JP3557044B2 - 皮膚柔軟化剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は皮膚柔軟化剤、特にヒアルロン酸のアルコール性水酸基にアセチル基を高率で結合させたアセチル化ヒアルロン酸を主成分とする皮膚柔軟化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸は生体由来の高分子物質であり、高い増粘性、粘弾性、曳糸性等の特異的な物性を有しており、しかも生体適合性が高いことから各種分野での応用が期待されている。
特にヒアルロン酸の極めて高い保湿性は特筆すべき物性であり、各種皮膚外用剤などに保湿剤として用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したようにヒアルロン酸は高い曳糸性を有しており、このためヒアルロン酸の大量の添加は製品の使用性を著しく害する場合があった。
また、ヒアルロン酸は強水溶性であり、このため有機溶媒系あるいは油性基剤中での保湿剤としては使用できないものであった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的はヒアルロン酸の有する曳糸性などの欠点を改善しつつ、優れた皮膚柔軟化効果を発揮し得る低分子量アセチル化ヒアルロン酸を主成分とする皮膚柔軟化剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者が鋭意検討した結果、特定の極限粘度及びアセチル基置換数、即ち、特定の分子量及び疎水性を有するアセチル化ヒアルロン酸が、曳糸性の点で大幅に改善され、しかも高度の皮膚柔軟化効果を発揮し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
本出願の皮膚柔軟化剤は、下記特性を有することを特徴とする低分子量アセチル化ヒアルロン酸を主成分とする。
極限粘度:50〜200 cm 3 /g
アセチル基置換数:2.6〜3.6個(ただし、N−アセチル基は含まず)
以下、本発明の構成についてさらに詳細に説明する。
本発明にかかる低分子量アセチル化ヒアルロン酸は、下記化1に示すような構造を有する。
【化1】
本発明にかかる低分子量アセチル化ヒアルロン酸を皮膚柔軟化剤として用いる場合、分子量を極限粘度で示すと、前述したとおり50〜200cm3/gであることが必要である。なお、アセチル化ヒアルロン酸の分子量を直接明示することは困難であるので、本願明細書においては温度25℃において、0.2Mリン酸緩衝液(pH=7.3)中で測定した極限粘度の測定値を用いている。
【0006】
極限粘度が50cm3/g以下であると、アセチル化ヒアルロン酸による皮膚柔軟化作用が得られにくくなる。また、200cm3/g以上であると、アセチル化によっても曳糸性などの好ましくない物性を十分に抑制することができない。
また、アセチル化の程度を、アセチル基置換数で示すと、2.6個以上3.6個以下であることが好ましい。なお、ヒアルロン酸には前記化1に示す通り繰り返し単位中4個のアルコール性水酸基が存在するが、これらのうち何個がアセチル基で置換されたかをアセチル基置換数をここでは用いている。
【0007】
アセチル基置換数が2.6個未満であると疎水性の付与が不十分となる傾向にある。また、3.6個を越えると、親水性の低下、使用性の悪化などが生じることがある。
なお、たとえば特開平3−143540号公報には、ヒアルロン酸の繰り返し単位にアセチル化などのアシル基を導入した乳化安定剤が示されている。しかしながら、このヒアルロン酸誘導体は修飾率がきわめて低く、アシル基/N−アセチル基の比率が数分の1以下である。すなわち、数個ないし数十個の繰り返し単位に一つのアシル基が導入されているのみであり、本発明の効果を奏することはできない。
【0008】
また、特開平6−9707には、高アセチル化ヒアルロン酸が開示されているが、これはむしろ高分子量のアセチル化ヒアルロン酸を指向するものであり、本発明のように低分子量アセチル化ヒアルロン酸に高い皮膚柔軟化作用などが存在することを示唆するものではない。
この低分子量アセチル化ヒアルロン酸は、下記のように製造されることが好適である。
すなわち、粉末状ヒアルロン酸を無水酢酸溶媒に懸濁し、さらに濃硫酸を加えてアセチル化する。
【0009】
この際に、無水酢酸溶媒には酢酸が混合され、酢酸:無水酢酸の混合比は1:4〜1:1であることが好適である。この場合、アセチル化率の高い低分子量アセチル化ヒアルロン酸が得られる。
また、酢酸:無水酢酸の混合比が2:1〜4:1である場合には、アセチル基置換度を微妙に調節することができる。
また、溶媒に対して濃硫酸は2〜7容量%添加することが好適である。
【0010】
一方、本発明において特徴的なアセチル化ヒアルロン酸を精製するためには、粗アセチル化ヒアルロン酸をアセトン水溶液に添加し、乳酸ナトリウムを加えて溶解させ、さらにアセトンを加えることにより、高純度アセチル化ヒアルロン酸を得ることができる。
なお、前記乳酸ナトリウムはアセトン水溶液に対し、1〜3重量%添加することが好適である。
本発明において、ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩を意味し、各種分子量のものを用いることができる。
【0011】
又、本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製造方法において、ヒアルロニダーゼ等の酵素処理により、分子量の調節が可能であり、又エステル化反応時間を変えることにより修飾化率を変更することができる。
また、本発明にかかるヒアルロン酸の精製方法において、乳酸ナトリウムはその塩析効果によりアセチル化ヒアルロン酸を析出させる目的で添加される。即ち、例えばアセチル化ヒアルロン酸の溶解可能な80%アセトン水溶液に予め乳酸ナトリウムを溶解させておく。さらにアセトンを添加してアセトンを92%まで上昇させると、前記アセチル化ヒアルロン酸がゲル状沈殿として析出する。この塩析に利用する塩類に関して、酢酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グリシン、硫酸マグネシウム、塩化カリウムを検討した結果、酢酸ナトリウムには多少の塩析効果が認められたが、他の物にはほとんど効果が認められず、一方で乳酸ナトリウムには極めて良好な効果が認められた。
【0012】
本発明にかかる精製方法は、前記製造方法で製造したアセチル化ヒアルロン酸独自の溶媒溶解性を利用したものであり、特に本発明にかかる製造方法及び精製方法を組合せることにより、高純度のアセチル化ヒアルロン酸を収率よく得ることができる。
乳酸ナトリウムの添加量に関しては、増量によりアセチル化ヒアルロン酸の回収率は向上するが、その後の工程であるエタノールによる乳酸ナトリウムの除去が困難となる場合がある。このため、アセトン濃度の上昇によりアセチル化ヒアルロン酸をゲル状沈殿として析出させる際のアセトンの添加量をコントロールして、アセチル化ヒアルロン酸の回収率が高く且つ乳酸ナトリウムの残存率が低くなるような必要最小限の乳酸ナトリウムの添加量を検討した結果、アセトン水溶液に対し1〜3重量%添加することを決定したのである。
【0013】
本発明の皮膚柔軟化剤には、上記構成成分の他に必要に応じ、一般的に皮膚外用剤に配合される、各種成分を配合することができる。それらの成分としては、流動パラフィン、スクワラン、ラノリン誘導体、高級アルコール、各種エステル油、シリコーン油、ポリアルキレングリコールポリエーテル及びその他カルボン酸、オリゴエステル化合物、テルペン系炭化水素油等の油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルピロリドン等の樹脂類、大豆タンパク、ゼラチン、コラーゲン、絹フィブロイン、エラスチン等のタンパク又はタンパク分解物、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、ビオチン、パントテン酸誘導体等の賦活剤、エタノール、イソプロパノール、テトラクロジフルオロエタントルエン等の希釈剤、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、キレート剤、酸化防止剤、保湿剤、薬剤、香料、色剤等が挙げられる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
製造例1 アセチル化ヒアルロン酸の製造方法
300ml容のガラス製三角コルベンに20mlの市販の特級酢酸及び80mlの無水酢酸を入れ、6gのバイオヒアロ12(分子量約1200kdのヒアルロン酸,資生堂(株)製)の微細粉末を攪拌しながら少しずつ加える。続いて、4mlの濃硫酸をゆっくり加え、室温で1時間攪拌してアセチル化反応を行わせる。反応液は粘稠な白色液体となる。ここで得られたアセチル化ヒアルロン酸の置換度を測定した結果、3置換体であることが判明し、これを基に収率を計算した結果、88.8%であった。
【0015】
精製例1 アセチル化ヒアルロン酸の精製方法
31容のガラス製ビーカーに、あらかじめ2lの精製水を入れておき、攪拌しながら上記反応液を糸状になるようにゆっくり加える。生じたアセチル化ヒアルロン酸の沈殿を分取し、沈殿はさらに2lの精製水で2回同様に洗浄する。上記沈殿を1l容のガラス製ビーカーに移し、80%(v/v)アセトン水溶液250ml及び 50%乳酸ナトリウム水溶液9gを加え、攪拌しながら沈殿を完全に溶解させる。続いて、アセトン400mlをゆっくり加え、アセチル化ヒアルロン酸のゲル状沈殿を再沈殿させる。上記沈殿を分取した後、ホモジナイザーを併用しエタノール100mlを用いて10000rpmの速度で10分間の洗浄を2回行なう。次に、 減圧濾過により沈殿を分取した後、減圧乾燥し、アセチル化ヒアルロン酸の白色粉末を得る。
この結果、アセチル化ヒアルロン酸が6.5g(収率82.5%)得られ、乳酸は0.2%残存するものの、酢酸、硫酸は検出されなかった。
また、このものは90%エタノールに可溶であった。
【0016】
反応溶媒比の影響
次に、本発明者らは前記製造例1と基本的に同じ条件で、前記酢酸と無水酢酸の比を変化させた場合のアセチル化反応時間と、、生成したアセチル化ヒアルロン酸の極限粘度、アセチル基置換数の関係を調べた。
極限粘度との関係を図1に、またアセチル基置換数との関係を図2に示す。
同図より明らかなように、アセチル基置換数は反応開始数時間、特に1時間以内で急激に上昇する。一方、粘度は反応開始後5〜10時間程度まで急激に低下する。従って、高粘度のアセチル化ヒアルロン酸を得たい場合には反応時間を1時間ないしそれ以下とし、また低粘度のアセチル化ヒアルロン酸を得たい場合には反応時間を5〜10時間の範囲で長くする事が好適である。
【0017】
一方、溶媒比との関係を見ると、無水酢酸のみの場合よりも、酢酸を多少混合した方がアセチル化の進行が向上し、特に酢酸:無水酢酸が1:4程度ではアセチル化がより効率的に進行し、酢酸:無水酢酸が1:1程度でもほぼ無水酢酸単独の場合と同じ程度のアセチル化進行、低粘度化が認められる。
従って、アセチル化を効率的に進行させる場合の酢酸と無水酢酸の溶媒比は、1:4〜1:1が特に好ましい。なお、アセチル基置換数を低く調節する場合には、むしろ酢酸:無水酢酸を1:2〜4:1程度とすることで、時間の経過によるアセチル基置換数の変動が小さくなり、調節が容易となる。
【0018】
反応触媒量の変化
硫酸はヒアルロン酸のアセチル化を進める際の触媒となるが、この反応触媒量も生成アセチル化ヒアルロン酸の極限粘度、及びアセチル基置換数に影響を与える。前記実施例1と同条件において、硫酸量を変化させた場合の極限粘度との関係(図3)及びアセチル基置換数(図4)との関係を調べた。
同図より明らかなように、硫酸量を増加させるとアセチル基置換度は上昇するが、対して粘度低下もほぼこれに一致することが理解される。
以上のようにして得られたアセチル化ヒアルロン酸により、以下の有用性試験即ち使用性に関しては曳糸性試験を、保湿性に関しては水分蒸発度試験を、皮膚柔軟性に関しては皮膚柔軟効果測定試験を行った。
【0019】
曳糸性試験
恒温恒湿室(温度25℃、相対湿度50%)にて、100ml容のガラス製ビーカに入れた2%濃度の試験液中に、予め径約7mmのガラス棒を1cm浸漬しておき、ビーカーを5cm/minの速度で降下させたときの曳糸長を測定した。
【0020】
水分蒸発度試験
オクルージョン効果(水分不揮散性)測定試験法に基づいた。
濾紙(No.2)に1%濃度の試験液0.5mlを均一に浸透させ、一夜室温で減圧乾燥した。次に、該濾紙を5mlの水を入れたプラスチックシャーレの開口部に接着し、恒温恒湿室(温度25℃,相対湿度50%)にて重量変化を経時的に測定した。試料溶液の重量は、一定時間放置すると時間に比例して減少する。そこで、放置時間に対して試験試料に対して試験試料の重量をプロットし、その近似直線の傾きを水分蒸発速度定数k(mg/min)と定義し、kからオクルージョン効果を評価した。即ち、kの値が小さいほどオクルージョン効果は高いということになる。
【0021】
皮膚柔軟化試験
角質柔軟効果測定試験法に基づいた。
モルモット背部から加熱−トリプシン処理により採取した角質層を2×30mmの切片とした。これを連続的動的粘弾性測定装置(東洋精機、資生堂共社製)にセットし、弾性率をを3分毎に経時で3回測定し、その平均を試験液塗布前の弾性率の測定値とした。次いで試験液2μlを角質上に塗布し3〜4mm幅に広げ、同様にして経時で2時間測定し、試験液塗布前の弾性率に対する比で角質柔軟効果を評価した。即ち、弾性率比の値が小さいほど角質柔軟効果が高いということになる。
【0022】
[曳糸性予備試験]
以下の被験液を用い、前述の通りに曳糸性試験を行った。
被検液1:分子量120万のヒアルロン酸ナトリウム(HA)0.2%水溶液
被験液2:極限粘度170cm3/g、アセチル基置換数2.7個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液3:極限粘度160cm3/g、アセチル基置換数2.8個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液4:極限粘度140cm3/g、アセチル基置換数2.9個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液5:極限粘度120cm3/g、アセチル基置換数3.0個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液6:極限粘度110cm3/g、アセチル基置換数3.1個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液7:極限粘度100cm3/g、アセチル基置換数3.2個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
【0023】
この結果を図5に示す。
同図に示したように、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液では2.0cm程度の曳糸長を有している。これに対して、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム水溶液では、その長さはいずれも0.1〜0.4cmの範囲に収まっており、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液に比較して優位に短い。これらの結果から、明らかに曳糸性が改善されたことが理解できる。
以上の結果をもとに、曳糸性の評価は曳糸長で比較することにした。
【0024】
[水分蒸発度測定予備試験]
下記被験液を用い、前述の通りにオクルージョン効果測定試験を行った。
被験液1:イオン交換水
被験液2:極限粘度200cm3/g、アセチル基置換数2.6個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液3:極限粘度170cm3/g、アセチル基置換数2.7個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液4:極限粘度160cm3/g、アセチル基置換数2.8個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液5:極限粘度120cm3/g、アセチル基置換数3.0個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液6:極限粘度100cm3/g、アセチル基置換数3.2個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液7:極限粘度90cm3/g、アセチル基置換数3.4個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液8:分子量90万ヒアルロン酸ナトリウム(HA)0.2%水溶液
被験液9:1%プロピレングリコール(PG)水溶液
【0025】
この結果を図6に示す。
同図より明らかなように、イオン交換水に比較して、代表的な保湿剤であるヒアルロン酸ナトリウム、プロピレングリコールを添加した場合には保湿効果が高いが、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合には、前記ヒアルロン酸ナトリウム、プロピレングリコールと比較しても更に優位な保湿効果を有することが認められる。
【0026】
[皮膚柔軟効果予備試験]
下記被験液を用い、前述の通りに皮膚柔軟効果試験を行った。
被験液1:イオン交換水
被験液2:極限粘度120cm3/g、アセチル基置換数3.0個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液3:極限粘度110cm3/g、アセチル基置換数3.1個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液4:極限粘度100cm3/g、アセチル基置換数3.2個の低分子量アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.2%水溶液
被験液5:分子量90万ヒアルロン酸ナトリウム(HA)0.2%水溶液
被験液6:5%グリセリン(DG)水溶液
【0027】
この結果を図7に示す。
同図より明らかなように、イオン交換水塗布区では、塗布後20分まで角質層への水分浸透に起因した弾性率比の低下が生じ、角質層の柔軟性が上昇する。次に、水分蒸発に起因した弾性化により30分程度経過すると塗布前の値まで回復し、さらに水分蒸発のリバウンドで若干1を越えた値となる。また、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液塗布区では、柔軟性の回復値はイオン交換水塗布区よりもやや低く若干効果があるものの、50分程度で0.9程度まで回復してしまい、角質柔軟効果は低いことが理解される。これに対して、グリセリン水溶液塗布区は、イオン交換水塗布区、ヒアルロン酸塗布区と異なり0.7程度の値で維持しており柔軟持続作用が比較的に高い。
【0028】
一方、低分子化アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム水溶液塗布区では、120分経過時にあっても弾性率化が0.3程度で持続しており、極めて高い角質柔軟効果を有することが理解される。
以上の試験結果をもとに、皮膚柔軟性の評価は、角質層の柔軟性の持続効果を考慮して、塗布後60分以降の弾性率比の平均値で行うこととした。
以上の各予備試験から、アセチル化ヒアルロン酸がヒアルロン酸等と比較し、曳糸性、保湿効果、皮膚柔軟効果などで大きく優れていることが理解される。
【0029】
次に、前記アセチル化ヒアルロン酸の製造方法の各パラメータを変更し、各種極限粘度(分子量)及びアセチル基置換数のアセチル化ヒアルロン酸を調製し、前記効果について検証を行った。
結果を次に示す。
まず、表1には極限粘度を約120cm3/gとして、各種アセチル基置換数のアセチル化ヒアルロン酸を調製し、前記各効果について検証を行った。結果を次の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1より明らかなように、極限粘度が120cm3/g程度であると、アセチル基置換数が2.6個以上で曳糸性、皮膚柔軟効果、保湿効果に著しい改善が認められた。しかしながら、アセチル基置換数が3.6個となると、保湿性、皮膚柔軟効果が低下する傾向にあり、皮膚外用剤として用いるには難がある。
次に、本発明者らはアセチル基置換数が3.0程度のもので各種極限粘度のアセチル化ヒアルロン酸を調製し、その効果について検証を行った。
【0032】
【表2】
【0033】
以上の結果より、アセチル基置換数が3.0個程度であると、極限粘度が200cm3/gを越えるとアセチル化によっても曳糸性の改善が不十分となる。一方、極限粘度が50cm3/gを割ると、保湿効果、皮膚柔軟効果などが不十分となる傾向にある。
以下、本発明にかかる化粧料のより具体的な例について説明する。
【0034】
実施例1 乳液
常法により乳液を調製した。パネルによる評価結果は、なじみの良さ、しっとりさともに良好であった。
【0035】
実施例2 保湿クリーム
常法により保湿クリームを調製した。パネルによる評価結果は、なじみの良さ、しっとりさともに良好であった。
【0036】
実施例3 マッサージクリーム
(1)アセチル化ヒアルロン酸
常法によりマッサージクリームを調製した。パネルによる評価結果は、なじみの良さ、しっとりさともに良好であった。
【0037】
実施例4 クレンジングクリーム
【0038】
<製法>
(1)〜(4)、(6)〜(8)及び(11)を加熱溶解し、70℃に保つ。(14)に(5)を溶解し、前記調製物を攪拌しつつ添加する。中和反応を十分に行った後、(9)及び(10)を添加し、続いて(12)及び(13)を添加する。脱気後冷却して、クレンジングフォームを得た。
パネルによる評価結果は、なじみの良さ、しっとりさともに良好であった。
【0039】
実施例5 ヘアトニック
常法によりヘアトニックを調製した。パネルによる評価効果は、ぬめりが無くなじみが良くさっぱりとした使用感であった。
【0040】
実施例6 柔軟化粧水
常法により柔軟化粧料を調製した。パネルによる評価効果は、ぬめりが無くなじみが良くさっぱりとした使用感であった。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる皮膚柔軟化剤は、特定の分子量及びアセチル基置換数を有する低分子量アセチル化ヒアルロン酸を含むため、ヒアルロン酸の有する曳糸性を適度に抑制しつつ、優れた皮膚柔軟効果、保湿効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製造方法において、酢酸と無水酢酸の溶媒比を変更した場合のアセチル化反応時間と、極限粘度との関係を示した説明図である。
【図2】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製造方法において、酢酸と無水酢酸の溶媒比を変更した場合のアセチル化反応時間を、アセチル基置換度との関係を示した説明図である。
【図3】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製造方法において、反応触媒量(濃硫酸)を変更した場合のアセチル化反応時間と、極限粘度との関係を示した説明図である。
【図4】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製造方法において、反応触媒量(濃硫酸)を変更した場合のアセチル化反応時間と、アセチル基置換度との関係を示した説明図である。
【図5】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸による曳糸長を示す説明図である。
【図6】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸による水分蒸発速度を示す説明図である。
【図7】本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸による角質柔軟効果を示す説明図である。
Claims (1)
- 下記特性を有することを特徴とする低分子量アセチル化ヒアルロン酸を主成分とする皮膚柔軟化剤。
極限粘度:50〜200 cm 3 /g
アセチル基の置換数:2.6〜3.6個(ただし、N−アセチル基は含まず)
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