JP3676178B2 - アブラナ科野菜の処理方法、アブラナ科野菜飲食物の製造方法及びアブラナ科野菜飲食物 - Google Patents

アブラナ科野菜の処理方法、アブラナ科野菜飲食物の製造方法及びアブラナ科野菜飲食物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アブラナ科に属する野菜特有の異臭を低減させ得るアブラナ科野菜の処理方法、アブラナ科野菜飲食物の製造方法及びアブラナ科野菜飲食物に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の野菜、すなわちキャベツに代表されるアブラナ科の野菜は、栄養価が高いビタミンUを多く含むほか、ビタミンCや食物繊維も多く含み、更には癌細胞の成育を妨げる作用や胃潰瘍を防止する作用があることが知られるに至り、最近特に野菜ジュース等の原料として着目されている。
【0003】
野菜を搾汁して野菜飲料を製造する場合、細断→搾汁という工程を経るのが一般的であるが、特にアブラナ科野菜の場合、野菜細断時に酵素が活性化して不快臭の一因であるアリルイソチオシアネート(AITC)が生成するため、飲みやすい野菜ジュースを製造する上でこの細断工程が一つの鬼門となっていた。
【0004】
そこで、例えば特開平10−42841号などは、破砕等の細断化処理によって異臭の原因となっている酵素が活性化することに着目し、野菜の細断工程時にビタミンCを添加し、さらに細断した野菜を搾汁した後濃縮することによって異臭の発生を低減する処理方法を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように細断工程時にビタミンC添加し、その後加熱、搾汁という工程を経て行った場合、ビタミンCは加熱によって分解してしまうため、搾汁後、酸味調整のために再びビタミンCを添加しなければならず、高価なビタミンCを大量に使用しなければならない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑み、キャベツに代表されるアブラナ科の野菜を処理する際に、特有の不快臭を発生させることなく、しかも高価なビタミンCの使用量を抑えることができる新たなアブラナ科野菜の処理方法及びアブラナ科野菜飲料の製造方法を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題解決のため、本発明は先ず、アブラナ科の野菜を細断処理する前に、加熱処理することとした。細断処理する前の加熱処理によって酵素を失活させることができるから、細断工程時に不快臭成分を発生させる酵素が活性化することなく、これによってアブラナ科野菜特有の異臭の発生をなくすことができる。
【0008】
ここでの加熱は、品温を約80℃〜95℃の範囲に維持するように行うのが好ましく、加熱処理の手段としては「蒸し」すなわち蒸気によって品温を高める手段を採るのが好ましい。
品温が80℃より低いと酵素を充分に失活させることができないおそれがある一方、95℃より高くなると有用成分であるビタミンUの熱分解が増大するおそれがある。但し、加熱処理における温度条件は、圧力や雰囲気などにも影響されるため5℃程度上下しても同様の効果は期待することができる。
また、「蒸し」による加熱は、野菜の新鮮さを保持したまま加熱処理することができ、しかも品温を95℃にまで高めてもこげ臭などの加熱による香味が付くことがない。また、一般的に加熱処理にはブランチング(ゆで)が行われているが、このブランチングによると野菜の内容物がゆで湯に溶出してBrix(可溶性固形成分)が低下してしまうのに対して、蒸すようにすればBrix(可溶性固形成分)を低下させることなく酵素失活させることができる点でも優れている。
【0009】
ところで、例えばキャベツを丸ごと加熱処理したのでは、全体を均一に加熱することは難しく所々で酵素失活が不充分になるおそれがある。また、そのために加熱温度を上げたのでは含有されているビタミンUが熱分解してしまう。そこで本発明は、必要に応じてAITC等のイソチオシアネートを特に多く含む芯部を取り除いたり、野菜に切り込みを入れたり、葉をバラバラにするなどの前処理を行うこととした。この程度の前処理であれば、酵素の活性化を最小限に抑えることができるし、キャベツ等の熱が芯まで伝わりにくい野菜であっても、均一かつ効率良く加熱することができる。
【0010】
また、上記の如く加熱処理を施した野菜は、細断(破砕、粉砕等含む)及び搾汁を行った後、搾汁液を、少なくも1種以上の無機陰イオンと少なくとも1種以上の有機酸とが混在してイオン結合してなる構造を備えた陰イオン交換体、すなわちイオン交換基に無機陰イオンと有機酸とを強制的にイオン結合させたイオン交換体を用いて接触処理するのが好ましい。
仮に搾汁液中にまだ異臭の原因成分が残っていたとしても、このイオン交換処理によって除くことができるし、アブラナ科野菜は硝酸の含有率が高いことで知られているが、この処理によって硝酸イオンの低減化を図ることができる。しかも、かかる陰イオン交換体による処理によれば同時に嗜好性やミネラル等の健康上の有益成分を維持することができる。
【0011】
本発明の処理によって得られた処理液は、必要に応じて、ろ過、濃度調整、糖度調整、pH調整、殺菌処理などの種々の処理を施し、飲料をはじめ、その他の飲食品、調理食品、調味料など様々に利用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
本発明の原料とし得るアブラナ科野菜は、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、カブ、その他の食経験のあるアブラナ科の野菜であって、これらの葉、葉柄、茎、根、花、果実(果菜を含む)、種実、種子、その他の野菜組織或いは野菜部位を包含する。
【0014】
(前処理)
これらの原料野菜は、必要に応じて洗浄及び剥皮し、必要に応じて芯部を取り除き、熱が伝わりやすいように切込みを入れたり、葉をバラバラに解す等のように前処理するのが好ましい。但し、野菜の種類や大きさによってはこの前処理を施す必要のないものもある。
キャベツ、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ケールなどの野菜においては、特に芯部を予め取り除いておくのが好ましい。これらの野菜の芯部にはAITC等のイソチオシアネートが特に多く含まれ、しかも芯部は品温が上がりにくいからである。
【0015】
(加熱処理)
上記のように前処理した野菜は、所定条件の下、加熱処理を施すようにする。加熱手段としては、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気、或いは水蒸気雰囲気などの雰囲気において、ブランチング(ゆで)処理、或いはチューブラー、ニーダー、スチームインジェクションなどによる加熱手段、その他現在野菜に対して行われている加熱手段を採ることができるが、中でも上述のような理由によって「蒸し」すなわち蒸気によって品温を高める手段を採るのが好ましい。
「蒸し」の具体的方法としては、バッチ式或いは連続式の装置内で、例えば90℃〜100℃の蒸気を直接当てて行うようにすればよい。
また、ここでの加熱は、品温が約80℃〜95℃の温度範囲を維持するように行うのが好ましく、特に90℃〜95℃の範囲に到達後、約5分〜20分間蒸すようにすれば異臭の発生を大幅に抑えることができる。
【0016】
(細断)
加熱処理後、できるだけ短時間のうちに細断処理を施すのが好ましい。ただし、ここでの細断処理とは、破砕、粉砕などの細断も包含する意である。
細断方法としては、グラインダー、ダイサー、スライサー、カッターなど現在公知の細断機械を用いて常法に従って行うことができ、細断の程度は、例えば平均径1mm〜100mmなど任意に設定可能である。予め加熱よって酵素失活させてあるから、どんなに細かく細断しても酵素が活性化して不快臭が発生することがない点は本発明の特徴である。
なお、細断物の大きさや形状等はその後の搾汁方法に応じて適宜決定するのが好ましい。
【0017】
(搾汁)
上記の如く細断した野菜は、デカンター、スクリュープレス等、現在公知の搾汁機を用いて常法によって搾汁し、この搾汁液は、必要に応じて減圧濃縮器、攪拌型薄膜式濃縮器、或いはプレート式濃縮器などの公知の濃縮器により常法に従って濃縮する。もっとも、この濃縮工程は、下記のイオン交換処理の後で行ってもよいし、また最終製品の種類によっては濃縮を行わなくてもよい。
【0018】
(イオン交換処理)
上記処理によって得られた搾汁液は、少なくも1種以上の無機陰イオンと少なくとも1種以上の有機酸とが混在してイオン結合してなる構造を備えた陰イオン交換体、すなわちイオン交換基に無機陰イオンと有機酸とを強制的にイオン結合させたイオン交換体によって接触処理するのが好ましい。
【0019】
ここで、「少なくとも1種以上の無機陰イオンと少なくとも1種以上の有機酸とが混在してイオン結合してなる構造を備えた陰イオン交換体」とは、イオン交換基に水酸イオンのみ、無機陰イオンのみ、或いは有機酸のみがイオン結合してなる陰イオン交換体ではなく、1種以上の無機陰イオンと1種以上の有機酸の両方がそれぞれイオン交換基にイオン結合している構造を備えている陰イオン交換体のことを意味するものであり、野菜汁と陰イオン交換体との接触空間内における無機陰イオン及び有機酸のイオン結合割合は全イオン交換基の5〜95%に無機陰イオンがイオン結合してなるものが好ましい。
ここで、本発明で用いる「陰イオン交換体」は、通常使用されている「陰イオン交換樹脂」に無機陰イオン及び有機酸をイオン結合させる前処理したものを用いることができ、上記前処理前の「陰イオン交換樹脂」すなわち「接触処理に用いる陰イオン交換体」の基本骨格を構成する「陰イオン交換樹脂」は、具体的には、ダイアイオン・SAシリーズ(SA10A ,11A ,12A ,20A ,21A 等),PAシリーズ(PA306,308,312,316,318,406,408,412,416,418 等),WAシリーズ(WA10,11,20,21,30 等) 、アンバーライト・IRA シリーズ(IRA-400 ,410 ,900 ,9 3ZU 等)を例示することができる。
上記「陰イオン交換体の前処理」は、陰イオン交換樹脂に無機陰イオンと有機酸とを同時に結合させる法、すなわち無機陰イオンと有機酸が共に溶解している水溶液に陰イオン交換体を接触させる方法(この工程を「酸接触工程」という)によって行うのが好ましい。この酸接触工程は、例えばカラムに陰イオン交換樹脂を充填し、カラム入り口から無機陰イオン及び有機酸が共に溶解している水溶液を注入し、カラム出口より得られる排出液の成分組成がカラム通液前の前記水溶液とほぼ同様になるまで水溶液をカラムに通液し続けるようにして行うことができる。
次に、陰イオン交換樹脂に結合させる「無機陰イオン」としては、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン等が挙げられるが、本発明の目的を考慮して硝酸イオン及び亜硝酸イオンはその選択から除かれるべきである。また、嗜好性への影響を考慮すると好ましくは塩素イオン及び硫酸イオンから選ばれる1種類以上を少なくとも含んでいることが必要であり、これらの条件を満たしていれば、その他に別の無機陰イオンを結合させても良い。
また、陰イオン交換樹脂に結合させる「有機酸」としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、L−アスコルビン酸、フマル酸、グルコン酸、酢酸、アジピン酸等が挙げられ、食品添加上支障のないものであれば特に限定するものではない。ただし、しゅう酸は食品におけるアクとして知られ、更には性状安定性や嗜好性を低下させる原因物質であることも知られているため、しゅう酸は除くのが好ましい。
陰イオン交換体による野菜汁液への接触処理は、バッチ式或いは連続式のどちらによる方法も選択できるが、生産効率を考慮した場合、カラム等のイオン交換反応槽で連続的にサンプルを注入及び排出できる様な連続式の接触処理を選択するのが好ましい。
【0020】
(後処理)
このようにして得られた野菜汁は、必要に応じて濃度、糖度、及びpHの調整、食品添加物等の添加、その他の食品素材との混合、殺菌等を施し、飲料をはじめ、その他の飲食品、調理食品、調味料など様々に利用することができる。具体的には、缶飲料であれば、搾汁液をろ過、冷却、ビタミンC添加、予備加熱、濃縮、殺菌、冷却、ろ過、缶充填などの工程を経て飲料製品とすることができる。なお、搾汁液をそのまま飲用に供することもできるが、必要に応じて砂糖、塩などの調味料や香料、保存料、その他の野菜汁などを加えて飲料とすることもできる。
また、ゼリーやヨーグルト、ジャム、パンなどの主原料或いはこれらの添加食品とすることもできる。

Claims (5)

  1. アブラナ科の野菜を細断処理する前に、品温が90℃〜95℃の範囲に到達後、約5分〜20分間野菜を蒸し、その後、細断処理及び搾汁を行い、得られた搾汁液を、少なくも1種以上の無機陰イオンと少なくとも1種以上の有機酸とが混在してイオン結合してなる構造を備えた陰イオン交換体を用いて接触処理することを特徴とするアブラナ科野菜の処理方法。
  2. 加熱処理を施す前に、野菜の塊を解す前処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のアブラナ科野菜の処理方法。
  3. アブラナ科の野菜を細断処理する前に、品温が90℃〜95℃の範囲に到達後、約5分〜20分間野菜を蒸し、その後、細断処理及び搾汁を行い、得られた搾汁液を、少なくも1種以上の無機陰イオンと少なくとも1種以上の有機酸とが混在してイオン結合してなる構造を備えた陰イオン交換体を用いて接触処理することを特徴とするアブラナ科野菜飲食物の製造方法。
  4. 加熱処理を施す前に、野菜の塊を解す前処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のアブラナ科野菜飲食物の製造方法。
  5. 請求項3又は4の製造方法によって製造されてなるアブラナ科野菜飲食物。
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