JP3256869B2 - 高緻密質六チタン酸カリウムバリウム繊維の製造方法 - Google Patents

高緻密質六チタン酸カリウムバリウム繊維の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性,断熱性,
耐摩耗性,補強性,耐化学性,高誘電性等にすぐれた高
緻密性の六チタン酸カリウムバリウム多結晶繊維の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】六チタン酸カリウムバリウム繊維は、六
チタン酸カリウム繊維(K2 Ti6 13)〔TiO6
面体の連鎖からなるトンネル枠内にKイオンが配位した
結晶構造を有する〕のトンネル枠内のKイオンの一部を
Baイオンで置換された繊維である。このものは、六チ
タン酸カリウム繊維と同様に、耐熱性,断熱性,耐摩耗
性,補強性,耐化学性等にすぐれた繊維であり、耐熱・
断熱材,樹脂・金属等の補強材,摩擦摩耗部材の基材繊
維,塗料の充填材等として有用である。この六チタン酸
カリウムバリウム繊維と六チタン酸カリウム繊維とを比
較すると、六チタン酸カリウム繊維では、これを樹脂や
金属等の補強材とし、あるいは摩擦摩耗部材(ブレーキ
パッド等)の基材繊維等として使用した場合、繊維中の
Kイオンの溶出に起因する部材の変質劣化、所謂アルカ
リ・アタックの問題が付随するのに対し、六チタン酸カ
リウムバリウム繊維は、そのKイオンの一部がBaイオ
ンに置換された組成を有することにより、アルカリ・ア
タックの問題が軽減・緩和され、補強材・充填材等とし
ての機能をより効果的に発揮させることができるという
利点を有する。
【0003】上記六チタン酸カリウムバリウム繊維は、
六チタン酸カリウム繊維の工業的製造法の一つである溶
融法を適用して製造することができる。特開平7−24
2421号公報には、その製造法として、酸化チタン
(TiO2 )、酸化カリウム(K2 O)、および酸化バ
リウム(BaO)を所定の割合で配合した粉末混合物を
出発原料とし、これを加熱溶融し、溶融物を冷却して二
チタン酸カリウムバリウム繊維(TiO5 三角両錐体の
連鎖が積層し、層間にKイオンが配位した層状の結晶構
造を有する)からなる繊維塊を得た後、繊維塊を酸水溶
液で処理して繊維中のKイオンを溶出することにより、
二チタン酸カリウムバリウム繊維を、六チタン酸カリウ
ムバリウム結晶相当の化学組成を有する水和チタン酸カ
リウムバリウム繊維に組成変換し、ついで結晶構造をト
ンネル型構造に変換するための熱処理を施す工程を経
て、目的物である六チタン酸カリウムバリウム繊維を得
ることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報所載の方法に
より製造される六チタン酸カリウムバリウム繊維(多結
晶繊維)は、結晶粒界に筋状の亀裂を有している。図2
はその繊維を示している。(d)は亀裂であり、亀裂
(d)は繊維の結晶粒界に沿って多数発生している。こ
のような粒界亀裂が存在すると、繊維の剪断強さが低下
し、補強材・充填材等として六チタン酸カリウムバリウ
ム繊維の特性を十分に発揮させることができない。本発
明は、粒界亀裂が少なく、高緻密質を有する六チタン酸
カリウムバリウム繊維の製造方法を提供するものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の高緻密質六チタ
ン酸カリウムバリウム繊維の製造方法は、KOまたは
加熱によりKOを生成するカリウム化合物と、BaO
または加熱によりBaOを生成するバリウム化合物と
を、KO/BaOのモル比が、10/1〜1/1とな
る割合に配合し、その混合物に、TiOまたは加熱に
よりTiOを生成するチタン化合物を、TiO
(KO+BaO)のモル比が、1/1〜2.5/1と
なる割合に配合してなる混合粉末を加熱溶融した後、溶
融物を冷却して、式[1]: K2(1−X)BaTi … [1] [但し、0.05≦x≦0.3] で示される二チタン酸カリウムバリウム繊維からなる繊
維塊を得る工程、上記繊維塊を液中に浸漬して繊維のカ
リウムを溶出すると共に解繊し、TiO/(KO+
BaO)のモル比が3.7〜5.3である水和チタン酸
カリウムバリウム多結晶繊維を得る一次脱カリウム処理
工程、上記水和チタン酸カリウムバリウム多結晶繊維
を、100〜400℃で加熱乾燥する乾燥処理工程、乾
燥した水和チタン酸カリウムバリウム多結晶繊維を液中
に浸漬して、TiO/(KO+BaO)のモル比が
6となるまでカリウムを溶出させる二次脱カリウム処理
工程、二次脱カリウム処理を経た水和チタン酸カリウム
バリウム多結晶繊維を脱水乾燥し、900〜1300℃
に加熱して結晶構造を変換する焼成処理工程により、 式[2]: K2(1−X)BaTi13 … [2] [但し、0.15≦x≦0.9] で示される高緻密質の六チタン酸カリウムバリウム繊維
を得るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の六チタン酸カリウムバリ
ウム繊維の製造方法は、出発原料の加熱溶融物を冷却し
て得た繊維塊(初生相二チタン酸カリウムバリウム繊維
の塊状物)からKイオンを溶出する脱カリウム処理を、
前記公報に記載された製造法のそれと異なって、2段階
の処理工程で行うと共に、その一次処理と二次処理との
工程間で、乾燥処理を実施するようにした点を特徴的な
構成要素としている。このような工程を経由することに
より、目的物である六チタン酸カリウムバリウム繊維
を、結晶粒界の亀裂が抑制防止された高緻密質の繊維と
して収得することが可能となる。これは、一次脱カリウ
ム処理後の乾燥処理(温度: 100 〜400 ℃)により、水
和チタン酸カリウム繊維の結晶化が促進され、その効果
として、二次脱カリウム処理における繊維のカリウム溶
出が均一に行われると共に、焼成処理(結晶構造の変
換)過程での結晶粒界の歪みが緩和されることによると
考えられる。
【0007】本発明の六チタン酸カリウムバリウム繊維
は、前記〔2〕式で示される化学組成を有する。式中の
Xを、0.15〜0.90の範囲に規定しているのは、
0.15より低いと、Baイオンの置換効果が乏しく、
他方0.90を超えると、トンネル型構造の形成が困難
となるからである。本発明の繊維の製造は、初生相繊維
(二チタン酸カリウムバリウム繊維)から製品繊維(六
チタン酸カリウムバリウム繊維)に相当する化学組成へ
の組成変換工程が、前記のように一次脱カリウム処理−
予備乾燥処理−二次脱カリウム処理よりなる工程として
構成されている点を除いて、溶融法による六チタン酸カ
リウム繊維の製造プロセスと同様の処理条件に従って行
われる。以下、本発明を工程順に説明する。
【0008】〔出発原料の調製〕K2 Oまたは加熱によ
りK2 Oを生成するカリウム化合物と、BaOまたは加
熱によりBaOを生成するバリウム化合物とを、K2
/BaOのモル比が、10/1〜1/1となる割合に混
合し、その混合物に、TiO2 または加熱によりTiO
2 を生成するチタン化合物を、TiO2 /(K2 O+B
aO)のモル比〔TiO2 のモル数/(K2 Oのモル数
+BaOのモル数)〕が、1/1〜2.5/1となる割
合に配合する。チタン化合物は、精製アナターゼ粉末、
精製ルチル粉末、あるいは塩化物〔TiCl2,TiCl
3 等〕、水和物〔H4 TiO4,4 TiO3 等〕、硫酸
塩〔Ti(SO4 2 等〕等であり、カリウム化合物
は、代表的には炭酸カリウムであり、そのほか水酸化
物、硝酸塩等も使用される。バリウム化合物は、酸化
物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物,フッ化物,沃化
物等)、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩等を使用することが
できる。
【0009】〔加熱溶融処理および冷却凝固処理〕上記
原料混合物を加熱して溶融物を得る。加熱温度は約11
00℃〜1250℃であればよい。ついで溶融物を、適
当な冷却容器に移して一方向凝固を行わせる。その冷却
凝固により、温度勾配に沿って成長した、前記〔2〕式
で示される二チタン酸カリウムバリウム繊維からなる塊
状物を得る。冷却速度は、特に厳密を要しないが、約1
℃/秒〜20℃/秒としてよく、これは特別の制御を必
要とせず、自然放冷により達成することができる。
【0010】[一次脱カリウム処理] 上記繊維塊を液中に浸漬して二チタン酸カリウムバリウ
繊維中のカリウムの一部溶出させると共に、TiO
/(KO+BaO)のモル比が3.7〜5.3の水
和チタン酸カリウムバリウム繊維を得る。カリウム含有
量を上記範囲に制限したのは、この範囲から外れると、
脱カリウム処理を二段階処理としたことによる効果が低
減するからである。上記一次脱カリウム処理は、水また
は熱水等を処理液として行なわれる。またKイオンの溶
出を促進するための補助手段として、プロペラまたはミ
キサー等による攪拌操作が必要に応じて施される。Kイ
オンの溶出量は、処理液の液量、攪拌流の強さ、処理時
間等により制御される。
【0011】[乾燥処理] 一次脱カリウム処理液から回収した水和チタン酸カリウ
バリウム繊維を、脱水し、100〜400℃に適当時
間(例えば、約6〜14Hr)保持して乾燥する。この乾
燥処理において、水和チタン酸カリウムバリウム結晶の
構造変換はないが、乾燥効果として、二次脱カリウム処
理におけるカリウムの均一な溶出処理を確保することが
可能となる。処理温度を100℃以上とするのは、それ
より低温度域では、乾燥効果が乏しく、他方400℃を
超える高温度域では、水和チタン酸カリウムバリウム
維の結晶構造に変化をきたすからである。
【0012】[二次脱カリウム処理] 乾燥処理した水和チタン酸カリウムバリウム繊維を液中
に浸漬し、Kイオンを溶出させることにより、目的物で
ある六チタン酸カリウムバリウム繊維の化学組成に相当
する組成を有する水和チタン酸カリウムバリウム繊維を
得る。その繊維のTiO/(KO+BaO)モル比
(KOのモル数とBaOのモル数の和に対するTiO
のモル数の比)は6である。この脱カリウム処理は、
水または熱水等を使用して行なうことも可能ではある
が、効率良く処理を達成するために、酸水溶液、例えば
0.01〜1%の硫酸水溶液、0.01〜1%の塩酸、
0.1〜2%の酢酸水溶液等を使用するのが好ましい。
所望により、溶出処理を促進するためのプロペラまたは
ミキサー等による攪拌流が加えられる。Kイオンの溶出
量は、処理液の種類,液量,攪拌流の強さ,処理時間等
により制御される。
【0013】[焼成処理] 焼成処理は、二次脱カリウム処理液から回収された水和
チタン酸カリウムバリウム繊維の結晶構造を、最終製品
繊維の結晶構造(トンネル型構造)に変換するための熱
処理である。すなわち、二次脱カリウム処理された水和
チタン酸カリウムバリウム繊維は、化学組成的には、目
的とする六チタン酸カリウムバリウム繊維に相当する化
学組成を有しているが、結晶構造は先駆体である二チタ
ン酸カリウムバリウム繊維の結晶構造(層状構造)のな
ごりを留めている。その層状構造をトンネル構造に変換
するのである。この処理は、900〜1300℃の温度
域に適当時間(例えば、0.5〜8Hr)保持すること
により達成される。処理温度の下限を900℃とするの
は、それより低い温度では、結晶構造変換反応を効率よ
く行なわせることが困難であり、得られる結晶繊維の結
晶性が悪く、他方1300℃を上限とするのは、それを
超えると六チタン酸カリウムバリウム結晶の溶融を生
じ、繊維形状が損なわれるからである。
【0014】図1は上記工程を経由して得られる本発明
の六チタン酸カリウムバリウム繊維の繊維形態を示して
いる。図示のように、結晶粒界の亀裂(d)が少なく高
緻密質の繊維形態を有しており、図2に示した従来法に
よる繊維との差異は歴然である。このように本発明の六
チタン酸カリウムバリウム繊維は、粒界亀裂の少ない高
緻密質繊維であることにより、補強材や充填材等として
機能にすぐれ、例えばこれを乗用車等の制動装置を構成
する摩擦材の基材繊維として適用することにより、従来
の繊維を使用した場合に比し、広い温度域に亘る改良さ
れた耐摩耗性や高温域における高摩擦係数を摩擦材に付
与することが可能となる。なお、本発明の六チタン酸カ
リウムバリウム繊維は、例えば、繊維径約20〜50μ
m、繊維長約100〜400μmの板状多結晶繊維とし
て得られ、その繊維サイズは、製造条件、特に初生相繊
維塊の一次脱カリウム処理および二次脱カリウム処理に
おける処理液量や攪拌流の付加の有無ないしその強さ等
により制御することができる。
【0015】
【実施例】[実施例1] (六チタン酸カリウムバリウム繊維(K0.8Ba
0.6Ti13)の製造) (1)原料調製 精製アナターゼ粉末(TiO)、炭酸バリウム粉末
(BaCO)、および工業用炭酸カリウム(KCO
)を使用。炭酸バリウム粉末と炭酸カリウムとを、K
O/BaOのモル比が4/1となる割合で混合し、こ
れに、TiO/(KO+BaO)のモル比が9/5
となる割合でアナターゼ粉末を配合(KCO/Ba
CO/TiOのモル比=4/1/9)。 (2)加熱溶融および冷却凝固処理 出発原料を白金るつぼに入れ、加熱炉内で1200℃に
1Hr加熱保持して溶融した後、溶融物を銅製べセルに
流し込み、一方向凝固により二チタン酸カリウムバリウ
結晶繊維からなる繊維塊を得る。
【0016】(3)一次脱カリウム処理 繊維塊を、水(繊維塊重量の50倍量)に投入して一晩
放置した後、プロペラ攪拌下にカリウムを溶出すると共
に解繊し、水和チタン酸カリウムバリウム繊維(TiO
2 /(K2 O+BaO)モル比: 4.4)を得る。 (4)予備乾燥処理 解繊された水和チタン酸カリウムバリウム繊維を液中か
ら回収し、脱水後、250℃で一晩乾燥。
【0017】(5)二次脱カリウム処理 乾燥した繊維を水(繊維重量の100倍量)に投入し、
投入固形分に対し8重量%の硫酸(62.5%) を添加した
うえ、プロペラ攪拌下にKイオンの溶出を行って、六チ
タン酸カリウムバリウム繊維の化学組成に相当する組成
の水和チタン酸カリウムバリウム繊維(TiO2 /(K
2 O+BaO)モル比: 6)を得る。
【0018】(6)焼成処理 二次脱カリウム処理液から回収した水和チタン酸カリウ
ムバリウム繊維を脱水し、温度1150℃で2Hrを要
して焼成処理し、六チタン酸カリウムバリウム繊維を得
た。 繊維組成: K 0.8 Ba 0.6 Ti 6 13(粉末X線回折およ
び蛍光X線分析) 繊維形態: 図1(走査型電子顕微鏡像,倍率×200
0) 得られた繊維は、図1に示すように、粒界亀裂(d)の
発生は極く軽微で緻密性の高い繊維形態を有している。
【0019】〔実施例2〕 (六チタン酸カリウムバリウム繊維(K 0.2 Ba0.9 Ti 6
13)の製造) (1)原料調製 精製アナターゼ粉末(TiO2 )、炭酸バリウム粉末
(BaCO3 )、および工業用炭酸カリウム(K2 CO
3 )を使用。炭酸バリウム粉末と炭酸カリウムとを、K
2 O/BaOのモル比が7/3となる割合で混合し、こ
れに、TiO2 /(K2 O+BaO)のモル比が9/5
となる割合でアナターゼ粉末を配合〔K2 CO3 /Ba
CO3 /TiO2 のモル比=7/3/18〕。
【0020】(2)加熱溶解および冷却凝固処理 実施例1と同じ (3)一次脱カリウム処理 実施例1と同じ (4)乾燥処理 実施例1と同じ (5)二次脱カリウム処理 実施例1と同じ (6)焼成処理 実施例1と同じ
【0021】上記工程を経て、K 0.2 Ba0.9 Ti 613
組成を有する六チタン酸カリウムバリウム繊維を得た。
その繊維形態は実施例1の繊維(図1)と同等の高緻密
質繊維であることが観察された。
【0022】
【比較例】
(六チタン酸カリウムバリウム繊維(K 0.8 Ba 0.6 Ti
6 13)の製造)原料粉末混合物の加熱溶融物を冷却凝
固して得た繊維塊を、1回の脱カリウム処理で、製品繊
維(六チタン酸カリウムバリウム繊維)の化学組成に相
当する組成の水和チタン酸カリウムバリウム繊維に変換
する従来法により、六チタン酸カリウムバリウム繊維を
製造する。 〔1〕出発原料の調製 実施例1と同じ。 〔2〕加熱溶融および冷却凝固 実施例1と同じ。
【0023】〔3〕脱カリウム処理 初生相繊維塊を、水(繊維重量の100倍量)に投入
し、一晩放置した後、固形分に対し30重量%の硫酸を
添加し、プロペラ攪拌下にカリウムを溶出すると共に解
繊し、水和チタン酸カリウム(TiO2 /(K2 O+B
aO)モル比: 6)を得る。 〔6〕焼成処理 実施例と同じ。
【0024】上記工程により得られる六チタン酸カリウ
ムバリウム繊維の組成および形態は次のとおりである。 繊維組成: K 0.8 Ba 0.6Ti 613(粉末X線回折および
蛍光X線分析) 繊維形態: 図2(走査型電子顕微鏡像,倍率×200
0) この繊維は、結晶粒界に多数の粗大な亀裂(d)が発生
している。
【0025】
【参考例】
〔摩擦材(ディスクパッド)の製造および摩擦摩耗特性
の評価〕 (1)ディスクパッドの製作:前記実施例1および比較
例で得られた六チタン酸カリウムバリウム繊維を基材繊
維として下記の組成物を調製する。 基材繊維 30重量部 結合剤(フェノール樹脂) 20重量部 摩擦調整剤(硫酸バリウム) 50重量部 常法に従って予備成形(加圧力: 15MPa,加圧時
間: 1分)、および金型による結着成形(加圧力: 15
MPa,温度: 170℃,時間: 5分)に付し、離型
後、熱処理(180℃×3Hr)を施し、ついで研磨加
工を行って供試ディスクパッドAおよびBを得た。 ディスクパッドA…基材として実施例1の繊維(本発明
材)を使用 ディスクパッドB…基材として比較例の繊維(従来材)
を使用
【0026】(2)摩擦摩耗試験:ディスクパッドAお
よびBについて、JIS D4411 「自動車用ブレーキライニ
ング」に規定の定速度摩擦摩耗試験により、摩擦係数お
よび摩耗率(cm3 /N・m)を測定し、図3(摩擦係
数),図4(摩耗率)に示す結果を得た。 ディスク摩擦面:FC25ねずみ鋳鉄、 面圧:10Kg/cm 2 、 摩擦速度:7m/s。
【0027】ディスクパッドA(実施例1の本発明の六
チタン酸カリウムバリウム繊維を使用)は、ディスクパ
ッドB(比較例の六チタン酸カリウムバリウム繊維を使
用)に比べて、高温域においてより高い摩擦係数を有し
(図3参照)、また低温から高温の広い温度域に亘つて
改良された耐摩耗性を有している(図4参照)。この摩
擦摩耗特性の改善効果は、基材繊維が粒界亀裂の少ない
高緻密質の繊維形態を有していることによる。
【0028】
【発明の効果】本発明により製造される六チタン酸カリ
ウムバリウム繊維は、結晶粒界の亀裂が少く、高緻密性
の繊維形態を有しているので、摩擦材,摩耗材,耐熱
材,樹脂や金属の補強材,塗料充填材等としての機能に
すぐれ、これら各種材料に改良された摩擦特性,摩耗抵
抗性,耐熱性,機械強度等を帯有させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により製造される六チタン酸カリウムバ
リウム繊維を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×2000)で
ある。
【図2】従来の六チタン酸カリウムバリウム繊維を示す
図面代用顕微鏡写真(倍率×2000)である。
【図3】六チタン酸カリウムバリウム繊維を基材繊維と
して製造された摩擦材の摩擦係数の測定結果を示すグラ
フである。る。
【図4】六チタン酸カリウムバリウム繊維を基材繊維と
して製造された摩擦材の比摩耗率の測定結果を示すグラ
フである。
【符号の説明】
d: 粒界亀裂
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 9/08 - 9/10 C01G 23/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 KOまたは加熱によりKOを生成す
    るカリウム化合物と、BaOまたは加熱によりBaOを
    生成するバリウム化合物とを、KO/BaOのモル比
    が、10/1〜1/1となる割合に配合し、その混合物
    に、TiOまたは加熱によりTiOを生成するチタ
    ン化合物を、TiO/(KO+BaO)のモル比
    が、1/1〜2.5/1となる割合に配合してなる混合
    粉末を加熱溶融した後、溶融物を冷却して、式[1]: K2(1−X)BaTi … [1] [但し、0.05≦x≦0.3] で示される二チタン酸カリウムバリウム繊維からなる繊
    維塊を得る工程、 上記繊維塊を液中に浸漬して繊維のカリウムを溶出する
    と共に解繊し、TiO/(KO+BaO)のモル比
    が3.7〜5.3である水和チタン酸カリウムバリウム
    多結晶繊維を得る一次脱カリウム処理工程、 上記水和チタン酸カリウムバリウム多結晶繊維を、10
    0〜400℃で加熱乾燥する乾燥処理工程、 乾燥した水和チタン酸カリウムバリウム多結晶繊維を液
    中に浸漬して、TiO/(KO+BaO)のモル比
    が6となるまでカリウムを溶出させる二次脱カリウム処
    理工程、 二次脱カリウム処理を経た水和チタン酸カリウムバリウ
    多結晶繊維を脱水乾燥し、900〜1300℃に加熱
    して結晶構造を変換する焼成処理工程からなる、 式[2]: K2(1−X)BaTi13 … [2] [但し、0.15≦x≦0.9] で示される高緻密質六チタン酸カリウムバリウム多結晶
    繊維の製造方法。
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