JP3642314B2 - 車両用制動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、先行車両等の障害物と接触する可能性があると予測される場合に、制動力を強制的に発生させ、接触を回避するようにした車両用制動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両走行時の安全性向上を図るべく数々の装置が開発されており、車両に搭載したレーダ装置によって先行車両との車間距離を検出し、衝突の可能性がある場合に、制動力を自動的に発生させるようにした装置等が提案されている。
例えば、特開平6−298022号公報には、車両前方の障害物に対して、ブレーキ操作による衝突回避可能距離と、操舵による衝突回避可能距離と、を算出し、障害物と自車両との距離が、算出した何れの衝突回避可能距離よりも下回ったときに自動制動を行うことによって、不要な自動制動を行うことを回避するようにしたものが提案されている。
【0003】
また、例えば、特開平7−69188号公報には、前方障害物との衝突の可能性がある場合に運転者の意志とは無関係に制動力を発生させて減速を行うが、この制動力を発生させる前に、運転者に自動制動を行うことを知らしめる目的で予備制動を行うようにしたものが提案されている。この予備制動が行われることによって、運転者は予め身構えることができ、急接近に気づいて何らかの対応ができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のブレーキ操作及び操舵操作による衝突回避可能距離を検出し、障害物との距離がこれら衝突回避可能距離を下回る場合に自動制動を行うようにした方法においては、操舵による衝突回避可能距離を演算する際に、自車両に発生する横加速度を固定値として取り扱い、幾何学的な関係のみから衝突回避可能距離を演算するようにしている。
【0005】
しかしながら、操舵特性は、実際には、タイヤ特性或いはヨー方向の車両慣性モーメント、車両重量、車速、ホイールベース、トレッド、さらには、運転者の操舵特性等によって異なるため、衝突回避可能距離が本来の距離よりも大きく又は小さく演算されてしまうという問題がある。また、急制動を行う前に発生させる弱い制動力を、三角波状の制動液圧を作用させて制動力を発生させるようにしているため、一旦制動液圧が零となった後に再度急制動を行うことになり、制動液圧の立ち上がりが遅れるという問題がある。また、制動液圧が零の状態から急制動を行うため、制動力の変動が大きく、運転者に与える違和感が大きいという問題がある。
【0006】
これを解決するために、例えば、ブレーキ操作による衝突回避可能距離と、操舵操作による衝突回避可能距離とを検出し、障害物との距離が、前記ブレーキ操作による衝突回避可能距離、又は操舵操作による衝突回避可能距離の何れか一方を下回った時点で弱い制動力を発生させ始め、前記ブレーキ操作及び操舵操作による衝突回避可能距離の何れをも下回った時点で、より強い制動力を発生させるようにすることも考えられる。しかしながら、前述のブレーキ操作による衝突回避可能距離と操舵操作による衝突回避可能距離とが一致した場合には、弱い制動力が発生されない状態でより強い制動力が発生されることになり、運転者に違和感を与えてしまうという未解決の課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、運転者に違和感を与えることなく、且つ的確なタイミングで制動力を発生させることの可能な車両用制動制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用制動制御装置は、自車両と障害物との相対距離を検出する相対関係検出手段と、ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対距離に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対距離に基づいて、前記操舵操作により回避可能な相対距離よりも制動操作により回避可能な相対距離の方が短いときには第1の規定時間経過後に前記障害物との接触を制動操作により回避可能な状態にあるかを予測すると共に、前記制動操作により回避可能な相対距離よりも操舵操作により回避可能な相対距離の方が短いときには前記第1の規定時間とは異なる第2の規定時間経過後に前記障害物との接触を操舵操作により回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記第1の規定時間経過後に制動操作により回避不可能な状態にあるか又は前記第2の規定時間経過後に操舵操作により回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき、前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させるようになっていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に係る車両用制動制御装置は、自車両と障害物との相対距離及び相対速度を検出する相対関係検出手段と、ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対距離及び相対速度に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対距離及び相対速度に基づいて、規定時間経過後に、前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記規定時間経過後に、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき、前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させ、前記規定時間は前記相対関係検出手段で検出される相対速度に基づいて設定されることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に係る車両用制動制御装置は、自車両と障害物との相対関係を検出する相対関係検出手段と、ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対関係に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、前記相対関係検出手段で検出した相対関係に基づいて、規定時間経過後に、前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記規定時間経過後に、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させ、前記規定時間は運転者の走行特性に基づいて設定されることを特徴としている。
【0013】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る車両用制動制御装置によれば、第1の規定時間経過後に制動操作により回避不可能な状態にあるか又は前記第1の規定時間とは異なる第2の規定時間経過後に操舵操作により回避不可能な状態にあると予測される時点で第1の制動力を予め発生させ、操舵操作及び制動操作を行っても障害物を回避することができないと判定された時点で第1の制動力よりも大きな第2の制動力を発生させるようにしたから、第1の規定時間及び第2の規定時間を調整することにより第1の制動力が作動するタイミングを調整することができ、任意のタイミングで第1の制動力を発生させることができる。
【0014】
また、請求項2に係る車両用制動制御装置によれば、規定時間経過後に、操舵操作及び制動操作の何れによっても障害物との接触を回避不可能な状態にあると予測される時点で第1の制動力を予め発生させ、操舵操作及び制動操作を行っても障害物を回避することができないと判定された時点で第1の制動力よりも大きな第2の制動力を発生させ、前記規定時間を、相対速度に基づいて設定するようにしたから、相対速度に応じたタイミングで第1の制動力を発生させることができる。
【0015】
また、請求項3に係る車両用制動制御装置によれば、規定時間経過後に、操舵操作及び制動操作の何れによっても障害物との接触を回避不可能な状態にあると予測される時点で第1の制動力を予め発生させ、操舵操作及び制動操作を行っても障害物を回避することができないと判定された時点で第1の制動力よりも大きな第2の制動力を発生させ、前記規定時間を運転者の走行特性に基づいて設定するようにしたから、運転者の走行特性に則したタイミングで第1の制動力を発生させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した車両用制動制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
図中1は、車間距離センサとしてのスキャニング式のレーザレーダであって、車幅中央の、車両前方の障害物を検知することの可能な位置に設けられている。そして、一定角度ずつ水平方向にずれながら周期的に車両の前方方向にレーザ光を照射し前方物体から反射して戻ってくる反射光を受光して、出射タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間差に基づいて、各角度における物体までの距離を検出するようになっている。2は、車速センサであって、これらレーザレーダ1及び車速センサ2の検出信号は、コントローラ10に入力される。
【0020】
そして、コントローラ10では、予め設定された所定周期で自動制動制御処理を実行し、前記レーザレーダ1及び車速センサ2の検出信号に基づいて、自動制動を行う必要があるか否かを判定し、自動制動を行う必要があると判定されるとき、制動力制御装置15を制御して制動力を発生させる。なお、前記制動力制御装置15は、ブレーキペダルとは切り離されており、いわゆるブレーキバイワイヤ方式の構成を備えている。
【0021】
図2は、コントローラ10で実行される自動制動制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
コントローラ10では、自動制動制御処理を実行すると、まず、ステップS1において、レーザレーダ1の検出信号を読み込み、自車両前方の障害物と自車両との間の自車両の進行方向における相対距離d、及び相対速度Vrを検出し、さらに、レーザレーダ1の検出信号に基づいて、自車両前方の障害物の左右エッジまでの距離及び角度を検出する。また、これらに基づいて自車両が前方の障害物との接触を回避するために必要な横移動量Yを算出する。
【0022】
前記相対速度Vrは、例えば、前記相対距離dに対し、微分演算或いはバンドパスフィルタ処理を行うことにより算出する。
また、前記横移動量Yは、レーザレーダ1の検出信号に基づいて障害物の左右エッジを検出し、この左右エッジ位置における角度に基づいて検出する。つまり、図3に示すように、レーザレーダ1の検出信号及びそのスキャニング角度に基づいて、自車両の進行方向を基準としてこれに対する障害物の左右エッジの角度θ1 及びθ2 を検出する。そして、図3に示すように、自車両前方の障害物に対し、障害物の左右エッジの角度θ1 及びθ2 のうち、何れか小さい方(図3の場合には、θ1 )を選択し、これをθとして次式(1)に基づいて、横移動量Yを算出する。
【0023】
Y=d・sin(θ)+Lw/2 ……(1)
なお、式中のLwは自車両の車幅である。また、本実施の形態においては、レーザレーダ1を車両の車幅中央の位置に設けた場合について説明しているが、車幅中央から左右の何れかの方向にオフセットして取り付けられている場合には、前記(1)式においてオフセット分を考慮する必要がある。
また、障害物の中心位置に対し、自車両の中心位置が比較的ずれている場合等、左右エッジの角度θ1 及びθ2 のうち何れか一方のエッジを検出することができない場合には、エッジを検出することができた側のエッジ角度をθとして上記式(1)により、横移動量Yを算出する。
【0024】
ここで、上述の場合、レーザレーダ1としてスキャニング式のレーザレーダを用いた場合について説明しているが、ある幅を持った複数本のビームを出力可能なビーム式のレーザレーダを用いた場合には、図4に示すように、レーザレーダ1の検出信号に基づいて、前方障害物は、ある幅をもった範囲内に存在するとして検出される。
例えば図4の場合には、自車両の進行方向に対し右方向に、角度θ1 からθ2 だけずれた位置の間に、障害物の右側端部が存在すると判定する。そして、この場合には、前方障害物の右エッジ位置は、最小値であるθ1 であるとし、これをθとして前記(1)式に基づいて横移動量Yを算出する。
【0025】
なお、この場合にも、自車両の進行方向に対し、右方向又は左方向のみについて障害物のエッジが検出された場合には、エッジを検出することができた側のエッジ角度をθとし、上記(1)式に基づいて横移動量Yを算出する。
また、レーザレーダ1が車両中央に配設されておらず、左右何れかにオフセットして取り付けられている場合には、前記(1)式を、オフセット分を考慮して補正する。
【0026】
このようにして、横移動量Yを算出することによって、自車両に対する障害物のオフセット量が異なる場合においても、それぞれの場合に応じて必要な操舵回避のための横移動量を算出し、操舵回避が可能であるか否かの演算を高精度に行うことができるようになっている。
次いで、ステップS2に移行し、自車両前方の障害物との接触を制動操作を行うことによって回避することができるかどうかの判定を行う。この判定条件は、次のように設定される。
【0027】
図3に示すように、自車両と自車両前方の障害物との距離がdであり、相対速度がVrであるものとする。このとき、制動によって接触を回避する場合に発生する減速度をa(例えば、8.0〔m/s2 〕)とし、運転者がブレーキペダルを踏み込んだ場合に減速度が発生するまでの無駄時間をTd (例えば、0.2秒)とすると、制動によって障害物との接触を回避するためには、相対速度Vrと、障害物との距離dとの関係が次式(2)を満足すればよい。
【0028】
d<−Vr・Td +(Vr)2 /(2・a) ……(2)
したがって、ステップS1で検出した障害物との間の距離dと相対速度Vrとが前記(2)式を満足するかどうかを判定する。
続いて、ステップS3に移行し、上記ステップS2で、障害物との接触を制動操作によって回避可能であると判定された場合に、予め設定した規定時間TcB 経過後に、制動操作による接触回避が不可の状態となっているかどうかを予測する。つまり、次式(3)の関係を満足するかどうかを判定する。
【0029】
d<−Vr・Td +(Vr)2 /(2・a)+Vr・TcB ……(3)
続いて、ステップS4に移行し、障害物との接触を操舵操作を行うことによって回避することができるか否かを判定する。この判定は次のように行う。
まず、ステップS1で算出した、障害物との接触を回避するために必要な横移動量Yだけ横移動するのに必要な時間Tyを算出する。ここで、車両の操舵特性は次のように表すことができる。
【0030】
m・v・(r+dβ/dt)=2・YF +2・YR ……(4)
IZ ・dr/dt=2・lF ・YF −2・lR ・YR ……(5)
YF =fF 〔β+(lF /v)・r−θF 〕
YR =fR 〔β−(lR /v)・r〕
なお、(4)及び(5)式中の、mは車両重量、IZ は車両ヨー方向の慣性モーメント、vは車速、rはヨーレート、βは車体スリップ角、lF は車両重心から前輪までの距離、lR は車両重心から後輪までの距離、YF 及びYR は、前輪及び後輪にそれぞれ発生する横力である。
【0031】
また、θF は、前輪舵角であって、緊急時には運転者は例えば図5に示すように、ある操舵速度で操舵を行い且つある操舵量最大値で操舵すると仮定する。なお、図5において、横軸は時間、縦軸は舵角であって、時間の経過に伴ってある傾きで舵角が増加し、つまりある操舵速度で舵角が操舵量最大値まで増加し、操舵量最大値となった時点以後、舵角は操舵量最大値に維持されると仮定する。
また、fF 及びfR はタイヤスリップ角と、タイヤ横力との対応を表す関数であって、例えば図6に示すように設定される。なお、図6において、横軸はタイヤスリップ角、縦軸はタイヤ横力であって、タイヤスリップ角が大きくなるほどタイヤ横力は大きくなり、且つタイヤスリップ角が小さいほどタイヤスリップ角の変化に対するタイヤ横力の変化量が大きくなるように設定される。
【0032】
ここで、横移動量Yは、車速vとヨーレートrと、車体スリップ角βとから次式(6)で表すことができる。
Y=∫〔v・sin(∫rdt+β)〕dt ……(6)
したがって、前記(4)〜(6)式から、回避に必要な横移動量Yだけ自車両が横移動する際の所要時間Tyを算出することができる。
なお、(4)〜(6)式の演算をオンラインで実行するには、計算時間が非常にかかるため、予めオフラインで演算を行い、その演算結果を、例えば図7に示すようにマップ化しておいてもよい。
【0033】
なお、図7において、横軸は、操舵回避に必要な横移動量、縦軸は操舵回避にかかる時間である。操舵回避に必要な横移動量が増加するほど、操舵回避にかかる時間も増加し、且つ、車速が低くなるほど、操作回避に係る時間が増加するように設定される。したがって、障害物を回避するために必要な横移動量Yだけ横移動するのに必要な時間、つまり、操舵操作による接触回避に要する所要時間Tyを算出する場合には、車速vと横移動量Yとに対応するマップの値を検索すればよい。
【0034】
そして、接触までの推定時間d/Vrと、操舵回避にかかる時間Tyとの間に、次式(7)が成り立つとき、操舵操作による障害物との接触は回避不可能であると判断する。
d/Vr<Ty ……(7)
ここで、前記(4)〜(7)式に基づいて、操舵操作による接触回避が可能であるか否かを判定することによって、車両の操舵特性の違いに応じて操舵回避時間を演算し、車両毎に異なる操舵特性や車速域で異なる操舵特性によらず、操舵回避が可能か不可能かを正確に演算するようになっている。また、運転者の緊急時のステアリング操作の特性も加味して車両の操舵回避時間を演算することによって、より正確に緊急時の操舵回避時間を演算するようになっている。
【0035】
次いで、ステップS5に移行し、上記ステップS4で障害物との接触を操舵操作により回避可能であると判断された場合に、予め設定された規定時間TcS 経過後に操舵操作による接触回避が不可の状態となっているかどうかを予測する。つまり、次式(8)の関係を満足するかどうかを判定する。
d/Vr<Ty+TcS ……(8)
次いで、ステップS6に移行し、自車両前方の障害物との接触に対する、ステップS2での制動による回避可能判断及びステップS4での操舵による回避可能判断の結果に基づき、制動による接触回避が不可能であり、且つ操舵による接触回避が不可能であると判断される場合には、ステップS7に移行し、予め設定した大きさFH の制動力を予め設定した傾きで速やかに発生させるための制動力指令値を、制動力制御装置15に出力する。そして、図示しない上位プログラムに戻る。
【0036】
一方、ステップS6で、制動操作及び操舵操作共に障害物を回避不可能ではないと判定される場合にはステップS8に移行し、前記ステップS3での規定時間TcB 経過後の制動による回避が不可であるかどうかの予測結果に基づき、規定時間TcB 経過後に制動による接触回避が不可になると予測される場合には、ステップS9に移行する。
このステップS9では、前記ステップS5での規定時間TcS 経過後の操舵による回避が不可であるかどうかの予測結果に基づき、規定時間TcS 経過後に操舵による接触回避が不可になると予測される場合、つまり、規定時間TcB 経過後に制動による接触回避が不可になると予測され且つ規定時間TcS 経過後に操舵による接触回避が不可になると予測される場合には、ステップS10に移行し、予め設定した大きさFL の制動力を、図8に示すように傾きαで発生させるための制動力指令値を、制動力制御装置15に出力する。そして、図示しない上位プログラムに戻る。
【0037】
一方、ステップS8の処理で、規定時間TcB 経過後に制動による接触回避が不可になると予測される場合、又は、ステップS9の処理で規定時間TcS 経過後に操舵による接触回避が不可になると予測される場合には、ステップS11に移行し、制動力制御解除処理を行う。すなわち、制動力を発生させていない場合には、引き続き制動力を発生させない。一方、制動力を発生させている場合には、予め設定した傾きで徐々に制動力が小さくなるよう制動力制御装置15への制動力の指令信号を制御し、制動力制御装置15で発生する制動力を徐々に小さくし制動力の発生を停止させる。そして、図示しない上位プログラムに戻る。なお、速やかに制動力が小さくなるよう制御するようにしているが、制動力の変動によって運転者に違和感を与えない程度の割合で制動力を減少させるようにしてもよく、このようにすることによって、制動力が急に減少することによって運転者に違和感を与えることを回避することができる。
【0038】
ここで、前記制動力FL は、図8に示すように、零から一定の傾きαで徐々に大きくなる値であり、また、前記制動力FH は、前記制動力FL よりも大きい一定値に設定され、例えば、制動操作及び操舵操作を行っても障害物との接触を回避することのできない状況にある場合に、自車両を十分減速させることの可能な値に設定される。
また、前記制動力FL の傾きαは、制動力が制動力FL から制動力FH に移行する際に、その制動力の差ΔFが所定値以下となるように演算される値である。前記差ΔFは、自車両に作用する制動力がFL からFH に変化したときに、運転者に違和感を与えることのない値に設定される。例えば、次のようにして算出する。
【0039】
つまり、制動力FL が作用し始めてから制動力FH が作用するまでの所要時間Tcは、規定時間TcB 経過後に制動操作による接触回避が不可能と予測される場合にはTcB 、規定時間TcS 経過後に操舵操作による接触回避が不可能と予測される場合にはTcS であると予測することができるから、これを所要時間Tcとして設定する。また、規定時間経過後に制動操作及び操舵操作共に接触回避が不可能と予測される場合には、例えば、規定時間TcB 及びTcS の何れか短い方を選択し、これを所要時間Tcとする。なお、所要時間Tcはこれに限るものではなく、任意に設定することができる。そして、これに基づいて次式(9)にしたがって、制動力の傾きαを設定する。ただし、αが十分小さければ、tanα≒αとしてもよい。
【0040】
tanα=(FH −ΔF)/Tc ……(9)
そして、このようにして算出した傾きαで制動力FL を徐々に上昇させる。
なお、前記ステップS3の処理において用いる規定時間TcB 、及び前記ステップS5の処理において用いる規定時間TcS は、前記制動力FL が作用している状態から、制動力FH が作用する状態となったときに、制動力FL よりも大きな制動力FH が作用することによって、運転者に違和感を与えることのない時間、つまり、制動力FL が零から十分に大きくなるまでの所要時間に基づいて設定される時間であって、例えば1.0秒程度に設定される。なお、規定時間TcB 及びTcS は固定値に限るものではなく、車速や相対速度Vrに応じて設定するようにしてもよい。
【0041】
また、規定時間TcS は、必ずしも前記規定時間TcB と同一値に設定する必要はなく、異なった値を設定するようにしてもよい。
次に、上記実施の形態を説明する。
今、自車両前方に先行車両が存在するものとすると、コントローラ10では、図2の自動制動制御処理にしたがって、レーザレーダ1の検出信号を読み込み、この検出信号に基づいて、先行車両との車間距離d及び相対速度Vrを算出し、さらに、先行車両の左右エッジ角度を検出する。
【0042】
ここで、先行車両が図3に示すように、自車両前方のやや左よりに位置する場合には、レーザレーダ1の検出信号に基づいて左右のエッジ角度θ1 及びθ2 が検出され、より小さい方のθ1 が選択されてこれに基づいて横移動量Yが算出される(ステップS1)。
このとき、例えば先行車両との間の距離dが十分大きく、また、先行車両との相対速度Vrが比較的大きい場合等、先行車両との間の距離d及び相対速度Vrが前記(2)式を満足する場合には、制動によって障害物を回避することができると判定し(ステップS2)、さらに、前記(3)式を満足する場合には、規定時間TcB 経過後も、制動による接触回避が可能であると判定する(ステップS3)。次いで、先に算出した横移動量Yだけ移動するのに必要な時間Tyを算出し、これと、自車両が先行車両に接触するまでの推定時間d/Vrとが前記(7)式を満足しないときには、操舵操作によって障害物との接触は回避可能であると判断し(ステップS4)、さらに、前記(8)式を満足しないときには、規定時間TcS 経過後も、操舵による接触回避が可能であると判定する(ステップS5)。
【0043】
したがって、ステップS6からステップS8を経てステップS11に移行し、制動力制御装置15による制動力の発生は行わない。
したがって、先行車両との間の車間距離dが比較的大きく、運転者の操舵操作及び制動操作によって先行車両との接触を回避可能であり且つ規定時間TcB 経過後、及び規定時間TcS 経過後においても運転者の操舵操作及び制動操作によって先行車両との接触を回避可能であると予測されるときには、制動力制御装置15によって制動力は発生されない。よって、運転者の操舵操作及び制動操作によって先行車両を回避可能である場合に、不要な制動力が発生されることはない。
【0044】
この状態から、例えば先行車両との車間距離dが短くなり、車間距離dが前記(2)式を満足するが(ステップS2)、前記(3)式を満足しなくなり、また、規定時間TcB 経過後に制動による接触回避が不可となると予測されるが(ステップS3)、操舵による接触回避は可能であり且つ規定時間TcS 経過後も操舵による接触回避は可能であると予測される状態となると(ステップS4、S5)、規定時間TcB 経過後に、制動による接触回避が不可となると予測されるが、操舵による接触回避は可能であるから、ステップS6からステップS8を経てステップS11に移行し、制動力制御装置15による制動力の発生は行わない。
【0045】
そして、制動による接触回避が不可となった状態でも、操舵による接触回避は規定時間TcS 経過後も可能であると予測される間は、ステップS6からS8、S9を経てステップS11に移行し、制動力制御装置15による制動力の発生は行わない。
この状態から、制動による接触回避が規定時間TcB 経過後に不可となると予測される状態、或いは制動による接触回避が不可であると判定され、且つ、現時点では操舵による接触回避が可能であるが、規定時間TcS 経過後に操舵による接触回避が不可となると予測される状態となると、ステップS6からステップS8、ステップS9を経てステップS10に移行し、大きさFL の制動力を発生するよう制動力制御装置15が制御される。
【0046】
したがって、図9に示すように、規定時間TcB 以内に制動による接触回避が不可となると予測され、且つ規定時間TcS 以内に操舵による接触回避が不可となると予測される時点t1 で、制動力制御装置15から制動力FL が発生されることになり、この制動力FL は、零から傾きαで増加する。
そして、制動による接触回避が不可である状態でも、操舵による接触回避が可能である間は、制動力FL が発生され、且つこの制動力FL は徐々に大きくなっていく。
【0047】
そして、時点t2 で、車間距離dが前記(7)式を満足しなくなり、操舵による接触回避が不可と判定されると、制動操作及び操舵操作の何れを行っても接触回避が不可であるから、ステップS6からステップS7に移行し、制動力FH を発生するよう制動力制御装置15を制御する。
これによって、図9に示すように、時点t2 で、制動力FL よりも大きい制動力FH が発生される。したがって、制動によっても操舵によっても先行車両との接触回避が不可能であり、すなわち運転者による操作によっては接触を回避することができないと判断されたときに、強制的に制動力を発生させ、且つこのとき、これまでよりも大きい制動力FH を発生させることによって、先行車両との接触が回避されることになる。
【0048】
このとき、時点t2 で、制動力FL よりも大きな制動力FH が作用することになるが、時点t1 で規定時間TcB 及び規定時間TcS 経過後に、制動操作及び操舵操作共に接触回避が不可能となると予測される時点で制動力FL を発生させ、且つ徐々に作用する制動力を大きくするようにし、時点t2 でより大きな制動力FH が作用するときに、それまでの制動力FL と制動力FH との差が、予め設定したしきい値ΔFよりも小さくなるようにしているから、時点t2 でこれまでよりも、より大きな制動力FH が作用したとしても、運転者に違和感を与えることはない。
【0049】
一方、例えば先行車両との間の距離dが比較的小さく、また、先行車両との相対速度Vrが比較的小さい場合等、規定時間TcB 及びTcS 経過後も制動及び操舵による接触回避が可能な状態から、規定時間TcS 経過後に操舵による接触回避が不可となると予測される状態となると、ステップS6からステップS8に移行するが、規定時間TcB 経過後に制動による接触回避が可能であると予測される間は、ステップS11に移行し、制動力制御装置15から制動力は発生されない。
【0050】
さらに、操舵による接触回避が不可であると判定された場合でも、制動による接触回避が可能であると判定される間は、ステップS6からS8を経てステップS11に移行し、制動力は発生されない。
この状態から、操舵による接触回避が規定時間TcS 経過後に不可となると予測される状態、或いは操舵による接触回避が不可であると判定され、且つ、現時点では制動による接触回避が可能であるが、規定時間TcB 経過後に操舵による接触回避が不可となると予測される状態となると、ステップS6からステップS8、ステップS9を経てステップS10に移行し、大きさFL の制動力を発生するよう制動力制御装置15が制御される。
【0051】
そして、操舵操作による接触回避が不可であると判定された状態であっても、制動操作による接触回避が不可であると判定されない間は、制動力FL が発生され、且つこの制動力FL は徐々に大きくなっていく。
そして、時点t2 で制動及び操舵による接触回避が共に不可能となった時点で、制動力FH を発生させるが、制動力FH は制動力FL との差がしきい値ΔFよりも小さくなるように設定されているから、急に大きな制動力FH を発生させても運転者に違和感を与えることはない。
【0052】
そして、この状態から、制動力FH が作用し、これに伴って、運転者が操舵或いは制動を行うことによって、先行車両との距離dが確保され、或いは相対速度Vrが減少し、時点t3 で前記(3)式又は(8)式が成立するようになると、ステップS8又はステップS9からステップS11に移行し、このとき、制動力FH が発生されているから、制動力制御装置15で発生される制動力が、FH から所定の傾きで減少するように、制動力制御装置15を制御する。
【0053】
これによって、図9に示すように、発生される制動力が所定の傾きで減少することになり、このとき、作用させている制動力を徐々に減少させるようにしているから、制動力の付与を停止する際に、運転者に与える違和感を低減することができる。
このように、制動力制御装置15によって制動力を作用させる場合には、突然大きな制動力FH を作用させるのではなく、制動力FL を零から徐々に増加させて作用させ、また、制動力の付加を中止する場合には、制動力FH から徐々に減少させて中止するようにしているから、制動力の付加及びその停止に伴って運転者に与える違和感を低減することができる。
【0054】
図10は、相対速度Vr及び相対距離dに対する、制動力制御装置15による制動力の作動範囲を表したものである。
ここで、上述のように、制動操作及び操舵操作による接触回避の判断は、前記(2)式及び(7)式に基づいて行っており、障害物との相対距離dだけでなく、障害物との相対速度Vrにも依存している。制動操作による接触回避が可能な相対距離dの限界(以後、制動回避限界という。)は、図11に曲線L11で示すように、相対速度Vrが増加するにつれて大きくなり且つ相対速度Vrが大きいほどその変化度合いが大きくなる。一方、操舵操作による接触回避が可能な相対距離dの限界(以後、操舵回避限界という。)は、図11に直線L12で示すように、相対速度Vrが増加するにつれてこれに比例して大きくなる。
【0055】
このため、制動及び操舵操作による接触回避が共に不可となる限界は、図10に示すように、相対速度Vrが、制動回避限界L11と操舵回避限界L12とが一致する一致相対速度Vr* 以下の場合には制動回避限界L11、相対速度VrがVr* 以上の場合には操舵回避限界L12となる、特性線L1で表される。したがって、特性線L1よりも相対距離dが小さい領域が、制動力FH が発生される領域となる。
【0056】
そして、規定時間TcB 及びTcS 経過後に制動操作及び操舵操作による接触回避が共に不可となると予測される相対距離dを表す特性線L2は、相対速度Vrが一致相対速度Vr* よりも大きい領域では、特性線L1よりも規定時間TcS に相当する距離だけ離れた相対距離d、相対速度Vrが一致相対速度Vr* よりも小さい領域では、特性線L1よりも規定時間TcB に相当する距離だけ離れた相対距離dとなる。したがって、特性線L2と特性線L1で挟まれる領域が制動力FL が発生される領域となる。
【0057】
ここで、図11に示すように、制動回避限界L11及び操舵回避限界L12は、相対速度Vrが一致相対速度Vr* となったとき一致する。
このため、例えば、図11に示すように、制動操作或いは操舵操作の何れかによる接触回避が不可となった時点で制動力FL を発生させ、制動操作及び操舵操作による接触回避が共に不可となった時点で制動力FH を発生させるようにした場合、相対速度VrがVr* となる付近では、制動力FL が十分大きくなる前、或いは制動力FL が発生されずに、突然制動力FH が発生される場合があるという可能性も残る。このため、運転者に違和感を与える可能性も考えられる。
【0058】
しかしながら、上記実施の形態においては、図10に示すように、規定時間TcB 及びTcS 経過後に制動及び操舵による接触回避が共に不可となると予測される時点で制動力FL を発生させるようにしているから、実際に制動及び操舵による接触回避が共に不可となり制動力FH を発生させる時点では、予め制動力FL が発生された状態からより大きな制動力FH が発生されることになる。よって、相対速度Vrに関わらず、運転者に違和感を与えることを低減することができる。
【0059】
また、このとき、規定時間経過後に制動及び操舵による接触回避が可能な状態にあるかどうかを予め予測し、予測に基づいて制動力FL を発生させるようにしているから、制動力FH を発生させる前の時点で、確実に制動力FL を発生させることができる。
また、このとき、規定時間TcB 及びTcS は、予め制動力FL を発生させておくことによって、より大きな制動力FH が発生された時点で運転者に違和感を与えることを低減可能な時間に設定されているから、より確実に違和感の低減を図ることができる。
【0060】
また、図10に示すように、制動力FL を発生させるタイミングは、相対速度Vrが一致相対速度Vr* よりも大きいか否かによって、制動回避限界L11及び規定時間TcB と、操舵回避限界L12及び規定時間TcS とで決まる特性線L2で規定されるから、これら規定時間TcB 及びTcS を調整し、例えば、規定時間TcB を長めに設定すれば、相対速度Vrが比較的小さい領域で、相対距離dが比較的大きい時点で早めに制動力FL を発生させることができ、逆に、規定時間TcS を長めに設定すれば、相対速度Vrが比較的大きい領域で、相対距離dが比較的大きい時点で早めに制動力FL を発生させることができる。したがって、これら規定時間TcB 及びTcS を、例えば、運転者の走行特性に応じて調整することによって、運転者に適した、的確なタイミングで制動力FL の発生を開始することができる。
【0061】
また、制動力を作用させるタイミングを、先行車両との車間距離d及び相対速度Vrだけでなく、車両の操舵特性等車両特性をも考慮して特定するようにしているから、車両毎に異なる操舵特性や車速域で異なる操舵特性によらず、操舵回避が可能か不可能かをより的確に算出することができる。また、運転者の緊急時のステアリング操作の特性をも考慮して車両の操舵回避時間を算出するようにしているから、より高精度に緊急時の操舵回避時間を算出することができる。
【0062】
また、操舵及び制動による接触回避が共に不可能であると判定され、強い制動力FH を発生させる必要のある時点よりも前の、規定時間経過後に操舵及び制動による接触回避が不可となると予測された時点で予め弱い制動力FL を発生させておき、この制動力FL を徐々に大きくし、強い制動力を発生させる必要のある時点で、より大きな制動力FH を発生させるようにしているから、この制動力FH を発生させる時点では、制動力は予め立ち上がっているので、制動力FH を発生させるべき時点での制動力の立ち上がりの遅れを低減することができる。よって、速やかに制動力を作用させることができ、安全性をより向上させることができる。
【0063】
また、障害物を制動操作により回避することができるか、また、操舵操作により回避することができるかを個別に判断し、制動操作を行っても操舵操作を行っても障害物との接触を回避することができないと判定されるときに制動力FH を発生させるようにしているから、操舵操作、或いは制動操作の何れかを行うことによって障害物を回避することのできるような場合に、不必要に大きな制動力を発生させることを回避することができる。
【0064】
また、操舵操作によって障害物との接触を回避することができるか否かを判定する際に、横移動量を検出しこれに基づき判定するようにしたから、自車両と障害物とにオフセットが生じている場合であっても、オフセット量を考慮して的確に操舵回避判定を行うことができる。また、この横移動量に基づき操舵回避判定を行う際に、車両諸元や車両の操舵特性、運転者の操舵諸元等をも考慮して判定するようにしたから、車両毎に異なる操舵特性や運手者の操舵諸元等に関わらず、的確に操舵回避判定を行うことができる。したがって、的確なタイミングで制動力を発生させることができる。
【0065】
また、横移動量を設定する際に、障害物の左右のエッジ角度θ1 及びθ2 の何れか小さい方を選択し、この方向に操舵した場合に障害物を回避することができるかどうかを判定するようにしている。よって、左右方向のうち操舵回避を行うことができる可能性がより高い方について操舵回避判定を行うことになるから、操舵判定を的確に行うことができ、また、この判定の結果、操舵回避可能である場合には、制動力を発生させないようにすることによって、左右のうち何れか一方の方向に操舵回避可能である場合には、制動力を発生させないから、操舵回避可能であるにも関わらず、不必要に制動力を発生させることを確実に回避することができる。
【0066】
ここで、制動力制御装置15が制動力発生手段に対応し、レーザレーダ1及び図2のステップS1の処理が相対関係検出手段に対応し、ステップS2及びステップS4の処理が接触回避判定手段に対応し、ステップS3及びステップS5の処理が接触回避予測手段に対応し、ステップS6からステップS11の処理が制御手段に対応し、制動力FL が第1の制動力に対応し、制動力FH が第2の制動力に対応している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した、制動制御装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1のコントローラ10における自動制動制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】スキャニング方式のレーザレーダを用いた場合の、自車両と、自車両前方障害物との位置関係を示す説明図である。
【図4】複数本のビームを備えたビーム方式のレーザレーダを用いた場合の、自車両と、自車両前方障害物との位置関係を示す説明図である。
【図5】緊急時の運転者の操舵特性を表す特性図である。
【図6】タイヤスリップ角とタイヤ横力との関係を表す特性図である。
【図7】横移動量Yと操舵回避に要する所要時間Tyと車速との関係を表す特性図である。
【図8】制動力FL とFH との関係を表す説明図である。
【図9】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図10】制動力の作動範囲を表す特性図である。
【図11】制動回避限界と操舵回避限界との対応を表す特性図である。
【符号の説明】
1 レーザレーダ
2 車速センサ
10 コントローラ
15 制動力制御装置
Claims (3)
- 自車両と障害物との相対距離を検出する相対関係検出手段と、
ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対距離に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対距離に基づいて、前記操舵操作により回避可能な相対距離よりも制動操作により回避可能な相対距離の方が短いときには第1の規定時間経過後に前記障害物との接触を制動操作により回避可能な状態にあるかを予測すると共に、前記制動操作により回避可能な相対距離よりも操舵操作により回避可能な相対距離の方が短いときには前記第1の規定時間とは異なる第2の規定時間経過後に前記障害物との接触を操舵操作により回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、
前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、
当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記第1の規定時間経過後に制動操作により回避不可能な状態にあるか又は前記第2の規定時間経過後に操舵操作により回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、
前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき、前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させるようになっていることを特徴とする車両用制動制御装置。 - 自車両と障害物との相対距離及び相対速度を検出する相対関係検出手段と、
ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対距離及び相対速度に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対距離及び相対速度に基づいて、規定時間経過後に、前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、
前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、
当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記規定時間経過後に、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、
前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき、前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させ、前記規定時間は前記相対関係検出手段で検出される相対速度に基づいて設定されることを特徴とする車両用制動制御装置。 - 自車両と障害物との相対関係を検出する相対関係検出手段と、
ブレーキペダルの操作とは独立に制動力を発生させる制動力発生手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対関係に基づいて前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能であるかを判定する接触回避判定手段と、
前記相対関係検出手段で検出した相対関係に基づいて、規定時間経過後に、前記障害物との接触を、操舵操作及び制動操作の何れにより回避可能な状態にあるかを予測する接触回避予測手段と、
前記制動力発生手段を制御し、前記接触回避判定手段での判定結果及び前記接触回避予測手段での予測結果に応じて制動力を発生させる制御手段と、を備え、
当該制御手段は、前記接触回避予測手段において、前記規定時間経過後に、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能な状態にあると予測されるとき、第1の制動力を発生させ、前記接触回避判定手段において、前記操舵操作及び制動操作共に接触を回避不可能であると判定されるとき前記第1の制動力よりも大きい第2の制動力を発生させ、前記 規定時間は運転者の走行特性に基づいて設定されることを特徴とする車両用制動制御装置。
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