JPH09278440A - 繊維状無機化合物の製造方法 - Google Patents
繊維状無機化合物の製造方法Info
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- JPH09278440A JPH09278440A JP8682296A JP8682296A JPH09278440A JP H09278440 A JPH09278440 A JP H09278440A JP 8682296 A JP8682296 A JP 8682296A JP 8682296 A JP8682296 A JP 8682296A JP H09278440 A JPH09278440 A JP H09278440A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】六チタン酸カリウム繊維のトンネル型結晶構造
を有し、摩擦摩耗材,樹脂や金属の補強繊維,塗料充填
材等として有用な繊維状無機化合物の溶融法による製造
方法を提供する。 【解決手段】カリウム、A元素、チタン、及びB元素
〔但し、Aはアルカリ土類金属,BはMg,二価遷移金
属元素,Al,Fe,Cr,Gaから選ばれる元素〕の
酸化物または加熱によりこれらの酸化物を生成する化合
物からなる混合物を加熱溶融し、溶融物を冷却凝固し
て、式: K2-2X' AX'Ti2-Y'BY'O5 〔 0.05 ≦X '
≦0.3, 0.05 ≦Y ' ≦0.1 〕で示される層状結晶構造の
チタン酸金属繊維からなる塊状物を得、これを酸水溶液
で処理して、式: K2-2XAX Ti6-Y B Y O13〔 0.15
≦X ≦0.9,0.15≦Y ≦0.3 〕で示される繊維状チタン酸
金属の水和物に組成変換し、ついで熱処理により、繊維
の結晶構造をトンネル型構造に変換する。
を有し、摩擦摩耗材,樹脂や金属の補強繊維,塗料充填
材等として有用な繊維状無機化合物の溶融法による製造
方法を提供する。 【解決手段】カリウム、A元素、チタン、及びB元素
〔但し、Aはアルカリ土類金属,BはMg,二価遷移金
属元素,Al,Fe,Cr,Gaから選ばれる元素〕の
酸化物または加熱によりこれらの酸化物を生成する化合
物からなる混合物を加熱溶融し、溶融物を冷却凝固し
て、式: K2-2X' AX'Ti2-Y'BY'O5 〔 0.05 ≦X '
≦0.3, 0.05 ≦Y ' ≦0.1 〕で示される層状結晶構造の
チタン酸金属繊維からなる塊状物を得、これを酸水溶液
で処理して、式: K2-2XAX Ti6-Y B Y O13〔 0.15
≦X ≦0.9,0.15≦Y ≦0.3 〕で示される繊維状チタン酸
金属の水和物に組成変換し、ついで熱処理により、繊維
の結晶構造をトンネル型構造に変換する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、六チタン酸カリウ
ム繊維のトンネル型結晶構造を有する、耐熱性,断熱性
, 耐摩耗性, 補強性, 耐化学性等にすぐれた繊維状無機
化合物の製造方法に関する。
ム繊維のトンネル型結晶構造を有する、耐熱性,断熱性
, 耐摩耗性, 補強性, 耐化学性等にすぐれた繊維状無機
化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】六チタン酸カリウム繊維〔K2 Ti6 O
13〕は、TiO6 八面体の連鎖からなるトンネル枠内に
Kイオンが配位したトンネル型結晶構造を有し、その結
晶構造の安定性により、耐熱性,断熱性,耐摩耗性,補
強性,耐化学性等の良好な特性を備えた繊維であり、耐
熱・断熱材,樹脂・金属等の補強材,摩擦摩耗部材の基
材繊維,塗料の充填材等として各種分野での工学的応用
が試みられている。六チタン酸カリウム繊維の工業的製
造法の一つとして知られる溶融法によれば、酸化チタン
(TiO2 )および酸化カリウム(K2 O)、または加
熱によりこれらの酸化物を生成する化合物を、「酸化チ
タン/酸化カリウム」のモル比が約1〜2.7となる割
合に配合した混合物を加熱溶融する工程、溶融物を冷却
凝固することにより、二チタン酸カリウム繊維〔K2 T
i4 O5〕(このものは、TiO5 三角両錐体の連鎖が
積層し、層間にKイオンが配位した層状の結晶構造を有
する)からなる繊維塊を得る工程、上記繊維塊を水,酸
水溶液で処理して繊維中のKイオンを溶出することによ
り、二チタン酸カリウム繊維を、六チタン酸カリウムに
相当する化学組成を有する水和チタン酸カリウム繊維に
組成変換し、ついで熱処理を施してその結晶構造をトン
ネル型構造に変換する工程、を経て製造される。
13〕は、TiO6 八面体の連鎖からなるトンネル枠内に
Kイオンが配位したトンネル型結晶構造を有し、その結
晶構造の安定性により、耐熱性,断熱性,耐摩耗性,補
強性,耐化学性等の良好な特性を備えた繊維であり、耐
熱・断熱材,樹脂・金属等の補強材,摩擦摩耗部材の基
材繊維,塗料の充填材等として各種分野での工学的応用
が試みられている。六チタン酸カリウム繊維の工業的製
造法の一つとして知られる溶融法によれば、酸化チタン
(TiO2 )および酸化カリウム(K2 O)、または加
熱によりこれらの酸化物を生成する化合物を、「酸化チ
タン/酸化カリウム」のモル比が約1〜2.7となる割
合に配合した混合物を加熱溶融する工程、溶融物を冷却
凝固することにより、二チタン酸カリウム繊維〔K2 T
i4 O5〕(このものは、TiO5 三角両錐体の連鎖が
積層し、層間にKイオンが配位した層状の結晶構造を有
する)からなる繊維塊を得る工程、上記繊維塊を水,酸
水溶液で処理して繊維中のKイオンを溶出することによ
り、二チタン酸カリウム繊維を、六チタン酸カリウムに
相当する化学組成を有する水和チタン酸カリウム繊維に
組成変換し、ついで熱処理を施してその結晶構造をトン
ネル型構造に変換する工程、を経て製造される。
【0003】上記チタン化合物繊維の特性および製造法
の改良について種々の工夫がなされ、例えば、溶融法に
おいて、カリウム化合物,チタン化合物、およびアルカ
リ土類金属化合物を一定の割合に配合した混合物を出発
原料とし、製品繊維として、六チタン酸カリウムのKイ
オンの一部がアルカリ土類金属で置換された組成を有す
るトンネル型構造の繊維状化合物繊維を得る繊維製造法
(特開平7−242421号公報)、また溶融法と並ぶ
工業的な製造法として知られるフラックス法を適用し、
カリウム化合物とチタン化合物とバリウム化合物の混合
物に、酸化カリウムとと酸化モリブデンをフラックス成
分として配合して出発原料とし、加熱融解した後、一定
の徐冷操作を施し、溶解−析出反応により四チタン酸カ
リウム型構造の繊維状物を得、繊維状物をフラックスか
ら分離回収し、ついでKイオンの溶出処理、および結晶
構造を変換する熱処理工程を経て、トンネル型構造の六
チタン酸カリウムバリウム繊維を得る繊維製造法(特開
平5−43236号公報)等が提案されている。
の改良について種々の工夫がなされ、例えば、溶融法に
おいて、カリウム化合物,チタン化合物、およびアルカ
リ土類金属化合物を一定の割合に配合した混合物を出発
原料とし、製品繊維として、六チタン酸カリウムのKイ
オンの一部がアルカリ土類金属で置換された組成を有す
るトンネル型構造の繊維状化合物繊維を得る繊維製造法
(特開平7−242421号公報)、また溶融法と並ぶ
工業的な製造法として知られるフラックス法を適用し、
カリウム化合物とチタン化合物とバリウム化合物の混合
物に、酸化カリウムとと酸化モリブデンをフラックス成
分として配合して出発原料とし、加熱融解した後、一定
の徐冷操作を施し、溶解−析出反応により四チタン酸カ
リウム型構造の繊維状物を得、繊維状物をフラックスか
ら分離回収し、ついでKイオンの溶出処理、および結晶
構造を変換する熱処理工程を経て、トンネル型構造の六
チタン酸カリウムバリウム繊維を得る繊維製造法(特開
平5−43236号公報)等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、六チタン酸
カリウム結晶のトンネル型構造を有し、かつKイオンの
一部およびトンネル枠を構成するTiイオンの一部がそ
れぞれ他の元素で置換された組成を有し、例えば摩擦摩
耗部材の基材繊維等として有用な改良された特性を有す
る繊維状化合物の溶融法による製造方法を提供するもの
である。
カリウム結晶のトンネル型構造を有し、かつKイオンの
一部およびトンネル枠を構成するTiイオンの一部がそ
れぞれ他の元素で置換された組成を有し、例えば摩擦摩
耗部材の基材繊維等として有用な改良された特性を有す
る繊維状化合物の溶融法による製造方法を提供するもの
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の繊維状無機化合
物の製造方法は、カリウム(K)、A元素、チタン(T
i)、およびB元素〔但し、Aはアルカリ土類金属,B
は、Mg,二価遷移金属元素,Al,Fe,Cr,Ga
から選ばれる元素〕の酸化物または加熱によりこれらの
酸化物を生成する化合物からなる原料混合物を加熱溶融
し、溶融物を冷却凝固して、下式〔1〕 K2-2X' AX'Ti2-Y'BY'O5 … 〔1〕 〔式中,X ' は 0.05 〜0.3 、Y ' は 0.05 〜0.1 〕で
示される、二チタン酸カリウム型結晶構造(層状構造)
を有するチタン酸金属繊維からなる繊維塊を得た後、繊
維塊を酸性液で処理して、可溶成分を溶出すると共に解
繊することにより、繊維を、下式〔2〕 K2-2XAX Ti6-Y BY O13 … 〔2〕 〔式中,Xは 0.15 〜0.9 、Y は 0.15 〜0.3 〕で示さ
れるチタン酸金属の多結晶繊維の水和物に組成変換し、
ついで上記水和物を、熱処理に付して繊維の結晶構造を
六チタン酸カリウム型結晶構造(トンネル型構造)に変
換することを特徴としている。
物の製造方法は、カリウム(K)、A元素、チタン(T
i)、およびB元素〔但し、Aはアルカリ土類金属,B
は、Mg,二価遷移金属元素,Al,Fe,Cr,Ga
から選ばれる元素〕の酸化物または加熱によりこれらの
酸化物を生成する化合物からなる原料混合物を加熱溶融
し、溶融物を冷却凝固して、下式〔1〕 K2-2X' AX'Ti2-Y'BY'O5 … 〔1〕 〔式中,X ' は 0.05 〜0.3 、Y ' は 0.05 〜0.1 〕で
示される、二チタン酸カリウム型結晶構造(層状構造)
を有するチタン酸金属繊維からなる繊維塊を得た後、繊
維塊を酸性液で処理して、可溶成分を溶出すると共に解
繊することにより、繊維を、下式〔2〕 K2-2XAX Ti6-Y BY O13 … 〔2〕 〔式中,Xは 0.15 〜0.9 、Y は 0.15 〜0.3 〕で示さ
れるチタン酸金属の多結晶繊維の水和物に組成変換し、
ついで上記水和物を、熱処理に付して繊維の結晶構造を
六チタン酸カリウム型結晶構造(トンネル型構造)に変
換することを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明により製造される繊維状無
機化合物は、前記〔2〕式で示される化学組成と、六チ
タン酸カリウム繊維のトンネル型結晶構造を有する。
〔2〕式におけるXを0.15〜0.9の範囲に規定し
たのは、0.15に満たないと、KイオンのAイオンに
よる置換効果に乏しく、他方0.9を超えると、トンネ
ル構造の形成が困難となるからであり、またYを0.1
5〜0.3の範囲に規定したのは、0.15に満たない
と、TiイオンのB元素イオンによる置換効果に乏し
く、他方0.3を超えると、トンネル型結晶構造の形成
が困難となるからである。
機化合物は、前記〔2〕式で示される化学組成と、六チ
タン酸カリウム繊維のトンネル型結晶構造を有する。
〔2〕式におけるXを0.15〜0.9の範囲に規定し
たのは、0.15に満たないと、KイオンのAイオンに
よる置換効果に乏しく、他方0.9を超えると、トンネ
ル構造の形成が困難となるからであり、またYを0.1
5〜0.3の範囲に規定したのは、0.15に満たない
と、TiイオンのB元素イオンによる置換効果に乏し
く、他方0.3を超えると、トンネル型結晶構造の形成
が困難となるからである。
【0007】本発明による繊維状無機化合物は、Kイオ
ンの一部が、A元素で置換されていることにより、六チ
タン酸カリウム繊維で問題となる「アルカリアタック」
(樹脂や金属の補強材・充填材等として使用した場合に
おいて、繊維中のKイオンが溶出することに起因して、
樹脂や金属の変質劣化を生じる現象)が軽減緩和され、
繊維の補強材・充填材としての機能が高められる。ま
た、Tiイオンの一部がB元素で置換されていることに
より、繊維の耐摩耗性,強度等が高められ、例えば摩擦
摩耗材の基材繊維として適用した場合における摩擦摩耗
材の摩擦係数,耐摩耗性等が高められる。
ンの一部が、A元素で置換されていることにより、六チ
タン酸カリウム繊維で問題となる「アルカリアタック」
(樹脂や金属の補強材・充填材等として使用した場合に
おいて、繊維中のKイオンが溶出することに起因して、
樹脂や金属の変質劣化を生じる現象)が軽減緩和され、
繊維の補強材・充填材としての機能が高められる。ま
た、Tiイオンの一部がB元素で置換されていることに
より、繊維の耐摩耗性,強度等が高められ、例えば摩擦
摩耗材の基材繊維として適用した場合における摩擦摩耗
材の摩擦係数,耐摩耗性等が高められる。
【0008】本発明の繊維状無機化合物は、出発原料の
調製において、酸化カリウムおよび酸化チタン(または
加熱によりこれらの酸化物を生成する化合物)に、A元
素の酸化物およびB元素の酸化物(または加熱によりこ
れらの酸化物を生成する化合物)が配合される点を除い
て、六チタン酸カリウム繊維の溶融法による製造工程と
同じように、加熱溶融物を冷却凝固させて初生相繊維を
形成し、その繊維塊から可溶成分を溶出すると共に解繊
して、組成変換された水和物からなる多結晶繊維を回収
し、ついでその水和物の結晶構造をトンネル型構造に変
換する熱処理工程を順次経由することにより製造され
る。
調製において、酸化カリウムおよび酸化チタン(または
加熱によりこれらの酸化物を生成する化合物)に、A元
素の酸化物およびB元素の酸化物(または加熱によりこ
れらの酸化物を生成する化合物)が配合される点を除い
て、六チタン酸カリウム繊維の溶融法による製造工程と
同じように、加熱溶融物を冷却凝固させて初生相繊維を
形成し、その繊維塊から可溶成分を溶出すると共に解繊
して、組成変換された水和物からなる多結晶繊維を回収
し、ついでその水和物の結晶構造をトンネル型構造に変
換する熱処理工程を順次経由することにより製造され
る。
【0009】以下、本発明について工程順に説明する。 〔原料混合物の調製〕原料混合物を調製するための、加
熱により酸化カリウム(K2 O)を生成するカリウム化
合物の好ましい例として炭酸塩が挙げられる。また、硝
酸塩,ハロゲン化物(塩化物,弗化物,沃化物等)、水
酸化物等を使用することもできる。A元素(アルカリ土
類金属)の酸化物は、酸化カルシウム(CaO),酸化
バリウム(BaO)等であり、加熱によりその酸化物を
生成する化合物として、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化合
物(塩化物,弗化物,沃化物等)、水酸化物等が挙げら
れる。酸化チタン(TiO2 )は、精製アナターゼ,精
製ルチル等であり、加熱により酸化チタンを生成するチ
タン化合物として、硫酸塩,ハロゲン化合物(塩化物,
弗化物,沃化物等),水和物等を使用することができ
る。加熱によりB元素(Mg,二価遷移金属元素,A
l,Fe,Cr,Ga)の酸化物を生成する化合物は、
例えば炭酸塩,硫酸塩,硝酸塩,水酸化物,ハロゲン化
合物(塩化物,弗化物,沃化物等)等が使用される。
熱により酸化カリウム(K2 O)を生成するカリウム化
合物の好ましい例として炭酸塩が挙げられる。また、硝
酸塩,ハロゲン化物(塩化物,弗化物,沃化物等)、水
酸化物等を使用することもできる。A元素(アルカリ土
類金属)の酸化物は、酸化カルシウム(CaO),酸化
バリウム(BaO)等であり、加熱によりその酸化物を
生成する化合物として、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化合
物(塩化物,弗化物,沃化物等)、水酸化物等が挙げら
れる。酸化チタン(TiO2 )は、精製アナターゼ,精
製ルチル等であり、加熱により酸化チタンを生成するチ
タン化合物として、硫酸塩,ハロゲン化合物(塩化物,
弗化物,沃化物等),水和物等を使用することができ
る。加熱によりB元素(Mg,二価遷移金属元素,A
l,Fe,Cr,Ga)の酸化物を生成する化合物は、
例えば炭酸塩,硫酸塩,硝酸塩,水酸化物,ハロゲン化
合物(塩化物,弗化物,沃化物等)等が使用される。
【0010】原料混合物の加熱溶融物を冷却凝固して、
前記〔1〕式で示される二チタン酸カリウム型構造の繊
維を効率よく生成させるには、原料混合物の調製におい
て、「酸化カリウム/A元素酸化物」のモル比は、(1
−X’)/X’(=2.33〜19.0)、「酸化チタ
ン/B元素酸化物」のモル比は、Bが2価元素の場合、
(2−Y’)/2Y’(=9.5〜19.5)、Bが3
価元素の場合、(2−Y’)/Y’(=19.0〜3
9.0)、〔酸化チタンのモル数+B元素酸化物のモル
数〕/〔酸化カリウムのモル数+A元素酸化物のモル
数〕の比が、1〜2.7となるように、各化合物の配合
割合を調整するのがよい。
前記〔1〕式で示される二チタン酸カリウム型構造の繊
維を効率よく生成させるには、原料混合物の調製におい
て、「酸化カリウム/A元素酸化物」のモル比は、(1
−X’)/X’(=2.33〜19.0)、「酸化チタ
ン/B元素酸化物」のモル比は、Bが2価元素の場合、
(2−Y’)/2Y’(=9.5〜19.5)、Bが3
価元素の場合、(2−Y’)/Y’(=19.0〜3
9.0)、〔酸化チタンのモル数+B元素酸化物のモル
数〕/〔酸化カリウムのモル数+A元素酸化物のモル
数〕の比が、1〜2.7となるように、各化合物の配合
割合を調整するのがよい。
【0011】〔加熱溶融および冷却凝固処理〕上記原料
混合物を融点以上の温度(約1100℃〜1250℃)
に加熱し、ついで加熱溶融物を、適当な冷却容器に移し
て一方向凝固を行わせる。冷却速度は、厳密を要しない
が、約1℃/秒〜20℃/秒としてよく、これは特別の
制御を必要とせず、自然放冷により達成することができ
る。この冷却凝固処理により、初生相繊維として、温度
勾配に沿って成長した前記〔1〕式の化学組成を有する
繊維状化合物の束状集合体である繊維塊を得る。その繊
維は二チタン酸カリウ型結晶構造(層状構造)を有す
る。
混合物を融点以上の温度(約1100℃〜1250℃)
に加熱し、ついで加熱溶融物を、適当な冷却容器に移し
て一方向凝固を行わせる。冷却速度は、厳密を要しない
が、約1℃/秒〜20℃/秒としてよく、これは特別の
制御を必要とせず、自然放冷により達成することができ
る。この冷却凝固処理により、初生相繊維として、温度
勾配に沿って成長した前記〔1〕式の化学組成を有する
繊維状化合物の束状集合体である繊維塊を得る。その繊
維は二チタン酸カリウ型結晶構造(層状構造)を有す
る。
【0012】〔溶出・解繊処理〕上記繊維塊を、洗浄液
に浸漬して可溶成分を溶出させることにより繊維組成を
変換すると共に、繊維同士の結合を分離(解繊)して、
前記〔2〕式の化学組成を有するチタン酸金属塩からな
る多結晶繊維を水和物として回収する。この溶出・解繊
処理は、処理液として、酸溶液、例えば、濃度0.1〜
1%の塩酸、0.1〜1%の硫酸水溶液、1〜10%の
酢酸水溶液等が好適に使用される。その液中に繊維塊を
浸漬し、所望により溶出および解繊を促進するための付
加的措置として緩和な攪拌流を加え、適当時間(約1〜
8Hr)保持することにより、KイオンおよびAイオン
の溶出を達成する。その溶出過程で生じる結晶の膨潤・
劈開により繊維塊の繊維同士の結合が弛められ、多結晶
繊維への解繊が促進される。可溶成分の溶出量は、処理
液のpH測定等により測定することができる。なお、酸
溶液による処理に先立って、繊維塊を水に浸漬し適当時
間(例えば一夜)放置する予備処理を施すことは、溶出
・解繊処理を容易化し、解繊される繊維サイズの均一性
を高めるのに有効である。
に浸漬して可溶成分を溶出させることにより繊維組成を
変換すると共に、繊維同士の結合を分離(解繊)して、
前記〔2〕式の化学組成を有するチタン酸金属塩からな
る多結晶繊維を水和物として回収する。この溶出・解繊
処理は、処理液として、酸溶液、例えば、濃度0.1〜
1%の塩酸、0.1〜1%の硫酸水溶液、1〜10%の
酢酸水溶液等が好適に使用される。その液中に繊維塊を
浸漬し、所望により溶出および解繊を促進するための付
加的措置として緩和な攪拌流を加え、適当時間(約1〜
8Hr)保持することにより、KイオンおよびAイオン
の溶出を達成する。その溶出過程で生じる結晶の膨潤・
劈開により繊維塊の繊維同士の結合が弛められ、多結晶
繊維への解繊が促進される。可溶成分の溶出量は、処理
液のpH測定等により測定することができる。なお、酸
溶液による処理に先立って、繊維塊を水に浸漬し適当時
間(例えば一夜)放置する予備処理を施すことは、溶出
・解繊処理を容易化し、解繊される繊維サイズの均一性
を高めるのに有効である。
【0013】〔焼成処理〕溶出・解繊処理により得られ
る繊維状水和物は、目的とする繊維状無機化合物の組成
に相当する化学組成を有しているが、結晶構造は初生相
繊維(二チタン酸カリウムの層状構造)のなごりをとど
めている。焼成処理は、繊維の結晶構造をその層状構造
から、六チタン酸カリウム型結晶構造であるトンネル型
構造に変換するものである。この焼成処理は、温度90
0〜1300℃に適当時間(約0.5〜8Hr)保持す
ることにより達成される。処理温度を900℃以上とす
るのは、それより低温度では結晶の構造変換を生起し得
ないか、または処理に長時間を要し、他方1300℃を
上限とするのは、それを超えると、繊維の溶融を生じ、
繊維形態が損なわれるからである。
る繊維状水和物は、目的とする繊維状無機化合物の組成
に相当する化学組成を有しているが、結晶構造は初生相
繊維(二チタン酸カリウムの層状構造)のなごりをとど
めている。焼成処理は、繊維の結晶構造をその層状構造
から、六チタン酸カリウム型結晶構造であるトンネル型
構造に変換するものである。この焼成処理は、温度90
0〜1300℃に適当時間(約0.5〜8Hr)保持す
ることにより達成される。処理温度を900℃以上とす
るのは、それより低温度では結晶の構造変換を生起し得
ないか、または処理に長時間を要し、他方1300℃を
上限とするのは、それを超えると、繊維の溶融を生じ、
繊維形態が損なわれるからである。
【0014】上記工程を経て得られる本発明の繊維状無
機化合物の繊維サイズは、繊維長:約70〜400μ
m,幅: 約20〜50μm,厚さ: 約5〜10μmであ
り、アスペクト比(長さ/幅)は約5〜10と高アスペ
クト比であり、樹脂や金属等の補強繊維、制動装置の摩
擦材の基材繊維、あるいは塗料充填材等として好適な繊
維形態を有している。その繊維サイズは、初生相繊維塊
の酸溶液による溶出・解繊処理条件(攪拌の有無やその
強さ等)により制御することができる。
機化合物の繊維サイズは、繊維長:約70〜400μ
m,幅: 約20〜50μm,厚さ: 約5〜10μmであ
り、アスペクト比(長さ/幅)は約5〜10と高アスペ
クト比であり、樹脂や金属等の補強繊維、制動装置の摩
擦材の基材繊維、あるいは塗料充填材等として好適な繊
維形態を有している。その繊維サイズは、初生相繊維塊
の酸溶液による溶出・解繊処理条件(攪拌の有無やその
強さ等)により制御することができる。
【0015】
〔実施例1〕 (アルミ置換六チタン酸カリウムバリウム繊維の製造) (1)原料調製 カリウム化合物として、炭酸カリウム(K2 CO3 )、
A元素化合物として炭酸バリウム(BaCO3 )、チタ
ン化合物として精製アナターゼ(TiO2 )、B元素化
合物としてアルミナ(Al2 O3 ) の各粉末使用。上記
粉末を、K2 CO3 / BaCO3 / Al2 O3 / TiO
2 =4 : 1 : 0.125 : 8.75のモル比で混合。 (K2 O/BaOモル比=4) (TiO2 / Al2 O3 モル比=70) (TiO2 +Al2 O3 )/(K2 O+BaO)モル比
=1.78
A元素化合物として炭酸バリウム(BaCO3 )、チタ
ン化合物として精製アナターゼ(TiO2 )、B元素化
合物としてアルミナ(Al2 O3 ) の各粉末使用。上記
粉末を、K2 CO3 / BaCO3 / Al2 O3 / TiO
2 =4 : 1 : 0.125 : 8.75のモル比で混合。 (K2 O/BaOモル比=4) (TiO2 / Al2 O3 モル比=70) (TiO2 +Al2 O3 )/(K2 O+BaO)モル比
=1.78
【0016】(2)加熱溶融および一方向凝固処理 出発原料を白金るつぼに入れ、1200℃に1Hr加熱
保持した後、溶融生成物を冷却皿(銅製)に流し込み、
一方向凝固により結晶化した繊維塊を得る。繊維は、下
記組成を有する層状構造のアルミ置換二チタン酸カリウ
ムバリウム繊維である(X線粉末回折および蛍光X線分
析による)。 K1.6 Ba0.2 Ti1.75Al0.05O5 (〔1〕式中、X
'= 0.2, Y '= 0.05 )
保持した後、溶融生成物を冷却皿(銅製)に流し込み、
一方向凝固により結晶化した繊維塊を得る。繊維は、下
記組成を有する層状構造のアルミ置換二チタン酸カリウ
ムバリウム繊維である(X線粉末回折および蛍光X線分
析による)。 K1.6 Ba0.2 Ti1.75Al0.05O5 (〔1〕式中、X
'= 0.2, Y '= 0.05 )
【0017】(3)溶出・解繊処理 繊維塊を、重量比100倍量の水に浸漬し、一夜放置
(予備処理)した後、固形分に対し、30wt%の工業用硫
酸62.5wt%を加え、プロペラ攪拌下に、5Hrを要して
KおよびBaを溶出すると共に解繊する。 (4)焼成処理 処理液から回収した繊維を脱水乾燥の後、1150℃に
2Hr加熱保持する熱処理を施す。
(予備処理)した後、固形分に対し、30wt%の工業用硫
酸62.5wt%を加え、プロペラ攪拌下に、5Hrを要して
KおよびBaを溶出すると共に解繊する。 (4)焼成処理 処理液から回収した繊維を脱水乾燥の後、1150℃に
2Hr加熱保持する熱処理を施す。
【0018】得られた繊維は、下記の組成(蛍光X線分
析による)およびトンネル型結晶構造(X線粉末回折に
よる)を有するアルミ置換六チタン酸カリウムバリウム
繊維である。 K0.8 Ba0.6 Ti5.85Al0.15O13(〔2〕式中、X
= 0.6, Y = 0.15 ) 繊維サイズ(平均)は、長さ200μm、幅30μm、
厚さ10μm、アスペクト比7(長さ/幅)である(走
査型電子顕微鏡)。図1は上記繊維のX線回折パター
ン、図2は繊維の走査型電子顕微鏡像(倍率×500)
を、それぞれ示してい。
析による)およびトンネル型結晶構造(X線粉末回折に
よる)を有するアルミ置換六チタン酸カリウムバリウム
繊維である。 K0.8 Ba0.6 Ti5.85Al0.15O13(〔2〕式中、X
= 0.6, Y = 0.15 ) 繊維サイズ(平均)は、長さ200μm、幅30μm、
厚さ10μm、アスペクト比7(長さ/幅)である(走
査型電子顕微鏡)。図1は上記繊維のX線回折パター
ン、図2は繊維の走査型電子顕微鏡像(倍率×500)
を、それぞれ示してい。
【0019】〔実施例2〕 (1)出発原料の調製 カリウム化合物として、炭酸カリウム(KCO3 )、A
元素化合物として炭酸カルシウム(CaCO3 )、チタ
ン化合物として精製アナターゼ(TiO2 )、B元素化
合物として酸化鉄(Fe2 O3 ) の各粉末使用。上記粉
末を、K2 CO3 / CaCO3 / Fe2 O3 / TiO2
=9: 1: 0.25: 17.5のモル比に混合。 K2 O / CaOのモル比=9 TiO2 / Fe2 O3 のモル比=70 (TiO2 +Fe2 O3 )/(K2 O+CaO)モル比
=1.78 (2)加熱溶融および一方向凝固処理 実施例1と同じ加熱溶融および一方向凝固処理を施し
て、下記の組成および層状構造を有する、鉄置換二チタ
ン酸カリウムカルシウム繊維からなる繊維塊を得た。 K1.8 Ca0.1 Ti1.75Fe0.05O5 (〔1〕式中、X
'= 0.1, Y '=0.05)
元素化合物として炭酸カルシウム(CaCO3 )、チタ
ン化合物として精製アナターゼ(TiO2 )、B元素化
合物として酸化鉄(Fe2 O3 ) の各粉末使用。上記粉
末を、K2 CO3 / CaCO3 / Fe2 O3 / TiO2
=9: 1: 0.25: 17.5のモル比に混合。 K2 O / CaOのモル比=9 TiO2 / Fe2 O3 のモル比=70 (TiO2 +Fe2 O3 )/(K2 O+CaO)モル比
=1.78 (2)加熱溶融および一方向凝固処理 実施例1と同じ加熱溶融および一方向凝固処理を施し
て、下記の組成および層状構造を有する、鉄置換二チタ
ン酸カリウムカルシウム繊維からなる繊維塊を得た。 K1.8 Ca0.1 Ti1.75Fe0.05O5 (〔1〕式中、X
'= 0.1, Y '=0.05)
【0020】(3)溶出・解繊処理 上記繊維塊に実施例1と同じ条件の溶出・解繊処理を実
施。 (4)焼成処理 処理液から回収した繊維を脱水乾燥の後、1150℃に
2Hr加熱する処理を施す。
施。 (4)焼成処理 処理液から回収した繊維を脱水乾燥の後、1150℃に
2Hr加熱する処理を施す。
【0021】得られた繊維は、下記の組成(蛍光X線分
析による)およびトンネル型結晶構造(X線粉末回折に
よる)を有する鉄置換六チタン酸カリウムカルシウム繊
維であり、繊維サイズは前記実施例とほぼ同一である。 K1.4 Ca0.3 Ti5.85Fe0.15O13 (〔2〕式中、X
= 0.3, Y = 0.15 )
析による)およびトンネル型結晶構造(X線粉末回折に
よる)を有する鉄置換六チタン酸カリウムカルシウム繊
維であり、繊維サイズは前記実施例とほぼ同一である。 K1.4 Ca0.3 Ti5.85Fe0.15O13 (〔2〕式中、X
= 0.3, Y = 0.15 )
【0022】〔Kイオン溶出試験〕各供試繊維について
下記の溶出試験を行い、表1に示す結果を得た。同表
中、繊維1は実施例1の繊維(アルミ置換六チタン酸カ
リウムバリウム繊維)、繊維2は六チタン酸カリウム繊
維(K2 Ti6 O13)である。試験に使用した水(抽出
液)は、いずれも、蒸留水をpH7.00〜7.20に調整した
もの(液温:常温)である。 (1)テストA(初期pHの測定):繊維1gを、水100
mlに投入し、1Hr攪拌。静置後、上澄み液のpHを
測定。 (3)テストB( 微粉砕後のpHの測定):ディスクミル
による粉砕処理( 処理時間5分)に付して得た微粉砕粉
末(平均粒径1μm以下)の1gを、水100 mlに投入
し、1Hr攪拌。静置後、上澄み液のpHを測定。
下記の溶出試験を行い、表1に示す結果を得た。同表
中、繊維1は実施例1の繊維(アルミ置換六チタン酸カ
リウムバリウム繊維)、繊維2は六チタン酸カリウム繊
維(K2 Ti6 O13)である。試験に使用した水(抽出
液)は、いずれも、蒸留水をpH7.00〜7.20に調整した
もの(液温:常温)である。 (1)テストA(初期pHの測定):繊維1gを、水100
mlに投入し、1Hr攪拌。静置後、上澄み液のpHを
測定。 (3)テストB( 微粉砕後のpHの測定):ディスクミル
による粉砕処理( 処理時間5分)に付して得た微粉砕粉
末(平均粒径1μm以下)の1gを、水100 mlに投入
し、1Hr攪拌。静置後、上澄み液のpHを測定。
【0023】
【表1】
【0024】表1に示したように、繊維1(発明例)
は、繊維2(六チタン酸カリウム繊維)に比べ、Kイオ
ンの溶出量が少なく、特に微細粉末状態における両者の
差異は顕著である。微細粉末状態でのKイオンの溶出が
少ないことは、例えばブレーキパッド等の摩擦材の基材
繊維等として好適であることを意味している。摩擦材の
実使用においては、相手部材による高面圧の作用で、部
材表皮層(約100 〜200μm) に微細粉化が生じるた
め、遊離Kイオンの多い六チタン酸カリウム繊維を基材
繊維とする摩擦材では、アルカリアタックによる摩擦摩
耗特性( 摩擦係数,耐摩耗性) の顕著な低下を避け得な
い。本発明の繊維が微粉化状態でも遊離Kイオン量の少
ないことは、摩擦面のアルカリアタックとそれによる摩
擦摩耗特性の安定な維持を可能とする。
は、繊維2(六チタン酸カリウム繊維)に比べ、Kイオ
ンの溶出量が少なく、特に微細粉末状態における両者の
差異は顕著である。微細粉末状態でのKイオンの溶出が
少ないことは、例えばブレーキパッド等の摩擦材の基材
繊維等として好適であることを意味している。摩擦材の
実使用においては、相手部材による高面圧の作用で、部
材表皮層(約100 〜200μm) に微細粉化が生じるた
め、遊離Kイオンの多い六チタン酸カリウム繊維を基材
繊維とする摩擦材では、アルカリアタックによる摩擦摩
耗特性( 摩擦係数,耐摩耗性) の顕著な低下を避け得な
い。本発明の繊維が微粉化状態でも遊離Kイオン量の少
ないことは、摩擦面のアルカリアタックとそれによる摩
擦摩耗特性の安定な維持を可能とする。
【0025】
(摩擦材(ディスクパッド)の製造および摩擦摩耗特性
評価) 〔ディスクパッドの製作〕前記実施例1で得られたアル
ミ置換六チタン酸カリウムバリウム繊維、または六チタ
ン酸カリウム繊維(繊維サイズは同じ)を基材繊維とし
て下記の組成物を調製する。 基材繊維 30重量部 結合剤(フェノール樹脂) 20重量部 摩擦調整剤(硫酸バリウム) 50重量部 常法に従って予備成形(加圧力: 15MPa,加圧時
間: 1分)、および金型による結着成形(加圧力: 15
MPa,温度: 170℃,時間: 5分)に付し、離型
後、熱処理(180℃×3Hr)を施し、ついで研磨加
工を行って供試ディスクパッドA(基材繊維: 実施例1
の繊維)およびB(基材繊維: 六チタン酸カリウム繊
維)を得た。
評価) 〔ディスクパッドの製作〕前記実施例1で得られたアル
ミ置換六チタン酸カリウムバリウム繊維、または六チタ
ン酸カリウム繊維(繊維サイズは同じ)を基材繊維とし
て下記の組成物を調製する。 基材繊維 30重量部 結合剤(フェノール樹脂) 20重量部 摩擦調整剤(硫酸バリウム) 50重量部 常法に従って予備成形(加圧力: 15MPa,加圧時
間: 1分)、および金型による結着成形(加圧力: 15
MPa,温度: 170℃,時間: 5分)に付し、離型
後、熱処理(180℃×3Hr)を施し、ついで研磨加
工を行って供試ディスクパッドA(基材繊維: 実施例1
の繊維)およびB(基材繊維: 六チタン酸カリウム繊
維)を得た。
【0026】〔摩擦摩耗試験〕ディスクパッドAおよび
Bについて、JIS D4411 「自動車用ブレーキライニン
グ」に規定の定速度摩擦摩耗試験により、摩擦係数およ
び摩耗率(cm3 /N・m)を測定し、図3(摩擦係
数),図4(摩耗率)に示す結果を得た。 ディスク摩擦面:FC25ねずみ鋳鉄、 面圧:10 Kg/cm 2、 摩擦速度:7 m/s 。
Bについて、JIS D4411 「自動車用ブレーキライニン
グ」に規定の定速度摩擦摩耗試験により、摩擦係数およ
び摩耗率(cm3 /N・m)を測定し、図3(摩擦係
数),図4(摩耗率)に示す結果を得た。 ディスク摩擦面:FC25ねずみ鋳鉄、 面圧:10 Kg/cm 2、 摩擦速度:7 m/s 。
【0027】図3および図4に示したように、ディスク
パッドA(本発明の繊維を使用)は、ディスクパッドB
(六チタン酸カリウム繊維を使用)に比べて、高温域に
おいてより高い摩擦係数を有すると共に、改良された耐
摩耗性を有している。
パッドA(本発明の繊維を使用)は、ディスクパッドB
(六チタン酸カリウム繊維を使用)に比べて、高温域に
おいてより高い摩擦係数を有すると共に、改良された耐
摩耗性を有している。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、六チタン酸カリウムの
トンネル型結晶構造を有すると共に、そのKイオンの一
部およびTiイオンの一部が他の金属イオンで置換され
た繊維を溶融法により効率よく製造することができる。
その無機化合物繊維は、六チタン酸カリウム繊維に比
し、Kイオンの溶出が少なく、樹脂や金属の補強材とし
ての適用におけるアルカリ・アタックの問題が軽減緩和
され、また例えば摩擦摩耗材の基材繊維とし適用するこ
とにより、その摩擦摩耗特性を高めることができる。
トンネル型結晶構造を有すると共に、そのKイオンの一
部およびTiイオンの一部が他の金属イオンで置換され
た繊維を溶融法により効率よく製造することができる。
その無機化合物繊維は、六チタン酸カリウム繊維に比
し、Kイオンの溶出が少なく、樹脂や金属の補強材とし
ての適用におけるアルカリ・アタックの問題が軽減緩和
され、また例えば摩擦摩耗材の基材繊維とし適用するこ
とにより、その摩擦摩耗特性を高めることができる。
【図1】実施例1で得られた繊維のX線解析パターンを
示す図である。
示す図である。
【図2】実施例1で得られた繊維の形態を示す図面代用
顕微鏡写真(倍率×500)である。
顕微鏡写真(倍率×500)である。
【図3】摩擦材の摩擦係数測定結果を示すグラフであ
る。
る。
【図4】摩擦材の耐摩耗性の測定結果を示すグラフであ
る。
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年12月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
Claims (2)
- 【請求項1】 カリウム(K)、A元素、チタン(T
i)、およびB元素〔但し、Aはアルカリ土類金属,B
は、Mg,二価遷移金属元素,Al,Fe,Cr,G
a,から選ばれる元素〕の酸化物または加熱によりこれ
らの酸化物を生成する化合物を配合してなる原料混合物
を加熱溶融し、溶融物を冷却凝固して、下式〔1〕: K2-2X' AX'Ti2-Y'BY'O5 … 〔1〕 〔式中,X ' は 0.05 〜0.3 、Y ' は 0.05 〜0.1 〕で
示される、二チタン酸カリウム型結晶構造(層状構造)
を有するチタン酸金属繊維からなる繊維塊を得た後、繊
維塊を酸性液で処理して、可溶成分を溶出すると共に解
繊することにより、繊維を、下式〔2〕: K2-2XAX Ti6-Y BY O13 … 〔2〕 〔式中,Xは 0.15 〜0.9 、Y は 0.15 〜0.3 〕で示さ
れるチタン酸金属の多結晶繊維の水和物に組成変換し、 ついで上記水和物を、熱処理に付して繊維の結晶構造
を、六チタン酸カリウム型結晶構造(トンネル型構造)
に変換することを特徴とする繊維状無機化合物の製造方
法。 - 【請求項2】酸化カリウム/A元素の酸化物のモル比
が、(1- X ')/ X ' 酸化チタン/B元素の酸化物のモル比が、Bが2価元素
の場合、(2- Y ')/ 2Y '、Bが3価元素の場合、(2- Y
')/ Y ' 、〔酸化カリウム+A元素の酸化物〕/〔酸
化チタン+B元素の酸化物〕のモル比が、1〜2.7、
となるように各元素の酸化物または加熱により該酸化物
を生成する化合物を配合して原料混合物を調製すること
を特徴とする請求項1に記載の繊維状無機化合物繊維の
製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8682296A JPH09278440A (ja) | 1996-04-09 | 1996-04-09 | 繊維状無機化合物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8682296A JPH09278440A (ja) | 1996-04-09 | 1996-04-09 | 繊維状無機化合物の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09278440A true JPH09278440A (ja) | 1997-10-28 |
Family
ID=13897510
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8682296A Pending JPH09278440A (ja) | 1996-04-09 | 1996-04-09 | 繊維状無機化合物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09278440A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004010464A (ja) * | 2002-06-11 | 2004-01-15 | Kubota Corp | チタン酸化合物粉末及び化粧料 |
JP2010100527A (ja) * | 2010-01-28 | 2010-05-06 | Kubota Corp | チタン酸化合物粉末及び化粧料 |
JP2018135240A (ja) * | 2017-02-22 | 2018-08-30 | 大塚化学株式会社 | チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法、摩擦調整材、樹脂組成物、摩擦材、並びに摩擦部材 |
-
1996
- 1996-04-09 JP JP8682296A patent/JPH09278440A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004010464A (ja) * | 2002-06-11 | 2004-01-15 | Kubota Corp | チタン酸化合物粉末及び化粧料 |
JP2010100527A (ja) * | 2010-01-28 | 2010-05-06 | Kubota Corp | チタン酸化合物粉末及び化粧料 |
JP2018135240A (ja) * | 2017-02-22 | 2018-08-30 | 大塚化学株式会社 | チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法、摩擦調整材、樹脂組成物、摩擦材、並びに摩擦部材 |
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