JP2008031463A - 高分子電解質エマルションおよびその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】[1]高分子電解質粒子が分散媒中に分散した高分子電解質エマルションであって、該高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いて得られる固形物のイオン交換容量が1.5〜3.0meq/gである、高分子電解質エマルション。
[2]体積平均粒径が100nm〜200μmである、[1]の高分子電解質エマルション。
[3]上記いずれかに記載の高分子電解質エマルションと触媒成分とを含む触媒組成物から得られる触媒層、該触媒層を有する膜電極接合体および固体高分子型燃料電池
【選択図】なし
Description
[1]高分子電解質粒子が分散媒中に分散してなる高分子電解質エマルションであって、該高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いて得られる固形物のイオン交換容量が1.5〜3.0meq/gであることを特徴とする高分子電解質エマルション
[2]高分子電解質粒子が分散媒中に分散してなる高分子電解質エマルションであって、該高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いて得られる固形物のイオン交換容量が1.8〜3.0meq/gであることを特徴とする高分子電解質エマルション
を提供するものである。
上記いずれかに記載の高分子電解質エマルションを用いて触媒層を形成すると、驚くべきことに、高分子電解質膜と触媒層の間の剥離が十分抑制され、極めて発電性能に優れるMEAが得られることを、本発明者らは見出した。
[3]動的光散乱法により求められる体積平均粒径が100nm〜200μmである、[1]または[2]に記載の高分子電解質エマルション
[4]上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算重量平均分子量が1000〜1000000の高分子電解質を含む、[1]〜[3]のいずれかの高分子電解質エマルション
[5]上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質が、芳香族炭化水素系高分子電解質を含む、[1]〜[4]のいずれかの高分子電解質エマルション
[6]上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質の良溶媒の含有量が、200ppm以下であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかの高分子電解質エマルション
[7]固体高分子型燃料電池の電極用に使用される、[1]〜[6]のいずれかの高分子電解質エマルション
[8][1]〜[6]のいずれかの高分子電解質エマルションと、触媒成分とを含む触媒組成物
[9][8]の触媒組成物からなる固体高分子型燃料電池用電極
[10][9]の固体高分子型燃料電池用電極を有する、膜電極接合体
[11][10]の膜電極接合体を有する、固体高分子型燃料電池
本発明者らは、MEAの触媒層に含まれる触媒機能を担う触媒物質以外の成分について詳細に検討したところ、この成分に基づくイオン交換容量(以下、「IEC」と呼ぶこともある)が、該触媒層と貼合されるイオン伝導膜もしくはガス拡散層との間の相互作用に影響することを見出し、さらに該成分が含まれるエマルションを用いて触媒層を形成すると、該触媒層は、イオン伝導膜あるいはガス拡散層との接合性が、極めて高くなることを見出した。そして、この成分のIECを、高分子電解質により制御してなる高分子電解質エマルションが極めて有効であるという知見を得た。
これらの知見に基づいて、高分子電解質エマルションを構成する固形物(ここで、固形物とは高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いた固形物質を意味する。)のイオン交換容量を詳細に検討した結果、このイオン交換容量が1.5〜3.0meq/gである高分子電解質エマルションを用いて得られる触媒層が、燃料電池を構成するイオン伝導膜もしくはガス拡散層との接合性が、特に良好となることを見出した。
ここで、IECは、当該高分子電解質エマルションを乾固させて揮発性成分を除去した後、得られた固形物の乾燥重量を測定し、かかる固形分にあるイオン交換基当量数を滴定法にて求め、[固形物のイオン交換基当量数]/[固形物の乾燥重量]で導出した値であり、高分子エマルションの分散体単位重量当たりのイオン交換基当量数で表されるものである。なお、本発明の高分子電解質エマルションは、後述するように、乳化剤や添加剤を含有することができるので、前記固形物には高分子電解質だけでなく、これら乳化剤や添加剤も含有するものである。高分子電解質エマルションから固形物を得るには、通常、当該高分子電解質エマルションに含有される揮発性物質の中で、最も高沸点成分を特定し、この成分の沸点よりも高温で乾燥処理を行って、揮発性物質を取り除けばよい。本発明においては、このような乾燥処理を行ったときの乾燥重量が恒量になったとき、得られた固形物質を上記固形物とする。
かかる高分子電解質の中でも、好適な高分子電解質に関しては後述する。
本発明の高分子電解質エマルションに含有される粒子は、動的光散乱法により求められた体積平均粒子径で表して、100nm〜200μmの範囲が好適である。かかる平均粒径としては、好ましくは、150nm〜10μmの範囲であり、さらに好ましくは、200nm〜1μmの範囲である。高分子電解質粒子の平均粒径が上記の範囲であると、得られる高分子電解質エマルションが実用的な貯蔵安定性を有するものとなり、被膜を形成させたとき、該被膜の均一性が比較的良好となる利点がある。なお、上記粒子とは、高分子電解質エマルションに粒子状に分散している物質の全てを指すものであり、高分子電解質を含む高分子電解質粒子はもとより、後述の添加剤を使用する場合は、該添加剤からなる粒子など、高分子電解質エマルションに粒子状に分散している全てを含む概念である。
上記高分子電解質エマルションに含まれる高分子電解質粒子を構成する高分子電解質は、その分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」と呼ぶ)によるポリスチレン換算の重量平均分子量で表して、1000〜1000000の高分子電解質を含むと好ましい。その下限としては5000以上、とりわけ10000以上が好ましく、その上限としては500000以下、とりわけ300000以下が好ましい。
該重量平均分子量が上記の範囲の高分子電解質からなる高分子電解質粒子を含むと、得られる触媒層の強度が良好となり、後述する高分子電解質エマルションを用いた触媒層の製造も容易となることから好ましい。
次に、本発明に適用する好適な高分子電解質について説明する。本発明の高分子電解質エマルションでは、酸性基を有する高分子電解質、塩基性基を有する高分子電解質いずれも適用することが可能であるが、酸性基を有する高分子電解質を用いると、一層発電性能に優れた燃料電池が得られるため、好ましい。
これら(C)または(D)として例示される樹脂も、上記と同様にしてスルホン化剤の使用量によってIECをコントロールすることができる。
なお、ブロック共重合体は、イオン交換基(スルホン酸基など)を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有するものであるが、これらのセグメントを一つずつ有するブロック共重合体であってもよく、いずれか一方のセグメントを2つ以上有するブロック共重合体であってもよく、両方のセグメントを2つ以上有するマルチブロック共重合体のいずれであってもよい。
本発明の高分子電解質エマルションは、上記の特徴をもつ高分子電解質が粒子状に、好ましくは上記の平均粒径を有する粒子として分散媒中に分散させることができる範囲において、その作製方法は特に制限はない。一つの例を挙げると、高分子電解質を、該高分子電解質の良溶媒に溶解して高分子電解質溶液を得、次いで、この高分子電解質溶液を、エマルションの分散媒たる別の溶媒(該高分子電解質の貧溶媒)に滴下して、高分子電解質粒子を該分散媒中で析出・分散せしめて高分子電解質分散液を得る作製方法が例示される。さらに得られた高分子電解質分散液中に含まれる該良溶媒を透析膜などの膜分離を用いて除去する工程や、さらに、高分子電解質分散液を蒸留などで濃縮して高分子電解質濃度を調整することが、好ましい作製方法として示すことができる。この方法により、あらゆる高分子電解質から、安定的な分散性を有する高分子電解質エマルションを作製することができる。なお、例示した作製方法において、「良溶媒」と「貧溶媒」の定義は、25℃における溶媒100gに溶解し得る高分子電解質の重量で規定されるものであり、良溶媒とは、0.1g以上の高分子電解質が可溶な溶媒であり、貧溶媒とは、高分子電解質が0.05g以下しか溶解し得ない溶媒である。高分子電解質エマルション中の良溶媒の残存量は、200ppm以下であると好ましく、100ppm以下であるとさらに好ましく、50ppm以下であると、とりわけ好ましく、高分子電解質エマルション中に、高分子電解質溶液を調製する工程にて使用した良溶媒が実質的に含まれない程度まで除去することが、特に好ましい。上記に例示した高分子電解質エマルションの作製方法においては、高分子電解質分散液を得る過程で、該高分子電解質分散液には必然的に良溶媒が含まれているので、その含有量を200ppm以下まで低減化させるのが必要である。この場合、高分子電解質分散液を、膜分離を用いて、良溶媒の含有量を低減化すれば、より低コストになるため好ましい。
上記貧溶媒は、適用する高分子電解質の分散安定性を妨げない限り、特に制限はなく、水、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサンやトルエンなどの非極性有機溶媒、もしくはこれらの混合物が用いられる。しかしながら、工業的に使用した場合の環境負荷低減の観点から、水もしくは水を主成分とした溶媒が好ましく用いられる。
本発明の高分子電解質エマルションの高分子電解質濃度は0.1〜10重量%である。ここで、高分子電解質濃度とは、適用した高分子電解質の総重量を、得られた高分子電解質エマルションの総重量で除した値で定義するものである。該高分子電解質濃度としては、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは1〜2重量%である。高分子電解質濃度が上記の範囲であれば、被膜を形成するのに多量の溶媒を必要としないことから効率的であり、塗布性にも優れるため、好ましい。
本発明の高分子電解質エマルションには、より良好な分散安定性を付与するために、本発明の企図する効果を損なわない範囲で、乳化剤を添加してもよい。乳化剤として用いられる界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル(塩)、アルキルアリール硫酸エステル(塩)、アルキルリン酸エステル(塩)、脂肪酸(塩)などのアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル四級アミン塩などのカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ブロック型ポリエーテルなどのノニオン系界面活性剤;カルボン酸型(例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型など)、スルホン酸型などの両性界面活性剤、商品名で、ラテムルS−180A〔花王社製〕、エレミノールJS−2〔三洋化成社製〕、アクアロンHS−10、KH−10〔第一工業製薬社製〕、アデカリアソープSE−10N、SR−10〔旭電化工業社製〕、Antox MS−60〔日本乳化剤社製〕などの反応性乳化剤などのいずれでも使用可能である。
かくして、本発明の高分子電解質エマルションを作製することができるが、本発明の高分子電解質エマルションは、無機あるいは有機の粒子、密着助剤、増感剤、レベリング剤、着色剤などその他の添加剤を含有していてもよい。
特に、本発明の高分子電解質エマルションから得られる被膜が、燃料電池の電極の構成成分として使用される場合には、燃料電池の動作中に、当該電極において過酸化物が生成し、この過酸化物が拡散しながらラジカル種に変化し、これが該電極と接合しているイオン伝導膜に移動して、該イオン伝導膜を構成しているイオン伝導材料(高分子電解質)を劣化させることがある。この場合、かかる不都合を回避するために、高分子電解質エマルションには、ラジカル耐性を付与し得る安定剤を添加することが好ましい。
本発明の高分子電解質エマルションは、固体高分子型燃料電池用の電極を製造するためのバインダー樹脂として好適であるが、固体高分子型燃料電池のイオン伝導膜や、その他コーティング材やバインダー樹脂など種々用途に応用することも可能である。また、このような用途に用いる際に、物性などを設計する観点から、他のポリマーを併用することもできる。該他のポリマーとしては、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、SBRやNBRなどのジエン系ポリマーなど公知のものが挙げられる。
本発明の高分子電解質エマルションは、さまざまなフィルム成形法にて、精度のよいフィルムを得ることができる。該フィルム成形法として例えば、キャストフィルム成形、スプレー塗布、刷毛塗り、ロールコーター、フローコーター、バーコーター、ディップコーターなどが挙げられ、これらのフィルム成形法を用いて、該高分子電解質エマルションを基材に塗工し、必要に応じて乾燥処理などを施すことでフィルムを成形することができる。塗布膜厚は、用途によって異なるが、乾燥膜厚で、通常、0.01〜1,000μm、好ましくは0.05〜500μmである。
さらに、高分子電解質エマルションの好適な用途である固体高分子型燃料電池の触媒層を製造する際には、イオン伝導膜に、該高分子電解質エマルションあるいは該高分子電解質エマルションと触媒成分とを混合してなる触媒インクを直接塗布することで、該イオン伝導膜と触媒層が接合された形態を製造することも可能であり、かかる用途の詳細については後述する。
次に、本発明の高分子電解質エマルションを用いて製造されるMEAについて説明する。MEAはイオン伝導膜と、該イオン伝導膜を挟持するようにしてなる一対の触媒層からなる。
さらに、MEAの両触媒層の外側にガスを効率的に触媒層に供給するためのガス拡散層を有する形態を膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と呼ぶ。
ここで、触媒層はイオン伝導膜もしくはガス拡散層に、触媒インクを塗布することで形成される。
このようなブロック共重合体としては、特開2001−250567号公報に記載のスルホン化された芳香族ポリマーブロックを有するブロック共重合体、特開2003−31232号公報、特開2004−359925号公報、特開2005−232439号公報、特開2003−113136号公報などの特許文献に記載の、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンを主鎖構造とするブロック共重合体を挙げることができる。
触媒インクは、触媒成分と、高分子電解質エマルションとを必須成分として含むものである。該触媒成分としては、従来の燃料電池において用いられているものをそのまま用いることができ、例えば、白金、白金−ルテニウム合金のような貴金属類や、錯体系電極触媒(例えば、高分子学会燃料電池材料研究会編、「燃料電池と高分子」、103〜112頁、共立出版、2005年11月10日発行に記載されている)などが挙げられる。さらに、触媒層での水素イオンと電子の輸送を容易にできるとの観点から、該触媒物質を表面に担持させた導電性材料を用いると好ましい。該導電性材料としては、カーボンブラックやカーボンナノチューブなどの導電性カーボン材料、酸化チタンなどのセラミック材料などが挙げられる。
触媒インクを塗布する方法としては特に制限は無く、ダイコーター、スクリーン印刷、スプレー法、インクジェット法などの既存の方法を使用することができる。
ここで、MEA20とガス拡散層16a,16bを備えたものは、膜−触媒層−ガス拡散層接合体と呼ばれ、通常MEGAと略される。
測定に供する高分子電解質を、溶液キャスト法を用いて膜とした後、加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて、該膜の乾燥重量を求めた。次いで、この膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、高分子電解質膜の乾燥重量と上記の中和に要した塩酸の量から、膜のイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
測定に供する高分子電解質エマルション約10mLを、ガラスシャーレの上に滴下し、温度95℃に設定されたオーブンを用いて、乾燥させた。得られた固形物を、さらに加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて、乾燥重量を求めた。次いで、この固形物を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、固形物の乾燥重量と上記の中和に要した塩酸の量から、高分子電解質のイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
GPC法による測定を行い、ポリスチレン換算を行うことによって重量平均分子量を算出された。なお、GPC法の測定条件は下記のとおりである。
GPC条件
・GPC測定装置 TOSOH社製 HLC−8220
・カラム Shodex社製 AT−80Mを2本直列に接続
・カラム温度 40℃
・移動相溶媒 ジメチルアセトアミド
(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
・溶媒流量 0.5mL/min
各エマルションの平均粒径は、動的光散乱法(濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000[大塚電子製])を用いて測定した。測定温度は30℃、積算時間は30min、測定に用いたレーザーの波長は660nmである。得られたデータを、上記装置付属の解析ソフトウェア(FPARシステム VERSION5.1.7.2)を用い、CONTIN法で解析することで散乱強度分布を得、最も頻度の高い粒径を平均粒径とした。
攪拌機を備えた反応器に、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン467gと30%発煙硫酸3500gとを加え、100℃で5時間反応させた。得られた反応混合物を冷却した後、大量の氷水中に加え、これに更に50%水酸化カリウム水溶液470mLを滴下した。
次いで、析出した固体を濾過して集め、エタノールで洗浄した後、乾燥させた。得られた固体を脱イオン水6.0Lに溶解させ、50%水酸化カリウム水溶液を加えて、pH7.5に調整した後、塩化カリウム460gを加えた。析出した固体を濾過して集め、エタノールで洗浄した後、乾燥させた。
その後、得られた固体をジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と呼ぶ)2.9Lに溶解させ、不溶の無機塩を濾過で除き、残渣をDMSO300mLでさらに洗浄した。得られた濾液に酢酸エチル/エタノール=24/1の溶液6.0Lを滴下し、析出した固体をメタノールで洗浄し、100℃で乾燥させて、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムの固体482gを得た。
(スルホン酸基を有する高分子化合物の合成)
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、製造例1で得られた4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム9.32重量部、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸カリウム4.20重量部、DMSO59.6重量部、及び、トルエン9.00重量部を加え、これらを室温にて撹拌しながらアルゴンガスを1時間バブリングした。
その後、得られた混合物に、炭酸カリウムを2.67重量部加え、140℃にて加熱撹拌して共沸脱水した。その後トルエンを留去しながら加熱を続け、スルホン酸基を有する高分子化合物のDMSO溶液を得た。総加熱時間は14時間であった。得られた溶液は室温にて放冷した。
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン8.32重量部、2,6−ジヒドロキシナフタレン5.36重量部、DMSO30.2重量部、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ)30.2重量部、及び、トルエン9.81重量部を加え、室温にて撹拌しながらアルゴンガスを1時間バブリングした。
その後、得られた混合物に、炭酸カリウムを5.09重量部加え、140℃にて加熱撹拌して共沸脱水した。その後トルエンを留去しながら加熱を続けた。総加熱時間は5時間であった。得られた溶液を室温にて放冷し、イオン交換基を実質的に有さない高分子化合物のNMP/DMSO混合溶液を得た。
得られたイオン交換基を実質的に有さない高分子化合物のNMP/DMSO混合溶液を攪拌しながら、これに、上記スルホン酸基を有する高分子化合物のDMSO溶液の全量とNMP80.4重量部、DMSO45.3重量部を加え、150℃にて40時間ブロック共重合反応を行った。
得られた反応液を大量の2N塩酸に滴下し、1時間浸漬した。その後、生成した沈殿物を濾別した後、再度2N塩酸に1時間浸漬した。得られた沈殿物を濾別、水洗した後、95℃の大量の熱水に1時間浸漬した。そして、この溶液を80℃で12時間乾燥させて、ブロック共重合体である高分子電解質(下式)を得た。これを高分子電解質Aとする。
なお、下記式における「block」の記載は、スルホン酸基を有するブロック及びイオン交換基を有さないブロックをそれぞれ一つ以上有することを表している。
得られた高分子電解質Aのイオン交換容量は1.9meq/gであり、重量平均分子量は4.2×105であった。なお、m、nは各ブロックを構成する括弧内の繰返し単位の平均重合度を表すものである。
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO600ml、トルエン200mL、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム26.5g(106.3mmol)、末端クロロ型であるポリエーテルスルホン(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.4×104、Mw=1.2×105)10.0g、2,2’−ビピリジル43.8g(280.2mmol)を入れて攪拌した。その後バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、60℃に冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)73.4g(266.9mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で5時間攪拌した。放冷後、反応液を大量の6mol/Lの塩酸に注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6mol/L塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液が中性になるまで水洗を行い、減圧乾燥することにより目的とする下記に示すポリアリーレン系ブロック共重合体16.3gを得た。これを高分子電解質Bとする。なお、下記式における「block」の記載は、スルホン酸基を有するブロック及びイオン交換基を有さないブロックをそれぞれ一つ以上有することを表している。
得られた高分子電解質Bのイオン交換容量は2.3meq/gであり、重量平均分子量は、2.7×105であった。なお、p、qは各ブロックを構成する括弧内の繰返し単位の平均重合度を表すものである。
4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム7.74g(15.77mmol)、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸カリウム3.00g(13.14mmol)炭酸カリウム1.91g(13.80mmol)を加え、DMSO49mLおよびトルエン35mLを添加した。その後バス温150℃で2時間トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水し、その後4時間保温攪拌することでオリゴマーaを得た。仕込み値から計算されるオリゴマーaの繰り返し重合度pの平均は5.5であった。
また別途、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル8.25g(40.78mmol)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン9.70g(38.16mmol)、炭酸カリウム6.20g(44.86mmol)を加え、ジメチルスルホキシド82mLおよびトルエン35mLを添加した。その後バス温150℃で2時間トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水し、その後4時間保温攪拌することでオリゴマーbを得た。仕込み値から計算されるオリゴマーbの繰り返し重合度qの平均は15.0であった。
続いて、反応液を室温まで十分に放冷した後、オリゴマーaの反応溶液をオリゴマーbの反応溶液に滴下して、オリゴマーaの反応マスをDMSO20mLで十分に共洗いし、その後内温150℃にて9時間保温攪拌した。反応液を放冷した後、大量の塩酸水に滴下し、生成した沈殿物を濾過回収した。さらに洗液が中性になるまで水で洗浄濾過を繰返した後、80℃の熱水で処理、その後80℃にて常圧乾燥し23.51gのブロック共重合体を得た。これを高分子電解質Cとする。なお、下記式における「block」の記載は、スルホン酸基を有するブロック及びイオン交換基を有さないブロックをそれぞれ一つ以上有することを表している。
得られた高分子電解質Cのイオン交換容量は1.5meq/gであり、重量平均分子量は、139000であった。なお、s、rは各ブロックを構成する括弧内の繰返し単位の平均重合度を表すものである。
ポリマーaの合成
減圧共沸蒸留装置を備えた2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、ビス−4−ヒドロキシジフェニルスルホン63.40g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル70.81g、N−メチル−2−ピロリドン955gを加え均一な溶液とした。その後、炭酸カリウム92.80gを添加し、NMPを留去しながら135℃〜150℃で4.5時間減圧脱水した。その後、ジクロロジフェニルスルホン200.10gを添加し180℃で21時間反応をおこなった。
反応終了後、反応溶液をメタノールに滴下し、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体は更にメタノール洗浄、水洗浄、熱メタノール洗浄を経て、乾燥し275.55gのポリマーaを得た。このポリマーaの構造を下記に示す。ポリマーaはGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が18000であり、NMR測定の積分値から求めたvとwの共重合モル比がw:v=7:3であった。なお、下記の「random」の表記は、下記ポリマーaを形成する構成単位が、ランダムに共重合されていることを示す。
2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、ニトロベンゼン1014.12g、ポリマーa80.00g、を加え均一な溶液とした。その後、N-ブロモスクシンイミドを50.25g添加し、15℃まで冷却した。続いて、95%濃硫酸106.42gを40分かけて滴下し15℃で6時間反応をおこなった。6時間後、15℃に冷却しながら10w%水酸化ナトリウム水溶液450.63g、チオ硫酸ナトリウム18.36gを添加した。その後、この溶液をメタノールに滴下し、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体はメタノール洗浄、水洗浄、再度メタノール洗浄を経て乾燥し、86.38gのポリマーbを得た。
減圧共沸蒸留装置を備えた2Lセパラブルフラスコを窒素置換し、ジメチルホルムアミド116.99g、ポリマーb80.07g、加え均一な溶液とした。その後、ジメチルホルムアミドを留去しながら5時間減圧脱水をおこなった。5時間後50℃まで冷却し、塩化ニッケルを41.87g添加して130℃まで昇温し、亜リン酸トリエチルを69.67g滴下して140℃〜145℃で2時間反応をおこなった。2時間後亜リン酸トリエチルをさらに17.30g添加し145℃〜150℃で3時間反応をおこなった。3時間後室温まで冷却し、水1161gとエタノール929gの混合溶液を滴下して、析出した固体をろ過、回収した。回収した固体に水を添加して十分に粉砕し、5重量%塩酸水溶液で洗浄、水洗浄を経て、86.83gのポリマーcを得た。
5Lセパラブルフラスコを窒素置換し、35重量%塩酸水溶液1200g、水550g、ポリマーc75.00g、を加え105℃〜110℃で15時間攪拌した。15時間後、室温まで冷却し水1500gを滴下した。その後、系中の固体をろ過、回収し、得た固体を水洗浄、熱水洗浄した。乾燥後目的とするポリマーdを72.51g得た。ポリマーdの元素分析から求めたリンの含有率は5.91%であり、元素分析値から計算したx(ビフェニリレンオキシ基1個当たりのホスホン酸基数)の値は1.6であった。
製造例2で得られた高分子電解質Aを、N−メチルピロリドンに13.5wt%の濃度となるように溶解させて、高分子電解質溶液を調製した。次いで、この高分子電解質溶液をガラス板上に滴下した。それから、ワイヤーコーターを用いて高分子電解質溶液をガラス板上に均一に塗り広げた。この際、0.25mmクリアランスのワイヤーコーターを用いて塗工厚みをコントロールした。塗布後、高分子電解質溶液を80℃で常圧乾燥した。 得られた膜を1mol/Lの塩酸に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、さらに常温乾燥することによって厚さ30μmのイオン伝導膜Aを得た。
特開2005−126684の実施例5に準じた方法により、下記化学式で示される高分子電解質Dを得た。得られた高分子電解質Dのイオン交換容量は1.4meq/gであり、重量平均分子量は1.0×105であった。なお、m、nは各ブロックを構成する括弧内の繰返し単位の平均重合度を表すものである。
製造例3で得られた高分子電解質B 0.9gと製造例5で得られたポリマーd0.1gを、N−メチルピロリドン(NMP)99gに溶解させ、高分子電解質溶液100gを作成した。この溶液を、900gの水に攪拌しながら徐々に滴下し、高分子電解質AとNMPと水の混合物を得た。この混合物を浸透膜に封入し、72時間流水で洗浄した。その後、この混合物を、エバポレータを用いて50gになるまで濃縮して高分子電解質エマルション1を得た。この高分子電解質エマルション1の平均粒径は101μmであった。また、高分子電解質エマルション1の固形物のイオン交換容量は2.4meq/gであり、高分子電解質エマルション1中のNMP量は4ppmであった。
得られた高分子電解質エマルション1を後述する密着性試験を行い、密着性を求めた。結果を表1に示す。
実施例1において高分子電解質Bを製造例4で得られた高分子電解質Cに置き換える以外は、同じ方法で高分子電解質エマルション2を得た。この高分子電解質エマルションの平均粒径は281nmであった。また、エマルション1の分散体のIECは1.5meq/gであり、高分子電解質エマルション2中のNMP量は10ppmであった。
得られた高分子電解質エマルション2を後述する密着性試験を行い、密着性を求めた。結果を表1に示す。
実施例1の高分子電解質エマルション1に替わって、市販の市販のナフィオン5重量%溶液(アルドリッチ製)を用い、後述する密着性試験を行い、密着性を求めた。結果を表1に示す。なお、このナフィオンはIEC 0.9meq/gの高分子電解質であり、本例で使用した溶液は、ナフィオン以外の固形物はほとんどないので、固形物のIECも0.9meq/gと見なすことができる。
実施例1において高分子電解質Bを製造例7で得られた高分子電解質Dに置き換える以外は、同じ方法で高分子電解質エマルション3を得た。この高分子電解質エマルションの平均粒径は467nmであった。また、高分子電解質エマルション3の固形物のイオン交換容量は1.4meq/gであり、高分子電解質エマルション3中のNMP量は4ppmであった。
得られた高分子電解質エマルション3を後述する密着性試験を行い、密着性を求めた。結果を表1に示す。
製造例6で得られたイオン伝導膜Aを密着性試験用の基材とした。さらに上記実施例1、2で得られた高分子電解質エマルション1、2を、密着性試験用基材とアルミ板(1mm)との接着剤として使用した。密着性試験用基材は幅20mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、長さ20mm分をのりしろとして、エマルションを接着剤としてアルミ板に接着した。使用するエマルション量はおよそ100μLである。80℃10分乾燥後、島津製作所(株)製オートグラフAGS−500で剥離速度300mm/分、剥離角度90度で剥離し、そのときの剥離荷重を求めた。剥離荷重の大きいものほど密着性が強いことを意味する。
Claims (11)
- 高分子電解質粒子が分散媒中に分散してなる高分子電解質エマルションであって、該高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いて得られる固形物のイオン交換容量が1.5〜3.0meq/gであることを特徴とする高分子電解質エマルション。
- 高分子電解質粒子が分散媒中に分散してなる高分子電解質エマルションであって、該高分子電解質エマルションから揮発性物質を取り除いて得られる固形物のイオン交換容量が1.8〜3.0meq/gであることを特徴とする高分子電解質エマルション。
- 動的光散乱法により求められる体積平均粒径が100nm〜200μmである、請求項1または2に記載の高分子電解質エマルション。
- 上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算重量平均分子量が1000〜1000000の高分子電解質を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質エマルション。
- 上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質が、芳香族炭化水素系高分子電解質を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質エマルション。
- 上記高分子電解質粒子を構成する高分子電解質の良溶媒の含有量が、200ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質エマルション。
- 固体高分子型燃料電池の電極用に使用される、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質エマルション。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質エマルションと、触媒成分とを含む触媒組成物。
- 請求項8記載の触媒組成物からなる固体高分子型燃料電池用電極。
- 請求項9記載の固体高分子型燃料電池用電極を有する、膜電極接合体。
- 請求項9記載の膜電極接合体を有する、固体高分子型燃料電池。
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