JP3412763B2 - 複合高分子電解質膜及びそれを用いた固体高分子型燃料電池 - Google Patents

複合高分子電解質膜及びそれを用いた固体高分子型燃料電池

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JP3412763B2 JP2001012362A JP2001012362A JP3412763B2 JP 3412763 B2 JP3412763 B2 JP 3412763B2 JP 2001012362 A JP2001012362 A JP 2001012362A JP 2001012362 A JP2001012362 A JP 2001012362A JP 3412763 B2 JP3412763 B2 JP 3412763B2
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浩 相馬
信広 斉藤
幸平 後藤
昌之 高橋
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合高分子電解質
膜及び該複合高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料
電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石油資源が枯渇化する一方、化石燃料の
消費による地球温暖化等の環境問題が深刻化しており、
二酸化炭素の発生を伴わないクリーンな電動機用電力源
として燃料電池が注目され、広範に開発されていると共
に、一部では実用化され始めている。前記燃料電池を自
動車等に搭載する場合には、高電圧と大電流とが得やす
いことから、高分子電解質膜を用いる固体高分子型燃料
電池が好適に用いられる。
【0003】前記固体高分子型燃料電池は、一対の電極
の間にイオン透過可能な高分子電解質膜を挟持させた構
成となっており、前記高分子電解質膜としてパーフルオ
ロアルキレンスルホン酸系高分子化合物(例えば、デュ
ポン社製ナフィオン(商品名))が広く利用されてい
る。前記パーフルオロアルキレンスルホン酸系高分子化
合物は、スルホン化により優れたプロトン伝導性を備え
ると共に、フッ素樹脂としての耐薬品性とを併せ備えて
いる。ところが、前記パーフルオロアルキレンスルホン
酸系高分子化合物は、非常に高価であるという問題があ
る。
【0004】前記パーフルオロアルキレンスルホン酸系
高分子化合物に対して、廉価な高分子電解質膜として分
子構造にフッ素を含まないポリアリーレン系重合体をス
ルホン化してプロトン伝導性を付与したものが知られて
いる。前記ポリアリーレン系重合体は、分子構造にパー
フルオロアルキレンを含まないので出発原料が安価であ
り、低コストで合成することができる。
【0005】しかしながら、前記ポリアリーレン系重合
体のスルホン化物からなる高分子電解質は、前記固体高
分子型燃料電池に用いたときに、電極との密着性が低い
ために、前記高分子電解質と電極との接触抵抗が高くな
り、発電性能の高い燃料電池が得られ難い傾向がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる不都
合を解消して、固体高分子型燃料電池に用いたときに、
電極との間で優れた密着性を得ることができる安価な複
合高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【0007】また、本発明の目的は、前記複合高分子電
解質膜を用いた固体高分子型燃料電池を提供することに
もある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記ポリ
アリーレン系重合体のスルホン化物からなる高分子電解
質が前記固体高分子型燃料電池の電極に対する密着性に
劣る理由について検討を重ねた結果、前記ポリアリーレ
ン系重合体のスルホン化物が剛直性の分子構造を備え、
比較的高い剛直性を備えているためであることが考えら
れた。前記ポリアリーレン系重合体のスルホン化物のよ
うに比較的高い剛直性分子構造を備える材料を前記固体
高分子型燃料電池の高分子電解質膜に用いると、該高分
子電解質膜が該燃料電池の運転中の高温と停止時の低温
とによる膨張、収縮の繰り返しにより前記電極から剥離
し、密着性が低下するものと考えられる。
【0009】前記剛直性の分子構造とは、例えば、複数
のフェニレン基が互いに1,4−位で結合しているフェ
ニレン基連鎖、ビフェニル構造の4,4’−連鎖、ナフ
タレン骨格の1,4−連鎖、1,5−連鎖、2,6−連
鎖の同軸結合等を挙げることができる。本発明者らは、
前記直線状の分子構造を備える化合物の剛直性を緩和す
る手段について、さらに検討を重ねた結果、例えば前記
フェニレン基連鎖の主鎖に電子吸引性基を導入すること
に想到し、本発明を完成した。
【0010】そこで、本発明の複合高分子電解質膜は、
前記目的を達成するために、第1の高分子電解質と第2
の高分子電解質とを含む2種類以上の高分子電解質を混
合してなる複合高分子電解質膜において、第1の高分子
電解質は、主鎖に電子吸引性基を有する芳香族化合物単
位5〜70モル%と、主鎖に電子吸引性基を有さない芳
香族化合物単位30〜95モル%とからなるポリアリー
レン系重合体のスルホン化物であることを特徴とする。
【0011】本発明の複合高分子電解質膜では、第1の
高分子電解質が主鎖に電子吸引性基を有する芳香族化合
物単位を含むことにより屈曲性を備えるものとなり、該
複合高分子電解質膜が固定高分子型燃料電池の電極に対
して優れた密着性を得ることができる。一方、前記ポリ
アリーレン系重合体をスルホン化するときには、主鎖に
電子吸引性基を有する芳香族化合物単位ではスルホン化
反応が起きず、主鎖に電子吸引性基を有さない芳香族化
合物単位に対してのみスルホン化反応が起きる。そこ
で、本発明の複合高分子電解質膜では、第1の高分子電
解質が、主鎖に電子吸引性基を有する芳香族化合物単位
と、主鎖に電子吸引性基を有さない芳香族化合物単位と
を前記範囲で含むことにより、所望のプロトン伝導率を
得るために必要なスルホン化率を確保しつつ、所望の屈
曲性を得ることができる。
【0012】前記ポリアリーレン系重合体のスルホン化
物は、パーフルオロアルキレン構造を備えるものを除く
ことにより、安価に合成することができる。
【0013】前記第1の高分子電解質は、主鎖に電子吸
引性基を有する芳香族化合物単位が5モル%未満であっ
て、主鎖に電子吸引性基を有さない芳香族化合物単位が
95モル%未満であるときには、該第1の高分子電解質
に屈曲性を付与することができず、前記電極に対して十
分な密着性が得られない。また、主鎖に電子吸引性基を
有する芳香族化合物単位が70モル%を超え、主鎖に電
子吸引性基を有さない芳香族化合物単位が30モル%未
満であるときには、所望のプロトン伝導性を得ることが
できない。
【0014】前記電子吸引性基は、一般に、ハメット
(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場
合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値とな
る基であるが、前記第1の高分子電解質に屈曲性を付与
するために適した電子吸引性基として、例えば、−CO
−、−CONH−、−(CF2p−(pは1〜10の整
数である)、−C(CF32−、−COO−、−SO
−、−SO2−からなる群から選ばれた少なくとも1種
の2価の電子吸引性基を挙げることができる。
【0015】また、本発明の複合高分子電解質膜は、膜
全体の70〜95重量%の範囲で第1の高分子電解質を
含むことが好ましい。第1の高分子電解質の含有量が膜
全体の70重量%未満では前記電極に対して十分な密着
性が得られないことがあり、膜全体の95重量%を超え
ると所望のプロトン伝導性を得ることができないことが
ある。
【0016】第1の高分子電解質は、例えば、次式
(1)に示すベンゾフェノン−4,4’−ジイル構造の
芳香族化合物単位7〜35モル%と、次式(2)に示す
4’−フェノキシ−ベンゾフェノン−2,5−ジイル構
造の芳香族化合物単位65〜93モル%とからなるポリ
アリーレン系重合体のスルホン化物を用いることができ
る。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】尚、前記ベンゾフェノン−4,4’−ジイ
ル構造の芳香族化合物単位は、2つのベンゼン環を電子
吸引性基である−CO−基で結合し、かつ4,4’−位
で隣接する芳香環が重合反応に関与することにより、主
鎖に電子吸引性基が導入される構成となる。また、前記
4’−フェノキシ−ベンゾフェノン−2,5−ジイル構
造の芳香族化合物単位は、ベンゾフェノン残基の2,5
−位で隣接する芳香環が重合に関与して主鎖を構成する
ことにより、主鎖には電子吸引性基を有さない構成とな
る。
【0020】前記ポリアリーレン系重合体のスルホン化
物は、1.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有
することが好ましい。前記ポリアリーレン系重合体のス
ルホン化物は、イオン交換容量が1.5meq/g未満
では所望のプロトン伝導性を得ることができないことが
ある。また、イオン交換容量が3.0meq/gを超え
るようにするためには、前記主鎖に電子吸引性基を備え
る4,4’−ベンゾフェノン由来の芳香族化合物単位の
量を低減しなければならず、前記電極に対して十分な密
着性が得られないことがある。
【0021】また、前記第1の高分子電解質は、主鎖に
電子吸引性基を有する芳香族化合物が、該芳香族化合物
間を少なくとも1つ以上のエーテル結合で結合した芳香
族化合物単位3〜60モル%と、電子吸引性を有さない
芳香族化合物単位40〜97モル%とからなるポリアリ
ーレン系重合体のスルホン化物であってもよい。このよ
うなポリアリーレン系重合体のスルホン化物として、例
えば、次式(3)に示すビス(ベンゾイル)ジフェニル
エーテル−4,4’−ジイル構造の芳香族化合物単位3
〜60モル%と、前式(2)に示す4’−フェノキシ−
ベンゾフェノン−2,5−ジイル構造の芳香族化合物単
位40〜97モル%とからなるポリアリーレン系重合体
のスルホン化物を挙げることができる。
【0022】
【化3】
【0023】尚、前記ビス(ベンゾイル)ジフェニルエ
ーテル−4,4’−ジイル構造の芳香族単位は、前記式
(3)に示すように、電子吸引性を有する2つのベンゾ
フェノン間をエーテル結合で結合した構成を備えてい
る。
【0024】前記ポリアリーレン系重合体のスルホン化
物は、1.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有
することが好ましく、1.8〜3.0meq/gのイオ
ン交換容量を有することがさらに好ましい。前記ポリア
リーレン系重合体のスルホン化物は、イオン交換容量が
1.5meq/g未満では所望のプロトン伝導性を得る
ことができないことがある。また、イオン交換容量が
3.0meq/gを超えるようにするためには、前記主
鎖に電子吸引性基を備えるビス(ベンゾイル)ジフェニ
ルエーテル−4,4’−ジイル構造の芳香族化合物単位
の量を低減しなければならず、前記電極に対して十分な
密着性が得られないことがある。
【0025】また、本発明の複合高分子電解質膜は、前
記第1の高分子電解質と共に、第2の高分子電解質を混
合して用いることにより、前記電極に対する密着性をさ
らに良好にすることができる。このような第2の高分子
電解質としては、それ自体屈曲性のある分子構造を備え
るものが好ましく、例えば、スルホン化ポリエーテル系
高分子電解質またはスルホン化ポリスルフィド系高分子
電解質を挙げることができる。前記第2の高分子電解質
は、さらに具体的には、スルホン化ポリフェニレンオキ
シド、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホ
ン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレン
スルフィドからなる群から選ばれた少なくとも1種の高
分子電解質を用いることができる。
【0026】前記スルホン化ポリエーテル系高分子電解
質またはスルホン化ポリスルフィド系高分子電解質は、
置換基または主鎖構造の一部にパーフルオロアルキレン
構造を備えるものを除くことにより、安価に合成するこ
とができる。
【0027】本発明の固体高分子型燃料電池は、一対の
電極と、両電極に挟持された電解質膜とを備える固体高
分子型燃料電池において、前記電解質膜が前記複合高分
子電解質膜であることを特徴とする。本発明の固体高分
子型燃料電池は、前記複合高分子電解質膜が前記電極に
対して良好な密着性を備えることにより、優れた発電性
能を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】次に、添付の図面を参照しながら
本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図
1は本実施形態の固体高分子型燃料電池の構成を示す説
明的断面図であり、図2は図1示の固体高分子型燃料電
池の電極における面積当たりの電荷量を測定する装置の
説明図、図3は図2の装置による電極の面積当たりの電
荷量の測定例を示すグラフである。
【0029】本実施形態の固体高分子型燃料電池は、図
1示のように、酸素極1と燃料極2との間に高分子電解
質膜3が挟持された構成となっている。酸素極1と燃料
極2とは、いずれも拡散層4と、拡散層4上に形成され
た触媒層5とを備え、触媒層5側で高分子電解質膜3に
接している。また、拡散層4はカーボンペーパー6と、
下地層7とからなる。
【0030】前記固体高分子型燃料電池において、下地
層7は、例えば所定の重量比で混合したカーボンブラッ
クとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とをエチ
レングリコール等の有機溶媒に均一に分散したスラリー
を、カーボンペーパー6の片面に塗布、乾燥することに
より形成される。尚、カーボンペーパー6は、酸素極1
では空気等の酸素含有気体が流通される酸素通路1a
を、燃料極2では水素等の燃料ガスが流通される燃料通
路2aを、下地層7側に備えている。また、触媒層5
は、例えばカーボンブラックに所定の重量比で白金を担
持させた触媒粒子をイオン伝導性バインダーと均一に混
合した触媒ペーストを、下地層7上に塗布、乾燥するこ
とにより形成される。
【0031】そして、高分子電解質膜3を、酸素極1、
燃料極2の触媒層5に挟持された状態でホットプレスす
ることにより、前記固体高分子型燃料電池が形成され
る。
【0032】次に、前記固体高分子型燃料電池における
高分子電解質膜3の構成について説明する。
【0033】本実施形態の固体高分子型燃料電池におけ
る高分子電解質膜3は、第1の高分子電解質と第2の高
分子電解質とを混合してなる複合高分子電解質膜であ
り、第1の高分子電解質は、主鎖に電子吸引性基を有す
る芳香族化合物単位(以下、「単位A」と略記する)
と、主鎖に電子吸引性基を有さない芳香族化合物単位
(以下、「単位B」と略記する)とからなるポリアリー
レン系重合体スルホン化物が用いられる。
【0034】ここで、第1の高分子電解質を構成する単
位Aとしては、例えば、下記一般式(4)で表わされる
芳香族単位を挙げることができる。
【0035】
【化4】
【0036】一般式(4)中の−X−として、例えば、
−CO−、−CONH−、−(CF 2p−、−C(CF
32−、−COO−、−SO−および−SO2−からな
る群から選ばれた少なくとも1種の2価の電子吸引性基
を挙げることができる。ここで、−(CF2p−基のp
は、1〜10の整数、好ましくは2〜8の整数である。
尚、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置
換基常数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p
位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
【0037】一般式(4)中のR1〜R8は水素原子、ハ
ロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリ
ール基、スルホン酸基、アリル基のいずれかである。ハ
ロゲン原子としてはフッ素原子等を挙げることができ、
アルキル基としてはメチル基、エチル基等を挙げること
ができ、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメ
チル基、ペンタフルオロエチル基等を挙げることができ
る。また、アリル基としてはプロペニル基等を挙げるこ
とができ、アリール基としてはフェニル基、ペンタフル
オロフェニル基等を挙げることができる。
【0038】また、単位Aは、単位Aを含む様々な結合
態様をとってもよく、例えば、−単位A−O−単位A
−、−単位A−O−単位A−O−単位A−のように、複
数の単位Aを少なくとも1つのエーテル結合で結合する
ようにしてもよい。エーテル結合を導入することによ
り、得られるポリマーの屈曲性を向上させることができ
る。
【0039】次に、第1の高分子電解質を構成する単位
Bとしては、例えば、下記一般式(5)〜(7)で表わ
される芳香族単位の少なくとも1種を挙げることができ
る。
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】ここで、R9〜R16は同一または異なり、
水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アル
キル基、アリール基またはポリアリーレン生成の重合反
応を阻害しない官能基を含む1価の有機基である。
【0044】ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原
子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができ、アル
キル基としてはメチル基、エチル基等を挙げることがで
き、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル
基、ペンタフルオロエチル基等を挙げることができる。
また、アリル基としてはプロペニル基等を挙げることが
でき、アリール基としてはフェニル基、ペンタフルオロ
フェニル基等を挙げることができる。
【0045】また、ポリアリーレン生成の重合反応を阻
害しない官能基を含む1価の有機基としては、例えば、
アリールオキシ、アリールオキソ、アリールチオカルボ
ニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオ、アリ
ールスルホン等を挙げることができる。前記有機基は、
2つ以上の官能基を含む1価の有機基であってもよく、
例えば、アリールオキシアリールオキソ、アリールオキ
シアリールスルホン、アリールチオアリールオキソ等を
挙げることができる。さらに、前記有機基は、アリール
基を、アルキル基、アルキルアリール基、アリールアル
キル基等に代えることもできる。
【0046】第1の高分子電解質において、単位Aの量
は5〜70モル%、好ましくは7〜50モル%、単位B
の量は30〜95モル%、好ましくは50〜93モル%
である。単位Aの量が5モル%未満で、単位Bの量が9
5モル%を超えると、第1の高分子電解質に十分な屈曲
性を付与することができない。一方、単位Aの量が70
モル%を超え、単位Bの量が30モル%未満であると、
重合後のスルホン化により導入されるスルホン酸基の量
が所望のプロトン伝導性を得るために不十分な量とな
る。
【0047】次に、第1の高分子電解質であるポリアリ
ーレン系重合体スルホン化物は、前記一般式(4)で表
わされる繰り返し構造単位(単位A)に対応するモノマ
ー(以下、「モノマーA」と略記する)と、前記一般式
(5)〜(7)の群から選ばれた少なくとも1種の繰り
返し構造単位(単位B)に対応するモノマー(以下、
「モノマーB」と略記する)とを、遷移金属化合物を含
む触媒系の存在下に、溶媒中で共重合し、次いでスルホ
ン化剤を用いてスルホン化することにより合成すること
ができる。
【0048】前記モノマーAとしては、下記一般式
(4)’で表わされる芳香族化合物を挙げることができ
る。
【0049】
【化8】
【0050】ここで、一般式(4)’中の、XおよびR
1〜R8は前記一般式(4)と同一である。また、R〜
R’は同一または異なり、フッ素原子を除くハロゲン原
子、または−OSO2Z−で表わされる基である。Z
は、アルキル基、フッ素原子を除くハロゲン化アルキル
基もしくはアリール基を示す。
【0051】ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原
子、ヨウ素原子等を挙げることができ、アルキル基とし
ては、メチル基、エチル基等を挙げることができ、アリ
ール基としては、フェニル基、p−トリル基等を挙げる
ことができる。
【0052】一般式(4)’で表わされるモノマーAの
具体例としては、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
2,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジクロ
ロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノ
ン、2,4’−ジブロモベンゾフェノン、3,3’−ジ
ブロモベンゾフェノン、3,3’−ジクロロベンゾフェ
ノン、4,4’−ジヨードベンゾフェノン、2,4’−
ジヨードベンゾフェノン、3,3’−ジヨードベンゾフ
ェノン、4,4’−ジクロロベンズアニリド、3,3’
−ジクロロベンズアニリド、3,4’−ジクロロベンズ
アニリド、4,4’−ジブロモベンズアニリド、3,
3’−ジブロモベンズアニリド、3,4’−ジブロモベ
ンズアニリド、4,4’−ジヨードベンズアニリド、
3,3’−ジヨードベンズアニリド、3,4’−ジヨー
ドベンズアニリド、4−クロロ安息香酸−4−クロロフ
ェニル、4−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3
−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3−クロロ安
息香酸−4−クロロフェニル、4−ブロモ安息香酸−4
−ブロモフェニル、4−ブロモ安息香酸−3−ブロモフ
ェニル、3−ブロモ安息香酸−3−ブロモフェニル、3
−ブロモ安息香酸−4−ブロモフェニル、ビス(4−ク
ロロフェニル)スルホキシド、ビス(3−クロロフェニ
ル)スルホキシド、ビス(4−ブロモフェニル)スルホ
キシド、ビス(3−ブロモフェニル)スルホキシド、ビ
ス(4−ヨードフェニル)スルホキシド、ビス(3−ヨ
ードフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニ
ル)スルホン、ビス(3−クロロフェニル)スルホン、
ビス(4−ブロモフェニル)スルホン、ビス(3−ブロ
モフェニル)スルホン、ビス(4−ヨードフェニル)ス
ルホン、ビス(3−ヨードフェニル)スルホン等を挙げ
ることができる。
【0053】また、−単位A−O−単位A−の構造をつ
くる場合のモノマーAの具体例としては、4,4’−ビ
ス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,
4’−ビス(3−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテ
ル、4,4’−ビス(4−ブロモベンゾイル)ジフェニ
ルエーテル、4,4’−ビス(3−ブロモベンゾイル)
ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−ヨードベン
ゾイル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3−ヨ
ードベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス
(4−メチルスルフォニロキシフェニル)ジフェニルエ
ーテル、4,4’−ビス(3−メチルスルフォニロキシ
フェニル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−
クロロベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、3,
4’−ビス(4−クロロベンゾイルアミノ)ジフェニル
エーテル、4,4’−ビス(3−クロロベンゾイルアミ
ノ)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(3−クロロ
ベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビ
ス(4−ブロモベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテ
ル、3,4’−ビス(4−ブロモベンゾイルアミノ)ジ
フェニルエーテル、4,4’−ビス(3−ブロモベンゾ
イルアミノ)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(3
−ブロモベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,
4’−ビス(4−ヨードベンゾイルアミノ)ジフェニル
エーテル、3,4’−ビス(4−ヨードベンゾイルアミ
ノ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3−ヨード
ベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、3,4’−ビ
ス(3−ヨードベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテ
ル、4,4’−ビス(4−メチルスルフォニロキシフェ
ニル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(4−メチ
ルスルフォニロキシフェニル)ジフェニルエーテル、
4,4’−ビス(3−メチルスルフォニロキシフェニ
ル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(3−メチル
スルフォニロキシフェニル)ジフェニルエーテル、4,
4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニ
ルエーテル、3,4’−ビス(4−クロロフェニルスル
ホニル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3−ク
ロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、3,
4’−ビス(3−クロロフェニルスルホニル)ジフェニ
ルエーテル、4,4’−ビス(4−ブロモフェニルスル
ホニル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(4−ブ
ロモフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,
4’−ビス(3−ブロモフェニルスルホニル)ジフェニ
ルエーテル、3,4’−ビス(3−ブロモフェニルスル
ホニル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−ヨ
ードフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、3,
4’−ビス(4−ヨードフェニルスルホニル)ジフェニ
ルエーテル、4,4’−ビス(3−ヨードフェニルスル
ホニル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(3−ヨ
ードフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,
4’−ビス(4−メチルスルフォニロキシフェニルスル
ホニル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(4−メ
チルスルフォニロキシフェニルスルホニル)ジフェニル
エーテル、4,4’−ビス(3−メチルスルフォニロキ
シフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、3,4’
−ビス(3−メチルスルフォニロキシフェニルスルホニ
ル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−クロロ
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(3−クロロ
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(3−クロロフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(4−ブロモ
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(4−ブロモフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(3−ブロモ
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(3−ブロモフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(4−ヨード
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(4−ヨードフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(3−ヨード
フェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、
3,4’−ビス(3−ヨードフェニル)ジフェニルエー
テルジカルボキシレート、4,4’−ビス(3−メチル
スルフォニロキシフェニル)ジフェニルエーテルジカル
ボキシレート、3,4’−ビス(3−メチルスルフォニ
ロキシフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレー
ト等を挙げることができる。
【0054】前記モノマーBとしては、下記一般式
(5)’〜(7)’で表わされる芳香族化合物を挙げる
ことができる。
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
【化11】
【0058】ここで、一般式(5)’〜(7)’中のX
およびR9〜R16は前記一般式(5)〜(7)と同一で
あり、R〜R’は一般式(4)’と同一である。
【0059】一般式(5)’で表わされるモノマーBの
具体例としては、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモ
ベンゼン、m−ジヨードベンゼン、m−ジメチルスルフ
ォニロキシベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、2,
4−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、
3,5−ジクロロトルエン、3,5−ジブロモトルエ
ン、3,5−ジヨードトルエン、2,6−ジクロロトル
エン、2,6−ジブロモトルエン、2,6−ジヨードト
ルエン、3,5−ジメチルスルフォニロキシトルエン、
2,6−ジメチルスルフォニロキシトルエン等を挙げる
ことができる。
【0060】また、一般式(6)’で表わされるモノマ
ーBの具体例としては、4’−フェノキシ−2,4−ジ
クロロベンゾフェノン、2,5−ジクロロ−4’−フェ
ノキシベンゾフェノン、p−ジクロロベンゼン、p−ジ
ブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、p−ジメチル
スルフォニロキシベンゼン、2,5−ジクロロトルエ
ン、2,5−ジブロモトルエン、2,5−ジヨードトル
エン、2,5−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、
2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジブロモ−
p−キシレン、2,5−ジヨード−p−キシレン等を挙
げることができる。
【0061】また、一般式(7)’で表わされるモノマ
ーBの具体例としては、4,4’−ジブロモビフェニ
ル、4,4’−ジヨードビフェニル、4,4’−ジメチ
ルスルフォニロキシビフェニル、4,4’−ジメチルス
ルフォニロキシ−3,3’−ジプロペニルビフェニル、
4,4’−ジメチルスルフォニロキシ−3,3’−ジメ
チルビフェニル等を挙げることができる。
【0062】以上の一般式(5)’〜(7)’で表わさ
れるモノマーBのうち、前記溶媒に対する溶解性に優
れ、高分子量化が可能であることから、4’−フェノキ
シ−2,5−ジクロロベンゾフェノン、4’−フェノキ
シ−2,4−ジクロロベンゾフェノン、4’−フェノキ
シフェニル−2,5−ジクロロベンゾエート、4’−フ
ェノキシフェニル−2,4−ジクロロベンゾエートなど
のジクロロ安息香酸誘導体が好ましく、特に一般式
(4)’で表わされるモノマーAと共重合したときに耐
クリープ性等の機械的強度に優れた高分子電解質が得ら
れることから4’−フェノキシ−2,5−ジクロロベン
ゾフェノンが最も好ましい。
【0063】前記一般式(4)’で表わされるモノマー
Aの少なくとも1種と、前記一般式(5)’〜(7)’
で表わされる芳香族化合物の群から選ばれた少なくとも
1種のモノマーBとの共重合比は、前記単位Aと単位B
との割合と同様である。すなわち、モノマーAの使用量
は、5〜70モル%、好ましくは7〜50モル%、モノ
マーBの使用量は、30〜95重量%、好ましくは50
〜93重量%である。但し、単位Aをエーテル結合で結
合する場合、−単位A−O−単位A−の割合は、3〜4
0モル%、好ましくは5〜35モル%である。
【0064】また、モノマーBとして一般式(5)’で
表わされるものを用いる場合には、その割合は、モノマ
ーA,Bの総計に対し、好ましくは50モル%以下、さ
らに好ましくは30モル%以下の範囲とすることによ
り、モノマーA,Bの全体が前記溶媒に対する溶解性に
優れたものとなり、高分子量化が可能となる。
【0065】また、モノマーBとして一般式(6)’で
表わされるものを用いる場合には、その割合は、モノマ
ーA,Bの総計に対し、好ましくは10モル%以上、さ
らに好ましくは20モル%以上の範囲とすることによ
り、モノマーA,Bの全体が前記溶媒に対する溶解性に
優れたものとなり、高分子量化が可能となる。
【0066】また、モノマーBとして一般式(7)’で
表わされるものを用いる場合には、その割合は、モノマ
ーA,Bの総計に対し、好ましくは50モル%以下、さ
らに好ましくは30モル%以下の範囲とすることによ
り、モノマーA,Bの全体が前記溶媒に対する溶解性に
優れたものとなり、高分子量化が可能となる。
【0067】前記モノマーA,Bの共重合によりポリア
リーレン系重合体を製造する際に使用される触媒は、遷
移金属塩を含む触媒系であり、遷移金属塩と、配位子
と、還元剤とを必須成分とする。前記触媒系は、前記遷
移金属化合物と、配位子とに代えて、予め配位子が配位
された遷移金属またはその塩を用いてもよく、さらに重
合速度を上げるために、所定の「塩」を添加してもよ
い。
【0068】ここで、前記遷移金属塩としては、塩化ニ
ッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセ
チルアセトナート等のニッケル化合物、塩化パラジウ
ム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のパラジウム
化合物、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄等の鉄化合物、塩化
コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト等のコバルト
化合物等を挙げることができる。
【0069】また、前記配位子としては、トリフェニル
ホスフィン、2,2’−ビピリジン、1,5−シクロオ
クタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プ
ロパン等を挙げることができる。
【0070】また、前記還元剤としては、例えば、鉄、
亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリ
ウム、カルシウム等を挙げることができる。これらの還
元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より
活性化して用いることができる。
【0071】また、予め配位子が配位された遷移金属ま
たはその塩としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリ
フェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニ
ルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホ
スフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィ
ン)、塩化ニッケル(2,2’ビピリジン)、臭化ニッ
ケル(2,2’ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,
2’ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2’ビピリジ
ン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テト
ラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラ
キス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を挙げる
ことができる。
【0072】また、重合速度を上げるために前記触媒系
に添加する塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリ
ウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリ
ウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カ
リウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム
などのカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウ
ム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチル
アンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸
テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム等を挙げ
ることができる。
【0073】前記触媒系における前記遷移金属塩、予め
配位子が配位された遷移金属またはその塩の量は、前記
一般式(4)’〜(7)’で表わされるモノマーA,B
の総計1モルに対し、通常は0.0001〜10モル、
好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001
モル未満では、重合反応が充分に進行せず、10モルを
超えると、得られたポリアリーレン系重合体の分子量が
十分に大きくならないことがある。
【0074】前記触媒系において、前記遷移金属または
その塩に対する前記配位子の量は、前記遷移金属または
その塩1モルに対し、通常は0.1〜100モル、好ま
しくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒
活性が不充分となり、100モルを超えると、得られた
ポリアリーレン系重合体の分子量が十分に大きくならな
いことがある。
【0075】前記触媒系における還元剤の量は、前記一
般式(4)’〜(7)’で表わされるモノマーA,Bの
総計1モルに対し、通常は0.1〜100モル、好まし
くは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が
充分進行せず、100モルを超えると、得られたポリア
リーレン系重合体の精製が困難になることがある。
【0076】前記触媒系に、重合速度を上げるための前
記塩を添加する場合、その添加量は、前記一般式
(4)’〜(7)’で表わされるモノマーA,Bの総計
1モルに対し、通常は0.001〜100モル、好まし
くは0.01〜1モルである。0.001モル未満で
は、重合速度を上げる効果が不充分であり、100モル
を超えると、得られたポリアリーレン系重合体の精製が
困難になることがある。
【0077】重合溶媒としては、例えば、テトラヒドロ
フラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセ
トアミド、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラ
クトン、γ−ブチロラクタム等を挙げることができる。
前記重合触媒は、充分に乾燥してから用いることが好ま
しい。重合触媒中における前記一般式(4)’〜
(7)’で表わされるモノマーA,Bの総計の濃度は、
通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%であ
る。重合温度は、通常は0〜200℃、好ましくは50
〜80℃であり、重合時間は、通常は0.5〜100時
間、好ましくは1〜40時間である。
【0078】前記ポリアリーレン系重合体の分子量は、
ポリスチレン換算重量平均分子量で、1,000〜1,
000,000、好ましくは1,500〜200,00
0である。
【0079】前記ポリアリーレン系重合体の構造は、例
えば、赤外線吸収スペクトルの1230〜1250cm
-1のC−O−C吸収、1640〜1660cm-1のC=
O吸収等により、或いは核磁気共鳴スペクトル(1H−
NMR)の6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピ
ークにより確認することができる。
【0080】ここで、例えば、前記一般式(4)’で表
わされるモノマーAおよび一般式(6)’で表わされる
モノマーBを用いて、前記一般式(4)および一般式
(6)で表わされる繰り返し構造単位(但し、スルホン
酸基を有しない)からなる重合体を得る際の反応式は、
次式(8)で示すことができる。
【0081】
【化12】
【0082】次に、前記ポリアリーレン系重合体は、無
溶剤下、あるいは溶剤存在下で、無水硫酸、発煙硫酸、
クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウム等のス
ルホン化剤と、公知の条件で反応させることによりスル
ホン化物とすることができる。前記スルホン化に用いる
溶剤としては、例えば、n−ヘキサン等の炭化水素溶
剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶
剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルスルホキシド等の非プロトン系極性溶媒のほか、
テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、
塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることが
できる。
【0083】前記スルホン化の反応温度は特に制限はな
いが、通常は−50〜200℃、好ましくは−10〜1
00℃である。また、前記スルホン化の反応時間は、通
常は0.5〜1000時間、好ましくは1〜200時間
である。
【0084】前記スルホン化により得られるポリアリー
レン系重合体スルホン化物中のスルホン酸基量は、重合
体を構成する単位Bの1ユニットに対して、通常0.0
5〜2個、好ましくは0.3〜1.5個である。0.0
5個未満では、得られたポリアリーレン系重合体スルホ
ン化物のプロトン伝導性が不十分なものとなり、2個を
超えると、親水性が向上して水溶性ポリマーとなってし
まうか、また水溶性に至らずとも熱水耐久性が低下す
る。
【0085】尚、前記ポリアリーレン系重合体スルホン
化物としては、単位Aがベンゾフェノン−4,4’−ジ
イル構造の芳香族化合物単位であって、単位Bが4’−
フェノキシ−ベンゾフェノン−2,5−ジイル構造の芳
香族化合物単位であるものが最も固体高分子型燃料電池
の高分子電解質膜に適している。この場合、単位Aの割
合が7〜35モル%、単位Bの割合が65〜93モル%
であることが好ましく、さらには単位Aの割合が8〜3
0モル%、単位Bの割合が70〜92モル%であると最
適である。また、前記ポリアリーレン系重合体スルホン
化物は、好ましくは1.5〜3.0meq/g、さらに
好ましくは1.8〜3.0meq/gのイオン交換容量
を有するものが好ましい。前記イオン交換容量は、単位
Aと単位Bとのモル比を変えて、前記ポリアリーレン系
重合体スルホン化物に導入されるスルホン酸基の量を変
えることにより、容易に調整することができる。
【0086】前記ポリアリーレン系重合体スルホン化物
の構造は、赤外線吸収スペクトルの1030〜1045
cm-1、1160〜1190cm-1のS=O吸収、11
30〜1250cm-1のC−O−C吸収、1640〜1
660cm-1のC=O吸収等により、或いは核磁気共鳴
スペクトル(1H−NMR)の6.8〜8.0ppmの
芳香族プロトンのピークにより確認することができる。
また、前記スルホン酸基の量は、スルホン酸の中和滴定
や、元素分析により知ることができる。
【0087】前記第1の高分子電解質としてのポリアリ
ーレン共重合体スルホン化物は、広い温度範囲にわたっ
て高いプロトン伝導性を有し、かつ、耐クリープ性等の
機械的強度、耐温水性に優れている。また、前記ポリア
リーレン共重合体スルホン化物は、前記一般式(4)で
表される単位Aを前記範囲の量で含むことにより屈曲性
を付与されているため、特に限定されない第2の高分子
電解質と混合して複合高分子電解質膜としたときにも固
体高分子型燃料電池の電極に対して優れた密着性を得る
ことができる。
【0088】しかし、本実施形態では、前記第1の高分
子電解質としてのポリアリーレン共重合体スルホン化物
に、それ自体屈曲性を備える第2の高分子電解質を混合
し、複合高分子電解質膜を形成することにより、前記固
体高分子型燃料電池の電極に対してさらに優れた密着性
を備える高分子電解質膜を得ることができる。
【0089】前記第2の高分子電解質としては、スルホ
ン化ポリエーテル系高分子電解質またはスルホン化ポリ
チオエーテル系高分子電解質が好ましく、このような屈
曲性を備える第2の高分子電解質を混合することによ
り、第1の高分子電解質であるポリアリーレン系重合体
スルホン化物の剛直性をさらに緩和することができる。
また、前記第2の高分子電解質は、安価であることから
パーフルオロアルキレン構造を含まない高分子電解質で
あることがさらに好ましい。
【0090】ここでいうポリエーテル系高分子とは、フ
ェニレン基1に対し0.5以上の割合で主鎖に−O−等
が含まれる高分子化合物であり、例えば、−Ph−O
−、−Ph−O−Ph−CO−、−Ph−O−Ph−O
−Ph−CO−、−Ph−O−Ph−CO−Ph−CO
−、−Ph−O−Ph−O−Ph−CO−Ph−CO
−、−Ph−O−Ph−CO−Ph−O−Ph−CO−
Ph−CO−、−Ph−O−Ph−CO−Ph−CO−
Ph−O−Ph−CO−Ph−CO−、−Ph−Ph−
O−Ph−CO−Ph−CO−(但し、−Ph−は−C
64−を示す)等の基から選択される繰り返し単位を単
独で、または他の芳香族化合物単位と結合して含有する
高分子化合物を挙げることができる。また、前記ポリス
ルフィド系高分子とは、前記ポリエーテル系高分子にお
ける−O−を、−S−で置換した高分子化合物である。
【0091】また、前記第2の高分子電解質を構成する
高分子化合物としては、前記ポリエーテル系高分子、ポ
リスルフィド系高分子の他、主鎖に−CO−、−CON
H−、−COO−、−SO−、−SO2−等の基を備え
る高分子化合物を用いることもできる。
【0092】このような高分子化合物として、具体的に
は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエ
ーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、
ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフ
ィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等
の化合物を挙げることができ、特に、ポリフェニレンオ
キシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルス
ルホンまたはポリフェニレンスルフィドが好ましい。前
記高分子化合物は、前記第1の高分子電解質と同一の方
法によりスルホン化することができる。
【0093】前記第2の高分子電解質は、前記−O−、
−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO
−、−SO2−等の基がいずれも180°未満の結合角
を備えるので、前記第1の高分子電解質に用いるポリア
リーレン系重合体スルホン化物に比較してかなり屈曲性
の高い構造を有する。
【0094】前記複合高分子電解質膜は、例えば、第1
の高分子電解質と第2の高分子電解質とを、それぞれ有
機溶媒に溶解して均一溶液とした後、両電解質の溶液を
均一に混合し、得られた均一溶液を平坦な型にキャスト
し乾燥させることにより製造することができる。前記有
機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,
N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトア
ミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤
を挙げることができる。また、両電解質の混合比は、固
形分重量比で、第1の高分子電解質:第2の高分子電解
質=95:5〜70:30とすることが成膜の上で好ま
しい。
【0095】また、前記複合高分子電解質膜は、前記キ
ャスティング法のほか、溶融成形等によっても製造する
ことができる。
【0096】次に、実施例及び比較例を示す
【0097】
【実施例1〜6及び比較例1】まず、主鎖に電子吸引性
基を有する芳香族化合物単位に対応するモノマーAとし
ての4,4’−ジクロロベンゾフェノンと、主鎖に電子
吸引性基を有さない芳香族化合物単位に対応するモノマ
ーBとしての2,5−ジクロロ−4−フェノキシベンゾ
フェノンとを、1:9のモル比で用意し、ヨウ化ナトリ
ウム、ビストリフェニルホスフィンニッケルジクロライ
ド、トリフェニルホスフィン、亜鉛からなる触媒系と共
に、N−メチルピロリドンを溶媒として、還流管及び三
方コックを取り付け窒素置換した三口フラスコ中、窒素
雰囲気下に70℃のオイルバスで加熱して重合させた。
前記触媒系において、各組成物の前記モノマーA,Bの
総計に対する割合は、ヨウ化ナトリウム13モル%、ビ
ストリフェニルホスフィンニッケルジクロライド3モル
%、トリフェニルホスフィン40モル%、亜鉛240モ
ル%である。
【0098】反応開始から、20時間後、重合反応液を
N−メチルピロリドンで希釈した後、該重合反応液を
1:10塩酸/メタノール溶液に注ぎ、ポリマーを析出
させた。前記ポリマーを洗浄後、ろ過、真空乾燥して、
白色の粉末を得た。このポリマーの重量平均分子量は1
6万であった。
【0099】前記重合反応で得られたポリマーに濃硫酸
を加え、室温で24時間攪拌しスルホン化反応を行っ
た。反応後、反応溶液を大量の純水中に注ぎ、スルホン
化ポリマーを析出させた。pH7になるまでポリマーの
水洗浄を続け、ろ過後、スルホン化ポリマーを回収し、
90℃で真空乾燥することにより第1の高分子電解質を
得た。この高分子電解質は、赤外吸収スペクトル及び核
磁気共鳴スペクトルにより、次式(9)で示されるフェ
ノキシベンゾフェノン−ベンゾフェノン共重合体スルホ
ン化物であることが確認された。また、得られたフェノ
キシベンゾフェノン−ベンゾフェノン共重合体スルホン
化物のイオン交換容量は、2.2meq/gであった。
【0100】
【化13】
【0101】次に、ポリエーテルエーテルケトン(PE
EK)を、これを前記第1の高分子電解質と同一の方法
でスルホン化して第2の高分子電解質としてのスルホン
化ポリエーテルエーテルケトンを得た。得られたスルホ
ン化ポリエーテルエーテルケトンのイオン交換容量は、
1.8meq/gであった。
【0102】次に、フェノキシベンゾフェノン−ベンゾ
フェノン共重合体スルホン化物と、スルホン化ポリエー
テルエーテルケトンとを、それぞれN−メチルピロリド
ンに溶解した。次いで、両溶液を、フェノキシベンゾフ
ェノン−ベンゾフェノン共重合体スルホン化物とスルホ
ン化ポリエーテルエーテルケトンとを、固形分重量比
で、フェノキシベンゾフェノン−ベンゾフェノン共重合
体スルホン化物:スルホン化ポリエーテルエーテルケト
ン=100:0〜60:40の範囲で、混合比を変えて
混合し、複数の高分子電解質溶液を作製した。次に、各
高分子電解質溶液を平坦な型にキャストし乾燥させるキ
ャスト法により、乾燥膜厚50μmの高分子電解質膜3
を作製した。
【0103】次に、図1示のように、前記高分子電解質
膜3を、酸素極1及び燃料極2で挟持し、80℃、5M
Pa、2分間の条件で一次ホットプレスを行い、次いで
160℃、4MPa、1分間の条件で二次ホットプレス
を行って、固体高分子型燃料電池を製造した。
【0104】前記酸素極1及び燃料極2は次のようにし
て製造した。まず、カーボンブラック及びポリテトラフ
ルオロエチレン(PTFE)粒子をカーボンブラック:
PTFE=4:6の重量比で混合し、エチレングリコー
ルに均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパー
6の片面に塗布し、乾燥させて下地層7を形成し、カー
ボンペーパー6と下地層7とからなる拡散層4を製造し
た。
【0105】次に、カーボンブラック(ファーネスブラ
ック)に白金粒子を1:1の重量比で担持させた触媒粒
子を、イオン伝導性バインダーとしてのスルホン化フッ
素系高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品
名))の溶液中に、触媒粒子:イオン伝導性バインダー
=8:5の重量比で均一に分散し、触媒ペーストを作製
した。尚、本実施例では、前記イオン伝導性バインダー
としてスルホン化フッ素系高分子化合物を使用したが、
前記高分子電解質溶液を用いてもよい。
【0106】次に、拡散層4の下地層7上に、前記触媒
ペーストを白金量が0.5mg/cm2となるようにス
クリーン印刷し、60℃、10分間の乾燥及び120℃
の減圧乾燥を行って、空気極1、燃料極2とした。
【0107】次に、前記高分子電解質膜3を用いた固体
高分子型燃料電池について、次のようにして電極構造体
の面積当たりの電荷量(Q値)、発電電位、耐熱水性を
測定し、性能を比較した。
【0108】(1)Q値の測定 Q値は、図2示の装置を用いて測定する。図2示の装置
は、高分子電解質膜3の片面のみに図1示の酸素極1及
び燃料極2と同一の構成の電極11を設けたものを、水
槽12の底部に配設し、水槽12に収容されたpH1の
硫酸水溶液13に、電極11の高分子電解質膜3を接触
させるようにしたものである。図2の装置は、硫酸水溶
液13中に浸漬された参照極14と対照極15とを備
え、参照極14、対照極15、電極11の拡散層4はそ
れぞれポテンショスタッド16に接続されている。ま
た、電極11は、図1示の酸素極1の酸素通路1aまた
は燃料極2の燃料通路2aに対応してガス通路11aを
備えており、ガス通路11aに流通される窒素ガスと接
触自在に構成されている。
【0109】図2の装置では、ポテンショスタッド16
により拡散層4と硫酸水溶液13間に電圧をかけると、
硫酸水溶液13中のプロトンが高分子電解質膜3を透過
して電極11に達し、電子の授受を行う。すなわち、プ
ロトンが触媒層7中の白金表面に接触することにより白
金からプロトンに電子が渡される。尚、図2の装置で
は、電極11中の触媒層7における白金量を0.5g/
cm2としている。
【0110】また、逆電圧をかけた場合は、吸着した水
素原子から電子が白金に渡されプロトンとして硫酸水溶
液中に拡散する。
【0111】そこで、電圧を−0.5Vから1Vまでス
キャンすると、図3示のように、プロトンの吸着側のピ
ーク面積からQ値を求めることができる。ここで、Q値
は電極11の面積当たりの電荷量(C/cm2)を示
し、この値が大きいほど、電極と高分子電解質膜との密
着性が高いことを示す指標となる。 (2)発電電位の測定 前記固体高分子型燃料電池を単セルとし、酸素極1に空
気を流通するとともに燃料極2に純水素を流通して発電
を行い、電流密度0.2A/cm2時のセル電位を測定
した。発電条件は両極とも、圧力100kPa、利用率
50%、相対湿度50%、及び温度85℃とした。 (3)耐熱水性の測定 前記固体高分子型燃料電池を95℃の熱水に200時間
浸漬した後のイオン交換容量をX(meq/g)とし、
初期イオン交換容量をY(meq/g)としたとき、
(X/Y)×100(%)により耐熱水性を算出した。
【0112】次に、前記高分子電解質膜3を用いた固体
高分子型燃料電池におけるQ値、発電電位、耐熱水性の
測定結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】表1から、第1の高分子電解質を膜全体の
60〜95重量%の範囲で含むと共に、第2の高分子電
解質を膜全体の5〜40重量%の範囲で含む複合高分子
電解質膜3を用いた固体高分子型燃料電池(実施例1〜
6)では、第1の高分子電解質のみからなり第2の高分
子電解質を含まない高分子電解質膜3を用いた固体高分
子型燃料電池(比較例1)に比較してQ値が高く、密着
性に優れていることが明らかである。また、実施例1〜
6の固体高分子型燃料電池は、発電電位及び耐熱水性に
ついても十分に満足できる性能を備えていることが明ら
かである。
【0115】
【実施例7〜9】次に、第1の高分子電解質を構成する
モノマーAとしての4,4’−ジクロロベンゾフェノン
を5〜15モル、モノマーBとしての2,5−ジクロロ
−4−フェノキシベンゾフェノンを85〜95モルの範
囲で、モル比を変えて第1の高分子電解質を合成すると
共に、第1の高分子電解質:第2の高分子電解質=8
5:15の重量比で混合した以外は、実施例1〜6と全
く同一にして複合高分子電解質膜3を製造した。
【0116】次に、前記複合高分子電解質膜3を用いた
以外は、実施例1〜6と全く同一にして固体高分子型燃
料電池を製造し、該固体高分子型燃料電池について、実
施例1〜6と全く同一にして電極構造体の面積当たりの
電荷量(Q値)、発電電位、耐熱水性を測定し、性能を
比較した。結果を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】表2から、第1の高分子電解質を構成する
モノマーAとしての4,4’−ジクロロベンゾフェノン
と、モノマーBとしての2,5−ジクロロ−4−フェノ
キシベンゾフェノンとを前記範囲で含む複合高分子電解
質膜3を用いた固体高分子型燃料電池(実施例7〜9)
は、前記実施例1〜6と同等の性能を備えていることが
明らかである。尚、実施例8は前記実施例3と同一の構
成となっている。
【0119】
【実施例10〜12】次に、第1の高分子電解質を構成
するモノマーAとしての4,4’−ジクロロベンゾフェ
ノンに代えて、4,4’−ビス(4−クロロベンゾイ
ル)ジフェニルエーテルを用い、モノマーAを2〜15
モル、モノマーBとしての2,5−ジクロロ−4−フェ
ノキシベンゾフェノンを85〜98モルの範囲で、モル
比を変えて第1の高分子電解質を合成すると共に、第1
の高分子電解質:第2の高分子電解質=85:15の重
量比で混合した以外は、実施例1〜6と全く同一にして
複合高分子電解質膜3を製造した。
【0120】次に、前記複合高分子電解質膜3を用いた
以外は、実施例1〜6と全く同一にして固体高分子型燃
料電池を製造し、該固体高分子型燃料電池について、実
施例1〜6と全く同一にして電極構造体の面積当たりの
電荷量(Q値)、発電電位、耐熱水性を測定し、性能を
比較した。結果を表3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】表3から、第1の高分子電解質を構成する
モノマーAとしての4,4’−ビス(4−クロロベンゾ
イル)ジフェニルエーテルと、モノマーBとしての2,
5−ジクロロ−4−フェノキシベンゾフェノンとを前記
範囲で含む複合高分子電解質膜3を用いた固体高分子型
燃料電池(実施例10〜12)は、前記実施例1〜6と
同等の性能を備えていることが明らかである。
【0123】尚、前記各実施例では、第2の高分子電解
質として、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを用
いているが、これに代えてスルホン化ポリフェニレンオ
キシド、スルホン化ポリエーテルスルホンを用いても同
様の結果が得られた。
【0124】また、前記実施例10〜12では、第1の
高分子電解質を構成するモノマーAとして4,4’−ビ
ス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテルを用い
ているが、これに代えて3,4’−ビス(4−クロロベ
ンゾイルアミノ)ジフェニルエーテルを用いても同様の
結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の一構成例を示
す説明的断面図。
【図2】固体高分子型燃料電池の電極における面積当た
りの電荷量を測定する装置の構成を示す説明図。
【図3】図2の装置による電極の面積当たりの電荷量の
測定例を示すグラフ。
【符号の説明】
1,2…電極、 3…高分子電解質膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 71/00 C08L 71/00 Y 81/02 81/02 81/06 81/06 101/12 101/12 H01B 1/06 H01B 1/06 A // H01M 8/10 H01M 8/10 (72)発明者 金岡 長之 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 相馬 浩 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 斉藤 信広 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 後藤 幸平 東京都中央区築地二丁目11番24号 ジェ イエスアール株式会社内 (72)発明者 高橋 昌之 東京都中央区築地二丁目11番24号 ジェ イエスアール株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−21943(JP,A) 特開2001−329053(JP,A) 特開2001−342241(JP,A) 特開 平9−245818(JP,A) 特表 平10−507574(JP,A) 特表2003−503510(JP,A) 特表2002−524631(JP,A) 特表2002−502539(JP,A) 特表2001−521270(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 8/00 - 8/24 H01B 1/06

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1の高分子電解質と第2の高分子電解質
    とを含む2種類以上の高分子電解質を混合してなる複合
    高分子電解質膜において、 第1の高分子電解質は、主鎖に電子吸引性基を有する芳
    香族化合物単位5〜70モル%と、主鎖に電子吸引性基
    を有さない芳香族化合物単位30〜95モル%とからな
    るポリアリーレン系重合体のスルホン化物(置換基また
    は主鎖構造の一部にパーフルオロアルキレン構造を備え
    るものを除く)であることを特徴とする複合高分子電解
    質膜。
  2. 【請求項2】前記電子吸引性基は、−CO−、−CON
    H−、−(CF2p−(pは1〜10の整数である)、
    −C(CF32−、−COO−、−SO−、−SO2
    からなる群から選ばれた少なくとも1種の2価の電子吸
    引性基であることを特徴とする請求項1記載の複合高分
    子電解質膜。
  3. 【請求項3】前記複合高分子電解質膜は、膜全体の70
    〜95重量%の範囲で第1の高分子電解質を含むことを
    特徴とする請求項1または請求項2記載の複合高分子電
    解質膜。
  4. 【請求項4】第1の高分子電解質は、ベンゾフェノン−
    4,4’−ジイル構造の芳香族化合物単位7〜35モル
    %と、4’−フェノキシ−ベンゾフェノン−2,5−ジ
    イル構造の芳香族化合物単位65〜93モル%とからな
    るポリアリーレン系重合体のスルホン化物であることを
    特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の
    複合高分子電解質膜。
  5. 【請求項5】第1の高分子電解質は、1.5〜3.0m
    eq/gのイオン交換容量を有することを特徴とする請
    求項4記載の複合高分子電解質膜。
  6. 【請求項6】前記第1の高分子電解質は、主鎖に電子吸
    引性基を有する芳香族化合物が、該芳香族化合物間を少
    なくとも1つ以上のエーテル結合で結合した芳香族化合
    物単位3〜60モル%と、主鎖に電子吸引性を有さない
    芳香族化合物単位40〜97モル%とからなるポリアリ
    ーレン系重合体のスルホン化物であることを特徴とする
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の複合高分子
    電解質膜。
  7. 【請求項7】第1の高分子電解質は、ビス(ベンゾイ
    ル)ジフェニルエーテル−4,4’−ジイル構造の芳香
    族化合物単位3〜60モル%と、4’−フェノキシ−ベ
    ンゾフェノン−2,5−ジイル構造の芳香族化合物単位
    40〜97モル%とからなるポリアリーレン系重合体の
    スルホン化物であることを特徴とする請求項6記載の複
    合高分子電解質膜。
  8. 【請求項8】第1の高分子電解質は、1.5〜3.0m
    eq/gのイオン交換容量を有することを特徴とする請
    求項7記載の複合高分子電解質膜。
  9. 【請求項9】第1の高分子電解質は、前記ポリアリーレ
    ン系重合体のスルホン化物であって、1.8〜3.0m
    eq/gのイオン交換容量を有することを特徴とする請
    求項8記載の複合高分子電解質膜。
  10. 【請求項10】第2の高分子電解質は、スルホン化ポリ
    エーテル系高分子電解質(置換基または主鎖構造の一部
    にパーフルオロアルキレン構造を備えるものを除く)ま
    たはスルホン化ポリチオスルフィド系高分子電解質であ
    ることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1
    項記載の複合高分子電解質膜。
  11. 【請求項11】第2の高分子電解質は、スルホン化ポリ
    フェニレンオキシド、スルホン化ポリエーテルエーテル
    ケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化
    ポリフェニレンスルフィドからなる群から選ばれた少な
    くとも1種の高分子電解質であることを特徴とする請求
    項10記載の複合高分子電解質膜。
  12. 【請求項12】一対の電極と、両電極に挟持された電解
    質膜とを備える固体高分子型燃料電池において、前記電
    解質膜は第1の高分子電解質と第2の高分子電解質とを
    含む2種類以上の高分子電解質を混合してなる複合高分
    子電解質膜であって、第1の高分子電解質が、主鎖に電
    子吸引性基を有する芳香族化合物単位5〜70モル%
    と、主鎖に電子吸引性基を有さない芳香族化合物単位3
    0〜95モル%とからなるポリアリーレン系重合体のス
    ルホン化物(置換基または主鎖構造の一部にパーフルオ
    ロアルキレン構造を備えるものを除く)であることを特
    徴とする固体高分子型燃料電池。
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