JP5162009B2 - 梅酒様アルコール飲料製造方法 - Google Patents

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本発明は、梅酒様アルコール飲料製造方法に関する。
梅酒は、青梅を、ホワイトリカーや焼酎、ブランデーなどの蒸留酒に漬け込むことで作られる酒類である。梅酒には、華やかな香りと風味があり、また、砂糖とアルコールによって梅の成分が抽出されていることから健康にもよいとされ、古今東西を問わず広く親しまれている。
梅酒は、古くから家庭で作られており、一般的には、梅実と、30〜40度のアルコール度数の蒸留酒と、氷砂糖とをそれぞれ所定分量密閉容器に入れ、1年程度漬け込んで製造されている。梅酒は漬け込むほどに熟成してこくが出るとされ、3〜10年漬け込む場合もある。
工業的にもこれとあまり変わらない態様で製造されている。例えば、図2に示すように、漬込ステップS11にて、水と、梅実と、果糖ぶどう糖液糖と、原料用アルコールとを約6ヶ月〜1年間漬込タンクで漬け込み、その後、熟成ステップS12にて、梅実を取り出して約2年間熟成タンクで熟成させる。しかる後、調合ステップS13にて、熟成させた梅酒に糖類や酸味料などを調合し、澱下げステップS14にて澱下げを行い、ろ過ステップS15にてろ過を行い、殺菌ステップS16にて殺菌し、最後に充填ステップS17にてビンや缶、ペットボトルなどの容器に充填して製品としている。
工業的に梅酒を製造する場合、漬け込み期間や熟成期間(これらをまとめた期間を製造期間という。)が長くなるとコスト増の要因になるため、製造期間を短くする努力がなされている。
例えば、特許文献1には、梅酒の製造方法として、プロトペクチナーゼを含む液体で梅実を処理した後、氷砂糖などの甘味性糖類を含むエチルアルコールに漬け込む旨が記載されている。また、特許文献1には、プロトペクチナーゼが不溶性のペクチン質を分解するため、熟成期間を5〜6ヶ月程度に短縮できる旨と、6ヶ月程度熟成させることでまろやかになり、官能評価が高くなった旨が記載されている。
他方、例えば、特許文献2には、梅酒の製造方法として、(a)青梅を凍結し、凍結物を粉砕し、粉砕物を抽出有効期間アルコールに浸漬することを含む、青梅凍結粉砕浸漬酒を製造する工程と、(b)熟成梅を凍結し、凍結物を粉砕し、粉砕物を抽出有効期間アルコールに浸漬することを含む、熟成梅凍結粉砕浸漬酒を製造する工程と、(c)前記青梅凍結粉砕浸漬酒及び前記熟成梅凍結粉砕浸漬酒を混合する工程とを含む旨が記載されている。なお、特許文献2には、抽出有効期間として、例えば、7日未満とすることが記載され、(b)の工程で用いる熟成梅は、糖類を加えたアルコールに青梅を3〜6ヶ月前後浸漬し、梅の成分を溶出させたあとに取り出した梅果を使用する旨が記載されている。かかる特許文献2には、短い熟成期間で、フレッシュな香味を充分に有し、かつ、ボディ感や奥行き感等の呈味を強化した梅酒を提供することできると記載されている。
また、例えば、特許文献3には、梅酒の製造方法において、完熟梅および/または追熟梅を凍結処理し、果皮および/または果肉からなる部分のみが直接アルコール水溶液に接触した状態で、アルコール水溶液に浸漬することを特徴とする、顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法が記載されている。なお、この特許文献3において、完熟梅とは、通常梅酒製造に用いる青梅とは異なり、実が黄変し、フルーティー様の香り(ラクトン類、エステル類)を放つ状態の梅のことであり、樹上のもの、完熟して落下したもの、それらを採取後に追熟した実を含む旨が記載され、追熟梅とは、青梅を木から収穫後、15〜35℃で約2〜6日間保管熟成させたものをいうと記載されている。かかる特許文献3には、完熟香の香気成分であるγ−デカラクトンを200μg/L以上含有し、浸漬期間を6日〜2ヶ月とすることができる旨が記載されている。
近年では、これらの方法で製造されたアルコール度数約8〜20度の梅酒を水や炭酸水などで割って、アルコール度数を約3〜8度としたアルコール飲料の売れ行きも好調である。
特開2008−228578号公報 特開2007−195435号公報 特開2011−115118号公報
しかしながら、家庭で作られる方法、工業的に作られる方法、特許文献1〜3に記載の方法のいずれによってもなお、製品として売り出すことができるまで6ヶ月程度、さらに短縮したとしても、少なくとも6日間程度の製造期間を必要とするという問題がある。梅酒を使用したアルコール飲料の場合は、製造した梅酒を用いて更に水や炭酸水で割り、充填する工程が必要になることから、これより長い製造期間を必要とするという問題がある。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、熟成期間が不要で短い製造期間であるにも関わらず、梅酒の香味を備えた新規なアルコール飲料(梅酒様アルコール飲料)製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、熟成を経ない梅酒様アルコール飲料を製造するための梅酒様アルコール飲料製造方法であって、次の成分(A)および(B):(A)10ppm〜100ppmのベンズアルデヒド(B)3ppm〜10ppmのベンジルアルコールおよび0.1ppm〜1.0ppmのフルフラールを調合することを特徴とする。
また、本発明においては、非発泡性であるのが好ましく、アルコール度数が8度以上であるのが好ましい。
本発明によれば、熟成期間が不要で短い製造期間であるにも関わらず、梅酒の香味を備えた新規な梅酒様アルコール飲料製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る梅酒様アルコール飲料製造方法の内容を説明するフローチャートである。 従来の梅酒の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
以下、本発明に係る梅酒様アルコール飲料およびその製造方法を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明に係る梅酒様アルコール飲料は、熟成を経ない梅酒様アルコール飲料であって、次の成分(A)および(B)、すなわち(A)ベンズアルデヒド、(B)ベンジルアルコールおよびフルフラールのうちの少なくとも一方を含んでいる。
なお、本実施の形態において熟成を経ないとは、梅酒の製造において通常行われる数ヶ月から数年(例えば、6ヶ月から3年)といった期間をもって梅酒としての香り、味(これらを総称して香味という。)の向上や成分を抽出するような操作を行わないこと、つまり、漬込ステップと熟成ステップを行わないことをいう。
ベンズアルデヒドの香りは、アーモンド香などと表現されることが多い。本発明においては、梅酒的な香りを呈するのに重要な役割を担っており、これによって主に梅酒感を向上させている。
本発明におけるベンズアルデヒドの含有量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、10ppm以上が好ましい。ベンズアルデヒドの含有量は、例えば、より好ましくは、10〜100ppmであり、更に好ましくは、30〜70ppmである。なお、ベンズアルデヒドの含有量は、約50〜70ppmとするのが特に好ましい。
ベンズアルデヒドの含有量が10ppm未満であると梅酒感が弱いため、梅酒らしさが感じられなくなってしまうことがある。一方、ベンズアルデヒドの含有量が100ppmを超えると薬品的な臭いに感じられる場合があり、梅酒様アルコール飲料として好ましくない香味となることがある。
ベンジルアルコールの香りは、ジャスミン香などと表現されることが多い。本発明においては、華やかな香りを呈する役割を担っており、これによって主に芳醇感を向上させている。
本発明におけるベンジルアルコールの含有量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、1ppm以上が好ましい。ベンジルアルコールの含有量は、例えば、より好ましくは、1〜10ppmであり、更に好ましくは、3〜7ppmである。なお、ベンズアルデヒドの含有量は、約4ppmとするのが特に好ましい。
ベンジルアルコールの含有量が1ppm未満であると芳醇感が弱くなってしまうおそれがある。一方、ベンジルアルコールの含有量が10ppmを超えると、華やかな香りが強くなり過ぎ、梅酒様アルコール飲料として好ましくない香味となることがある。
フルフラールの香りは、熟成香や焦臭などと表現されることが多い。本発明においては、これによって主に熟成感を持たせている。
本発明におけるフルフラールの含有量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、0.1ppm以上が好ましい。フルフラールの含有量は、例えば、より好ましくは、0.1〜1ppmであり、更に好ましくは、0.3〜0.7ppmである。なお、フルフラールの含有量は、約0.5ppmとするのが特に好ましい。
フルフラールの含有量が0.1ppm未満であると熟成感が弱くなってしまうおそれがある。一方、フルフラールの含有量が1.0ppmを超えると老化臭が感じられるようになるので梅酒様アルコール飲料として好ましくない香味となることがある。
ベンズアルデヒドと、ベンジルアルコールと、フルフラールの含有量は、これを供給する原料の分量を調整するなどして適宜に調節することができる。かかる原料としては、梅果汁、梅濃縮果汁、梅エキス、香料などが挙げられる。
ここで、梅果汁は、梅果実を洗浄し、加熱処理し、搾汁することによって得ることができる。
梅濃縮果汁は、梅果実を洗浄し、加熱処理し、搾汁し、遠心分離し、濃縮することによって得ることができる。
梅エキスは、梅果汁を加熱濃縮処理することによって得ることができる。
香料は、市販品を購入して用いることができる。
なお、前記した梅果汁、梅濃縮果汁および梅エキスも香料と同様、市販品を購入して用いることができる。
これら梅果汁などの原料は、それぞれを1つまたは複数組み合わせて、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコールおよびフルフラールの含有量を前記した範囲で含むように調整するのが好ましい。
本発明に係る梅酒様アルコール飲料は、非発泡性とするのが好ましい。ここで、本発明における非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
本発明に係る梅酒様アルコール飲料に添加することのできるアルコールは飲用アルコールであればよく、種類、製法、原料などに限定されない。例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、スピリッツ、原料用アルコールなどのアルコールを1種または複数を組み合わせて用いることができる。本発明に係る梅酒様アルコール飲料のアルコール度数は、添加するアルコールと水の分量を調整することによって適宜に調節することができる。アルコール度数は、例えば、8度以上とすることが好ましく、より好ましくは、8〜14度である。
また、本発明に係る梅酒様アルコール飲料は、着色料、酸味料、糖類、高甘味度甘味料、酸化防止剤などを添加することもできる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、合成色素などを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸などを用いることができる。糖類としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、ショ糖、オリゴ糖、多糖類などを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンEなどを用いることができる。
次に、本発明に係る梅酒様アルコール飲料製造方法について説明する。
本発明に係る梅酒様アルコール飲料製造方法は、前記した梅酒様アルコール飲料を製造するための製造方法である。
かかる梅酒様アルコール飲料製造方法は、次の成分(A)および(B)、すなわち(A)ベンズアルデヒド、(B)ベンジルアルコールおよびフルフラールのうちの少なくとも一方を調合する。
本発明においては、これらを添加する順序に特に決まりはなく、調合タンクに同時に添加して調合することができる。当該調合タンクには、前記した成分の添加前、添加と同時および添加後のいずれかのタイミングで所定量の水、アルコール、着色料、酸味料、糖類、高甘味度甘味料、酸化防止剤などを添加することができる。これらの添加量は、ニーズ等に合わせて任意に設定することができる。
図1を参照して一実施形態に係る梅酒様アルコール飲料製造方法について説明すると、本製造方法は、前記した成分(A)および(B)を調合する調合ステップS1と、調合ステップS1で調合した調合液をろ過するろ過ステップS2と、ろ過ステップS2でろ過したろ過液を殺菌する殺菌ステップS3と、殺菌ステップS3で殺菌した殺菌済みのろ過液をビンや缶、ペットボトルなどの容器に充填する充填ステップS4とを含む。
なお、調合ステップS1は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機などにより撹拌しながら調合するのが好ましい。また、ろ過ステップS2は、一般的なフィルターによって行うことができる。殺菌ステップS3は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。充填ステップS4は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。
次に、実施例により本発明について具体的に説明する。
まず、市販品の香料、5倍濃縮果汁および梅エキスを下記に示す分析条件でガスクロマトグラフィにより分析した。検出されたベンズアルデヒド、ベンジルアルコールおよびフルフラールの含有量は、表1に示すとおりであった。
<分析条件>
カラム :Agilent HP−1MS(19091S−733)
30m×0.250mm、1.00μm
装置 :Agilent 7890A/5975C MSD
サンプラー :COMBI−PAL
SPME−Fiber:Red/plain (57301)
キャリアガス :ヘリウム、定圧力15psi
注入 :スプリットレス 260℃
オーブン :50℃で1分間→5℃/分で50〜250℃→250℃で1分間
検出器 :MSD 230℃
四重極 150℃
トランスファーライン 280℃
Figure 0005162009
次に、購入したベンズアルデヒド、ベンジルアルコールおよびフルフラールを適宜の分量用いるなどして、後記する表2のNo.1〜18に係るアルコール飲料を製造した。
なお、表2のNo.1に係るアルコール飲料は、水650mLと、260gの果糖ぶどう糖液糖と、158mLの原料用アルコール(アルコール度数65度)と、7gのクエン酸とを添加して調合した。
表2のNo.2〜17に係るアルコール飲料は、No.1に係るアルコール飲料に対して、表2記載の所定の濃度になるように、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、フルフラールを添加して調合した。
表2のNo.18に係るアルコール飲料は、No.1に係るアルコール飲料に対して、表1で示した5倍濃縮果汁、梅エキスおよび香料と、カラメル色素とを添加して調合した。
製造したNo.1〜18に係るアルコール飲料はすべてアルコール度数を10度とし、糖酸をNo.18に合わせて官能試験に供した。
なお、No.19に係るアルコール飲料は、市販品の梅酒を用いてアルコール度数を10度に調製したものである。
次に、製造したNo.1〜18に係るアルコール飲料について官能試験を行った。
官能試験は、梅酒感、芳醇感、熟成感および梅酒らしさの4つの評価項目について、よく訓練された専門のパネル4人が行った。評価は、前記した各評価項目に対し、No.19に係る梅酒様アルコール飲料を5点とし、No.1に係る梅酒様アルコール飲料を1点とする5段階評価にて、各パネルが独立点数付けした。
表2に、No.1〜18に係るアルコール飲料中のベンズアルデヒドの含有量(ppm)と、ベンジルアルコールの含有量(ppm)と、フルフラールの含有量(ppm)と、梅酒感、芳醇感、熟成感および梅酒らしさに関する評価結果を示す。なお、表2中の各評価項目の評価点は、パネル4人の平均値である。当該平均値が小数点第2位まであるものはこれを四捨五入し、小数点第1位に統一して表記した。
また、No.19に係るアルコール飲料をガスクロマトグラフィにて分析した。検出された成分のうち、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコールおよびフルフラールの含有量を評価結果とともに表2に示す。
Figure 0005162009
表2に示す評価結果のうち、梅酒感、芳醇感、熟成感および梅酒らしさのうちの少なくとも1つの評価結果の平均点が1点を超えるものを本発明の効果があると評価した。
補足すると、No.2〜18に係るアルコール飲料に、本発明の効果があると認められた。中でも、No.8〜18に係るアルコール飲料は、ベンズアルデヒドの含有量と、ベンジルアルコールおよびフルフラールのうちの少なくとも一方の含有量とが適切であったため、より高い評価を得ることができた。そのため、これらは、梅酒様の香味を備えた梅酒様アルコール飲料を提供するにあたって好ましい態様であることがわかった。
また、表2に示す評価結果から、ベンズアルデヒドの含有量は、10ppm以上であれば本発明の効果を得ることができ、より好ましくは10〜100ppmであり、更に好ましくは30〜70ppmであり、特に好ましくは約50〜70ppmであることがわかった。
同様に、ベンジルアルコールの含有量は、1ppm以上であれば本発明の効果を好ましくすることができ、より好ましくは1〜10ppmであり、更に好ましくは3〜7ppmであり、特に好ましくは約4ppmであることがわかった。
また、フルフラールの含有量は、0.1ppm以上であれば本発明の効果を好ましくすることができ、より好ましくは0.1〜1ppmであり、更に好ましくは0.3〜0.7ppmであり、特に好ましくは約0.5ppmであることがわかった。
以上の記載から明らかなように、本発明の要件を満たせば、熟成期間が不要で短い製造期間であるにも関わらず、梅酒の香味を備えた新規な梅酒様アルコール飲料およびその製造方法を提供できることがわかった。
S1 調合ステップ
S2 ろ過ステップ
S3 殺菌ステップ
S4 充填ステップ

Claims (3)

  1. 熟成を経ない梅酒様アルコール飲料を製造するための梅酒様アルコール飲料製造方法であって、
    次の成分(A)および(B):
    (A)10ppm〜100ppmのベンズアルデヒド
    (B)3ppm〜10ppmのベンジルアルコールおよび0.1ppm〜1.0ppmのフルフラー
    を調合することを特徴とする梅酒様アルコール飲料製造方法
  2. 前記梅酒様アルコール飲料、非発泡性であることを特徴とする請求項1に記載の梅酒様アルコール飲料製造方法
  3. 前記梅酒様アルコール飲料、アルコール度数が8度以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の梅酒様アルコール飲料製造方法
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