JP3560316B2 - ガスセンサとその製造方法及びガスセンサシステム - Google Patents

ガスセンサとその製造方法及びガスセンサシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサとそれを用いたガスセンサシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の排気ガスに含有される炭化水素(以下、HCという)やCO等の可燃ガス成分を検出するためのセンサとして、抵抗型センサが知られている。例えば、HCやCO等の可燃ガス成分検出用のものは、検出素子としてSnO等の酸化物半導体(n型)を使用し、以下の原理により測定を行う。すなわち、雰囲気中の酸素は検出素子に負電荷吸着するが、雰囲気中にHCやCO等の可燃ガス成分が含有されていると、その吸着酸素との間で燃焼反応を起こし、該吸着酸素を離脱させる。そして、この吸着酸素の離脱に伴う検出素子の電気抵抗値変化が、雰囲気中の可燃ガス成分の濃度に依存して増減することから、これを測定することにより該可燃ガス成分の濃度を知ることができる。しかしながら、上述のような抵抗型センサにおいては、酸化物半導体による検出素子の出力が、排気ガス中に含有される酸素濃度や水蒸気濃度により変化しやすい欠点を有し、同じ可燃ガス成分濃度に対しても、排気ガス中の酸素濃度等により検出出力値が変動してしまう問題がある。
【0003】
そこで、これを解決するために、特開平8−247995号公報には、次のような構造の可燃ガス成分の測定装置が開示されている。すなわち、該装置においてはセンシング素子が2つの処理ゾーンを有し、第一拡散律速手段を介して排気ガスを第一処理ゾーンに導き、そこで第一酸素濃度調整用ポンプ素子により酸素を汲み出して、該第一処理ゾーン内の酸素濃度を可燃ガス成分が実質的に燃焼され得ない低い値に低下させる。次に、こうして酸素濃度を低下させた気体を第二拡散律速手段を介して第二処理ゾーンに導き、第二酸素濃度調整用ポンプ素子を用いてここに酸素を汲み込むことで可燃ガス成分を燃焼させ、そのときに第二酸素濃度調整用ポンプ素子を流れる電流又は電圧の値に基づいて、可燃ガス成分量を測定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上記公報の装置においては、第二処理室内にて可燃ガス成分を電極上で燃焼させるために、第二の酸素ポンプ素子により該第二処理室内に酸素を汲み入れる構成が採用されている。そして、酸素濃淡電池素子により第二処理室内の酸素濃度を検出し、その検出起電力の値が一定となるように第二の酸素ポンプ素子を作動させたときのポンピング電流から可燃ガス成分の検出を行うようにしている。しかしながら、この構成では、可燃ガス成分の燃焼に伴い酸素濃度が変化すると、これが酸素濃淡電池素子により検出され、さらにポンピング電流の制御部にフィードバックされる形になるので、その分だけ可燃ガス成分の検出応答に遅れが生じやすい欠点がある。
【0005】
また、上記公報の装置においては、第一処理ゾーンへ導入された排気ガス中の酸素濃度は第一酸素濃度調整用ポンプ素子により、「可燃ガス成分が実質的に燃焼され得ない低い値」に低下させられるが、この値は、公報の記載によれば具体的には10−14atm以下、好ましくは10−16atm以下であり、通常は10−20atm程度の極めて低い値である。しかしながら、第一処理ゾーン酸素濃度をこのような低圧に設定すると、可燃ガス成分の測定精度に関係する以下に述べるような問題が引き起こされることがある。
【0006】
すなわち、排気ガス中には、一般には炭化水素、一酸化炭素、水素といった可燃ガス成分以外に水蒸気が相当量存在し、この水蒸気量は内燃機関の運転条件等により刻々変化するのが通常である。本発明者らの検討によれば、このような排気ガスを被検ガスとして、その酸素濃度を上述のような値にまで低下させると、水蒸気の一部が水素と酸素とに分解することが判明している。分解の結果発生した酸素と水素のうち、酸素は第一酸素濃度調整用ポンプ素子により汲み出されるが、水素は排出されることなく第二処理室に運ばれ、そこで燃焼を起こす。このような状態になると、例えば可燃ガス成分として主に炭化水素を含有する被検ガスの場合は、水蒸気の分解で生じた水素の燃焼により、炭化水素濃度の測定精度が大きく影響を受けてしまうことになるのである。なお、付言すれば、上記公報に開示された測定例は全て、被検ガス中の水蒸気濃度を一定にした条件でのみ行われており、水蒸気濃度変化の影響等については全く言及されていない。
【0007】
この場合、前述の公報に開示されているように、プロトンポンプを併設して発生した水素の汲み出しも行い、炭化水素のみを選択的に燃焼させることにより測定精度を改善することも考えられる。しかし、この方法は結局のところは水蒸気の分解による水素発生を是認した上での窮余策に過ぎないものであり、プロトンポンプを追加する分だけセンサ構造及びその制御機構が複雑化して装置価格が高騰することはいうまでもなく、またプロトンポンプにより排出しきれなかった残留水素が測定誤差を招く恐れもある。
【0008】
また、上記したものとは別に、次のような問題もある。すなわち、近年では、大気汚染防止に対する排気ガス規制はますます強化される傾向にあり、不完全燃焼等に伴う炭化水素の発生量を抑さえるために、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等の内燃機関は、リーンバーン作動型のものに移行しつつある。ここで、リーンバーン条件での排気ガスはストイキあるいはリッチ条件でのものより酸素濃度が高く、これに上記従来の装置を適用した場合は、酸素濃度を上述のような低い値にまで低下させるために、酸素濃度調整用ポンプ素子にかなりの負担がかかることとなる。その結果、酸素濃度調整用ポンプ素子の寿命が短くなったり、あるいは酸素濃度調整用ポンプ素子の作動パワーを上げるために、周辺の制御回路も高出力のものを用いなければならず、装置価格の高騰を招く等の問題につながる。
【0009】
本発明の第一の課題は、排気ガス等の被測定ガス中の酸素濃度や素子温度が変動しても、該被測定ガス中の可燃ガス成分の濃度を高精度で検出できて、しかも可燃ガス成分の検出応答特性に優れたガスセンサとそれを用いたガスセンサシステムとを提供することにある。また、第二の課題は、水蒸気の分解による可燃ガス成分検出精度への影響が生じにくく、またリーンバーン条件での作動にも適したガスセンサと、それを用いたガスセンサシステムとを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明のガスセンサは、下記の要件を含んで構成されることを特徴とする。
▲1▼第一処理室:周囲から区画されるとともに、第一気体流通部を介して被測定ガスが導入される。
▲2▼第二処理室:同じく周囲から区画されるとともに、第一処理室内の気体が第二気体流通部を介して導かれる。
▲3▼酸素濃度検出素子:第一処理室内の気体の酸素濃度を測定する。
▲4▼酸素濃度調整用ポンプ素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、酸素を第一処理室から汲み出す又は第一処理室へ汲み込むことにより、当該第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を所定のレベルに調整する。
▲5▼酸化触媒部:第二気体流通部を介して第一処理室から第二処理室内に導入された気体に対し、当該気体に含まれる可燃ガス成分の燃焼を促進させる。
▲6▼測定用酸素供給ポンプ素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極間に通電することにより、被測定ガス中の可燃ガス成分の測定に用いる一定量の測定用酸素を第二処理室に汲み込む。
▲7▼可燃ガス成分濃度検出素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極を介して第二処理室から酸素を汲み出す向き(すなわち、第二処理室に面する電極側が負となる向き)に一定の電圧が印加されるようになっており、第一処理室から第二処理室内に導入された気体中の、可燃ガス成分の燃焼により消費される酸素量に応じてその出力電流を変化させ、当該出力電流が被測定ガス中の可燃ガス成分の濃度検出情報として取り出される。
【0011】
また、本発明のガスセンサシステムは、下記の要件を含んで構成されることを特徴とする。
(A)ガスセンサ:下記の要件を含んで構成される。
▲1▼第一処理室:周囲から区画されるとともに、第一気体流通部を介して被測定ガスが導入される。
▲2▼第二処理室:同じく周囲から区画されるとともに、第一処理室内の気体が第二気体流通部を介して導かれる。
▲3▼酸素濃度検出素子:第一処理室内の気体の酸素濃度を測定する。
▲4▼酸素濃度調整用ポンプ素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、酸素を第一処理室から汲み出す又は第一処理室へ汲み込む。
▲5▼酸化触媒部:酸素濃度調整用ポンプ素子により酸素濃度が調整された後に第二気体流通部を介して第一処理室から第二処理室内に導入された気体に対し、当該気体に含まれる可燃ガス成分の燃焼を促進させる。
▲6▼測定用酸素供給ポンプ素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極間に通電することにより、被測定ガス中の可燃ガス成分の測定に用いる一定量の測定用酸素を第二処理室に汲み込む。
▲7▼可燃ガス成分濃度検出素子:酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極を介して第二処理室から酸素を汲み出す方向に一定の電圧が印加されるようになっており、第一処理室から第二処理室内に導入された気体中の、可燃ガス成分の燃焼により消費される酸素量に応じてその出力電流を変化させ、当該出力電流が被測定ガス中の可燃ガス成分の濃度検出情報として取り出される。
(B)酸素ポンプ作動制御手段:第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度が所定のレベルまで減少するように酸素濃度調整用ポンプ素子の作動を制御する。
(C)電圧印加手段:可燃ガス成分濃度検出素子に対し電圧を印加する。
(D)ポンピング電流通電手段:測定用酸素供給ポンプ素子の両電極間に、測定用酸素汲み込みのためのポンピング電流を通電する。
【0012】
なお、本発明のガスセンサ及びガスセンサシステムが検出の対象とする可燃ガス成分としては、例えば炭化水素(HC)、一酸化炭素及び水素のうちの1種類又は2種以上からなるものを例示できる。
【0013】
上記構成においては、被測定ガスは、第一処理室において酸素濃度調整用ポンプ素子の作動により酸素濃度が所定レベルに調整される。そして、これを第二処理室に導いて酸化触媒部の補助により可燃ガス成分を燃焼させる。可燃ガス成分濃度検出素子は、定電圧が印加された状態で上記燃焼により酸素量が変化すると、その酸素量変化に応じて出力電流を変化させるので、該出力電流の値から、もとの被測定ガス中の可燃ガス成分の濃度情報を得ることができる。測定対象となる被測定ガスは、酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度が所定レベルに調整された後、可燃ガス成分の含有量測定が行なわれる形となるので、その検出出力が被測定ガス中に本来含まれている酸素の濃度の影響を受けにくく、可燃ガス成分濃度検出素子の出力電流の可燃ガス成分濃度に対する直線性も良好である。
【0014】
他方、上記本発明のセンサでは、第二処理室内での可燃ガス成分の燃焼に必要な酸素は、測定用酸素供給ポンプ素子が汲み込む酸素により補われる。この測定用酸素供給ポンプ素子の役割は、前記公報の装置における第二の酸素ポンプ素子と一見類似しているようであるが、下記のような大きな違いがある。すなわち、公報の装置では第二の酸素ポンプ素子は、酸素濃淡電池素子の酸素濃度検出情報によりフィードバック制御され、かつそのポンプ電流値が可燃ガス成分濃度として取り出されていた。しかしながら、本発明のセンサでは、これに相当する測定用酸素供給ポンプ素子の役割は、第二処理室に可燃ガス成分の燃焼に必要十分な酸素を供給するに留り、可燃ガス成分濃度は可燃ガス成分濃度検出素子の電流情報に基づいて検出するようになっている。すなわち、公報の装置のようにフィードバック系を使用せず、可燃ガス成分濃度の変化が素子の電流情報変化に直接表れるので、検出の応答性に優れる利点を有しているのである。かくして、上記構成により、本発明の第一の課題が解決される。
【0015】
なお、第二処理室への酸素の供給速度はなるべく一定であることが、可燃ガス成分濃度の正確な検出を行う上で望ましい。すなわち、測定用酸素供給ポンプ素子に通ずる電流値は一定であることが望ましい。また、可燃ガス成分濃度が高くなった場合、未燃焼の可燃ガス成分が残留したりすると測定精度を同様に低下させることにつながる。従って、第二処理室への酸素の供給速度(すなわち、測定用酸素供給ポンプ素子への通電電流値レベル)は、可燃ガス成分の必要とされる検出濃度の上限値に応じて、可燃ガス成分の燃焼が十分促進されるよう、適当な値に設定する必要がある。この場合、第二処理室における可燃ガス成分燃焼のための酸素が不足しないようにするには、可燃ガス成分濃度検出素子を流れる電流の向きが常時酸素が汲み出される向きのものとなるよう、第二処理室に酸素を幾分余剰気味に供給すること、換言すれば測定用酸素供給ポンプ素子への通電電流値レベルをやや大きめに設定することが望ましいといえる。定電流の供給レベルの好ましい数値範囲としては、例えばメタンを1000ppmまでのレンジで測定したい場合、20〜50μAである。
【0016】
また、可燃ガス成分濃度検出素子に印加される定電圧のレベルは、第二処理室内の酸素分圧が、導入された気体中の窒素酸化物の分解が実質的に生じない範囲で調整するのがよい。これにより、窒素酸化物分解により発生する酸素の影響で、可燃ガス成分濃度の検出精度が低下することが防止できるようになる。
【0017】
次に、上記本発明のガスセンサにおいて酸素濃度調整用ポンプ素子は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を、該被測定ガスに含有される水蒸気の分解反応が実質的に起こらない範囲内に調整するものとすることができる。この場合、ガスセンサシステムの酸素ポンプ作動制御手段は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の、酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度が、該被測定ガスに含有される水蒸気の分解反応が実質的に起こらない範囲内で調整されるように、酸素濃度調整用ポンプ素子の作動を制御するものとする。
【0018】
該構成のように、酸素濃度の調整により水蒸気の分解による水素発生を実質的に起こらなくすることで、該水素の燃焼による可燃ガス成分の検出精度低下を防止することができる。また、本発明のガスセンサ及びガスセンサシステムはHC、特にメタンに対する選択性に優れ、メタン濃度を従来型のガスセンサよりもより正確に測定できる利点も有する。すなわち、本発明の第二の課題が解決される。
【0019】
なお、被測定ガス中に二酸化炭素が含有される場合、これが分解されると、水蒸気の場合の水素と同様に、可燃ガス成分である一酸化炭素が発生し、この一酸化炭素の燃焼により可燃ガス成分の検出精度低下が生じる場合がある。この場合、酸素濃度調整用ポンプ素子は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を、二酸化炭素の分解反応が実質的に起こらない所定の範囲に調整するものとすることがさらに望ましい。なお、二酸化炭素の分解が生ずる酸素濃度は、通常は水蒸気が分解する酸素濃度よりも低いので、水蒸気の分解が阻止される酸素濃度条件の採用により、二酸化炭素の分解も同時に阻止できる場合が多い。
【0020】
また、酸素濃度調整用ポンプ素子は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度を10−12〜10−6atmの範囲で調整するものとして構成することができる。この場合、ガスセンサシステムの酸素ポンプ作動制御手段は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度が、10−12〜10−6atmの範囲で調整されるように、酸素濃度調整用ポンプ素子の作動を制御するものとされる。
【0021】
上記構成においては、酸素濃度調整用ポンプ素子の作動による第一処理室内の酸素濃度到達レベルを、上述の範囲内で調整することにより、水蒸気の分解が抑制され、ガスセンサあるいはガスセンサシステムの可燃ガス成分の検出精度を高めることができる。また、調整すべき到達酸素濃度レベルが、前述の従来技術における10−20〜10−14atmと比較してはるかに高いので、例えばリーンバーン条件での測定でも酸素濃度調整用ポンプ素子への負担がかかりにくく、酸素濃度調整用ポンプ素子の寿命を延ばすことができる。また、酸素濃度調整用ポンプ素子の作動パワーもそれほど高くする必要がないので、周辺の制御回路等も安価に構成できる利点がある。なお、この場合も、酸素濃度調整用ポンプ素子(あるいはその制御手段)は、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を、該被測定ガスに含有される水蒸気の分解反応が実質的に起こらない範囲内に調整するように構成することが望ましい。また、上記ガスセンサ及びガスセンサシステムにおいて、水蒸気の分解をさらに効果的に防止ないし抑制するには、導入された被測定ガスに含まれる可燃ガス成分の一部が第一電極を酸化触媒として燃焼する程度の値に第一処理室内の酸素濃度が調整されるよう、酸素濃度調整用ポンプ素子を作動させることが望ましい。
【0022】
また、可燃ガス成分のうち、炭化水素(特に、燃焼活性のやや低いメタンなど)の選択的検出性を特に向上させたい場合には、第一処理室内の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を、炭化水素よりも燃焼活性の高い成分(例えば、一酸化炭素、水素、アンモニアなど)が、検出対象となる炭化水素よりも優先的に燃焼される範囲のものとなるように調整することが望ましい。これにより、炭化水素(例えばメタン)の選択検出精度をより良好なものとすることができる。この場合の酸素濃度の範囲は、例えば後述する第一電極や第四電極の有する、各種可燃ガス成分への燃焼触媒活性によっても異なるが、10−12〜10−6atm、望ましくは10−11〜10−9atmである。
【0023】
なお、第一処理室内へ導入された被測定ガス中の酸素濃度が10−12atm未満になると、被測定ガス中に水蒸気が含有されている場合、その水蒸気の分解が顕著となり、生じた水素による可燃ガス成分の検出精度低下が著しくなる場合がある。一方、酸素濃度が10−6atmを超えると、第一処理室内での可燃ガス成分の燃焼が著しくなり、第二処理室へ送り込まれる気体中の可燃ガス成分濃度が小さくなって、所期の検出精度が達成されなくなる場合がある。なお、上記酸素濃度は、より望ましくは10−11〜10−9atmの範囲で調整するのがよい。
【0024】
例えばガスセンサの作動温度が650〜700℃程度に設定され、被測定ガス中の水蒸気濃度が5〜15%程度の範囲で変動する場合、水蒸気及び水素と平衡する酸素の分圧の最小値は10−12atm程度となり、これよりも酸素分圧が低くなると水蒸気の分解が進行して、可燃ガス成分の検出精度に影響が出るようになる。従って、この場合は、第一処理室の酸素濃度を上記分圧値よりも大きく設定することが望ましいといえる。
【0025】
なお、本明細書において第一処理室内の酸素濃度は、特に断らない限り、酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を意味するものとする。例えば被測定ガス中の可燃ガス成分の一部が燃焼して酸素を消費するような場合等においては、酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度は、その燃焼消費が生ずる前の酸素濃度を必ずしも意味しない場合がある。また、第一処理室に面して可燃ガス成分の燃焼触媒となりうる多孔質電極等が存在したり、あるいは酸素濃度調整用ポンプ素子による酸素のポンピング等の要因により、第一処理室内の酸素濃度は場所によってばらつくこともある。この場合も、酸素濃度検出素子により検出される酸素濃度が、第一処理室内の酸素濃度を代表して示すものと考える。
【0026】
上記ガスセンサ(及びセンサシステム)において、外部から第一処理室に被測定ガスを導く第一気体流通部、及び第一処理室と第二処理室とを連通させる第二気体流通部とは、その少なくとも一方を、一定の拡散抵抗のもとに気体の流通を許容する拡散規制流通部として構成することができる。このようにすることで、被検出雰囲気における被測定ガス濃度が変動しても、第一処理室ないし第二処理室に一旦導入されたガスの組成変動は、流通部の拡散抵抗に応じて定まる一定の期間は小さく抑さえられるので、可燃ガス成分の検出精度を高めることができる。具体的には、拡散規制流通部は、小孔やスリットあるいは各種絞り機構のほか、連通気孔を有する金属ないしセラミックスの多孔質体で構成することができる。
【0027】
次に、上記ガスセンサ及びガスセンサシステムにおいては、酸素濃度検出素子は、酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成されるとともに、一方の電極が第一処理室と接するように配置された酸素濃淡電池素子とすることができる。この場合、可燃ガス成分濃度検出素子の第二処理室と接する電極を第二電極とし、測定用酸素供給ポンプ素子の第二処理室と接する電極を第三電極とし、酸素濃淡電池素子の第一処理室と接する電極を第一電極とし、酸素濃度調整用ポンプ素子の第一処理室と接する電極を第四電極として、それら第一〜第四電極は、いずれも酸素分子解離能を有する多孔質電極として構成されるととともに、第二電極及び第三電極の少なくともいずれかが、被測定ガス中の可燃ガス成分に対する酸化触媒活性を有して酸化触媒部として機能するものとして構成することができる。この場合、第一電極〜第四電極は、第一処理室よりも第二処理室において、可燃ガス成分の燃焼による酸素消費量が大きくなるように、その酸化触媒活性が調整するようにする。これにより、第一処理室内で燃焼せずに残留した可燃ガス成分の少なくとも一部を、第二処理室内では燃焼させることが確実に行えるようになり、センサの感度を高めることができる。さらに、可燃ガス成分濃度検出素子の第二処理室に面する電極(第二電極)が酸化触媒部に兼用されるため、センサないしセンサシステムの構成をより単純化できる利点がある。
【0028】
次に、可燃ガス成分濃度検出素子の第二処理室と接する電極(第二電極)は、第二気体流通部と干渉しない位置に形成することが、可燃ガス成分の検出出力を安定化させる上で望ましい。上記電極を第二気体流通部と干渉する位置に形成した場合、第一処理室から導入された被測定ガスと既に第二処理室内に導入されているガスとが平衡に到達する前の状態で、可燃ガス成分の燃焼が起こる可能性があるが、干渉しない位置に形成した場合はこのような現象が起こりにくくなり、出力安定化を図ることができるようになるものと考えられる。
【0029】
被検出成分が例えばCOあるいはHCの場合、酸化触媒活性が高くなるべき電極は、Pt、Pd及びRhのいずれかを主体とする金属(単体又は合金)、あるいはPt−Rh系合金、Rh−Pd系合金、Pd−Ag系合金等(以下、本明細書においては、これらを高活性金属グループという)で構成することができる。また、逆に酸化触媒活性が低くなるべきものは、Au、Ni及びAgのいずれかを主体とする金属(単体又は合金)、あるいはPt−Pd合金、Pt−Au系合金、Pt−Ni系合金、Pt−Ag系合金,Ag−Pd系合金、Au−Pd系合金等(以下、本明細書において、これらを低活性金属グループという)により構成することができる。この場合、酸素濃度調整用ポンプ素子、酸素濃淡電池素子あるいは可燃ガス成分濃度検出素子の要部を構成する酸素イオン伝導性固体電解質が、後述のZrO固体電解質である場合、低活性金属グループとしては、ZrO固体電解質(一般的な焼成温度範囲1450〜1550℃)と同時焼成可能な材質を採用することが、センサの製造能率を向上させる上で望ましい。例えばPt−Au系合金を使用する場合は、Ptに対しAuを0.1〜3重量%の範囲で添加するのがよい。Auの含有量が0.1重量%未満になると電極の酸化触媒活性が高くなりすぎる問題が生ずる場合がある。
【0030】
一方、本発明のガスセンサにおいては、以下のような構成の電極を用いるとさらによい。具体的には、酸素濃度調整用ポンプ素子を、酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成されるとともに、一方の電極(以下、第四電極という)が第一処理室と接するように配置されたものとして構成する。そして、被検出成分が例えばCOあるいはHCの場合、その第四電極を、構成金属がPt又はPt−Au合金である多孔質金属からなる主電極層と、その主電極層を覆う形で該第四電極の表層部を構成し、構成金属がAu及びAgのいずれかを主成分とする金属、Pt−Au系合金、Au−Pd系合金、Pt−Ag系合金及びPt−Ni系合金のいずれか(以下、これらを総称して不活性金属という)である多孔質金属からなる表面電極層との二層を含むものとして構成することができる。なお、本明細書において、「X−Y系合金」とは、該合金に含まれるもっとも重量含有率の高い金属成分(すなわち主成分)がXであり、2番目に重量含有率が高い金属成分がYである合金を意味し、X−Y系二元系合金、あるいはX−Yとそれ以外の合金成分とを含んだ三元系以上の合金とすることができる。
【0031】
酸素濃淡電池素子あるいは酸素濃度調整用ポンプ素子の電極材料は、酸素分子に対する解離あるいは再結合に対する十分な触媒活性を有している必要がある。例えばPt単体金属は、この点に関しては優れている材料であるが、第一処理室に面する電極の材料としては可燃ガス成分に対する燃焼の触媒活性も極めて高いので、これを若干緩和してやる必要がある。例えば、従来より行われているように、燃焼触媒活性の低いAuを20重量%程度の範囲内で配合してPt−Au合金とするのも一法であるが、Auの含有量が増大すると、可燃ガス成分に対する燃焼の触媒活性とともに酸素分子に対する解離能も急速に低下するから、これら二つの触媒活性のバランス調整がなかなか行いにくい側面がある。
【0032】
そこで、上記構成のように、酸素分子に対する解離能が高いPt又はPt−Au合金からなる多孔質の主電極層の表面を、可燃ガス成分に対する燃焼の触媒活性が低い不活性金属からなる多孔質の表面電極層にて覆う多層構造電極の採用により、酸素分子解離は良好に維持しつつ可燃ガス成分への燃焼触媒活性はなるべく小さくするという、都合のよい調整が行いやすくなる。
【0033】
次に、表面電極層の構成金属は、COあるいはHCに対する燃焼触媒活性が特に小さく、酸素分子に対する解離・再結合の触媒能もある程度有しているAu系の多孔質金属が本発明に好適に使用できるが、その他に例えばAgを主成分とする金属、Pt−Au系合金(例えばAuが5重量%以上)、Pt−Pb系合金(例えばPbが1重量%以上)、Pt−Ag系合金(例えばAgが1重量%以上)、Pt−Ni系合金(例えばNiが1重量%以上)等の多孔質金属も使用できる。
【0034】
また、表面電極層と主電極層とは、一層又は二層以上の別の層を介して間接的に接する構成とすることもできる。ただし、主電極層と表面電極層との二層構造を採用すれば、製造工程が簡略なもので済む利点がある。この場合、構成金属がAuを主成分とするAu系金属である多孔質金属体からなる表面電極層を採用することにより、酸素分子解離は良好に維持しつつ可燃ガス成分への燃焼触媒活性を抑制する効果をとりわけ顕著に達成することができる。
【0035】
なお、上記のような多層構造電極は、酸素濃度に対する鋭敏な応答性がそれほど要求されない酸素濃度調整用ポンプ素子側の第四電極に特に好適に採用できるが、酸素濃淡電池素子側の第一電極に用いることも不可能ではない。ただし、酸素濃淡電池素子による第一処理室中の酸素濃度の検出精度をさらに向上させるには、第一電極は、構成金属がPt、Pt−Au合金又はPt−Ag合金で構成するのがよい。この場合、第一電極の面積を第四電極の面積よりも小さくすることにより、第一処理室内での第一電極に由来する可燃ガス成分の燃焼が抑制されるので、第一処理室内での可燃ガス成分の燃焼によるロスを小さくでき、センサの感度を一層高めることができる。
【0036】
第一電極にPt−AuあるいはPt−Ag合金を使用する場合、AuあるいはAgはCOあるいはHCに対する燃焼触媒活性を抑制する目的で配合される。この場合、AuあるいはAgの含有量が1%を超えると酸素分子解離能が低くなりすぎ、酸素濃度検出能の低下につながる。他方、Auあるいは含有量が0.1重量%未満になると、燃焼触媒活性の抑制効果はほとんど期待できなくなる。なお、AuとAgとをPtに対して、その合計含有量が1重量%以下となるように共添加することも可能である。
【0037】
また、可燃ガス成分のうち、炭化水素の選択的検出性を特に向上させたい場合には、第一処理室において、炭化水素よりも燃焼活性の高い成分が、検出対象となる炭化水素よりも優先的に燃焼されるようにすることが望ましい。この場合、前述のように、第一処理室内の酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を調整することのほかに、該第一処理室に面する第一電極あるいは第四電極の燃焼触媒活性あるいは第一処理室内の温度も重要な因子となる。そして、第四電極の材質を、燃焼触媒活性の比較的低い上記のような多層構造の電極とする一方、第一電極を燃焼触媒活性の高いPtあるいはPt合金で構成することにより、燃焼活性のやや低い炭化水素成分(例えばメタンなど)はあまり燃焼しない一方、それよりも燃焼活性の高い一酸化炭素、水素あるいはアンモニア等の成分は、第一電極上で優先的に燃焼し、炭化水素成分を選択的に検出するために好都合な環境を形成することができる。また、第一処理室内の温度が上昇すると、燃焼反応が進行しやすくなり、材質の異なる電極間の燃焼触媒活性にも差を生じにくくなるので、炭化水素成分の選択検出には一般には不利となる。しかしながら、第四電極を前記のような多層構造とした場合は、かなりの高温(例えば700〜800℃)になっても、Pt等で構成した第一電極との間に顕著な触媒活性差を付与でき、炭化水素成分の選択検出を効果的に行うことができる。
【0038】
なお、第四電極を前記のような多層構造電極とする場合、本発明のガスセンサは以下の工程を含む方法により製造できる。
▲1▼下地電極層形成工程:酸素濃度調整用ポンプ素子に含まれる酸素イオン伝導性固体電解質層の未焼成成形体(以下、未焼成固体電解質成形体という)に対し、第四電極の主電極層の原料粉末の未焼成層(以下、主未焼成電極層という)を含んだ下地電極パターンを形成してこれを未焼成固体電解質成形体とともに一体焼成することにより、酸素イオン伝導性固体電解質層の上に主電極層を含む下地電極層を形成する。
▲2▼表面電極層形成工程:その下地電極層の上に、表面電極層の原料粉末層を形成してこれを上記一体焼成時よりも低温にて二次焼成することにより、表面電極層を形成する。原料粉末層は、例えば原料粉末のペーストを主電極層上に塗布することにより形成することができる。
【0039】
主電極層を含む下地電極層は、Ptあるいは前記組成のPt−AuあるいはPt−Ag合金のような高融点金属で構成されるので、各素子の要部を構成するジルコニア等の固体電解質セラミックと該層との同時焼成が可能である。しかしながら、表面電極層をAu系金属で構成する場合、Au系金属は融点が低いことから固体電解質セラミックと同時焼成すると、多孔質状態を保持することが不可能であり、かつ下地電極層へAuが拡散して燃焼触媒活性を抑制する効果が達成できなくなる。そこで、表面電極層を、下地電極層と固体電解質層との一体焼成温度よりも低温で二次焼成して、下地電極層上に焼きつける工程を採用することで、このような不具合を解消でき、所期の性能の多層電極が得られる。
【0040】
なお、二次焼成時、あるいは高温となるセンサ使用時において、表面電極層の成分(例えばAu)が、主電極層中に拡散する場合がある。例えば、二次焼成前の主電極層の構成金属を実質的にPtからなるものとして構成していても、表面電極層側からのAuの拡散により、主電極層の構成金属がPt−Au合金となる場合がある。この場合、表面電極層の主電極層側への拡散が進み過ぎると、表面電極層の厚さが不十分となったり、あるいは甚だしい場合には表面電極層が消失したりするといった不具合が発生することもありうる。例えば、表面電極層をAuを主体に構成し、主電極層をPtを主体に構成したい場合には、Au成分の主電極層側への過度の拡散を防止するために、二次焼成温度は800〜1050℃程度に設定するのがよい。二次焼成温度が800℃未満になると、表面電極層の燒結が不十分となり、密着不足による表面電極層の剥離等の不具合につながる場合がある。他方、二次焼成温度が1050℃を超えると、Au成分の拡散により表面電極層の厚さが不十分となったり、あるいは燒結が進行し過ぎて多孔質構造が損なわれ、多孔質電極として必要な酸素透過性を確保できなくなる場合がある。なお、主電極層の構成金属中にはじめから3〜10重量%程度の範囲でAuを配合しておけば、Pt中へのAuの固溶限界が比較的小さい(800℃で5重量%程度)ことを利用して、表面電極層から主電極層へのAuの拡散を抑制することができ、ひいては表面電極層の厚さ減少等の発生を効果的に防止することができる。
【0041】
本発明のガスセンサを、酸素濃度調整用ポンプ素子を含んで構成されたポンプセルユニットと、酸素濃度検知素子、第二処理室、可燃ガス成分濃度検出素子を含んで構成されたセンサセルユニットとを各々別体に形成し、それら両ユニットを接合材を用いて互いに接合し一体化する構成としておけば、上記二次焼成工程を含んだ製造方法を合理的に実施することが可能となる。この場合、表面電極層を形成せず、下地電極層を形成した状態のポンプセルユニットを焼成により製造し、次いでそのポンプセルユニット上の下地電極層の上に二次焼成により表面電極層を形成し、これを別途焼成により製造したセンサセルユニットと一体化することによりガスセンサを得るようにする。なお、ポンプセルユニットにポンプセル側嵌合部を形成し、センサセルユニットにこれと嵌合するセンサセル側嵌合部を形成しておけば、それら両嵌合部の嵌合面においてポンプセルユニットとセンサセルユニットとを嵌合させることにより、接合時の位置決めが行いやすく、センサの製造能率を向上させることができる。
【0042】
上記本発明のガスセンサにおいて酸素濃淡電池素子あるいは可燃ガス成分濃度検出素子は、ZrOを主体とする酸素イオン伝導性固体電解質(ZrO固体電解質)で構成することができる。ここで、ZrO固体電解質を用いた酸素濃淡電池素子において、一方の電極が酸素と可燃ガス成分が混在した被測定ガスに接するようにしておき、他方の電極が一定酸素濃度の基準雰囲気に接するように配置した場合、その濃淡電池起電力は、酸素と可燃ガス成分とが過不足なく反応する存在比率で混在している組成(以下、ストイキ組成という)付近を境にして急激に変化する性質を有している。ここで、一般のガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンをリーンバーン条件で運転したときの、発生する被測定ガス中には可燃ガス成分の総濃度はおおむね0〜1000ppmC(ppmCは炭素当量で表した100万分率を示す)程度のものとなる。そして、この可燃ガス成分濃度において、第一処理室で調整される被測定ガスの酸素濃度を前述の10−6atm(望ましくは10−9atm)以下の範囲に調整することで、第二処理室に導入されるガスは概ねストイキ組成か若干リッチ側の組成となり、可燃ガス成分濃度検出素子の出力を高めることができ、ひいてはガスセンサの感度を良好なものとすることが可能となる。
【0043】
なお、上記酸素濃度調整用ポンプ素子、酸素濃淡電池素子及び可燃ガス成分濃度検出素子が上記ZrO固体電解質で構成される場合、これを所定の作動温度に加熱するための加熱素子を設けることができる。この場合、その作動温度は、650〜800℃に設定するのがよい。作動温度が800℃を超えると、可燃ガス成分濃度検出素子の出力電流値のレベルが低くなり過ぎ、ガスセンサの感度が低下する場合がある。これは、被測定ガス中のHC成分などの可燃ガス成分が、高温のため第一処理室に導入された段階で大半が燃焼してしまうためであると考えられる。一方、作動温度が650℃未満になると、酸素濃度調整用ポンプ素子の内部抵抗が増大して作動が不安定化し、可燃ガス成分の検出精度が損なわれる場合がある。
【0044】
本発明のガスセンサ及びガスセンサシステムにおいては、酸素濃度検出素子は前記した通り、酸素イオン伝導性固体電解質層の両面に多孔質金属からなる電極が形成され、一方の電極(以下、第一電極という)が第一処理室と接する検出側電極とされ、他方の電極が酸素基準電極とされる酸素濃淡電池素子とすることができる。この場合、可燃ガス成分濃度検出素子において、第二処理室に接する電極(第二電極)とは異なる側の電極を、酸素濃淡電池素子の酸素基準電極と共有化させることができる。このようにすれば、酸素濃度検出素子と可燃ガス成分濃度検出素子との酸素基準電極を共通化できるのでセンサをコンパクトに構成できる。
【0045】
より具体的には、第一処理室と第二処理室とを、酸素イオン伝導性固体電解質で構成された隔壁を挟んで互いに隣接して配置することができる。この場合、隔壁には、第一処理室と第二処理室とを連通させる第二気体流通部を形成し、厚さ方向中間部に酸素基準電極を埋設することができる。そして、隔壁の第一処理室に面する表面には第一電極を形成し、該第一電極と、酸素基準電極と、それら電極の間に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質の隔壁部分とが酸素濃淡電池素子を構成するようにする。また、隔壁の第二処理室に面する表面には第二電極を形成し、該第二電極と、酸素基準電極と、それら電極の間に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質の隔壁部分とが可燃ガス成分濃度検出素子を構成するようにする。また、第一処理室を挟んで隔壁と反対側に酸素濃度調整用ポンプ素子が配置される。これにより、全ての素子を積層形成できるため、センサを一層コンパクトに構成できる。
【0046】
なお、酸素濃淡電池素子の酸素基準電極は、検出側電極との間にて当該酸素基準電極側に酸素が汲み込まれる方向に微小なポンピング電流が印加され、その汲み込まれた酸素により自身の内部に所定レベルの基準酸素濃度が形成される自己生成型酸素基準電極とすることができる。これにより、酸素基準電極側の酸素濃度レベルを安定化でき、より高精度の酸素濃度測定が可能となる。
【0047】
また、酸素濃淡電池素子と可燃ガス成分濃度検出素子との間で酸素基準電極を共有化させ、かつ該酸素基準電極を自己生成型酸素基準電極として構成する場合には、第二電極と酸素基準電極との間にて、所定の範囲を超えた電流が流れることを阻止する電流制限回路を設けておくことが望ましい。具体的には、電流制限回路は、酸素基準電極から第二電極に向けて所定値を超える電流が流れることを阻止するものとして構成できる。このような電流が過大に流れると酸素基準電極側に多量の酸素が流れ込み、酸素基準電極内部の圧力が大きくなり過ぎて電極の破損を起こす等の不具合につながる場合がある。そこで、上記のような電流制限回路を設けておけば、該不具合を回避することができる。
【0048】
他方、電流制限回路は、第二電極側から酸素基準電極に向けて所定値を超える電流が流れることを阻止するものとして構成することもできる。第二電極から酸素基準電極に向けて電流が流れるということは、両者の間に介在するのが酸素イオン伝導性固体電解質であるから、酸素基準電極から第二電極に向けて酸素が流出するということを意味する。そして、このような電流が過大に流れると酸素基準電極から多量の酸素が流出して、酸素基準電極として必要な酸素濃度が確保できなくなる。その結果、酸素濃淡電池素子の正常な作動ひいては第一処理室内の酸素濃度制御が不可能となり、センサの検出精度低下につながる。そこで、上記のような電流制限回路を設けておけば、このような不具合を回避することができる。
【0049】
この場合、酸素基準電極と、第二電極との少なくともいずれかを、隔壁に対し第二気体流通部と干渉しない位置に形成することが望ましく、双方ともに第二気体流通部と干渉しない位置に形成すればさらによい。第二電極をこのような位置関係で配置することの利点については、前述の通りである。また、酸素基準電極を第二気体流通部と干渉しない位置関係で設けることにより、酸素基準電極内に保持された酸素が第二気体流通部を通って漏洩することが阻止され、酸素基準レベルひいては可燃ガス成分の検出出力をさらに安定化させることができる。
【0050】
また、上記ガスセンサの酸素濃度調整用ポンプ素子を流れる電流値、すなわち酸素ポンプ電流値は、被測定ガス中の酸素濃度に応じて変化するため、該ポンプ電流値は、被測定ガス中の酸素濃度の情報を反映したものとなる。そこで、本発明のガスセンサシステムにおいては、上記ポンプ電流値に反映された被測定ガス中の酸素濃度の情報に基づいて、可燃ガス成分濃度検出素子の検出出力を補正する補正手段を設けることができる。すなわち、本発明のガスセンサシステムにおいて、可燃ガス成分濃度検出素子の検出出力は前述の通り被測定ガス中の酸素濃度を本質的に受けにくい特質を有するが、酸素濃度により検出出力に多少の変動が生ずる場合は、これを上記補正手段により補正することで、可燃ガス成分濃度の検出精度を一層向上させることが可能となる。
【0051】
この場合、上記補正手段は具体的には、可燃ガス成分濃度検出素子の出力電流値と可燃ガス成分濃度との関係を表す出力電流値−可燃ガス成分濃度関係情報を、各種酸素濃度(あるいはポンプ電流値)毎に記憶する出力電流値−可燃ガス成分濃度関係情報記憶手段と、可燃ガス成分濃度検出素子の検出された出力電流値と、上記出力電流値−可燃ガス成分濃度関係情報とに基づいて、補正後の出力電流値(あるいは対応する可燃ガス成分濃度)の値を決定する補正値決定手段とを備えるものとして構成できる。これにより、検出される可燃ガス成分濃度の補正を合理的に行なうことが可能となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示すいくつかの実施例を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのガスセンサ1を示している。すなわち、ガスセンサ1は、それぞれ横長板状に形成された第一ヒータ2、酸素濃度調整用ポンプ素子3、酸素濃淡電池素子(酸素濃度検出素子)4、可燃ガス成分濃度検出素子5、測定用酸素供給ポンプ素子6及び第二ヒータ8がこの順序で積層され一体化されたものとして構成されている。また、酸素濃度調整用ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との間には第一処理室9が、可燃ガス成分濃度検出素子5と測定用酸素供給ポンプ素子6との間には第二処理室10が形成されている。また、酸素濃度調整用ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との間には、スペーサ部25が一体化されており、第一処理室がそのスペーサ部25の空隙25aにより形成されるようになっている。
【0053】
各素子3〜6及びスペーサ部25は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、YないしCaOを固溶させたZrOが代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrOとの固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrOにはHfOが含有されていてもよい。本実施例では、YないしCaOを固溶させたZrO固体電解質セラミックが使用されているものとする。一方、第一及び第二ヒータ2,8は、公知のセラミックヒータで構成されており、各素子3〜6を所定の作動温度(650〜800℃)に加熱する役割を果たす。そして、各素子3〜5及び測定用酸素供給ポンプ素子6の境界部分には、Al等を主体とした絶縁層(図3に示す絶縁層260等:図1では示さず)が介挿されている。このような積層一体化されたセンサの構造は、上記各素子3〜6となるべきセラミックグリーンシート(セラミック成形体)を積層して焼成することにより製造することができる。
【0054】
次に、第一処理室9の両側壁部分には、該第一処理室9と外部の被測定空間とを連通させる第一気体流通部11が形成されている。図1(b)に示すように、第一気体流通部11は、第一処理室9の幅方向両側において酸素濃度調整用ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との間にまたがる形態で形成されるとともに、第一処理室9の側縁に沿って酸素濃度調整用ポンプ素子3ないし酸素濃淡電池素子4の長手方向に延びており、多孔質Al焼成体等により連通気孔を有する多孔質セラミック体として構成されている。これにより、該第一気体流通部11は、外部からの被測定ガスを一定の拡散抵抗のもとに第一処理室9内に導く拡散規制流通部として機能する。
【0055】
次に、酸素濃淡電池素子4と可燃ガス成分濃度検出素子5とは互いに重ね合わされるとともに、第一処理室9と第二処理室10とに挟まれた部分は、酸素イオン伝導性固体電解質で構成された隔壁12となっている。換言すれば、上記2つの処理室9,10は、該隔壁12を挟んで隣接して配置されている。そして、この隔壁12には、第一処理室9と第二処理室10とを連通させる第二気体流通部13が形成されており、その厚さ方向中間部には酸素基準電極14が埋設されている。第二気体流通部13も、第一気体流通部11と同様に多孔質セラミック体として構成されており、第一処理室9内の気体を第二処理室10へ一定の拡散抵抗のもとに導く拡散規制流通部として機能する。なお、上記拡散規制流通部は、多孔質セラミック体(あるいは金属体)で形成する代わりに、小孔やスリットで構成してもよい。
【0056】
隔壁12の第一処理室9に面する表面には電極15(以下、これを第一電極15と称する)が形成されており、酸素濃淡電池素子4の要部は、該第一電極15と、酸素基準電極14と、それら電極15,14の間に挟まれた隔壁部分12aとによって構成されている。一方、隔壁12の第二処理室10に面する表面には電極16(以下、これを第二電極と称する)が形成されており、該第二電極16と、酸素基準電極14と、それら電極16,14の間に挟まれた隔壁部分12bとが可燃ガス成分濃度検出素子5の要部を構成している。なお、電極15,14は、酸素濃淡電池素子4の長手方向において互いにずれた位置関係で形成されている。
【0057】
また、酸素濃度調整用ポンプ素子3にも、その両面に電極19,20(以下、前者を特に第四電極19と称する)がそれぞれ形成されている。他方、測定用酸素供給ポンプ素子6には、酸素濃度調整用ポンプ素子3とほぼ同様に、第二処理室10に面する側とこれと反対側にそれぞれ電極17,18が形成される(以下、前者を特に第三電極17と称する)。
【0058】
上記各電極14〜20はいずれも、各素子3〜6を構成する固体電解質層へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有するものとされている。その材質であるが、第一処理室9に面する2つの電極、すなわち酸素濃度調整用ポンプ素子3の電極19と酸素濃淡電池素子4の第一電極15とは、第二処理室10に面する電極、すなわち可燃ガス成分濃度検出素子5の第二電極16よりも、メタン等の被検出成分の酸化(すなわち燃焼)の触媒活性が小さくなるように選定されている。このような多孔質電極は、例えば上記金属ないし合金の粉末と、下地となる固体電解質セラミックとの密着強度を向上させるために該下地と同材質の固体電解質セラミック粉末を適量配合してペーストを作り、これを用いて下地となるべきセラミックグリーンシート上に電極パターンを印刷形成して、一体焼成することにより形成される。
【0059】
なお、図1に示すように、各素子3〜6の各電極14〜20からは、素子の長手方向に沿ってガスセンサ1の取付基端側に向けて延びる電極リード部14a〜20aがそれぞれ一体に形成されており、該基端側において各素子3〜6には接続端子14b〜20bの一端が埋設されている。そして、図2に示すように、各接続端子(20b)は、金属ペーストの焼結体として素子の厚さ方向に形成された導通部(20c)により、電極リード部(20a)の末端に対して電気的に接続されている(図では、電極リード部20aの場合について代表させて示している)。
【0060】
なお、図1に示すように、酸素基準電極14と可燃ガス成分濃度検出素子5の第二電極16とは、第二気体流通部13と干渉しない位置に形成されている。これにより、可燃ガス成分の検出出力をより安定化させることができる。一方、酸素濃淡電池素子4の第一電極15は、第二気体流通部13と重なりを有する位置に形成され、該第二気体流通部13に対応する位置には、気体の流通を確保するために貫通穴15hが形成されている。
【0061】
次に、図3(b)に示すように、第一処理室9及び第二処理室10の少なくとも一方、例えば本実施例では第二処理室10には、焼成時の処理室空間の潰れを防止する支柱部210が、散点状あるいは千鳥状に形成されている。すなわち、図3(a)に示すように、可燃ガス成分濃度検出素子5となるべきセラミックグリーンシート220と、同じく測定用酸素供給ポンプ素子6となるべきセラミックグリーンシート230との各々の対向面において第二処理室10に予定された領域に、セラミック粉末ペースト(例えば多孔質Al粉末ペースト)を用いて、支柱部210となるべき支柱部パターン266a及び266bを形成する。また、その支柱部パターン266a及び266bと重なりを生じない位置において同じく該第一処理室9に予定された領域に、焼成時に燃焼ないし分解する材質の粉末ペースト(例えばカーボンペースト)により補助支持パターン267a及び267bを形成する。さらに、上記第一処理室9に予定された領域を除く他の領域には、絶縁層パターンとしての貼合わせコート269がAl粉末ペースト等により支柱部パターン210の高さよりも小さい厚さで形成される。
【0062】
これを焼成することにより、図3(b)に示すように、可燃ガス成分濃度検出素子5と測定用酸素供給ポンプ素子6との間においては、補助支持パターン267a及び267bが消失するとともに、上記支柱部パターン266a,266bが焼成により一体化して支柱部210が形成される。また、この支柱部210により大きさが規定された形で第二処理室10が形成される。一方、第二処理室10を除く他の領域においてそれら可燃ガス成分濃度検出素子5と測定用酸素供給ポンプ素子6とは、貼合わせコート269に基づく絶縁層260を介して互いに接合される。
【0063】
ここで、図4に示すように、支柱部パターン266a,266bと、補助支持パターン267a,267bとは平面をほぼ埋め尽くすように相補的に形成され、例えば図3(a)のグリーンシート220及び230を互いに積層した際に、補助支持パターン267a,267bによる補強効果に基づき、支柱部パターン266a,266bが両者の間で潰れることが防止ないし抑制される。また、図3(a)に誇張して示すように、貼合わせコート269が266a,266bの合計厚さよりもかなり薄く形成されていたとしても、グリーンシート220及び230は柔軟であり、グリーンシート220及び230が少し橈むことで、両者は貼合わせコート269を介して密着でき、焼成により支障なく一体化することができる。
【0064】
次に、図1に示すようにセンサ1の全体が、そのスペーサ部25と酸素濃淡電池素子4との間で二分され、図5に示すように、酸素濃度調整用ポンプ素子3が含まれる側がポンプセルユニット111、酸素濃淡電池素子4(酸素濃度検知素子)及び第二処理室10、可燃ガス成分濃度検出素子5及び測定用酸素供給ポンプ素子6の含まれる側がセンサセルユニット112となっている。これらポンプセルユニット111とセンサセルユニット112とは第四電極19と第一電極15とが対向するように互いに積層されるとともに、その積層面においてガラス等の接合材により接合・一体化される。また、ポンプセルユニット111の積層面には、その幅方向両側においてその縁に沿う形でリブ状の嵌合凸部111a,111a(ポンプセル側嵌合部)が形成され、これがセンサセルユニット112側の対応する位置に形成された嵌合凹部112a,112a(センサセル側嵌合部)と嵌合し、積層の位置決めがなされている。
【0065】
次に、第四電極19は、図6(a)に示すように、構成金属がPt又はPt−Au合金(本実施例では、その略全体がPtからなるものとする)である多孔質金属体からなる主電極層151と、電極表層部を構成し、構成金属がAuを主体とするAu系金属(本実施例では、実質的にその全体がAuからなるものとする)である多孔質金属体からなる表面電極層152とからなる二層構造を有するものとなっている。他方、図1において第一電極15は、第四電極19以外の他の電極とともに、構成金属がPt又はAu含有量1重量%以下のPt−Au合金(本実施例では、その略全体がPtからなるものとする)である多孔質金属として構成されている。
【0066】
酸素分子に対する解離能が高いPtからなる多孔質の主電極層151の表面を、可燃ガス成分に対する燃焼の触媒活性が低いAuからなる多孔質の表面電極層152にて覆うことにより、第一処理室内において、酸素分子解離は良好に維持しつつ可燃ガス成分への燃焼触媒活性を小さくできるので、HC等の可燃ガス成分からなる被検出成分のロスを少なくでき、センサ感度を向上させることができる。なお、主電極層151の構成金属の実質的にほぼ全体がPtからなり、同じく表面電極層152の構成金属の実質的にほぼ全体がAuからなる場合、第四電極19全体におけるPtの重量含有量をWPt、同じくAuの重量含有量をWAuとして、{WAu/(WPt+WAu)}×100の値が2〜20重量%、好ましくは3〜10重量%となっているのがよい。該値が2重量%未満では、第四電極19の燃焼触媒活性を十分に小さくできなくなり、センサの感度低下につながる場合がある。他方、該値が20重量%を超えると、第四電極19の酸素分子の解離・再結合反応に対する触媒能が小さくなり過ぎ、酸素濃度調整用ポンプ素子3の機能が不十分となる場合がある。
【0067】
主電極層151上に表面電極層152を形成する方法としては、例えば図6(b)に示すように、表面電極層152の材料粒子を含んだペーストを、焼成済の主電極層151上に塗付して、その主電極層151の焼成温度よりも低温で焼成する方法により形成することができる。他方、同図(c)に示すように、真空蒸着やスパッタリング等の気相製膜法により表面電極層152を形成することができる。なお、上記図6(b)ないし(c)に示すように、多孔質に形成された主電極層151には、多数の空隙Pが入り組んで形成されているため、表面電極層152がそのような空隙Pの内面奥深くにまで必ずしも形成されない場合もありうる。これにより、主電極層151には表面電極層152で覆われない露出部が形成されることとなるが、この露出部は酸素分子に対する解離・再結合反応に対しては強い触媒活性を示すので、酸素濃度調整用ポンプ素子の機能確保上はむしろ望ましいことともいえる。
【0068】
以下、図1及び図5に示すポンプセルユニット111とセンサセルユニット112との製造方法の一例を、図7及び図8を参照して説明する。まず、図7は、ポンプセルユニット111を製造するための第一未焼成組立体211の積層構造を示している。第一未焼成組立体211は、酸素濃度調整用ポンプ素子3の本体となるべきZrOグリーンシート(以下、単にグリーンシートともいう)220を主体とする第一部分211aと、スペーサ部25となるべきグリーンシート231を主体とする第二部分211bとを含んでいる。グリーンシートは、ZrO粉末を有機バインダ等の成形助剤及び有機溶媒とともに混練した生素地をシート状に加工して作られるものである。
【0069】
第一部分211aにおいては、グリーンシート220の両面の、電極20,19(図1)の形成が予定された部分を除く領域に、リード部20a,19aと酸素濃度調整用ポンプ素子3との間を絶縁するための絶縁コート(絶縁層パターン)221及び222がAlペースト等を用いて形成される。それら絶縁コート221及び222を形成した後、電極20,19(ただし、後者は主電極層151(図5)のみ)及びリード部20a,19aを形成するための電極パターン223及び224aがPtペースト等により印刷形成される。また外側電極20となる側の電極パターン223の上には保護用のオーバーコート225がAlペースト等により形成される。
【0070】
他方、第二部分211bにおいては、グリーンシート231の両面に絶縁コート230,232が同様に形成され、そのグリーンシート231への積層側の面には、第一の気体流通部11を形成するためのパターン229が多孔質Al粉末ペーストにより形成されている。また、グリーンシート231の反対側の面には、嵌合凸部111a,111aを形成するためのグリーンシート234が、貼合わせコート233(アルミナペーストからなる)を用いて接合されている。
【0071】
上記第一部分211aと第二部分211bとは、各電極20,19の端子部となるべきPt−Rh合金線227a,227bの端部を挟み込んだ形で、貼合わせコート228により積層・一体化される。そして、上記第一未焼成組立体211を焼成することにより、第四電極19の表面電極層152(図6)が未形成の状態のポンプセルユニットが得られる。そして、図7に示すように、Au粉末ペーストを用いてパターン224bを、焼成済の主電極層の対応する位置にペースト印刷し、さらにセラミックスの焼成温度より低い温度(例えば850〜1000℃)で焼き付けて二次メタライズ処理することにより、多層構造の第四電極19が形成されてポンプセルユニット111が完成する。
【0072】
次に、図8は、センサセルユニット112を製造するための第二未焼成組立体212の積層構造を示している。第二未焼成組立体212は、酸素濃淡電池素子4の要部となるグリーンシート238及び可燃ガス成分濃度検出素子5の要部となるグリーンシート244とを主体とする第一部分212aと、測定用酸素供給ポンプ素子6となるべきグリーンシート253を主体とする第二部分212bとを含んでいる。
【0073】
第一部分212aにおいては、グリーンシート238の両面の、電極15,14(図1)の形成が予定された部分を除く領域に、リード部15a,14aと酸素濃淡電池素子4との間を絶縁するための絶縁コート237,239が形成される。それら絶縁コート237,239を形成した後、電極15,14及びリード部15a,14aを形成するための電極パターン236及び240がPtペースト等により印刷形成される。またグリーンシート244の両面には絶縁コート243,245が施され、グリーンシート238の積層側と反対の面に電極16及びリード部16aを形成するための電極パターン246が形成される。そして、グリーンシート238の積層側の面は貼合わせコート241によりグリーンシート238側に接合される。なお、グリーンシート238及び244には、第二の気体流通部13を形成するための貫通孔238a及び244aが孔設されており、ここにパターン242の印刷により多孔質Al粉末ペーストが充填されている。また、グリーンシート238の幅方向両縁部は、嵌合凹部112a(図5)を形成するために切り欠かれている。
【0074】
他方、第二部分212bにおいては、グリーンシート253の両面に絶縁コート252,254が形成され、そのグリーンシート253への積層側の面には、第三電極17(図1)を形成するためのパターン251がPtペースト等により印刷形成される。そして、そのさらに上側には、第二処理室10を形成するために、図4等に示したものと同様に、支柱部となるべき支柱部パターン250と補助支持パターン249とが形成されている。他方、グリーンシート253の反対側の面には電極18を形成するためのパターン255がPtペースト等により印刷形成され、さらにアルミナペーストによるオーバーコート256が施される。
【0075】
上記第一部分212aと第二部分212bとは、各電極14〜20の端子部となるべきPt−Rh合金線247a,247b,247cの端部を挟み込んだ形で、貼合わせコート248により積層・一体化される。そして、上記第二未焼成組立体212を焼成することにより、図5のセンサセルユニット112が得られる。
【0076】
以下、上記ガスセンサ1を使用したガスセンサシステムの構成例について説明する。
図9は、ガスセンサ1を用いたガスセンサシステム(以下、単にセンサシステムという)の一例の電気的構成を示すブロック図である。すなわち、該センサシステム50は、上記ガスセンサ1と、マイクロプロセッサ52と、ガスセンサ1とマイクロプロセッサ52とを接続する周辺回路51とから構成されている。マイクロプロセッサ52は、出力変換部の要部を構成するものであり、出入力インターフェースとしてのI/Oポート56と、これに接続されたCPU53、RAM54、ROM55等により構成されている。RAM54には、CPU53のワークエリア54aと、被検出成分の濃度算出値の格納エリア54bとが形成されている。また、ROM55には、センサシステム50の被検出成分の出力値決定の演算とその出力制御を司る制御プログラム55aと、該制御プログラム55aが使用するHC濃度変換テーブル55bとが格納されている。なお、CPU53は、ROM55に格納された制御プログラム55aにより、濃度決定手段の主体をなす。
【0077】
上記ガスセンサシステム50におけるガスセンサ1の作動の概略は以下の通りである。すなわち、ガスセンサ1は図1に示す第一ヒータ2及び第二ヒータ8(いずれか一方を省略してもよい)により、所定の作動温度、すなわち各素子3〜6を構成するZrO固体電解質が活性化する温度まで加熱され、その状態で気体流通部11を通って第一処理室9に被測定ガスとしての排気ガスが導入される。この導入された排気ガス中の酸素濃度は酸素濃淡電池素子4により検出され、酸素濃度調整用ポンプ素子3はその酸素濃度が10−12〜10−6atm(望ましくは10−11〜10−9atm)の範囲で設定された所定の目標値に近づくように、より具体的には排気ガスに含まれる水蒸気の分解反応が実質的に起こらない酸素濃度目標値に近づくように、第一処理室9内の気体から酸素を汲み出すあるいは汲み込む作動をする。なお、排気ガス中の酸素濃度は、一般には上記酸素濃度目標値よりも大きいのが通常であり、この場合には酸素濃度調整用ポンプ素子3は第一処理室9内の酸素濃度を減少させる方向に作動することとなる。
【0078】
こうして、酸素濃度が一定レベルまで減少させられた気体は第二気体流通部13を通って第二処理室10内に流入する。ここで、HC等の可燃ガス成分に対する酸化触媒活性が第一電極15よりも第二電極16の方が大きく設定されているので、第二処理室10内に流入した気体中の可燃ガス成分は、第二電極16を酸化触媒部として燃焼し、酸素を消費する。第二処理室10内の酸素濃度はこの燃焼による消費量、すなわち可燃ガス成分の濃度に応じて変化する。
【0079】
他方、測定用酸素供給ポンプ素子6は、第三電極17側が正となるように定電流電源80により電極17,18間に定電流が通電される。これにより、被測定ガス中の可燃ガス成分の測定に用いる一定量の測定用酸素を第二処理室10に汲み込む。本実施例では、定電流電源80は、定電圧電源81に対し、センサ作動温度における酸素濃度検出素子4の内部抵抗値よりも十分大きい抵抗値(例えば該内部抵抗値の500〜5000倍程度)を有する抵抗器82が接続された構成のものが採用されているが、他の構成の電源を採用してもよい。なお、定電流電源80の通電電流値は、可燃ガス成分濃度検出素子5を流れる電流の向きを常時酸素が汲み出される向きのものとするために、第二処理室10に酸素が幾分余剰気味に供給されるよう適宜設定される。
【0080】
次に、可燃ガス成分濃度検出素子5には、図9の直流定電圧電源71により、電極14,16を介して一定の電圧VCが印加されるようになっている。この電圧VCの印加の極性は、第二電極16が負となる極性、すなわち第二処理室10から酸素を汲み出す極性にて設定される。また、VCの電圧レベルは、気体中の可燃ガス成分の含有量が略ゼロの時に素子5を流れる電流値が略ゼロとなり、かつ第二処理室10内の酸素分圧が、排気ガス中の窒素酸化物(NO)の分解が生じるレベルまでは低下しない範囲で設定される。
【0081】
そして、可燃ガス成分濃度検出素子5の出力電流値は、第二処理室10内に導入された気体中の、可燃ガス成分の燃焼により消費される酸素量に応じて変化し、当該出力電流の値から排気ガス中の可燃ガス成分の濃度を知ることができる。第二処理室10にて燃焼消費される酸素の量が増えるほど、電圧VCとは逆極性となる可燃ガス成分濃度検出素子5の濃淡電池起電力が増大する。そのため、電圧VCの印加方向を正とすれば、可燃ガス成分濃度が増加するほど、素子5の出力電流値は減少することとなる。
【0082】
以下、センサシステム50の回路構成と作動について、図9によりさらに詳細に説明する。ガスセンサ1は、酸素濃度調整用ポンプ素子3の第一処理室9側の電極19と、酸素濃淡電池素子4の第一電極15とが接地される。また、酸素基準電極14は、差動増幅器57の一方の入力端子に接続される。また、可燃ガス成分濃度検出素子5には、前述の通り電極14,16を介してこれに電圧VCを印加するための直流定電圧電源71が接続されるようになっている。これにより、差動増幅器57の上記一方の端子には、酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力Eに上記電圧VCが重畳されて入力されるようになっている。
【0083】
一方、差動増幅器57の他方の入力端子には酸素濃度設定目標値に対応する起電力目標値ECを与えるための電源回路58(ただし、実際の設定電圧はEC+VCとなる)が接続されている。そして、差動増幅器57は濃淡電池起電力Eと起電力目標値ECとの差を増幅して、これを酸素濃度調整用ポンプ素子3の電極20側に入力する。酸素濃度調整用ポンプ素子3は、差動増幅器57からの出力を受けて、酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力E(すなわち第一処理室9内の酸素濃度)が、前述の酸素濃度目標値に対応する起電力目標値ECに近づく方向に、第一処理室9に対し酸素を汲み出す又は汲み込むように作動する。すなわち、増幅器57は酸素ポンプ作動制御手段を構成する。なお、電源回路58は、固定電圧出力により起電力目標値ECを固定的に設定するものとしてもよいが、この設定値を可変に構成してもよい。
【0084】
なお、酸素濃淡電池素子4と可燃ガス成分濃度検出素子5とは共通の酸素基準電極14を有しているが、この酸素基準電極14と第一電極15(あるいは第二電極16)との間には、定電流電源72により、酸素基準電極側14側へ酸素が汲み込まれる方向の微小直流電流が常時印加されている(すなわち、いわゆる自己生成型基準電極となっている)。これにより、酸素基準電極14内の空隙は常時酸素100%に近い基準ガスで満たされた状態となるので、酸素濃淡電池素子4及び可燃ガス成分濃度検出素子5の濃淡電池起電力が高められ、ひいてはガスセンサ1の測定精度及び感度の向上が図られている。
【0085】
上記定電流電源72による印加電圧のレベルは、酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力Eの出力レベルよりも十分小さく、かつ酸素基準電極14内の酸素濃度を100%に十分近付けられる程度の大きさに設定される。
【0086】
可燃ガス成分濃度検出素子5の出力電流は、例えば電流検出用の抵抗器70の両端電圧の差として検出される。本実施例では、該出力電流信号は、差動増幅器60(オペアンプ60aと周辺の抵抗器60b〜60eとから構成される)により電圧変換した形で取り出された後、さらにA/D変換器75でデジタル変換されてマイクロプロセッサ52に入力されるようになっている。
【0087】
次に、マイクロプロセッサ52のROM55には、前述の通り制御プログラム55aと濃度変換テーブル55bとが格納されている。図10は、濃度変換テーブル55bの内容の一例を示すものであり、可燃ガス成分濃度(例えばHC濃度)の各値C1、C2、C3、‥‥に対応する可燃ガス成分濃度検出素子5の検出電流値Id1、Id2、Id3、‥‥の値を記憶している。これらの値は、実験等により予め定められたものである。そして、図9に示すCPU53は、制御プログラム55aによりRAM54をワークエリアとして、図11のフローチャートに示すようなセンサ出力制御を実行する。
【0088】
すなわち、図示しないタイマーにより測定タイミングを計測し、S1において該タイミングが到来したら、S2で可燃ガス成分濃度検出素子5からの検出電流値Idのサンプリングを行う。そして、S3でそのサンプリングされた値に対応する可燃ガス成分濃度の値を、図10の濃度変換テーブル55bを参照して補間法により算出し、S4でその算出した値をRAM54の算出値格納エリア54bに格納する。なお、該エリア54bに書き込まれていた値は上書き消去する。そして、S5において、そのエリア54bに書き込まれた算出値を、排気ガス中の可燃ガス成分濃度の情報としてI/Oポート56より出力する。なお、この出力はそのままデジタル出力してもよいし、I/Oポート56に接続されたD/A変換器62でアナログ変換して出力してもよい。
【0089】
上記ガスセンサシステム50の構成及び作動によれば、第一処理室9において酸素濃度調整用ポンプ素子3の作動により、排気ガス中の酸素濃度が所定レベル、具体的には10−12〜10−6atmの範囲内にある所定値に調整され、これが第二処理室10に導かれて可燃ガス成分が燃焼する。そして、その燃焼により消費される酸素量に応じて可燃ガス成分濃度検出素子5の検出電流値Idが変化し、当該出力を排気ガス中の可燃ガス成分の濃度検出情報として取り出すようにしている。ここで、酸素濃度調整用ポンプ素子3の作動により達成される第一処理室9内の上記酸素濃度到達レベルは、排気ガスに含有される水蒸気の分解反応が実質的に起こらないか、起こってもごく僅かな程度のものであるため、水蒸気の分解により発生した水素の燃焼による可燃ガス成分の検出精度低下が、極めて効果的に防止されることとなる。
【0090】
以下、上記本発明のガスセンサ1あるいはガスセンサシステム50の適用例について説明する。まず、図12はガソリンエンジンの排気ガス浄化システムを模式的に示しており、排気管に対しエンジンに近い側から、エンジンの空燃比制御のための酸素センサ、排気ガス中のHCの酸化とNOの還元とを同時に行ってこれを浄化する三元触媒コンバータ、及び浄化後の排気ガス中の酸素濃度を測定するための酸素センサとしての機能(後述)を有する本発明のガスセンサ1がこの順序で取り付けられている。そして、本発明のガスセンサ1は、例えば触媒の劣化判別のために浄化後の排気ガス中のHC濃度を測定するものとされている。
【0091】
一方、図13は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の排気ガス浄化システムを模式的に示しており、排気管に対しエンジンに近い側から、HC源としての軽油を排気ガス中に噴射するための軽油噴射弁と、NO浄化触媒とがこの順序で配置されており、該NO浄化触媒は軽油噴射により添加されたHCを還元剤としてNOを窒素と酸素とに分解することによりこれを浄化する働きをなす。そして、本発明のガスセンサ1は上記NO浄化触媒の上流側に配置され、排気ガス中に噴射すべき軽油の量をフィードバック制御するために、軽油噴射後の排気ガス中のHC濃度をモニタする役割を果たすこととなる。
【0092】
なお、上記ガスセンサ1の酸素濃淡電池素子4及び可燃ガス成分濃度検出素子5はZrO固体電解質で構成されている。ここで、ZrO固体電解質を用いた酸素濃淡電池素子において、一方の電極が酸素と可燃ガス成分が混在した被測定ガスに接するようにしておき、他方の電極が一定酸素濃度の基準雰囲気に接するように配置した場合、その濃淡電池起電力は、酸素と可燃ガス成分とが過不足なく反応する存在比率で混在している組成(ストイキ組成)付近を境にして急激に変化する性質を有している。一方、一般のガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンをリーンバーン条件で運転したときに、発生する排気ガス中の可燃ガス成分の総濃度はおおむね0〜1000ppmC程度の範囲のものとなる。そして、この可燃ガス成分濃度において、第一処理室9で調整される排気ガスの酸素濃度を前述の10−6atm(望ましくは10−9atm)以下の範囲に調整することで、第二処理室10に導入されるガスは概ねストイキ組成か若干リッチ側の組成となるので、可燃ガス成分濃度検出素子5の濃淡電池起電力出力が高められ、ひいてはガスセンサ1の感度も良好なものとなる。
【0093】
上記ガスセンサシステム50においては、第一処理室9内で酸素濃度を一定レベルまで減じてから第二処理室10内で可燃ガス成分濃度の検出を行なうようにしているから、可燃ガス成分濃度検出素子5の検出出力は排気ガス中の酸素濃度の影響を本質的に受けにくい特質を有している。しかしながら、酸素濃度により検出出力に多少の変動が生じる場合は、排気ガス中の酸素濃度に応じて可燃ガス成分濃度検出素子5の検出出力を補正するようにすれば、可燃ガス成分濃度の検出精度を一層向上させることができる。
【0094】
この場合、排気ガス中の酸素濃度は、別途設けられた酸素センサを用いて測定してもよいが、上記ガスセンサ1の酸素濃度調整用ポンプ素子3を流れる電流値、すなわち酸素ポンプ電流値IPは、排気ガス中の酸素濃度に応じてほぼ直線的に変化するため、該ポンプ電流値IPにより排気ガス中の酸素濃度の情報を得るようにすれば、新たな酸素センサを設けなくて済む利点がある。
【0095】
具体例としては例えば以下のような構成が可能である。すなわち、図9に示すように、差動増幅器57の出力路上に電流検出用の抵抗器73を設け、その抵抗器73の両端電圧の形でポンプ電流値IPを差動増幅器59(オペアンプ59aと周辺の抵抗器59b〜59eとから構成される)により検出し、これをA/D変換器74を介してマイクロプロセッサ52に入力する。そして、ROM55の濃度変換テーブル55bは、図14に示すように、可燃ガス成分濃度検出素子5の検出電流の各種値Id1、Id2、Id3、‥‥に対応する可燃ガス成分濃度(例えばHC濃度)の値の組を、各種ポンプ電流値IP(すなわち酸素濃度)の値毎に記憶した二次元テーブルとしておく。そして、測定されたポンプ電流値IPと検出電流値Idの値の組に対応する可燃ガス成分濃度の値を、上記濃度変換テーブル55bを参照して二次元補間法により算出し、これを補正された濃度検出値として出力する。この場合、濃度変換テーブル55bの内容が出力電流値−可燃ガス成分濃度関係情報を構成し、ROM55はその記憶手段となる。また、マイクロプロセッサ52のCPU53は、補正手段として機能する。
【0096】
なお、図9において、可燃ガス成分濃度検出素子5の出力電流(すなわち、第二電極16と酸素基準電極14との間に流れる電流)の極性は、本来ならば第二処理室10から酸素を汲み出す向きのもの、すなわち基準電極14から第二電極16へ向かうものとなるべきである。しかしながら、第二処理室10に流れ込む気体中の可燃ガス成分濃度が極端に高くなると、第二処理室10内での酸素の燃焼消費が進み過ぎ、可燃ガス成分濃度検出素子5に生ずる濃淡電池起電力との兼ね合いで電流が逆流してしまうことがある。
【0097】
図15を用いてこのことを説明する。すなわち、第二処理室10側の酸素濃度は酸素基準電極14内の酸素濃度よりも必ず低いから、電源71の電圧の絶対値をVC、可燃ガス成分濃度検出素子5の酸素濃淡電池起電力の絶対値をEaとすれば、IdはVC−Eaに依存して変化する。ここで、VCとEaとが等しければIdはほぼゼロとなるが、第二処理室10に流れ込む気体中の可燃ガス成分濃度が高くなって燃焼消費される酸素の量が大きくなると酸素濃淡電池起電力Eaが大きくなり、Idは酸素基準電極14に向かう方向(すなわち、酸素が第二電極16に向かう方向:以下、これをIdの極性が負であると定義する)に流れる。他方、可燃ガス成分濃度が低くなると、酸素濃淡電池起電力Eaが小さくなり、Idは第二電極16に向かう方向(すなわち、酸素が酸素基準電極14に向かう方向:以下、これをIdの極性が正であると定義する)に流れる。
【0098】
この場合、自己生成型基準電極として構成されている酸素基準電極14は、酸素濃淡電池素子4と可燃ガス成分濃度検出素子5との間で共有されているので、Idが負の方向に大きくなり過ぎた場合(すなわち、負のある限界値を−Idn(Idn>0)として、Id<−Idnとなった場合)は、多量の酸素が第二電極16側に流出し、酸素基準電極として必要な酸素濃度が確保できなくなる。その結果、酸素濃淡電池素子4の正常な作動ひいては第一処理室9内の酸素濃度制御が不可能となり、センサ1の検出精度低下につながる。
【0099】
他方、内燃機関からの排気ガス中の炭化水素濃度等を検出する場合、フューエル・カット(燃料遮断:例えば、スロットルバルブ全閉状態の減速時等において、触媒の過熱防止や燃料節約の目的で行われる)等により、測定対象となる排気ガス中の酸素濃度が極端に高くなることがある。この場合は、Idは逆に正の方向に過度に大きくなり(すなわち、正のある限界値をIdp(Idp>0)として、Id>Idpとなる)、多量の酸素が酸素基準電極14側に流れ込み、酸素基準電極14の内部圧力が大きくなり過ぎて電極の破損を起こす等の不具合につながる場合がある。
【0100】
このような不具合を避けるためには、可燃ガス成分濃度検出素子5に対する直流定電圧電源71による通電経路上に、Idが、−Idn<Id<Idpの範囲を外れて流れることを阻止する電流制限回路を設けておくことが有効である。図15には、その回路例を示している(図9の回路と共通の部分については同一の符号を付与して詳細な説明は省略する)。この回路例では、直流定電圧電源71による定電圧VCがボルテージフォロワ125を介して酸素基準電極14側が正となるように印加され、第二電極16からの電流出力経路上に電流制限回路120が設けられる形となっている。また、定電流電源72は、センサ作動温度における酸素濃淡電池素子4の内部抵抗値よりも十分大きい抵抗値(例えば該内部抵抗値の1000〜5000倍程度)を有する抵抗器72aを介して、該酸酸素濃淡電池素子に対し電源電圧AVccを印加するようになっている。これにより、酸素濃度検出素子4には第一処理室9側から該酸素基準電極14側に酸素が汲み込まれる方向に、略一定の微小電流I0が印加される。
【0101】
電流制限回路120においては、第二電極16側からの電流Idが、抵抗器127a及び127bとともに電流−電圧変換回路を構成するオペアンプ127(以下、電流−電圧変換回路127と称する)にて対応する出力電圧Vdに変換され、電圧制御点PCに供給される。該電圧制御点PCにはツェナーダイオード129,131が接続され、各々電圧Vk及び−Vk(ただし、Vk>0)が印加される。なお、各ツェナーダイオード129,131は、前記した電流限界値Idn及びIdpにそれぞれ対応するツェナー電圧(Vk+Vdn)及び(Vk+Vdp)を有するものが選ばれている。なお、Vk及び−Vkは、車載バッテリーを入力電圧VBとして、例えばDC−DCコンバータ135により電圧調整する形で作られる。
【0102】
そして、制御点PCの電圧がVdpを超えようとした場合(すなわち、電流IdがIdpを超えようとした場合)はツェナーダイオード131が導通し、逆に−Vdnを下回ろうとした場合は、ツェナーダイオード129が導通する。これにより、電流値Idは、−Idn<Id<Idpの範囲に維持されることとなる。
【0103】
なお、Id<−Idnとなることを防止するのみでよい場合には、双方向の電流制限回路120は単方向の電流制限回路にて置き換えることが可能である。また、Id<0となること(すなわち、酸素が酸素基準電極14から第二電極16側に漏れ出すこと)を阻止するのみで十分な場合には、図16に示すように、電流制限回路120を該向きの電流を遮断するダイオード121にて置き換えることが可能である。
【0104】
また、酸素基準電極14側の基準電位レベル(あるいはその空隙に保持されるガス中の酸素濃度レベル)を、測定上の支障を来たさない範囲に維持できるようであれば、VCの印加極性は上記と逆、すなわち、酸素基準電極14側から第二処理室10側へ酸素が汲み込まれる方向に設定してもよい。また、酸素基準電極14は隔壁12に埋設された自己生成型の電極となっているが、例えば図17に示すように、大気連通部を介して基準ガスとしての大気が導入される基準室ORを隔壁12に設け、この基準室ORの内面に、酸素濃淡電池素子3側の酸素基準電極14sと可燃ガス成分濃度検出素子5側の酸素基準電極14pとを併設する形としてもよい。他方、図18に示すように、酸素濃淡電池素子3及び可燃ガス成分濃度検出素子5のそれぞれに対応して、自己生成型として構成された個別の酸素基準電極14s,14pを、例えばアルミナ等を主体とする絶縁層IRに隔てられた形で、隔壁12に埋設するようにしてもよい。これらの場合、VCの印加極性は第二処理室10側から酸素基準電極14側へ酸素が汲み出される方向に設定しても、酸素基準電極14側から第二処理室10側へ酸素が汲み込まれる方向に設定しても、いずれでもよい。
【0105】
【実施例】
(実験例1)
図1に示すガスセンサ1において、Yを5重量%含有するZrO固体電解質で各素子3〜6を構成した。各多孔質電極14〜20のうち、第四電極19を除く他の電極をPt−1重量%Au合金により構成した。また、第四電極19は、Pt−1重量%Au合金により主電極層151(図6)をポンプセルユニット111との一体焼成により形成する一方、その主電極層151の上にAuペーストを塗布して二次焼成(二次焼成温度900℃)することにより表面電極層152を形成して得られる二層構造電極とした。第一処理室9及び第二処理室10は、それぞれ高さ0.02mm、幅22mm、長さ7mmとした。また、第四電極19の膜厚方向の断面をとり、その断面上にて電子線プローブ微小分析(EPMA:ただしエネルギー分散方式)による組成分析を行ったところ、第四電極19の主電極部におけるAuの含有量(WAu)が4.1重量%、同じくPtの含有量が95.9重量%であり、表層にはAuリッチ層が確認された。
【0106】
他方、試験ガスとして、酸素1%又は7%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、及び可燃性ガス成分としての以下のいずれかのHC成分を各種範囲で含有し、残部窒素からなるものを用意した。
*HC成分の含有レンジ
CH(メタン):0〜400ppmC
(エタン):0〜600ppmC
(プロパン):0〜2000ppmC
i−C10(イソブタン):0〜1200ppmC
(ppmCは、炭素当量により表示した百万分率濃度である)
そして、上記センサ1を図9のガスセンサシステム50に組み込み、試験ガス中に該センサ1を保持して各素子3〜6が750℃となるようにヒータ2,8により加熱した。なお、ガス温度は300℃であり、流量は15リットル/分とした。また、本実施例を通じて試験ガスの分析は、HC量を水素炎イオン化分析計(Flame Ionized Detector)により、酸素量を磁気流量分析装置(Magnetic Pneumatic Analyzer)により、炭酸ガス量(あるいは後述の実験では一酸化炭素量)を非分散型赤外吸光分析装置(Nondispersive Infrared Absorption)、一酸化窒素量を化学発光分析装置(Chemical Luminescence Detector)により、それぞれ行っている。
【0107】
この状態で、ガスセンサ1を酸素濃淡電池素子4の起電力目標値ECを、第一処理室9内の酸素濃度設定目標値PXが10−11atmとなる値(約550mV)に設定してセンサシステム50を作動させるとともに、可燃ガス成分濃度検出素子5の出力電流Idがメタン濃度によりどのように変化するかを調べた。ただし、定電圧直流電源58(図9)による可燃ガス成分濃度検出素子5への電圧VCの印加レベルは350mVとし、定電流電源80による測定用酸素供給ポンプ素子6への通電電流レベルは15μAとした。該結果を図19に示す。すなわち、本発明のガスセンサ1の出力電流Idは、いずれのHC成分についても濃度により略直線的に変化しており、良好な検出能を有していることがわかる。とりわけ、メタンに対する感度は良好である。また、図20は、酸素濃度を7%とした場合の結果であるが、同様に良好な検出能を有しており、かつ酸素濃度の影響もあまり受けていないことがわかる。
【0108】
なお、図30は、二次焼成後において未使用状態の第四電極に対しSEMに付属するEPMAにより調べた、Pt((a))、Au((b))及びZr((c))の各元素に対する断面の特性X線像(倍率:約1000倍)である。図中、明るい部分ほど、特性X線の強度(すなわち元素濃度)が高いことを示している。(a)と(c)とを比較することにより、ZrOを主体とする固体電解質層の上にPt多孔質からなる主電極層が厚さ約20μm程度にて形成されていることがわかる。また、多孔質電極と固体電解質層との間の熱膨張率の差を小さくして電極の密着強度を向上させるために、ZrO粉末を配合したPtペーストを電極原料として使用したので、主電極層中にもZrの特性X線の分布領域が観察される。また、(a)と(b)とを比較することにより、主電極層の最表層部には、Auを主体とする表面電極層が形成されていることがわかる。他方、主電極層に対応する領域にはAuの特性X線が薄く分散しているが、これは、二次焼成時に表面電極層側から主電極層側にAuが拡散したためであると考えられる。
【0109】
次に、図31は、センサを大気中にて780℃にて500時間エージングを施した後の、Pt((a))、Au((b))及びZr((c))の各元素に対する、第四電極の断面の特性X線像(倍率:約1000倍)である。これによれば、図23と比較して、Au濃度の高い表面電極層の領域が広がるとともに、該領域内のPtの濃度が高くなっていることがわかる。Au−Pt系平衡状態図によると、780℃におけるAu側のPtの固溶限界が約20重量%と高い一方、Pt側のAuの固溶限界は約5重量%と低い。そして、主電極層中の、表面電極層との界面付近のAu濃度は、二次焼成により、Pt中における飽和濃度に比較的近い値まで上昇している可能性が高いと思われることから、上記のようなエージングを施すと、表面電極層側のAuの主電極層側への拡散は比較的鈍く、他方、主電極層側から表面電極層側へのPt成分の拡散は比較的進みやくなると考えられる。
【0110】
その結果、Pt成分の表面電極層側へ拡散が優先的に進行して、表面電極層の領域が広がったものと推測される。なお、このエージングにより表面電極層中のPt濃度は上記Auに対する固溶限界程度(例えば780℃で20重量%)までは増大するが、この程度の濃度までであれば、表面電極層による電極の燃焼触媒活性抑制の効果は十分に確保することができる。また、センサ使用時における表面電極層中のPt濃度の経時変化が小さければ、センサ特性(例えば酸素濃淡電池素子のオフセット起電力)の経時的安定性を向上させる上で都合がよいこともある。このような場合は、センサを出荷する前に上記のようなエージングを積極的に施して、表面電極層側へのPtの拡散を十分進行させておくことが望ましいといえる。
【0111】
なお、以下のような参考実験を行っている。すなわち、電極15及び16をPt−1重量%Au合金の多孔質電極とし、他をPt多孔質電極とした同様のセンサ(実施例センサB)を作製した。これと、第四電極を二層構造とした前述のセンサ(実施例センサA)とのそれぞれについて、酸素7%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、一酸化窒素500ppm、及び可燃性ガス成分としてのメタンを200ppmC含有し、残部窒素からなる試験ガスを用いた以外は同一の条件にてセンサを作動させたときのセンサ出力を調べた。これによると、実施例センサBの出力電流Idの値は1μA程度であったのに対し、実験例センサAの出力電流Idの値は4μAとなり、より良好な感度が得られることがわかった。その理由として、第四電極19を上記二層構造とすることによりメタンに対する燃焼触媒活性が和らげられ、メタンの第一処理室9内における燃焼損失が少なくなったことが考えられる。
【0112】
(実験例2)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気0〜15%、炭酸ガス10%、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図21に示す。すなわち、いずれの水蒸気濃度においても出力電流Idは概ね安定しており、特に水蒸気濃度が3〜15%の範囲ではメタンの存在の有無によらず出力電流の変化はほとんど見られない。本発明のガスセンサ1は、検出中に水蒸気の分解をほとんど起こさないため、水蒸気濃度によらず、メタンに対して常に安定した濃度検出出力が得られるものと考えられる。
【0113】
(実験例3)
実験例1と同じセンサシステム50を用い、試験ガス中のメタンを0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気3〜15%、炭酸ガス10%、残部窒素とした試験ガス中にガスセンサ1を配置して、各素子3〜6が650℃になるようにヒータ2,8により加熱した。そして、酸素濃淡電池素子4の起電力目標値ECを、第一処理室9内の酸素濃度設定目標値PXが10−15〜10−5atmとなる各種値に設定してセンサシステム50を作動させ、可燃ガス成分濃度検出素子5の出力電流Idを測定した。なお、定電圧直流電源58(図9)による可燃ガス成分濃度検出素子5への電圧VCの印加レベルは350mVとし、定電流電源80による測定用酸素供給ポンプ素子6への通電電流レベルは15μAとした。
【0114】
図22は、各メタン濃度に対するIdとPXとの関係を示している。PXが10−12〜10−6atmの範囲にて、いずれのメタン濃度においてもPXの値によらずほぼ一定のセンサ出力が得られていることがわかる。他方、PXが10−12atm以下の条件では、本来一定であるべきIdが急速に減少している(すなわち、見かけの可燃ガス成分濃度が増加している)。これは、水蒸気の分解により、可燃ガス成分である水素が多量に発生し、第二処理室で酸素を消費したためであると推測される。他方、PXが10−6atm以上の条件では、Idが急速に増大しているが、これは第一処理室でくみ残される酸素量が急増するためであると考えられる。また、PXが10−12〜10−6の範囲で大きくなるほど、メタンに対する感度ΔIdは減少する傾向があるが、これは、酸素濃度が過剰であるため第一処理室内でメタンが燃焼し、いわば目減りしてしまうためであると考えられる。
【0115】
(実験例4)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素0〜10%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図23に示す。いずれの酸素濃度においても、各メタン濃度に対応する出力電流Idはほとんど変化していない。このことから、本発明のガスセンサ1は、被測定ガス中の酸素濃度によらず、メタンに対して常に安定した濃度検出出力が得られることがわかる。
【0116】
(実験例5)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気10%、炭酸ガス0〜15%、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図24に示す。いずれの炭酸ガス濃度においても、各メタン濃度に対応する出力電流Idはほとんど変化しておらず、影響を受けにくいことがわかる。
【0117】
(実験例6)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、亜硫酸ガス0〜100ppm、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図25に示す。いずれの亜硫酸ガスにおいても、各メタン濃度に対応する出力電流Idはほとんど変化しておらず、影響を受けにくいことがわかる。
【0118】
(実験例7)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、一酸化窒素0〜1200ppm、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図26に示す。いずれの一酸化窒素においても、各メタン濃度に対応する出力電流Idはほとんど変化しておらず、影響を受けにくいことがわかる。
【0119】
(実験例8)
実施例1と同様の実験を、試験ガス組成をメタン0又は200ppmC、酸素1%、水蒸気10%、炭酸ガス10%、一酸化炭素0〜12000ppm、残部窒素とした以外は同じ条件にて行った。結果を図27に示す。一酸化炭素濃度が3000ppm以下では、各メタン濃度に対応する出力電流Idはほとんど変化しておらず、影響を受けにくいことがわかる。また、一酸化炭素濃度が3000ppm以上になっても、若干センサ出力は変化しているが、概ね安定していることがわかる。ここで、一酸化炭素は可燃ガス成分であるにもかかわらず、メタンの検出出力への影響は12000ppmという高濃度まで小さくなっている。これは、一酸化炭素が共存する場合でも、メタンが選択検出性に優れていることを示すものである。例えば第一電極を触媒として、一酸化炭素が第一処理室内でメタンよりも優先的に燃焼することがその理由として考えられる。
【0120】
また、一酸化炭素に代えて、水素あるいはアンモニアを使用した場合の結果を図28及び図29にそれぞれ示している。これによれば、可燃ガス成分として水素あるいはアンモニアが共存する場合でも、メタンに対するセンサ出力はその影響を受けにくく、選択検出性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスセンサの一例を示す正面断面図、及びそのA−A断面図とB−B断面図。
【図2】電極リード部と端子部との接続構造の一例を示す断面図。
【図3】図1のガスセンサにおける処理室の形成方法を示す説明図。
【図4】同じく別の説明図。
【図5】図1のガスセンサを、ポンプセルユニットの裏面側の様子とともに示す分解斜視図。
【図6】その第四電極の構造を示す模式図。
【図7】図1のガスセンサのポンプセルユニットの製造方法を示す分解斜視図。
【図8】同じくセンサセルユニットの製造方法を示す分解斜視図。
【図9】図1のガスセンサを用いたガスセンサシステムの回路構成例を示すブロック図。
【図10】濃度変換テーブルの内容例を示す説明図。
【図11】図9のガスセンサシステムの制御プログラムの処理の流れを示すフローチャート。
【図12】本発明のガスセンサを、ガソリンエンジンに対するHC検出センサとして用いる例を示す模式図。
【図13】本発明のガスセンサを、ディーゼルエンジンに対するHC検出センサとして用いる例を示す模式図。
【図14】濃度変換テーブルの別の例を示す説明図。
【図15】電流制限回路を設けたセンサ周辺回路の一例を示す回路図。
【図16】電流制限回路をダイオードにて簡略に構成した例を示す回路図。
【図17】図1のセンサの変形例を示す断面図。
【図18】同じく別の変形例を示す断面図。
【図19】本発明のガスセンサを用いた実験例1の実験における、センサ出力の各種HC濃度依存性の結果を示すグラフ(酸素濃度1%)。
【図20】本発明のガスセンサを用いた実験例1の実験における、センサ出力の各種HC濃度依存性の結果を示すグラフ(酸素濃度7%)。
【図21】実験例2の実験における、センサ出力に及ぼす水蒸気濃度の影響を示すグラフ。
【図22】実験例3の実験における、センサ出力に及ぼす第一処理室内の酸素濃度設定値の影響を示すグラフ。
【図23】実験例4の実験における、センサ出力に及ぼす試験ガス中の酸素濃度の影響を示すグラフ。
【図24】実験例5の実験における、センサ出力に及ぼす試験ガス中の炭酸ガス濃度の影響を示すグラフ。
【図25】実験例6の実験における、センサ出力に及ぼす試験ガス中の亜硫酸ガス濃度の影響を示すグラフ。
【図26】実験例7の実験における、センサ出力に及ぼす試験ガス中の一酸化窒素濃度の影響を示すグラフ。
【図27】実験例8の実験における、センサ出力に及ぼす試験ガス中の一酸化炭素濃度の影響を示すグラフ。
【図28】同じく水素濃度の影響を示すグラフ。
【図29】同じくアンモニア濃度の影響を示すグラフ。
【図30】実験例1で使用したセンサの第四電極断面の、EPMAによるPt、Au、Zrの特性X線像(エージング前)
【図31】実験例1で使用したセンサの第四電極断面の、EPMAによるPt、Au、Zrの特性X線像(エージング後)
【符号の説明】
1 ガスセンサ
2 第一ヒータ
3 酸素濃度調整用ポンプ素子
4 酸素濃淡電池素子(酸素濃度検出素子)
5 可燃ガス成分濃度検出素子
6 測定用酸素供給ポンプ素子
8 第二ヒータ
9 第一処理室
10 第二処理室
11 第一気体流通部
12 隔壁
13 第二気体流通部
14 酸素基準電極
15 第一電極
16 第二電極(酸化触媒部)
17 第三電極(酸化触媒部)
19 第四電極
50 ガスセンサシステム
51 周辺回路
52 マイクロプロセッサ
53 CPU(補正手段)
54 RAM
55 ROM
56 I/Oポート
57 差動増幅器(酸素ポンプ作動制御手段)
71 直流定電圧電源(電圧印加手段)
80 定電流電源(ポンピング電流通電手段)
120 電流制限回路
111 ポンプセルユニット
111a 嵌合凸部(ポンプセル側嵌合部)
112 センサセルユニット
112a 嵌合凹部(センサセル側嵌合部)
151 主電極層
152 表面電極層

Claims (21)

  1. 周囲から区画されるとともに、第一気体流通部を介して被測定ガスが導入される第一処理室と、
    周囲から区画されるとともに、前記第一処理室内の気体が第二気体流通部を介して導かれる第二処理室と、
    前記第一処理室内の気体の酸素濃度を測定する酸素濃度検出素子と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、酸素を前記第一処理室から汲み出す又は前記第一処理室へ汲み込むことにより、当該第一処理室内へ導入された前記被測定ガス中の前記酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を所定のレベルに調整する酸素濃度調整用ポンプ素子と、
    前記第二気体流通部を介して前記第一処理室から前記第二処理室内に導入された気体に対し、当該気体に含まれる可燃ガス成分の燃焼を促進させる酸化触媒部と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が前記第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極間に通電することにより、前記被測定ガス中の可燃ガス成分の測定に用いる一定量の測定用酸素を前記第二処理室に汲み込む測定用酸素供給ポンプ素子と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が前記第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極を介して前記第二処理室から酸素を汲み出す向きに一定の電圧が印加されるようになっており、前記第一処理室から前記第二処理室内に導入された気体中の、前記可燃ガス成分の燃焼により消費される酸素量に応じてその出力電流を変化させ、当該出力電流が前記被測定ガス中の前記可燃ガス成分の濃度検出情報として取り出される可燃ガス成分濃度検出素子と、
    を備えたことを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子は、前記第一処理室内へ導入された前記被測定ガス中の前記酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を、該被測定ガスに含有される水蒸気の分解反応が実質的に起こらない範囲内のものとなるように調整する請求項1記載のガスセンサ。
  3. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子は、前記第一処理室内へ導入された前記被測定ガス中の前記酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度を10−12〜10−6atmの範囲で調整する請求項1又は2に記載のガスセンサ。
  4. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子は、前記酸素濃度検出素子が検出する前記第一処理室内の酸素濃度を、検出対象となる炭化水素よりも燃焼活性の高い成分が、該検出対象となる炭化水素よりも優先的に燃焼される範囲のものとなるように調整する請求項1ないし3のいずれかに記載のガスセンサ。
  5. 前記酸素濃度検出素子は、酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成されるとともに、一方の電極が前記第一処理室と接するように配置された酸素濃淡電池素子とされ、
    また、前記可燃ガス成分濃度検出素子の前記第二処理室と接する電極を第二電極とし、前記測定用酸素供給ポンプ素子の前記第二処理室と接する電極を第三電極とし、前記酸素濃淡電池素子の前記第一処理室と接する電極を第一電極とし、前記酸素濃度調整用ポンプ素子の第一処理室と接する電極を第四電極として、
    それら第一〜第四電極は、いずれも酸素分子解離能を有する多孔質電極として構成されるととともに、前記第二電極及び第三電極の少なくともいずれかが、前記被測定ガス中の可燃ガス成分に対する酸化触媒活性を有して前記酸化触媒部として機能するものとされ、
    かつ前記第一電極〜第四電極は、前記第一処理室よりも前記第二処理室において、前記可燃ガス成分の燃焼による酸素消費量が大きくなるように、その酸化触媒活性が調整されている請求項1ないし4のいずれかに記載のガスセンサ。
  6. 前記可燃ガス成分濃度検出素子の前記第二処理室と接する電極は、前記第二気体流通部と干渉しない位置に形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のガスセンサ。
  7. 前記第一処理室と前記第二処理室とは、酸素イオン伝導性固体電解質で構成された隔壁を挟んで互いに隣接して配置され、
    前記隔壁には、前記第一処理室と前記第二処理室とを連通させる前記第二気体流通部が形成されるとともに、厚さ方向中間部には酸素基準電極が埋設され、
    前記隔壁の前記第一処理室に面する表面には前記第一電極が形成され、該第一電極と、前記酸素基準電極と、それら電極の間に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質の隔壁部分とが前記酸素濃淡電池素子を構成し、
    前記隔壁の前記第二処理室に面する表面には前記第二電極が形成され、該第二電極と、前記酸素基準電極と、それら電極の間に挟まれた酸素イオン伝導性固体電解質の隔壁部分とが前記可燃ガス成分濃度検出素子を構成し、
    他方、前記第二処理室を挟んで前記隔壁と反対側に前記測定用酸素供給ポンプ素子が配置されている請求項4ないし6のいずれかに記載のガスセンサ。
  8. 前記酸素基準電極と、前記第二電極との少なくともいずれかが、前記隔壁に対し前記第二気体流通部と干渉しない位置に形成されている請求項7記載のガスセンサ。
  9. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子は、酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成されるとともに、一方の電極(以下、第四電極という)が前記第一処理室と接するように配置され、
    当該第四電極は、構成金属がPt又はPt−Au合金である多孔質金属からなる主電極層と、
    その主電極層を覆う形で当該第四電極の表層部を構成し、構成金属がAu及びAgのいずれかを主体とする金属、Pt−Au系合金、Au−Pd系合金、Pt−Ag系合金、Pt−Ni系合金のいずれかである多孔質金属からなる表面電極層と、
    を含む少なくとも二層により形成されるものである請求項1ないし8のいずれかに記載のガスセンサ。
  10. 前記第四電極は、構成金属がPt又はPt−Au合金である多孔質金属からなる主電極層と、
    前記第四電極の表層部を構成し、構成金属がAuを主体とするAu系金属である多孔質金属からなる表面電極層とにより形成される二層構造である請求項9に記載のガスセンサ。
  11. 前記酸素濃度検出素子は、酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成されるとともに、一方の電極(以下、第一電極という)が前記第一処理室と接するように配置された第一の酸素濃淡電池素子であり、
    前記第一電極は、構成金属がPt、Pt−Au合金又はPt−Ag合金である多孔質金属からなる請求項1ないし10のいずれかに記載のガスセンサ。
  12. 前記第一電極の面積が、前記第四電極の面積よりも小さく設定されている請求項9ないし11のいずれかに記載のガスセンサ。
  13. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子を含んで構成されたポンプセルユニットと、前記酸素濃度検知素子、前記第二処理室、前記可燃ガス成分濃度検出素子及び前記測定用酸素供給ポンプ素子を含んで構成されたセンサセルユニットとが各々別体に形成され、それら両ユニットが接合材を用いて互いに接合され一体化されている請求項9ないし12のいずれかに記載のガスセンサ。
  14. 前記ポンプセルユニットにはポンプセル側嵌合部が形成される一方、前記センサセルユニットにこれと嵌合するセンサセル側嵌合部が形成され、
    それら両嵌合部の嵌合面において前記ポンプセルユニットと前記センサセルユニットとが接合され一体化されている請求項13記載のガスセンサ。
  15. 請求項10記載のガスセンサの製造方法であって、
    前記酸素濃度調整用ポンプ素子に含まれる酸素イオン伝導性固体電解質層の未焼成成形体(以下、未焼成固体電解質成形体という)に対し、前記第四電極の前記主電極層の原料粉末の未焼成層(以下、主未焼成電極層という)を含んだ下地電極パターンを形成してこれを前記未焼成固体電解質成形体とともに一体焼成することにより、前記酸素イオン伝導性固体電解質層の上に前記主電極層を含む下地電極層を形成する下地電極層形成工程と、
    その下地電極層の上に、前記表面電極層の原料粉末層を形成してこれを前記一体焼成時よりも低温にて二次焼成することにより、前記表面電極層を形成する表面電極層形成工程とを、
    含むことを特徴とするガスセンサの製造方法。
  16. 前記ガスセンサは、前記酸素濃度調整用ポンプ素子を含んで構成されたポンプセルユニットと、前記酸素濃度検知素子、前記第二処理室、前記可燃ガス成分濃度検出素子及び前記測定用酸素供給ポンプ素子を含んで構成されたセンサセルユニットとが各々別体に形成され、それら両ユニットが接合材を用いて互いに接合され一体化されたものであり、これを製造するために、
    前記表面電極層を形成せず、下地電極層を形成した状態のポンプセルユニットを焼成により製造し、
    次いでそのポンプセルユニット上の下地電極層の上に前記二次焼成により前記表面電極層を形成し、これを別途焼成により製造した前記センサセルユニットと一体化することにより前記ガスセンサを得る請求項15記載の製造方法。
  17. 周囲から区画されるとともに、第一気体流通部を介して被測定ガスが導入される第一処理室と、
    周囲から区画されるとともに、前記第一処理室内の気体が第二気体流通部を介して導かれる第二処理室と、
    前記第一処理室内の気体の酸素濃度を測定する酸素濃度検出素子と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、酸素を前記第一処理室から汲み出す又は前記第一処理室へ汲み込む酸素濃度調整用ポンプ素子と、
    前記第二気体流通部を介して前記第一処理室から前記第二処理室内に導入された気体に対し、当該気体に含まれる可燃ガス成分の燃焼を促進させる酸化触媒部と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が前記第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極間に通電することにより、前記被測定ガス中の可燃ガス成分の測定に用いる一定量の測定用酸素を前記第二処理室に汲み込む測定用酸素供給ポンプ素子と、
    酸素イオン伝導性固体電解質により構成されて両面に電極が形成され、その一方の電極が前記第二処理室と接して配置されるとともに、それら両電極を介して前記第二処理室から酸素を汲み出す方向に一定の電圧が印加されるようになっており、前記第一処理室から前記第二処理室内に導入された気体中の、前記可燃ガス成分の燃焼により消費される酸素量に応じてその出力電流を変化させ、当該出力電流が前記被測定ガス中の前記可燃ガス成分の濃度検出情報として取り出される可燃ガス成分濃度検出素子と、
    を備えたガスセンサと、
    前記第一処理室内へ導入された前記被測定ガス中の前記酸素濃度検出素子が検出する酸素濃度が所定の範囲のものとなるように、前記酸素濃度調整用ポンプ素子の作動を制御する酸素濃度調整用ポンプ素子作動制御手段と、
    前記可燃ガス成分濃度検出素子に対し、前記電圧を印加する電圧印加手段と、前記測定用酸素供給ポンプ素子の前記両電極間に、測定用酸素汲み込みのためのポンピング電流を通電するポンピング電流通電手段と、
    を備えたことを特徴とするガスセンサシステム。
  18. 前記酸素濃度調整用ポンプ素子のポンプ電流値に反映された前記被測定ガス中の酸素濃度の情報に基づいて、前記可燃ガス成分濃度検出素子による検出出力を補正する補正手段を備える請求項17記載のガスセンサシステム。
  19. 前記酸素濃度検出素子は、酸素イオン伝導性固体電解質層の両面に多孔質金属からなる電極が形成され、一方の電極(以下、第一電極という)が前記第一処理室と接する検出側電極とされ、他方の電極が酸素基準電極とされる酸素濃淡電池素子であり、その酸素基準電極は、前記検出側電極との間にて当該酸素基準電極側に酸素が汲み込まれる方向にポンピング電流が印加され、その汲み込まれた酸素により自身の内部に所定レベルの基準酸素濃度が形成される自己生成型酸素基準電極とされ、
    他方、前記可燃ガス成分濃度検出素子において、前記第二処理室に接する電極(以下、第二電極という)とは異なる側の電極が前記酸素濃淡電池素子の前記酸素基準電極と共有化されており、さらに、
    前記可燃ガス成分濃度検出素子において、前記第二電極と前記酸素基準電極との間にて、所定の範囲を超えた電流が流れることを阻止する電流制限回路が設けられている請求項17又は18に記載のガスセンサシステム。
  20. 前記電流制限回路は、前記酸素基準電極から前記第二電極に向けて所定値を超える電流が流れることを阻止するものである請求項19記載のガスセンサシステム。
  21. 前記電流制限回路は、前記第二電極側から前記酸素基準電極へ電流が逆流することを阻止するものである請求項19又は20に記載のガスセンサシステム。
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