JP3645662B2 - 野菜ジュースの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等のアブラナ科の植物を原料とする野菜ジュースの製造方法に関し、詳しくは、硫黄臭等の不快臭が低減された野菜ジュースの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等のアブラナ科の植物は、豊富なビタミンC(たとえばキャベツで44mg%程度)をはじめ、ビタミンK、カリウム、胃・十二指腸の粘膜修復作用があるビタミンUなどを含み、栄養価値の高い野菜である。しかし、一方では、これらの野菜は加工により特有の不快臭を生じるため、たとえばキャベツを素材とした加工食品が意外に少ないといったように十分な活用がなされていないのが現状である。
【0003】
これらのアブラナ科の野菜の不快臭の原因物質については様々な報告がなされているが、それによれば、不快臭は主として硫黄臭によるものであり、その原因物質はスルフィド化合物とイソチオシアネート化合物に大別することができる。
【0004】
スルフィド化合物は、生原料中の前駆体から加熱工程などにより生成することが知られている。また、イソチオシアネート化合物に関しては、破砕工程時に野菜に含まれる酵素(ミロシナーゼ)が働くことにより生成する。すなわち、アブラナ科の野菜に広く分布している含硫配糖体(グルコシノレート)が、野菜の破砕、磨砕等の細断化処理を行うことにより、ミロシナーゼと反応して加水分解を起こし、これによって、硫黄臭の原因であるイソチオシアネート化合物が生成することが知られている。
【0005】
ミロシナーゼは、アブラナ科の野菜を細断化処理することにより活性化することから、細断化処理をせずに加熱すれば硫黄臭の発生を防ぐことができると考えられるが、実際の食品製造工程を考慮すれば現実的ではない。また、従来から野菜の酵素失活に用いられているクエン酸、酒石酸等は、アブラナ科植物特有の酵素であるミロシナーゼに対しては効果がない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アブラナ科の野菜特有の硫黄臭等の不快臭が低減された野菜ジュースの製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、野菜の細断時に一定量のビタミンCを添加し、さらに細断した野菜を搾汁した後濃縮することにより、硫黄臭の発生が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アブラナ科に属する野菜を細断して平均径10〜100mmの細断物とし、且つ該細断時又は細断後にビタミンCを、前記細断物100gに対して50〜500mg添加する細断工程、前記細断工程で得られる細断物を加熱処理する加熱工程、前記加熱工程で得られる加熱細断物を搾汁する搾汁工程、及び前記搾汁工程で得られる野菜搾汁液を濃縮する濃縮工程を含むことを特徴とする、野菜ジュースの製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記細断工程において、ビタミンCを、濃度0.003〜1MのビタミンC水溶液として添加することを特徴とする前記野菜ジュースの製造方法を提供するものである。
【0010】
アブラナ科植物に含まれる酵素であるミロシナーゼは、多量のビタミンCにより活性が抑制されることから、原料野菜の細断時に一定量以上のビタミンCを添加することにより、イソチオシアネート化合物の生成を抑制することができる。また、スルフィド化合物は、沸点が低い(50℃以下程度)という特徴を利用して濃縮工程によって除去することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の野菜ジュースの製造方法は、野菜を細断する細断工程、得られる細断物を加熱処理する加熱工程、加熱された細断物を搾汁する搾汁工程、及び野菜搾汁液を濃縮する濃縮工程を含む。
【0012】
(1)細断工程
本細断工程においては、アブラナ科に属する野菜を、搬送・搾汁に供しやすいように細断する。ここで、アブラナ科に属する野菜としては、キャベツ、ハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、ワサビ、マスタード、ブロッコリー、カリフラワー等が挙げられる。これらの野菜は細断に先立って洗浄し、必要に応じて剥皮等を行うのが好ましい。
【0013】
細断には、ダイサー、カッター、スライサー等の通常野菜の細断に用いられるものを使用することができる。細断は、得られる細断物の大きさが平均径10〜100mm、より好ましくは20〜50mmとなるように行うのが好ましい。野菜を平均径10mm未満に細断すると、細断によりミロシナーゼが活性化するため、硫黄臭の発生を十分に抑えられなくなる。一方、細断物が平均径100mmより大きいと、搬送・搾汁に適さなくなる。
【0014】
この場合の平均径は、以下の1)〜3)の手順により求められる値である。
1)任意に50個の細断物を採取する。
2)各細断物について、それぞれをその中心点を通って8等分するような4本の切断線を想定し、該4本の切断線の長さ(これらはその細断物についてそれぞれが直径に相当する)を測定して、該4本の切断線の長さの平均値を各細断物の直径とする。
3)各細断物の直径の平均値を求め、平均径を得る。
【0015】
本発明においては、前記細断時又は細断後に一定量のビタミンC(L−アスコルビン酸又はその塩)を添加する。これによりイソチオシアネートを生成させる酵素(ミロシナーゼ)の活性を抑制することができる。野菜に含まれる酵素を酸により失活させる方法は知られているが、その際に通常用いられるクエン酸、酒石酸等は、本発明のアブラナ科の野菜に対しては不快臭を抑制する効果が不十分であり適さない。
【0016】
ビタミンCは、細断物100gに対して50〜500mg、より好ましくは50〜300mg添加する。この量が少なすぎると、ミロシナーゼの場合かえって活性化され、イソチオシアネート化合物の生成が促進される傾向にある。一方添加量がこの範囲内であれば、本発明の効果が十分に発揮され、且つ経済性にも優れている。
【0017】
ビタミンCは、ビタミンC粉末等を水に溶解したものや、ビタミンCを含む果実汁等のビタミンC水溶液として添加するのが好ましい。ビタミンC水溶液中のビタミンC濃度は、0.003〜1M、好ましくは0.01〜1Mとするのが好ましい。このようなビタミンC水溶液を、細断物100gに対するビタミンCの総量として前記範囲となるように添加すればよい。ビタミンCを含む果実汁の例としては、レモン果汁、アセロラ果汁等が挙げられる。このような果実汁を用いるとさらに香味を与えることができる。
【0018】
ビタミンCの添加方法としては、例えば前記ビタミンC水溶液又は果実汁を霧吹き器、スプレーノズル等の噴霧器を用いて細断物に噴霧する方法等が挙げられるが、細断物に均一にビタミンCを接触させられる方法であれば特に限定されるものではない。ビタミンCを添加する時期は、野菜の細断時及び細断後加熱処理前のいずれであってもよい。好ましくは細断時に添加する。なお、細断物の加熱処理後にビタミンCを添加しても不快臭の抑制効果は得られない。
【0019】
(2)加熱工程
本加熱工程では、前記細断工程で得られるビタミンCが添加された細断物を加熱処理する。この加熱処理により、酵素を完全に失活させ、且つ殺菌処理を行うことができる。
【0020】
加熱は、チューブラー、ニーダー、スチームインジェクション等を用いて迅速に行うのが好ましい。これにより、野菜本来の品質を保持しつつ、不都合な加熱臭がつくのを防止することができる。加熱は、好ましくは品温80〜95℃で1〜20分程度行うのがよい。さらに、好ましい加熱方法として、前記細断工程後30分以内に加熱を開始し、4℃/分以上の昇温速度で80〜95℃に達温させて加熱する方法が挙げられる。これにより、完全に酵素が失活され、香味が良好で不快臭がなく、且つ十分殺菌された保存性のよい野菜ジュースが得られる。
【0021】
(3)搾汁工程
本搾汁工程では、前記加熱工程で得られる加熱細断物を搾汁して野菜搾汁液を得る。搾汁は常法に従って行われる。搾汁器としては、パルパー、スクリュープレス、ギナー、デカンター、一軸又は二軸(同方向もしくは異方向回転型)エクストルーダー等の飲食品分野で搾汁、搾油に通常用いられるものを適宜組み合わせて用いることができる。搾汁に際しては、搾汁液の品質を向上させるため、不活性ガス雰囲気下、たとえば窒素ガス雰囲気下で搾汁することもできる。
【0022】
本搾汁工程で得られる野菜搾汁液は、次いで後述する濃縮工程で濃縮されるが、それに先だって、必要に応じて該野菜搾汁液をさらに加熱殺菌処理に供することができる。加熱殺菌にはレトルト殺菌をはじめ管型熱交換機、平型熱交換機、蒸気吹き込み式加熱機等を用いることができる。また、加熱条件は、前記加熱工程におけるのと同様である。
【0023】
(4)濃縮工程
本濃縮工程では、前記搾汁工程で得られる野菜搾汁液を濃縮する。これにより、アブラナ科の野菜の不快臭の原因物質のひとつであるスルフィド化合物を除去することができる。すなわち、スルフィド化合物は沸点が低いため、濃縮により蒸散させることができる。なお、良好なフレーバーまで蒸散させないようにするため、30℃〜60℃で濃縮を行うことが好ましい。濃縮は常法に従って行い、減圧濃縮器、撹拌型薄膜式濃縮器、プレート式濃縮器等の通常用いられる濃縮器を適宜選択して使用することができる。また、濃縮倍率は1.1倍以上、より好ましくは2〜10倍程度とするのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、原料野菜の細断工程時に一定量以上のビタミンC水溶液を添加することにより、不快臭の原因物質の一つであるイソチオシアネート化合物の生成に関与する酵素であるミロシナーゼの活性を抑え、イソチオシアネート化合物に由来する硫黄臭に基づく不快臭の発生を防ぐことができる。また、得られる野菜搾汁液をさらに濃縮することにより、もう一つの不快臭の原因物質であるスルフィド化合物を除去することができる。よって、本発明の製造方法により、硫黄臭等の不快臭が大幅に低減された野菜ジュースを得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。本実施例では、アブラナ科の野菜としてキャベツを用いてキャベツジュースを調整し、得られたキャベツジュースの不快臭の減少効果を評価する方法として、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて不快臭原因物質であるイソチオシアネート化合物(代表として含有量の多いアリルイソチオシアネート(アリルITC))のキャベツジュース中の存在量を測定し、また、予め選抜した専門パネラーを対象とした官能テストを行い、アリルITC量の測定結果と官能テストの結果とを併せて不快臭の評価の指標とした。アリルITC量の測定方法と官能テストの実施方法を以下に示す。
【0026】
(1)アリルITC量の測定方法
<サンプルの前処理>
得られたキャベツジュースをRI3.0に希釈し、トラッピング用フラスコに150g採取した。予め調製した内部標準(I.S.:0.012%O−ジクロロベンゼン/ベンジルアルコール)を25μl添加した後、フラスコにフレーバー吸着管(Tenax-GC)を接続し、窒素を通気しながら湯浴中(45℃)で90分間フレーバートラッピングを行った。トラップ終了後、吸着管に直接窒素を通気し、30分間乾燥を行った。なお、フレーバートラップ時及び乾燥時の窒素流量は、いずれの場合も40ml/分とした。
【0027】
<フレーバー中のアリルITC量の測定>
以下に示す装置及び条件により、トラップしたフレーバー中のアリルITC量を測定した。
(1)本体:島津製作所製ガスクロマトグラフィー、GC−17A
(2)検出器:FID(水素炎イオン化検出器)[H2;0.5kg/cm2、空気;0.5kg/cm2]
(3)カラム:URBON HR-Thermon 600T;8mm(直径)×50mm、0.24mm(直径)×50mm
(4)サンプル注入器:島津製作所製、FLS−3(180〜250℃)
(5)注入口温度:250℃
(6)検出器温度:250℃
(7)オーブン温度:40℃(初期温度)、3℃/分(昇温速度)、230℃(10分)
(8)注入法:スプリット注入、スプリット比;1/60
(9)キャリアガス:He(40ml/分)
【0028】
(2)官能テストの実施方法
官能テストは、専門パネラー40名(男性20名、女性20名)により行い、実施例1のキャベツジュースと他の各例のキャベツジュースとを2点比較して、どちらが好ましいかを官能評価した。結果は、0.1%の危険率で実施例1のキャベツジュースが好ましいと評価されたことを「*」で示し、5%の危険率で実施例1のキャベツジュースが好ましいと評価されたことを「**」で示した。
【0029】
【実施例1】
キャベツを、カッターで切断して平均径20mmの細断物とし、細断時にビタミンC水溶液(ビタミンC濃度20mM)を霧吹き器により噴霧して、キャベツ100gあたりのビタミンC添加量として100mgとなるように添加した。次いで、前記細断物をチューブラーヒーターにより品温85℃で3分間加熱し、得られた加熱細断物を二軸搾汁機で搾汁してキャベツ搾汁液を得た。得られた搾汁液は品温85〜90℃で5分間加熱し、さらに減圧濃縮器を用いて40℃にて5倍に濃縮してキャベツジュースを得た。得られたキャベツジュースについて、上記の方法によりアリルITC量を測定し、官能テストを実施した。結果を表1に示す。
【0030】
【実施例2】
ビタミンC水溶液を、キャベツを細断した後加熱前に該細断物に添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、実施例1と同様の方法でアリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表1に示す。
【0031】
【実施例3】
ビタミンC添加量がキャベツ100gあたり50mgとなるようにビタミンC水溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表1に示す。
【0032】
【実施例4】
ビタミンC添加量がキャベツ100gあたり500mgとなるようにビタミンC水溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表1に示す。
【0033】
【比較例1】
ビタミンC水溶液を添加することなく細断、搾汁を行った以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0034】
【比較例2】
ビタミンC水溶液を、キャベツを細断し加熱処理した後に細断物に添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0035】
【比較例3】
ビタミンC添加量がキャベツ100gあたり5mgとなるようにビタミンC水溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0036】
【比較例4】
ビタミンC添加量がキャベツ100gあたり5gとなるようにビタミンC水溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0037】
【実施例5】
ビタミンC水溶液の濃度を2mMとした以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0038】
【実施例6】
ビタミンC水溶液の濃度を2Mとした以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表2に示す。
【0039】
【比較例5】
キャベツ細断物を平均径5mmとした以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調整し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表3に示す。
【0040】
【比較例6】
キャベツ細断物を平均径150mmとした以外は、実施例1と同様にして搾汁を試みたが、細断物が大きく搾汁できなかった。
【0041】
【比較例7】
キャベツ細断時にビタミンC水溶液の代わりにクエン酸水溶液(pH2.89)を、クエン酸添加量がキャベツ100gあたり46mgとなるように添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表3に示す。なお、ここで用いたクエン酸は、ビタミンC水溶液(濃度20mM)と同じpHとなるように濃度調製したものである。
【0042】
【比較例8】
キャベツ細断時にビタミンC水溶液の代わりに酒石酸水溶液(pH2.89)を、酒石酸添加量がキャベツ100gあたり47mgとなるように添加した以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製し、アリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表3に示す。なお、ここで用いた酒石酸は、ビタミンC水溶液(濃度20mM)と同じpHとなるように濃度調製したものである。
【0043】
【比較例9】
得られたキャベツ搾汁液を加熱処理後、濃縮を行わない(濃縮倍率1倍)以外は、実施例1と同様にしてキャベツジュースを調製した。得られたキャベツジュースについてアリルITC量の測定及び官能テストを行った。結果を表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
これらの結果から、ビタミンC水溶液を添加して細断することにより調製したしたキャベツジュースは、無添加の場合と比べ、アリルITCの生成量が抑制されていることがわかる(実施例1及び比較例1)。また、ビタミンC水溶液を添加する時期については、細断時であっても細断後であっても良好な効果が認められるが、細断時に添加する方がアリルITCの生成抑制効果がより強いこと、及び加熱後の添加では効果が認められないことがわかる(実施例1〜2及び比較例2)。
【0048】
キャベツに対するビタミンC添加量(絶対量)については、少量(5mg)添加した場合、アリルITCの生成量は増大し、官能評価も好ましいものではなかった(比較例3)。これはミロシナーゼに対するビタミンC濃度が低くなり、ミロシナーゼが活性化したためであると考えられる。また、過剰量(5g)添加した場合、ミロシナーゼの活性が抑制されたため、アリルITCの生成が抑制されたが、ビタミンC由来の酸味が強すぎ、官能上嗜好性は低下した(比較例4)。
【0049】
ビタミンC水溶液の濃度については、低濃度(2mM)のビタミンC水溶液の添加では濃度20mMのものを添加した場合と同様に、アリルITCの生成抑制効果が確認された(実施例5)。ただし、キャベツに対する加水量が多くなり、官能評価は若干劣る結果となった。
【0050】
一方、高濃度(2M)のビタミンCを添加した場合は、ある程度アリルITCの生成抑制効果が確認された(実施例6)。ただし、官能テストの結果は若干劣るものであった。これは、2Mの濃度でキャベツ100gあたり100mgのビタミンCを添加するためには、キャベツ100gあたり0.3mlのビタミンC水溶液を添加することになり、結果的にキャベツ全体にビタミンCが容易に行き渡らず、イソチオシアネート生成抑制効果が実施例1〜5ほどには十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
【0051】
細断物の大きさについては、細断物が微細な大きさ(平均5mm)になるようにキャベツを細断した場合、イソチオシアネート生成抑制効果は確認されなかった(比較例5)。加熱後の添加では効果が認められないこと(比較例2)と合わせ鑑みれば、ミロシナーゼは細断により植物の細胞が破壊されると同時に働くことが推測される。また、細断物が大きすぎる(平均径150mm)と搾汁工程等での処理が困難となり、本発明においては適さない(比較例6)。
【0052】
また、クエン酸及び酒石酸を添加した場合、官能テストの結果及びアリルITC生成量から、不快臭の抑制効果は確認されなかった(比較例7〜8)。ビタミンC水溶液と同じpHのクエン酸、酒石酸を添加してもアリルITCの生成量が減少しなかったことから、ミロシナーゼ活性にはpHが関与していないことが示唆される。
【0053】
また、濃縮処理を行わなかった場合、キャベツジュース中のアリルITC量が比較的多く、また官能テストの結果は好ましくなかった(比較例9)。このことは、濃縮により一部のアリルITC及びスルフィド化合物が除去されうることを示唆するものである。
【0054】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、野菜ジュース製造工程において原料野菜の細断時又は細断後にビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加することにより、キャベツ等のアブラナ科特有の硫黄臭等の不快臭を抑制することができる。
Claims (2)
- アブラナ科に属する野菜を細断して平均径20〜100mmの細断物とし、且つ該細断時又は細断後にビタミンCを、前記細断物100gに対して50〜500mg添加する細断工程、前記細断工程で得られる細断物を加熱処理する加熱工程、前記加熱工程で得られる加熱細断物を搾汁する搾汁工程、及び前記搾汁工程で得られる野菜搾汁液を濃縮する濃縮工程を含むことを特徴とする、野菜ジュースの製造方法。
- 前記細断工程において、ビタミンCを、濃度0.003〜1MのビタミンC水溶液として添加することを特徴とする、請求項1記載の野菜ジュースの製造方法。
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