JP3649759B2 - 2,3−ジフェニルインデン化合物及びそれを含有する電子写真感光体 - Google Patents
2,3−ジフェニルインデン化合物及びそれを含有する電子写真感光体 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規なジフェニルインデン化合物に関するものであり、本発明の化合物は新規な電子輸送性アクセプター性化合物として複写機、プリンター等の電子写真感光体に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体の感光層として、セレン、セレン−テルル合金、酸化亜鉛などの無機光導電性物質が広く用いられてきたが、近年、有機光導電性物質を用いた電子写真感光体に関する研究が進み、その一部は実用化されている。ここで実用化に至った感光体のほとんどは、電荷発生層と電荷輸送層に機能を分離した感光層からなる積層型電子写真感光体であり、これにより無機光導電性物質からなる感光体と比較して劣っていた感度及び感光体寿命の点で改善され、低コストで安全性や多様性など有機光導電性物質の長所を生かした電子写真感光体の設計が活発に行われるようになった。
この種の積層型電子写真感光体は、一般には導電性支持体上に顔料、染料などの電荷発生物質からなる電荷発生層、ヒドラゾン、ピラゾリンなど電荷輸送物質からなる電荷輸送層を順に形成したもので、電子供与性である電荷輸送物質の性質上、正孔移動型となり、感光体表面に負帯電したとき感度を有する。ところが負帯電では帯電時に用いるコロナ放電が正帯電に比べて不安定であり、正帯電時の10倍程度のオゾン、窒素酸化物などを発生し、感光体表面に吸着などし、物理的劣化や化学的劣化を引き起こしやすく、さらに環境を悪くするという問題がある。さら他の問題は負帯電用感光体の現像には正極性のトナーが必要となるが正極性のトナーは強磁性体キャリア粒子に対する摩擦帯電系列から見て製造が困難であり、二成分高抵抗磁気ブラシ現像方式においては、負帯電トナー/現像剤の方が安定であり、選択と使用条件の自由度も大きく、この点でも正帯電型感光体に適用範囲は広く有利である。
【0003】
そこで有機光導電性物質を用いる感光体を正帯電で使用することが提案されている。例えば電荷発生層上に電荷輸送層を積層して感光体を形成する際、前記電荷輸送層に電子輸送能の大きい、例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等が使用されているが、その物質は発癌性があることが指摘されており、労働衛生上極めて不適当である等の問題がある。
また、電子輸送化合物としては特開昭60−69657にはフルオレニリデンメタン化合物が、特開昭61−233750にはアントラキノジメタン及びアンロン誘導体が使用されているが、これらはともに繰返し特性に問題があり、特開平5−25136にはナフタレンジカルボン酸イミド化合物が、特開平5−25174にはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物が使用されているが、これらはともに感度が不十分であり、また、バインダ樹脂との相溶性が悪いなど、改善すべき問題点がある。
さらに正帯電感光体として米国特許3,615,414号には、チアピリリウム塩(電荷発生物質)をポリカーボネート(バインダ樹脂)と共晶錯体を形成するように含有させたものが示されている。しかしこの公知の感光体では、メモリ現象が大きく、ゴーストも発生し易いという欠点がある。
【0004】
そこで光照射時、正孔及び電子を発生する電荷発生物質を含有する電荷発生層を上層(表面層)とし、正孔輸送能を有する電荷輸送物質を含む電荷輸送層を下層とする積層構成の感光層を有する感光体を正帯電用として使用可能と考えられる。しかしながら、前記正帯電用感光体は電荷発生物質を含む層が表面層として形成されるため、光照射時特に紫外線等の単波長光照射、コロナ放電、湿度、機械的摩擦等の外部作用に脆弱な電荷発生物質が前記表面層近傍に存在することになり、感光体の保存中及び像形成の過程で電子写真性能が劣化し、画質が低下するようになる。
従来の電荷輸送層を表面層とする負帯電用感光体においては、前記各種の外部作用の影響は極めて少なく、むしろ前記電荷輸送層が下層の電荷発生層を保護する作用を有している。
【0005】
そこで例えば絶縁性かつ透明な樹脂からなる薄い保護層を設け、前記電荷発生物質を含む層を外部作用から保護することが考えられるが、光照射時発生する電荷がその保護層でブロッキングされて光照射効果が失われてくるし、また表面層となる保護層の膜厚が大きい場合には感度低下を招くことになる。
このように正帯電用感光体を得るための試みが種々行われているが、いずれも光感度、メモリ現象または労働衛生等の点で改善すべき多くの問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は導電性支持体とその上に形成された感光層を必須の構成要素とし、高感度で耐久性のよい電子写真感光体を提供することである。特にバインダ樹脂との相溶性のよい高性能なアクセプター性化合物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた結果、特定の一群の化合物を合成するにいたり、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願の第一の発明は、一般式(I)で表わされるジフェニルインデン化合物である。
【0008】
【化3】
【0009】
ここで、式中、R 1 ,R 2 ,R 3 ,R 4 は同一又は異なる、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、ニトロ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
Xは,下式( II )および( III )で表わされる基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
=C(A)(B) ( II )
=N−R 5 ( III )
前記( II )において、Aはシアノ基または−COOR 6 であり、Bはハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、および−COOR 6 よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
前記( III )において、R 5 は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基、あるいはシアノ基を表わす。
前記R 6 は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基を表わす。
又、本願の第二の発明は、導電性支持体とその上に形成された感光層を必須の構成要素とし、該感光層中に上記一般式(I’)で表わされるジフェニルインデン化合物を含む電子写真感光体である。
式中、R1,R2,R3およびR4は、同一又は異なる、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、ニトロ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
Xは、=O、下式(II)および(III)で表わされる基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
=C(A)(B) (II)
=N−R5 (III)
前記(II)において、Aはシアノ基または−COOR 6 であり、Bはハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは無置換の芳香族基、および−COOR 6 よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
【0010】
前記(III)において、R5は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基、あるいはシアノ基を表わす。
前記R6は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基を表わす。
これら置換基について。例示を挙げて説明する。
上式(I)におけるR1,R2,R3及びR4において、置換もしくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、フルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基、ベンジル基などがそれぞれ例示される。
【0011】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などがそれぞれ例示される。上式(II)におけるA,Bにおいて、置換もしくは無置換の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレン基などの芳香族基が例示され、その置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、N,N−ジメチルアミノ、ベンゾオキシアミノ基、N,N−ジメチルアミド基、メチルチオキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基などがそれぞれ例示される。
上式(II)及び(III)におけるR5及びR6において、置換もしくは無置換のアルキル基の例は先にあげたR1,R2,R3及びR4のそれらの例と同様である。
上式(II)及び(III)におけるR5及びR6において、置換もしくは無置換のアルキル基の例は先に挙げたA及びBのそれらの例と同様である。
本発明の一般式(I)のジフェニルインデン化合物の具体例を、表1に示すが、これらに限定されるものではない。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
【表4】
【0016】
前記一般式(I)の化合物は任意の公知の方法によって製造することができるが、例えば下記反応式(a)のように、一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデノン化合物と、対応する一般式(1),(2),(3)及び(4)で表わされるメチレン化合物とを、酸性触媒あるいは塩基性触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5及びR6は前記に同じ。RはA,Bにおける置換もしくは無置換の芳香族基の例に同じ)
上記の反応に反応に使用される酸性触媒としては、例えば四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アルミあるいは三フッ化ホウ素などのルイス酸が挙げられ、塩基性触媒としては、N−メチルモルフォリン、N−メチルピペリジン、ピリジン、ピペリジンあるいはトリエチルアミンなどの有機塩基、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムあるいは酢酸アンモニウムなどの酢酸塩、炭酸ナトリウムあるいは炭酸カリウムなどの無機塩基などを挙げることができる。
反応は通常無溶媒か、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒あるいはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒中で行うことができる。反応温度は−20℃から150℃、好ましくは0℃から100℃で行われる。
【0019】
また、前記一般式(I)の化合物は、例えば下記反応式(b)のように、一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデノン化合物と、対応する一般式(5)で表わされるアニリン化合物とを、酸性触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。ただし、R5がシアノ基の場合は後述の方法の方がよい)
反応に使用される酸性触媒としては、例えば四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アルミあるいは三フッ化ホウ素などのルイス酸が挙げられる。
反応は通常無溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、あるいはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒中で行うことができる。反応温度は−20℃から150℃、好ましくは0℃から100℃で行われる。
【0020】
【化5】
【0021】
更に前記一般式(I)の化合物は、一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデノン化合物と、下式(6)で表わされるジイミド化合物
(CH3)3Si−N=C=N−Si(CH3)3 (6)
と、酸性触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。
反応に使用される酸性触媒としては、例えば四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アルミあるいは三フッ化ホウ素などのルイス酸が挙げられる。
反応は通常無溶媒か、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、あるいはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒中で行うことができる。反応温度は0℃から150℃、好ましくは0℃から100℃で行われる。
また本発明のジフェニルインデン化合物は、電子写真感光体の電荷輸送物質として使用できるばかりでなく、太陽電池、有機EL素子などの電子デバイスとしてエレクトロニクス分野で好適に使用することができる。
次に本発明の電子写真感光体の構成を図面によって説明する。
【0022】
電子写真感光体としては例えば図1に示すように支持体1(導電性支持体またはシート上に導電層を設けたもの)上に電荷発生物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する層(電荷発生層)2を下層とし、電荷輸送物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する層(電荷輸送層)3を上層とする積層構成の感光層4を設けたもの、図2に示すように図1の感光層4の上に保護層5を設けたもの、及び図3に示すように支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する単層構成の感光層6を設けたもの、等が挙げられるが、図3の単層構成の感光体6の上層に保護層が設けられてもよく、また支持体と感光層の間に中間層が設けられてもよい。
本発明の電子写真感光体において使用する電荷発生物質としては、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機物質及び有機物質のいずれをも用いることができる。例えば無定形セレン、三方晶系セレン、セレン−砒素合金、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、硫セレン化カドミウム、硫化水銀、酸化鉛、硫化鉛、アモルファスシリコン等の無機物質、或いはビスアゾ系色素、ポリアゾ系色素、トリアリールメタン系色素、チアジン系色素、オキサジン系色素、キサンテン系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系色素、キナクリドン系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、多環キノン系色素、ビスベンズイミダゾール系色素、インダンスロン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、及びフタロシアニン系色素等の有機物質が挙げられる。
【0023】
本発明の電子写真感光体において感光層に使用可能なバインダ樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ピリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、並びにこれらの樹脂の繰返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
前記感光層を支持する導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケルなどの金属板、金属ドラムまたは金属箔、アルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム或いは導電性物質を塗布した紙、プラスチックなどのフィルムまたはドラムを使用することができる。
次に本発明の電子写真感光体の製造について説明する。
【0024】
本発明にかかる電子写真感光体が電荷発生層と電荷輸送層の積層構成、即ち、図1及び図2で示す構成のものである場合、先ず導電性支持体上に電荷発生層を形成する。
電荷発生層は電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着するか、或いは適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダ樹脂と共に溶解もしくは分散せしめたものを導電性支持体上に塗布、乾燥して電荷輸送物質と同様に形成することができる。
上記電荷発生物質を分散せしめて電荷発生層を形成する場合、その電荷発生物質は2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径の粉粒体とするのが好ましい。すなわち、粒径があまりに大きいと層中への分散が悪くなると共に、粒子が表面に一部突出して表面の平滑性が悪くなり、場合によっては粒子の突出部分で放電が生じたり或いはそこにトナー粒子が付着してトナーフィルミング現象が生じやすい。ただし、前記の粒径があまりに小さいと却って凝集しやすく、層の抵抗が上昇したり、結晶欠陥が増えて感度及び繰返し特性が低下したり、或いは微細化する上で限界があるから、平均粒径の下限を0.01μmとするのが好ましい。
【0025】
電荷発生層は次の如き方法によって設けることができる。すなわち、電荷発生物質はボールミル、ホモミキサー等によって分散媒中で微細粒子とし、バインダ樹脂を加えて混合分散して得られる分散液を塗布する方法である。この方法において超音波の作用下に粒子を分散させると、均一分散が可能である。また電荷発生層中、電荷発生物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して20〜200重量部とされる。
以上のようにして形成される電荷発生層の膜厚は、好ましくは0.01〜10μm、特に好ましくは0.1〜5μmである。
電荷輸送層は本発明の電荷輸送物質を、適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダ樹脂とともに溶解もしくは分散せしめたものを前記電荷発生層上に塗布して乾燥させる方法により設ける。
電荷輸送層に用いられる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロルエタン、ジクロルメタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。
【0026】
この電荷輸送層中、電荷輸送物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷輸送物質が20〜200重量部とするのが好ましい。
電荷輸送層の膜厚は、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。
次に本発明に係る電子写真感光体が単層構成、即ち図3で示す構成のものである場合、電荷発生物質及び本発明の電荷輸送物質をバインダー樹脂と共に溶解もしくは分散せしめたものを導電性支持体上に塗布、乾燥させる方法により形成することができる。
電荷発生物質及び電荷輸送物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質は20〜200重量部、電荷輸送物質は20〜200重量部とするのが好ましい。この単層構成の感光体の膜厚は7〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0027】
また、前記中間層は接着層またはバリヤ層等として機能するもので、上記のバインダ樹脂のほかに、例えばポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、N−アルコキシメチルナイロン等の樹脂をそのまま、または酸化スズあるいはインジウムなどを分散させたもの、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、或いは酸化ケイ素などの蒸着膜等が用いられる。中間層の膜厚は1μm以下が望ましい。
また、前記保護層に用いられる材料としては、前述の樹脂をそのまま使用するか、または酸化スズや酸化インジウムなどの低抵抗物質を分散させたものが適当である。また、有機プラズマ重合膜も使用でき、その有機プラズマ重合膜は必要に応じて適宜酸素、窒素、ハロゲン、周期率表の第III族、第V族原子を含んでもよい。
【0028】
【実施例】
以下本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明のジフェニルインデン化合物の実施例は「合成例」とし、電子写真感光体の「実施例」とは区別した。実施例中「部」は特に規定しないかぎり、「重量部」である。
合成例1〔構造式(2)の化合物の合成〕
市販の2,3−ジフェニル−1−インデノン5.7g(0.02mol)と、マロノニトリル2.6g(0.04mol)をピリジン100mlに溶解させ、窒素雰囲気下4時間還流させた後、室温まで放冷した。これを水層に移し、塩酸酸性にした後、トルエンで抽出した。トルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去し、次いで残渣に対し、トルエンを展開溶媒としたシリカゲルクロマトグラフィー処理を行い、得られた粗製の目的物をエタノールから再結晶して純粋な目的物4.9gを得た。融点180.5〜182.1℃。元素分析値はCが87.28(87.25)、Hが4.04(4.27)、Nが8.45(8.48)となり一致した〔( )内は理論値。〕。また、このものの赤外線スペクトル図を図4に示す。
【0029】
合成例2〔構造式(6)の化合物の合成〕
市販の2,3−ジフェニル1−インデノン5.7g(0.02mol)とシアノ酢酸n−ブチルエステル5.6g(0.04mol)をジクロロメタンに溶解し氷冷撹拌下で四塩化チタン7.6g(0.04mol)を滴下し、次にN−メチルモルフォリン8.2g(0.08mol)を滴下し、更に室温で5時間撹拌を行った。これを水層に移し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、クロロホルムを留去し、次いで残渣に対し、トルエンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理を行い、得られた粗製の目的物をエタノールから再結晶して純粋な目的物5.4gを得た。融点83.0〜84.0℃、元素分析値はCが83.01(82.93)、Hが5.78(5.72)、Nが3.51(3.45)となり、一致した〔( )内は理論値〕。また、このものの赤外線吸収スペクトル図を図5に示す。
【0030】
実施例1
下記化学式(IV)で表わされるビスアゾ色素5部、ブチラール樹脂(デンカブチラール樹脂#3000−2:電気化学工業(株)製)2.5部、及びテトラヒドロフラン92.5部をボールミルにて12時間分散させ、次にテトラヒドロフランを2重量%の分散液濃度になるように加え、再分散させて塗布液を調整した。調整した分散液をアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルム上にドクターブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が1.0μmの電荷発生層を形成した。
【0031】
【化6】
【0032】
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物(化合物No.1)6部、ポリカーボネート樹脂〔K−1300:帝人化成(株)製〕10部、メチルフェニールシリコン〔KF50−100cps:信越化学工業(株)製〕0.002部、及びテトラヒドロフラン94部からなる処方の塗布液を調整し、ドクダーブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.1)を作製した。
【0033】
実施例2〜5
実施例1の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例1と同様の方法で感光体No.2、感光体No.3、感光体No.4、感光体No.5を作製した。
比較例1
実施例1の例示化合物の代わりに2,4,7−トリニトロフルオレノン(TNF)を用いること以外は実施例1と同様の方法で感光体No.6を作製した。
【0034】
実施例6
前記化学式(IV)で表わされるビスアゾ色素の代わりに、下記一般式(V)で表わされるビスアゾ色素を用いること以外は、実施例1と同様の方法で電荷発生層を作製した。
【0035】
【化7】
【0036】
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物(化合物No.1)6部、ポリカーボネート樹脂〔K−1300:帝人化成(株)製〕10部、メチルフェニールシリコン〔KF50−100cps:信越化学工業(株)製〕0.002部、及びテトラヒドロフラン94部からなる塗布液を調整し、実施例1と同様の方法で乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.7)を作製した。
【0037】
実施例7〜10
実施例6の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例6と同様の方法で感光体No.8、感光体No.9、感光体No.10、感光体No.11を作製した。
比較例2
実施例6の例示化合物の代わりに2,4,7−トリニトロフルオレノンを用いること以外は実施例11と同様の方法で感光体No.12を作製した。
【0038】
実施例11
前記化学式(IV)で表わされるビスアゾ色素5部の代わりに、下記一般式(VI)で表わされるトリスアゾ色素6部を用いること以外は、実施例1と同様の方法で電荷発生層を作製した。
【0039】
【化8】
【0040】
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物(化合物No.1)6部、ポリカーボネート樹脂〔K−1300:帝人化成(株)製〕10部、メチルフェニールシリコン〔KF50−100cps:信越化学工業(株)製〕0.002部、及びテトラヒドロフラン94部からなる塗布液を調整し、実施例1と同様の方法で乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.13)を作製した。
【0041】
実施例12〜15
実施例11の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例11と同様の方法で感光体No.14、感光体No.15、感光体No.16、感光体No.17を作製した。
比較例2
実施例11の例示化合物の代わりに2,4,7−トリニトロフルオレノンを用いること以外は実施例11と同様の方法で感光体No.18を作製した。
実施例16
無金属フタロシアニン5部、ポリビニルブチラール樹脂〔エスレックスBLS:積水化学(株)製〕5部、及びテトラヒドロフラン90部をボールミルにて12時間分散させ、次にテトラヒドロフランを2重量%の分散液濃度になるように加え、正分散させて塗布液を調整した。このようにして調整した分散液をアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルム上にドクターブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が0.5μmの電荷発生層を形成した。
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物(化合物No.1)6部、ポリカーボネート樹脂〔K−1300:帝人化成(株)製〕10部、及びテトラヒドロフラン94部からなる処方の塗布液を調整し、ドクダーブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.19)を作製した。
【0042】
実施例17〜20
実施例16の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例16と同様の方法で感光体No.20、感光体No.21、感光体No.22、感光体No.23を作製した。
実施例21
前記化学式(IV)で表わされるビスアゾ色素0.5部をポリカーボネートZ〔帝人化成(株)製〕の10wt%テトラヒドロフラン溶液10g、テトラヒドロフラン9gとともにボールミリングした後、顔料組成2wt%、ポリカーボネートZ組成が50wt%、例示化合物(化合物No.1)20wt%、下記の正孔移動物質が28wt%となるように10wt%のポリカーボネートZ溶液、2,3−ジフェニルインデン化合物、正孔移動物質を加え、十分に撹拌し、感光体塗布液を調整した。このようにして調整した塗布液をアルミニウムを1000Aの厚さに蒸着した75μm厚のポリエステルフィルム上にドクターブレードにて塗布し、乾燥後の膜厚が15μmの感光層を有する単層型電子写真用感光体(感光体No.24)を作製した。
【0043】
【化9】
【0044】
実施例22〜25
実施例21の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例21と同様の方法で感光体No.25、感光体No.26、感光体No.27、感光体No.28を作製した。
比較例4
2,3−ジフェニルインデン化合物を除いた以外は実施例21と同様の条件で感光体No.29を作製した。
【0045】
実施例26
X型無金属フタロシアニン〔Fastogen Blue 8120BS(株)DIC製〕0.5gをポリカーボネートZの10wt%テトラヒドロフラン溶液10g、テトラヒドロフラン9gとともにボールミリングした後、顔料組成2wt%、ポリカーボネートZ組成が50wt%、例示化合物(化合物No.1)が20wt%、下記の正孔移動物質が28wt%となるように10wt%のポリカーボネートZ溶液、2,3−ジフェニルインデン化合物、正孔移動物質を加え、十分に撹拌し、感光体塗布液を調整した。このようにして調整した塗布液をアルミニウムを1000Aの厚さに蒸着した75μm厚のポリエステルフィルム上にドクターブレードして塗布し、乾燥後の膜厚が15μmの感光層を有する単層型電子写真用感光体No.30を作製した。
【0046】
【化10】
【0047】
実施例27〜30
実施例26の例示化合物(化合物No.1)の代わりに、例示化合物中の化合物No.2、化合物No.6、化合物No.29、化合物No.40を用いること以外は実施例26と同様の方法で、感光体No.31、感光体No.32、感光体No.33、感光体No.34を作製した。
比較例5
2,3−ジフェニルインデン化合物を除いた以外は実施例26と同様の条件で感光体No.35を作製した。
以上のようにして得られた電子写真感光体について、静電複写紙試験装置(川口電気製作所:SP−428)を用いて以下のように特性評価を行った。
+6KVのコロナ放電を施して、正帯電した後、20秒間暗所に放置し、その時の表面電位Voを測定し、次いでタングステンランプを用いて表面の照度が20ルックスになるように光照射し、そのときVoが半分になるのに要した露光量をE1/2(lux・sec)を測定した。その結果を表2,3に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る一般式(I)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物は新規であり、比較的簡単で効率の良い方法により製造することができ、バインダ樹脂中で優れた溶解性または分散性を有し、又、電荷発生物質より発生された電荷を、受入れそして輸送する優れた能力を有し電荷輸送物質として優れた機能を有する。
また、これら2,3−ジフェニルインデン化合物を電荷輸送物質として含有する本発明の電子写真感光体は、高い暗減衰率及び高い感度を有する上、耐久性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の断面図である。
【図2】本発明に係る別の例の電子写真感光体の断面図である。
【図3】本発明に係る更に別の例の電子写真感光体の断面図である。
【図4】合成例1で得られた構造式(2)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図5】合成例2で得られた構造式(6)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物の赤外線吸収スペクトル図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 感光層(積層構成)
5 保護層
6 感光層(単層構成)
Claims (4)
- 下記一般式(I)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物
Xは、下式(II)および(III)で表わされる基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
=C(A)(B) (II)
=N−R5 (III)
(前記(II)において、Aはシアノ基または−COOR 6 であり、Bはハロゲン原子、置換もしくは無置換の芳香族基、および−COOR 6 よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
前記(III)において、R5は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基、あるいはシアノ基を表わす。
前記R6は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基を表わす。)〕 - 導電性支持体とその上に形成された感光層を必須の構成要素とし、該感光層中に下記一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物を含む電子写真感光体。
Xは、=O、下式( II )および( III )で表わされる基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
=C(A)(B) ( II )
=N−R 5 ( III )
(前記( II )において、Aはシアノ基または−COOR 6 であり、Bはハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは無置換の芳香族基、および−COOR 6 よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わす。
前記( III )において、R 5 は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基、あるいはシアノ基を表わす。
前記R 6 は置換及び無置換のアルキル基、置換及び無置換の芳香族基を表わす。)〕 - 前記感光層が電荷発生層と電荷輸送層の2層からなり、少なくとも電荷輸送層は前記一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物を含有する請求項2に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷発生物質及び電荷輸送物質含む単層型電子写真感光体において、電荷輸送物質として、前記一般式(I’)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物を少なくとも一種を含有する請求項2に記載の電子写真感光体。
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