JP4019855B2 - プロトン伝導膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、プロトン伝導膜の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、有機ポリマーからなる、高温での熱安定性の向上したプロトン伝導膜の製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
プロトン伝導膜は、各種センサー、燃料電池、表示素子などの電気化学素子の主要な構成材料として用いられており、プロトン伝導膜の材料としては、無機化合物および有機化合物の両方が知られている。
無機物の例としては、例えば水和化合物であるリン酸ウラニルが挙げられるが、これら無機化合物は界面での接触が充分でなく、伝導層を基板あるいは電極上に形成するには問題が多い。
【0003】
有機化合物の例としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーや、ポリベンズイミダゾールやポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基やリン酸基を導入したポリマー〔Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.7,p.2490〜2492(1993)、Polymer Preprints,Japan,Vol.43,No.3,p.735〜736(1994)、Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p730(1993)〕などの有機系ポリマーが挙げられる。
【0004】
これら有機系ポリマーは、通常、フィルム状で用いられるが、溶媒に可溶性であること、または熱可塑性であることを利用し、電極上に伝導膜を接合加工できる。しかしながら、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導性がまだ充分でないことに加え、高温での耐久性が不充分であるという問題があった。たとえば、スルホン酸構造を有するプロトン伝導膜は、伝導性は良好なものの、高温ではスルホン酸が分解脱離しやすいという問題があった。
【0005】
このため、有機系ポリマーから形成され、熱安定性に優れたプロトン伝導膜の出現が強く求められていた。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、熱安定性に優れたプロトン伝導膜を製造する方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明のプロトン伝導膜の製造方法は、
スルホン酸基を導入したポリマーである有機ポリマーを溶液流延法により製膜する工程と、
製膜により得られた膜を、水に可溶で沸点が100℃以上であり窒素を含有する有機化合物の水溶液中に浸漬して、平衡膨潤させる工程と、加熱処理により水を蒸発させて乾燥する工程とを有することを特徴としている。
【0008】
このような本発明のプロトン伝導膜の製造方法では、有機ポリマーが、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体であることも好ましい。
また本発明のプロトン伝導膜の製造方法では、前記有機化合物が、沸点が100〜250℃であって、弱塩基性を示す化合物であることが好ましい。
【0009】
さらに本発明のプロトン伝導膜の製造方法では、プロトン伝導膜中の前記有機化合物含有量が、5重量%以下であることが好ましい。
またさらに本発明のプロトン伝導膜の製造方法では、前記有機化合物が、常温で液体であることが好ましい。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明では、有機ポリマーを製膜する工程と、膜を特定の有機化合物の水溶液中に浸漬して平衡膨潤させる工程と、乾燥工程とによりプロトン伝導膜を製造する。
【0011】
有機ポリマーの製膜は、有機ポリマー溶液を支持体上に流延して膜を形成する溶液流延法により行う。支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。有機ポリマー膜は、この段階で支持体から剥離してもよく、後述する平衡膨潤、乾燥の後で剥離してもよい。
有機ポリマーとしては、プロトン伝導膜の製造に用いられる有機ポリマーとして公知のものを用いることができ、陽イオン交換樹脂に属するポリマーをいずれも用いることができる。たとえば、ビニル系ポリマーのスルホン化物;パーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー;パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーやポリベンズイミダゾールやポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基やリン酸基を導入したポリマーなどが挙げられる。
【0012】
本発明では、これらの有機ポリマーのうち、スルホン酸を導入したポリマーが好ましく用いられ、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体がより好ましく用いられる。
以下に、本発明で好ましく用いられる、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体について詳しく説明する。
【0013】
本発明で好ましく用いられる、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、以下のポリアリーレン系共重合体をスルホン化したものである。
スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の原料となるポリアリーレン系共重合体は、
(A)下記一般式(A)で表されるモノマーと、
(B)下記一般式(B−1)、(B−2)、(B−3)および(B−4)よりなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーと
を反応させて得られる。
【0014】
モノマー(A)は、下記一般式で表される。
【0015】
【化1】
【0016】
上記一般式(A)中、RおよびR'は、互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子を除くハロゲン原子または−OSO2Z(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す。)で表される基を示す。ここで、Zが示すアルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられ、フッ素置換アルキル基としてはトリフルオロメチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
【0017】
式(A)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0018】
式(A)中、Xは2価の電子吸引性基を示す。電子吸引性基としては、例えば−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−などが挙げられる。なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
【0019】
式(A)中、Yは2価の電子供与性基を示す。電子供与性基としては、例えば−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−および下記式で表される基などが挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
また、式(A)中、nは0または正の整数を示す。nの上限は通常100、好ましくは80である。
このようなモノマー(A)としては、具体的には、たとえば、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物などが挙げられる。
【0022】
また、モノマー(A)として、具体的には、例えば4,4'−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロベンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)テトラフルオロエチル〕ジフェニルエーテル、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物、さらにこれらの化合物においてジフェニルエーテルの4位に置換した基の少なくとも1つが3位に置換した化合物などが挙げられる。
【0023】
さらに、モノマー(A)としては、2,2−ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]スルホン、および下記式で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
上記一般式(A)で表されるモノマーは、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まず電子吸引性基で連結されたビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
【0026】
通常、アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量を使用する。好ましくは、1.2〜1.5倍当量の使用である。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロフェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。活性芳香族ジハライドはビスフェノールに対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜2.8倍モルの使用である。芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。最も好ましい方法としては、下記式
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、Yは一般式(A)に関して定義した通りであり、2価の電子供与性基を示す。)
で示される活性芳香族ジハライドとして反応性の異なるハロゲン原子を一個づつ有するクロロフルオロ体を用いることであり、フッ素原子が優先してフェノキシドと求核置換反応が起きるので、目的の活性化された末端クロロ体を得るのに好都合である。
【0029】
また、上記一般式(A)で表されるモノマーを合成する別の方法としては、たとえば特開平2−159号公報に記載のように、求核置換反応と親電子置換反応を組み合わせ、目的の電子吸引性基、電子供与性基からなる屈曲性化合物を合成する方法がある。
具体的には電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライド、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホンをフェノールとで求核置換反応させてビスフェノキシ置換体とする。次いで、この置換体を例えば、4−クロロ安息香酸クロリドとのフリーデルクラフト反応から目的の化合物を得る。ここで用いる電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライドは上記で例示した化合物が適用できる。フェノール化合物は置換されていてもよいが、耐熱性や屈曲性の観点から、無置換化合物が好ましい。なお、フェノールの置換反応にはアルカリ金属塩とするのが、好ましく、使用可能なアルカリ金属化合物は上記に例示した化合物を使用できる。使用量はフェノール1モルに対し、1.2〜2倍モルである。反応に際し、上述した極性溶媒や水との共沸溶媒を用いることができる。ビスフェノキシ化合物を塩化アルミニウム、3フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのルイス酸のフリーデルクラフト反応の活性化剤存在下に、アシル化剤として、クロロ安息香酸クロライドを反応させる。クロロ安息香酸クロライドはビスフェノキシ化合物に対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜3倍モルの使用である。フリーデルクラフト活性化剤は、アシル化剤のクロロ安息香酸などの活性ハライド化合物1モルに対し、1.1〜2倍当量使用する。反応時間は15分〜10時間の範囲で、反応温度は−20℃から80℃の範囲である。使用溶媒は、フリーデルクラフト反応に不活性な、クロロベンゼンやニトロベンゼンなどを用いることができる。
【0030】
また、上記一般式(A)において、nが2以上であるモノマー(A)は、たとえば、一般式(A)において電子供与性基Bであるエーテル性酸素の供給源となるビスフェノールと、電子吸引性基Aである、>C=O、−SO2−、および/または>C(CF3)2とを組み合わした、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノールのアルカリ金属塩と過剰の4,4−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物との置換反応をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホランなどの極性溶媒存在下で前記単量体の合成手法に順次重合して得られる。
【0031】
このようなモノマー(A)の例示としては、下記式で表される化合物などを挙げることができる。
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
上記において、nは2以上、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜80、さらに好ましくは10〜30である。
次にモノマー(B)について説明する。モノマー(B)は、一般式(B−1)〜(B−4)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のモノマーである。
【0036】
【化8】
【0037】
上記式(B−1)中、RおよびR'は互いに同一でも異なっていてもよく、上記一般式(A)中のRおよびR'と同様の基を示す。
式(B−1)中、R9〜R15は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキルスルホン酸基およびアルキル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。R9〜R15が示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
【0038】
式(B−1)中、Xは上記一般式(A)中のXと同様であって、2価の電子吸引性基を示す。電子吸引性基としては、上記一般式(A)中のXとして例示したものが挙げられる。
式(B−1)中、Yは上記一般式(A)中のYと同様であって、2価の電子供与性基を示す。電子供与性基としては、上記一般式(A)中のYとして例示したものが挙げられる。
【0039】
式(B−1)中、mは0、1または2を示す。
式(B−1)中、Wはフェニル基、ナフチル基および下記式(C−1)〜(C−3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。
【0040】
【化9】
【0041】
式(C−1)〜(C−3)中、Aは電子供与性基または単結合を示す。電子供与性基としては、上記一般式(A)中のYとして例示した2価の電子供与性基が挙げられる。
R16およびR17は水素原子、アルキル基およびアリール基からなる群より選ばれる原子または基を示す。R16およびR17が示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0042】
R18〜R26は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキルスルホン酸基およびアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。R18〜R26が示すアルキル基としては、R16およびR17が示すアルキル基と同様のものが挙げられる。
qは0または1を示す。
【0043】
上記一般式(B−1)で示されるモノマー(B)としては、たとえば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化10】
【0045】
より具体的には、一般式(B−1)で表される化合物としては、たとえば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
また、上記のような化合物において、塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物も例示することができる。
【0049】
【化13】
【0050】
上記式(B−2)、(B−3)および(B−4)中、RおよびR'は互いに同一でも異なっていてもよく、上記一般式(A)中のRおよびR'と同様の基を示す。
R27〜R34は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、アルキルスルホン酸基または下記一般式(D)で表される基を示す。
【0051】
【化14】
【0052】
一般式(D)中、R35〜R43は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。
R27〜R34、R35〜R43が示すアルキル基としては、R16およびR17が示すアルキル基と同様の基が挙げられ、フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。またR27〜R34が示すアリール基としては、R16およびR17が示すアリール基と同様の基が挙げられる。
【0053】
上記一般式(D)中、Xは2価の電子吸引性基を示す。電子吸引性基としては、上記一般式(A)でXとして例示したものが挙げられる。
上記一般式(D)中、Yは2価の電子供与性基を示す。電子供与性基としては、上記一般式(A)中のYとして例示した2価の電子供与性基が挙げられる。
上記一般式(B−2)で表されるモノマー(B)としては、具体的には、たとえば、p−ジクロロベンゼン、p−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、1,4−ジクロロ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、およびこれらの化合物において塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物などが挙げられる。
【0054】
上記一般式(B−3)で表されるモノマー(B)としては、具体的には、たとえば、4,4'−ジメチルスルフォニロキシビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジプロペニルビフェニル、4,4'−ジブロモビフェニル、4,4'−ジヨードビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジメチルビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'−ジフルオロビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシ−3,3'5,5'−テトラフルオロビフェニル、4,4'−ジブロモオクタフルオロビフェニル、4,4'−ジメチルスルフォニロキシオクタフルオロビフェニルなどが挙げられる。
【0055】
上記一般式(B−4)で表されるモノマー(B)としては、具体的には、たとえば、m−ジクロロベンゼン、m−ジメチルスルフォニロキシベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,5−ジメチルスルフォニロキシトルエン、2,6−ジメチルスルフォニロキシトルエン、2,4−ジクロロベンゾトリフルオライド、3,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、1,3−ジブロモ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、およびこれらの化合物において塩素原子を臭素原子またはヨウ素原子に置き換えた化合物などが挙げられる。
【0056】
本発明で好ましく用いられるポリアーレン系重合体は、上述したモノマー(A)と、モノマー(B)とを、触媒の存在下に反応させて得られる。使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、▲1▼遷移金属塩および配位子となる化合物(以下「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに▲2▼還元的カップリング剤である上述した金属亜鉛を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
【0057】
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
【0058】
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0059】
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
【0060】
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0061】
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記単量体の総計1モルに対し、通常0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
【0062】
また、亜鉛金属の使用割合は、上記単量体の総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記単量体の総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
【0063】
使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
【0064】
重合溶媒中における上記単量体の総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
【0065】
このようなモノマー(A)とモノマー(B)との重合においては、分子量調節剤として4−クロロベンゾフェノンのような片末端ハロゲン化合物(フッ素を除く)を用いて、得られる重合体を所定の分子量に調整できる。また、得られる重合体溶液の分子量と溶液粘度を調整するために、例えば、2,4,4'−トリクロロベンゾフェノンなどの2官能性以上のハロゲン化合物(フッ素を除く)を用いることもできる。
【0066】
このようにして上記一般式(A)で表されるモノマー(A)と、上記一般式(B−1)〜(B−4)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(B)を重合させることにより、ポリアリーレン系共重合体溶液が得られる。
本発明で好ましく用いられる、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、このようにして得られたポリアリーレン系共重合体をスルホン化したものである。ポリアリーレン系共重合体のスルホン化は、スルホン酸基を有しない上記共重合体に、スルホン化剤を用い、常法によりスルホン酸基導入することにより行うことができる。
【0067】
スルホン酸基を導入する方法としては、例えば、上記スルホン酸基を有しないポリアリーレン系共重合体を、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化することができる〔Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p.730(1993);Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.3,p.736(1994);Polymer Preprints,Japan,Vol.42,No.7,pp.2490〜2492(1993)〕。
【0068】
すなわち、このスルホン化の反応条件としては、上記スルホン酸基を有しない共重合体を、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、上記スルホン化剤と反応させる。溶剤としては、例えばn−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
【0069】
なお、(B−1)〜(B−4)化合物としてアルキルスルホン酸基を有する化合物を使用した場合には、このようなスルホン化工程は不要であるが、下記に示すような加水分解を行って、重合体中のスルホン酸エステル基(−SO3R)をスルホン酸基(−SO3H)に転換する工程が必要である。
加水分解の方法としては、
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記ポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で上記ポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法
(3)ポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチルピロリドンなどの溶液中で上記ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
【0070】
このようにして得られる、スルホン酸基含有共重合体中の、スルホン酸基量は、0.5〜3ミリグラム当量/g、好ましくは0.8〜2.8ミリグラム当量/gである。0.5ミリグラム当量/g未満では、プロトン伝導性が上がらず、一方3ミリグラム当量/gを超えると、親水性が向上し、水溶性ポリマーとなってしまうか、また水溶性に至らずとも耐久性が低下する。
【0071】
上記のスルホン酸基量は、モノマーの使用割合、種類、組合せを変えることにより、容易に調整することができる。
また、このようにして得られるスルホン酸基含有ポリアリーレン系共重合体のスルホン化前の前駆体のポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万であることが望ましい。
【0072】
本発明では、上述したような有機ポリマーを用いて、溶液流延法により有機ポリマー膜を製膜する。有機ポリマー膜は、有機ポリマーを、溶媒に分散あるいは溶解した有機ポリマー溶液を調製し、これを支持体上に流延して、適宜乾燥することにより製膜することができる。
製膜時の溶媒は後述する重合溶媒と同様のものを挙げることができ、これらの重合溶媒にさらに水やアルコールを混合した溶媒も使用することもできる。
【0073】
支持体上に流延された有機ポリマー溶液は、通常100〜200℃の温度で0.5〜3時間程度加熱することにより乾燥して製膜する。
次いで、製膜により得られた膜を、水に可溶で沸点が100℃以上の有機化合物の水溶液中に浸漬して平衡膨潤させる工程と、加熱処理により水を蒸発させて乾燥する工程とについて説明する。
【0074】
有機化合物の水溶液中に浸漬する、製膜により得られた膜は、溶液流延法により形成された有機ポリマー膜が完全には乾燥しない程度に予備乾燥して用いるのが望ましい。予備乾燥をした膜を用いると、短時間で膜を平衡膨潤させることができ好ましい。
本発明で用いる、有機化合物の水溶液を構成する有機化合物は、水に可溶でかつ沸点が100℃以上である。このような有機化合物は、水に可溶で沸点が100℃以上、好ましくは100〜250℃であって、弱塩基性を示す化合物であるのが好ましく、窒素を含有する化合物であるのがより好ましい。また、このような有機化合物は、有機ポリマー膜を浸漬する際に水溶液として用いることができればよく、液体であっても固体であってもよいが、有機化合物が常温で液体である場合には、取り扱いが容易であり、膜中に均質に分散しやすいためより好ましい。
【0075】
このような有機化合物としては、たとえば、N-メチルピロリドン(NMP;沸点202℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N'-ジメチルアセトアミド(沸点166℃)、2,6-ルチジン(沸点144℃)、トリメチルピリジン(沸点171℃)、キノリン(沸点237℃)、イソキノリン(沸点243℃)、テトラメチル尿素(沸点175℃)、ジメチルイミダゾリジノン(沸点226℃)などを好ましく用いることができる。これらのうち、N-メチルピロリドンなどの、常温で液体である有機化合物をより好ましく用いることができる。
【0076】
特に、膜を構成する有機ポリマーが、スルホン酸を導入したポリマーである場合には、弱塩基性を示す有機化合物を用い、該有機化合物を膜中に残存させることにより、高温条件下でのスルホン酸の分解脱離を抑制することができ、プロトン伝導膜の熱安定性を向上させることができる。
製膜により得られた有機ポリマー膜は、必要に応じて予備乾燥後、上述した有機化合物の水溶液に浸漬し、有機化合物と水とを平衡膨潤させて置換する。ここで、有機化合物の水溶液を、膜の種類、膜中に含有させる有機化合物の量に応じた所望の濃度に調製して用いることによって、その後の乾燥工程で、膜中に所望量の有機化合物を含有したプロトン伝導膜を得ることができる。プロトン伝導膜中の有機化合物量を制御するための有機化合物と水の組成は、有機ポリマー膜に対する有機化合物と水の親和性によって調整することができる。
【0077】
有機ポリマー膜と、有機化合物の水溶液との接触比は、膜1重量部に対し、10重量部以上の水、好ましくは30重量部以上の水と接触させるのがよい。有機化合物は、膜中に均質に保持されるのが望ましい。膜中の有機化合物の面内分布を小さく抑えるためには、浸漬する水を撹拌等によって均質化させるのは効果的である。
【0078】
浸漬の処理温度は5〜80℃の範囲であるのが望ましい。高温ほど、平衡に達するまでの時間は速くなるが、温度が高すぎると膨潤比が大きくなり、乾燥後に得られるフィルムの表面状態が荒れる懸念がある。通常、膨潤比と取り扱いやすさから10〜50℃の温度範囲がより好ましい。
浸漬時間は、初期の膜中に残存する有機化合物量や接触比、処理温度にもよるが、通常10分から240時間の範囲、好ましくは30分から100時間の範囲であるのが望ましい。
【0079】
このような浸漬の工程は、支持体から分離した有機ポリマー膜を1枚ずつ浸漬するバッチ方式で行ってもよいし、支持体(たとえばPET製の板フィルムなど)上に流延あるいは塗布された状態のままの有機ポリマー膜を連続的に浸漬して巻き取る連続方式で行ってもよい。
有機化合物水溶液を浸漬した膜は、加熱処理により水を蒸発させて乾燥する。この加熱処理による乾燥工程は、常法にしたがって行うことができる。
【0080】
本発明の方法により得られるプロトン伝導膜は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
このような本発明により得られたプロトン伝導膜は、膜中に所望量の有機化合物を含有しており、熱安定性に特に優れる。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便な方法で、伝導性および熱安定性に優れ、安定した加工性を有したプロトン伝導膜を製造することができる。本発明により得られたプロトン伝導膜は、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などの伝導膜として好適に使用することができる。
【0082】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、膜中の有機化合物(NMP;N-メチルピロリドン)量およびそのばらつきは、以下のようにして求めた。
膜中の有機化合物(NMP)量・ばらつき
プロトン伝導膜をDMSO-d6に溶解し、1H-NMR(DMSO-d6溶液)室温下128回積算測定する。膜を構成するポリマーのピーク強度と有機化合物(NMP:N-メチルピロリドン)のピーク強度の比から、ポリマー100重量部あたりの、膜中のNMPの重量を求めた。また、同時に浸せき処理を行った膜20枚について、膜中に残存するNMPの重量を求め、膜中のNMP量の平均値、最大値と最小値の差から膜中のNMP量のばらつきをそれぞれ求めた。
【0083】
【実施例1】
2,5−ジクロロ−4'−(4−フェノキシフェノキシベンゾフェノン)と4,4−ジクロロベンゾフェノンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから得られる4−クロロベンゾイル末端のオリゴマー(数平均分子量11200)から得られる共重合体(数平均分子量50000)をスルホン化し、スルホン酸当量2.08ミリ当量/gのスルホン化ポリマーを得た。
【0084】
このスルホン化ポリマーを、NMPとメタノールからなる混合溶媒(重量比1/1)に溶解して、該スルホン化ポリマーの15wt%溶液を調製し、これをPETフィルム上に流延し、150℃のオーブンで1時間乾燥させることにより厚さ40μmの膜を得た。この時の膜中のNMP量は14重量部であった。
次に、純水100kgにNMPを150g溶解したNMP水溶液に、A4サイズの膜20枚を1時間浸漬した。この後80℃のオーブンで乾燥し、プロトン伝導膜を得た。膜中のNMP量は2重量部であり、そのばらつきは0.1重量部と極めて小さかった。
【0085】
【実施例2】
実施例1において、浸漬時間を4時間としたことの他は、実施例1と同様にしてプロトン伝導膜を得た。
【0086】
【実施例3】
NMP水溶液として、純水100kgにNMPを1000g溶解した溶液を用いたことのほかは、実施例1と同様にしてプロトン伝導膜を得た。
【0087】
【実施例4】
実施例3において、浸漬時間を4時間としたことの他は、実施例3と同様にしてプロトン伝導膜を得た。
【0088】
【実施例5】
実施例1で用いたと同じスルホン化ポリマーを、NMPとメタノールからなる混合溶媒(重量比1/1)に溶解して、該スルホン化ポリマーの15wt%溶液を調製し、これをPETフィルム上に流延し、150℃のオーブンで1時間乾燥させることにより厚さ40μmの膜を得た。この時の膜中のNMP量は14重量部であった。
【0089】
次に、純粋100kgに、A4サイズの膜20枚を1時間浸漬し、80℃のオーブンで乾燥した。このとき膜中のNMP量の、20枚の平均値は1重量部であった。
次いで、この膜20枚を、純水100kgにNMPを1000g溶解したNMP水溶液に1時間浸漬し、80℃のオーブンで乾燥してプロトン伝導膜を得た。膜中のNMP量は6重量部であり、そのばらつきは0.1重量部と極めて小さかった。
【0090】
【比較例1】
NMPとメタノールからなる混合溶媒(重量比1/1)にEF314を15wt%溶解し、PETフィルム上に流延し、150℃のオーブンで1時間乾燥させることにより厚さ40μmの膜を得た。このとき膜中のNMP量は14重量部であった。
【0091】
次に純水100kgにA4サイズの膜20枚を0.05時間浸せきし、この後80℃のオーブンで乾燥して膜を得た。膜中のNMP量のばらつきは2.6重量部と極めて大きかった。
【0092】
【比較例2】
比較例1において、浸せき時間を1時間としたこと以外は、比較例1と同様にしてプロトン伝導膜を得た。膜中のNMP量のばらつきは0.4重量部と大きかった。
【0093】
【表1】
Claims (5)
- スルホン酸基を導入したポリマーである有機ポリマーを溶液流延法により製膜する工程と、
製膜により得られた膜を、水に可溶で沸点が100℃以上であり窒素を含有する有機化合物の水溶液中に浸漬して、平衡膨潤させる工程と、加熱処理により水を蒸発させて乾燥する工程とを有することを特徴とするプロトン伝導膜の製造方法。 - 有機ポリマーが、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
- プロトン伝導膜中の前記有機化合物含有量が、5重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
- 前記有機化合物が、常温で液体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導膜の製造方法。
- 前記有機化合物が、沸点が100〜250℃であって、弱塩基性を示す化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導膜の製造方法。
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