JP3393277B2 - 球状六チタン酸アルカリ金属粉末およびその製造方法 - Google Patents

球状六チタン酸アルカリ金属粉末およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩擦材,強化プラ
スチックの補強材,樹脂塗料充填材等として有用な、耐
摩耗性,補強性,耐熱性等にすぐれた六チタン酸アルカ
リ金属の球状粒子からなる粉末およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】チタン酸アルカリ金属は、一般式:M2
Tin 2n+1〔式中,Mはアルカリ金属,nは2〜8〕
で示される合成無機化合物である。なかでも、トンネル
型結晶構造を有する六チタン酸アルカリ金属(M2 Ti
6 13)は、耐熱性,耐摩耗性,補強性,化学的安定性
等にすぐれ、アスベスト繊維の代替材として各種分野で
の工学的応用が期待され、例えば自動車用ブレーキ装置
の摩擦材料,強化プラスチック用補強材,樹脂塗料用充
填材,断熱材,耐熱材等として実用化が試みられてい
る。
【0003】チタン酸アルカリ金属の代表的な合成法の
一つとして焼成法が知られている。焼成法によれば、二
酸化チタン(TiO2 )または加熱によりTiO2 を生
成するチタン化合物と、酸化アルカリ金属(M2 O)ま
たは加熱によりM2 Oを生成するアルカリ金属化合物と
を所定の比率に混合し、焼成処理することにより、反応
生成物としてチタン酸アルカリ金属が生成する。通常チ
タン酸アルカリ金属の粉末は、微細単結晶繊維(ウィス
カー)または多結晶繊維として製造されているが、これ
と異なって粉末の形態を球状粒子とすることにより、粉
末の流動性や他材種に配合する場合の分散性等を高め、
複合成形品の均質性・寸法精度等を改善すること等も提
案されている(特開平7-53214 号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、球形状を有
するチタン酸アルカリ金属粉末について、球状粒子を構
成するチタン酸アルカリ金属の結晶粒同士の結合を強化
することにより、球形態を安定化し、その材料特性をよ
り一層高めることを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の球状六チタン酸
アルカリ金属粉末は、TiO 又は加熱によりTiO
を生成するチタン化合物と、M O[Mはアルカリ金属
元素]又は加熱によりM Oを生成するアルカリ金属化
合物と、SiO または加熱によりSiO を生成する
珪素化合物との混合粉末からなる球状粒子の造粒粉を焼
成処理することにより製造され、六チタン酸アルカリ金
属[MTi13](Mはアルカリ金属)の結晶粒
同士がアルカリ金属珪酸塩[MSiO]を介して結
合した球状粒子からなり、MTi13/MSi
(モル比)は1/0.02〜1/0.5であること
を特徴としている。本発明の上記粉末は、TiOまた
は加熱によりTiOを生成するチタン化合物、M
[式中、Mはアルカリ金属元素]又は加熱によりM
を生成するアルカリ金属化合物、およびSiOまたは
加熱によりSiOを生成する珪素化合物を、TiO
/MO/SiOのモル比が、6/(1+x)/x[但
し、xは0.02〜0.5]となる割合に混合し、その
混合粉末の造粒粉を、700〜1300℃で焼成処理す
ることにより製造される。
【0006】本発明の粉末の球状粒子を構成する六チタ
ン酸アルカリ金属の結晶粒同士は強固に結合し、高い圧
壊強度を有する。これは、焼成過程で生成するアルカリ
金属珪酸塩(M2 SiO3 )が焼結助剤として六チタン
酸アルカリ金属結晶粒同士の結合を促進し、該珪酸塩は
いわばバインダの役目をなしていると考えられる。本発
明の球状六チタン酸アルカリ金属粉末について、M2
6 13/M2 SiO3 の量比を、1/0.02〜1/
0.5(モル比)の範囲に限定しているのは、1/0.
02から外れると、珪酸塩量の不足により、球状粒子を
構成する六チタン酸アルカリ金属の結晶粒間の結合強度
が低下し、他方1/0.5から逸脱すると、珪酸塩量が
過剰となり、六チタン酸アルカリ金属の材料特性が弱め
られるからである。上記量比(M2 Ti6 13/M2
iO3 )は、原料粉末混合物を構成するチタン化合物,
アルカリ金属化合物および珪素化合物の配合量比により
高低任意に制御される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の複合化合物粉末は、チタ
ン化合物とアルカリ金属化合物と珪素化合物とを、Ti
2 /M2 O/SiO2 のモル比が、6/(1+x)/
x〔但し、x=0.02〜0.5〕となるように配合
し、これを造粒し、焼成処理することにより製造され
る。その焼成処理において、原料粉末混合物中のTiO
2 とM2 Oは、TiO2 /M2 O=6の比率(モル比)
で反応して六チタン酸アルカリ金属〔M2 Ti6 13
の結晶を生成し、残余のM2 OはSiO2 との反応によ
り、アルカリ金属珪酸塩(M2 SiO3 )を生成する。
従って、原料粉末混合物におけるTiO2 /M2 O/S
iO2 のモル比を、上記所定の範囲に調整しておくこと
により、生成する六チタン酸アルカリ金属とアルカリ金
属珪酸塩の量比(M2Ti6 13/M2 SiO3 )は、
1/0.02〜1/0.5(モル比)に制御される。そ
の珪酸塩は、焼結助剤として六チタン酸アルカリ金属の
結晶粒同士の結合を促進する。
【0008】本発明の複合粉末を製造するための焼成原
料粉末の調製に使用されるチタン化合物は、精製アナタ
ーゼ粉末,精製ルチル粉末等であり、またハロゲン化
物,硫酸塩,硝酸塩,水和物等を使用することもでき
る。また、アルカリ金属(Na,K,Rb,Li等)の
化合物は、酸化物,炭酸塩等が好ましく、この他に,硫
酸塩,硝酸塩,ハロゲン化合物,水酸化物等を使用する
こともできる。これらの粉末は、比較的微細な粒径、例
えば約1μm以下の微細粒度を有するものが好ましく使
用される。上記チタン化合物およびアルカリ金属化合物
に配合される珪素化合物は、酸化物,炭酸塩等であり、
この他に硫酸塩,硝酸塩,ハロゲン化合物,水酸化物等
を使用することもできる。
【0009】上記チタン化合物,アルカリ金属化合物お
よび珪素化合物からなる原料粉末混合物は、これに適量
の水(例えば、粉末重量の約1〜3倍量)を加えてスラ
リーとし、湿式噴霧乾燥処理に付し、乾燥物として適度
の粒度を有する造粒粉を得、ついでこれを焼成処理す
る。焼成処理は、温度約700〜1300℃で行なうこ
とを要する。700℃を下限とするのは、それより低い
温度域では、六チタン酸アルカリ金属結晶の生成反応が
生起しないからである。好ましくは、800℃以上の温
度が適用される。1300℃を上限とするのは、それを
越えると、生成した六チタン酸アルカリ金属の結晶の溶
融を生じ、結果として製品粉末の球状粒子形態が損なわ
れるからである。
【0010】焼成処理の後、焼成反応生成物を、振動ふ
るい等の軽度の解砕処理に付すことにより、六チタン酸
アルカリ金属の結晶粒がアルカリ金属珪酸塩により強固
に結合した球状粒子からなる粉末が収得される。得られ
る粉末は、原料粉末混合物の造粒粉の粒子形態をほぼそ
のまま受け継ぎ、真球に近似した球形状を有している。
球状粒子からなる粉末の粒度は、粉末の用途・使用態様
等により異なるが、例えば約10〜100μm程度の粒
径のものが好適に使用される。その粒径は上記のように
原料粉末の造粒粉の粒径により制御することができる。
【0011】
【実施例】二酸化チタン粉末(精製アナターゼ粉末),
アルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム,炭酸ナトリウム)
の粉末,およびシリカ粉末を混合して出発原料とする。
なお、粉末粒度は、二酸化チタン化合物粉末:1μm以
下、アルカリ金属炭酸塩粉末:1μm以下,シリカ粉
末:10μm以下である。上記粉末混合物に、2倍量
(重量比)の水を添加してスラリーを調製した後、湿式
噴霧乾燥機(スプレードライヤー)で処理して造粒粉
(平均粒径:約45μm)を得る。造粒粉をアルミナる
つぼに入れ、電気炉内で焼成処理する(処理温度: 炭酸
カリウム使用の場合 1000 ℃, 炭酸ナトリウム使用の場
合 1100 ℃, 処理時間: いずれも2Hr)。焼成処理後、
反応生成物を振動ふるいにかけて解砕された粉末を得
る。
【0012】表1に、原料粉末混合物の配合組成、およ
び得られた粉末のチタン酸アルカリ金属結晶相,粒径を
示す。表中、No. 1 〜3は発明例、No.11 および12は比
較例であり、比較例No.11 は、珪素化合物の配合が省略
された例、No.12 は、珪素化合物を配合しているが、配
合量が不足している例である。得られた粉末は、走査型
電子顕微鏡により、造粒粉の粒子形態と同様の真球に近
似した球状粒子であることが観察される。その粒子の平
均粒径は約40μmである。各供試粉末を圧縮試験(島
津製作所製「微小圧縮試験機MCTM」による)に付し、そ
れぞれの圧壊強度を測定し、表1の右欄に示す結果を得
た。表中、「圧壊強度(比)」欄の数値は、比較例No.1
1 (SiO2 分の配合なし)の強度を1とする比であ
る。
【0013】表1に示したように、適量のSiO2 分を
原料粉末に配合して製造された発明例の球状粉末(No.1
〜3) は、SiO2 分を含有しない比較例(No.11 )の
粉末に比し、圧壊強度が高く、球状粒子を構成する六チ
タン酸アルカリ金属結晶同士が高い結合強度を有してい
る。なお、比較例No.12 は、SiO2 分が配合されてい
るが、その量が不足しているため、圧壊強度は、比較例
No.11 のそれと同じレベルにとどまっている。
【0014】
【表1】
【0015】
【発明の効果】本発明の球状六チタン酸アルカリ金属粉
末は、その球状粒子を構成する六チタン酸アルカリ金属
結晶粒の結合強度が高く、ハンドリング工程での解砕・
粉化が軽減緩和され、また樹脂等の他材種に配合して複
合材料を構成する場合においては、その球状粒子形態が
安定に維持されることにより所期の配合効果が確保さ
れ、例えば自動車用ブレーキパッド等の制動部材の用途
において、改良された摩擦摩耗特性を得ることを可能と
するものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】TiO 又は加熱によりTiO を生成す
    るチタン化合物と、M O[Mはアルカリ金属元素]又
    は加熱によりM Oを生成するアルカリ金属化合物と、
    SiO または加熱によりSiO を生成する珪素化合
    物との混合粉末からなる球状粒子の造粒粉を焼成処理す
    ることにより製造される、六チタン酸アルカリ金属[M
    Ti13](Mはアルカリ金属)の結晶粒同士が
    アルカリ金属珪酸塩[MSiO]を介して結合した
    球状粒子からなり、MTi13/MSiO
    (モル比)は1/0.02〜1/0.5であることを
    特徴とする球状六チタン酸アルカリ金属粉末。
  2. 【請求項2】 TiO2 または加熱によりTiO2 を生
    成するチタン化合物、M2 O〔式中,Mはアルカリ金属
    元素〕または加熱によりM2 Oを生成するアルカリ金属
    化合物、およびSiO2 または加熱によりSiO2 を生
    成する珪素化合物を、TiO2 /M2 O/SiO2 のモ
    ル比が、6/(1+x)/x〔但し、xは0.02〜
    0.5〕となる割合に混合し、その混合粉末の造粒粉
    を、700〜1300℃で焼成処理することを特徴とす
    る請求項1に記載の球状六チタン酸アルカリ金属粉末の
    製造方法。
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