JP3473016B2 - 強磁性トンネル接合素子と磁気ヘッドと磁気メモリ - Google Patents

強磁性トンネル接合素子と磁気ヘッドと磁気メモリ

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JP3473016B2
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    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/324Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer
    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高密度磁気ディス
ク装置における再生用磁気ヘッドや高密度不揮発性磁気
メモリ(MRAM)に適した強磁性トンネル接合素子で
あり、これを用いた磁気ヘッド及び磁気メモリに関す
る。
【0002】
【従来の技術】再生用磁気ヘッドや磁気メモリともなる
磁気媒体に用いる強磁性トンネル接合素子は、その基本
構成として、強磁性層/絶縁層/強磁性層を有する。こ
の絶縁層の厚さは数nmであり、両強磁性層間にバイア
スが印加されると絶縁層を介したトンネル電流が流れ
る。そのときトンネル電流のコンダクタンスが両強磁性
層の磁化の相対角度に依存して変化することから、トン
ネル磁気抵抗効果と呼ばれる。
【0003】「フィジクス・レターズ、54A巻、225~226
頁、1975年(Physics Letters, vol. 54A, 225~226頁,
1975)」には、このトンネル磁気抵抗効果が最初に報告
されている。それによると、磁気抵抗変化率は、 [式1]2P1P2/(1−P1P2) によって与えられる。ここで、P1、P2は、二つの強
磁性体それぞれのスピン分極率である。従って、この式
によれば、「バリア界面に高いスピン分極率を有する材
料を用いた場合に、より高い磁気抵抗変化率が得られ
る」ことになる。
【0004】「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジ
クス、79巻、6262~6264頁、1996年(Journal of Applied
Physics, vol. 79, 6262~6264頁, 1996)」、「ジャー
ナル・オブ・アプライド・フィジクス、83巻、6515~651
7頁、1998年 (Journal of Applied Physics, vol. 83,
6515~6517, 1998)」は、スピン分極率の異なる様々な強
磁性体を用いて強磁性トンネル接合素子を作製し、その
磁気抵抗特性について報告している。それによれば、ス
ピン分極率の高い強磁性体をバリア界面に配置した接合
素子が、そうでない接合素子に比較してより高い磁気抵
抗変化率を示しており、[式1]を定性的に支持するデ
ータとなっている。
【0005】この強磁性トンネル接合素子では、両強磁
性層間に一定の電流を流した状態で、強磁性層面内に磁
場を印加したとき、その磁場に対する両強磁性層の磁化
反転の応答差異を利用し、それらの磁化の平行あるいは
反平行状態を実現する。トンネル抵抗は両強磁性層の磁
化が平行の場合に最小となり、反平行の場合に最大とな
る。
【0006】従って両強磁性層に保磁力差を付与した
り、あるいは一方の強磁性層を反強磁性層により交換バ
イアスして、磁化の平行及び反平行状態を実現し、磁気
抵抗変化率を得ることができる。特に後者のタイプの強
磁性トンネル接合素子は、交換バイアス型強磁性トンネ
ル接合と呼ばれ、スピンバルブ膜のようにゼロ磁場付近
で非常に小さなヒステリシスが得られることから、デバ
イス応用に有利である。
【0007】このようなデバイス応用に適した素子にお
いて、近年、室温で20%を超える大きな磁気抵抗変化
率が報告されたことから、強磁性トンネル接合素子は、
磁気ヘッドなどの磁気センサーデバイス、あるいはMR
AMなどの磁気メモリデバイスなどの応用的見地から高
い関心を集めている。このような高い磁気抵抗変化率を
示す交換バイアス型強磁性トンネル接合素子の報告例と
して、「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、
81巻、3741~3746頁、1997年 (Journal of Applied Phys
ics, vol. 81, 3741~3746, 1997)」がある。
【0008】この報告例では、Si基板上に20nmの
Pt電極を積層し、その上に4nmのNiFe層、10
nmのFeMn層、8nmのNiFe層、1−3nmの
Alを成膜後、酸素プラズマによりAl酸化膜を形成
し、続いて上部電極としての8nmのCo層を積層し
た。反強磁性材料はFeMnであり、この層の上部に位
置する8nmのNiFe層に交換結合磁界を付与してい
る。この素子において、室温で22%の高い磁気抵抗変
化率が得られている。
【0009】一方、「アプライド・フィジクス・レター
ズ,72巻,605~607頁、1998年 (Applied Physics Lette
rs, vol. 72, 605~607, 1998)」では、NiOを反強磁
性材料として採用したCo/Al23/Co/NiOな
る構成の強磁性トンネル接合素子で、室温で17%の磁
気抵抗変化率を報告している。また、「アイ・イー・イ
ー・トランズアクションズ・オン・マグネティクス、33
巻、3553~3555頁、1997年 (IEEE Transactions on Magn
etics, vol. 33, 3553~3555, 1997)」では、FeMnを
反強磁性体として用いたNiFe/Co/Al−AlO
x/Co/NiFe/FeMn/NiFeなる構成の強
磁性トンネル接合素子で、室温で最大24%の磁気抵抗
変化率を観測し、その磁気ヒステリシスもスピンバルブ
と同様なものが得られたことを報告している。
【0010】以上のような反強磁性体を用いて磁化を固
定する方法は、スピンバルブ膜で従来用いられており、
これらの報告例は、この方法を強磁性トンネル接合に適
用したものであるといえる。素子の磁気ヒステリシス
は、スピンバルブ膜と同様なものが得られており、ゼロ
磁場近傍でのヒステリシスが少ない。従って保磁力差型
の強磁性トンネル接合に比べて、磁気センサー等のデバ
イス応用に適した構成となっている。
【0011】強磁性トンネル接合素子を高密度磁気ヘッ
ドに適用するためには、このように一方の強磁性体を反
強磁性体で交換バイアスしたスピンバルブ的な構造を有
することが好ましいが、そこで用いられる反強磁性体
は、デバイス動作上支障のない熱安定性、ならびにデバ
イス作製プロセスにおける高い耐食性が要求される。
【0012】しかし、上述した報告例は、ブロッキング
温度(交換結合磁界の消失する温度)の低いFeMn
(ブロッキング温度150℃)、NiO(ブロッキング
温度200℃)を用いているため、熱安定性の面で不十
分である。なぜなら、ブロッキング温度が低いと、素子
動作時の温度上昇によってピン層磁化を固定する磁界が
弱まり、環境からの磁場(センス電流等から生ずる磁場
など)の影響で、ピン層磁化方向が変化するなどの結
果、その磁場感度が低下してしまうからである。なお、
ブロッキング温度の高い反強磁性体を用いた場合は、素
子の温度が上昇しても、ピン層の磁化方向が変化しにく
く、感度が落ちにくい。また、特にFeMnは腐食され
やすいという欠点もあり、デバイス作製プロセス上も問
題点を残している。
【0013】一方、300℃以上の高いブロッキング温
度を有する反強磁性体として、PtMn、PdMn、N
iMnに代表されるMn系規則合金がある。これらMn
系規則合金の反強磁性体は、その高いブロッキング温度
ゆえに熱安定性に優れ、かつ良好な耐食性も兼ね備えて
いるため、強磁性トンネル接合素子を磁気ヘッド等のデ
バイスに応用する場合、極めて有利な材料系であるとい
える。
【0014】しかし、これらの材料では、成膜直後の状
態で交換結合磁界が出現しない。なぜなら成膜直後の状
態では、これらの材料が不規則相となっているためであ
る。従って、不規則相を規則化し、適当な交換結合磁界
を出現させるために、従来よりも高温で、長時間の磁場
中、熱処理(PtMnで230℃、PdMnで230
℃、NiMnで280℃以上、各5時間)が必要であ
る。
【0015】こうしたMn系規則合金の反強磁性体を用
いた報告例は、スピンバルブ膜の技術分野で多く報告さ
れており、素子の熱安定性、耐食性の向上というプラス
要因の一方で、熱処理中のMnの拡散が磁気抵抗変化率
などの特性自体を劣化させる要因となることが知られて
いる。しかし、強磁性トンネル接合の分野では、Mn系
規則合金の反強磁性体を用いた素子特性に関する実際の
報告例はなく、またこれら反強磁性体を用いた場合の成
膜後の熱処理が、素子の磁気抵抗特性に与える影響等に
ついても考察された例はない。
【0016】Mn系規則合金以外の反強磁性体を用いた
強磁性トンネル接合の熱処理特性について調べた報告例
が、「ジャーナル・オブ・マグネティクス・ソサエティ
・ジャパン、23巻、49~51頁、1999年 (Journal of Magn
etics Society of Japan, vol. 23, 49~51, 1999)」、
「ジャーナル・オブ・マグネティクス・ソサエティ・ジ
ャパン、23巻、55~57頁、1999年 (Journal of Magnetic
s Society of Japan,vol. 23, 55~57, 1999)」、「ジャ
ーナル・オブ・アプライド・フィジクス、85巻、第8
号、5258~5260頁、1999年 (Journal of Applied Physic
s, vol. 85, no.8, 5258~5260, 1999)」、にあるが、い
ずれの報告例においても、230℃以上の温度領域で、
2時間以上の長時間熱処理による磁気抵抗特性の変化に
ついて調べた例はない。
【0017】特開平9−106514号公報は、反強磁
性体により一方の強磁性体の磁化を固定する構成を有す
る強磁性トンネル接合素子を開示しており、Si基板上
に強磁性体膜のFe膜、トンネル絶縁膜の非磁性層のア
ルミナ膜、強磁性体膜のFe膜、反強磁性体膜のFeM
n膜又はNiMn膜から構成されている。この反強磁性
体としてNiMnを用いた強磁性トンネル接合素子が記
述されている。しかし、NiMnの交換結合磁界出現の
ために必要となる熱処理が特性に与える影響についての
記述がなく、実際のデバイス応用に耐える素子性能が、
作製プロセス全体を通じて維持されるかについては全く
明らかにされていない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本願発明者は、Mn系
規則合金を反強磁性体として用いた強磁性トンネル接合
素子の作製と評価を進め、これらの反強磁性体を強磁性
トンネル接合素子に用いた場合に、固定層側の積層構造
を最適化して、初めて、高い磁気抵抗変化率が得られる
ことを見出した。本願発明者は、特開平9−10651
4号公報に開示されているNiMnを用いた交換バイア
ス型強磁性トンネル接合素子を作製し、その特性の評価
を行ったが、磁気抵抗変化率はわずか2〜3%程度の低
い値であった。基板/Fe/Al−oxide/Fe/
NiMnトンネル接合では、理論的に30%以上の磁気
抵抗変化率が予測されるのにもかかわらず、低い磁気抵
抗変化率しか得られなかった原因は、成膜後NiMnの
交換結合磁界を得るために必要とされる、長時間の磁場
中熱処理にあることが明らかになった。
【0019】熱処理によって磁気抵抗変化率が低下する
主な原因として、以下の二つを挙げることができる。一
つはトンネルバリア中の酸素が強磁性層側に拡散し、バ
リア界面に面した強磁性体の表面が酸化されることで、
強磁性体のスピン分極率が低下してしまうことである。
そしてもう一つは、反強磁性体中のMn元素が強磁性層
側、さらにはトンネルバリアの界面まで拡散し、界面近
傍の強磁性体のスピン分極率を低下させてしまうことで
ある。
【0020】特開平9−106514号公報の実施例で
開示されている強磁性トンネル接合素子は、Feの単層
膜を強磁性層として用いたものである。このような系で
は、実際に260℃の長時間アニールを行うと、NiM
nからのMnの拡散をFe層が抑えられず、Feのスピ
ン分極率から予測される高いスピン分極率を得ることが
できない。またFeの酸化物生成自由エネルギーは強磁
性体の中でも比較的大きく(−250 kJ/mo
l)、熱処理中の酸素拡散により、バリア界面でFe酸
化物が形成されやすい。そのため、スピン分極率が減少
し、Fe本来の高スピン分極率(40%)を反映した高
い磁気抵抗変化率が得られない。こうした磁気抵抗特性
の劣化は、反強磁性体の位置する側の強磁性材料に対す
る最適化が十分になされていず、単に高スピン分極率材
料をバリア界面に配置すれば、高い磁気抵抗変化率が得
られるとする従来の認識に起因するものである。
【0021】Mn系規則合金を反強磁性体として用いる
場合には、熱処理による特性の劣化を最小限に抑えるた
めに、強磁性トンネル接合素子の層構成に対する新たな
最適化が必要である。
【0022】そこで、本発明の目的は、このような従来
技術の課題を解決し、FeMnその他の反強磁性材料に
比較して、優れた耐腐食性と高いブロッキング温度を有
するMn系規則合金を反強磁性層として採用し、かつそ
れらを用いる際に必要となる熱処理を行っても、特性の
劣化がなく、高い磁気抵抗変化率の得られる強磁性トン
ネル接合素子を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の磁気抵抗効果素子は、強磁性層間にトンネ
ルバリア層を挟み、一方の強磁性層の外側にMn系規則
合金の反強磁性層を配置した強磁性トンネル接合素子及
び磁気ヘッドと磁気メモリにおいて、Mn系規則合金の
反強磁性層側に位置する強磁性層(固定層)が少なくと
も二層以上の強磁性体の多層膜より構成されることを特
徴とし、そのうちMn系規則合金の反強磁性層と接した
強磁性体膜がCo、または、Coを含む合金、またはC
oを含む化合物であり、トンネルバリア層と接した強磁
性体膜がNi、またはNiを含む合金、またはNiを含
む化合物であることを特徴とする。
【0024】上記Co、またはCoを含む合金、または
Coを含む化合物は、Mn系規則合金反強磁性体からの
Mnの拡散を抑制する効果を有する。同時に、Ni、ま
たはNiを含む合金、またはNiを含む化合物をトンネ
ルバリア側に配置すると、熱処理による強磁性体表面の
酸化が比較的少なく、なおかつ本来のスピン分極率を維
持することが可能となる。
【0025】従って、特に前記Mn系規則合金の反強磁
性層が、PtMn、Pt−Mn−X(XはRu、Ir、
Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Rh)、PdMn、N
iMnである場合に、この積層構造はその効果を十分に
発揮する。すなわち、これらMn系規則合金を規則化す
る際に必要とされる高温かつ長時間の熱処理によって
も、磁気抵抗変化率が劣化することがない。
【0026】また、固定層側の積層構造を、少なくとも
三層以上の多層膜により構成し、その中で反強磁性層と
接した強磁性体膜がCo、またはCoを含む合金、また
はCoを含む化合物よりなり、トンネルバリアと接する
側の強磁性体がNi、またはNiを含む合金、またはN
iを含む化合物よりなり、中間の強磁性体の多層膜に、
それら二つの強磁性体よりも高いスピン分極率を有する
強磁性体を少なくとも一つ以上含むことを特徴とする。
【0027】また、上記高いスピン分極率膜は、Fe、
およびCoxFe(1−x)(0<x<1)合金である
ことを特徴とし、または、スピン分極率が55%以上で
あることを特徴とする。
【0028】すなわち、上記の積層構造にすることによ
り、二つの強磁性体膜の中間に、それら強磁性体膜より
高いスピン分極率を有する材料を配置することで、N
i、またはNiを含む合金、またはNiを含む化合物中
の伝導電子が、よりスピン分極し、Ni本来のスピン分
極率から期待される磁気抵抗変化率をさらに上回る高い
磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。
【0029】以上、これらの効果により、高い磁気抵抗
変化率を有し、かつデバイス応用に有利なMn系規則合
金反強磁性体を用いた強磁性トンネル接合素子の作製が
可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明による実施形態について、
図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】[第一の実施形態]本発明の磁気抵抗効果
素子に関する第一の実施形態について、図面を参照して
説明する。図1に示すように、本発明に係る磁気抵抗効
果素子は、基板10上に配線層11、第一の強磁性層1
2、トンネルバリア層13を形成する。その上に、N
i、またはNiを含む合金、またはNiを含む化合物よ
りなる第二の強磁性層14と、Co、またはCoを含む
合金、またはCoを含む化合物よりなる第三の強磁性層
15、さらにその上にMn系規則合金反強磁性層16を
形成し、強磁性トンネル接合の基本構造を完成させる。
なお、配線層11と第一の強磁性層12の間に適当なバ
ッファー層を挿入してもよい。
【0032】[第二の実施形態]本発明の磁気抵抗効果
素子に関する第二の実施形態について、図面を参照して
説明する。図2に示すように、まず基板20上に配線層
21、バッファー層22を積層し、その上にMn系規則
合金反強磁性層23を成膜する。次にCo、またはCo
を含む合金、またはCoを含む化合物よりなる第一の強
磁性層24、Ni、またはNiを含む合金、またはNi
を含む化合物よりなる第二の強磁性層25、トンネルバ
リア層26を形成する。次に第三の上部強磁性層27を
成膜して、強磁性トンネル接合の基本構造を完成させ
る。なお、適当な交換バイアスを得るために、バッファ
ー層22は二層以上でもよく、場合によってはなくても
よい。
【0033】[第三の実施形態]本発明の磁気抵抗効果
素子に関する第三の実施形態について、図面を参照して
説明する。図3に示すように、まず基板30上に配線層
31を積層し、その上に第一の強磁性層32、トンネル
バリア層33を形成する。その上にNi、またはNiを
含む合金、またはNiを含む化合物よりなる第二の強磁
性層34を成膜し、次に高スピン分極率を有する第三の
強磁性層35、その上にCo、またはCoを含む合金、
またはCoを含む化合物よりなる第四の強磁性層36、
Mn系規則合金反強磁性層37を成膜して、強磁性トン
ネル接合の基本構造を完成させる。なお、配線層31と
第一の強磁性層32の間に適当なバッファー層を挿入し
てもよい。
【0034】[第四の実施形態]本発明の磁気抵抗効果
素子に関する第四の実施形態について、図面を参照して
説明する。図4に示すように、まず基板40上に配線層
41、バッファー層42、Mn系規則合金反強磁性層4
3、Co、またはCoを含む合金、またはCoを含む化
合物よりなる第一の強磁性層44、高スピン分極率を有
する第二の強磁性層45、Ni、またはNiを含む合
金、またはNiを含む化合物よりなる第三の強磁性層4
6、トンネルバリア層47を形成する。次にその上に第
四の上部強磁性層48を積層し、強磁性トンネル接合の
基本構造を完成させる。なお、適当な交換バイアスを得
るために、バッファー層42は二層以上でもよく、場合
によってはなくてもよい。
【0035】上記Mn系規則合金反強磁性層16,2
3,37,43は、PtMn(白金−マンガン)、Pt
−Mn−X(XはRu(ルテニウム)、Ir(イリジウ
ム)、Cr、Fe(鉄)、Co、Ni、Pd、Rh)、
PdMn、NiMnのいずれかであることが望ましい。
【0036】上記トンネルバリア層13,26,33,
47は電子がスピンの向きを保持してトンネルするもの
で、トンネルバリア層の形成には、非磁性体の金属層を
成膜した後に酸素を含むガスにより自然酸化する方法、
あるいは金属層を成膜した後に酸素を含むガスによりプ
ラズマ酸化して形成する方法、あるいは絶縁体を直接積
層する方法により形成することが望ましい。より具体的
には、前二者の方法の場合、Al、Mg、Taあるいは
それらの元素よりなる合金などの金属層が適している。
後者の場合には、アルミナ、MgO、Ta25ターゲッ
トをスパッタ法、同時スパッタ法、あるいは蒸着法、同
時蒸着法により形成する方法が好ましい。また、トンネ
ルバリア層は、酸化物に限定されるものでなく、AlN
等の窒化物であってもよい。
【0037】上記Ni、またはNiを含む合金、または
Niを含む化合物14,25,34,46は、Niと遷
移金属などとの組み合わせで、より具体的には、Nix
Fe( 100-x)(但し、xの単位はat.%である)など
が適当である。その組成範囲も、少なくともNiの組成
xは35at.%以上が適当である。
【0038】上記Ni、またはNiを含む合金、または
Niを含む化合物は、Ni−Fe−X(Xは、B、B
i、Sb)などのように、Ni−Fe以外に適当な添加
元素を加えることも有効である。
【0039】上記Co、またはCoを含む合金、または
Coを含む化合物15,24,36,44は、Co−X
(Xは、Fe、Cr、Cu、Pt、Mn)、より具体的
にはCoxFe1-xなどが適当である。その組成範囲も、
少なくともCoの組成xは、10at.%以上であるこ
とが望ましい。
【0040】上記強磁性トンネル接合素子は、必要に応
じて適当な保護層をその最上部層として積層することが
望ましい。保護層としては、Ta、Zr、Cr、Si、
NiFe、などが適当である。
【0041】上記高スピン分極率強磁性層は、Cox
(100-x)(但し、10<x<90)、Fe、NiMn
Sb、La0.7Sr0.3MnO3、CrO2などが適当であ
る。
【0042】また、配線層11,21,31,41に
は、電極層として、Al,Pt等を用いることができ
る。また、上記各実施形態による強磁性トンネル接合素
子を検出電極の間に挟んだ磁気センサとして、この磁気
センサを用いて磁気ヘッドを構成することができる。例
えば、ハードディスクの磁気ヘッドとして、磁気媒体か
ら数nm離間して磁気トラック上を走査することによ
り、磁気センサが磁界の変動を検出してこれを読み出し
信号として出力し、従来の再生用GMR(Giant Magnet
oresistive)ヘッドからの代替えも可能である。また、
書き込みの場合には、複合磁気ヘッドとして書き込み用
のTMR(Tunneling Magnetoresistive)と共に用いる
ことができる。
【0043】また、この強磁性トンネル接合素子を配線
層の電極層の間に挟んで、ランダムアクセスメモリとし
ての磁気メモリとすることもできる。基板上の配線層と
上部の電極層に網の目状にマトリクス配線して、一方を
アドレス用に、他方をデータ用にそのクロス点間の強磁
性トンネル接合素子が磁化・保磁することから、書き込
み、読み出しが可能となり、磁気メモリとして高集積化
することができる。
【0044】
【実施例】[第一の実施例]本発明の第一の実施例につ
いて図面を参照して詳細に説明する。図5に示すよう
に、熱酸化した2インチのSiウェハー51上に強磁性
トンネル接合膜を作製した。成膜にはDCマグネトロン
スパッタを用いた。成膜時のチャンバー真空度は、1×
10-7 Torr、スパッタAr圧は1.5 mTor
rであった。成膜時には、基板面内に磁場を印加した。
まず成膜室において1.5 nm厚のTaシード層5
2、70 nm厚のCu配線層53、その上に20 n
m厚のNi 81Fe19下部強磁性層54、2 nm厚のA
lを積層する。次に真空に引かれた搬送路を経由して、
基板を酸化プロセス用の別チャンバーに搬送した。搬送
後、チャンバー内に純酸素を導入し、200 Torr
の酸素圧で1時間保持し、Alを自然酸化してトンネル
バリア55を形成した。
【0045】Al酸化時の温度は室温である。酸化後、
再び成膜室に基板を搬送し、2 nmのNi81Fe19
56、4 nmのCo90Fe10層57、30 nmのP
tMn層58を積層し、最後に5 nmのTa層59の
酸化防止層を積層した。この試料をタイプAとする。
【0046】[比較例1]次に比較のために作製した強
磁性トンネル接合の層構成を図6に示す。下部電極とト
ンネルバリアまでをタイプAと同様の構成と実験条件で
形成した後(図6中601〜604)、10 nmのN
81Fe19層上部強磁性層605、30nmのPtMn
層606を積層し、5 nm厚のTa酸化防止層607
を成膜したタイプBの試料を準備した。この試料では、
PtMn層側にCoFe層を含まない構成である。
【0047】さらに、下部電極とトンネルバリアまでを
タイプAの試料と同様な構成と実験条件で形成した後
(図6中611〜614)、5 nmのCo90Fe10
615、30 nmのPtMn層616を積層し、5
nm厚のTa酸化防止層617を積層したタイプCの試
料を準備した。この試料は、トンネルバリア上にCoF
e層を直接積層した構成である。
【0048】さらに比較のため、FeMnを用いた以下
の接合を作製した。1.5 nm厚のTaシード層62
1、70 nm厚のCu配線層622、その上に3 n
m厚のTa層623と2 nmのNi81Fe19層624
よりなるバッファー層、次に10 nm厚のFeMn層
625、10 nm厚のNi81Fe19強磁性層626、
2 nmのAlを積層して上記と同様の条件で酸化を行
い、トンネルバリア627を形成する。その上に20
nmのNi81Fe19強磁性層628、5 nmのTa酸
化防止層629を積層した。この試料をタイプDとす
る。
【0049】また、FeMn側の強磁性層である10
nmのNi81Fe19を、4 nmのCo90Fe10と、2
nmのNi81Fe19の二層で置き換えた構造(図6中
631〜640)を有する接合を作製し、タイプEとし
た。
【0050】ここで、タイプA〜Cに示したPtMnを
用いた成膜後の試料に対し、270℃、4時間の磁場中
熱処理を行うことにより、PtMnを規則化させた。一
方、タイプD,Eに示したFeMnを用いた成膜後の試
料には熱処理を行わなかった。これは成膜直後でも交換
結合磁界が得られるためである。
【0051】これらのタイプA乃至タイプEに示した膜
に対して、フォトリソグラフィーとイオンミリング技術
を用いることにより、接合素子形成の加工を行った。そ
の工程を図7に示す。ここで上部電極層71はトンネル
バリア72より上側の多層膜を示し、例えばタイプAで
はNi81Fe19層56〜Ta層59が該当し、下部電極
層73は、トンネルバリアより下側の多層膜、例えばタ
イプAではNi81Fe 19層54〜Ta層52を指す。
【0052】まず、膜表面に下部電極形状のフォトレジ
ストパターン74を形成し(図7(a))、基板75表
面までの全層をミリングした(b)。レジスト74除去
後、下部電極上に2×2〜40×40 μm2サイズの
接合のレジストパターン76を形成した(c)。次に接
合形成のため、下部電極表面までのミリングを行った
(d)。このレジスト76を残した状態で層間絶縁膜の
アルミナ77を蒸着する(e)。次にリフトオフにより
レジスト76を除去すると、接合部の膜表面が現れる
(f)。この上に上部電極形状のレジストパターンを形
成し、露出した接合表面のArプラズマによる逆スパッ
タクリーニングを行った後、Al上部電極層78を蒸着
した。最後にリフトオフにより上部電極のレジストを除
去し、接合素子を完成した(g)。この下部電極と上部
電極とを取り出して、磁気ヘッドを形成する。作製した
素子について、四端子法による室温での磁気抵抗測定を
行った。
【0053】図8には、PtMnを反強磁性体として用
いたタイプA乃至タイプCの三つの試料についての磁場
に対する抵抗のヒステリシス曲線を示す。タイプAの素
子が21%、タイプBの素子が4%、タイプCの素子が
7%の磁気抵抗変化率を示した。これより明らかなよう
に、タイプAで最も大きな磁気変化率が得られた。スピ
ン分極率の高い材料であるCoFeがトンネルバリア側
に面したタイプCの素子では、磁気抵抗変化率が7%と
低く、CoFe本来の高分極率を反映した磁気抵抗変化
率は得られなかった。これはCoFeがNiFeに比較
して酸化されやすいために、熱処理による酸素の拡散に
よりCoFeが酸化され、スピン分極率が大きく低下し
たことが原因と考えられる。
【0054】つぎに、タイプDは、FeMnを反強磁性
体として用いていることから、成膜直後から交換結合磁
界が得られる。従って熱処理による劣化のない理想的な
特性が実現しており、磁気抵抗変化率で19%が得られ
た。しかしこの素子を270℃、5時間の条件で熱処理
したところ、その磁気抵抗変化率は4.5%まで低下し
た。また、タイプEの接合では、成膜直後で13%の磁
気抵抗率を示したが、熱処理後にはやはり5%まで低下
し、CoFeの挿入効果はFeMn反強磁性体を用いた
素子では観測されなかった。
【0055】以上のように、PtMn側にCoFe合金
を配置し、かつ、バリア側にNiFeを配置すること
で、高温かつ長時間の熱処理を行っても、磁気抵抗特性
が劣化することのない強磁性トンネル接合素子を作製す
ることができた。このタイプAと同様の構成を有する素
子で、固定層側のNiFe、およびCoFeの膜厚を変
化させた接合の特性を調べたところ、NiFeは0.2
〜2 nm、CoFeは1〜10 nmの膜厚領域で2
0%を超える高い磁気抵抗変化率が得られた。
【0056】一方、交換結合磁界の値は、タイプAで2
65 Oe、タイプBで150 Oe、タイプCで27
0 Oeであった。これらの交換結合磁界の値と、Ni
Fe、CoFeそれぞれの飽和磁化(それぞれ、780
G、1500 Gとした。)より計算した交換結合エ
ネルギーの値は、タイプAで0.20 mJ/m2、タ
イプBで0.12 mJ/m2、タイプCで0.20
mJ/m2となり、PtMnとの界面にCoFe層が面
した構造をもつ素子が非常に高い値を示した。
【0057】それに対し、FeMnを用いた接合素子に
おいて、タイプDとタイプEを比較した結果、両タイプ
でほぼ同じ値0.13mJ/m2が得られ、NiFeと
FeMn、CoFeとFeMnの間の交換結合エネルギ
ーに差異は見られなかった。
【0058】なお、同様の効果は、他のMn系規則合金
であるNiMn、PdMn、PdPtMnについても観
測された。
【0059】[第二の実施例]本発明の第二の実施例に
ついて、図9を用いて説明する。本実施例では、RFマ
グネトロンスパッタ成膜装置にて以下に示す手順で強磁
性トンネル接合素子を作製した。熱酸化シリコン基板9
1上に、1.5 nmのTa層92、70 nmのCu
電極層93、30 nmのPtMn層94、4 nmの
Co90Fe10層95、2 nmのNi81Fe19層96を
積層した。その上に2 nmのAlを成膜し、真空下で
20 Torrの純酸素を導入し、10分間保持して室
温での自然酸化を行い、トンネルバリア層97を形成し
た。酸素を排気後、上部強磁性体の20 nmのNi81
Fe19層98、5 nmのTa保護層99を成膜した。
成膜後の素子を、270℃、5時間、3 kOeの磁場
中熱処理を行った。その後第1の実施例の図7に示した
ものと同様の方法で接合素子形状に加工した。
【0060】この素子では、PtMn層94がトンネル
バリアの下側に位置する構成となっており、交換結合磁
界を印加される磁性層(Co90Fe10(4 nm)/N
81Fe19(2 nm))が、PtMn層94の上部に
積層される。この素子の磁気抵抗変化率は29%で、第
1の実施例での素子に比べて大きな値を示した。交換結
合磁界の値は、300 Oe程度であった。
【0061】[第三の実施例]次に本発明の第三の実施
例について、図10を用いて説明する。以下の手順にて
強磁性トンネル接合を作製した。電子ビーム蒸着装置に
より、熱酸化シリコン基板101上に、シード層として
の2 nm厚のZr102を成膜後、100nmのPt
電極層103を積層し、20 nmのNi81Fe19強磁
性層104を成膜する。次に、2 nmのAlを積層し
た後、真空を破らずに5 mTorrの純酸素をチャン
バー中に導入し、基板に4 mW/cm2のRF電力を
印加することで酸素プラズマを生成した。30秒間の酸
化を行い、トンネルバリア105を形成した。
【0062】その後、上部電極としての1.5 nmの
Ni層106を成膜し、続いて2nmのFe層107、
1 nmのCo層108、30 nmのPdPtMn層
109を成膜した。最後に酸化防止層としての5 nm
厚のTa層1010を成膜した。
【0063】一方、前述の積層構造において、2 nm
厚のFeをCrO2(Feのスピン分極率55%よりも
高いスピン分極率を有する)に置き換えた構造を有する
接合素子を作製した。磁気抵抗変化率は、それぞれ30
%、35%を示し、中間層として高スピン分極率の材料
を配置することにより、磁気抵抗変化率が上昇した。同
様の磁気抵抗変化率の上昇は、中間層としてFe(スピ
ン分極率55%)よりも高いスピン分極率を有するCo
40Fe60、NiMnSb、La0.7Sr0.3MnO3を用
いた接合についても観測された。
【0064】また、中間層としてFeを用いた上記の強
磁性トンネル接合素子において、バリア上部に位置する
Niの膜厚を1.5 nmから0.2 nmまで連続的
に変化させたところ、0.5 nmまで磁気抵抗比が増
加し、それ以降減少する挙動を示した。これは、0.5
nmまでは、Niのスピン分極率がそれよりも高いス
ピン分極率を有するFeによる影響で、実効的なNiの
スピン分極率が本来の値よりも高くなっているためであ
り、それ以降の減少は熱処理によるFe表面の酸化が原
因である。
【0065】[第四の実施例]次に本発明の第四の実施
例について、図11を用いて説明する。高周波RFマグ
ネトロンスパッタ装置にて、以下の手順で成膜を行っ
た。
【0066】コーニング7059のガラス基板111上
に、2 nmのTa層112、50nmのAl電極層1
13を積層し、その上に20 nmのNi81Fe19層1
14を成膜した。次に1.5 nm厚のAlを積層し、
真空を破ることなく純酸素を導入して200 Tor
r、1時間の条件で酸化を行い、トンネルバリア層11
5を形成した。その後、酸素を排気し、バックグラウン
ド(2×10-9 Torr)に達した時点で1 nmの
Ni40Fe60層116を成膜した。その後、基板を液体
窒素温度まで冷却し、4 nmのCoNbZr合金層1
17を成膜した。基板が室温まで上昇するのを待って、
30 nmのNiMn層118と、酸化防止層の5 n
mのTa層119を順次成膜した。成膜後の基板を、2
70℃、5時間で磁場中熱処理した。印加磁場は、3
kOeである。
【0067】作製した試料について第一の実施例の図7
に示したものと同様の手法で、接合素子形状に加工し
た。加工後の素子について磁気抵抗測定を行った結果、
磁気抵抗変化率にして22%の高い値が得られた。この
ことにより、Mn系規則合金反強磁性層118とNi40
Fe60層116の間にアモルファス層を挿入することに
よっても、熱処理による磁気抵抗変化率の低下を抑える
ことができることがわかる。なお、CoZrNb膜につ
いては、別種にX線回折実験により、成膜直後、熱処理
後でアモルファス状態であることを確認している。ま
た、このCoZrNbをCoFeSiBアモルファス合
金に変えた接合素子も作製したが、同様に20%を超え
る高い磁気抵抗変化率が得られた。
【0068】[第五の実施例]本発明の第五の実施例に
ついて、図12を用いて説明する。本実施例では、DC
マグネトロンスパッタ成膜装置により、以下に示す手順
で強磁性トンネル接合素子を作製した。
【0069】熱酸化シリコン基板121上に、3 nm
のTa層122、70 nmのPt電極層123、30
nmのNiMn層124、4 nmのCo90Fe10
125、2 nmのNiMnSb層126、1 nmの
Ni50Fe50層127を積層した。その上に2 nmの
Alを成膜し、真空下で100 Torrの純酸素を導
入し、20分間保持して室温での自然酸化を行い、トン
ネルバリア128を形成した。酸素を排気後、上部強磁
性体の20 nmのNi81Fe19層129、5nmのT
a保護層1210を成膜した。
【0070】成膜後の素子を、270℃、5時間、3
kOeの磁場中熱処理を行った。その後、第1の実施例
の図7で説明したものと同様の方法で接合素子形状に加
工した。
【0071】この素子では、NiMn層124がトンネ
ルバリア層128の下側に位置する構成となっており、
交換結合磁界を印加される磁性層(Co90Fe10(4
nm)/NiMnSb(2 nm)/Ni50Fe50(1
nm))が、NiMn層124の上部に積層される。
この素子の磁気抵抗変化率は40%で、非常に高い磁気
抵抗変化率を示した。交換結合磁界の値は、200 O
e程度であった。同様の高い磁気抵抗変化率はCr
2、La0.7Sr0.3MnO3を用いた接合についても観
測された。
【0072】
【発明の効果】以上詳述したように、Mn系規則合金を
反強磁性体として用いる場合には、熱処理を必要とする
ため、従来強磁性トンネル接合の技術分野で一般的な認
識となっている、「高スピン分極率材料をトンネルバリ
ア側に配置する構成」は必ずしも効果的ではない。それ
は、高スピン分極率材料であるFe、Co系の材料は比
較的酸化されやすく(酸化物生成エンタルピーが大き
い、酸化速度が大きい)、その本来のスピン分極率を失
いやすいからである。
【0073】これに対し、本発明の強磁性トンネル接合
素子及び磁気ヘッドと磁気メモリによれば、Fe、Co
系の強磁性体に比べ、より酸化されにくいNi系の強磁
性体をトンネルバリア側に配置し、なおかつMnの拡散
を抑制する効果を有するCo、またはCoを含む合金、
または化合物をMn系規則合金反強磁性体側に配置する
と、耐熱性を大幅に向上させることが可能となる。
【0074】また、Niまたは、Niを含む合金、また
はNiを含む化合物等の耐酸化性に優れた強磁性層をト
ンネルバリア側に配置し、それに隣接して高スピン分極
率材料を配置すると、NiあるいはNi含有合金層中に
本来のスピン分極率以上の分極率を誘起することがで
き、より高い磁気抵抗変化率を得ることが可能である。
【0075】以上により、Mn系規則合金を規則化する
際に必要となる高温の熱処理によっても、強磁性トンネ
ル接合の磁気抵抗変化率を低下させることなく、素子を
作製することが可能となる。なおかつ結果として、Co
あるいは、Coを含む合金とMn系規則合金との間の効
果的な交換相互作用により、より大きな交換結合磁界を
も同時に得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図2】本発明の第二の実施形態における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図3】本発明の第三の実施形態における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図4】本発明の第四の実施形態における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図5】本発明の第一の実施例における、強磁性トンネ
ル接合素子の基本構造を示す図である。
【図6】本発明の第一の実施例における、強磁性トンネ
ル接合素子の基本構造を示す図である。
【図7】本発明の第一の実施例における、強磁性トンネ
ル接合素子の作製プロセスを示す図である。
【図8】本発明の第一の実施例における、強磁性トンネ
ル接合素子の磁気抵抗曲線を示す図である。
【図9】本発明の第二の実施例における、強磁性トンネ
ル接合素子の基本構造を示す図である。
【図10】本発明の第三の実施例における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図11】本発明の第四の実施例における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【図12】本発明の第五の実施例における、強磁性トン
ネル接合素子の基本構造を示す図である。
【符号の説明】 10 基板 11 配線層 12 第一の強磁性層 13 トンネルバリア層 14 第二の強磁性層 15 第三の強磁性層 16 Mn系規則合金反強磁性層 20 基板 21 配線層 22 バッファー層 23 Mn系規則合金反強磁性層 24 第一の強磁性層 25 第二の強磁性層 26 トンネルバリア層 27 第三の上部強磁性層 30 基板 31 配線層 32 第一の強磁性層 33 トンネルバリア層 34 第二の強磁性層 35 第三の強磁性体膜 36 第四の強磁性層 37 Mn系規則合金反強磁性層 40 基板 41 配線層 42 バッファー層 43 Mn系規則合金反強磁性層 44 第一の強磁性層 45 第二の強磁性層 46 第三の強磁性層 47 トンネルバリア層 48 第四の上部強磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柘植 久尚 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (56)参考文献 特開 平11−161919(JP,A) 特開 平11−168249(JP,A) 特開 平9−231525(JP,A) 特開 平8−204253(JP,A) 特開 平11−134620(JP,A) 特開 平11−135857(JP,A) 特開 平9−106514(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 43/08 G01R 33/09 G11B 5/39

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強磁性層間にトンネルバリア層を挟み、
    一方の強磁性層の外側にMn系規則合金の反強磁性層を
    配置した強磁性トンネル接合素子において、 前記Mn系規則合金の反強磁性層側に位置する強磁性層
    (固定層)が、少なくとも二層以上の強磁性体の多層膜
    よりなり、 前記Mn系規則合金の反強磁性層と接した前記強磁性体
    膜がCo、またはCoを含む合金、またはCoを含む化
    合物であり、前記トンネルバリア層と接した前記強磁性
    体膜がNi、またはNiを含む合金、またはNiを含む
    化合物であることを特徴とする強磁性トンネル接合素
    子。
  2. 【請求項2】 前記Mn系規則合金は、PtMn、Pt
    −Mn−X(XはRu、Ir、Cr、Fe、Co、N
    i、Pd、Rh)、あるいは、PdMn、NiMnであ
    ることを特徴とする請求項に記載の強磁性トンネル接
    合素子。
  3. 【請求項3】 前記Coを含む合金、またはCoを含む
    化合物はCoFeであり、前記Niを含む合金、または
    Niを含む化合物は、NiFeであることを特徴とする
    請求項1又は2に記載の強磁性トンネル接合素子。
  4. 【請求項4】 前記Mn系規則合金の反強磁性層側に位
    置する前記強磁性層が、少なくとも三層以上の多層膜よ
    りなり、その中で前記Mn系規則合金の反強磁性層と接
    した前記強磁性体膜がCo、またはCoを含む合金、ま
    たはCoを含む化合物であり、前記トンネルバリア層と
    接する側の前記強磁性体膜がNi、またはNiを含む合
    金、またはNiを含む化合物よりなり、中間の前記強磁
    性体の多層膜に、それら二つの前記強磁性体膜よりも高
    いスピン分極率を有する強磁性体を少なくとも一つ以上
    含むことを特徴とする請求項1に記載の強磁性トンネル
    接合素子。
  5. 【請求項5】 前記Mn系規則合金は、PtMn、Pt
    −Mn−X(XはRu、Ir、Cr、Fe、Co、N
    i、Pd、Rh)、あるいは、PdMn、あるいはNi
    Mnであることを特徴とする請求項に記載の強磁性ト
    ンネル接合素子。
  6. 【請求項6】 前記高いスピン分極率を有する強磁性体
    は、Fe、またはCoxFe(1−x)(但し、0<x
    <1)合金であることを特徴とする請求項に記載の強
    磁性トンネル接合素子。
  7. 【請求項7】 前記高いスピン分極率を有する強磁性体
    は、前記スピン分極率が55%以上であることを特徴と
    する請求項に記載の強磁性トンネル接合素子。
  8. 【請求項8】 基板上に配線層を形成した上部に強磁性
    層間にトンネルバリア層を挟み、一方の強磁性層の外側
    Mn系規則合金の反強磁性層を配置した強磁性トンネ
    ル接合素子を有する磁気ヘッドにおいて、 前記Mn系規則合金の反強磁性層側に位置する強磁性層
    (固定層)が、少なくとも二層以上の強磁性体の多層膜
    よりなり、 前記Mn系規則合金の反強磁性層と接した前記強磁性体
    膜がCo、またはCoを含む合金、またはCoを含む化
    合物であり、前記トンネルバリア層と接した前記強磁性
    体膜がNi、またはNiを含む合金、またはNiを含む
    化合物であり、前記強磁性トンネル接合素子上に上部電
    極を具備したことを特徴とする磁気ヘッド。
  9. 【請求項9】 基板上に配線層を形成した上部に、強磁
    性層間にトンネルバリア層を挟んで、一方の強磁性層の
    外側にMn系規則合金の反強磁性層を配置した強磁性ト
    ンネル接合素子を有する磁気メモリにおいて、 前記Mn系規則合金の反強磁性層側に位置する強磁性層
    (固定層)が、少なくとも二層以上の強磁性体膜の多層
    膜よりなり、 前記Mn系規則合金の反強磁性層と接した前記強磁性体
    膜がCo、またはCoを含む合金、またはCoを含む化
    合物であり、前記トンネルバリア層と接した前記強磁性
    体膜がNi、またはNiを含む合金、またはNiを含む
    化合物であり、前記強磁性トンネル接合素子上に上部電
    極を具備したことを特徴とする磁気メモリ。
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