JP3674824B2 - 印字・消去方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーの制御により可逆的に発色状態・消色状態を形成できる記録層を有し、繰り返し印字・消去が可能な可逆性感熱記録媒体に用いる印字・消去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のハードコピーは、紙などの記録媒体に外部からインクあるいはトナーなどの着色剤を付着固定して画像形成を行うか、あるいは感熱記録紙のように、紙などの基材上に記録層を設け、これにエネルギーを加えて可視画像を形成するなど、永久画像を形成するものであった。しかし、最近複写機やファクシミリの普及、コンピューターからの情報出力によって記録媒体の消費量が急激に増大し、自然破壊や廃棄物処理など社会問題を引き起こしている。この問題を解決するため、記録した可視画像を消去でき、繰り返し使用可能な記録材料が注目されている。
【0003】
たとえば、有機低分子結晶粒子を分散した高分子膜の光散乱性変化を利用し、透明と白濁の二状態を可逆的に形成できる記録媒体がある(たとえば、特開昭55−154198号など)。この記録媒体は、すでに磁気カードの内容表示部として実用化されている。しかし、表示される画像は、黒や青の着色地肌、またはアルミ蒸着膜などの光反射性の地肌に白色の印字となるので、通常のハードコピーとしては違和感が大きく適していない。
【0004】
なお、上記の透明と白濁の二状態を可逆的に形成する記録方式に基づく記録装置が特開平8−90934号に開示されている。この記録装置は記録後に可逆性感熱記録媒体を冷却するための冷却装置を有しているが、この冷却装置は白濁速度が遅い(媒体が冷え初めて白濁が現れる)ため、白濁するのに時間がかかるのを改善するために設けられているのに過ぎない。白濁による可逆性感熱記録方式においては冷却によって記録画像濃度が高くなることはない。
【0005】
これらの課題に対し、発色と消色の二状態をとり得るロイコ染料を用い、白色地肌に可逆的に発色印字画像を形成できる感熱記録媒体が提案された(たとえば、特開平5−124360号)。この記録媒体の発色・消色は、加熱温度と加熱後の冷却速度によって制御されるものであり、とくに、発色状態の形成には、記録層に含まれるロイコ染料と、これを発色させる顕色剤が溶融混合する温度まで昇温したのち急冷する必要がある。徐冷になると十分な発色濃度が得られない。また、消色は発色温度よりやや低い温度への加熱で起こる。
【0006】
従来の透明・白濁型の記録媒体は、既述のとおり、基本的に加熱温度のちがいによって透明になるか白濁になるかが決まり、加熱後の冷却速度は関係していなかった。したがって、印字はサーマルヘッドで一時的に高温に加熱すればよく、消去(透明化)は印字よりやや低い温度域にホットスタンプなどで加熱すればよかった。しかし従来、前記の発色・消色型の記録媒体は加熱後急冷しなければ印字できないとされていた。通常記録媒体を繰り返し使用する場合には、消去して直ちに印字するというプロセスをとるが、消去時の加熱で記録媒体が熱くなっていると、印字された部分が急冷にならず徐冷となるため、十分な発泡濃度は得られない。
【0007】
発色・消色型の記録媒体の書き替えには上記の問題があるため、たとえば消去から印字までの間に記録媒体を何らかの方法で冷却する必要があった。消去工程と印字工程の間には時間を置くか又は長い距離を離すことは、処理時間が長くなるか、装置が大型化するために好ましくない。また、消去後記録媒体を金属板などに接触させて冷却する方法もあるが、装置の使用頻度が高くなると、冷却手段に熱が蓄積し温度が上がってしまい冷却効果がなくなる。
【0008】
もっとも、熱スタンプによる消去工程と印字工程とに間に、冷却手段を設ける方法が知られているが、この場合、全面加熱をするために高い熱エネルギーが供給されている消去手段の直近に冷却手段があると、装置の稼働率が高い場合は冷却手段の温度が上がってしまい冷却効果が減じる。他の冷却手段でも冷却効果が減じることは同様である。また、消去工程と印字工程との間に冷却手段を設ける方法では、記録媒体を一旦冷却してから印字するため印字に要するエネルギーが高くなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにロイコ染料を用いた発色・消色型の記録媒体は印字部分の記録層が急冷されなければ十分な発色濃度が得られないという特性があったため、消去工程と印字工程との間に冷却手段が必要となるが、消去工程での熱で冷却手段の温度及び冷却効果が減じ、もって発色濃度が低下するという問題があった。更に、一旦冷却した後印字するために高い印字エネルギーを要するという問題があった。本発明の目的は、このような可逆性感熱記録方法の問題を解決し、冷却手段の温度上昇及び冷却効果の減少がなく、且つ、高い印字エネルギーを必要としない可逆性感熱記録方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に、少なくともロイコ染料と顕色剤を含む記録層を有し、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって可逆的に発色および消色する可逆性感熱記録媒体を用いる可逆性感熱記録方法における印字・消去方法において、該記録媒体に対し、媒体の印字画像が消去される温度にその媒体を加熱する消去工程、その媒体を印字画像が消去される温度以下40℃以上温度に加熱する予備加熱工程、発色する温度以上にその媒体を加熱する印字工程を同時に実行した後、該記録媒体を冷却する冷却工程により印字、消去することを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0011】
第二に、上記第一の印字・消去方法において、冷却工程が静止した記録媒体の少なくとも表面に対し冷却部材を接触させて冷却することを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0012】
第三に、上記第一の印字・消去方法において、冷却工程が記録媒体を搬送させながら、記録媒体の少なくとも表面に対し冷却部材に接触させて冷却することを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0013】
第四に、上記第一〜第三のいずれかの印字・消去方法において、冷却工程に搬送される記録媒体の温度を検知し、その記録媒体温度に応じて記録媒体の冷却部材への接触時間を制御して、記録媒体の冷却を行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0014】
第五に、上記第一〜第三のいずれかの印字・消去方法において、冷却部材の温度を検知し、冷却部材温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御して、記録媒体の冷却を行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0015】
第六に、上記第二〜第五のいずれかの印字・消去方法において、冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材の温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御することを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0016】
第七に、上記第二〜第五のいずれかの印字・消去方法において、冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体の搬送速度を制御することを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0017】
第八に、上記第二〜第五のいずれかの印字・消去方法において、冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御するものであり、この制御を冷却工程における記録媒体と冷却部材の接触回数を変化させて行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0018】
第九に、上記第一〜第八のいずれかの印字・消去方法において、発色する温度以上に媒体を加熱する印字工程がサーマルヘッドを用いて行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0019】
第十に、上記第九の印字・消去方法において、サーマルヘッドを用い印字画素(ドット)毎に消去又は印字の実行を仕分け、消去・印字両工程を同時に行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0020】
第十一に、上記第十の印字・消去方法において、サーマルヘッドを用いドットによる消去と印字の使い分けをサーマルヘッドの個々の発熱素子に印加する電圧、電流、通電時間のいずれかを代えることにより印字エネルギーを制御することにより行うことを特徴とする印字・消去方法が提供される。
【0021】
本発明でいう「予備加熱」とは記録層を発色温度以下に一様に加熱することであり、より好ましくは、記録層をその記録媒体固有の消去温度以下40℃以上の温度となるように一様に加熱することである。なお、明細書中でこの予備加熱を印字前加熱ということがある。
【0022】
上記のとおり、本発明は、ロイコ染料と顕色剤を含む記録層を有し、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって可逆的に発色及び消色する可逆性感熱記録媒体を用いる可逆性感熱記録方法における印字・消去方法において、媒体の印字画像が消去される温度にその媒体を加熱する消去工程、その媒体を印字画像が消去される温度以下40℃以上温度に加熱する予備加熱工程、発色する温度以上にその媒体を加熱する印字工程を同時に実行し、その後、該記録媒体を冷却する冷却工程により印字、消去されるというものである。
【0023】
本発明の方法によれば、ロイコ染料と顕色剤を含む可逆性発色記録層をもつ記録媒体の書き替え処理において、消去工程、予備加熱工程、印字工程を同時に実行し、その後、冷却工程を行うため、冷却工程が消去工程の影響を受けにくくなり、安定な冷却効果が得られる。本発明における冷却工程は、特開平8−90934号にみられる冷却工程と異なり、発色した像を固定するためのものであり、この工程がないと発色像が消失してしまうか、又は像濃度が低いものとなるため、本発明の発色型の可逆性感熱記録方法においては必須のものである。また、本発明の方法によれば、記録媒体を容易に一定レベルの温度まで冷却できる。さらに、本発明のおける消去工程によれば、記録層を含む比較的せまい部分を加熱することにより記録媒体を無駄に加熱することがないために、冷却工程で容易に冷却できる。
【0024】
このように、消去、印字後十分な冷却が可能になるため、印字部分が常に急冷されるようになり、高い発色濃度の印字が安定して得られ、しかも書き替え処理が小型の装置で迅速できるようになる。さらに、本発明の方法によれば、加熱工程と印字工程が連続しているため印字エネルギーが低くでき、サーマルヘッドの寿命が延びるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、本実施例の記録媒体11は、プラスチック、紙、合成紙などからなる支持体12に製膜された可逆性感熱記録層13、記録層の劣化を防ぐ透明保護層14とから構成されている。この他に必要に応じ、支持体と記録層の間に下引き層、記録層と保護層の間に中間層、保護層上の一部に着色印刷インキ層、さらにインキ層部分を含めた表面に透明保護層を設ける場合もある。可逆感熱記録層13は、樹脂バインダー中にロイコ染料および顕色剤を分散させることによって形成されている。
【0026】
記録層に用いるロイコ染料は、たとえばフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物など公知の染料前駆体である。記録層に用いる顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させる顕色能をもつ構造、たとえばフェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基などと、分子間の凝収力を制御する構造、たとえば長鎖炭化水素基が連結した構造をもつ化合物である。連結部分にはヘテロ原子を含む2価の基を介していてもよく、また長鎖炭化水素基中にもヘテロ原子を含む2価の基または芳香族基が含まれていてもよい。具体的には、特開平05−124360号などに記載されている公知の顕色剤が使用できる。
【0027】
これらのロイコ染料および顕色剤を用いた記録媒体は図2に示すプロセスで発色・消色する。初期の消色状態(A)を加熱すると温度T1以上でロイコ染料と顕色剤が溶融混合して発色し(B)、この状態を急冷すると発色状態のまま固定される(C)。発色状態(C)を加熱していくと、発色温度T1より低い温度T2で消色し(D)、冷却すれば初期と同様の消色状態となる。ここで溶融発色状態(B)からの冷却を徐冷とすると、降温の過程で濃度が低下し、極端な場合にはほとんど消色した状態となる。このように得られる発色濃度は冷却の速度に依存しており、ある程度徐冷となる条件では濃度が低下した中間的な発色状態を作る。このような特性となるのは、発色がロイコ染料と顕色剤が相互作用した分子集合状態が急冷によって固定されることを利用し、消色がロイコ染料と顕色剤の相分離を利用しているためである。徐冷条件では降温過程で、相分離が起こるため発色濃度が低下する。ここでT1、T2及び発色状態を固定する冷却速度は、ロイコ染料と顕色剤の組合せに大きく依存する。
【0028】
従来用いられている低分子化合物結晶粒子を分散した高分子膜の透明・白濁変化を利用した記録媒体は、この点で本発明が対照とする発色・消色型の記録媒体とは異なり、加熱温度のみに依存し冷却温度には依存しない。したがって、印字が加熱・急冷でなければならないという課題は、この発色・消色型記録媒体に特有のものであり、本発明はこの課題を解決する印字・消去方法である。
【0029】
感熱記録媒体は、通常サーマルヘッドを用いて印字されるが、この方法では記録媒体が室温程度であれば、加熱時間がミリ秒程度の短時間であり加熱範囲もせまいため、熱は直ちに拡散し、実質的に急冷の条件が実現できる。したがって、印字のみを行う場合には、溶融発色に必要なエネルギーさえ与えられれば、濃度の高い印字が可能である。
【0030】
しかし、可逆性感熱記録媒体は、すでに印字してある発色画像を消去して、新たに別の印字を行い書き替えるのが通常の使用方法であり、消去工程と印字工程は連続的に行われる。消去工程では記録媒体は消去温度に加熱される。上記の可逆性記録媒体の印字された発色部を完全に消去するには0.1〜1秒程度の加熱時間が必要である。このような加熱を行うために、従来、たとえば図3に示すような消去手段51がとられてきた。これは、発熱抵抗体によって消去温度に制御された加熱部材54、たとえば金属板や金属ブロックを記録媒体34の消去する部分全体に、弾性部材53を有する押圧部材52により押し当てる方法(ホットスタンプ方式)である。
【0031】
ホットスタンプ消去は記録媒体の印字面を一括して消去するので、基材を含めた記録媒体が広範囲に加熱されることになる。そのため加熱部材が離れた後も記録媒体の温度はすぐには下がらない。このように温度が高いままサーマルヘッドで印字しても印字部分の熱が拡散しにくくなり徐冷となってしまい、結果的に印字部の発色濃度は低くなり、十分な画像品質は得られない。
【0032】
本発明の顕色剤を用いた可逆性感熱記録媒体を用いて品質の良好な発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱した後冷却されるようにすればよい。具体的には、例えばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し、急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。
一方、消色させるためには、適当な熱源を用いて1)媒体を発色温度以上に加熱し、かつ徐冷すればよい。この場合、加熱手段の全幅に対して加熱すれば自然と徐冷となる。(サーマルヘッドの選択加熱ではバックグラウンドが低温な分早く冷却される。)又は、2)消色下限温度以上、発色温度以下に加熱しても良い。1)の場合の加熱方法には、加熱バー、熱ローラー、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて全幅で加熱しても良い。2)の場合、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。
【0033】
記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。すなわち、サーマルヘッドを用いドット(発熱素子)ごとに記録ドットと消去ドットを判別し、記録ドットには発色に必要なエネルギーを印加し、消去ドットには発色のエネルギーより低いエネルギーを印加し、これを同時に印加しながらヘッドをスキャンさせて行き印字と消去を同時に実現しながら全面を記録走査するものである。
【0034】
印加エネルギーの制御はサーマルヘッドの個々の発熱素子に印加する電圧、電流、通電時間の少なくとも1つを変えることにより行う。
【0035】
消去後、記録媒体の温度が自然に低下し印字可能になるまで時間をおくのは、処理時間が長くなり実用的ではないので、冷却手段を設けるのが一般的であり、たとえば図4に示すような消去装置が用いられる。図4において41は消去手段、71は冷却手段、42は印字手段であり、印字されている記録媒体が搬送され消去、印字、冷却の各工程を通過し、書き替えられた記録媒体が排出される。図中、91は印字前加熱手段(予備加熱手段)である。印字前加熱手段91は消去後の記録層を発色しない程度の温度に加熱し、次に行われる印字工程での印字エネルギーを少なくさせることができる。
【0036】
通常簡便な冷却手段としては、冷却ファン、ペルチェ素子の他、熱伝導性のよい金属板や金属ブロックなどの冷却部材に接触させる方法がとられるが、ホットスタンプのように金属媒体全体が広範囲に加熱されている場合には、接触時間を長くとらなければならず、また、処理頻度が高くなると冷却部材自体の温度が高くなってしまい、印字濃度の低下を起こすことになる。また、消去手段と冷却手段が接近して設けられることとなり、これも冷却部材の温度上昇の原因となり印字濃度を低下させる。以上のように、消去工程・冷却工程・印字工程の順に書き替えを行う装置では、印字の安定性に問題がある。
【0037】
これに対し、本発明の印字・消去方法は、発色・消色型記録媒体の特性を十分検討した結果、消去工程で加熱され冷却される前に印字しても、その後すぐに冷却すれば高い濃度の印字が可能であるという知見に基づいてなされたものである。したがって、本発明の印字・消去方法の第1の特徴は記録の書き替えを消去工程・予備加熱工程・印字工程を同時に実行し、その後、冷却工程を行うことにある。従来の方法が記録媒体を冷却してから印字し、印字部の熱を拡散しやすくすることによって印字部を急冷させるものであったのに対し、本発明は、同時に、消去工程後の加熱状態にある記録媒体を予備加熱し、これに印字してしまい、印字直後に全体を冷却し印字部を急冷させる方法をとっている。
【0038】
このような方法によれば、従来の方法と同等の印字濃度が得られ、しかも発熱部分である消去手段と冷却手段を離して設置できるので、冷却手段の効率を維持しやすくなり、装置の小型化も可能になる。また、印字エネルギーが低減できるという大きな利点がある。本発明では加熱された記録媒体に印字することになるので、サーマルヘッドにかける印字エネルギーを低くすることが可能となり、これによってサーマルヘッドの寿命を大幅に延ばすことができる。発色・消色型の記録媒体は、従来の可逆記録媒体より低感度のものが多いが、本発明の方法では見かけ上の感度を高められる。
【0039】
本発明に使用する可逆性感熱記録媒体の最終形態としては、紙、フィルム等を支持体とし、この上に可逆性感熱記録層を設け、該支持体に粘着剤を塗設させ、別の支持体に粘着して使用しても良い。また、カード状の支持体に可逆性感熱記録層を設け、カードとして使用しても良い。本発明の媒体は他に光磁気記録媒体、光記録媒体、IC、磁気記録媒体を担持していても良い。
【0040】
【参考例】
次に、本発明の印字・消去方法の参考例を用い、図面を参照しながら説明する。
【0041】
参考例1
図5は本発明の参考例となる印字・消去装置の概略的構成を示す図である。図5において、41は消去手段、42は印字手段、71′は冷却手段である。34は、すでに印字されており書き替えられるべき感熱記録媒体を示している。記録媒体34は、印字・消去する表面を上側にして供給ローラー対43によって供給搬送される。供給ローラー対43は図示していない駆動手段(モーターなど)によって回転している。同様にして回転し記録媒体を搬送する搬送ローラー対48および49が、それぞれ消去手段41と印字手段42、印字手段42と冷却手段71′の間にある。また、45は同様に回転する排出ローラーである。記録媒体34は、消去手段、印字手段、冷却手段の順に搬送され、書き替えが行われる。
【0042】
消去手段は加熱機構をもつ。消去手段は図3に示したような加熱部材と押圧部材を有するホットスタンプ方式のものが使用できる。このように平面状の加熱部材54および押圧部材52の場合には、記録媒体を消去装置でいったん停止させ、加熱部材を接触させて消去した後、次の印字工程へ搬送する。消去手段は、図5に示すような記録媒体34を搬送しながら加熱部材を押し当てる方式がさらに好ましい。60は加熱部材59と対向する位置に設けられた搬送機能をもつ消去用プラテンローラーであり、加熱部材59は記録媒体をはさみ一定の圧力でプラテンローラー60に押しつけている。加熱部材59は記録媒体表面に接触する位置に固定されていればよく、それ以外のときには上部の離れた位置にあってもよい。
【0043】
このような消去手段によれば、記録媒体は移動しながら加熱部材59と接触して印字面を消去するので、印字面全体を一度に加熱する必要がなく、比較的せまい部分を加熱できるようになる。せまい部分を短時間加熱するようにすれば記録媒体の基材の温度はあまり上昇せず、記録層のみを効率よく消去温度にすることができる。したがって、消去後の加熱部分の熱の拡散は起こりやすくなり、印字工程後の冷却工程で容易に印字部分を急冷することができる。
【0044】
したがって、冷却工程の効率を高め安定な冷却効果を得るには、加熱部材を記録層のある表面側から、十分な消去が得られる範囲なるべく短時間加熱すること、加熱部材の記録媒体搬送方向の幅をせまくし、記録媒体との接触部分を帯状のせまい範囲とするのが望ましい。ただし、あまりせますぎると一定の消去時間を確保するために搬送速度を遅くしなければならなくなるので、これらを考慮すると接触部分の記録媒体搬送方向の幅は、1.2〜5.0mmの範囲であることがとくに好ましい。このように接触部分の幅をせまくすると、記録媒体と加熱部材59との接触の均一性が得られやすくなり、記録層が消去温度に均一に加熱されるため、一様に消去できるという効果も同時に得られる。なお、記録媒体との接触部分の幅は、加熱部材の幅とは必ずしも一致せず、プラテンローラーの弾性の程度と押圧力によって変化するが、加熱部材の幅1.2〜5.0mmの範囲にあればよい。
【0045】
加熱部材59としては、セラミック基板上に薄膜状の発熱抵抗体を帯状に設け、その上をガラス保護層で被覆した、いわゆるセラミックヒーターがとくに好ましい。セラミックヒーターは、消去温度までの昇温の立ち上がりがよく、通電を停止したときの冷却も早い。したがって、記録媒体が挿入され消去するときだけ消去温度に加熱することができ、蓄熱も少ないため、機内温度の上昇を押えることができる。これは、次の冷却工程の効率と安定性とよい影響を与える。また、表面の平滑性が高く均一な加熱が可能である。
【0046】
印字手段42は、サーマルヘッド46とプラテンローラー47によって構成され、消去工程から搬送された記録媒体に新たな印字を行う。書き替えられた記録媒体は、排出ローラー45によって排出される。
【0047】
71′は印字後の記録媒体の冷却手段である。この冷却手段及び後記の冷却工程は、本発明においても適用しうるものである。この冷却手段中には記録媒体に接触し冷却する冷却部材がある。冷却部では、印字部から搬送ローラー49によって搬送されてきた記録媒体に冷却部材を接触させて、十分な発色濃度の印字が得られるように急冷する。冷却部材はアルミニウム、銅などの熱伝導性のよい金属の板、ブロック、ローラーなどであることが、冷却効率をよくする上で好ましい。冷却部材は少なくとも記録媒体に印字面側に設置されていることが必要である。記録媒体からの放熱をよくするため、記録媒体は冷却部材に押し付けられる必要がある。これには、冷却部材と対向する位置にバネなどの力を用いた押圧部材72が設置されている。押圧部材は板状のものでも、ローラー状のものでもよい。記録媒体は冷却部材押し付けられ、効率よく冷却される。
【0048】
冷却工程では、記録媒体が冷却部材の位置でいったん停止させて冷却部材に押し付けるようにするか、あるいは記録媒体を搬送しながら冷却部材に押し付ければよい。前者の場合には、冷却部材または押圧部材のいずれかが上方または下方の離れた位置待機し、記録媒体が搬送され停止したときに移動しはさみ込む動作をさせる。後者の場合も、記録媒体の消去すべき印字部分が冷却部材位置にきたとき、冷却部材を接触させるようにし、それ以外のときは冷却部材は押圧部材から離れた位置に待機するのが好ましい。また、この場合には冷却部材の表面はテフロンなど滑性の高い材料で、熱伝導を妨げない程度に被覆されていることも好ましい。
【0049】
この印字・消去装置では、消去工程で余分な熱を加えていないため、冷却工程の負担は小さいが、書替え印字の頻度が高くなってくると冷却部材の蓄熱が起こる。そのため冷却部材には、多数の熱伝導のよい金属薄板などで空気との接触面積を広くした放熱構造73(冷却フィン)を有することが好ましい。さらに冷却フィンに接する空気に流れをつくり放熱効果を高めるため送風冷却機構71を設けることも好ましい。
【0050】
また、印字工程で十分な発色濃度の印字を安定に形成するために、冷却工程後の記録媒体の温度を常に一定レベルになるようにするには、冷却工程前の記録媒体表面を制御すればよい。印字工程と冷却工程の間に温度検知器81を設置し、検知された記録媒体温度が標準設定温度より高い場合は冷却部材との接触時間を長くし、低い場合は短くするように制御すれば、冷却速度を一定レベルにでき、良好な画像を安定して得ることができる。温度検知には、たとえば、サーミスターや熱電対などの接触型の温度検知器、あるいは記録媒体からの赤外線を検知する非接触型の検知器を用いればよい。
【0051】
冷却速度をさらに安定するには、冷却部材に温度検知器82を設置し、冷却部材温度を検知し、それに応じて記録媒体と冷却部材の接触時間を制御すればよい。記録媒体が冷却部材位置にきたときの冷却部材の温度が、標準設定温度より高い場合には接触時間を長くし、低い場合には短くするように制御すれば、冷却工程後の温度が一定レベルにできる。温度検知には、サーミスターや熱電対を冷却部材に接触して設置すればよい。
【0052】
また、冷却速度をさらに安定するには、前記の消去工程後の記録媒体温度の検知による接触時間制御と、冷却部材温度の検知による接触時間制御を組み合わせて用いればよい。これにより、印字時の記録媒体温度は常に一定レベルに合わせることができるので、発色濃度の高い印字が安定して得られる。冷却部材への接触時間の制御は、搬送速度を変化させるか、搬送速度が同じであっても冷却部材への接触通過回数を増減すればよい。
【0053】
続いて、この印字・消去方法を縦85mm、横54mmの大きさのカード型発色・消色記録媒体に適用した例について説明する。まず、記録媒体に対し、消去手段・冷却手段を使わず十分なエネルギーで印字工程のみを行った。これによる印字濃度は1.25であり、地肌濃度0.10に対し十分な濃度であり、視認性の高い良好な印字画像が得られた。なお、この記録媒体は黒発色である。次に、比較のため記録媒体の半分の面積を一度に加熱できる大きさのアルミブロックの加熱部材をもつ消去手段と印字手段を連続的に行うように設置された印字・消去装置を用い、前記の印字した記録媒体を書き替え印字した。消去条件は120℃で1秒であり、消去から印字までの間隔は約1秒である。この結果、前に印字されていた部分は完全に地肌濃度と同じになり消去され、新たに別のパターンが印字されていた。しかし、印字の濃度は初めの印字よりかなり低く、濃度0.65であった。なお、この装置で、初めと同程度の濃度を得るには消去と印字の間でいったん静止させ約12秒のインターバルをとる必要があった。
【0054】
次に上記の印字・消去装置の印字手段の後に冷却手段を設けた。冷却手段の冷却部材は幅30mmアルミブロックであり、厚さ0.5mmのアルミ板からなる冷却フィン10枚を有している。冷却工程では記録媒体印字面が冷却部材に接触しながら20mm/秒の速度で搬送される。この装置を用いて書き替え処理を行うと印字濃度1.08となり、冷却工程のない印字・消去装置に比べ高濃度で、コントラストの高い画像を得られた。
【0055】
次に、上記の消去手段・印字手段・冷却手段をもつ装置において消去手段のみ変更し、加熱部材を幅5mmの帯状発熱抵抗体をもつセラミックヒーターを用い温度を125℃とした。セラミックヒーターと記録媒体の接触部分の幅は3.5mmとした。あらかじめ印字してある記録媒体を挿入し、消去工程を30mm/秒の速度で搬送しながら加熱部材に接触させ消去し、印字工程でサーマルヘッドで印字し、続いて冷却工程で冷却部材に20mm/秒の速度で接触させて冷却した。初めの印字は完全に消去され、新たに形成された印字は発色濃度1.15で十分な視認性が得られた。
【0056】
次に、上記の印字・消去装置で消去手段のセラミックヒーターの発熱抵抗体の幅を2mm、記録媒体との接触部分の幅を1.2mmとした。ヒーター温度を125℃とし、搬送速度を20mm/秒として消去工程を通すと、初めの印字は完全に消去でき、発色濃度は1.22が得られた。これは、十分なエネルギーで印字のみを行ったときとほぼ同じ濃度である。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の印字・消去方法によれば、発色・消色型記録媒体の書き替えにおいて、消去工程と印字工程との間に冷却手段が不要で、冷却手段の温度上昇及び冷却効果の減少がなく、従って、発色濃度の低下がなく、安定した発色濃度が維持される低エネルギーで印字できるため、サーマルヘッドの寿命が延びるようになる。 また、消去工程と印字工程の間に予備加熱工程を設けたことから、印字工程での印字エネルギーを少なくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る発色・消色型記録媒体11の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る発色・消色型記録媒体の発色・消色プロセスを概略的に示す図である。
【図3】一般的な消去手段の構成を概略的に示す図である。
【図4】本発明の参考例となる印字・消去装置の構成を概略的に示す図である。
【図5】本発明の参考例となる他の印字・消去装置の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
11 発色・消色型記録媒体
12 支持体
13 可逆性感熱記録層
14 保護層
34 記録媒体
41 消去手段
42 印字手段
43 供給ローラー
45 排出ローラー
46 サーマルヘッド
47 プラテンローラー
48、49 搬送ローラー対
51 消去手段
52 押圧部材
53 弾性部材
54、59 加熱部材
60 プラテンローラー
71、71′ 冷却手段
72 押圧部材
73 冷却フィン
81、82 温度検知器

Claims (11)

  1. 少なくともロイコ染料と顕色剤を含む記録層を有し、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって可逆的に発色および消色する可逆性感熱記録媒体を用いる可逆性感熱記録方法における印字・消去方法において、該記録媒体に対し、媒体の印字画像が消去される温度にその媒体を加熱する消去工程、その媒体を印字画像が消去される温度以下40℃以上温度に加熱する予備加熱工程、発色する温度以上にその媒体を加熱する印字工程を同時に実行した後、該記録媒体を冷却する冷却工程により印字、消去することを特徴とする印字・消去方法。
  2. 冷却工程が静止した記録媒体の少なくとも表面に対し冷却部材を接触させて冷却することを特徴とする請求項1に記載の印字・消去方法。
  3. 冷却工程が記録媒体を搬送させながら、記録媒体の少なくとも表面に対し冷却部材に接触させて冷却することを特徴とする請求項1に記載の印字・消去方法。
  4. 冷却工程に搬送される記録媒体の温度を検知し、その記録媒体温度に応じて記録媒体の冷却部材への接触時間を制御して、記録媒体の冷却を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印字・消去方法。
  5. 冷却部材の温度を検知し、冷却部材温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御して、記録媒体の冷却を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印字・消去方法。
  6. 冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材の温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の印字・消去方法。
  7. 冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材の温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体の搬送速度を制御することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の印字・消去方法。
  8. 冷却工程に搬送される記録媒体の温度および/または冷却部材温度を検知し、その温度に応じて冷却工程における記録媒体と冷却部材との接触時間を制御するものであり、この制御を冷却工程における記録媒体と冷却部材の接触回数を変化させて行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の印字・消去方法。
  9. 発色する温度以上に媒体を加熱する印字工程がサーマルヘッドを用いて行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の印字・消去方法。
  10. サーマルヘッドを用い印字画素(ドット)毎に消去又は印字の実行を仕分け、消去・印字両工程を同時に行うことを特徴とする請求項9記載の印字・消去方法。
  11. サーマルヘッドを用いドットによる消去と印字の使い分けをサーマルヘッドの個々の発熱素子に印加する電圧、電流、通電時間のいずれかを代えることにより印字エネルギーを制御することにより行うことを特徴とする請求項10記載の印字・消去方法。
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