JP3694983B2 - 芳香族ポリエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は着色が改良された芳香族ポリエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリエーテルの製造方法に関しては、種々の方法が提案されている。代表的な方法として、特公昭42−7799号公報や特公昭45−21318号公報には、2価フェノールとアルカリ金属水酸化物から生成する2価フェノールのアルカリ金属塩とジハロゲノベンゼノイド化合物とを高沸点のスルホキシド又はスルホン溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン)中で反応させる方法が開示されている。
【0003】
さらに、特公平3−23570号公報には、(1)2価フェノールとジハロゲノベンゼノイド化合物又は(2)ハロフェノールとアルカリ金属炭酸塩又は重炭酸塩を不活性スルホン溶媒系で反応させる際に、3価の有機リン化合物を存在させて行うことにより耐酸化劣化性が優れ、かつ着色性が改良された芳香族ポリエーテルの製造方法が開示されている。
また、特開昭64−70530号公報には、リン化合物の存在下で重合することにより熱安定性が改良されることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平3−23570号公報に記載の3価の有機リン化合物を添加して行う方法は、着色の改良は必ずしも十分ではなく、また特開昭64−70530号公報に記載のリン化合物の存在下で重合する方法は、着色の改良がもうひとつであるうえに透明性が十分とはいえない。
かかる事情に鑑み、本発明者らは、着色が改良された芳香族ポリエーテルの製造方法について鋭意検討した結果、次亜リン酸の存在下に重合し、次いで酸水溶液で洗浄することによって、着色の少なく、透明性の高い芳香族ポリエーテルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(1)2価フェノールとジハロゲノベンゼノイド化合物との実質的な等モル混合物及び/又は(2)ハロフェノール(但し、前記ジハロゲノベンゼノイド化合物又は前記ハロフェノールはそのハロゲン原子がそれに対しオルト位またはパラ位に結合した−SO2 −又は−CO−で活性化されているものである。)とアルカリ金属の炭酸塩及び/又は重炭酸塩とを、存在するフェノール性水酸基の当量以上のアルカリ金属原子が存在するような量を用い、有機高極性溶媒中で重合して芳香族ポリエーテルを製造する方法において、次亜リン酸塩の存在下に重合し、得られる重合体を酸水溶液で洗浄することを特徴とする芳香族ポリエーテルの製造方法である。
この方法により着色が少なく透明性の高い重合体を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる2価フェノールとしては一般式 化4で示されるビスフェノール類が挙げられる。
【0007】
【化4】
式中、Yは1〜5個の炭素原子を有するアルキレン若しくはアルキリデン基、5〜15個の炭素原子を有するシクロアルキレン若しくはシクロアルキリデン基、−O−、−COー、−SO2 ー、−S−のいずれかの基又はベンゼン環が直接結合していることを表し、R1 、R2 は−CH3 、−CH(CH3)2 、−OCH3 、−OC2 H5 の基の中から選ばれ、R1 とR2 は同一でも異なっていてもよく、a、bは0〜4の整数を表す。
【0008】
この2価フェノールの好ましい例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及びこれら2価フェノールのオルト位のメチル置換体などが挙げられる。
中でも一般式 化5で示される化合物が特に好ましい。
【0009】
【化5】
式中、Yは前記と同じである。
【0010】
本発明で用いられるジハロゲノベンゼノイド化合物としては、一般式 化6で示される化合物が挙げられる。
【0011】
【化6】
式中、X、X’はハロゲン原子で同一でも異なっていてもよく、Zに対してオルト位またはパラ位にあり、Zは−SO2 −又は−CO−を表し、R3 、R4 は−CH3 、−CH(CH3)2 、−OCH3 、−OC2 H5 の基の中から選ばれ、R 3 とR 4 は同一でも異なっていてもよく、c、dは0〜4の整数を表す。
【0012】
このジハロゲノベンゼノイド化合物の好ましい例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジフロロベンゾフェノン及びこれらのジハロゲノベンゼノイド化合物のオルト位のメチル置換体などが挙げられる。
中でも一般式 化7で示される化合物が特に好ましい。
【0013】
【化7】
式中、X、X’、Zは前記と同じである。
【0014】
本発明において用いられるジハロゲノベンゼノイド化合物の使用量は、2価フェノールに対して実質的に等モルとなる量であり、具体的には90〜110モル%の範囲内で使用するのが好ましい。より高分子量のポリマーを得るためには98〜105モル%の範囲内で使用するのが好ましい。
【0015】
本発明で用いられるハロフェノールとしては、一般式 化8で示される化合物が挙げられる。
【0016】
【化8】
式中、X”はハロゲン原子でAに対してオルト位またはパラ位にあり、Aは−SO 2 −又は−CO−を表し、R5 、R6 は−CH3 、−CH(CH3) 2、−OCH3 、−OC2 H5 の基の中から選ばれ、R 5 とR 6 は同一でも異なっていてもよく、e、fは0〜4の整数を表す。
【0017】
このハロフェノールの好ましい例としては、4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノール、4−(4−フロロフェニルスルホニル)フェノール、4−(4−クロロベンゾイル)フェノール、4−ヒドロキシ−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニルなどが挙げられる。
【0018】
有機高極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0019】
アルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩としては、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたはその重炭酸塩である。
アルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩の使用量は、存在するフェノール基1個に対して少なくとも1個のアルカリ金属原子が存在するような量であるが、好ましくは0.5〜25モル%過剰のアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩を用いる。
これよりも多量のアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩の使用は生成ポリマーの開裂もしくは分解を生じさせ、一方、少なすぎると低分子量の生成物しか得られないので好ましくない。
【0020】
次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムが好ましく用いられる。
次亜リン酸塩の量は、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.01〜0.2重量%、好ましくは0.02〜0.15重量%の範囲で使用される。
0.01重量%より少ないと、添加の実効は認められず、また0.2重量%より多くなるとむしろ効果が無くなるので好ましくない。
【0021】
重合反応温度は、使用するモノマー及び溶媒の性質により異なるが、80〜400℃、好ましくは100〜350℃である。反応温度が低い場合は、目的とする重合反応はほとんど進行せず、必要とする分子量の重合体を得ることは困難である。一方、上記の範囲より反応温度が高い場合は、目的とする重合反応以外の副反応が無視できなくなり得られる重合体の着色も著しくなる。
反応は、一定の温度で実施しても良いし、温度を徐々に変化させるか、又は温度を段階的に変化させても良い。
【0022】
重合反応に要する時間は、反応原料の種類、重合反応の形式、反応温度などにより大幅に変化するが、通常は1〜24時間の範囲であり、好ましくは2〜12時間の範囲で実施される。
【0023】
重合反応は、アルカリ炭酸塩または重炭酸塩とフェノールの反応によって炭酸塩または重炭酸塩が分解し、炭酸ガスと水とを生成するが、この生成水を除去し、さらに高温反応に際し、フェノール又は生成した重合体が酸化により着色されるのを防ぐために、若干の不活性ガス気流下で行うことが望ましい。
【0024】
本発明において、重合反応を停止させるためには、通常反応物を冷却すればよいが、重合体の末端に存在する可能性のあるフェノキサイド末端を安定化させるために、脂肪族ハロゲン化物、芳香族ハロゲン化物などを添加反応させることも必要に応じ実施される。
このハロゲン化合物の具体的な例としては、メチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、4−クロロジフェニルスルホン、4−フロロジフェニルスルホン、4−クロロベンゾフェノン、4−フロロベンゾフェノン、4,4’−ジフロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフロロベンゾフェノン、p−クロロニトロベンゼンなどが挙げられる。
【0025】
重合反応終了後の重合体の分離精製においては、公知の方法を適用できる。
即ち、室温で固体の溶媒を用いて重合した場合は、ポリマー、塩、重合溶媒の混合物を細かく粉砕した後に、重合体の非溶媒で洗浄し、塩、重合溶媒を抽出除去することにより目的とする重合体を得ることができる。
また、重合体を溶解後、析出した塩を分離するか、重合体を溶解後、非溶媒に添加して重合体を析出させ、次いで非溶媒で洗浄することにより重合体を得ることができる。
重合体の非溶媒として通常用いられるものの代表例は、メタノール、アセトン、水、イソプロパノール、メチルエチルケトン、エタノールなどを挙げることができるが、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
【0026】
本発明において、この重合体の洗浄において、酸水溶液で洗浄することが必須である。酸水溶液による洗浄がないと、黄色みが濃くなり、色調改良が不充分となる。
酸水溶液の洗浄は、通常、有機酸又は無機酸の水溶液中で重合体を懸濁、攪拌して行われるが、この方法に限られるものではない。
酸としては、腐食性、揮発性の面から塩酸や硫酸のような無機酸よりも、酢酸、プロピオン酸、安息香酸のような有機酸が好ましく用いられ、水への溶解性、沸点の低さなど取扱い易いことから酢酸が特に好ましく用いられる。
酸水溶液の洗浄は、通常、重合体の非溶媒による洗浄後に行われるが、これに限られるものではない。また、それぞれを複数回行っても良いし、非溶媒による洗浄/酸水溶液による洗浄を繰り返し行ってもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明によって得られる芳香族ポリエーテルは、黄色みが少なく、透明性の高い、即ち着色の少ない重合体である。
芳香族ポリエーテルは、その優れた耐熱性、機械性能、耐薬品性に優れていることから、重合体が高温でさらされるような部品として使用されるのに適している。そのような用途としては、電気電子部品、電気接点部品、耐熱被覆材、耐熱水器具、しゅう動部品、コーテング材料、耐熱塗料、調理用具、医療器具、耐熱フィルムなどが挙げられ、着色が著しく少ない重合体はこれらの用途に好適である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例にて詳細に説明するが、これをもって本発明を制限するものではない。
なお、実施例及び比較例中の還元粘度(RV)は次式により定義される。
RV=1/C*(t−t0 )/t0
t:重合体溶液の流出時間(秒)
t0 :純溶媒の流出時間(秒)
C:重合体の溶液の濃度(g/100ml溶媒で表示)
粘度の測定は、オストワルド型粘度管を使用して、25℃で行った。粘度測定のための重合体溶液の濃度はN,N−ジメチルホルムアミド溶液中1.0g/100mlとした。
重合体の色調については、重合体の6.0g/100mlの濃度のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を調製し、日立自記分光光度計U−3410により、10cmの光路長のガラスセルを使用してYI及び600nmにおける光線透過率(%)を示した。
【0029】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、温度計、先端に受器を付したコンデンサーとを備えた、0.5LSUS316L製フラスコ中に、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(100.10g)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(119.90g)、及びジフェニルスルホン(196.00g)を仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温し、モノマーを溶融させた。
その後次亜リン酸ナトリウム一水和物0.20g(次亜リン酸ナトリウムとして0.17g、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.08重量%)を添加した後、無水炭酸カリウム57.50gを添加した。その後290℃まで徐々に昇温し、290℃でさらに2時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温まで冷却固化し、細かく粉砕した後、温水洗浄及びアセトン、メタノール混合溶媒での洗浄を数回行い、塩と重合溶媒を除去した後、重合体を酢酸水溶液中でpHを3〜5に維持しながら室温で攪拌した。更に150℃で加熱乾燥を行い、還元粘度0.43dl/gの粉末状ポリマーを得た。このポリマーの色調は、YI=11.1、600nmにおける光線透過率は97.6%であった。
【0030】
実施例2
酢酸水溶液による洗浄を2回行った以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
実施例1において、酢酸水溶液の代わりに水中で行った以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0032】
比較例2
次亜リン酸ナトリウムを加えなかった以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0033】
比較例3
実施例1において、次亜リン酸ナトリウムを加えず、酢酸水溶液の代わりに水中で行った以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0034】
実施例3〜5、比較例4
次亜リン酸ナトリウム一水和物の量をそれぞれ0.40g(次亜リン酸ナトリウムとして0.33g、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.17重量%)、0.10g(次亜リン酸ナトリウムとして0.08g、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.04重量%)、0.04g(次亜リン酸ナトリウムとして0.03g、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.017重量%)、0.60g(次亜リン酸ナトリウムとして0.50g、得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.25重量%)とした以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0035】
実施例と比較例の対比(表1に示す)より、次亜リン酸塩を添加して重合し、重合体を酸溶液で洗浄することにより、黄色みが少なく、透明性の高い、即ち着色の少ない重合体が得られる。
【0036】
【表1】
*:生成ポリマーの重量を基準とする重量%
#:波長600nmにおける光線透過率(%)
Claims (4)
- ( I )下記の一般式(1)で示される2価フェノールと下記の一般式 ( 2 ) で示されるジハロゲノベンゼノイド化合物との実質的な等モル混合物及び/又は( II )下記の一般式 ( 3 ) で示されるハロフェノールとアルカリ金属の炭酸塩及び/又は重炭酸塩とを、存在するフェノール性水酸基の当量以上のアルカリ金属原子が存在するような量を用い、有機高極性溶媒中で重合して芳香族ポリエーテルを製造する方法において、次亜リン酸塩を得られる芳香族ポリエーテルの重量を基準として0.01〜0.2重量%存在させて重合し、得られる重合体を酸水溶液で洗浄することを特徴とする芳香族ポリエーテルの製造方法。
- 次亜リン酸塩が次亜リン酸ナトリウム及び/又は次亜リン酸カリウムである請求項1記載の製造方法。
- 酸水溶液が有機酸の水溶液である請求項1記載の製造方法。
- 2価フェノールが4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンであり、ジハロゲノベンゼノイド化合物が4,4’−ジクロロジフェニルスルホンである請求項1記載の製造方法。
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