JP3626500B2 - 「ビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法」 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は医薬品および有機工業薬品の合成において、中間体として有用なビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを工業的規模で製造する新規な製造法に関する。
背景技術
我々はすでにWO93/05052号公報において、アルキルチオフェニルチオ基を有する一連の化合物が、医薬品として種々の有用な薬理作用をもつことを明らかにしている。これらの化合物におけるアルキルチオフェニルチオ基の導入に際しては、ビス(アルキルチオフェニル)ジスルフィドに種々の求核試剤を反応させる方法が一般的である。
Figure 0003626500
このような目的に用いられるジスルフィドの中でも、特にビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドに関して、その合成法として前述の明細書に上式に示すような方法が示されている。しかしながら、このようなグリニャール試薬を経由する方法では工業的規模での実施が困難という欠点を有している。
これ以外に開示されているビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの合成法としては、Synth.Commun.,5(3),173(1975)にチオアニソールに二塩化二硫黄をシリカゲルの存在下で反応させてビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドを得る方法が述べられているが、この方法ではジスルフィドとの分離が困難なビス(4−メチルチオフェニル)スルフィドが大量に副生するため、高純度のジスルフィドを得ることがむずかしいので、上述のような医薬品原料の合成法として使用することはできない。
このように、医薬品および有機工業薬品の合成における中間体として有用な、高純度のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを工業的規模で製造することが可能な方法は従来知られておらず、親しい有用な製造法の開発が強く望まれていた。
また、アルキルフェニルスルフィドから4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを経由して4−アルキルチオベンゼンチオールを得る方法は、Coltect.Czech.Chem.Commun.,29,2161(1964).,39,3338(1974).,47,1382(1982)などの文献において既知である。しかしながらこれらの方法では、アルキルフェニルスルフィドから4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを得る際に、J.Chem.Soc.604(1984)に示されているような、5当量という大過剰のクロロ硫酸を使用する反応を用いている。このような反応においては、反応終了後の水処理により過剰のクロロ硫酸を分解して除く必要があるが、この際激しい刺激性のガスの発生と発熱を伴い、多量の酸を含む廃液を生じるという欠点を有していた。
本発明の目的は、医薬品ならびに有機工業薬品の合成中間体として有用なビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの工業的製造法を提供することにある。
発明の開示
本発明は、(1)アルキルフェニルスルフィドの4位をスルホン化あるいはシリルスルホン化し、(2)得られた4−アルキルチオベンゼンスルホン酸又はそのシリルエステルをアルキルフェニルスルフィドに対して1〜1.2当量のジメチルホルムアミド及び塩化チオニルを用いてクロロ化し4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを得、(3)該4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを4−アルキルチオベンゼンチオールに還元し、(4)該4−アルキルチオベンゼンチオールを酸化することを特徴とするビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法、および、(1)アルキルフェニルスルフィドの4位をスルホン化あるいはシリルスルホン化し、(2)得られた4−アルキルチオベンゼンスルホン酸又はそのシリルエステルをアルキルフェニルスルフィドに対して1〜1.2当量のジメチルホルムアミド及び塩化チオニルを用いてクロロ化し4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを得、(3)該4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドをトリクロロシランとトリアルキルアミンを用いてビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドに還元することを特徴とするビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法は下記の式によって例示される。
Figure 0003626500
以下に上記各反応段階について、さらに詳細に説明する。
(1)アルキルフェニルスルフィドのスルホン化またはシリルスルホン化
本発明に用いられるアルキルフェニルスルフィドとしては、アルキル基が炭素数1から4の低級アルキル基であるものが好ましく、その中でも特にメチルフェニルスルフィド(チオアニソール)、エチルフェニルスルフィド、n−プロピルフェニルスルフィド、イソプロピルフェニルスルフィドが好ましい。
アルキルフェニルスルフィドをクロロ硫酸でスルホン化する場合に用いるクロロ硫酸の量としては、アルキルフェニルスルフィドに対して1から1.5当量用いる必要がある。好ましくは1.05当量から1.1当量の小過剰量を用いるだけで十分目的を達成することができる。適当な反応溶媒としては、1から3個の炭素原子を有する脂肪族ハロゲン化溶媒が好ましく、その中でも特にジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンが好ましい。反応温度は、40℃以下が好ましく、−10℃から15℃の温度範囲がより好ましい。
また、アルキルフェニルスルフィドをシリルスルホン化する場合に、用いる適当なシリルスルホン化剤としては、トリアルキルシリルクロロスルホナートを用いる。トリアルキルシリルクロロスルホナートのアルキル基(前記全工程チャート式(1)でR1と表示)としては炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましく、例えばトリメチルシリルクロロスルホナート、トリエチルシリルクロロスルホナートを挙げることができるが、その中でもトリメチルシリルクロロスルホナートを用いるのが経済的に好ましい。これらのシリルスルホン化剤は別途調製したものを用いてもよいが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンのような脂肪族ハロゲン化溶媒中で、クロロ硫酸とクロロシランから容易に調製することができ、これを単離することなく、そのままシリルスルホン化に用いることができる。用いるシリルスルホン化剤の量としては、アルキルフェニルスルフィドに対して1から1.5当量が経済的に好ましい。より好ましくは1.0から1.1当量の小過剰量を用いるだけで十分目的を達成することができる。シリルスルホン化剤を調製する際の反応温度としては、100℃以下の温度が好ましく、その中でも室温から70℃の温度範囲がより好ましい。また、シリルスルホン化を行う際の反応温度としては、40℃以下が好ましく、−10℃から15℃の温度範囲がより好ましい。
(2)スルホン酸およびスルホン酸シリルエステルのクロロ化
上述のようにして得られる4−アルキルチオベンゼンススルホン酸(と少量の4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドの混合物)または、4−アルキルチオベンゼンスルホン酸シリルエステル(と4−アルキルチオベンゼンスルホン酸の混合物)は、単離することなくスルホン化あるいはシリルスルホン化の反応液のままで、4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドに転化することができる。その際にN,N−ジアルキルアミドを存在させることが好ましい。N,N−ジアルキルアミドのアルキル基(前記全工程チャートの式(2)でR2と表示)としては炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましい。例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを存在させることが好ましく、特にジメチルホルムアミドの存在下が好ましい。用いる量はスルホン化またはシリルスルホン化に用いたアルキルフェニルスルフィドに対して、0.05から3当量が好ましいが、1から1.2当量がより好ましい。クロロ化剤としては、例えば塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リンを挙げることができるが、その中でも塩化チオニルを用いるのが経済的に好ましい。用いるクロロ化剤の量はスルホン化またはシリルスルホン化に用いたアルキルフェニルスルフィドに対して、1から2当量が好ましいが、特に1から1.2当量を用いるのがより好ましい。
(3)スルホニルクロリドからチオールへの還元
このようにして得られた4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドは、種々の還元剤を用いて4−アルキルチオベンゼンチオールに還元することができる。この際の反応は、前段階であるスルホニルクロリドへの転化の反応溶液中でそのまま行うこともできるが、溶媒を一旦留去してスルホニルクロリドを単離してから、これをトルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒の溶液として反応を行うこともできる。この際に用いる還元剤としては、例えば亜鉛あるいはスズのような金属と硫酸あるいは塩酸のよう鉱酸の組み合わせ、燐とヨウ化水素酸の組み合わせなどが挙げられるが、亜鉛と塩酸の組み合わせが経済的に好ましい。用いる亜鉛の量はスルホン化またはシリルスルホン化に用いたアルキルフェニルスルフィドに対して、3から10当量が好ましいが、4から5当量が特に好ましい。用いる塩酸の量は4.5から20当量が好ましいが、6から10当量が特に好ましい。この際に微量の鉛あるいはビスマスおよびその塩類を共存させることにより、得られる4−アルキルチオベンゼンチオールの着色を減少させることができる。用いる鉛の量は亜鉛に対して0.0005から0.01当量が好ましい。反応温度としては100℃以下の温度が好ましく、特に室温から80℃の温度範囲で行うのが好ましい。
(4)チオールのジスルフィドへの酸化
以上のようにして得られた4−アルキルチオベンゼンチオールを酸化することにより、目的物であるビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドに導くことができる。この際に用いる酸化剤としては、例えば過酸化水素、フェリシアン化カリウム、ジメチルスルホキシド、塩化鉄(III)などを挙げることができるが、その中でも過酸化水素を用いるのが経済的に好ましい。用いる過酸化水素の量は4−アルキルチオベンゼンチオールに対して0.5から3当量が好ましく、0.5から1当量を用いるのがより好ましい。また、還元反応によって得られた4−アルキルチオベンゼンチオールをあらかじめ水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液中にアルカリ金属塩として抽出し、この溶液中で酸化を行うことによって、より高純度のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを得ることができる。反応温度としては、40℃以下の温度が好ましく、特に0℃から40℃の温度範囲が好ましい。
本発明の方法は安価な反応試薬を用いて、高純度なビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを高い生産性で工業的に製造することができる。さらに、各反応に用いる溶媒を同一にすることにより、上述の中間体を単離することなく目的物を得ることができる。また、従来法において問題となっている刺激性のガス、強酸性の廃液などの副生による環境に対する悪影響についても、著しく改善することができる。
(5) スルホニルクロリドからジスルフィドへの還元
(2)に述べた反応によって得られた4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドは、トリクロロシランおよびトリアルキルアミンを用いて還元することにより、直接ビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドへと導くことができる。この際の反応は、前段階であるスルホニルクロリドへの転化反応の溶液中でそのまま行うこともできるが、溶媒を一旦留去してスルホニルクロリドを単離してからこれをベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒の溶液として反応を行うこともできる。この際に用いる還元剤としては、トリクロロシランとジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、メチルジブチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル部を持つトリアルキルアミンの組み合わせが挙げられるが、トリクロロシランとトリプロピルアミンあるいはトリエチルアミンの組み合わせが経済的に好ましい。用いるトリクロロシランの量は2から10当量が好ましいが、3から5当量が最も好ましい。用いるトリアルキルアミンの量は1から5当量が好ましいが、1.5から3当量が最も好ましい。反応温度としては、0℃以上80℃以下の温度が好ましく、特に20℃から40℃の温度範囲で行うことが好ましい。
上述の通り我々は、4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを、トリクロロシランおよびトリアルキルアミンを用いて還元することにより、直接ビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを高収率かつ高純度で得ることができることを見出だした。
また、亜鉛および鉱酸あるいはリンおよびヨウ化水素酸などから任意に選択される還元剤を加えて還元して4−アルキルチオベンゼンチオールとし、これのアルカリ抽出液に直接過酸化水素、フェリシアン化カリウムなどから任意に選択される酸化剤を加えて酸化するという簡便な操作によっても同様にビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを高収率かつ高純度で得ることができることを見い出すに至った。
さらにアルキルフェニルスルフィドから4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを得るに際し、反応後の水処理および単離操作を省略しうる合成法の開発を目的として鋭意検討を重ねた結果、アルキルフェニルスルフィドに1当量から1.5当量という小過剰量のクロロ硫酸を作用させると、4−アルキルチオベンゼンスルホン酸(および少量の4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドの混合物)が得られ、この混合物にN,N−ジアルキルアミド、例えばジメチルホルムアミドの存在下、塩化チオニルのようなクロロ化剤を作用させることにより良好な収率で4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドが得られることを見い出した。この方法によれば反応終了後、反応液中に大過剰のクロロ硫酸が残存することがないので、上述のような水処理を行う必要がない。これにより刺激性のガスや強酸性の廃液の発生の少ない、ビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの工業的な合成プロセスの実現が可能となった。
また、アルキルフェニルスルフィドにクロロ硫酸の代わりにトリメチルシリルクロロスルホナートのようなスルホン化剤を作用させると、4−アルキルチオベンゼンスルホン酸および4−アルキルチオベンゼンスルホン酸シリルエステルの混合物が得られ、この混合物に上述の方法と同様にジメチルホルムアミドの存在下でクロロ化剤を作用させて4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドとし、ついで還元・酸化すると、上述のスルホン化による方法よりさらに高収率でビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドが得られることを見い出した。
[実施例]
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
実施例1
スルホン化剤を用いる4−メチルチオベンゼンスルホニ ルクロリドの製造
チオアニソール124.2g(1.00mol)のジクロロメタン(600ml)溶液を−10℃に冷却した。この溶液へ撹拌しながらクロロ硫酸122.4g(1.05mol)を反応温度が0℃を超えないように滴下した。得られた混合物を0℃でさらに1時間撹拌した後、室温まで昇温し、その後2時間撹拌した。次にこの混合物にジメチルホルムアミド73.1g(1.00mol)および塩化チオニル124.92g(1.05mol)を加えて12時間加熱・還流した。このように得られた反応液を、他のいかなる処理も施さずに次の反応に用いた。
なお反応液の一部を採取し、溶媒を留去して表題化合物を取り出した。
m.p.44〜45℃
1H−NMR(CDCl3),δ[ppm]:
2.57(s,3H),7.20〜7.50(m,4H),7.75〜8.05(m,2H)
実施例2
4−メチルチオベンゼンチオールの製造(1)
実施例1で得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液に濃塩酸(37%)886.9g(9.00mol)を加え、0℃に冷却した。この混合物に鉛0.27g(0.001mol)を加えた後、亜鉛(粉末)326.9g(5.00mol)を反応熱による還流が続く速度で少量ずつ加えた。得られた混合物をさらに室温で2時間撹拌した後、固体を瀘別した。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(200ml)で抽出した。有機層を合わせて2N塩酸(300ml)およびイオン交換水(300ml)で洗浄した後、2N水酸化ナトリウム水溶液(300ml)で3回抽出した。水層を合わせてn−ヘキサン(300ml)で洗浄した後、ガラス繊維瀘紙で瀘過して浮遊物を除き、表題化合物のアルカリ抽出液を得た。ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造には、このようにして得られた抽出液を、他のいかなる処理も施さずに次の反応段階に用いた。しかし表題物を得るために以下の操作を行った。
この方法によって得られたアルカリ抽出液を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら6N塩酸を少量ずつ加えて溶液のpHを1とした。得られた溶液にトルエン(500ml)を加えてよく撹拌した後、有機層を分離し、水層をトルエン(250ml)で2回抽出した。有機層を合わせて水(300ml)および飽和食塩水(300ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別して溶媒を留去し、残渣として表題化合物137.5gが無色油状物として単離された。この生成物のHPLCの分析による純度は99%であり、チオアニソールからの総収率は88%であった。
b.p. 120℃/10mmHg
1H−NMR(CDCl3),δ[ppm]:
2.44(s,3H),3.41(s,1H),7.03〜7.29(m,4H)
IR(KBr),[cm-1]:
2920,2562,1479,1435,1392,1321,1112,1091,1013,969,806
MS(EI),m/z 156
元素分析(C7H8S2として)
計算値(%) C:53.80 H:5.17
実測値(%) C:53.84 H:5.22
実施例3
4−メチルチオベンゼンチオールの製造(2)
実施例2において、反応時に鉛を添加しない以外は実施例2と同様の方法によって反応を行った。この場合にも表題化合物136.8gがチオアニソールからの総収率88%、HPLC分析による純度99%で得られたが、生成物に微黄色の着色がみられた。
実施例4
4−メチルチオベンゼンチオールの製造(3)
実施例2において、反応前にジクロロメタンを留去し、得られた残渣をトルエン(550ml)溶液とした以外は実施例2と同様の方法によって反応を行った。この場合にも表題化合物139.0gが無色油状物としてチオアニソールからの総収率89%、HPLC分析による純度99%で得られた。
実施例5
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (1)
実施例2で得られた4−メチルチオベンゼンチオールのアルカリ抽出液を0℃に冷却し、激しく撹拌しながら30%過酸化水素水62.3g(0.55mol)をゆっくりと滴下した。得られた混合物を0℃で1時間、40℃で2時間撹拌後、室温で1時間静置した。この混合物にトルエン(700ml)を加えて40℃に加熱し、固体をすべて溶解してから有機層を分離し、水層をトルエン(200ml)で抽出した後、有機層を合わせて水(300ml)および飽和食塩水(300ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別して溶媒を留去し、得られた結晶を酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶して表題化合物の淡黄色結晶124.9gを得た。この生成物のHPLC分析による純度は99%以上であり、チオアニソールからの総収率は80%であった。
m.p.84〜85℃
1H−NMR(CDCl3),δ[ppm]:
2.45(s,6H),7.05〜7.25(m,4H),7.30〜7.50(m,4H)
IR(KBr),[cm-1
1475,1433,1388,1098,1009,801,491,480
MS(EI),m/z 310
EA(C14H14S4として)
計算値(%) C:54.15 H:4.55
実測値(%) C:54.26 H:4.47
実施例6
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (2)
実施例2の方法で得られた4−メチルチオベンゼンチオールのアルカリ抽出液を室温で激しく撹拌しながら、フェリシアン化カリウム329.25g(1.0mol)の水(1500ml)溶液を少量ずつ加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌後、1時間静置した。固体を瀘取し、水(500ml)および冷メタノール(100ml)で洗浄し、表題化合物の粗生成物を得た。この粗生成物をトルエン(700ml)に溶解した後、水(300ml)および飽和食塩水(300ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別して溶媒を留去し、得られた結晶を酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶して表題化合物の淡黄色結晶122.9gを得た。この生成物のHPLC分析による純度は98%以上であり、チオアニソールからの総収率は79%であった。
m.p.84〜85℃
実施例7
4−メチルチオベンゼンチオールの製造(4)
実施例1と同様の方法により得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液から溶媒を留去し、得られた残渣をトルエン(500ml)溶液とした。この溶液に赤燐61.94g(2.00mol)およびヨウ化水素酸(57%水溶液)336.61g(1.50mol)を加えた後、3時間加熱・還流した。得られた混合物を室温に冷却した後、不溶物を瀘別して有機層を分離し、水層をトルエン(200ml)で抽出した。有機層を合わせて2N塩酸(300ml)で洗浄し、2N水酸化ナトリウム水溶液(300ml)で3回抽出した。抽出液をn−ヘキサン(500ml)で洗浄した後、ガラス繊維瀘紙で瀘過して不溶物を除いた。
ついでろ液から実施例2と同様の方法により表題化合物139.4gを無色油状物として単離した。この生成物のHPLC分析による純度は99%であり、チオアニソールからの総収率は89%であった。
実施例8
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (3)
実施例7の方法によって得られた4−メチルチオベンゼンチオールのアルカリ抽出液のろ液を実施例5と同様の方法により酸化して、表題化合物125.3gを淡黄色結晶として得た。この生成物のHPLC分析による純度は99%以上であり、チオアニソールからの総収率は81%であった。
m.p.84〜85℃
実施例9
シリルスルホン化剤を用いる4−メチルチオベンゼンス ルホニルクロリドの製造
クロロトリメチルシラン119.5g(1.10mol)のジクロロメタン(600ml)溶液を加熱・還流した。この溶液を強撹拌しながらクロロ硫酸122.4g(1.05mol)をゆっくりと滴下した。得られた混合物を2時間還流した後、−10℃に冷却し、チオアニソール124.21g(1.00mol)を反応温度が0℃を超えないようにゆっくりと滴下した。得られた混合物を0℃でさらに1時間撹拌した後、室温まで昇温し、その後2時間撹拌した。次にこの混合物にジメチルホルムアミド73.1g(1.00mol)および塩化チオニル124.92g(1.05mol)を加えて20時間加熱・還流した。このようにして得られた反応液を、他のいかなる処理も施さずに次の反応段階に用いた。
反応液の一部を採取し、溶媒を留去して表題化合物の生成を確認した。
m.p.44〜45℃
実施例10
4−メチルチオベンゼンチオールの製造(5)
実施例9によって得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液を実施例2と同様の方法により還元して、表題化合物のアルカリ抽出液を得た。ビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造には、このようにして得られた抽出液を、他のいかなる処理も施さずに実施例11に記載した次の反応に用いた。
この方法によって得られたアルカリ抽出液から実施例2と同様の方法により表題化合物145.3gを無色油状物として単離した。この生成物のHPLC分析による純度は99%以上であり、チオアニソールからの総収率は93%であった。
実施例11
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (4)
実施例10によって得られた4−メチルチオベンゼンチオールのアルカリ抽出液を実施例5と同様の方法により酸化して、表題化合物の淡黄色結晶130.5gを得た。この生成物のHPLC分析による純度は99%以上であり、チオアニソールからの総収率は84%であった。
実施例12
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (5)
実施例1で得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液からジクロロメタンを留去し、ベンゼン2.25lに溶解し,トリクロルシラン474g(3.50mol)を加え、トリプロピルアミン287g(2.00mol)のベンゼン1.2l溶液を反応温度が40℃を超えないように滴下し,40℃で7時間反応させた。水1.0lを徐々に加え、沈殿をろ別し、有機層を分離し、水層をトルエン500mlで2回抽出し有機層に合わせ、水500mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ別して溶媒を留去すると表題の化合物が粗製混合物として得られた。この粗製混合物を酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶し表題化合物の淡黄色結晶121gを得た。この生成物のHPLC分析による純度は99%であり、チオアニソールからの総収率は78%であった。
実施例13
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (6)
実施例1で得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液からジクロロメタンを留去し,トルエン1.0lに溶解し,トリクロルシラン474g(3.50mol)を加え、トリエチルアミン253g(2.50mol)のトルエン2.5l溶液を反応温度が30℃を超えないように滴下し、30℃で4時間反応させた。水1.0lを徐々に加え、沈殿をろ別し、有機層を分離し、水層をトルエン500mlで2回抽出し有機層に合わせ、水500mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ別して溶媒を留去すると表題の化合物が粗製混合物として得られた。この粗製混合物を酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶し表題化合物の淡黄色結晶105gを得た.この生成物のHPLC分析による純度は99%であり、チオアニソールからの総収率は68%であった。
実施例14
ビス(4−メチルチオフェニル)ジスルフィドの製造 (7)
実施例1で得られた4−メチルチオベンゼンスルホニルクロリドのジクロロメタン溶液からジクロロメタンを留去し、トルエン1.0lに溶解し、トリエチルアミン253g(2.50mol)を加え、トリクロルシラン542g(4.00mol)のトルエン2.0l溶液を反応温度が30℃を超えないように滴下し、30℃で2時間反応させた.水1.0lを徐々に加え、沈殿をろ別し、有機層を分離し、水層をトルエン500mlで2回抽出し有機層に合わせ、水500mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ別して溶媒を留去すると表題の化合物が粗製混合物として得られた。この粗製混合物を酢酸エチル/n−ヘキサンで再結晶し表題化合物の淡黄色結晶117gを得た。この生成物のHPLC分析による純度は99%であり、チオアニソールからの総収率は75%であった。
産業上の利用可能性
本発明により得られるビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドはWO93/5052に記載される方法、例えば下記に示した反応式により、骨粗鬆症のような代謝性骨疾患または慢性関節リウマチなどのような疾患の治療薬であるメタンホスホン酸誘導体が合成できる。すなわち、本発明により医薬品の中間体であるビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドを工業的規模で生産可能となった。
Figure 0003626500

Claims (11)

  1. (1)アルキルフェニルスルフィドの4位をスルホン化あるいはシリルスルホン化し、(2)得られた4−アルキルチオベンゼンスルホン酸又はそのシリルエステルをアルキルフェニルスルフィドに対して1〜1.2当量のジメチルホルムアミド及び塩化チオニルを用いてクロロ化し4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを得、(3)4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを4−アルキルチオベンゼンチオールに還 元し、(4)4−アルキルチオベンゼンチオールを酸化することを特徴とするビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  2. アルキルフェニルスルフィドの4位をスルホン化またはシリルスルホン化する際に、アルキルフェニルスルフィドに対し、1.0〜1.5当量のスルホン化剤またはシリルスルホン化剤を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  3. アルキルフェニルスルフィドの4位をシリルスルホン化する際に、トリアルキルシリルクロロスルホナートを用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  4. 4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを還元し4−アルキルチオベンゼンチオールを得る際に、亜鉛および鉱酸を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  5. 4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを亜鉛および鉱酸を用いて還元する際に、鉛、ビスマスおよびそれらの塩類のうち少なくとも1種を共存させることを特徴とする請求の範囲第4項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  6. 4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを還元し4−アルキルチオベンゼンチオールを得る際に、リンおよびヨウ化水素酸を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  7. 4−アルキルチオベンゼンチオールを酸化するに際し、4−アルキルチオベンゼンチオールのアルカリ金属塩水溶液中で行うことを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  8. 4−アルキルチオベンゼンチオールのアルカリ金属塩水溶液が4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドの還元反応のアルカリ抽出物であることを特徴とする請求の範囲第7項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  9. 4−アルキルチオベンゼンチオールを酸化するに際し、酸化剤として過酸化水素またはフェリシアン化カリウムを用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載のビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法
  10. (1)アルキルフェニルスルフィドの4 位をスルホン化あるいはシリルスルホン化し、(2)得 られた4−アルキルチオベンゼンスルホン酸又はそのシ リルエステルをアルキルフェニルスルフィドに対して1 〜1.2当量のジメチルホルムアミド及び塩化チオニルを 用いてクロロ化し4−アルキルチオベンゼンスルホニル クロリドを得、(3)該4−アルキルチオベンゼンスル ホニルクロリドをトリクロロシランとトリアルキルアミ ンを用いてビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフ ィドに還元することを特徴とするビス(4−アルキルチオフェニル)ジスルフィドの製造法。
  11. (1)アルキルフェニルスルフィドの4位をスルホン化あるいはシリルスルホン化し、(2)得られた4−アルキルチオベンゼンスルホン酸またはそのシリルエステルをアルキルフェニルスルフィドに対して1〜1.2当量のジメチルホルムアミド及び塩化チオニルを用いてクロロ化し、(3)得られた4−アルキルチオベンゼンスルホニルクロリドを4−アルキルチオベンゼ ンチオールに還元することを特徴とする4−アルキルチオベンゼンチオールの製造法。
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