JP3596235B2 - シラン化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なシラン化合物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用感光体の電荷輸送層は、一般に、ポリエステル等のようなバインダーポリマーと、トリアリールアミン、テトラアリールベンジジン系化合物等のような低分子の電荷輸送材料とを含んでおり、成膜性を持たせるためにこれらの低分子の電荷輸送性材料はバインダーポリマー中に分散される。
【0003】
しかし、バインダーポリマー中に低分子の電荷輸送性材料が分散されるために、バインダーポリマー本来の機械的強度が低下してしまい、その結果、電子写真感光体として用いた場合耐久性に劣るという問題がある。
【0004】
上記の欠点を克服すべく、ポリビニルカルバゾール等のように、電荷輸送成分を主鎖に含む電荷輸送性ポリマーが提案されているが、未だ電気特性や強度の面で十分な特性の材料が得られていない。
【0005】
また、近年低分子の電荷輸送材料を有機EL素子として応用することが注目されているが、この場合には、発生するジュール熱により低分子化合物が融解してしまい、寿命の長い安定な素子を得にくいという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶解性、成膜性に優れ、強固な膜を形成し、有機EL素子や電子写真感光体等の種々の有機電子デバイスに応用可能な新規化合物及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、特定のシラン化合物が3次元架橋硬化が可能であり、且つその膜が電荷輸送性、耐機械的磨耗性に優れ、高い耐久性を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は一般式(I)で表されるシラン化合物である。
【0009】
【化4】
【0010】
式中、Ar1 〜Ar4 はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar5 は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr1 〜Ar5 のうち1〜4個は、−CH=N−Y−SiR1 3−a (OR2 )a で示される置換基を有し、R1 は水素、アルキル基、置換又は未置換のアリール基を示し、R2 は水素、アルキル基、トリアルキルシリル基を示し、aは1〜3の整数を示し、Yは2価の基を示し、kは0又は1を示す。
【0011】
また、本発明者らは様々なシラン化合物の合成法を鋭意検討した。従来のシラン化合物の合成法としては、以下に挙げるような方法が知られている。
【0012】
1) アルケンやアルキンのヒドロシリル化反応を用いた合成法
「有機金属化学」(裳華房、1982年出版)の322頁等に示されるような、Speier試薬{H2 PtCl6 /IPA(イソプロピルアルコール)}を用いてアルケンやアルキンのヒドロシリル化反応を行うことにより、Si−C結合を持った様々なシラン化合物を合成する方法がある。この方法は、1×10−7モル程度の触媒添加量で合成が可能であるため、非常に有用な方法である。
【0013】
しかし、このようなヒドロシリル化反応では異性体や還元反応等による副生成物が混入するため、蒸留等による厳密な精製が必要であり、本発明のような沸点の高いシラン化合物の合成には困難が伴う。
【0014】
2) Grignard反応を用いた合成法
「The Chemistry of Organic Silicon Compounds」(S.Patai編、1989年出版)の655頁等に示されるように、Grignard試薬を用いることにより、シラン化合物の合成が可能である。
【0015】
しかし、Grignard反応は酸素や水分等に非常に敏感であり、且つ多量の無機塩を生じるため処理が困難であり、工業化するには莫大な費用がかかる。
【0016】
3) 脱塩酸反応を用いたアミン系シラン化合物の合成法
「The Chemistry of Organic Silicon Compounds」(S.Patai編、1989年出版)の655頁等に示されるように、ハロゲン置換基の付いたシランとアミンの脱塩酸反応により、シラン化合物の合成が可能である。
【0017】
しかし、得られる化合物は特殊なものに限られ、且つ必然的にアミノ基を有するため、電荷輸送材料に用いた場合、電荷トラップとなりやすく、電気特性に悪影響を与えやすいという欠点がある。
【0018】
4) ウレタン結合形成反応を用いた合成法
特開平3−191358号公報にはウレタン結合を用いて電荷輸送部位を有するシラン化合物の電子写真感光体への応用例が提案されている。しかしながら、この方法で合成された化合物はヘテロ原子に直接結合した水素原子を有するため大気中の水分を吸着しやすく、電子写真感光体等の有機電子デバイスとして用いる際に、湿度等の影響を受けやすく、環境安全性にかけるという欠点がある。
【0019】
本発明者らは、これらの方法に対し、本発明の方法は、反応の選択性が高く副反応もほとんど起こらないため、カラムクロマトグラフィーや蒸留等による精製の必要がなく、水洗いのみで過剰の原料等の不純物を除くことができ、このため、工業化する際にも有利であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、下記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(B)で表される化合物とを酸性触媒を用いて反応させることにより一般式(I)で表されるシラン化合物を合成することを特徴とする。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、Ar6〜Ar9はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar10は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr6〜Ar10のうち1〜4個は、−CHOで置換され、kは0又は1を示す。
【0023】
【化6】
【0024】
式中、R1は水素、アルキル基、置換又は未置換のアリール基を示し、R2は水素、アルキル基、トリアルキルシリル基を示し、aは1〜3の整数を示し、Yは2価の基を示し、Tは−NH 2 を示す。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0026】
本発明のシラン化合物は前記一般式(I)で表される。
式中、Ar1 〜Ar4 はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0027】
【化7】
【0028】
また、一般式(I)中、kは0又は1を示し、Ar5 は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化8】
【0030】
ここで、Xは−CH=N−Y−SiR1 3−a (OR2 )a を示す。Yは2価の基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0031】
【化9】
【0032】
この中では、特に以下のものが好ましい。
【0033】
【化10】
【0034】
上記のAr1 〜Ar5 のうち1〜4個は、−CH=N−Y−SiR1 3−a (OR2 )a で示される置換基を有していることが必要である。
また、Arは以下の基から選択される。
【0035】
【化11】
【0036】
さらに、Z’は以下のものから選択される。
【0037】
【化12】
【0038】
また、Zは以下のものから選択される。
【0039】
【化13】
【0040】
さらに、Wは以下の基から選択される。
【0041】
【化14】
【0042】
また、R4 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換された置換又は未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基から選択される。さらに、R5 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子から選択される。R1 は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換された置換又は未置換のアリール基を示し、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基を示す。また、R6 は水素、炭素数1〜4のアルキル基から選択される。m、及びsはそれぞれ0又は1を示し、t及びaはそれぞれ1〜3の整数を示し、y及びzはそれぞれ1〜5の整数を示す。また、xは1〜15の整数を示し、x’及びx”はそれぞれ2〜15の整数を示す。さらに、t’は1又は2の整数を示し、s’は0〜3の整数を示し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を示す。
【0043】
また、Ar1 〜Ar5 のうち少なくとも1つは2つ以上の共役した芳香族を有するものが光酸化に対して安定であり好ましい。
【0044】
なお、Ar5 は以下のものがより好ましい。
【0045】
【化15】
【0046】
一般式(I)のシラン化合物の具体例を表1〜6に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
一般式(I)のシラン化合物は、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(B)で表される化合物とを、酸性触媒を用いて反応させることにより、合成することができる。
【0054】
一般式(A)、(B)中、一般式(I)の置換基、数値と同じ置換基、数値については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
一般式(A)中、Ar6 〜Ar9 はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0056】
【化16】
【0057】
また、一般式(A)中、Ar10は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0058】
【化17】
【0059】
ここで、Dは−CHOを示す。
上記のAr6〜Ar10のうち1〜4個は、−CHOで示される置換基を有していることが必要である。
【0060】
また、一般式(B)中、Tは−NH 2 を示す。
【0061】
一般式(A)で表される化合物が−CHO基(ホルミル基)を有し{一般式(A1)}、一般式(B)で表される化合物が−Y−NH2基(アミノ基)を有する{一般式(B1)}場合に、合成が容易で好ましい。
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
一般式(A1 )中、eは1〜4の整数を示す。
合成に用いられる酸性触媒は、塩酸、硫酸、酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸等から任意に選択することができる。このうち、本発明のシラン化合物の酸に対する安定性から、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。また、酸性触媒の使用量は反応速度等に応じて任意に設定できるが、使用量が多くなると処理、分離等が困難になったり、反応の選択性が低下したりするため、ホルミル基を持った化合物又はアミノ基を持った化合物1モルに対して、0.01から10モル、好ましくは0.01から0.1モルで用いられる。
【0065】
また、合成においては反応溶媒を用いることができ、このような反応溶媒は、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン等の一般の有機溶媒から任意に選択することができ、さらに、それらの混合溶媒を用いることもできる。これらの中では、トルエンが特に好ましい。
【0066】
また、反応温度は0〜100℃であることが好ましい。
本発明の上記一般式(I)で表される化合物は、電子写真感光体、有機EL素子、有機導電体、電子写真用キャリアのコート材、電荷発生材料の表面処理、アルミニウムやニッケルやネサガラス等と有機感光層との中間層等へ応用することができる。例えば、アルミニウム等の導電性基板上に電荷発生層及び電荷輸送層が形成された電子写真感光体において、本発明の化合物を電荷輸送層に用いることができる。また、アルミニウム等の導電性基板上に電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層が形成された電子写真感光体の表面保護層に用いることができる。より具体的には、本発明の化合物を含む塗布液を塗布することによって電荷輸送層や表面保護層を形成すればよい。また、塗布した後に加熱又は酢酸、塩酸、チタネート系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いることにより硬化膜を形成させてもよい。
【0067】
本発明のシラン化合物を含む電荷輸送層用塗布液には、バインダーポリマー中に本発明のシラン化合物を相溶させたものを用いることができ、このようなバインダーポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の公知の樹脂を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのバインダーポリマーのうち、相溶性、成膜性等の点から、下記構造式(II)〜(VI)で示されるポリカーボネート樹脂、又はそれらを共重合させたポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0068】
【化20】
【0069】
上記構造式中、nは重合度を表し、50〜3000の整数を示す。
これらのバインダーポリマーは単独で用いたり、2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料としての上記シラン化合物とバインダーポリマーとの配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
【0070】
また、本発明のシラン化合物を含む塗布液には、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の各種のカップリング剤や市販のハードコート剤を添加してもよい。
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。
【0071】
(実施例1)
−シラン化合物(1)[表1]の合成−
窒素置換した二口フラスコにN−(4−ホルミルフェニル)−N−(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン10gを入れ、トルエン100mlに溶解させた。次いで、モレキュラーシーブ4A1gとパラトルエンスルホン酸0.5gを加えた。その後撹拌しながら、3−アミノプロピルトリメトキシシラン13gを10分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した後、200mlの水に注ぎトルエンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧下溶媒を留去し、淡黄色の油状のシラン化合物(1)13.2gを得た。得られたシラン化合物のIR吸収スペクトルを図1に示す。
【0072】
(実施例2)
−シラン化合物(3)[表1]の合成−
窒素置換した二口フラスコにN−(4−ホルミルフェニル)−N−(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン10gを入れ、トルエン100mlに溶解させた。次いで、モレキュラーシーブ4A1gとパラトルエンスルホン酸0.5gを加えた。その後撹拌しながら、3−アミノプロピルトリエトキシシラン13gを10分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した後、200mlの水に注ぎトルエンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧下溶媒を留去し、淡黄色の油状のシラン化合物(3)13gを得た。得られたシラン化合物のIR吸収スペクトルを図2に示す。
【0073】
(実施例3)
−シラン化合物(16)[表4]の合成−
窒素置換した二口フラスコに3,3’−ジメチル−N,N’−ビス(4−ホルミルフェニル)−N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン10gを入れ、トルエン100mlに溶解させた。次いで、モレキュラーシーブ4A1gとパラトルエンスルホン酸1gを加えた。その後撹拌しながら、3−アミノプロピルトリメトキシシラン12gを10分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した後、200mlの水に注ぎトルエンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧下溶媒を留去し、淡黄色の油状のシラン化合物(16)11gを得た。得られたシラン化合物のIR吸収スペクトルを図3に示す。
【0074】
(実施例4)
−シラン化合物(18)[表4]の合成−
窒素置換した二口フラスコに3,3’−ジメチル−N,N’−ビス(4−ホルミルフェニル)−N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン10gを入れ、トルエン100mlに溶解させた。次いで、モレキュラーシーブ4A1gとパラトルエンスルホン酸1gを加えた。その後撹拌しながら、3−アミノプロピルトリエトキシシラン15gを10分かけて滴下し、室温で5時間撹拌した後、200mlの水に注ぎトルエンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧下溶媒を留去し、淡黄色の油状のシラン化合物(18)12gを得た。得られたシラン化合物のIR吸収スペクトルを図4に示す。
【0075】
実施例1〜4で合成したシラン化合物を用いて以下のように電子写真用感光体を製造した。
【0076】
(下引層の形成)
ホーニング処理した30mmφのアルミニウム円筒基板上にジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)10重量部、シラン化合物(商品名:A1110、日本ユンカー社製)1重量部、イソプロパノール40重量部及びブタノール20重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で塗布し、150°Cにおいて10分間加熱乾燥し膜厚0.5μmの下引層を形成した。
【0077】
(電荷発生層の形成)
x−型メタルフリーフタロシアニン1重量部を、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)1重量部及び酢酸n−ブチル100重量部と混合し、ガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を上記下引層上に浸漬コーティング法で塗布し、100°Cにおいて10分間加熱乾燥した。
【0078】
(電荷輸送層の形成)
次にN−(4−メチルフェニル)−N−(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン32重量部と一般式(IV)で示されるポリカーボネート樹脂3重量部を、モノクロロベンゼン20重量部に溶解し、得られた塗布液を、電荷発生層が形成されたアルミニウム基板上に浸漬コーティング法で塗布し、120°Cにおいて1時間加熱乾燥、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0079】
(表面保護層の形成)
さらに、実施例1のシラン化合物3重量部とフェニルトリエトキシシラン1重量部をシリコンハードコート剤(商品名:X−40−2239、信越シリコン社製)6重量部と酢酸エチル5重量部に溶解し、得られた塗布液を、電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布し、室温で乾燥させて、膜厚3μmの表面保護層を形成した。
【0080】
また、実施例1で合成されたシラン化合物の代わりに実施例2で合成されたシラン化合物を使用した他は上記と同様に電子写真用感光体を製造した。
【0081】
同様に、実施例1で合成されたシラン化合物の代わりに実施例3で合成されたシラン化合物を使用した他は上記と同様に電子写真用感光体を製造した。
【0082】
さらに、実施例1で合成されたシラン化合物の代わりに実施例4で合成されたシラン化合物を使用した他は上記と同様に電子写真用感光体を製造した。
【0083】
このようにして得られた電子写真用感光体を実機(商品名:XP−11、富士ゼロックス社製)に登載し1万枚の耐久試験を行った後も、感光体表面には磨耗、傷、剥離、クラック等は見られず、鮮明な画像が得られた。
【0084】
以上から、本実施例のシラン化合物が溶解性、成膜性に優れ、且つその膜は強固なものであり、優れた繰り返し安定性および環境安定性を示すことがわかった。
【0085】
【発明の効果】
本発明のシラン化合物は新規な化合物であり、溶解性、成膜性に優れ、強固な膜を形成し、有機EL素子や電子写真感光体等の種々の有機電子デバイスに応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で合成されたシラン化合物のIR吸収スペクトルである。
【図2】実施例2で合成されたシラン化合物のIR吸収スペクトルである。
【図3】実施例3で合成されたシラン化合物のIR吸収スペクトルである。
【図4】実施例4で合成されたシラン化合物のIR吸収スペクトルである。
Claims (3)
- xを1〜15の整数、x’及びx”をそれぞれ2から15の整数としたときに、前記一般式(I)中、Yが、−(CH2)x−、−(Cx ’H2x ’ -2)−、−(Cx ”H2x ” -4
)−、置換又は未置換のアリーレン基を少なくとも1種以上含有することを特徴とする請求項1に記載のシラン化合物。
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