JP3675109B2 - クーラント廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車業界をはじめとする金属加工業界において、切削加工や研削加工等の金属加工に幅広く使用されているクーラント液(水溶性切削油)から生じるクーラント廃液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属加工に用いられたクーラント液の廃液(以下、クーラント廃液という)は、高濃度の油分(n−ヘキサン可溶性物質)をエマルジョン状態で含み、油分濃度は数千mg/lないし数万mg/lに達する。このため、CODcr濃度も数千mg/lないし数万mg/lに達し、金属加工工場から排出される廃液の汚染源として最大である。このクーラント廃液中の油分はエマルジョン状態となっているため、そのままでは通常の油分分離装置では分離が非常に困難である。
【0003】
図2は従来の代表的なクーラント廃液の処理方法を示すフローシートであり、クーラント廃液1は酸処理槽2でエマルジョン破壊を行い、凝集処理槽3で凝集処理して固液分離装置4で固液分離し、分離した汚泥を脱水装置5で脱水し、焼却装置6で焼却処理している。
【0004】
すなわちクーラント廃液1を酸処理槽2に導入して、塩酸、硫酸等の酸11を加えてpH4以下にして酸処理することによりエマルジョン破壊し、油分12を分離する。分離液13を凝集処理槽3に導入して硫酸バンド、PAC等の凝集剤14や水酸化ナトリウム等のpH調整剤15ならびに必要により高分子凝集剤等の凝集助剤を添加して凝集処理を行い、凝集処理液16を加圧浮上分離槽、沈殿分離槽等の固液分離装置4に導入して固液分離を行う。
【0005】
固液分離装置4の分離液は処理水17として排出する。分離汚泥(スカム)18は凝集剤19ならびに必要によりpH調整剤および凝集助剤を添加して、再度凝集処理を行い、スクリューデカンタ、スクリュープレス等の脱水装置5に導いて脱水処理する。脱水ケーキ20は焼却装置6において焼却して焼却灰21とする。
【0006】
上記のような処理方法において、鋳造工程でマグネシウム接種によって発生する酸化マグネシウムを含むマグネシウムダストをエマルジョン破壊した分離液13に加え、pH調整剤(塩基)および凝集助剤(高分子凝集剤)を添加して凝集処理を行う方法が提案されている(特開昭63−256106号)。この方法は薬剤添加量が少なくなるとされているが、基本的には図2の従来法とほぼ同様の操作により処理を行うものである。
【0007】
このような従来のクーラント廃液の処理方法では、酸処理、凝集処理、固液分離、凝集処理、脱水、焼却などの多くの工程を必要とし、大型の装置と大量の薬剤を使用し、操作も複雑であり、処理コストが高くなる。特にエマルジョン破壊工程は耐酸性容器を必要とし、pH調整も困難であるなどの問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、酸処理工程を省略できるとともに、凝集処理後直接脱水処理を行うことができ、簡単な工程と装置により少ない薬剤量で効率よくクーラント廃液を処理することが可能で、処理コストを低くできるクーラント廃液の処理方法を得ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のクーラント廃液の処理方法である。
(1) クーラント廃液に酸化アルミニウムを含む焼却灰およびアルミニウム塩を添加して凝集処理し、脱水することを特徴とするクーラント廃液の処理方法。
(2) 固液分離により分離する凝集スカムを焼却し、得られる焼却灰を、酸化アルミニウムを含む焼却灰として使用することを特徴とする上記(1)記載の処理方法。
【0010】
本発明において処理対象となるクーラント廃液は、クーラント液(水溶性切削油)を用いる切削加工、研削加工等の金属加工工程から生じる油分(n−ヘキサン可溶性物質)をエマルジョン状で高濃度に含む廃液であり、油分のほかにも金属粉その他の固形物ならびに有機性物質等を雑多に含む廃液である。
【0011】
本発明で用いる酸化アルミニウムを含む焼却灰は、アルミニウム化合物を含む汚泥等を焼却することによって得られる焼却灰であり、酸化アルミニウムを1〜50重量%、好ましくは3〜10重量%含む焼却灰が好ましい。このような焼却灰は硫酸バンド、PAC等のアルミニウム化合物を含む凝集汚泥の焼却により得られるが、本発明の処理方法により生成する脱水ケーキの焼却によって生成する焼却灰をリサイクルして用いるのが好ましい。
【0012】
酸化アルミニウムを含む焼却灰添加量はクーラント廃液中の油分(n−ヘキサン可溶性物質)の10〜150重量%、好ましくは40〜60重量%(酸化アルミニウムの添加量として10〜150重量%、好ましくは40〜60重量%)とするのが好ましい。
本発明では酸化アルミニウム含有焼却灰のほかに、微細な粘土(クレイ)、ベントナイト、活性炭、活性汚泥等の他の添加物を添加して凝集処理を行ってもよい。
【0013】
本発明における凝集処理はこのようなアルミニウム含有焼却灰のほかにアルミニウムの塩を凝集剤として添加して行う。アルミニウム塩としては硫酸バンド、PACなど通常凝集剤として使用されているものが使用できる。鉄塩等の他の凝集剤を添加してもよいが、焼却灰を再利用する場合は他の無機凝集剤を添加しない方が好ましい。アルミニウム化合物の添加量は廃液中の油分の10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%とするのが好ましい。
【0014】
凝集処理は必要によりpH調整剤を使用し、pH5〜8、好ましくは5.7〜6.5に調整する。pH調整剤としては廃液のpHにより塩酸、硫酸等の酸、または水酸化ナトリウム等のアルカリを使用することができる。凝集処理は凝集剤および必要によりpH調整剤を添加して攪拌を行い反応させる。攪拌強度(G値)は40〜100G、好ましくは50〜80G程度である。
【0015】
上記の凝集処理に際しては高分子凝集剤のような凝集助剤を添加するのが好ましい。高分子凝集剤としてはポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物等のアニオン性高分子凝集剤が好ましいが、ポリアクリルアミド等のノニオン性高分子凝集剤や、ポリエチレンイミン等のカチオン性高分子凝集剤でもよい。これらの凝集助剤の添加量は1〜10mg/l、好ましくは2〜5mg/l程度である。
【0016】
凝集助剤は凝集剤、pH調整剤等と同時に添加してもよいが、凝集剤、pH調整剤等を添加して攪拌し、反応を行った後に凝集助剤を添加して緩やかに攪拌し、フロックを生長させるのが好ましい。凝集助剤は凝集処理液を移送する系路に添加するのが好ましいが、脱水装置としてスクリューデカンタ等の遠心分離機を用いる場合は、脱水装置内に添加してもよい。
【0017】
脱水装置としては凝集処理を行った被処理液から水分を効率よく除去できるものであればよく、スクリューデカンタのような遠心分離機が好ましいが、スクリュープレス、回転円板式脱水機等の他の脱水装置であってもよい、スクリューデカンタは高速回転するコーン状シリンダ内に、相対的に回転速度の異なるスクリューを設けることにより、遠心分離と分離汚泥の掻取を行う装置であり、通常の汚泥脱水に使用されているものが使用できる。また、プレス型脱水装置により圧縮をかけることで油を単独回収することも可能である。
【0018】
脱水装置の分離液はそのまま処理水として放流できるが、さらに2次処理、3次処理を行うこともできる。脱水ケーキは含水率が60〜80重量%程度になるので、そのまま焼却装置で焼却することができる。焼却により生成する焼却灰は酸化アルミニウムを含むので、凝集処理における酸化アルミニウムを含む焼却灰として再利用できる。余剰の焼却灰は投棄等により処分できる。
【0019】
【作用】
本発明では凝集処理において、酸化アルミニウムを含む焼却灰およびアルミニウム塩を添加して凝集処理を行うことにより、クーラント廃液中の油やエマルジョンは焼却灰中の微細な酸化アルミニウム微粉およびその他の固形物に付着した状態で凝集が起こる。このため従来必要であった酸処理によるエマルジョン破壊が必要でなくなる。これにより酸処理工程を省略できるほか、凝集処理装置として耐酸性容器を用いなくてもよくなる。
【0020】
従来法では凝集処理液は加圧浮上分離、沈殿分離等の固液分離手段により固液分離し、分離汚泥についてさらに凝集処理を行って脱水処理する必要があったが、本発明では凝集処理により生成するフロックは脱水性に優れるため、加圧浮上分離等の固液分離手段を経ることなく、直接スクリューデカンタ等の脱水機による脱水処理が可能であり、固液分離工程とそれに続く凝集処理を省略することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、クーラント廃液に酸化アルミニウムを含む焼却灰およびアルミニウム塩を添加して凝集処理した後、脱水することにより、酸処理工程を省略できるとともに、凝集処理後直接脱水処理を行うことができ、簡単な工程と装置により少ない薬剤量で効率よくクーラント廃液を処理することが可能で、処理コストを低くできるクーラント廃液の処理方法が得られる。
【0022】
また焼却により生成する焼却灰を凝集処理にリサイクルすることにより、凝集処理に必要な薬剤費を少なくできるほか、排出する余剰焼却灰の量を少なくすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は実施形態のクーラント廃液の処理方法を示すフローシートであり、図2と同符号は同一または相当部分を示す。図1ではクーラント廃液1を凝集処理槽3で凝集処理して脱水装置5で脱水処理し、脱水スカムを焼却装置で焼却し、焼却灰を凝集処理槽に添加して処理を行っている。
【0024】
すなわちクーラント廃液1を凝集処理槽3に導入して、酸化アルミニウムを含む焼却灰23を添加するとともに、硫酸バンド、PAC等のアルミニウム塩を凝集剤14として、また酸、アルカリ等のpH調整剤15を添加して攪拌を行い、pH6〜6.5に調整して凝集反応を行う。凝集処理液16はポリアクリルアミド部分加水分解物等のアニオン性高分子凝集剤のような凝集助剤22を添加して、スクリューデカンタ等の脱水装置5に導入して脱水処理を行い、分離液を処理水17として排出する。脱水ケーキ20は焼却装置6で焼却し、一部の焼却灰23を凝集処理槽23にリサイクルし、余剰の焼却灰21を排出する。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0026】
実施例1
pH 8.3、CODcr 42,000mg/l、n−ヘキサン可溶性物質12,100mg/lのクーラント廃液に、酸化アルミニウムを含む焼却灰(し尿処理設備の汚泥を流動層式焼却炉にて焼却して得られた焼却灰)10,000mg/lとPAC3,000mg/lを添加し、攪拌してよく混合した。さらに攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を添加して、この混合物のpHを6.5に調整して、凝集反応を行った。凝集反応の後、アニオン系高分子凝集助剤を2mg/l添加して混合し、スクリューデカンタ用脱水適用試験を行った。
【0027】
スクリューデカンタ用脱水適用試験としては、遠心分離試験器を用い、回転数3,000rpm、遠心力1,000G、分離時間5分の条件で脱水試験を行い、脱水ケーキの含水率と上澄液の性状からスクリューデカンタによる脱水性の適否を判定した。この脱水試験の結果、脱水ケーキの含水率は65〜75%であり、このまま焼却炉による焼却処理が可能であった。また処理水の水質はSS 55mg/l、CODcr 1050mg/l、n−ヘキサン可溶性物質 41mg/lであり、スクリューデカンタによる直接脱水が可能であった。
【0028】
比較例1
実施例1において、酸化アルミニウムを含む焼却灰を添加することなく同条件で凝集処理を行ったところ、凝集性が悪く、スカムはほとんど浮上してしまった。また焼却灰を添加することなく、凝集剤の添加量を13,000mg/lにして凝集処理を行ったところ、凝集性は改善されたが、やはりスカムは浮上してしまった。
【0029】
比較例2
実施例1で用いたクーラント廃液について、酸処理を行ったのちPACで凝集させ、さらに加圧浮上分離を行う従来法で処理した。すなわち上記クーラント廃液によく攪拌しながら塩酸を添加してpHを3に調整し、廃液中のエマルジョンを破壊した。この後静置して分離した油を除いた。この酸処理後の廃液にPACを5000mg/l、アニオン系凝集助剤を2mg/l添加してよく混合し、さらに苛性ソーダ水溶液を添加してpHを6.5に調整して凝集反応を行わせた。凝集反応の後、加圧浮上試験を行った。加圧浮上処理の条件としては、加圧水に処理水を用い、加圧水比を30%、加圧空気圧力を5kg/cm2とした。
【0030】
加圧浮上処理水水質は SS 38mg/l、CODcr 1200mg/l、n−ヘキサン可溶性物質濃度 50mg/lで実施例1とほぼ同等の水質が得られた。加圧浮上処理で発生したスカムは濃度が高く、スクリューデカンタによる脱水処理が可能と判断した。
【0031】
以上の結果より、本発明の処理方法では酸処理、固液分離およびこれに続く凝集処理を省略しても従来法とほぼ同等の処理水質が得られ、発生する焼却灰の量も少なくなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のクーラント廃液の処理方法を示すフローシートである。
【図2】実施形態のクーラント廃液の処理方法を示すフローシートである。
【符号の説明】
1 クーラント廃液
2 酸処理槽
3 凝集処理槽
4 固液分離装置
5 脱水装置
6 焼却装置
Claims (2)
- クーラント廃液に酸化アルミニウムを含む焼却灰およびアルミニウム塩を添加して凝集処理し、脱水することを特徴とするクーラント廃液の処理方法。
- 固液分離により分離する凝集スカムを焼却し、得られる焼却灰を、酸化アルミニウムを含む焼却灰として使用することを特徴とする請求項1記載の処理方法。
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