JP3629420B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は反発性能を維持しながら、良好なスピン特性、すなわちアイアンクラブで打撃した際、スピン量がコントロールしやすく、しかも耐カット性に優れたゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体センターに糸巻き層を形成し、これにバラタカバーを被覆したゴルフボールは打球感、コントロール性に優れていることから上級ゴルファーおよびプロゴルファーに広く使用されていた。しかし係るゴルフボールの構造は製造工程が複雑であることや、耐カット性に劣ることから、最近ではバラタカバーに代わる種々の軟質カバー材が提案されている。
【0003】
たとえば、特開平10−179802号公報ではカバーの基材樹脂が、アイオノマー樹脂とエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、またはエポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との二成分の加熱混合物を主成分として構成され、カバーを構成する組成物の曲げ剛性率が50〜300MPaで、かつショアD硬度は40〜60であることを特徴とするゴルフボールが提案されている。かかる技術は打球感、スピン性能、飛行性能の改善を意図したものであるが耐カット性は改善の余地がある。
【0004】
さらに特開平9−173504号公報には油状物質を含有する固形ゴムセンターと軟質カバー材を用いることにより、打球感を改善するとともにショートアイアンでのスピン量を増大させることが開示されている。
【0005】
しかしながら固形ゴムセンターの外側に耐油性ゴムや高い硬度のアイオノマー樹脂を用いているため、反撥性能および打球感になお改善の余地がある。
【0006】
また、特開平10−137365号公報には熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを主材とし繊維状ホウ酸アルミニウムウィスカを配合し、反発性能、耐久性および耐カット性の改善を意図した技術が提案されている。しかしかかる技術は、上記ウィスカの配合によりカバー材の反発性能を低下することとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のゴルフボールの有する問題点を解決するもので、反発性能、耐カット性およびスピン特性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はコアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーが熱可塑性エラストマーを主成分とするポリマー成分に、有機短繊維を混合したことを特徴とするゴルフボールである。
【0009】
前記熱可塑性エラストマーはスチレン系熱可塑性エラストマーまたはウレタン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0010】
そして本発明のカバーに用いられるポリマー成分には熱可塑性樹脂、たとえばアイオノマー樹脂を、ポリマー成分100重量部に対し50重量部未満混合してもよい。
【0011】
さらに、前記有機短繊維の配合量は熱可塑性エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂等のポリマー成分100重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部である。
【0012】
さらに本発明では、望ましくはカバー組成物の曲げ剛性率が80〜300MPaであり、カバー表面のショアD硬度が41〜56の範囲に設定される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、コアと、該コアを被覆するカバーよりなるゴルフボールである。そして、カバーはポリマー成分として熱可塑性エラストマーを含む組成物である。
【0014】
本発明のカバー組成物に使用する熱可塑性エラストマーはスチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびアミド系熱可塑性エラストマー等が用いられる。
【0015】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーとは、分子内にソフトセグメントとハードセグメントを有するブロック共重合体である。ソフトセグメントとして共役ジエン化合物から得られる、たとえば、ブタジエンブロックあるいはイソプレンブロック等の単位である。ここで共役ジエン化合物としては、たとえばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の中から1種または2種以上が選択でき、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。ハードセグメントを構成する成分としては、スチレンおよびその誘導体、たとえばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等の中から1種または2種以上が選択された化合物から得られるスチレンブロック等の単位である。特にスチレンブロック単位が好適である。
【0016】
具体的なスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、たとえばスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS構造)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)、そのブタジエンの二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS構造)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)、そのイソプレン二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS構造)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS構造)およびそれらを変性したもの等が挙げられる。
【0017】
なお上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造におけるスチレン(またはその誘導体)の含量は共重合体中10〜50重量%、特に15〜45重量%の範囲が好ましい。10重量%より少ない場合、カバーは軟らかくなり耐カット性は低下する傾向にあり、一方50重量%より多い場合は、打球感およびコントロール性が充分維持できない。
【0018】
本発明では、上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造の共重合体の一部にエポキシ基、水酸基、酸無水物、カルボキシル基から選択される官能基で変性された変性体を使用できる。
【0019】
たとえばエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリブタジエンであり、そのポリブタジエン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよく、また、エポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリイソプレンであり、そのポリイソプレン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよい。
【0020】
エポキシ化されたスチレン系熱可塑性エラストマーは、エポキシ基当量が200〜3000の範囲のものが使用できる。かかるエポキシ化された熱可塑性エラストマーをアイオノマー樹脂等と混合する際、アイオノマー樹脂の遊離のカルボキシル基と反応が生じ、カバー組成物の強度は高くなり、耐カット性が一層改善される。エポキシ等量が200未満の場合、上記耐カット性の効果は少なく、一方、エポキシ基当量が3000より多い場合は、エポキシ基とアイオノマー樹脂中の遊離のカルボキシル基との反応量が多くなりすぎ、流動性が悪くなって、ボールの成形が困難になるおそれがある。
【0021】
水酸基、酸無水物およびカルボキシル基についても前記ブロック共重合体の分子鎖の中間部分または末端に導入される。
【0022】
次に、本発明のカバー組成物はポリマー成分として熱可塑性エラストマーに、熱可塑性樹脂を混合できる。ここで熱可塑性樹脂はアイオノマー樹脂、ポレエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ACS樹脂およびポリアミド等の汎用樹脂が含まれるが、特にアイオノマー樹脂が好ましい。
【0023】
前記アイオノマー樹脂としては、たとえばα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体であってそのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られる二元共重合体がある。またα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体で、そのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものが挙げられる。
【0024】
そしてそれらの組成比としては、アイオノマー樹脂のベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の場合、α−オレフィンが80〜90重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が10〜20重量%であることが好ましい。ベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の場合、α−オレフィンが70〜85重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が5〜30重量%、特に好ましくは、12〜20重量%で、α,β−不飽和カルボン酸エステルが10〜25重量%であることが好ましい。またこれらのアイオノマー樹脂はメルトインデックス(MI)が0.1〜20、特に0.5〜15であることが好ましい。カルボン酸含量またはカルボン酸エステル含量を上記範囲とすることにより反発性を高めることができる。
【0025】
上記α−オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましい。炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などか用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。
【0026】
上記α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどがある。そして、アイオノマー樹脂が、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである場合は、そのメルトインデックスが3〜7で、曲げ剛性率が200〜400MPaのいわゆる高剛性でかつハイフロータイプのものであることが好ましい。
【0027】
上記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンケミカル社から市販されている二元共重合体のアイオノマー樹脂としてハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7318(Na)、ハイミランAM7315(Zn)、ハイミランAM7317(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランMK7320(K)があり、また三元共重合体のアイオノマー樹脂として、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7316(Zn)などがある。さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン8945(Na)、サーリン8940(Na)、サーリン9910(Zn)、サーリン9945(Zn)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、三元共重合体系アイオノマー樹脂として、サーリンAD8265(Na)、サーリンAD8269(Na)などがある。
【0028】
エクソン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック7010(Zn)、アイオテック8000(Na)などがある。なお、上記アイオノマー樹脂の商品名の後に括弧内で記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。また、本発明において、カバーの組成物に用いられるアイオノマー樹脂は、上記例示のものを2種以上混合してもよいし、上記例示の1価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
本発明のカバーのポリマー成分は好ましくは熱可塑性エラストマーを主成分とする。すなわち熱可塑性エラストマーはポリマー成分100重量部に対して、少なくとも50重量部、好ましくは少なくとも60重量部有することにより、スピン性能を高いレベルに維持できる。またポリマー成分の全量を熱可塑性エラストマーとすることも可能である。
【0030】
一方、熱可塑性エラストマーにアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂と混合することにより、カバー組成物に適度の剛性を付与し、良好な打撃感が得られる。特にアイオノマー樹脂を官能基変性のスチレン系熱可塑性エラストマー、またはウレタン系熱可塑性エラストマーと混合した場合、アイオノマー樹脂のカルボキシル基と上記変性官能基等との反応または相互作用によってカバー組成物の反発性能を維持しながら耐カット性を向上できる。ここで熱可塑性樹脂にアイオノマー樹脂を用いる場合、アイオノマー樹脂(X成分)と熱可塑性エラストマー(Y成分)の混合比(X成分/Y成分)は重量比で50/50以下である。
【0031】
本発明に使用される有機短繊維は、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられるが、反発性能を低下させることなく、耐カット性を向上するには、特にナイロン繊維またはケブラー繊維が好ましい。有機短繊維に変えて繊維状ホウ酸アルミニウムウィスカのような無機短繊維を使用した場合、かかる無機短繊維とカバー基材との弾性率の差が大きく、ゴルフボール打撃時の無機短繊維が周囲のカバー基材の変形に追随できないため、両者の界面におけるエネルギーロスが大きく反発性能が低下する。一方有機短繊維の場合、カバー基材の弾性率と近いため、このようなエネルギーロスは少ない。
【0032】
本発明において、有機短繊維を熱可塑性エラストマーに混合するには、両者の接着性を高めるため、たとえばアラミド(ケブラー)繊維を使用する場合、エポキシ樹脂、ホルマリン−レゾルシン樹脂などでアラミド繊維を表面処理して、上記熱可塑性エラストマーと混合した後、ペレット化する、いわゆるマスターバッチ法で行なうことにより、有機短繊維と熱可塑性エラストマー等との親和性を高めることができる。
【0033】
有機短繊維の長さは、5〜1000μm、好ましくは10〜500μmの範囲であり、直径は0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmの範囲である。有機短繊維の長さが、上記範囲に満たない場合、曲げ方向の力に弱く、強度が上がらず、耐カット性が改善できない。また有機短繊維の直径が上記範囲に満たない場合、単に充填材として作用するにすぎない。一方、有機短繊維の長さおよび直径が上記範囲を超えると、カバー材料の粘度が上昇し、成形性を損なう。なお、本発明において有機短繊維とはパルプ状に細かく裁断した繊維を含む概念である。
【0034】
カバー組成物に配合される、有機短繊維はポリマー成分100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは3〜10重量部である。0.5重量部未満の場合、有機短繊維の配合による効果は少なく、20重量部を超えるとカバー組成物の粘度が高くなり、成形性が悪くなり割れやすくなる。なお、短繊維補強ポリマーを用いる場合は、短繊維補強ポリマーに含まれるポリマー成分をカバー組成物のポリマー成分に含めて、カバー組成物における有機短繊維の配合量を上述の範囲に設定する。
【0035】
次に本発明では有機短繊維を予めゴム等のポリマーに一定量混合して短繊維補強ポリマーとした後、カバー基材に混練することができる。この場合、有機短繊維がカバー基材に均一に分散混合され、耐カット性は一層向上する。ここで、有機短繊維が混合されるポリマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、NBR、EPDM、シリコンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴムや低密度ポリエチレン等の樹脂、またはこれらの混合物が使用できる。短繊維補強ポリマー中における有機短繊維の配合量は短繊維補強ポリマー中のポリマー100重量部に対して、20〜100重量部、好ましくは20〜70重量部、特に30〜55重量部の範囲に設定される。なおカバー組成物中のポリマー成分とは基材ポリマーとしてのアイオマー樹脂、熱可塑性エラストマー、およびゴム等を意味し、短繊維補強ポリマー中の有機短繊維は当該ポリマー成分に含まれないものとする。
【0036】
本発明のカバー組成物は、熱可塑性エラストマー、たとえばSBS構造、SIS構造等のスチレン系熱可塑性エラストマーまたはウレタン系熱可塑性エラストマーとアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂に有機短繊維を所定量加えて、加熱混合することによって、所望のカバー組成物が得られる。加熱混合は、通常混練型二軸押出機、バンバリー、ニーダーなどのインターナルミキサーを用い、たとえば、150〜260℃で加熱混合することによって行なわれる。
【0037】
さらに本発明のカバー組成物は、ゴルフボール表面で測定したショアD硬度41〜56、好ましくは41〜50を有する。ショアD硬度が41未満では軟らかくなりすぎ、耐カット性に劣り、56を超えると逆に、打球感が硬くなり、さらに打撃時のスピン量は小さくなる。ここでショアD硬度はASTMD−2240に準じて測定した。
【0038】
また本発明のカバー組成物は、曲げ剛性率が80〜300MPaの範囲のものが好ましい。曲げ弾性率が80MPa未満の場合、耐カットが低下し、一方300MPaを超えるとスピン量が減少し、打球感が硬くなる傾向にある。なお、曲げ剛性率はカバー組成物を2mm厚さの平板にプレス成形し、JIS K7106に準拠して測定した。
【0039】
また、本発明において、上記カバー組成物には、主成分としての上記樹脂の他に必要に応じて、硫酸バリウム等の充填剤や二酸化チタン等の着色剤や、その他の添加剤、たとえば分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤ならびに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で配合してもよい。
【0040】
本発明ではコアは糸巻き芯、あるいはツーピースやスリーピースなどのソリッドボール用コアが使用され、糸巻きボールあるいはソリッドボールのいずれにも採用し得る。ソリッドボールのコアはゴム組成物の架橋物で構成されるが、そのゴム組成物のゴム成分としては、シス−1,4−構造を有するブタジエンゴムを基材とするのが適している。ただし、上記ブタジエンゴムの他にたとえば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルニトリルゴムなどをゴム成分100重量部に対して40重量部以下でブレンドしたものであってもよい。
【0041】
前記ゴム組成物に用いられえる架橋剤としてはたとえばアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と酸化亜鉛などの金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させてα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩にしたものや、たとえばアクリル酸亜鉛、メタアクリル酸亜鉛などのようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、多官能モノマー、N,N′−フェニルビスマレイミド、イオウなど、通常架橋剤として用いられるものが挙げられるが、特にα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、特に亜鉛塩が好ましい。
【0042】
たとえばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩の場合、ゴム成分100重量部に対して20ないし40重量部が好ましい。一方α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させる場合、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸を15〜30重量部と、該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸100重量部に対して酸化亜鉛などの金属酸化物を15〜35重量部配合することが好ましい。
【0043】
前記コア用のゴム組成物で用いる充填剤としては、たとえば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、酸化亜鉛などの無機粉末の1種または2種以上を使用することができる。これらの充填剤の配合量はゴム成分100重量部に対して5〜50重量部の範囲が好ましい。
【0044】
また、作業性の改善や硬度調整などの目的で軟化剤や液状ゴムなどを適宜配合してもよいし、また老化防止剤を適宜配合してもよい。
【0045】
また架橋開始剤としては、たとえばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの有機過酸化物が用いられる。これらの架橋開始剤の配合量はゴム成分100重量部に対して0.1〜5重量部、特に0.3〜3重量部が好ましい。
【0046】
本発明では前記コアは単一層もしくは比重、硬度等の特性の異なった複合層とすることもできる。この場合、コアの配合は上記配合の記述に限定されるものではない。
【0047】
そして、コアの作製にあたっては、上述の配合材料をロール、ニーダー、バンバリなどを用いてミキシングし、金型を用いて加圧下で145℃〜200℃、好ましくは150℃〜175℃で10分〜40分間加硫してコアを作製する。得られたコアはカバーとの密着をよくするため、表面に接着剤を塗布したりあるいは表面を粗面化してもよい。
【0048】
ここで糸巻き芯およびソリッドコアの直径は36.8〜41.4mm、好ましくは37.8〜40.8mmの範囲で設計される。36.8mm未満ではカバー層が厚くなり反発性が低下し、一方41.4mmを越えると、カバー層が薄くなり成形が困難となる。
【0049】
本発明ではカバーをコアに成形するには公知の方法を用いて行なうことができる。カバー組成物を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法を用いてもよい。カバーの厚さは0.7〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.5mmである。0.7mmより小さいと繰返し打撃した場合にカバー割れが起こりやすくなる欠点を有し、3.0mmより大きいと打球感が悪くなる。さらに、カバー成形時、必要に応じてディンプルを多数表面上に形成する。本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施して市場に投入される。
【0050】
なお、本発明ではカバーは1層とすることもできるが複数層のカバーとして構成することもできる。そして本発明のゴルフボールは、通常ボール直径42.67〜43.00mmの範囲でボール重量45.00〜45.93gの範囲に設計される。
【0051】
【実施例】
実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5
(1) 糸巻きコアの作製
ブタジエンゴムを主成分とするコア用ゴム組成物を混練し、金型内で所定温度で所定時間、加熱プレスすることにより直径28mmのコアを作製した。さらに糸ゴムを前記コアに伸張状態で巻きつけ、直径40mmの糸巻きコアを作成した。
【0052】
(2) カバー用組成物の調製
カバー用組成物を表1に示す。表1では配合量を重量部で示している。カバー用ゴム組成物を二軸混練押出機でシリンダー温度180℃で押し出した。押し出し温度は有機短繊維の融点以下であることが重要である。押出条件は、
スクリュー径:45mm
スクリュー回転数:200rpm
スクリューL/D:35
であり、配合物は押出機のダイの位置で195〜205℃に加熱された。
【0053】
上記カバー用組成物を用いて半球殻状のハーフシェルを射出成形し、これを2枚用いて上記のコアを包み、金型内で150℃でプレス熱圧縮成形し、冷却後、ゴルフボールを取り出した。その後、表面にペイントを塗装して、直径42.8mm重量45.4gを有するゴルフボールを作製した。
【0054】
カバー組成物の曲げ弾性率、ゴルフボールのカバー硬度、反発性能、耐カット性ならびにスピン特性を評価した。
【0055】
なおゴルフボールの特性評価は次の方法によって行なった。
(1) スピン特性(耐フライヤー性)
ティにゴルフボールをのせてピッチングウエッジによりショットした直後のスピン量P1と深さ4cmのラフでショットした直後のスピン量P2を測定し(P2/P1)×100をもとめ耐フライヤー性を評価した。比較例1を基準に指数評価した。数字が100に近いほどフライヤーが生じにくいことを示す。この耐フライヤー性は上級プレイヤー10人による実打した場合の平均値で示す。
【0056】
(2) 反発性能
45m/sの速度で打ち出したアルミの筒で前方に置いたゴルフボールを打ち、衝突前後の各物体の速度をレーザーで読み取り計算したものである。実施例1を100とした指数で表示している。
【0057】
(3) 耐カット性
ピッチングウエッジで意図的にゴルフボールにカットが生じるように打撃し、カットの大きさを5点法で評価した。5点はほとんど無傷で、1点は傷が大きかったことを示す。
【0058】
【表1】
【0059】
注1)クラレ社製の熱可塑性エラストマー(SEPS)で商品名はHG252である。
注2)武田バーディッシェウレタン社製のウレタン系熱可塑性エラストマーで商品名はET890である。
注3)デュポン社製のサーリン8945/サーリン9945の等量混合物
サーリン8945:ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=4.8
サーリン9945:亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=5.2
注4)宇部興産社製のナイロン短繊維補強ポリマーLA1060
天然ゴム/低密度ポリエチレン/ナイロン6短繊維=100/75/87(重量比率):有機短繊維の直径;0.2μm、短繊維補強ポリマー中の有機短繊維の含量;33.2重量%
注5)東レデュポン社製のアラミド短繊維を細かく裁断して短繊維としたもの
注6)堺化学社製の硫酸バリウムBMH
注7)石原産業社製の酸化チタンA220
注8)四国化成工業社製アルボレックスY3A(アミノシラン系カップリング剤で処理している)
【0060】
【表2】
【0061】
表2に実施例1〜実施例7、参考例1,2、および比較例1〜比較例5のゴルフボール特性の測定結果を示す。
【0062】
比較例1および比較例2は熱可塑性エラストマーをポリマー成分として用い、これに有機短繊維を配合しないカバー組成物であり、スピン特性は優れるが、耐カット性はかなり劣っている。
【0063】
比較例3はアイオノマー樹脂を、比較例4は熱可塑性エラストマーとアイオノマー樹脂の混合系をポリマー成分に用い、これに有機短繊維を配合しないカバー組成物を用いており、スピン特性が劣っている。
【0064】
比較例5は熱可塑性エラストマーをポリマー成分として用い、これに無機短繊維のホウ酸アルミニウムウィスカを配合したカバー組成物であり反発性能が劣っている。
【0065】
実施例1〜実施例7は短繊維補強ポリマーを配合したカバー組成物、さらに参考例1および参考例2は有機短繊維としてケブラーパルプをゴム成分に直接配合したカバー組成物を用いており、反発性能、耐カット性およびスピン特性が総合的に優れている。また実施例3、実施例4、実施例6および実施例7はポリマー成分にアイオノマー樹脂を混合したものでスピン特性は実施例1、実施例2および実施例5より若干劣るものの耐カット性は同レベルかまたはより優れている。
【0066】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0067】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールは、カバー組成物のポリマー成分に熱可塑性エラストマーを主成分とし必要により熱可塑性樹脂を混合し、これに有機短繊維を所定量配合したため、反発性能を維持しながら、ラフからのアイアンによる打球時にスピン量がかかりやすく、さらに耐カット性に優れたゴルフボールが得られる。
Claims (7)
- コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーは熱可塑性エラストマーを主成分とする基材ポリマー成分に、短繊維補強ポリマーを混合したカバー組成物であることを特徴とするゴルフボール。
- 熱可塑性エラストマーがスチレン系熱可塑性エラストマーまたはウレタン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- 基材ポリマー成分に50重量部未満の熱可塑性樹脂を混合していることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- 有機短繊維はカバー組成物の基材ポリマー成分100重量部に対して0.5〜20重量部配合されていることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- カバー組成物の曲げ剛性率が80〜300MPaであり、カバー表面のショアD硬度が41〜56であることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- 短繊維補強ポリマーは、ポリマー成分100質量部に、有機短繊維が、20〜100質量部配合されていることを特徴とする請求項1記載のゴルフボール。
- コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールの製造方法において、前記カバーは熱可塑性エラストマーを主成分とする基材ポリマー成分に、予め有機短繊維を混合して得られた短繊維補強ポリマーを配合した組成物を用いることを特徴とするゴルフボールの製造方法。
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