JP3688925B2 - 電子写真感光体およびそれを用いた画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有する支持体上に下引き層と感光層とをこの順番に形成した電子写真感光体およびそれを用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機などに搭載される電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう)は導電性を有する支持体上に光導電機能を有する感光層を備える。該感光体は、感光層の光導電機能である電荷発生機能と電荷輸送機能とを単一の物質で担うようにして構成した単一層型と、個別の物質に分担させて構成した積層型や分散型などの機能分離型とに大別される。また、感光層を構成する光導電材料としては従来から、セレン、硫化カドミウムおよび酸化亜鉛などの無機系材料と、ポリビニルカルバゾールなどの有機系材料とが知られている。
【0003】
また近年、画像データの記憶や編集を実現するために、レーザやLED(発光ダイオード)を用いたプリンタのみならず複写機の分野でもデータ処理のデジタル化が急速に進行している。このようなデジタル化に伴って感光体では、780nmや660nmの比較的長波長の光に対して高感度であることが要求され、このために感光層中にフタロシアニン化合物が含有される。たとえば特公平5−55860、特開昭59−155851、特開平2−233769および特開昭61−28557には、オキソチタニウムフタロシアニン、β型インジウムフタロシアニン、X型無金属フタロシアニンおよびバナジルオキシフタロシアニンを用いた例が開示されている。
【0004】
しかし、上記フタロシアニン化合物を含有した場合、感光体の1回転目の帯電電位が低いために帯電電位が安定する2回転目から画像形成が実行され、したがって画像形成時間が長くなってしまう。上述したようなデジタル化によるデータ転送や画像処理の高速化に伴って画像形成時間の短縮が強く要求され、たとえば特開平8−36301には1回転目では感光体を除電せずに画像を形成し、2回転目以降で除電して画像を形成する特殊な画像形成プロセスを採用する例が開示され、特開平8−328284にはアゾ顔料を含有する下引き層を支持体と感光層との間に設ける例が開示され、さらに特開平9−127711には感光層中にアゾ顔料とフタロシアニンを含有する例が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平8−36301では、特殊な画像形成プロセスを採用するので、画像形成動作の制御が複雑となる。また、特開平8−328284および特開平9−127711では、高価なアゾ顔料を使用するので、製造コストが上昇する。
【0006】
本発明の目的は、比較的長波長の光に高感度で、画像形成速度が速く、画像形成動作の制御が簡単で、製造コストが安価な電子写真感光体およびそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性支持体上に少なくとも下引き層と光導電層とが形成された繰返し使用される電子写真感光体において、
前記下引き層は少なくとも、表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンと結着樹脂とから成り、
前記光導電層は電荷発生物質としてフタロシアニンを含有し、
前記下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率が酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上30.0以下の範囲であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0008】
本発明に従えば、支持体上の下引き層に表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンと結着樹脂とを含有させ、下引き層上の光導電層にフタロシアニンを含有させ、下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率を酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上30.0以下の範囲とすることによって、感光体の1回転目の帯電電位を高めて、繰返し使用時の帯電電位を安定化することが可能となる。また、フタロシアニンを使用するので、比較的長波長の光に対して高感度となる。したがって、このような感光体を用いた画像形成動作では、特殊な画像形成プロセスを採用することなく、簡単な制御で1回転目から画像を形成することができる。また、高価なアゾ顔料を使用しないので、感光体を安価に製造することができる。
【0009】
また本発明は、前記下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率が酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上10.0以下の範囲であることを特徴とする。
【0010】
また本発明に従えば、前記下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率を酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上10.0以下の範囲とすることが、1回転目から高い帯電電位を得る上で特に好ましい。
【0011】
また本発明は、前記酸化チタンの平均粒径が0.005μm以上0.1μm以下の範囲であることを特徴とする。
【0012】
また本発明に従えば、前記酸化チタンの平均粒径を0.005μm以上0.1μm以下の範囲とすることが、1回転目から高い帯電電位を得るとともに下引き層用塗工液の高い安定性を得る上で特に好ましい。酸化チタンの平均粒径がこの範囲よりも大きいと、塗工液中で酸化チタンの沈降が見られ、安定性が低下する。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
また本発明は、前記フタロシアニンは、
(a)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°,9.4°,9.6°,11.6°,13.3°,17.9°,24.1°および27.2°に主要なピークを示し、9.4°と9.6°との重なったピーク束が最大のピーク強度を示し、かつ27.2°のピークが第2のピーク強度を示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(b)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°および27.3°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(c)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°,14.2°,23.9°および27.1°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(d)τ型無金属フタロシアニンおよび
(e)X型無金属フタロシアニンのうちのいずれか1種類または2種類以上の混合物であることを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、光導電層に上述の(a)〜(c)のX線回折スペクトルを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(d)τ型無金属フタロシアニンおよび(e)X型無金属フタロシアニンのうちのいずれか1種類または2種類以上の混合物を用いることが、1回転目から高い帯電電位を得るとともに高い感度を得る上で特に好ましい。
【0031】
また本発明は、前記下引き層の膜厚は1μm以上10μm以下の範囲であることを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、上述した表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンと、結着樹脂とを含有する下引き層の膜厚を1μm以上10μm以下の範囲に選ぶことが、1回転目から高い帯電電位を得る上で特に好ましい。下引き層膜厚が1μmよりも小さいと下引き層の欠陥に起因する画像欠陥が顕著となり、10μmよりも大きいと下引き層中の電荷蓄積に起因する残留電位の発生が顕著となる。
【0033】
また本発明は、前記下引き層の結着樹脂は硬化性樹脂であることを特徴とする。
【0034】
本発明に従えば、下引き層において、上述した表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンとともに含有される結着樹脂としては、その上に形成される光導電層を溶剤を用いて塗布することを考慮して、光導電層用の有機溶剤に対して溶けにくい樹脂が好ましく、特に硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
また本発明は、前記硬化性樹脂は、
(a)アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合物、
(b)アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物、
(c)エポキシエステル樹脂とメラミン樹脂の混合物、
(d)アルキド樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物および
(e)アクリル樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0036】
本発明に従えば、前記硬化性樹脂としては三次元網目構造を有する樹脂が挙げられ、具体的には上述の(a)〜(e)のうちのいずれかの混合物を用いることが特に好ましい。
【0037】
また本発明は、電子写真感光体を回転させて画像を形成する画像形成方法において、
前記電子写真感光体として上述のうちのいずれかに記載の電子写真感光体を用い、該感光体を1回転目から画像形成に使用することを特徴とする画像形成方法である。
【0038】
本発明に従えば、電子写真感光体を回転させて画像を形成する画像形成方法では、上述したような感光体を1回転目から画像形成に使用することによって、高速に画像を形成することが可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態である電子写真感光体1を示す断面図である。感光体1は、導電性を有する支持体2の上に少なくとも下引き層3と光導電層4をこの順番に設けて構成される。図1の光導電層4は電荷発生層5と電荷輸送層6を積層した機能分離型であるが、光導電層4は電荷発生機能と電荷輸送機能を兼ね備えた単一層から成る単一層型であっても構わない。また、光導電層4の上に表面保護層を設けても構わない。
【0040】
支持体2としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレスおよびチタンなどの金属製ドラムが挙げられる。また、上記金属から成るシート、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子樹脂から成るシート、ガラス板、および硬質紙などの上に金属箔をラミネートして導電処理を施したドラム、シートおよびシームレスベルトが挙げられる。さらに、上記金属シート、高分子樹脂シート、ガラス板および硬質紙などの上に酸化チタン、酸化錫、酸化インジウムおよびカーボンブラックなどの導電性物質を適当な結着樹脂とともに塗布して導電処理を施したドラム、シートおよびシームレスベルトが挙げられる。
【0041】
下引き層3に使用される結着樹脂としては、その上に光導電層4を溶剤で塗布することを考慮して、一般的な有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール、カゼインおよびポリビニルアセタールなどの水溶性樹脂、共重合ナイロンおよびメトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および尿素樹脂などの3次元網目構造を形成する硬化性樹脂が挙げられる。
【0042】
前記硬化性樹脂のうち、特に(a)アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合物、(b)アクリル樹脂とメラミン樹脂の混合樹脂、(c)エポキシエステル樹脂とメラミン樹脂の混合物、(d)アルキド樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物および(e)アクリル樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物のうちのいずれかを用いることが好ましい。
【0043】
上記結着樹脂とともに下引き層3に含有される酸化チタンとしては、表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンが好ましい。さらに、酸化チタンの分散安定性を考慮して、表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンを含有する場合では、酸化チタン/結着樹脂(重量比)を5.7以上30.0以下の範囲、特に5.7以上10.0以下の範囲に選ぶことが好ましい。また、結着樹脂中に表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンを安定して分散させて使用するために、酸化チタンの平均粒径を0.005μm以上0.1μm以下の範囲、特に0.01μm以上0.1μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。
【0044】
【0045】
下引き層3の膜厚は、0.1μm以上50μm以下の範囲、特に1μm以上10μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。膜厚が0.1μmよりも小さいと実質的に下引き層3として機能せず、支持体2の欠陥を被覆した均一な表面性が得られず、支持体2からのキャリア注入を防止することができず、帯電性が低下する。また、50μmよりも大きいと、浸漬塗布法による下引き層3の形成が困難で、また塗膜の機械的強度が低下する。
【0046】
下引き層用塗工液は、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、コロイドミルおよび超音波分散機などを用いて分散され、また下引き層3は浸漬法、スプレー法、ビード法およびノズル法などの一般的な塗布方法で形成される。
【0047】
下引き層3を形成することによって1回転目から高い帯電電位が得られるが、さらに反転現象時における支持体2からの電荷のリークが主原因と考えられる画像欠陥(黒ポチ)を防止することができる。また、支持体2と光導電層4の間でバリヤ層として作用することによって静電疲労特性が向上する。さらに、支持体2と光導電層4の接着性が向上する。
【0048】
下引き層3の上に形成される光導電層4の構造としては、上述したように電荷発生層5と電荷輸送層6との2層から成る機能分離型およびこれらが分離させずに単一層で形成される単一層型のいずれであっても構わない。
【0049】
機能分離型の光導電層4では、たとえば下引き層3の上に電荷発生層5が形成される。電荷発生層5には電荷発生物質としてフタロシアニンが含有される。フタロシアニンとしては、(a)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°,9.4°,9.6°,11.6°,13.3°,17.9°,24.1°および27.2°に主要なピークを示し、9.4°と9.6°との重なったピーク束が最大のピーク強度を示し、かつ27.2°のピークが第2のピーク強度を示す図2に示されるような結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(b)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°および27.3°に主要なピークを示す図3に示されるような結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(c)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°,14.2°,23.9°および27.1°に主要なピークを示す図4に示されるような結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(d)τ型無金属フタロシアニンおよび(e)X型無金属フタロシアニンのうちのいずれか1種類または2種類以上の混合物を用いることが好ましい。
【0050】
なお、電荷発生物質としては、前記フタロシアニンの他に、クロロダイアンブルーなどのビスアゾ系化合物、ジブロモアンサンスロンなどの多環キノン系化合物、ペリレン系化合物、キナクリドン系化合物およびアズレニウム塩系化合物などを1種もしくは2種以上併用しても構わない。
【0051】
電荷発生層5の作成方法としては、電荷発生物質を真空蒸着することによって形成する方法および結着樹脂溶液中に電荷発生物質を分散し塗布して成膜する方法などがあるが、一般に後者の塗布方法が好ましい。塗布方法によって電荷発生層5を作成する場合、結着樹脂溶液中へ電荷発生物質を混合し分散する方法および塗布する方法としては、下引き層3と同様の方法を採用することができる。
【0052】
電荷発生層用の結着樹脂としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂および2以上の繰返し単位を含む共重合体樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。2以上の繰返し単位を含む共重合体樹脂としては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂が挙げられる。電荷発生層用の結着樹脂は、これらの絶縁性樹脂に限定されるものではなく、一般的な樹脂を単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0053】
電荷発生層用結着樹脂を溶解する溶媒としては、たとえば塩化メチレンおよび2塩化エタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、およびN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒を用いることができる。
【0054】
電荷発生層5の膜厚は、0.05μm以上5μm以下の範囲、特に0.1μm以上1μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。
【0055】
機能分離型の光導電層4において、電荷発生層5の上には電荷輸送層6が設けられる。電荷輸送層6の作成方法としては、結着樹脂溶液中に電荷輸送物質を溶解させた電荷輸送層用塗工液を作成し、これを塗布して成膜する方法が一般的である。電荷輸送物質としては、ヒドラゾン系化合物、ピラゾリン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、オキサジアゾール系化合物およびエナミン系化合物などが知られており、これらを1種もしくは2種以上併用して用いることができる。電荷輸送層用の結着樹脂としては、前記電荷発生層用の結着樹脂を1種もしくは2種以上混合して使用することができる。電荷輸送層6の膜厚は、5μm以上50μm以下の範囲、特に10μm以上40μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。
【0056】
単一層構造の光導電層4の膜厚は、5μm以上50μm以下の範囲、特に10μm以上40μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。
【0057】
また、感度の向上、残留電位の低減および繰返し使用時の疲労低減などを目的として、光導電層4に1種以上の電子受容性物質を添加しても構わない。電子受容性物質としては、たとえばパラベンゾキノン、クロラニル、テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、α−ナフトキノンおよびβ−ナフトキノンなどのキノン系化合物、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、p−ニトロベンゾフェノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノンおよび2−ニトロフルオレノンなどのニトロ化合物、およびテトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)−2′,2′−ジシアノビニルベンゼンおよび4−(m−ニトロベンゾイルオキシ)−2′,2′−ジシアノビニルベンゼンなどのシアノ化合物を挙げることができる。これらの電子受容性物質のうち、フルオレノン系、キノン系化合物、およびCl、CNおよびNO2 などの電子吸引性の置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0058】
また、安息香酸、スチルベン化合物やその誘導体、およびトリアゾール化合物、イミダゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物およびその誘導体などの含窒素化合物類などの紫外線吸収剤や酸化防止剤を光導電層4に添加しても構わない。
【0059】
また、必要に応じて、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステルおよび塩素化パラフィンなどの可塑剤やシリコン樹脂などのレベリング剤を光導電層4に混合して、加工性および可撓性を付与し、機械的物性を改良しても構わない。
【0060】
さらに、必要であれば、光導電層4の表面を保護するために保護層を設けても構わない。表面保護層としては、熱可塑性樹脂、光または熱硬化性樹脂を用いることができる。また、表面保護層中に、前記紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属酸化物などの無機材料、有機金属化合物、電子受容性物質、可塑剤およびレベリング剤などを含有させても構わない。
【0061】
なお、上述したような電子写真感光体1を回転させて画像を形成する方法であって、1回転目から該感光体1を画像形成に使用する画像形成方法も本発明の範囲に属するものである。
【0062】
以下、本発明を実施例によって説明するが、これによって本発明の態様が限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
直径65mm、長さ332mmのアルミニウム製のドラム形状の支持体2の上に、ペイントシェーカで10時間分散処理した下記組成の下引き層塗工液を浸漬塗工し、130℃で20分間乾燥して、膜厚3μmの下引き層3を形成した。下引き層塗工液において、酸化チタン/結着樹脂(重量比)は、6.0である。
【0064】
[下引き層塗工液]
酸化チタン(表面ラウリン酸アルミニウム処理)
MT−100S(テイカ社製) 60重量部
エポキシエステル樹脂(固形分濃度50%)
P786−50(大日本インキ社製) 14重量部
メラミン樹脂(固形分濃度60%)
L125−60(大日本インキ社製) 5重量部
メチルエチルケトン 81重量部
次に、下引き層3の上に、サンドミルで3時間分散処理した下記組成の電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、120℃で10分間乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層5を形成した。
【0065】
[電荷発生層塗工液]
結晶型オキソチタニウムフタロシアニン 3重量部
塩化ビニル−酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体
SOLBIN A5(日信化学工業社製) 2重量部
メチルエチルケトン 100重量部
実施例1で用いた結晶型オキソチタニウムフタロシアニンをCuKα=1.54050ÅをX線源として、θ/2θスキャン法で回折スペクトルを測定したところ、図2のようなX線回折スペクトルが得られた。図2から、この結晶型オキソチタニウムフタロシアニンは、ブラック角(2θ±0.2°)7.3°,9.4°,9.6°,11.6°,13.3°,17.9°,24.1°および27.2°に主要な回折ピークを示し、特に9.4°と9.6°の重なったピーク束が最大ピーク強度を示し、かつ27.2°のピークが第2のピーク強度を示すことが判る。
【0066】
次に、電荷発生層5の上に、撹拌・溶解処理した下記組成の電荷輸送層塗工液を浸漬塗工し、120℃で20分間乾燥して、膜厚30μmの電荷輸送層6を形成し、感光体1を得た。
【0067】
[電荷輸送層塗工液]
下記構造式(I)の電荷輸送物質 8重量部
【0068】
【化1】
【0069】
ポリカーボネート
Z200(三菱瓦斯化学社製) 10重量部
シリコンオイル
KF50(信越化学社製) 0.002重量部
ジクロロメタン 120重量部
【0070】
(比較例1)
実施例1で作成した下引き層塗工液を以下のように代えた以外は、実施例1と同様にして感光体1を作成した。下引き層塗工液において、硫酸バリウム/結着樹脂(重量比)は、6.0である。
【0071】
[下引き層塗工液]
硫酸バリウム
BF−10(堺化学社製) 60重量部
エポキシエステル樹脂(固形分濃度50%)
P786−50(大日本インキ社製) 14重量部
メラミン樹脂(固形分濃度60%)
L125−60(大日本インキ社製) 5重量部
メチルエチルケトン 81重量部
【0072】
(比較例2)
実施例1で作成した電荷発生層塗工液に使用した結晶型オキソチタニウムフタロシアニンに代えて、下記構造式(II)のトリスアゾ顔料を使用した以外は比較例1と同様にして感光体1を作成した。
【0073】
【化2】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
(評価1)
実施例1および比較例1,2で作成した感光体1をシャープ社製デジタル複写機AR−5130改造機に装着し、初期と30K枚複写動作後の暗部電位(VO)、明部電位(VL)の測定を行った。また、30K枚複写動作後の感光体1を2時間暗所に放置し、その後の感光体1の1回転目の暗部電位と5回転目の暗部電位との差をdVOとして求め、1回転目の帯電電位のパラメータとした。その結果を表1に示す。
dVO = |1回転目のVO|−|5回転目のVO|
【0103】
【表1】
【0104】
また、実施例1で作成した下引き層塗工液を7日間静置保存し、分散液の安定性を評価した結果を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
以上の結果から、下引き層に酸化チタンを含有することによって、1回転目から高い帯電電位が得られることが判る。また、電荷発生物質としてアゾ顔料を用いた感光体では1回転目から高い帯電電位が得られることがわかる。したがって1回転目の低い帯電電位は、電荷発生物質としてフタロシアニンを用いた場合に特有であることが判る。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
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【0233】
【0234】
【0235】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、支持体上に、表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンと結着樹脂とを含有する下引き層を形成し、該下引き層上にフタロシアニンを含有する光導電層を形成し、下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率を酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上30.0以下の範囲としたので、長波長の光に対して高感度で、感光体の1回転目の帯電電位が高くなり、繰返し使用時の帯電電位が安定化する。したがって、1回転目から画像を形成することができる。また本発明によれば、特に、酸化チタンと結着樹脂との比率を酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上10.0以下の範囲とすることが好ましい。また本発明によれば、特に、酸化チタンの平均粒径を0.005μm以上0.1μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
また本発明によれば、フタロシアニンは、(a)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°,9.4°,9.6°,11.6°,13.3°,17.9°,24.1°および27.2°に主要なピークを示し、9.4°と9.6°との重なったピーク束が最大のピーク強度を示し、かつ27.2°のピークが第2のピーク強度を示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(b)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°および27.3°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(c)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°,14.2°,23.9°および27.1°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、(d)τ型無金属フタロシアニンおよび(e)X型無金属フタロシアニンのうちのいずれか1種類または2種類以上の混合物であることが好ましい。
【0241】
また本発明によれば、下引き層の膜厚を1μm以上10μm以下の範囲に選ぶことが好ましい。
【0242】
また本発明によれば、下引き層の結着樹脂として硬化性樹脂を用いることが好ましい。また本発明によれば、硬化性樹脂として、(a)アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合物、(b)アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物、(c)エポキシエステル樹脂とメラミン樹脂の混合物、(d)アルキド樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物および(e)アクリル樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物のうちのいずれかを用いることが特に好ましい。
【0243】
また本発明によれば、電子写真感光体を回転させて画像を形成する画像形成方法では、上述したような感光体を1回転目から画像形成に使用することによって、高速に画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態である電子写真感光体1を示す断面図である。
【図2】 結晶型オキソチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図3】 他の結晶型オキソチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図4】 さらに他の結晶型オキソチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 導電性支持体
3 下引き層
4 光導電層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
Claims (8)
- 導電性支持体上に少なくとも下引き層と光導電層とが形成された繰返し使用される電子写真感光体において、
前記下引き層は少なくとも、表面がラウリン酸アルミニウム処理された酸化チタンと結着樹脂とから成り、
前記光導電層は電荷発生物質としてフタロシアニンを含有し、
前記下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率が酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上30.0以下の範囲であることを特徴とする電子写真感光体。 - 前記下引き層中の酸化チタンと結着樹脂との比率が酸化チタン/結着樹脂(重量比)で5.7以上10.0以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記酸化チタンの平均粒径が0.005μm以上0.1μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
- 前記フタロシアニンは、
(a)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°,9.4°,9.6°,11.6°,13.3°,17.9°,24.1°および27.2°に主要なピークを示し、9.4°と9.6°との重なったピーク束が最大のピーク強度を示し、かつ27.2°のピークが第2のピーク強度を示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(b)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°および27.3°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(c)X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°,14.2°,23.9°および27.1°に主要なピークを示す結晶型オキソチタニウムフタロシアニン、
(d)τ型無金属フタロシアニンおよび
(e)X型無金属フタロシアニンのうちのいずれか1種類または2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。 - 前記下引き層の膜厚は1μm以上10μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記下引き層の結着樹脂は硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 前記硬化性樹脂は、
(a)アルキド樹脂とメラミン樹脂の混合物、
(b)アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物、
(c)エポキシエステル樹脂とメラミン樹脂の混合物、
(d)アルキド樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物および
(e)アクリル樹脂とメラミン樹脂とエポキシ樹脂の混合物のうちのいずれかであることを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。 - 電子写真感光体を回転させて画像を形成する画像形成方法において、
前記電子写真感光体として請求項1〜7のうちのいずれかに記載の電子写真感光体を用い、該感光体を1回転目から画像形成に使用することを特徴とする画像形成方法。
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