JP2015165822A - ブレンドトマトジュース及びその製造方法 - Google Patents

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章人 竹中
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圭詞 木谷
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由喜夫 関根
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式久 高田
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Abstract

【課題】リコピンを効率よく摂取することができ、しかも生食用トマトのフレッシュな香気が引き立ったトマトジュース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁して得られた生食用トマト由来トマトジュース;及び加工用トマト由来トマトジュースを含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュースに関する。本発明はまた、生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満及び濃縮還元トマトジュースを50重量%以上98重量%未満含有するブレンドトマトジュースであって、cis−3−ヘキセナールを1μg/L以上及びtrans−2−ヘキセナールを1μg/L以上含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュースに関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、2種以上のトマトジュースをブレンドして得られるブレンドトマトジュース及びその製造方法に関する。より特定すれば、本発明は、高リコピン含量等の加工用トマト由来トマトジュースの特徴を維持しつつ、生食用トマトの風味を付与したブレンドトマトジュース及びその製造方法に関する。
近年の健康志向に伴い、抗酸化物質であり、がん予防効果や心筋梗塞発生リスクの低減作用等様々な効能が知られるリコピンの認知度が上がっている。また、リコピンの効率の良い摂取方法としては、単回の高濃度のリコピン摂取よりも少し低めの濃度でも継続的な摂取の方が有効であり、5mg/日の毎日の摂取でも血清リコピン濃度を上げることができることが近年の研究から明らかになっている。そして、サラダでトマトを食べるよりもリコピンを高濃度で効率よく容易に摂取できるトマトジュースは注目を集めている(非特許文献1及び2)。
しかしながら、一般的なトマトジュースは、リコピン含量が高いという利点はあるが、特有の香味(トマト缶詰の風味、青臭い風味、枯れ草のような臭い、加熱臭、ムレ臭等)のために飲みにくいという理由で苦手な人も多い。サラダのトマトは好きだが、トマトジュースは全く飲まない人も存在しており、トマトジュース特有の香味が、継続的なトマトジュース摂取の妨げとなっている。
トマトの特有の香味を改善する試みとして、特許文献1は、トマトをエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)で処理することを特徴とするトマト香気の増強方法及び香味の増強されたトマト酵素処理物の製造方法を開示する。
特許文献2は、トマト果実を洗浄、破砕、予備加熱、搾汁して得られるトマト搾汁液の製造方法であって、該予備加熱が昇温速度30〜50℃/分で60〜70℃まで加熱する加熱処理であることを特徴とする、生のトマト果実が有するフレッシュな香気が引き立ったトマト搾汁液の製造方法を開示する。
特許文献3は、トマト果実を洗浄、破砕、予備加熱、搾汁して得られるトマト搾汁液の製造方法であって、トマト果実を破砕する前に、あらかじめ該トマト果実を加熱処理(30〜80℃で1〜10分)することを特徴とするトマト搾汁液の製造方法を開示する。
特許文献4は、トマトのような中鎖アルデヒドを含む食品の香味を改良する方法として、乳酸菌を接触させて酵素反応により前記食品中の中鎖アルデヒドをアルコールに還元させることを特徴とする方法を開示する。
一方、一般的なトマトジュースは加工用トマトを原料として製造されているが、加工用トマトは生食用トマトとは品種や特性の面で大きく異なることが知られている(特許文献2)。農林水産省が定めた加工トマト原料規格も存在する。
特許第4299789号公報 特開2003−179号公報 特開2002−330719号公報 特開平9−205999号公報
日本食品保蔵科学会誌、VOL.33、No.3、143−157(2007) 日本食品保蔵科学会誌、VOL.33、No.4、223−232(2007)
このように、従来のトマトジュースは、リコピン含量が高いものの、特有の香味が問題となっていた。そして、トマトの香味を改善する方法として特許文献1〜4に開示された方法はいずれもリコピンの効率よい摂取及びトマトの品種や種類に着目した技術ではなかった。
以上のような背景のもと、本発明は、リコピンを効率よく摂取することができ、しかもフレッシュなトマトの香気が引き立った新たなトマトジュース及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁して得られた生食用トマト由来トマトジュースと、加工用トマト由来トマトジュースとをブレンドして得られるブレンドトマトジュースは、リコピン含量が高く、しかも特有の香味成分を含有することで生食用トマトのフレッシュな香気が引き立ったトマトジュースとなることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁して得られた生食用トマト由来トマトジュース;及び加工用トマト由来トマトジュースを含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュース;
[2]前記生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満;及び前記加工用トマト由来トマトジュースを50重量%以上98重量%未満含有する、上記のブレンドトマトジュース;
[3]cis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールから選択される香気成分を含有し、前記加工用トマト由来トマトジュースが濃縮還元トマトジュースである、上記のブレンドトマトジュース;
[4]生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満及び濃縮還元トマトジュースを50重量%以上98重量%未満含有するブレンドトマトジュースであって、cis−3−ヘキセナールを1μg/L以上及びtrans−2−ヘキセナールを1μg/L以上含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュース;
[5]前記生食用トマト由来トマトジュースが、生食用トマトを破砕後15〜35℃の温度条件下で5〜60分保持し、その後、加熱工程を経ずに搾汁して得られたトマトジュースである、上記のブレンドトマトジュース;
[6]以下の工程:生食用トマトを破砕して破砕物を得る破砕工程;破砕物を15〜35℃で5〜60分保持する保持工程;保持工程の後、加熱工程を経ずに破砕物を搾汁して生食用トマト由来トマトジュースを得る搾汁工程;及び2重量%以上50重量%未満の前記生食用トマト由来トマトジュースと、50重量%以上98重量%未満の加工用トマト由来トマトジュースとをブレンドしてブレンドトマトジュースを得るブレンド工程;を含む、ブレンドトマトジュースの製造方法;
[7]上記の製造方法により得られる、リコピン含量が5mg/100g以上であり、cis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールを含有するブレンドトマトジュース。
本発明によれば、リコピンを効率よく摂取することができ、しかも生食用トマトのフレッシュな香気が引き立ったトマトジュース及びその製造方法を提供することができる。本発明によれば、生食用トマト由来トマトジュースと加工用トマト由来トマトジュースをブレンドすることにより、上記のトマトジュースを安価に提供することができる。本発明のトマトジュースは、抗酸化物質であり、がん予防効果や心筋梗塞発生リスクの低減作用等様々な効能が知られるリコピンの、効率よく継続的な摂取に役立つ。
図1は、実施例4においてGC/MSを用いてブレンドトマトジュースの香気成分を分析した結果を示す。
本発明において、ブレンドトマトジュースとは、2種以上のトマトジュースをブレンドして得られるトマトジュースである。本発明のブレンドトマトジュースは、生食用トマト由来トマトジュース及び加工用トマト由来トマトジュースの両方を含有する。
本発明のブレンドトマトジュースは、香味の観点から、好ましくは生食用トマト由来トマトジュースを1重量%より多い量含有する。また、リコピンを効率よく摂取するという観点から、好ましくは加工用トマト由来トマトジュースを50%以上含有する。本発明のブレンドトマトジュースは、香味及び製造コストを考慮し、より好ましくは、生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満及び加工用トマト由来トマトジュースを50重量%以上98重量%未満含有し、特に好ましくは、生食用トマト由来トマトジュースを3重量%以上20%未満及び加工用トマト由来トマトジュースを80重量%以上97重量%未満含有する。
本発明のブレンドトマトジュースは、飲用によりリコピンを効率よく摂取するという観点から、リコピン含量が好ましくは5mg/100g以上であり、より好ましくは7mg/100g以上10mg/100g以下である。リコピン含量が5mg/100g以上であれば、一日にコップ一杯(200mL程度)の飲用で血清リコピンを維持することができるトマトジュースとなる。また、リコピンの摂取量を30mg以上にしても、吸収されるリコピン量は、摂取量ほどは上がらず、吸収率としては下がることが知られている。(非特許文献2参照)。
本発明において、トマトジュースの原料となるトマトとして生食用トマトと加工用トマトを区別して使用する。生食用トマトと加工用トマトは、非特許文献1等に記載のように、以下のような様々な違いを有する。
生食用トマトは主に青果品として市場で消費される主に桃色系品種のトマトであり、低リコピンであるが食味が良いという特徴を有する。生食用トマトを100%使用したトマトジュースも存在しているが、非常に高価なものが多く、また生食用トマトのリコピン含量が約3mg/100gであるため、リコピンの効率良い摂取には不向きである。本発明において、生食用トマト由来トマトジュースの原料として、大型で柔らかい果実である桃色系品種の桃太郎、りんか409、麗容、ぜいたくトマトなどを用いることができるが、通年で入手可能な桃太郎が望ましい。
加工用トマトは、赤色系品種のトマトであり、高いリコピン含量をもつ反面、特有の香味や青臭みをもっている。本発明において、加工用トマト由来トマトジュースの原料としては、農林水産省が定めた加工トマト原料規格の基準(着果のまま(樹上で)完熟したものであること、色調はトマト標準色と同等以上であること等)を満たすものであれば特に限定されないが、リコピン含量が7mg/100g以上のものが好ましい。例えば、赤色系品種であるNDM051、カゴメ77などを用いることができる。
ブレンドトマトジュースに使用する生食用トマト由来トマトジュースは、生食用トマト果実を原料とし、洗浄、破砕及び搾汁工程を経て製造することができる。洗浄工程は、例えば、ブラシ洗浄、スプレー洗浄、エアーバブリング洗浄などの通常の洗浄方法を用いて行うことができる。破砕工程についても、通常のトマト破砕方法を用いて行えばよく、例えば、チョッパー、ハンマー・クラッシャー、ディスインテグレータを用いた方法により行うことができる。
香味の良いブレンドトマトジュースを提供するという観点から、破砕工程で得られた破砕物の搾汁に先立って、保持工程を行うことが好ましい。保持工程は、破砕物を15〜35℃で5〜60分保持することにより行うことができる。
理論に束縛されるものではないが、この15〜35℃の温度範囲は口腔内温度帯と同等の温度であり、トマト果実を食す時の口腔内と同じ温度条件下でトマト破砕物を保持及び搾汁することで、生食用トマトがもつ内在酵素群(リポキシゲナーゼ等)を人が食べる温度と類似の条件下で活性化させ、生食用トマト果実から自然に発生するフレッシュな香気を十分に引き立たせることができると考えられる。保持工程の際の温度が高すぎると(例えば、40℃付近)、微生物が増殖しやすくなりトマトジュースが腐敗する恐れがある。
生食用トマトの香りを強め、かつ、製造を容易に行うという観点から、例えば、破砕工程で得られた破砕物をそのまま15〜35℃(好ましくは20〜30℃)で、5〜60分(好ましくは20〜40分、例えば、30分程度)、保持することにより、保持工程を行うことができる。
搾汁工程は破砕したトマト果実から果皮、種子、芯、へたの除去やパルプ粒子の調整などを行うことができる通常の搾汁機を用いて常法により行うことができ、例えば、ブラウン型(パドル型)又はバタフライ型のパルパーフィニッシャーなどを用いて行うことができる。本発明の好ましい態様において、生食用トマト由来トマトジュースは加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁して得られる。
一般的なトマトジュースの製造方法では、トマトジュースを洗浄及び破砕後、60〜80℃の予備加熱を行い、予備加熱後に搾汁が行われる。予備加熱を行うことにより、トマトの内在酵素であるペクチンメチルエステラーゼ及びポリガラクチュロナーゼを作用させてトマトジュースの粘度を低下させ、ジュースに適した粘度とする。また、青臭生成に関わる内在酵素のリポキシゲナーゼは過剰に作用すると青臭みの強いトマトジュースとなるため、予備加熱を行うことによりリポキシゲナーゼの働きを抑制する。
一方、本発明において、生食用トマト由来トマトジュースは加工用トマト由来トマトジュースとブレンドすることを前提として製造されるものであり、好ましくは、予備加熱等の加熱工程を経ずに搾汁して得られ、より好ましくは、破砕した生食用トマト果実を15〜35℃温度条件で5〜60分保持後に加熱工程を経ずに搾汁して得られる。加熱工程を経ずに搾汁して得られた生食用トマト由来トマトジュースは、加工用トマト又は生食用トマトを原料として予備加熱後に搾汁されたトマトジュースと比較して全く香味が異なり、生食用トマト由来のフレッシュな香味が増強したものとなる。また、加工用トマトを原料として用いて、15〜35℃温度条件で5〜60分保持後、加熱工程を経ずに搾汁して得られるトマトジュースと比較しても全く香味が異なり、生食用トマト由来のフレッシュな香味が増強したものとなる。
本発明において、加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁することで、例えば、脂肪酸系香気成分の生成に関与する内在酵素群(例えば、リポキシゲナーゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼ等)が活性化し、リノレン酸やリノール酸等の脂肪酸からフレッシュな香気に関わるcis−3−ヘキセナール、trans−2−ヘキセナール等の香気成分が生成され、トマトのフレッシュな香気が引き立った生食用トマト由来トマトジュースを得ることができる。また、上述の保持工程を行うことで、上記内在酵素群が保持工程における温度範囲で活性化し、トマトのフレッシュな香気がさらに引き立った生食用トマト由来トマトジュースを得ることができる。
ブレンドトマトジュースに使用する加工用トマト由来トマトジュースは、加工用トマト果実を原料とし、洗浄、破砕及び搾汁工程を経て常法により製造することができる。加工用トマト由来トマトジュースとしては、ストレートジュース(シーズンパック品等)及びトマトペーストやトマトピューレから濃縮還元した濃縮還元トマトジュースのいずれを使用してもよい。製造コストを抑えるという観点から、濃縮還元トマトジュースを用いることが好ましい。濃縮還元トマトジュースはストレートジュースと比較してトマトのフレッシュな香気がより弱く、フレッシュな香気に関わるcis−3−ヘキセナール、trans−2−ヘキセナール等の香気成分を通常含有しないため、生食用トマト由来トマトジュースをブレンドすることによる香味の変化がより顕著に感じられる。ブレンドに用いる加工用トマト由来トマトジュースは、好ましくはリコピン含量7mg/100g以上である。なお、一般的な加工トマト由来トマトジュースのリコピン含量は10mg/100g以上である。
次に、加工用トマト由来トマトジュースと上記方法で得られた生食用トマト由来トマトジュースを上述の比率でブレンドしてブレンドトマトジュースを得る。
上記の手法によりブレンドトマトジュースを得た後、所望により食塩を添加して有塩トマトジュースとすることもできる。一般に、無塩トマトジュースの方が、有塩トマトジュースよりも、トマトのスッキリした味わいやフレッシュな香りが望まれる傾向があるため、本発明のブレンドトマトジュースは無塩トマトジュースであることが好ましい。
ブレンドトマトジュースを得た後、殺菌、充填等を通常のトマトジュースの製造と同様の手法で行うことができる。
以上の製造方法で得られた本発明のブレンドトマトジュースは、香味の観点から、好ましくは、cis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールから選択される香気成分を含有し、好ましくは上記香気成分をいずれも含有する。本発明のブレンドトマトジュースは、cis−3−ヘキセナールを好ましくは1μg/L以上10μg/L以下含有し、より好ましくは2μg/L以上5μg/L以下含有する。また、trans−2−ヘキセナールを好ましくは1μg/L以上30μg/L以下含有し、より好ましくは3μg以上10μg/L以下含有する。香気成分の含有量が多すぎるとかえって香味の悪いトマトジュースとなる。上記の香気成分の量は、例えば、後述の実施例に記載のように、GC/MS等を用いて常法により測定することができる。
加工トマトのみを原料とする従来の濃縮還元トマトジュースには、通常これらの香気成分は検出されず、上述の生食用トマト由来トマトジュースをブレンドすることでこれらの香気成分が付与され、生食用トマトのフレッシュな香気が引き立ったブレンドトマトジュースを得ることができる。上述の生食用トマト由来トマトジュースは、フレッシュな香気に関与する香気成分が増強されている為、微量でもこれらの香気成分を十分に付与することができ、リコピン含量の高い加工トマト由来トマトジュースに微量配合することで、リコピンを効率よく摂取でき、しかも生食用トマトのフレッシュな香気が引き立ったブレンドトマトジュースを安価に提供することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1:ブレンドトマトジュースの製造)
水でバブリング洗浄した生食用トマト(熊本県産桃太郎:熟度ステージ4〜5)の果実12kgをディスインテグレータ((株)精研社製)で破砕し、生食用トマト破砕物を得た後、20℃で30分間保持した。その後、生食用トマト破砕物をブラウン型パルパーフィニッシャー((株)精研社製)を用いてそのままの温度で搾汁を行い、生食用トマト由来トマトジュースを得た。
次に、トマトペースト(原料:1等品加工用トマト(アメリカ産))にイオン交換水を加えて糖度(Bx)5.0まで濃縮還元した濃縮還元トマトジュース(加工用トマト由来トマトジュース)を得た。得られた加工用トマト由来トマトジュース95重量%と先ほどの生食用トマト由来トマトジュース5重量%をブレンドし、トマトジュースについて通常行われる殺菌充填を行うことで缶入りのブレンドトマトジュースを得た。このような製法で得られたブレンドトマトジュースは、生食用トマトのフレッシュな香味を有し、すっきりした味わい、フルーティ感及びトマトの甘味の感じられるトマトジュースとなった。
(実施例2:官能試験)
実施例1と同様の手法により、以下の表2に記載の各配合率で加工用トマト由来トマトジュースと生食用トマト由来トマトジュースをブレンドし、ブレンドトマトジュースを得た。各ブレンドトマトジュースの香味を検証するために、識別能力を有するパネル20名により官能試験を行った。試験方法は、実施例1で得られたブレンド前の濃縮還元トマトジュースをコントロールとして、1:2点識別評価法を用いて、表2の記載の各ブレンド比率で配合した各ブレンドトマトジュースとコントロールとの間に香味の差があるかを盲試験により評価する方法を用いた。表2に官能試験の結果を記載する。
表2に記載したとおり、官能試験の結果、生食用トマト由来トマトジュースの配合率が2重量%のブレンドトマトジュースでも、危険率5%以下で有意に香味が識別されており、生食用トマト由来トマトジュースの配合率が3重量%のブレンドトマトジュースは、危険率1%以下で有意に香味が識別された。識別理由としては、コントロールと比べ、トマトのフレッシュ感がある、すっきりした味わいである、フレッシュな青臭みを感じる、フルーティである、ほのかに甘味を感じる等の意見が主に得られた。生食用トマト由来トマトジュースを2重量%という微量ブレンドしたブレンドトマトジュースでも、加工トマト由来トマトジュースと比べフレッシュな香味となることがわかった。なお、コントロールである濃縮還元トマトジュースの香味については、普通のトマトジュースの味、トマト缶詰の風味、ムレ臭がする、加熱臭を感じる等の意見が主に得られた。
(実施例3:リコピン含量の測定)
実施例1と同様の手法により、以下の表3に記載の各配合率で加工用トマト由来トマトジュースと生食用トマト由来トマトジュースをブレンドし、得られたブレンドトマトジュースのリコピン含量の測定を行った。測定方法は、アセトンヘキサン溶媒抽出法でトマトジュースより抽出したリコピン抽出液の吸光度を分光光度計にて測定し、試料中のリコピン濃度を計算により算出した。
表3に各ブレンドトマトジュースにおける加工用トマト由来トマトジュースと生食用トマト由来トマトジュースとの配合率とリコピン含量の測定結果を示す。
表3に記載したように、100%生食用トマト由来トマトジュースのリコピン含量は3mg/100gと低いが、リコピン含量が7mg/100g程度の加工用トマト由来トマトジュースとブレンドした場合、生食用トマト由来トマトジュースの配合率が50重量%(加工用トマト由来トマトジュースの配合率が50重量%)のブレンドトマトジュースのリコピン含量は5mg/100g程度であった。加工用トマト由来トマトジュースの原料となる加工トマトはJAS規格によりリコピン含量の下限値が7mg%(mg/100g)以上のものと規定されていることも考慮すれば、生食用トマト由来トマトジュースの配合率が50重量%以下(加工用トマト由来トマトジュースの配合率が50重量%以上)のブレンドトマトジュースは、リコピン含量が5mg/100g以上となることが分かった。
(実施例4:香気成分分析)
実施例3で得られた10%ブレンドトマトジュース及び5%ブレンドトマトジュース、ならびに実施例1で得られたブレンド前の濃縮還元トマトジュースについて、GC/MSを用いた香気成分分析により、cis−3−ヘキセナール、trans−2−ヘキセナールを測定した。トマトジュース中の香気成分をGERESTEL Twisterを使用したSBSE法で吸着させ、Agilent 7890GC/5975MSDを用いて以下の条件でGC/MS分析を行った。
使用カラム:InertCap 5MS(微極性カラム)
昇温条件:25℃/分で130℃、3℃/分で220℃、25℃/分で280℃
図1にGC/MSを用いたブレンドトマトジュースの香気成分分析結果を示す。
図1に示したとおり、一般的に濃縮還元トマトジュースでは検出されないフレッシュな香気に関わる香気成分であるcis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールが、実施例3で得られた10%ブレンドトマトジュース及び5%ブレンドトマトジュース中に検出された。このことから、実施例1に記載の製法で得られた生食用トマト由来トマトジュースをブレンドすることで、これら成分が付与されたことがわかった。なお、cis−3−ヘキセナールの閾値は0.25ppb(文献値)と微量であることが知られており、1μg/L以上の含有量でも香気に影響を与えると考えられる。

Claims (7)

  1. 加熱工程を経ずに生食用トマトを搾汁して得られた生食用トマト由来トマトジュース;及び
    加工用トマト由来トマトジュース
    を含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュース。
  2. 前記生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満;及び
    前記加工用トマト由来トマトジュースを50重量%以上98重量%未満
    含有する、請求項1に記載のブレンドトマトジュース。
  3. cis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールから選択される香気成分を含有し、
    前記加工用トマト由来トマトジュースが濃縮還元トマトジュースである、請求項1又は2に記載のブレンドトマトジュース。
  4. 生食用トマト由来トマトジュースを2重量%以上50重量%未満及び濃縮還元トマトジュースを50重量%以上98重量%未満含有するブレンドトマトジュースであって、cis−3−ヘキセナールを1μg/L以上及びtrans−2−ヘキセナールを1μg/L以上含有し、リコピン含量が5mg/100g以上であるブレンドトマトジュース。
  5. 前記生食用トマト由来トマトジュースが、生食用トマトを破砕後15〜35℃の温度条件下で5〜60分保持し、その後、加熱工程を経ずに搾汁して得られたトマトジュースである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブレンドトマトジュース。
  6. 以下の工程:
    生食用トマトを破砕して破砕物を得る破砕工程;
    破砕物を15〜35℃で5〜60分保持する保持工程;
    保持工程の後、加熱工程を経ずに破砕物を搾汁して生食用トマト由来トマトジュースを得る搾汁工程;及び
    2重量%以上50重量%未満の前記生食用トマト由来トマトジュースと、50重量%以上98重量%未満の加工用トマト由来トマトジュースとをブレンドしてブレンドトマトジュースを得るブレンド工程;
    を含む、ブレンドトマトジュースの製造方法。
  7. 請求項6に記載の製造方法により得られる、リコピン含量が5mg/100g以上であり、cis−3−ヘキセナール及びtrans−2−ヘキセナールを含有するブレンドトマトジュース。
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"3・13・8 トマトフレーバー", 特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料, JPN6016021075, 2000, ISSN: 0003332974 *
阿部 一博 ABE KAZUHIRO ABE KAZUHIRO: "消費者の食のニーズを満たす食資源の役割ならびに野菜・果実の品質特性と消費動向▲3▼", 食品と科学 46巻3号, vol. 第46巻, JPN6016021073, 2004, ISSN: 0003332973 *

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