JP3553685B2 - フルオレン化合物およびそれを含有する電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真感光体に用いられる新規フルオレン化合物、及びそのフルオレン化合物を含有させた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、電子写真感光体の感光層として、セレン、セレン−テルル合金、酸化亜鉛などの無機光導電性物質が広く用いられてきたが、近年、有機光導電性物質を用いた電子写真感光体に関する研究が進み、その一部は実用化されている。ここで、実用化に至った感光体のほとんどは、電荷発生層と電荷輸送層に機能を分離した感光層からなる積層型電子写真感光体であり、これにより、無機光導電性物質からなる感光体と比較して劣っていた感度及び感光体寿命の点で改善され、低コストで、安全性や多様性など有機光導電性物質の長所を生かした電子写真感光体の設計が活発に行われるようになった。
この種の積層型電子写真感光体は、一般には、導電性支持体上に、顔料、染料などの電荷発生物質からなる電荷発生層、ヒドラゾン、ピラゾリンなど電荷輸送物質からなる電荷輸送層を順に形成したもので、電子供与性である電荷輸送物質の性質上、正孔移動型となり、感光体表面に負帯電したとき感度を有する。ところが、負帯電では、帯電時に用いるコロナ放電が正帯電に比べて不安定であり、正帯電時の10倍程度のオゾン、窒素酸化物などを発生し、感光体表面に吸着などの物理的劣化や化学的劣化を引き起こしやすく、さらに、環境を悪くするという問題がある。さらに他の問題は、負帯電用感光体の現像には正極性のトナーが必要となるが正極性のトナーは強磁性体キャリア粒子に対する摩擦帯電系列から見て製造が困難であり、2成分高抵抗磁気ブラシ現像方式においては、負帯電トナー/現像剤の方が安定であり、選択と使用条件の自由度も大きく、この点でも正帯電型感光体に適用範囲は広く有利である。
そこで、有機光導電性物質を用いる感光体を正帯電で使用することが提案されている。例えば、電荷発生層上に電荷輸送層を積層して感光体を形成する際、前記電荷輸送層に電子輸送能の大きい、例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等が使用されているが、その物質は発癌性があり、労働衛生上極めて不適当である等の問題がある。
また、電子輸送化合物としては、特開昭60−69657にはフルオレニデンメタン化合物が、特開昭61−233750にはアントラキノジメタン及びアンロン誘導体が使用されているが、これらはともに繰返し特性に問題があり、特開平5−25136にはナフタレンジカルボン酸イミド化合物が、特開平5−25174にはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物が使用されているが、これらはともに感度が不十分であり、また、バインダ樹脂との相溶性が悪い等、改善すべき問題点がある。
さらに正帯電感光体として、米国特許3,615,414号には、チアピリリウム塩(電荷発生物質)をポリカーボネート(バインダ樹脂)と共晶錯体を形成するように含有させたものが示されている。しかしこの公知の感光体では、メモリ現象が大きく、ゴーストも発生し易いと言う欠点がある。
そこで光照射時、正孔及び電子を発生する電荷発生物質を含有する電荷発生層を上層(表面層)とし、正孔輸送能を有する電荷輸送物質を含む電荷輸送層を下層とする積層構成の感光層を有する感光体を正帯電用として使用することが可能と考えられる。しかしながら、前記正帯電用感光体は電荷発生物質を含む層が表面層として形成されるため、光照射時特に紫外線等の単波長光照射、コロナ放電、湿度、機械的摩擦等の外部作用に脆弱な電荷発生物質が前記表面層近傍に存在することになり、感光体の保存中及び画像形成の過程で電子写真性能が劣化し、画質が低下するようになる。
従来の電荷輸送層を表面層とする負帯電用感光体においては、前記各種の外部作用の影響は少なく、むしろ前記電荷輸送層が下層の電荷発生層を保護する作用を有している。
そこで、例えば絶縁性かつ透明な樹脂からなる薄い保護層を設け、前記電荷発生物質を含む層を外部作用から保護することが考えられるが、光照射時に発生する電荷がその保護層でブロッキングされて光感度が損われ、また製造も容易ではない。
このように正帯電用感光体を得るための試みが種々行なわれているが、いずれも光感度、メモリ現象または労働衛生等の点で改善すべき多くの問題点がある。
【0003】
【目的】
本発明は、電子写真感光体に用いられるアクセプター性化合物として有用な新規フルオレン化合物、及び導電性支持体上に電荷発生物質及び電荷輸送物質を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、特にバインダ樹脂との相溶性の良い高性能の電荷輸送物質として前記フルオレン化合物を用いたことを特徴とする高感度で耐久性の良い電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく従来より研究を重ねてきた結果、特定の一群の化合物を見出し、また該化合物を利用することにより前記従来技術の問題点を解決することのできる本発明を完成した。
すなわち本発明によれば、下記式(I)で表わされる新規なフルオレン化合物および導電性支持体とその上に形成される感光層を必須の構成要素とし、感光層中に、前式(I)で表わされるフルオレン化合物の少なくとも1種のものを含有する電子写真感光体が提供される。
【化2】
(式中、R1、R2は互いに独立して水素原子、置換または非置換アルキル基、アルコキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のフェニル基、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基よりなる群から選ばれたものである。
R3、R4は互いに独立して、水素原子、置換または非置換アルキル基、アルコキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のスルホニル基、置換又は非置換スルホンアミド基、置換又は非置換カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基よりなる群から選ばれたものである。
m、nは1〜4の整数を表わす。)
【0005】
本発明の前記式(I)のR1、R2において、アルキル基は、メチル基、エチル基、ブチル基等である。
置換アルキル基は、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などのハロゲン化アルキル基、ベンジル基等のフェニル置換アルキル基等である。
アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基等である。
アルコキシカルボニル基は、前記のアルコキシ基を有するものである。
前記アルコキシ基およびアルコキシカルボニル基は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の置換基で置換されたものであってもよい。
アシル基としては、アセチル基、ブチリル基等であり、該アシル基は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の置換基で置換されたものであってもよい。
置換フェニル基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ベンジル基等のフェニル置換アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基などのアルコキシ基、これらのアルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基等がある。
【0006】
前記式(I)のR3、R4において、アルキル基はメチル基、エチル基等である。
置換アルキル基は、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ベンジル基等のフェニル置換アルキル等である。
アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基等である。
アルコキシカルボニル基は、前記のアルコキシ基を有するものである。前記アルコキシ基およびアルコキシカルボニル基は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の置換基で置換されたものであってもよい。
アシル基は、アセチル基、ブチリル基等であり、該アシル基は、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の置換基で置換されたものであってもよい。
スルホニル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
スルホンアミド基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
カルバモイル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0007】
前記式(I)のフルオレン化合物は、例えば下記反応式に従って、相当するキノン化合物(A)とアセトニトリル誘導体とを、酸性触媒、塩基性触媒の存在下で反応することによって得ることができる。
【化3】
(式中、R1〜R4、m、nは前記に同じ。)
反応に使用される酸性触媒としては、例えば四塩化チタン、塩化亜鉛あるいは三フッ化ホウ素などがあげられ、塩基性触媒としては、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ピリジン、ピペリジン、あるいはトリエチルアミンなどの有機塩基、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム或は酢酸アンモニウムなどの酢酸塩、炭酸ナトリウム、或は炭酸カリウムなどの無機塩基などを挙げることができる。
反応は、通常無溶媒か、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、あるいはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒中で行うことができる。反応温度は、0℃から150℃、好ましくは0℃から100℃で行われる。
【0008】
前記式(I)で表わされる化合物を製造するための出発原料として使用される上記の式(B)で表わされるアセトニトリル誘導体は、下式に示すように、例えば式(C)で表わされる化合物と、式(D)で表わされるマロノニトリルとを、硫酸等の酸の存在下で反応させる事によって得られる。
【化4】
【0009】
次に本発明のフルオレン化合物を、次式(II)および次表1〜4に基づいて例示する。
【化5】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0010】
次に本発明の感光体の構成を図面によって説明する。感光体としては例えば図1に示すように支持体1(導電性支持体またはシート上に導電層を設けたもの)上に電荷発生物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する層(電荷発生層)2を下層とし、電荷輸送物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する層(電荷輸送層)3を上層とする積層構成の感光体層4を設けたもの、図2に示すように図1の感光体層4の上に保護層5を設けたもの、及び図3に示すように支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質と必要に応じてバインダ樹脂を含有する単層構成の感光体層6を設けたもの等が挙げられるが、図3の単層構成の感光体層6の上層に保護層が設けられてもよく、また支持体と感光体層の間に中間層が設けられてもよい。
【0011】
本発明に使用する電荷発生物質としては、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機物質及び有機物質のいずれをも用いることができる。例えば、無定形セレン、三方晶系セレン、セレン−砒素合金、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、硫セレン化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、アモルファスシリコン等の無機物質、或いはビスアゾ系色素、ポリアゾ系色素、トリアリールメタン系色素、チアジン系色素、オキサジン系色素、キサンテン系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系色素、キナクリドン系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、多環キノン系色素、ビスベンズイミダゾール系色素、インダンスロン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、及びフタロシアニン系色素等の有機物質があげられる。
本発明において感光体層に使用可能なバインダ樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、並びにこれらの樹脂の繰返し単位のうち2つ以上の種類の繰り返し単位を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
次に前記感光体層を支持する導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケルなどの金属板、金属ドラムまたは金属箔、アルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム或いは導電性物質を塗布した紙、プラスチックなどのフィルムまたはドラムを使用することができる。
【0012】
本発明に係る感光体を電荷発生層と電荷輸送層の積層構成で形成する場合、すなわち図1および図2の場合、本発明の前式(I)で表わされる電荷輸送物質を適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダ樹脂とともに溶解もしくは分散せしめたものを電荷発生層上に塗布して乾燥させる方法により電荷輸送層を形成することができる。電荷輸送層の形成に用いられる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロルエタン、ジクロルメタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。この電荷輸送層中、電荷輸送物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して好ましくは20〜200、さらに好ましくは50〜150重量部である。
該電荷輸送層の膜厚は、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。
電荷発生層は、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着するか、或いは適当な溶媒に単独あるいは適当なバインダ樹脂と共に溶解もしくは分散せしめたものを塗布、乾燥して電荷輸送層と同様に形成することができる。前記溶媒あるいは分散媒体としては、上記電荷輸送層の形成に用いられる溶媒を用いることができる。
上記電荷発生物質を分散せしめて電荷発生層を形成する場合、該電荷発生物質は2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径の粉粒体が好ましい。すなわち、粒径があまりに大きいと層中への分散が悪くなると共に、粒子が表面に一部突出して表面の平滑性が悪くなり、場合によっては粒子の突出部分で放電が生じたりあるいはそこにトナー粒子が付着してトナーフィルミング現象が生じやすい。逆に上記の粒径があまりに小さいと却って凝集しやすく、層の抵抗が上昇したり、結晶欠陥が増えて感度及び繰返し特性が低下したり、さらには微細化する上で限界があるから、平均粒径の下限を0.01μmとするのが好ましい。
電荷発生物質と適当なバインダ樹脂を分散させた電荷発生層は、例えば以下の方法によって形成することができる。すなわち、電荷発生物質をボールミル、ホモミキサー等によって分散媒中で、微細粒子とし、バインダ樹脂を加えて混合分散して得られる分散液を支持体上に塗布する方法である。前記分散方法において超音波の作用下に粒子を分散させると、粒子をより均一に分散することが可能であり、より好ましい。また該電荷発生層中に電荷発生物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して20〜200重量部、より好ましくは50〜200重量部である。
以上のようにして形成される電荷発生層の膜厚は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0013】
次に本発明の感光体を単層構成で形成する場合、すなわち図3の場合、電荷発生物質及び電荷輸送物質がバインダ樹脂に含有される割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質は2〜200重量部、より好ましくは2〜100重量部、電荷輸送物質は20〜200重量部、より好ましくは50〜150重量部である。この単層構成の感光体の膜厚は7〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
また、該感光体と基板の間には中間層を設けてもよい。
該中間層は接着層またはバリヤ層等として機能するもので、上記のバインダ樹脂のほかに、例えばポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、N−アルコキシメチルナイロン等の樹脂をそのまま、または酸化スズあるいはインジウムなどを分散させたもの、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、或いは酸化ケイ素などの蒸着膜等が用いられる。中間層の膜厚は、1μm以下が望ましい。
また、前記保護層に用いられる材料としては、前述の樹脂をそのまま使用するか、または酸化スズや酸化インジウムなどの低抵抗物質を分散させたものが適当である。また、有機プラズマ重合膜も使用でき、その有機プラズマ重合膜は、必要に応じて適宜酸素、窒素、ハロゲン、周期律表の第III族、第V族原子を含んでもよい。
【0014】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中「部」は特に定義しないかぎり「重量部」を表す。
合成例1(例示化合物No.1の合成例)
▲1▼ 市販のベンゾイン20g、濃硫酸100gを氷冷下で撹拌しながら、マロノニトリル21gを加えて室温で3時間撹拌した。その後、この反応物を、予め氷を入れたビーカー中に移し、1時間撹拌した後、分液ロートに移し、有機層と水層を分別した。有機層を更に2回水洗して、三角フラスコ中に有機層を収集し、脱水剤として硫酸マグネシウムを50g加え、1晩、室温放置した。これを硝子フィルター(G3)を用いてろ過し、エバポレーターを用いて溶剤を留去した。これをカラムクロマトグラフィーにより単離し、粗生成物を得た。これをシクロヘキサンで再結晶し、4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イルアセトニトリルを収率50%で得た。
融点は108〜109℃の白い針状晶であった。
▲2▼ 市販の9−フルオレノン−4−カルボン酸45g、n−ブタノール290g、溶剤トルエン100ml、濃硫酸4.2gを還流(reflux)し、脱水反応を行った。その後、室温まで自然冷却させ、予め1/4量の氷を入れたビーカー中にこれを移し、1時間撹拌した後、1リットル分液ロートに移し、有機層と水層を分別した。有機層を更に2回水洗して、1リットル三角フラスコ中に有機層を収集し、脱水剤として硫酸マグネシウム50gを加え、1晩、室温放置した。これを硝子フィルターを用いてろ過し、溶剤を留去した。これをカラムクロマトグラフィーにより単離し、粗生成物を得た。これを再結晶して、55.9gの9−フルオレノン−4−カルボン酸ブチルエステルを収率98%で得た。
▲3▼ 前記▲2▼で得た9−フルオレノン−4−カルボン酸ブチルエステル5.6g、前記▲1▼で合成した4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イルアセトニトリル10.4gを、ジクロロメタン200ml中で撹拌し、氷冷して溶液温度を下げた状態で、四塩化チタン7.60g、次いでN−メチルモルフォリン4.10gを加え、室温で4時間撹拌して反応させた。反応混合物を氷上に注ぎ、クロロホルム500ml、水500mlを加えてよく撹拌し、分離したクロロホルム層を中性になるまで水洗した。クロロホルム層は無水硫酸マグネシウムで乾燥したあと、クロロホルムを留去し、ついで残渣に対しトルエンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理を行ない、得られた粗製の目的物をエタノールから再結晶して純粋な目的物を、収率70%で得た。
融点は146.0〜147.0℃。図4に赤外線吸収スペクトルを示す。
【0015】
実施例1
下式(E)で表されるビスアゾ色素5部、ブチラール樹脂(デンカブチラール樹脂#3000−2:電気化学工業製)2.5部及びテトラヒドロフラン92.5部をボールミルにて12時間分散させ、次にテトラヒドロフランを2重量%の分散液濃度になるように加え、再分散させて塗布液を調整した。調整した分散液をアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルム上にドクターブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が1.0μmの電荷発生層を形成した。
【化6】
このようにして得られた電荷発生層上に、合成例1で得られた例示化合物No.1 6部、及びポリカーボネート樹脂(K−1300:帝人化成製)10部、メチルフェニル−シリコン(KF50 100CPS:信越化学製)0.002部、テトラヒドロフラン94部からなる処方の塗布液を調整し、ドクターブレードにて流延塗布し、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.1)を作製した。
【0016】
実施例2
実施例1の例示化合物No.1の代わりに表1の例示化合物中の例示化合物No.2を用いること以外は実施例1と同様の方法で感光体No.2を作製した。
【0017】
実施例3
前式(E)で表されるビスアゾ色素5部の代わりに、下式(F)で表されるトリスアゾ色素6部を用いること以外は実施例1と同様の方法で電荷発生層を作製した。
【化7】
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物No.1 6部、ポリカーボネート樹脂(K−1300:帝人化成製)10部、メチルフェニル−シリコン(KF50 100CPS:信越化学製)0.002部、テトラヒドロフラン94部からなる塗布液を調製し、実施例1と同様の方法で、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.3)を作製した。
【0018】
実施例4
例示化合物No.1の代わりに、例示化合物No.2を用いること以外は実施例3と同様の方法で感光体No.4を作製した。
【0019】
実施例5
前式(E)で表されるビスアゾ色素5部の代わりに、下式(G)で表されるビスアゾ色素6部を用いること以外は実施例1と同様の方法で電荷発生層を作製した。
【化8】
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物No.1 6部、ポリカーボネート樹脂(K−1300:帝人化成製)10部、メチルフェニル−シリコン(KF50 100CPS:信越化学製)0.002部、テトラヒドロフラン94部からなる塗布液を調製し、実施例1と同様の方法で、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.5)を作製した。
【0020】
実施例6
前式(E)で表されるビスアゾ色素5部の代わりに、X型無金属フタロシアニンX−H2Pcを用いること以外は実施例1と同様の方法で電荷発生層を作製した。
このようにして得られた電荷発生層上に、例示化合物No.1 6部、ポリカーボネート樹脂(K−1300:帝人化成製)10部、メチルフェニル−シリコン(KF50 100CPS:信越化学製)0.002部、テトラヒドロフラン94部からなる塗布液を調製し、実施例1と同様の方法で、乾燥後の膜厚が20.0μmの電荷輸送層を形成し、アルミニウム電極/電荷発生層/電荷輸送層で構成される積層型電子写真感光体(感光体No.6)を作製した。
【0021】
実施例7
X型無金属フタロシアニン1g、ポリカーボネート−Z(PC−Z)の10wt%THF溶液10g、THF9gをボールミルポット中にいれ1晩ミリングした。更にPC−Zの10wt%THF溶液20gを加えた後1晩ミリングした(これを10%分散液とする)。次に20mlサンプル瓶中に、10%分散液を1.2g、PC−Zの15wt%THF溶液を4.7g、下式(III)の正孔移動物質0.45g、例示化合物No.1を0.27g、THFを1.03g、シリコン樹脂(KF50)の1wt%THF溶液を0.15gいれた後1時間撹拌し、感光層塗布液を得た。この液をアルミニウム基板上に塗布し、乾燥して20μmの単層型感光体(感光体No.7)を作製した。
【化9】
【0022】
比較例1
フルオレン化合物を含有しないこと以外は実施例7と同様にして比較例1の単層型感光体(感光体No.8)を作製した。
【0023】
以上のようにして得られた電子写真感光体について、静電複写紙試験装置(川口電気製作所製:SP−428)を用いて以下のように特性評価を行った。
+6KVのコロナ帯電を施して、正帯電した後、20秒間暗所に放置し、その時の表面電位V0を測定し、次いでタングステンランプを用いて表面の照度が40ルックスになるように光照射し、その時V0が半分になるのに要した露光量をE1/2(lux・sec)を測定した。その結果を表5に示す。
【0024】
【表5】
【0025】
【効果】
1.請求項1
前式(I)のフルオレン化合物は、比較的簡単な方法で収率良く製造することができる新規化合物であり、該化合物はバインダ樹脂中で優れた溶解性または分散性を示す電子移動材料である。
2.請求項2
前式(I)のフルオレン化合物を電子写真感光体の感光層中に含有させると、前記のように該フルオレン化合物は、バインダ樹脂中で優れた溶解性または分散性を有し、かつ電子移動物質として優れた化合物であるため、フルオレン化合物を含有する電子写真感光体を作製した場合、従来の電子写真感光体と比べ高感度な電子写真感光体を提供することが可能である。
3.請求項3
前式(I)に示されるフルオレン化合物を積層型電子写真感光体の感光層に含有させることにより、従来の電子写真感光体と比べ高感度な電子写真感光体が得られた。
4.請求項4
前式(I)に示されるフルオレン化合物を単層型電子写真感光体の感光層に含有させることにより、従来の電子写真感光体と比べ高感度な電子写真感光体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子写真感光体の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の電子写真感光体において、表面に保護層を設けたことを特徴とする感光体の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の単層型電子写真感光体の構成を模式的に示す図である。
【図4】合成例1で得られたフルオレン化合物の赤外線吸収スペクトル図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 感光体層(積層構成)
5 保護層
6 感光体層(単層構成)
Claims (4)
- 下記一般式(I)で表わされるフルオレン化合物。
R3、R4は互いに独立して、水素原子、置換または非置換アルキル基、アルコキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のスルホニル基、置換又は非置換スルホンアミド基、置換又は非置換カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基よりなる群から選ばれたものである。
m、nは1〜4の整数を表わす。) - 少なくとも導電性支持体と該支持体の上に形成された感光層よりなる電子写真感光体において、感光層が前記式(I)で表わされるフルオレン化合物の少なくとも一種を含有するものである電子写真感光体。
- 感光層が電荷発生層と電荷輸送層の2層からなり、かつ少なくとも電荷輸送層が前記式(I)で表わされるフルオレン化合物の少なくとも一種を含有するものである電子写真感光体。
- 感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する単層で形成されてなり、かつ該層に前記式(I)で表わされるフルオレン化合物の少なくとも1種を含有している電子写真感光体。
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