JP3618710B2 - 自動変速機のクラッチ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機のクラッチ装置に関し、特に、その油圧サーボピストンにかかる遠心油圧のキャンセル構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機のクラッチ装置において、その油圧サーボピストンに作用する遠心油圧を相殺してクラッチの制御性を向上させるべく、遠心油圧のキャンセル構造が用いられる。クラッチ装置は、一般に、クラッチドラムの内側をそこに嵌め込まれたピストンで囲ってサーボ油圧の作用室とする構造を採ることから、キャンセル構造は、油圧サーボピストンの背後をキャンセルプレートで囲ってキャンセル室を画成し、該キャンセル室にサーボ油圧の供給路とは別系統で、変速機各部の潤滑のために供給される油を溜めることで、その油に作用する遠心油圧と、サーボ室内に供給されている油にかかる遠心油圧を相殺する構成を採る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こうした従来技術の遠心油圧キャンセル構造では、軸心方向からの油の供給が専ら油に作用する遠心力に依存してなされるため、遠心油圧キャンセル室の供給口より径方向内側にベアリングや他の回転部材が位置する場合、供給油圧が充分に遠心油圧キャンセル室に入る構造とはなっていない。そして、こうした理由から遠心油圧キャンセル室への油供給が不足した場合、クラッチ係合・解放時の性能に大きく影響を与え、変速時のショックを損なうおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、上記のようなクラッチドラムに配置された油圧サーボの遠心油圧キャンセル構造において、遠心油圧キャンセル室に確実に油を供給することができる自動変速機のクラッチ構造を提供することを主たる目的とする。
【0005】
ところで、自動変速機のクラッチ装置の一形態として、クラッチドラムの背面側に油圧サーボピストンを嵌め込み、該ピストンをクラッチドラムに対して引くことで、クラッチドラムに支持した摩擦部材(本明細書において、積層状態の摩擦材ディスクとセパレータプレートを総称して摩擦部材という)を押圧してクラッチを係合させるクラッチ構造が特開平5−33816号公報において提案されている。この提案に係るクラッチ構造では、配置スペースを削減すべく2つのクラッチを組み合わせた構成が採られており、クラッチドラムを両クラッチに共通のサーボシリンダとし、背面配置のピストンは、前記のようにクラッチドラムの外側でドラムに嵌る配置とし、このドラム背面側の油圧サーボの遠心油圧のキャンセル構造については、有底筒状のクラッチドラムの底部で軸方向に延びる部分に径方向の油路を形成して、この油路を変速機内部空間に通じる供給口としてキャンセル室内に油を供給する構成とされている。こうした構成を採るドラム背面側の油圧サーボの遠心油圧のキャンセル室については、より一層油供給不足が懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、上記のようなクラッチドラムの背面側に配置された油圧サーボの遠心油圧キャンセル構造においても、遠心油圧キャンセル室に確実に油を供給することができる自動変速機のクラッチ構造を提供することを更なる目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的は、請求項1に記載のように、クラッチドラムの背面側に、ピストンと、該ピストンをクラッチ解放方向に付勢する付勢手段と、該付勢手段を支持してピストンの背面側に遠心油圧を発生させる遠心油圧キャンセル室を画成するキャンセルプレートとを備える自動変速機のクラッチ装置において、前記遠心油圧キャンセル室へ油を供給する供給油路が、遠心油圧キャンセル室に隣接する部材に設けられ、前記遠心油圧キャンセル室の油供給口に、前記供給油路から供給される油の油溜まりが設けられ、前記供給油路は、該供給油路を狭窄する縮径孔を有し、該縮径孔は、前記供給油路内の油の流速を上げて指向性を持つノズル効果を有し、かつ前記縮径孔を有する供給油路は、前記隣接する部材の端面に開口し、前記油溜りは、軸方向外端に、該油溜まりに油を溜めかつ該油溜まりからオーバフローした油を逃がす堰を有し、かつ該堰の内径側でかつ前記隣接する部材の端面側の側面が開口している油導入口に、前記隣接する部材の端面に開口する前記供給油路からの油が供給される、ことを特徴とする構成により達成される。
【0008】
上記の構成は、請求項2に記載のように、前記ピストンと、付勢手段と、キャンセルプレートは、クラッチドラムの背面側に位置し、ピストンの背面側に遠心油圧キャンセル室を画成する構成に適用することができる。
【0009】
上記の構成において、請求項3に記載のように、前記油溜まりは、遠心油圧キャンセル室の油供給口の径方向内側に位置する構成とするのが有効である。
【0010】
また、上記の構成において、請求項4に記載のように、前記供給油路は、キャンセルプレートの軸方向外端より内側で油溜まりに開口する構成とするのが有効である。
【0011】
また、上記の構成において、請求項5に記載のように、前記キャンセルプレートは、その軸方向外端で径方向内側に延び、油溜まりの軸方向外端を画定する油ガイドを有する構成とするのが有効である。
【0012】
上記の構成において、請求項6に記載のように、該供給油路を狭窄する縮径孔は、前記油溜まりの遠心油圧キャンセル室に向かい合う側の壁面に指向する構成とするのが有効である。
【0013】
また、上記の構成において、請求項7に記載のように、前記縮径孔は、前記油溜まりの油導入口に直接対向する構成を採るのが有効である。
【0014】
また、上記の構成において、請求項8に記載のように、前記ピストンを作動させるサーボ油室に油を供給するサーボ圧油路は、該サーボ圧油路が設けられた部材の周面に開口し、前記縮径孔は、該縮径孔が設けられた部材の端面に開口する構成とするのが有効である。
【0015】
また、上記の構成において、請求項9に記載のように、前記油溜まりは、前記サーボ圧油路が設けられた部材の外周面の縮径部に設けられた構成とするのが有効である。
【0016】
更に、上記いずれかの構成において、請求項10に記載のように、前記クラッチドラムは、有底筒状とされ、その筒状部に支持された摩擦部材を備え、該摩擦部材を押圧する前記ピストンは、該ピストンの内径側に延在する軸状部材の外周面と、クラッチドラムの筒状部の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持され、前記キャンセルプレートは、前記軸状部材の外周に支持され、かつ、前記ピストンの筒状部の外周面との間で周方向油密状態で軸方向摺動可能とされた構成とするのが有効である。
【0017】
更に、上記いずれかの構成において、請求項11に記載のように、前記クラッチドラムは、その底部が自動変速機の入力軸に回り止め連結された有底筒状とされ、該クラッチドラムに軸方向に並設支持された第1及び第2の摩擦部材と、第1の摩擦部材を係合させる第1のピストンと、第2の摩擦部材を係合させる第2のピストンとを備え、前記第1の摩擦部材は、クラッチドラムの背面側に設けられた第1のピストンによりクラッチドラムの開口端部方向から押圧され、第2の摩擦部材は、クラッチドラムの内面側に設けられた第2のピストンによりクラッチドラムの底部方向から押圧され、前記第1のピストンは、その内径側に延在する軸状部材の外周面とクラッチドラムの筒状部の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持され、前記第2のピストンは、クラッチドラムの筒状部の内周面と第2のピストンの内径側に延在する軸状部材の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持された構成とするのが有効である。
【0018】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1記載の構成では、遠心油圧キャンセル室に隣接する部材の油路からの供給で、油溜まりに溜まった油が、クラッチドラムの回転により油にかかる遠心力によって、遠心油圧キャンセル室に送られる。したがって、この作用により、油を遠心油圧キャンセル室に確実に供給できる。更に、供給油路は、該供給油路を狭窄する縮径孔を有し、該縮径孔が供給油路内の油の流速を上げて指向性を持つノズル効果を有することにより、隣接する部材の端面に開口する供給油路から、該供給油路側の側面が開口する油導入口に油が供給され、かつ該油導入口は、油溜まりの軸方向外端に位置する堰の内径側にあって、上記供給油路からの油は、油溜まりに確実に導かれ、かつ堰は、油溜まりからオーバフローした油を逃がすので、常に適正な量の油が確実に遠心油圧キャンセル室に供給される。
【0019】
また、請求項2に記載の構成によると、上記のような作用及び効果を遠心油圧キャンセル室がクラッチドラムの背後に設けられた引き形クラッチにおいて達成することができる。
【0020】
次に、請求項3に記載の構成によると、油溜まりに溜まった油が、その径方向外側の遠心油圧キャンセル室の入口に、遠心力で自然に導かれ、これにより油溜まりから遠心油圧キャンセル室への油の流入が効率よくなされる。
【0021】
次に、請求項4に記載の構成によると、供給油路を出て、遠心油圧キャンセル室に隣接する部材を伝って径方向外側に流れる油の流れが、キャンセルプレートの軸方向外端より内側で止まるため、キャンセルプレートの外側に直接逃げる流れが防がれ、供給油路を出た油の全量をロスなく油溜まりに溜めることができる。
【0022】
次に、請求項5に記載の構成によると、油溜まりの軸方向外端がキャンセルプレートから径方向内側に延びる油ガイドで画定されるため、この油ガイドが油溜まりの堰として作用し、油溜まりからの油の逃げが一層有効に阻止される。また、油ガイドが径方向内側に延びる分だけ遠心油圧の作用面積を径方向内側に広げることができる。
【0023】
次に、請求項6に記載の構成によると、遠心油圧キャンセル室への油路が縮径孔により絞られることにより流速が上がりかつ指向性を持つノズル効果と、縮径孔の向きが油溜まりの遠心油圧キャンセル室に向かい合う側の壁面に指向することにより、縮径孔から放出される油路の油を、油溜まりまで無駄なく案内し、かつ、遠心油圧キャンセル室に速やかに流入させることができる。
【0024】
更に、請求項7記載の構成では、他の回転部材を介さずに油が供給されるため、速やかに油を供給できる。また、直接油を供給できるため、遠心油圧キャンセル室への供給孔とドレン孔を共通にできる。したがって、別途ドレン孔を設ける必要がない。また、そのように供給孔とドレン孔を共通化することで、遠心油圧キャンセル室の内周側にドレン孔を設ける場合に比べて、遠心力の発生起点をより内径側にできるため、遠心油圧確保のためにキャンセルプレートの外径を大きくする必要がなく、クラッチ構造をコンパクト化かつ軽量化できる。
【0025】
また、請求項8記載の構成では、サーボ油室に油を給排するためのサーボ圧油路と、遠心油圧キャンセル室へ油を供給する油路の縮径孔とを、それぞれの油路が設けられた部材の周面と端面に開口させているため、それぞれの油路を共に部材の周面に開口させる構成に比べて、軸方向寸法の短縮化が図れる。したがって、自動変速機自体をコンパクトにすることができる。
【0026】
また、請求項9記載の構成では、油溜まりの配設スペース分だけサーボ圧油路が設けられた部材の肉厚を薄肉化することができ、クラッチ装置の軽量化が達成される。
【0027】
また、請求項10記載の構成では、ピストンとキャンセルプレートで画成される遠心油圧キャンセル室が、クラッチドラムの筒状部に覆い被さり、しかもキャンセルプレートもピストンに覆い被さる形状であるため、遠心油圧キャンセル室の外径寸法の確保が容易となり、それにより遠心油圧キャンセル室の受圧面積を十分確保できる。
【0028】
また、請求項11記載の構成では、2つのクラッチの各構成部材の合理的な配置によりクラッチ配設スペースが削減されることで、自動変速機のコンパクト化と、短時間で速やかに油の供給を行える遠心油圧キャンセル構造の両立が図れる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明が適用される車両用自動変速機のギヤトレインの一形態をスケルトンで示す。このギヤトレインは、図示しないトルクコンバータを介してエンジン出力軸などに接続される入力軸Xと、車輪等に接続される出力軸Yに対して、それらの間に、フロントプラネタリギヤユニット(以下、実施形態の説明においてフロントプラネタリギヤと略記する)G1と、ミドルプラネタリギヤユニット(同じく、ミドルプラネタリギヤと略記する)G2と、リアプラネタリギヤユニット(同じく、リアプラネタリギヤと略記する)G3を配した構成とされている。
【0030】
フロントプラネタリギヤG1は、相互に噛合する対を成すピニオンP1,P1’を支持するキャリアC1と、一方のピニオンP1と噛合するサンギヤS1と、他方のピニオンP1’と噛合するリングギヤR1とを3要素とするデュアルプラネタリ構成とされている。そして、サンギヤS1は、クラッチC−3を介して入力軸Xに接続されると共に、直列に接続したワンウェイクラッチF−2及びブレーキB−3を介してギヤケースZに接続され、キャリアC1は、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−1を介して並列にギヤケースZに接続され、リングギヤR1は、ミドルプラネタリギヤG2の後記するリングギヤR2に接続されている。
【0031】
ミドルプラネタリギヤG2は、サンギヤS2と、それに噛合するピニオンP2を支持するキャリアC2と、ピニオンP2と噛合するリングギヤR2とを3要素とするシンプルプラネタリ構成とされている。サンギヤS2は、クラッチC−1を介して入力軸Xに接続されると共に、リアプラネタリギヤG3の後記するサンギヤS3にも接続されている。キャリアC2は、クラッチC−2を介して入力軸Xに接続されると共に、リアプラネタリギヤG3の後記するリングギヤR3に接続され、更に、ワンウェイクラッチF−3を介してギヤケースZにも接続されている。リングギヤR2は、フロントプラネタリギヤG1のリングギヤR1に接続されると共に、ブレーキB−2を介してギヤケースZに接続されている。
【0032】
リアプラネタリギヤG3は、サンギヤS3と、それに噛合するピニオンP3を支持するキャリアC3と、ピニオンP3と噛合するリングギヤR3とを3要素とするシンプルプラネタリ構成とされている。サンギヤS3は、サンギヤS2に接続されており、その接続関係から、クラッチC−1を介して入力軸Xに接続されている。キャリアC3は、出力軸Yに接続されている。リングギヤR3は、ミドルプラネタリギヤG2のキャリアC2に接続されると共に、ブレーキB−4を介してギヤケースZに接続され、先のキャリアC2との接続関係から、ワンウェイクラッチF−3を介してギヤケースZにも接続されている。
【0033】
かくしてこのギヤトレインでは、サンギヤS1、キャリアC1、相互接続の両リングギヤR1/R2、相互接続の両サンギヤS2/S3、及び相互接続のキャリア・リングギヤC2/R3を5つの入力又は反力支持に関わる変速要素とし、キャリアC3を出力要素とする構成とされている。
【0034】
次に、このギヤトレインの作動を、図1のギヤトレインと併せて、図2の速度線図と図3の係合図表を参照して説明する。なお、図2における各縦線は、3つのプラネタリギヤG1〜G3の各変速要素及び出力要素の関係を、横軸方向の間隔をギヤ比として表し、縦軸方向の長さは、入力回転を1とする速度比を表す。また、図3における○印は各クラッチ及びブレーキについては係合、ワンウェイクラッチについてはロックを表し、括弧付の○印はエンジンブレーキ時の係合、●印はトルク伝達に関与しない係合を表す。
【0035】
第1速(1ST)は、図3の係合図表に示すように、クラッチC−1を係合することで、入力軸XとサンギヤS2/S3が連結されると共に、キャリア・リングギヤC2/R3の逆回転がワンウェイクラッチF−3により阻止されることで、リアプラネタリギヤG3によるトルク伝達で達成される。この状態で、図2の速度線図に示すように、入力軸Xの回転がクラッチC−1を介して直接サンギヤS3に入力される。すると、停止状態にあるリングギヤR3に自転の反力を支持されるピニオンP3の公転がキャリアC3に出力され、これが出力軸Yの出力回転となる。この出力回転は、図2の速度線図上で、サンギヤS2/S3入力(速度比1)、キャリア・リングギヤC2/R3固定(速度比0)の2点を通る直線とキャリアC3を表す縦線との交点(図に○印で示す)の速度比で表される最大減速比の正回転である第1速(1ST)回転となる。この際、ミドルプラネタリギヤG2は、サンギヤS2の正回転(速度比1)に対してキャリアC2が固定となるため、リングギヤR2が減速逆回転で空転する。この際のギヤ比は、リアプラネタリギヤG3のギヤ比λ=Zs /ZR 3 (ただし、ZS 3 :サンギヤS3の歯数、ZR 3 :リングギヤR3の歯数)により定まり、
(1 +λ)/λ
となる。
【0036】
第2速(2ND)は、図3に示すように、クラッチC−1の係合に加えて、ブレーキB−3を係合することで達成される。この状態では、第1速時に空転状態にあったフロントプラネタリギヤG1のサンギヤS1の回転が、ブレーキB−3の係合によりワンウェイクラッチF−2のロックが有効とされることで阻止される。一方、第1速時と同様にサンギヤS2/S3に入る入力によりピニオンP2の回転を介してリングギヤR1/R2が逆回転方向のトルクを受けるが、このトルクがフロントプラネタリギヤG1においてサンギヤS1が係止されていることでキャリアC1を逆回転させる方向のトルクになるのに対してワンウェイクラッチF−1がロックしてその回転を阻止するため、結局、リングギヤR1/R2の回転は阻止される。この結果、ミドルプラネタリギヤG2は、サンギヤS2/S3入力、リングギヤR1/R2固定の状態となり、キャリア・リングギヤC2/R3は減速回転する。したがって、リアプラネタリギヤG3については、サンギヤS2/S3入力、キャリア・リングギヤC2/R3減速回転の状態が生じ、図2に示すように、このキャリア・リングギヤC2/R3減速回転よりは高速の減速回転がキャリアC3の回転となり、出力軸Yに第2速(2ND)回転が出力される。この際のギヤ比は、ミドルプラネタリギヤG2のギヤ比を、λ=ZS 2 /ZR 2 (ただし、ZS 2 :サンギヤS2の歯数、ZR 2 :リングギヤR2の歯数)とすると、
(1+λ)(1+λ)/(λ+λ+λλ
となる。
【0037】
第3速(3RD)は、図3に示すように、クラッチC−1とクラッチC−3の係合により達成される。この状態では、入力軸Xの回転は、クラッチC−1を介してサンギヤS2/S3に入力され、同時に、クラッチC−3の係合によりサンギヤS1に入力される。この場合、フロントプラネタリギヤG1では、サンギヤS1への入力によりワンウェイクラッチF−2がフリーとなり、代わってワンウェイクラッチF−1がロックし、キャリアC−1の逆回転がケースZへの係止により阻止されるため、リングギヤR1/R2が減速回転する。また、ミドルプラネタリギヤG2では、サンギヤS2/S3入力に対してリングギヤR1/R2が減速回転となるため、キャリア・リングギヤC2/R3は減速回転する。この結果、リアプラネタリギヤG3では、サンギヤS2/S3入力、キャリア・リングギヤC2/R3減速回転の状態が生じるため、これらの回転に拘束されてキャリアC3には、図2に示すように、キャリア・リングギヤC2/R3の回転よりは高く、サンギヤS2/S3の入力回転よりは低い減速回転が出力され、この回転が出力軸Yの第3速(3RD)回転となる。この際、ブレーキB−3は、ダウンシフト時の係合操作を不要とすべく、図3に●印で示すように係合状態に維持されるが、それと直列のワンウェイクラッチF−2がフリー状態なので、ブレーキB−3の係合は第3速の達成の妨げとはならない。この際の、ギヤ比は、フロントプラネタリギヤG1のギヤ比を、λ=ZS 1 /ZR 1 (ただし、ZS 1 :サンギヤS1の歯数、ZR 1 :リングギヤR1の歯数)とすると、
(1+λ)(1+λ)/{(1+λ)(1+λ)−(1−λ)}
となる。
【0038】
第4速(4TH)は、図3に示すように、クラッチC−1とクラッチC−2の係合により達成される。この状態では、入力軸Xの回転は、クラッチC−1からサンギヤS2/S3へ入力されると共に、クラッチC−2を介してキャリア・リングギヤC2/R3にも入力され、リアプラネタリギヤG3において、サンギヤS2/S3及びキャリア・リングギヤC2/R3同時入力による直結回転が生じる。この結果、キャリアC3接続の出力軸Yからは、入力軸Xと直結の第4速(4TH)が出力される。
【0039】
この際、クラッチC−3及びブレーキB−3は、図3に●印で示すように、係合状態となっているが、フロントプラネタリギヤG1は、サンギヤS1に入力軸Xの回転が伝達される一方で、ミドルプラネタリギヤG2が、入力軸Xと直結状態で正回転することから、そのリングギヤR2に連結されたリングギヤR1にも入力軸Xの回転が入力され、フロントプラネタリギヤG1は全体が直結状態で回転する。第4速状態のギヤ比は、上記のように全段直結状態の回転となるので、ギヤ比設定に関わりなく1となる。
【0040】
第5速(5TH)は、図3に示すように、クラッチC−2、クラッチC−3及びブレーキB−1の係合により達成される。この状態では、入力軸Xの回転は、クラッチC−2を介してリアプラネタリギヤG3のキャリア・リングギヤC2/R3に入力されると共に、クラッチC−3を介してフロントプラネタリギヤG1のサンギヤS1に入力される。これに対して、キャリアC1がブレーキB−1により係止されることで、リングギヤR1/R2は減速正回転となり、キャリア・リングギヤC2/R3には、入力軸Xの回転が入力されることで、サンギヤS2/S3は増速回転となる。この結果、リアプラネタリギヤG3において、キャリア・リングギヤC2/R3入力、サンギヤS2/S3増速回転の状態が成立するため、キャリアC3から出力軸Yへは、入力回転に対して増速の第5速(5TH)回転が出力される。この際、ブレーキB−3は、ダウンシフト時の係合操作を不要とすべく、図3に●印で示すように、係合状態を維持されるが、ワンウェイクラッチF−2がフリー状態となっているので、これらの係合は第5速達成の妨げとはならない。この際の、ギヤ比は、
λ(1+λ)/{λ(1+λ)+(1−λ)λ
となる。
【0041】
後進(REV)は、図3に示すように、クラッチC−3を係合すると共に、ブレーキB−4を係合することで達成される。この状態では、入力軸Xの回転が、クラッチC−3を介してフロントプラネタリギヤG1のサンギヤS1に入力され、それによりキャリアC1がワンウェイクラッチF−1のロックで係止されることから、デュアルプラネタリ構成のフロントプラネタリギヤG1のリングギヤR1/R2は減速の正回転となる。これに対して、キャリア・リングギヤC2/R3はブレーキB−4により係止されるので、これを反力要素としてサンギヤS2/S3は入力回転と同様の速度比で逆回転し、それにより減速逆回転するキャリアC3から出力軸Yへは、後進用の減速回転が出力される。この際のギヤ比は、
λ(1+λ)/λλ
となる。
【0042】
なお、前記の各変速段の達成状況から明らかなように、各ワンウェイクラッチは、入力回転に対する逆回転を阻止する要素として配置されているため、出力軸Y側から入力軸X側にトルクが伝達されるエンジンブレーキ(コースト)時には、これらのロックによるトルク伝達や反力支持はできない。そこで、このギヤトレインでは、ブレーキB−1又はブレーキB−2をワンウェイクラッチF−1に対する並列の係合要素、ブレーキB−4をワンウェイクラッチF−3に対する並列の係合要素として、図3に括弧付の○印で示すように、通常の作動に加えて、エンジンブレーキ(コースト)時に係合させている。
【0043】
前記構成のギヤトレインに対して、本発明の技術思想は、クラッチC−2とクラッチC−3を対象として適用されている。図4は本発明を適用したクラッチ装置を備える自動変速機の軸方向部分断面を示し、図5はその一部を拡大して示す。このクラッチ装置は、クラッチドラム1の背面側に、ピストン2と、該ピストンをクラッチ解放方向に付勢する付勢手段3と、該付勢手段を支持してピストン2の背面側に遠心油圧を発生させる遠心油圧キャンセル室Cを画成するキャンセルプレート4とを備える。そして、本発明の基本とする特徴に従い、遠心油圧キャンセル室Cへ油を供給する油路LC が、遠心油圧キャンセル室Cに隣接する部材5に設けられ、遠心油圧キャンセル室Cの油導入(油溜まりの開口部)Iに、油路LC から供給される油の油溜まりRが設けられている。
【0044】
この形態では、部材5に設けられた油路LC は、該油路を狭窄する縮径孔51を有し、該縮径孔は、油溜まりRの遠心油圧キャンセル室Cに向かい合う(ここにいう向かい合うとは、必ずしも厳密に正対することを意味せず、斜向かい関係の向かい合いを含む)側の壁面に指向する構成とされている。そして、縮径孔51から供給される油が、遠心油圧キャンセル室Cの油導入口Iに、他の部材を介さずに供給されるように、縮径孔51は、遠心油圧キャンセル室Cの油導入口Iに直接対向する。ピストン2を作動させるサーボ油室Sに油を供給するサーボ圧油路LS は、それが設けられた部材5の周面に開口し、縮径孔51は、それが設けられた部材5の端面に開口する構成とされている。
【0045】
各部について更に詳述すると、このクラッチ装置のクラッチドラム1は、その底部が自動変速機の入力軸6に回り止め連結された有底筒状とされ、クラッチドラム1に軸方向に並設支持された第1及び第2の摩擦部材7,8と、第1の摩擦部材7を係合させる第1のピストン2と、第2の摩擦部材8を係合させる第2のピストン9とを備える。第1の摩擦部材7は、クラッチドラム1の背面側に設けられた第1のピストン2によりクラッチドラム1の開口端部方向から押圧され、第2の摩擦部材8は、クラッチドラム1の内面側に設けられた第2のピストン9によりクラッチドラム1の底部方向から押圧される。第1のピストン2は、クラッチドラム1の内径側に延在する軸状部材11の外周面とクラッチドラム1の筒状部の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持され、第2のピストン9は、クラッチドラム1の筒状部の内周面と第2のピストン9の内径側に延在する軸状部材11の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持されている。
【0046】
クラッチドラム1は、油圧サーボシリンダの内周側部材を構成する型成形品からなる軸状部材11と、外周側部材を構成するプレス品からなるカップ状部材12とで構成される。軸状部材11は、2つの油圧サーボシリンダの径方向位置をずらすべく、外径側を段付状とされ、その大径側が外側の油圧サーボのピストン2の内径側の摺動面とされ、小径側が内側の油圧サーボのピストン9の内径側の摺動面とされている。軸状部材11の内径側は、中間の遠心油圧キャンセル室Cに隣接する部材5への支持部を構成する縮径部を挟んで、部材5の外周に嵌る側が平滑な円筒面の油路接続部とされ、部材5を超えて延びる部分が入力軸6に連結するスプライン係合部とされている。カップ状部材12は、カップの底部にあたる中心孔付の径方向フランジ部と、その外周側から軸方向に延びる短筒部と、それに続く円錐部と、更にそれに続く長円筒部とを有する構造とされ、長円筒部はそのほぼ全長に渡って形成されたスプライン1aより2組の摩擦部材7,8の外周側支持部を構成する。こうした構成からなる軸状部材11とカップ状部材12は、軸状部材11の外径側の段差部にカップ状部材12の中心孔を嵌めて溶接により固定一体化されている。
【0047】
両クラッチのハブ13,14は、中心孔を有する径方向フランジ部と、その外周側を軸方向に延びる筒状部を有するカップ状のプレス成形品で構成される。それぞれのハブ13,14の筒状部には、摩擦部材7,8の軸方向長に対応するスプラインが形成され、摩擦部材7,8の内周側支持部を構成する。両ハブ13,14の径方向フランジ部の内周側は、それぞれサンギヤS1とキャリアC2に連結されている。
【0048】
2組の摩擦部材7,8は、それぞれ相互に積層された複数の摩擦材ディスク71,81とセパレータプレート72,82から構成され、各摩擦材ディスク71,81は、それらの内周側に形成されたスプライン歯(図の上側の断面は歯山部分、下側の断面は歯底部分を示す)をハブ13,14のスプライン(同じく、上側は歯底、下側は歯山部分の断面を示す)に嵌合させてハブ13,14に軸方向可動に回り止め支持され、各セパレータプレート72,82は、それらの外周側に形成されたスプライン歯(同じく、上側は歯山、下側は歯底部分の断面を示す)をドラム1のスプライン(同じく、上側は歯底、下側は歯山部分の断面を示す)1aに嵌合させてドラム1に軸方向可動に回り止め支持されている。こうした構成からなる摩擦部材7,8は、それらの一端側のセパレータプレートをドラム1の内周周回溝に嵌めたスナップリングに当接させることで、それぞれドラム1の底部側及び開口端側への軸方向移動を規制されている。そして、ドラム1の開口端側の摩擦部材7については、他端側のセパレータプレートの外側に配置された皿バネ状のプレッシャプレートを介して、カップ状部材12の先端側にスナップリング止めした押圧部材15からのクラッチ係合力を受けることで相互に係合して、ドラム1とハブ13間でトルクを伝達する。また、ドラム1の底部側の摩擦部材8については、直接ピストン9からのクラッチ係合力を受けることで相互に係合して、ドラム1とハブ14間でトルクを伝達する。
【0049】
外側の油圧サーボのピストン2は、軸方向にずれた2つの環状径方向フランジ部を短筒部で連結したピストン本体20と、一方の環状径方向フランジ部の外周に内径方向への屈曲部先端を連結したアプライチューブ21で構成されている。短筒部を挟む一方の環状径方向フランジ部の内外周と他方の環状径方向フランジ部の内周には、それぞれOリングが嵌合され、内周側の2つのOリングが、それぞれ軸状部材11の外径側大径部と、クラッチドラム1の短筒部外周に嵌り、ピストン本体20を軸状部材11とドラム1に対して封止状態に心出し支持している。他方の環状径方向フランジ部の外周のOリングは、カップ状のキャンセルプレート4の筒状部に嵌り、キャンセル室の外周側を封止している。アプライチューブ21には、そのピストン本体20につながる根元部分から全長の概ね1/3の長さの範囲にスプライン21cが形成され、その内周側に位置するクラッチドラム1のスプライン1aとの嵌合(図の上側は、アプライチューブ21側の歯底とクラッチドラム1側の歯山との噛合断面、下側は、アプライチューブ21側の歯山とクラッチドラム1側の歯底との噛合断面を示す)によりピストン2全体をクラッチドラム1に対して回り止めしている。
【0050】
遠心油圧キャンセル室Cに隣接する部材5は、本形態では、自動変速機ケースの前端を閉じ、コンバータハウジングとの間の隔壁を構成するオイルポンプカバーで構成されている。オイルポンプカバー5は、入力軸6を挿通する中心孔に沿って変速機ケース内に延びるボス部52を有し、このボス部52の外周にクラッチドラム1の軸状部材11が回転可能に支持され、かつボス部52内の2つのサーボ圧油路と、軸状部材11に形成されたサーボ圧給排孔とを軸周方向に封止状態に連通させている。詳しくは、ボス部52の外周には、それぞれ異なる軸方向油路に連通する2条の周回溝が形成され、両溝間と、溝の両端に配した3つのシールリングにより両溝と軸状部材11の両サーボ圧給排孔との連通部の軸方向漏れ止めがなされている。なお、図5に破線で示す外形は、オイルポンプカバー5のカバー内油路形成部以外の断面を示す。
【0051】
油溜まりRは、軸状部材11の端面に油導入口Iが環状に開いた中ぐり形状を有する。詳しくは、中ぐり形状は、遠心油圧キャンセル室Cと背中合わせの内向き円筒面R1と、その一端側から延びる内向き円錐面R2と、他端側から延びる外向き円錐面R3により画成されて、概ね楔状断面の環状空間を構成している。そして、油溜まりRは、内向き円筒面R1に開口する若干傾斜した径方向孔(油供給口)で遠心油圧キャンセル室Cに連通している。こうした概ね楔状の断面形状と呈することで、油導入口Iと内向き円錐面R2とがつながる角部の直径と、内向き円筒面R1との間に所定の径差が設定され、それにより角部が遠心力の作用状態で油溜まりRに溜まる油の堰として機能する。
【0052】
オイルポンプカバー5の径方向壁部には、油溜まりRの配設位置に対応させて、径方向壁部の端面に開口する縮径孔51が形成されている。この縮径孔51の軸線は、前記のように油溜まりRの遠心油圧キャンセル室Cに向かい合う側の壁面、すなわち外向き円錐面R3に指向する構成とされている。
【0053】
こうした油溜まりRの形状と縮径孔51の指向方向との関係から、縮径孔51から放出された油は、油供給口Iを通して直接外向き円錐面R3にぶつかり、その円錐円状により反射して径方向孔に向かい、遠心油圧キャンセル室Cに入る。そして、外径側をOリングで封止された遠心油圧キャンセル室Cが油で満たされると、余剰油が油溜まりRの外周側の角部を堰として溜まる。したがって、油が十分に満たされた定常状態では、余剰分が角部の堰を越えて油導入口Iをドレン口として遠心力で外方へ放出され(オーバフロー)、常に一定量の油が遠心油圧キャンセル室Cから油溜まりRにかけて残留する。このときの残留油にかかる遠心油圧は、外周側をキャンセルプレート4の筒状部の内径、内周側を軸状部材11の油導入口Iの外径とする内外径差部分の面積を受圧面積としてピストン2の背面に作用することになる。
【0054】
こうした構成からなるクラッチ装置は、変速機ケースボス部51のそれぞれの周回油路から軸状部材11のそれぞれの油路を経て両シリンダ内に油圧を供給することで個別に係合作動する。外側のクラッチについては、油圧の供給でピストン2がクラッチドラム1に対して押し出されることで、アプライチューブ21先端の押圧部材15をスナップリングを介してクラッチドラム1側に引張り、それにより、一端側をスナップリングを介してクラッチドラム1に支持された摩擦部材7をスナップリングとプレッシャプレートとの間で押圧して、摩擦部材7の摩擦材ディスク71とセパレータプレート72の係合によりクラッチ係合状態となる。また、シリンダ内からの油圧の排出で、リターンスプリング3の荷重でアプライチューブ21を押し戻すクラッチ解放操作時は、アプライチューブ21の戻りにつれてその先端の押圧部材15も凸部との係合で押し戻されてプレッシャプレートを介する摩擦部材7との係合状態から確実に引き離される。
【0055】
内側のクラッチの作動については、特に従来の一般的クラッチの作動と異なるところがないので説明を省略する。
【0056】
かくして、この実施形態によれば、遠心油圧キャンセル室Cに隣接するオイルポンプカバー5の油路Lからの供給で、油溜まりRに溜まった油が、クラッチドラム1の回転により油にかかる遠心力によって、遠心油圧キャンセル室Cに送られる。したがって、この作用により、油を遠心油圧キャンセル室Cに確実に供給できる。
【0057】
次に、図6は遠心油圧キャンセル室Cに関連する部分の構成を一部変更した第2実施形態を示す。この形態では、軸状部材11のサーボ圧給排油路Lの形成部分を除く部分で、軸状部材11の外周側を縮径させた部分に、実質上矩形断面の環状油溜まりRが設けられている。そして、オイルポンプカバー5に形成された供給油路Lは、軸状部材11の縮径部分の外周面に沿って水平に向けられている。供給油路Lは、該油路を囲って軸方向に筒状に延びる軸方向ガイド52によりキャンセルプレート4の軸方向外端(図示で左側の端面)を超えて油溜まりR内に入り込み、油溜まりRに開口している。キャンセルプレート4の内径側は、軸状部材11の縮径に合わせて油溜まりRを横断する傾斜壁部で径方向内側に延び、軸状部材11の縮径部に嵌合され、縮径部に嵌めたスナップリング41により軸方向抜け止めされている。このようにキャンセルプレート4の内径側が油溜まりRを横断することから、傾斜壁部には十分な開口径の通路が形成されている。
【0058】
また、キャンセルプレート4には、更に、軸方向外端をそのまま径方向内側に延長して形成され、供給油路Lの軸方向ガイド52に隣接する位置で終端する径方向ガイド42が設けられている。この形態のキャンセルプレート4は、先の実施形態とは異なり、厚肉のアルミ材で構成され、図には表れていないが、リターンスプリング3の収容部を除く一般断面は、第1のピストン2の対向面との間に概ね一様な厚みを持つキャンセル室Cを画定する構成とされている。
【0059】
こうした第2実施形態の構成では、供給油路Lの開口がキャンセルプレート4の軸方向外端より内側にあることで、供給油路Lを出て、遠心力でオイルポンプカバー5を伝って径方向外側に流れる図に曲線矢印で示すような油の流れが、キャンセルプレート4の軸方向外端より内側でキャンセルプレート4に当って遠心油圧キャンセル室Cの方向に導かれるため、油供給口Iからキャンセルプレート4の外側に直接逃げる流れが防がれ、供給油路Lを出た油の全量をロスなく油溜まりRに溜めることができる。また、油溜まりRの軸方向外端がキャンセルプレート4から径方向内側に延びる径方向の油ガイド42で画定されるため、この油ガイド42が油溜まりRの堰として作用し、油溜まりRからの油の逃げが一層有効に阻止される。また、油ガイド42が径方向内側に延びる分だけ遠心油圧の作用面積(遠心油圧作用面の径方向長さを図に符号Aで示す)を径方向内側に広げることができる。
【0060】
更に、油溜まりRが軸状部材11のサーボ圧給排油路L形成部分を除く部分で、軸状部材11の外周側を縮径させた部分に設けられているため、この油溜まりRの配設スペース分だけサーボ圧給排油路Lが設けられた軸状部材11の径方向肉厚を薄肉化することができ、クラッチ装置の軽量化が達成される。
【0061】
また、特にこの形態では、キャンセルプレート4をアルミ材とすることで、重量増加を防ぎながら、プレス品に比べて複雑な形状の実現を可能とし、キャンセルプレート4の断面形状を第2のピストン2に沿った形状とし、それにより遠心油圧キャンセル室Cをピストン形状に沿った薄い部屋とすることで、キャンセル室Cの容積を小さくする構成を得ている。このようなキャンセル室容量の低減は、本来、キャンセル油圧の発生のためには受圧面積の確保のみが必要で、軸方向の厚さを必要としないキャンセル室の目的により適合したものとなり、キャンセル油圧の発生に影響を与えずに自動変速機内の油の循環量を減らすのに役立ち、オイルポンプの容量負荷の低減に有効なものとなる。
【0062】
以上、本発明の技術思想の理解の便宜のために、通常の配置に比べて一層油の供給条件が悪くなるクラッチドラムの背面側に遠心油圧キャンセル室を画成する構成のクラッチ装置に本発明を適用した実施形態を例として説明したが、本発明は、例示の実施形態に限定されるものではなく、当然に、クラッチドラムの内側に遠心油圧キャンセル室を画成する構成のクラッチ装置に適用可能なものであり、特許請求の範囲の個々の請求項に記載の事項の範囲内で、種々に具体的な構成を変更して実施することができるものである。特に、遠心油圧キャンセル室に油を供給する部材については、実施形態のクラッチ装置がたまたま変速機構の最前部に配置されるクラッチであることから、オイルポンプカバーに隣接する配置となるため、前記部材をオイルポンプカバーとしたが、この部材は、クラッチ装置が変速機構の最後部に配置される、例えば横置配置の自動変速機の場合、この部材を変速機ケースのリヤカバーとすることもできるし、他の一般的な静止部材として変速機ケースやそれに固定されたサポート部材とすることができる。更に、場合によっては、この部材は、クラッチ装置の内側を通る任意の回転軸や、サーボピストンを貫通する軸状部材とすることができる。そして、こうした構成も当然に本発明の範疇に包含される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクラッチ装置の適用に係る自動変速機のギヤトレインを示すスケルトン図である。
【図2】図1のギヤトレインの作動を示す速度線図である。
【図3】図1のギヤトレインにより達成される変速段と係合要素の作動をギヤ比設定例と共に示す係合図表である。
【図4】本発明の実施形態に係るクラッチ装置の構成を適用した自動変速機の軸方向部分断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】クラッチ装置の遠心油圧キャンセル室への油供給部分の構成を変更した第2実施形態を示す図5と同様の部分の断面図である。
【符号の説明】
1 クラッチドラム
11 軸状部材
12 筒状部
2 第1のピストン
3 リターンスプリング(付勢手段)
4 キャンセルプレート
42 油ガイド
5 オイルポンプカバー(部材)
51 縮径孔
7 第1の摩擦部材
6 入力軸
8 第2の摩擦部材
9 第2のピストン
C 遠心油圧キャンセル室
油路
I 油導入
R 油溜まり
R3 外向き壁面
S サーボ油室
サーボ圧給排油路(油路)

Claims (11)

  1. クラッチドラムと、該クラッチドラムに設けられた摩擦部材を押圧するピストンと、該ピストンをクラッチ解放方向に付勢する付勢手段と、該付勢手段を支持し、遠心油圧を発生させる遠心油圧キャンセル室を画成するキャンセルプレートとを備える自動変速機のクラッチ装置において、
    前記遠心油圧キャンセル室へ油を供給する供給油路が、遠心油圧キャンセル室に隣接する部材に設けられ、
    前記遠心油圧キャンセル室の油供給口に、前記供給油路から供給される油の油溜まりが設けられ、
    前記供給油路は、該供給油路を狭窄する縮径孔を有し、
    該縮径孔は、前記供給油路内の油の流速を上げて指向性を持つノズル効果を有し、かつ前記縮径孔を有する供給油路は、前記隣接する部材の端面に開口し、
    前記油溜りは、軸方向外端に、該油溜まりに油を溜めかつ該油溜まりからオーバフローした油を逃がす堰を有し、かつ該堰の内径側でかつ前記隣接する部材の端面側の側面が開口している油導入口に、前記隣接する部材の端面に開口する前記供給油路からの油が供給される、ことを特徴とする自動変速機のクラッチ装置。
  2. 前記ピストンと、付勢手段と、キャンセルプレートは、クラッチドラムの背面側に位置し、ピストンの背面側に遠心油圧キャンセル室を画成する、請求項1記載の自動変速機のクラッチ装置。
  3. 前記油溜まりは、遠心油圧キャンセル室の油供給口の径方向内側に位置する、請求項1又は2記載の自動変速機のクラッチ装置。
  4. 前記供給油路は、キャンセルプレートの軸方向外端より内側で油溜まりに開口する、請求項1ないし3のいずれか1項記載の自動変速機のクラッチ装置。
  5. 前記キャンセルプレートは、その軸方向外端で径方向内側に延び、油溜まりの軸方向外端を画定して前記堰を構成する油ガイドを有する、請求項1記載の自動変速機のクラッチ装置。
  6. 前記縮径孔は、前記油溜まりの遠心油圧キャンセル室に向かい合う側の壁面に指向する、請求項2記載の自動変速機のクラッチ装置。
  7. 前記縮径孔は、前記油溜まりの油導入口に直接対向する、請求項記載の自動変速機のクラッチ装置。
  8. 前記ピストンを作動させるサーボ油室に油を供給するサーボ圧油路は、該サーボ圧油路が設けられた部材の周面に開口し、前記縮径孔は、該縮径孔が設けられた部材の端面に開口する、請求項1〜7のいずれか1項記載の自動変速機のクラッチ装置。
  9. 前記油溜まりは、前記サーボ圧油路が設けられた部材の外周面の縮径部に設けられた、請求項8記載の自動変速機のクラッチ装置。
  10. 前記クラッチドラムは、有底筒状とされ、その筒状部に支持された摩擦部材を備え、
    該摩擦部材を押圧する前記ピストンは、該ピストンの内径側に延在する軸状部材の外周面と、クラッチドラムの筒状部の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持され、
    前記キャンセルプレートは、前記軸状部材の外周に支持され、かつ、前記ピストンの筒状部の外周面との間で周方向油密状態で軸方向摺動可能とされた、請求項1〜9のいずれか1項記載の自動変速機のクラッチ装置。
  11. 前記クラッチドラムは、その底部が自動変速機の入力軸に回り止め連結された有底筒状とされ、
    該クラッチドラムに軸方向に並設支持された第1及び第2の摩擦部材と、第1の摩擦部材を係合させる第1のピストンと、第2の摩擦部材を係合させる第2のピストンとを備え、
    前記第1の摩擦部材は、クラッチドラムの背面側に設けられた第1のピストンによりクラッチドラムの開口端部方向から押圧され、
    第2の摩擦部材は、クラッチドラムの内面側に設けられた第2のピストンによりクラッチドラムの底部方向から押圧され、
    前記第1のピストンは、その内径側に延在する軸状部材の外周面とクラッチドラムの筒状部の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持され、
    前記第2のピストンは、クラッチドラムの筒状部の内周面と第2のピストンの内径側に延在する軸状部材の外周面とに周方向油密状態で軸方向摺動可能に支持された、請求項1〜10のいずれか1項記載の自動変速機のクラッチ装置。
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