した磁気抵抗効果素子においては、大きな磁気抵抗効果が得られるスピン分極率の大きな強磁性層を用いた場合に、強磁性層の軟磁気特性の向上を実現した上で、各種熱処理や温度上昇などに伴う磁気抵抗効果特性や感度の劣化を抑制することが課題とされている。
【0012】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、種々のGMR膜を構成する強磁性層の軟磁気特性を向上させると共に、各種熱処理や使用時における温度上昇などに伴う磁気抵抗効果特性や感度の劣化を抑制することを可能にした磁気素子、およびそれを用いた磁気センサと磁気記憶装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の磁気素子は、請求項1に記載したように、少なくとも 2層の強磁性層と、前記強磁性層間に介在され、かつ前記強磁性層間にトンネル電流を流し得る厚さを有する誘電体層とを具備する磁気素子において、前記強磁性層のうち少なくとも 1層には、前記強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴としている。
【0014】
本発明の第2の磁気素子は、請求項2に記載したように、少なくとも 1層の 1 強磁性層と、前記 1 強磁性層を挟持するように配置された誘電体層と、前記誘電体層を介して前記 1 強磁性層と積層された第2の強磁性層および第3の強磁性層とを具備する磁気素子において、
前記第2の強磁性層および前記第3の強磁性層の少なくとも一方に対し、その強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の第3の磁気素子は、請求項3に記載したように、誘電体で分断された強磁性微粒子を有する少なくとも 1層の強磁性グラニュラー層と、前記強磁性グラニュラー層を挟持するように配置された誘電体層と、前記誘電体層を介して前記強磁性グラニュラー層と積層された第1の強磁性層および第2の強磁性層とを具備する磁気素子において、
前記第1の強磁性層および前記第2の強磁性層の少なくとも一方に対し、その強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴としている。
【0016】
本発明の第4の磁気素子は、請求項4に記載したように、少なくとも 2層の強磁性層と、前記強磁性層間に介在された非磁性層とを具備する磁気素子において、前記強磁性層のうち少なくとも 1層には、前記強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴としている。
【0017】
上述した本発明の磁気素子は、請求項5に記載したように、例えば前記金属の酸化膜または窒化膜を介して前記軟磁性層が付与された前記強磁性層のスピンの方向を変化させることにより磁気抵抗効果を発現させるものである。また、本発明の磁気素子の具体的な形態としては、請求項6に記載したように、前記金属の酸化膜または窒化膜は 1nm以下の厚さを有し、かつ前記金属はAl、Si、Mg、Ti、Ta、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Liおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種からなることが好ましい。
【0018】
本発明の磁気センサは、請求項7に記載したように、上述した本発明の磁気素子と、前記磁気素子にセンス電流を供給する電極とを具備することを特徴としている。また、本発明の磁気記憶装置は、請求項8に記載したように、上述した本発明の磁気素子と、前記磁気素子に電流磁界を印加する電極とを具備することを特徴としている。
【0019】
本発明の磁気素子においては、例えば外部磁界によりスピンの方向を変化させる強磁性層に対して、それより酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層を付与している。このように、強磁性層より酸化または窒化しやすい数原子層程度の金属の酸化膜または窒化膜を介して、強磁性層に軟磁性層を付与することによって、各種熱処理や使用時の温度上昇などに伴う強磁性層の酸化や窒化を抑制することができる。従って、軟磁性層の付与により強磁性層の軟磁気特性を向上させた上で、強磁性層の酸化や窒化による磁気抵抗効果特性や感度の劣化を抑制することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
図1は本発明の第1の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。図1に示す磁気素子1は、第1の強磁性層2/誘電体層3/第2の強磁性層4からなる積層膜を基本構成要素として有している。誘電体層3は、第1の強磁性層2と第2の強磁性層4との間にトンネル電流を流し得る厚さ、具体的には30nm以下程度の厚さを有する誘電体層である。誘電体層3と接した第1および第2の強磁性層2、4はそれぞれ異なった材料で構成してもよい。
【0022】
そして、第1および第2の強磁性層2、4のうち一方の強磁性層4は、強磁性層4より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層5を介して、軟磁性層6と積層されている。これら各構成要素によって、本発明の第1の磁気素子としての強磁性トンネル接合素子1が構成されている。
【0023】
第1および第2の強磁性層2、4は、例えば外部磁界により軟磁性層6が付与された強磁性層4のスピンの方向のみを変化させることが可能とされており、これによりスピン依存性トンネル効果が発現する。
【0024】
すなわち、強磁性トンネル接合素子1の積層方向にセンス電流を流して、第1および第2の強磁性層2、4間にトンネル電流を流す。第1および第2の強磁性層2、4のスピンが同じ方向を向いている状態において、強磁性トンネル接合素子1の抵抗(膜面垂直方向へのトンネル電流の抵抗)は最小となり、この状態から第2の強磁性層4のスピン方向を外部磁界などにより反転させることによって、強磁性トンネル接合素子1の抵抗は最大となる。この際、第1の強磁性層2のスピンは外部磁界に対して実質的に固定されているようにする。このようなトンネル電流を含むセンス電流の電圧を測定することによって、信号磁界などの外部磁界を検出することができる。
【0025】
第1および第2の強磁性層2、4のうち、一方の強磁性層4のスピンの方向のみを変化させるためには、例えば強磁性体の保磁力の差を利用してもよいし、また後に詳述するように、他方の強磁性層4を反強磁性膜などのバイアス磁界印加膜と積層して磁化を固定するようにしてもよい。また、強磁性層2、4は膜面方向に一軸異方性を有することが好ましく、その厚さは 1〜 100nm程度であることが好ましい。
【0026】
強磁性層2、4の構成材料には種々の磁性材料を使用することができ、強磁性層を硬磁性層(ピン層)とする場合には、磁気異方性の大きいCo、Co合金、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−希土類合金などを用いることが好ましい。強磁性層を軟磁性層(フリー層)として用いる場合には、基本的に磁性材料に制限はなく、パーマロイに代表されるFe−Ni合金、強磁性を示すFe、Co、Niおよびそれらを含む合金、スピン分極率の大きいマグネタイト、CrO2 、RXMnO3-y (Rは希土類金属、XはCa、BaおよびSrから選ばれる少なくとも 1種の元素、 yは 0に近い値)などの酸化物系磁性材料、NiMnSb、PtMnSbなどのホイスラー合金などを使用することができる。ただし、反強磁性膜などを用いて強磁性層の磁化を固着する場合、強磁性層の構成材料は特に限定されるものではない。
【0027】
なお、上述したような磁性材料には、Ag、Cu、Au、Ta、B、C、O、N、Si、Pd、Pt、Zr、Ir、W、Mo、Nb、Al、Mg、V、Mn、Cr、Ca、Liなどの非磁性元素か多少含まれていても、強磁性が失われないかぎり特に問題はない。
【0028】
誘電体層3の構成材料には各種公知の材料を使用することができ、例えばAl2 3 、SiO2 、MgO、AlN、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 などの誘電体材料を使用することができる。なお、上記した酸化膜、窒化膜、フッ化膜などでは、それぞれの元素の欠損が一般的に存在するが、そのような誘電体膜であっても何等問題はない。誘電体層3の厚さはトンネル電流を流し得る厚さ、例えば上述したように10nm以下程度とすることが好ましい。
【0029】
原子拡散バリヤなどとして機能する金属化合物層5は、上述したような強磁性層4の構成材料より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなるものである。ここで、強磁性層4の構成材料より酸化または窒化しやすい金属とは、例えば室温から 300℃程度の温度領域において、酸化物または窒化物の標準生成自由エネルギーがCoやNiに代表される強磁性層4の構成材料より小さい元素である。このような金属化合物層5の構成元素としては、例えばAl、Si、Mg、Ti、Ta、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、希土類元素なとが挙げられる。
【0030】
このような金属元素の酸化物または窒化物からなる金属化合物層5の厚さは数原子層程度、具体的には 1nm以下とすることが好ましい。金属化合物層5の厚さが 1nmを超えて厚くなると、強磁性トンネル接合素子1の基本構成要素としての強磁性層4と軟磁性層6との間の磁気的な結合が切れてしまうおそれがあり、強磁性層4の軟磁気特性の改善効果が得られなくなる。
【0031】
強磁性層4の軟磁気特性を改善する軟磁性層6には、種々の軟磁性材料を使用することができ、例えばNi−Fe合金、Fe、Ni−FeにMoなどの元素を添加した材料、Co−Fe−BやCo−Zr−Nbのようなアモルファス磁性材料などを使用することができる。このような軟磁性層6の付与は、特にCoやCo合金で強磁性層4を構成する場合に効果的である。
【0032】
そして、この実施形態の強磁性トンネル接合素子1においては、上述したような軟磁性層6を、強磁性層4の構成材料より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層5を介して、強磁性層4に付与しているため、まず初期アニールや製造プロセスなどによる磁気抵抗変化率の劣化の度合いを抑制することができる。
【0033】
さらに、実使用時の装置温度の上昇や電流による発熱などが生じた場合においても、金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層5により強磁性層4が酸化もしくは窒化することが抑制できるため、磁気抵抗効果特性の感度の劣化を防ぐことが可能となる。従って、各種熱処理や使用時の温度上昇に対する強磁性トンネル接合素子1の特性の安定化を図ることができ、強磁性トンネル接合素子1の実用性を大幅に高めることが可能となる。
【0034】
次に、本発明の第2の磁気素子の実施形態について述べる。
【0035】
図2は本発明の第2の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。図2に示す磁気素子10は、第2の強磁性層11/誘電体層12/ 1 の強磁性層13/誘電体層14/第3の強磁性層15からなる積層膜を基本構成要素として有している。このような積層膜において、第1の金属層11は強磁性体からなる。一方、第2の金属層15は強磁性体および非磁性体のいずれであってもよい。
【0036】
そして、第2の強磁性層11(強磁性金属層)は、この強磁性金属層11より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16を介して、軟磁性層17と積層されている。また、図2は第3の強磁性層15もそれより酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16を介して、軟磁性層17を積層した状態を示している。これら各構成要素によって、本発明の第2の磁気素子としての多重強磁性トンネル接合素子10が構成されている。
【0037】
なお、強磁性金属層11や強磁性層13は、前述した第1の磁気素子の実施形態で示したような各種の磁性材料で構成することができ、その他の条件についても前述した実施形態と同様とすることが好ましい。誘電体層12、14についても同様である。また、強磁性金属層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16の構成材料や厚さ、軟磁性層17の構成材料などについても前述した通りである。
【0038】
第3の強磁性層15は、第2の強磁性層11とは必ずしも同じ材料で構成する必要はない。また、これら強磁性層は単層構造に限らず、非磁性層を介して配置した 2つの強磁性層を有し、これら強磁性層の磁化を互いに反平行となるように結合させた積層膜で構成することもできる。このような反平行に結合させた積層膜によれば、強磁性層から磁束が外部に漏れることを防ぐことができる。
【0039】
このような多重強磁性トンネル接合素子10において、 1 強磁性層13は 2つの薄い誘電体層12、14、すなわち 2つのトンネル層によって挟まれており、各誘電体層12、14を介して第2の強磁性層11と第 1 の強磁性層13との間および第 1 の強磁性層13と第3の強磁性層15との間にそれぞれトンネル電流が流れるように構成されている。すなわち、誘電体層12、14を介して、第2の強磁性層11 1 強磁性層13および第3の強磁性層15の間に、 2重の強磁性トンネル接合が形成されている。
【0040】
このような積層膜において、 1 強磁性層13が十分に薄い場合には量子効果により強磁性層13に離散準位が形成される。そして、第2の強磁性層11と第3の強磁性層15との間に適当な電圧を印加し、強磁性層13に形成された離散準位を制御(シフト)することによって、スピン依存トンネル効果を生じさせることができる。この際に、化合物層16を介して軟磁性層17を付与した強磁性金属層11のスピンの方向を変化させることによって、スピン依存トンネル効果、さらにはスピン依存共鳴トンネル効果に基づく非常に大きなMR変化率を得ることができる。また、多重強磁性トンネル接合は、誘電体層に実効的に印加される電圧も小さくなるため、電圧依存性によるMR変化率の減少も小さくなるという効果も存在する。
【0041】
強磁性金属層11のスピンの方向のみを変化させるためには、前述した実施形態と同様に、強磁性体の保磁力の差などを利用することができる。強磁性層13の厚さは、上述したように量子効果によりスピンに依存した離散的なエネルギー準位が形成されるような厚さ、具体的には10nm以下程度とする。より好ましくは5nm以下である。第2および第3の強磁性層11、15の厚さは特に限定されるものではなく、例えば 0.1〜 100mm程度とすることが好ましい。
【0042】
なお、離散準位を形成する強磁性層13は 1層に限られるものではなく、強磁性層13を複数層とすると共に、これら複数の強磁性層を誘電体層と交互に積層配置して、 3重以上の多重強磁性トンネル接合を有する構成とすることもできる。すなわち、軟磁性層17/金属化合物層16/第2の強磁性層11/誘電体層12/(第1の強磁性層13/誘電体層14)N /第3の強磁性層15構造の積層膜(N≧ 1:積層数)を使用することができる。
【0043】
この実施形態の多重強磁性トンネル接合素子10においても、第2の強磁性層11にその構成材料より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16を介して軟磁性層17を付与しているため、初期アニールや製造プロセスなどによる磁気抵抗変化率の劣化の度合いを抑制することができ、さらに実使用時の装置温度の上昇や通電発熱などに伴う第2の強磁性層11の酸化や窒化を抑制することができるため、磁気抵抗効果特性の感度の劣化を防ぐことが可能となる。従って、各種熱処理や使用時の温度上昇に対する多重強磁性トンネル接合素子10の特性の安定化を図ることができ、多重強磁性トンネル接合素子10の実用性を大幅に高めることが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第3の磁気素子の実施形態について述べる。
【0045】
図3は本発明の第3の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。図3に示す磁気素子20は、第2の強磁性層11/誘電体層12/誘電体21で分断された強磁性微粒子22を有する強磁性グラニュラー層23/誘電体層14/第3の強磁性層15からなる積層膜を基本構成要素として有している。
【0046】
そして、第1および第2の追加強磁性層11、15のうち、第2の強磁性層11は、この強磁性層11より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16を介して、軟磁性層17と積層されている。これら各構成要素によって、本発明の第3の磁気素子としてのグラニュラータイプの多重強磁性トンネル接合素子20が構成されている。
【0047】
なお、強磁性金属層11は、前述した実施形態で示したような各種の磁性材料で構成することができ、その他の条件についても前述した実施形態と同様とすることが好ましい。誘電体層12、14についても同様である。また、強磁性金属層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16の構成材料や厚さ、軟磁性層17の構成材料などについても前述した通りである。
【0048】
強磁性グラニュラー層23は、誘電体21中に強磁性微粒子22を分散配置したものである。この強磁性グラニュラー層23のスピンは超常磁性を示さず、有限の保磁力を持つ強磁性体であり、理想的にはそのスピンは一方向に揃っていることが望ましい。強磁性グラニュラー層23は多少ばらつきがあってもよく、誘電体12、14で分断されていればよい。
【0049】
強磁性微粒子22には種々の強磁性材料を使用することができる。例えば、強磁性グラニュラー層23を磁化固定層とする場合には、磁気異方性の大きいCo、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−希土類合金などを用いることが好ましい。ただし、強磁性グラニュラー層23を反強磁性膜などと積層したり、強磁性グラニュラー層23の両端部に一対の硬磁性膜を隣接配置し、この硬磁性膜からバイアス磁界を印加してスピンを固定する場合には、特に強磁性微粒子22の構成材料は限定されるものではなく、前述したような各種の磁性材料を使用することができる。
【0050】
強磁性グラニュラー層23における強磁性微粒子22の粒径は、超常磁性が発現せず、強磁性が維持される大きさ、例えば数nm以上とする必要がある。ただし、あまり強磁性微粒子22が大きいと粒子間隔が増大するため、強磁性微粒子22の粒径は 5〜10nm程度とすることが好ましい。また、強磁性グラニュラー層23中の強磁性微粒子22は、それら微粒子間でトンネル電流が流れるように分散されている必要があり、粒子間隔は 3nm以下程度とすることが好ましい。
【0051】
マトリックスを構成する誘電体21としては、Al2 3 、SiO2 、MgO、AlN、B2 3 、MgF2 、CaF2 、SrTiO3 などの種々の誘電体材料を使用することができ、このような誘電体膜中に上記したような強磁性微粒子22を分散させることで強磁性グラニュラー層23が得られる。なお、上記した酸化膜、窒化膜、フッ化膜などでは、それぞれの元素の欠損が一般的に存在するが、そのような誘電体膜であっても何等問題はない。
【0052】
強磁性グラニュラー層23は、膜面内に一軸磁気異方性を有することが望ましい。これによって、急峻な磁化反転を起こすことができると共に、磁化状態を安定して保持することができる。これらは特に磁気記憶装置に適用する場合に有効である。強磁性グラニュラー層23の膜厚は特に制限されるものではないが、作製上 100nm以下とすることが好ましい。
【0053】
上述したような第2の強磁性層11と強磁性グラニュラー層23、および強磁性グラニュラー層23と第3の強磁性層15との間には、それぞれトンネル電流が流れるように構成されている。すなわち、誘電体層12、14を介して、第2の強磁性層11、強磁性グラニュラー層23および第3の強磁性層15の間に、 2重の多重強磁性トンネル接合が形成されている。
【0054】
この実施形態のグラニュラータイプの多重強磁性トンネル接合素子20においても、第2の強磁性層11にその構成材料より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層16を介して軟磁性層17を付与しているため、初期アニールや製造プロセスなどによる磁気抵抗変化率の劣化の度合いを抑制することができ、さらに実使用時の装置温度の上昇や通電発熱などに伴う第2の強磁性層11の酸化や窒化を抑制することができるため、磁気抵抗効果特性の感度の劣化を防ぐことが可能となる。従って、各種熱処理や使用時の温度上昇に対する多重強磁性トンネル接合素子20の特性の安定化を図ることができ、多重強磁性トンネル接合素子20の実用性を大幅に高めることが可能となる。
【0055】
さらに、本発明の第3の磁気素子において、強磁性グラニュラー層23は 1層に限られるものではなく、例えば図4に示すように、複数の強磁性グラニュラー層23a、23bと誘電体層12、14a、14bとを交互に積層配置して、 3重以上の多重強磁性トンネル接合を有する構成とすることもできる。すなわち、軟磁性層17/金属化合物層16/第2の強磁性層11/誘電体層12/(強磁性グラニュラー層23/誘電体層14)N /第3の追加強磁性層15構造の積層膜(N≧1:積層数)を使用することができる。
【0056】
図5は基板面に沿って電流を流すプラーナー型の素子であり、強磁性グラニュラー層23a、23bと誘電体層14a、14b、14cとを交互に積層した積層膜上に、第2の強磁性層11と第3の強磁性層15とが分離された状態で配置されており、さらに強磁性層11、15上に金属化合物層16を介して軟磁性層17が形成されている。図中24は基板である。このようなプラーナー型磁気素子は微細加工技術を用いて容易に作製することができる。
【0057】
次に、本発明の第4の磁気素子の実施形態について述べる。
【0058】
図4は本発明の第4の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。図4に示す磁気素子30は、第1の強磁性金属層31/非磁性金属層32/第2の強磁性金属層33からなる積層膜を基本構成要素として有しており、さらに第1の強磁性金属層31はそれより酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層34を介して、軟磁性層35と積層されている。これら各構成要素によって、本発明の第4の磁気素子としてのスピンバルブ型磁気抵抗効果素子(SV型GMR素子)30が構成されている。
【0059】
第1および第2の強磁性金属層31、33は、例えば外部磁界により軟磁性層35が付与された強磁性金属層(フリー層)31のスピンの方向のみを変化させることが可能とされており、これにより巨大磁気抵抗効果が発現する。
【0060】
すなわち、第1および第2の強磁性金属層31、33のスピンが同じ方向を向いている状態において、積層膜の抵抗は最小となり、この状態から第1の強磁性金属層31のスピン方向を外部磁界などにより反転させることによって、積層膜の抵抗は最大となる。この際、第2の強磁性金属層33のスピンは外部磁界に対して実質的に固定されているようにする(ピン層)。このような積層膜に対して膜面方向にセンス電流を流し、その電圧を測定することによって、信号磁界などの外部磁界を検出することができる。
【0061】
第1の強磁性金属層31のスピンの方向のみを変化させるためには、前述した実施形態と同様に、強磁性体の保磁力の差などを利用したり、あるいは第2の強磁性金属層33を反強磁性膜と積層して磁化を固着するなどの方法を適用することができる。
【0062】
強磁性金属層31、33には、各種の磁性金属材料を使用することができ、例えばFe−Ni合金、Co−Fe合金、さらには強磁性を示すFe、Co、Niおよびそれらを含む合金などの磁性金属材料が使用される。強磁性金属層31、33の厚さは 0.1〜 100nm程度とすることが好ましい。また、非磁性金属層32には、Cu、Au、Agおよびこれらを含む合金や積層膜など、種々の非磁性金属材料を使用することができる。非磁性金属層32の厚さは 0.6〜10nm程度とすることが好ましい。
【0063】
なお、強磁性金属層31より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層34の構成材料や厚さ、軟磁性層35の構成材料などについては、前述した実施形態と同様とすることが好ましい。
【0064】
この実施形態のSV型GMR素子30においても、第1の強磁性金属層31にその構成材料より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜からなる金属化合物層34を介して軟磁性層35を付与しているため、初期アニールや製造プロセスなどによる磁気抵抗変化率の劣化の度合いを抑制することができ、さらに実使用時の装置温度の上昇や通電発熱などに伴う強磁性金属層31の酸化や窒化を抑制することができるため、磁気抵抗効果特性の感度の劣化を防ぐことが可能となる。従って、各種熱処理や使用時の温度上昇に対するSV型GMR素子30の特性の安定化を図ることができ、SV型GMR素子30の実用性を大幅に高めることが可能となる。
【0065】
さらに、本発明の第4の磁気素子は、例えば図7に示すようなデュアルエレメントタイプの構造を採用することもできる。すなわち、強磁性金属層(ピン層)33/非磁性金属層32/強磁性金属層(フリー層)31/金属化合物層34/軟磁性層35/金属化合物層34/強磁性金属層(フリー層)31/非磁性金属層32/強磁性金属層(ピン層)33構造などを使用することができる。
上述した各実施形態の磁気素子による外部磁界の検出機能は、従来のMR素子と同様に、磁気抵抗効果型の磁気ヘッドに磁界センサなどの磁気センサに適用することができる。図8〜図11は本発明の磁気素子を磁気ヘッドとして使用する場合の膜構造例を示す断面図である。
【0066】
図8および図9は、SV型GMR素子30の第2の強磁性金属層33と接して反強磁性膜41を配置し、この反強磁性膜41からバイアス磁界を印加することによって、強磁性金属層33のスピンを一方向に固着した構造を示している。
【0067】
同様に、本発明の第1、第2および第3の磁気素子においても、図10および図11に示すように、反強磁性膜41を使用して強磁性層42のスピンを固着することができる。反強磁性膜41には、FeMn、PtMn、PtCrMn、NiMn、IrMn、CoO、NiO、Fe2 3 などの各種の反強磁性材料を使用することができる。ここで、強磁性層42は図1における強磁性層2、図2における強磁性金属層13、図3における強磁性グラニュラー層23、さらにはそれらと誘電体との積層膜などであり、スピンが固着されたピン層である。
【0068】
図8〜図11に示す各磁気ヘッド用膜構造において、各層の磁気特性(軟磁性および硬磁性)を組合せることで良好な磁気ヘッドを構成することができる。上述したような組合せにおいて、磁場中成膜、磁場中熱処理により隣り合う磁性層のスピンを略直交させることによって、HDDの記録媒体からの漏れ磁束に対して良好な線形応答性が得られる。このような構造はいかなる磁気ヘッド構造においても使用することができる。
【0069】
また、磁気抵抗効果型へッドとして用いる本発明の磁気素子に反強磁性膜41を付与する場合、ピン止めしたい強磁性層に直接反強磁性膜41を付与しなくともよく、例えば図12や図13に示すように、強い反強磁性結合を有する多層膜43、またはフェリ磁性多層膜44を介して、ピン止めしたい強磁性層に反強磁性膜41を付与してもよい。特に、フェリ磁性多層膜44/反強磁性層41(例えば、強磁性体/希土類/強磁性体/反強磁性体)構造で強磁性層のスピンを固定することによって、一方向異方性がピン層に付与される。これら強磁性体はhcp構造であることが望ましく、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pd、または希土類−遷移金属強磁性合金などを用いるとより強い一方向異方性が得られる。なお、図12および図13において、45は前述した各実施形態で示した磁気素子を構成する積層膜である。
【0070】
次に、本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の素子構造について説明する。図14〜図18は本発明の磁気素子を磁気記憶素子として使用する場合の膜構造例を示す断面図である。すなわち、 1つの強磁性層を記録層とすると共に、他の強磁性層をスピン固定層とし、センス電流で記録層の磁化方向を判定することにより、記録層に書き込まれたデータを読み取ることができる。
【0071】
図14および図15は破壊読出しを想定した場合の磁気記憶素子の素子構造である。この場合には、強磁性層42に接して反強磁性膜41を配置し、この反強磁性膜41からバイアス磁界を印加することによって、強磁性層42のスピンを一方向に固着している。強磁性層42は図1における強磁性層2、図2における強磁性金属層13、図3における強磁性グラニュラー層23、さらにはそれらと誘電体との積層膜などである。そして、金属化合物層16を介して軟磁性層17が付与された強磁性層11はフリー層とされており、これら軟磁性層17と強磁性層11との積層膜を記録および読み出し層として機能させる。
【0072】
また、図16、図17および図18は非破壊読出しを想定した場合の磁気記憶素子の素子構造であり、軟磁性層と硬磁性層とを適当に組合せることによって、読み出し層および書き込み層を設け、電流磁界で軟磁性層の磁化を反転させることにより、書き込み層の情報を非破壊で読み出すことができる。図16〜図18においては、軟磁性層17と強磁性層11との積層膜が読み出し層であり、高保磁力として強磁性層42や強磁性金属層15が記録層となる。
【0073】
この際、記録層となる高保磁力の強磁性層に対しても、それより酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層を付与することによって、非破壊読み出しの際の書き込み磁場を適当な大きさに調整することができ、熱安定性に優れたMRAM素子を提供することができる。
【0074】
そして、図19に示すように、上述したような本発明の磁気素子51をトランジスタ52、書き込みライン53、読み出しライン54、ビットライン55などと共にセル状に基板上に微細加工することによって、磁気記録装置を作製することができる。
【0075】
上述したような本発明の磁気素子は、各種スパッタ法、蒸着法、分子線エピタキシャル法などの通常の薄膜形成装置を用いて作製することができ、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサー、磁気記憶素子などに適用することができる。磁気素子を作製する基板に特に制限はなく、Si、SiO2 、Al2 3 、スピネル、MgO、AlNなどを使用することができる。
【0076】
また、各実施形態で示した構成要素の他に、例えばAu、Ag、Cuおよびそれらの合金、Ta、アモルファス合金、各種酸化物や窒化物からなる下地層や保護層を適用することができる。特に、電流を膜面内に流すスピンバルブ膜において、巨大磁気抵抗効果に寄与する非磁性層が金属層の場合、Au、Ag、Cuおよびそれらの合金、Al2 3 、SiO2 、NiO、CoOなどの保護膜または下地膜を適用し、これらと金属化合物層とで磁気素子を挟むように構成することによって、スペキュラー反射が起き、磁気抵抗変化率を高めることができる。
【0077】
【実施例】
次に、本発明の磁気素子の具体的な実施例について述べる。
【0078】
実施例1
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、SiO2 基板およびAl2 3 基板上にNi80Fe20を30nm積層した後にAl(0.8nm)を成膜し、純酸素をチャンバに導入してAlを酸化した。次いで、Co9 Fe(2nm)を成膜した後、Al(1nm)を成膜してプラズマ酸化した後、その上にCo9 Fe(10nm)/Ir20Mn80(14nm)を形成した。各層の成膜はNi80Fe20、Co9 Fe、Ir−Mn、Alをターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0079】
その結果、Ni80Fe20/AlOx /Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn構造の80μm 2 角のトンネル接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理を行い、IrMnのブロッキング温度直上で90度磁場の方向を変え、そのまま室温へ温度を下げて磁化を略直交させた。
【0080】
このトンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図20に示す。図20に示すように、磁気抵抗効果特性は、約Hk =8Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、さらに磁気抵抗変化率およびHk 共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0081】
また、トンネル接合の誘電体層がSiO2 、AlN、MgO、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 のときも同様の傾向を示し、トンネル接合の誘電体層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。さらに、Ni−FeとCo9 Feとの間に設けたCo−Feよりも酸化しやすい金属は、Co−Feよりも酸化しやすい元素であればよく、Si、Mg、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、Gdなどを使用した場合においても、同様の熱安定性が得られた。他の膜構成の例およびその耐熱性を表1に示す。
【0082】
【表1】
Figure 0003946355
比較例1〜3
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、SiO2 基板およびAl2 3 基板上にNi80Fe20を30nm積層し、その上にCu(0.8nm)を成膜した膜、または何も成膜しない状態のNi−Fe下地のみの状態の膜において、純酸素をチャンバに導入し、CuおよびNi−Feを酸化したもの、またNi80Fe20を30nm積層した後、酸素などを何も導入しなかったものの 3種類を作製した。
【0083】
次いで、それらの上にCo9 Fe(2nm)を成膜し、さらにAl(1nm)を成膜してプラズマ酸化した後、その上にCo9 Fe(10nm)/Ir20Mn80(14nm)を作製した。各層の成膜はNi80Fe20、Co9 Fe、Cu、Al、Ir20Mn80をターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0084】
その結果、Ni80Fe20/CuOx /Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例1)、Ni80Fe20/Ni−Fe−Ox /Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例2)、Ni80Fe20/Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例3)の各構造の80μm 2 角のトンネル接合を作製した。
【0085】
その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理を行い、IrMnのブロッキング温度直上で90度磁場の方向を変えてそのまま室温へ温度を下げ、磁化を略直交させた。上記トンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。それら結果を図21〜図23に示す。これらの図に示すように、磁気抵抗効果特性は熱に対して安定した特性を示さず、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として信頼性のある素子を提供できない。
【0086】
実施例2
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、SiO2 基板およびAl2 3 基板上にFeを20nm積層し、その上にSiを 0.5nm成膜して純酸素をチャンバに導入した。次いで、Co8 Fe2 (2nm)を成膜し、その上にAlを 1nm成膜してプラズマ酸化した後、Co−Fe−Ptを 2nm成膜した後、再びAlを 1nm成膜してプラズマ酸化した。その上にCo9 Feを 2nm作製した後、Pt−Mnを20nm成膜した。各層の成膜はFe、Co8 Fe2 、Co5 Fe3 Pt2 、Al、Si、PtMn9 をターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0087】
その結果、Fe/SiOx /Co8 Fe2 /Al2 3 Co−Fe−Pt/Al2 3 /Co9 Fe/Pt−Mn構造の50μm 2 角の 2重トンネル接合を作製した。その後、試料を 250℃にて磁場中熱処理することによって、一軸異方性を付与した。
【0088】
上記トンネル接合を 270℃にて長時間アニールを行って、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図24に示す。図24に示すように、低磁場での磁気抵抗効果特性は約Hk =7Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗変化率およびHk 共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0089】
また、トンネル接合の誘電体層がSiO2 、AlN、MgO、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 のときも同様の傾向を示し、トンネル接合の誘電体層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。FeとCo8 Fe2 との間に設けたCo−Feよりも酸化しやすい金属は、Co−Feよりも酸化しやすい元素であればよく、Al、Mg、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、Gdなどを用いたときも同様の熱安定性が得られた。
【0090】
実施例3
スパッタ装置を用いて、SiO2 基板およびAl2 3 基板上にNi80Fe20を 7nm積層した後、Al(0.7nm)を成膜し、純酸素をチャンバに導入してAlを酸化した。次いで、CoまたはCo9 Fe(1.5nm)を成膜した後にCuを成膜し、その上にCo(3nm)/Ir20Mn80(14nm)またはCo9 Fe(3nm)/Ir20Mn80(14nm)を作製した。各層の成膜はNi80Fe20、Co9 Fe、Cu、Alをターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0091】
その結果、Ni80Fe20/AlOx /Co9 Fe/Cu/Co9 Fe/IrMn、Ni80Fe20/AlOx /Co/Cu/Co/IrMn構造の巨大磁気抵抗効果素子を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理し、IrMnのブロッキング温度直上て90度磁場の方向を変え、そのまま室温へ温度を下げて、磁化を略直交させた。
【0092】
上記巨大磁気抵抗効果素子(スピンバルブ膜)を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図25に示す。図25に示すように、磁気抵抗効果特性は約Hk =6Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗変化率およびHk 共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0093】
巨大磁気抵抗効果素子(スピンバルブ膜)の非磁性金属層がAg、Au、Cu−Au、Cu−Ag、Cu−Niのときも同様の傾向を示し、巨大磁気抵抗効果素子(スピンバルブ膜)の非磁性金属層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。また、Ni−FeとCo9 FeまたはCoとの間に設けたCo−FeやCoよりも酸化しやすい金属は、Co−FeやCoよりも酸化しやすい元素であればよく、Si、Mg、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、Gdなどを用いたときも同様の熱安定性が得られた。他の膜構成の例およびその耐熱性を表2に示す。
【0094】
【表2】
Figure 0003946355
比較例4〜6
スパッタ装置を用いて、SiO2 およびAl2 3 基板上にNi80Fe20を 7nm積層した後、Cu(0.7nm)を成膜した膜、または何も成膜しない状態のNi−Fe下地のみの状態の膜において、純酸素をチャンバに導入してCuおよびNi−Feを酸化したもの、またNi80Fe20を 7nm積層した後に酸素などを何も導入しなかったものの 3種類を作製した。次いで、その上にCo9 Fe(1.5nm)およびCuを成膜した後、その上にCo9 Fe(3nm)/Ir20Mn80(14nm)を作製した。各層の成膜はNi80Fe20、Co9 Fe、Cu、Al、Ir20Mn80をターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0095】
その結果、Ni80Fe20/CuOx /Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例4)、Ni80Fe20/Ni−Fe−Ox /Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例5)、Ni80Fe20/Co9 Fe/Al2 3 /Co9 Fe/IrMn(比較例6)の各構造の巨大磁気抵抗効果素子(スピンバルブ膜)を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理し、IrMnのブロッキング温度直上で90度磁場の方向を変え、そのまま室温へ温度を下げて、磁化を略直行させた。
【0096】
上記スピンバルブ膜を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図26〜図28に示す。これらの図に示すように、磁気抵抗効果特性は熱に対して安定した特性を示さず、磁気抵抗効果型ヘッド、磁界センサ、磁気記憶素子として信頼性のある素子を提供できないことが分かった。
【0097】
実施例4
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上にNi−Feを40nm積層した後、AlNを 1nm成膜し、その上にCo8 Pt2 膜を 5nm成膜した。次いで、Co8 Pt2 とSiO2 をターゲットとして、Co8 Pt2 とSiO2 の体積比が約 1:1になるように同時スパッタを行った。その際、基板バイアスとして400Wをかけながら成膜を行うと、(Co8 Pt2 −SiO2 グラニュラー/SiO2 )の層状積層膜(11nm)が作製された。その上にSiO2 を約 1nm成膜した後、Co9 Feを30nm成膜した。その際のArガス圧は 1×10-3Torrとしてスパッタを行った。
【0098】
その結果、Ni−Fe/AlNx /Co8 Pt2 /SiO2 /(Co8 Pt2 −SiO2 グラニュラー/SiO2 )/Co9 構造の50μm 2 角の強磁性グラニュラー層を介したトンネル接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理して一軸異方性を付与した。カー効果測定の結果、保磁力が大きいCo8 Pt2 −SiO2 グラニュラー層と保磁力が比較的小さいNi−Fe/AlN/Co8 Pt2 、Co9 Fe層のヒステリシス曲線の足し合わせである保磁力差が存在する 2段のヒステリシス曲線が観測された。
【0099】
上記トンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図29に示す。図29に示すように、低磁場での磁気抵抗効果特性は約 4Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗変化率および飽和磁場共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0100】
トンネル接合の誘電体層がAl2 3 、AlN、MgO、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 のときも同様の傾向を示し、トンネル接合の誘電体層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。また、Ni−FeとCo−Ptとの間に設けたCo−Ptよりも酸化しやすい金属は、Co−Feよりも窒化しやすい元素であればよく、Si、Mg、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、Gdなどを用いたときも同様の熱安定性が得られた。他の膜構成の例およびその耐熱性を表3に示す。
【0101】
【表3】
Figure 0003946355
比較例7
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、熱酸化Si基板上にNi80Fe20を40nm積層した後、その上にCo8 Pt2 (5nm)を成膜し、その上にCo8 Pt2 とSiO2 をターゲットとして、Co8 Pt2 とSiO2 の体積比が約 1:1になるように同時スパッタを行った。その際、基板バイアス400Wをかけながら成膜を行うと、(Co8 Pt2 −SiO2 グラニュラー/SiO2 )の層状積層膜が作製された。その上に、SiO2 を約 1nm成膜した後に、Co9 Feを30nm成膜した。その際のガス圧は 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0102】
その結果、Ni−Fc/Co8 Pt2 /SiO2 /(Co8 Pt2 −SiO2 グラニュラー/SiO2 )/Co9 Fe構造の50μm 2 角の強磁性グラニュラー層を介したトンネル接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理して一軸異方性を付与した。
【0103】
上記トンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図30に示す。図30に示すように、磁気抵抗効果特性は熱に対して安定した特性を示さず、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として信頼性のある素子を提供できないことが分かった。
【0104】
実施例5
スパッタ装置、メタルマスクとリフトオフによる微細パターンを用いて、熱酸化Si基板上に図5に構造を示した磁気素子を作製した例を示す。まず、Co8 Pt2 とSiO2 をターゲットとして、Co8 Pt2 とSiO2 の体積比が 1:1になるように同時スパッタを行った。その際、基板にメタルマスクをかぶせ、バイアス400Wをかけなから成膜を行い、 100μm 2 角のSiO2 /(Co8 Pt2 −SiO2 グラニュラー/SiO2 )の 2積層構造膜(約27nm)を作製した。その際のArガス圧は 1×10-3Torrとしてスパッタを行った。
【0105】
その上に、Crマスク露光器を用いてレジストをパタ−ニングした後、上部磁性層であるCo8 Pt2 (3nm)/AlOx (0.5nm)/Ni8 Fe2 (10nm)を成膜し、リフトオフにより20μm 2 角パターンを作製した。その結果、図5の構造の接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理して一軸異方性を付与した。
【0106】
上記トンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図31に示す。図31に示すように、低磁場での磁気抵抗効果特性は約 3Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗変化率および飽和磁場共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0107】
トンネル接合の誘電体層がAl2 3 、AlN、MgO、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 のときも同様の傾向を示し、トンネル接合の誘電体層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。また、Ni−FeとCo−Ptとの間に設けたCo−Ptよりも酸化しやすい金属は、Co−Feよりも窒化しやすい元素であればよく、Si、Mg、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、Gdなどを用いたときも同様の熱安定性が得られた。
【0108】
実施例6
スパッタ装置およびメタルマスクを用いて、SiO2 基板およびAl2 3 基板上にNi80Fe20を15nm積層した後、Mg(0.8nm)を成膜し、純酸素をチャンバに導入してMgを酸化した。次いで、CoFe(2nm)を成膜した後、Al(1nm)を成膜してプラズマ酸化した後、その上にFePt(10nm)/Mg(0.7nm)/Ni80Fe20(2nm)を作製した多層膜、FePt(10nm)を作製した多層膜の 2種類の磁気素子を作製した。Ni80Fe20、CoFe、Al、Mg、Fe80Pt20をターゲットとし、Arガス圧 1×10-3Torrでスパッタを行った。
【0109】
その結果、Ni80Fe20/MgOx /CoFe/Al2 3 /FePt/MgOx /Ni80Fe20構造、およびNi80Fe20/MgOx /CoFe/Al2 3 /FePt構造の 2種類の80μm 2 角のトンネル接合を作製した。その後、試料を 300℃にて磁場中熱処理して一軸異方性を付与した。
【0110】
図32(a)、(b)に示したように、MgOx /Ni80Fe20を高保磁力の強磁性層(ハード層)に付与すると、ハード層としての強磁性層の飽和磁場が小さくなり、材料を変えることなく、Ni80Fe20などのソフト磁性層の膜厚とハード層の膜厚比を調整するだけで、飽和磁場を適当な値に設計できることが分かった。
【0111】
上記Ni80Fe20/MgOx /CoFe/Al2 3 /FePt/MgOx /Ni80Fe20構造のトンネル接合を 270℃で長時間アニールを行い、磁気抵抗効果曲線の熱安定性を調べた。その結果を図32(c)に示す。図32(c)に示すように、低磁場の磁気抵抗効果特性は約Hk =3Oe という小さな磁場で急峻に磁気抵抗が変化し、磁気抵抗変化率および飽和磁場共に熱に対して安定した特性を示し、磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子として良好な特性を示した。
【0112】
トンネル接合の誘電体層がSiO2 、AlN、MgO、Bi2 3 、MgF2 、CaF2 のときも同様の傾向を示し、トンネル接合の誘電体層、磁性層の種類、反強磁性膜の種類に依存せず同様の結果を示した。また、Ni−FeとCoFeまたはFe−Ptとの間に設けたCo−FeまたはFe−Ptよりも酸化しやすい金属は、Co−FeまたはFe−Ptよりも酸化しやすい元素であればよく、Si、Al、Ti、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Li、希土類元素などを用いたときも同様の熱安定性が得られた。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気素子によれば、GMR膜を構成する強磁性層の軟磁気特性を向上させた上で、各種熱処理や使用時における温度上昇などに伴う磁気抵抗効果特性や感度の劣化を抑制することができ、熱安定性を大幅に向上させることが可能となる。従って、このような磁気素子を用いた磁気抵抗効果型へッド、磁界センサ、磁気記憶素子などの実用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図2】 本発明の第2の磁気素子の一実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図3】 本発明の第3の磁気素子の第1の実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図4】 本発明の第3の磁気素子の第2の実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図5】 本発明の第3の磁気素子の第3の実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図6】 本発明の第4の磁気素子の第1の実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図7】 本発明の第4の磁気素子の第2の実施形態の要部構造を模式的に示す断面図である。
【図8】 本発明の第4の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の一例を示す断面図である。
【図9】 本発明の第4の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の他の例を示す断面図である。
【図10】 本発明の第1、第2および第3の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の一例を示す断面図である。
【図11】 本発明の第1、第2および第3の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の他の例を示す断面図である。
【図12】 本発明の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の例を示す断面図である。
【図13】 本発明の磁気素子を磁気ヘッドに適用する場合の膜構造の他の例を示す断面図である。
【図14】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の膜構造の一例を示す断面図である。
【図15】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の膜構造の他の例を示す断面図である。
【図16】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の膜構造のさらに他の例を示す断面図である。
【図17】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の膜構造のさらに他の例を示す断面図である。
【図18】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子に適用する場合の膜構造のさらに他の例を示す断面図である。
【図19】 本発明の磁気素子を磁気記憶素子とした使用したセル構造の一例を示す図である。
【図20】 本発明の実施例1の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図21】 比較例1の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図22】 比較例2の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図23】 比較例3の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図24】 本発明の実施例2の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図25】 本発明の実施例3の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図26】 比較例4の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図27】 比較例5の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図28】 比較例6の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図29】 本発明の実施例4の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図30】 比較例7の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図31】 本発明の実施例5の磁気素子の熱処理前後における磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【図32】 本発明の実施例6による磁気素子の磁気抵抗効果曲線を示す図である。
【符号の説明】
1……強磁性トンネル接合素子
2、4、11、13、31、33……強磁性層
3、12、14……誘電体層
5、16、34……金属化合物層
6、17、35……軟磁性層
10……多重強磁性トンネル接合素子
20……グラニュラータイプの多重強磁性トンネル接合素子
23……強磁性グラニュラー層
30……スピンバルブ型磁気抵抗効果素子
32……非磁性層

Claims (8)

  1. 少なくとも 2層の強磁性層と、前記強磁性層間に介在され、かつ前記強磁性層間にトンネル電流を流し得る厚さを有する誘電体層とを具備する磁気素子において、前記強磁性層のうち少なくとも 1層には、前記強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴とした磁気素子。
  2. 少なくとも 1層の 1 強磁性層と、前記 1 強磁性層を挟持するように配置された誘電体層と、前記誘電体層を介して前記 1 強磁性層と積層された第2の強磁性層および第3の強磁性層とを具備する磁気素子において、
    前記第2の強磁性層および前記第3の強磁性層の少なくとも一方に対し、その強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴とした磁気素子。
  3. 誘電体で分断された強磁性微粒子を有する少なくとも 1層の強磁性グラニュラー層と、前記強磁性グラニュラー層を挟持するように配置された誘電体層と、前記誘電体層を介して前記強磁性グラニュラー層と積層された第1の強磁性層および第2の強磁性層とを具備する磁気素子において、
    前記第1の強磁性層および前記第2の強磁性層の少なくとも一方に対し、その強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴とした磁気素子。
  4. 少なくとも 2層の強磁性層と、前記強磁性層間に介在された非磁性層とを具備する磁気素子において、
    前記強磁性層のうち少なくとも 1層には、前記強磁性層より酸化または窒化しやすい金属の酸化膜または窒化膜を介して軟磁性層が付与されていることを特徴とした磁気素子。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の磁気素子において、前記金属の酸化膜または窒化膜を介して前記軟磁性層が付与された前記強磁性層のスピンの方向を変化させることにより磁気抵抗効果を発現させることを特徴とする磁気素子。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の磁気素子において、前記金属の酸化膜または窒化膜は 1nm以下の厚さを有し、かつ前記金属はAl、Si、Mg、Ti、Ta、V、Mn、Cr、Zn、Ca、Liおよび希土類元素から選ばれる少なくとも 1種からなることを特徴とする磁気素子。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の磁気素子と、前記磁気素子にセンス電流を供給する電極とを具備することを特徴とする磁気センサ。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の磁気素子と、前記磁気素子に電流磁界を印加する電極とを具備することを特徴とする磁気記憶装置。
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