JP3324768B2 - 六チタン酸カリウム繊維 - Google Patents

六チタン酸カリウム繊維

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、六チタン酸カリウム繊
維および該繊維によって強化された金属基複合材料に関
し、詳細には特定形状、特定組成を有する高結晶度の六
チタン酸カリウム繊維及び軽金属をマトリックスとして
該繊維を含む金属基複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、チタン酸カリウム繊維が汎用工業
材料を目的とした軽金属の強化材として注目されてい
る。これは、軽金属の強化素材となる他のセラミックス
・ウィスカーが何れも高価であるのに対し、チタン酸カ
リウム繊維が比較的安価で、該繊維で強化した複合材料
の製品コストも下がり幅広い用途が期待されるためであ
る。一方、製造方法としては得られる複合材料の性質と
コストの面から高圧鋳造法が最もすぐれている。これ
は、短時間で複合化が終了する為に強化素材と軽金属と
の反応の問題が少ないことや、大掛かりな製造装置を必
要としない利点によるものである。
【0003】従来、チタン酸カリウム繊維はアルミニウ
ム溶湯と激しく反応することが報告されていた(福永秀
春、武市通文、太田進啓:日本複合材料学会誌、8(1
982),66)が、この問題点を改善したチタン酸カ
リウム繊維として、遊離カリウム含有量が5ppm以下
であるトンネル構造・六チタン酸カリウム繊維が開示さ
れている。(公開特許公報平1−301516)該チタ
ン酸カリウム繊維は、トンネル構造・六チタン酸カリウ
ム繊維中に含まれる層状構造チタン酸カリウムの含有量
を著しく減少させたものであり、このチタン酸カリウム
繊維の開発により、チタン酸カリウム繊維が汎用工業材
料を目的とした軽金属の強化材として注目され始めた
(K.Suganuma,T.Fujita,K.Ni
ihara,T.Okamoto and S.Suz
uki:J.Mater.Sci.Letters,8
(1989),808)。
【0004】しかしながら、該チタン酸カリウム繊維で
強化した金属基複合材料は、それ以前に開示されていた
チタン酸カリウム繊維で強化された軽金属基複合材料よ
りも良好な強度特性を有してはいるものの、該複合材料
の機械的強度や応力腐食割れ性等を向上させる為に熱処
理を施すと強度が低下したり、あるいは強度が向上しな
い等の従来のチタン酸カリウム繊維強化軽合金が有して
いた問題点は解決されていなかった。Suganuma
らは、該チタン酸カリウム繊維とアルミニウム軽合金と
を複合化する際に、該チタン酸カリウム繊維表面に10
nm以下の厚さのマグネシウムを主とする軽微な反応相
が形成される現象を見出し、この為に母材の合金中のマ
グネシウム含有量が低下することが母材の強度を低下さ
せることに繋がると指摘している。しかしながら彼ら
は、この反応相は複合化後の熱処理工程で特に変化しな
いと報告しており、チタン酸カリウム繊維強化軽合金の
強度が熱処理により低下することの理由は全く分からな
いというのが実情であった。
【0005】さらに、該チタン酸カリウム繊維は10〜
30μm径の束状凝結物を多く含むため、これにより強
化された金属基複合材料は機械的強度のバラツキが大き
く工業材料として好ましいものではなかった(菅沼克昭
他:粉体及び粉末冶金、8(1990))。また、上記
束状凝結物の存在の為、該チタン酸カリウム繊維を使用
したプラスチック成型品は繊維強化プラスチックスが持
つべき最も重要な特性の一つである表面平滑性に劣ると
いう欠点を有し、さらに、微小部品を成形する場合には
該束状凝結物が金型のゲートを閉塞するという問題点を
も有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のチタ
ン酸カリウム繊維強化金属基複合材料は熱処理時の安定
性、成型品の表面平滑性、成型作業性に問題があり工業
材料として好ましいものではなった。そのため安価で、
熱処理により強度が向上し、熱安定性に優れ、さらに束
状凝結物を含まない新規な複合材料の開発が望まれてい
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決する為鋭意研究を行った結果、強化材として平均
繊維長が8〜30μm、平均繊維径が0.2〜0.7μ
mであり、かつ比表面積が2〜4m2/gである、不純
物としてのアルミニウムの含有量とニオブの含有量がA
23/Nb25(モル比)で0.6以上である六チタ
ン酸カリウム繊維を使用することが効果的であることを
見出し、本発明を完成させた。
【0008】即ち、従来のチタン酸カリウム繊維は、そ
の製造原料に由来するニオブ、リン、アルミニウム、ケ
イ素、鉄、アルカリ土類金属等の不純物を必然的に含有
しており、これが為に熱処理時に複合材料の強度が低下
すること、更にはチタン酸カリウム繊維中に含まれるニ
オブとアルミニウムの含有量をAl23 /Nb25
(モル比)で0.6以上になるように調整すれば、不純
物を含有していても、熱処理時の複合材料の強度の低下
を妨げること等を発見し、本発明を完成したものであ
る。
【0009】従来のチタン酸カリウム繊維は、ニオブを
始めとする上記不純物を多く含んでいる硫酸法によるア
ナターゼ型酸化チタンやメタチタン酸あるいは天然産の
ルチルサンドやアナターゼサンド等を原料にして合成さ
れており、これらの原料から合成されるチタン酸カリウ
ム繊維は不純物を多く含有している。この不純物含有量
の多いチタン酸カリウム繊維で強化したアルミニウム合
金は熱処理時の強度の低下が大きくなるが、繊維中に含
まれるニオブとアルミニウムの量がAl23/Nb2
5 (モル比)で0.6以上とした場合には不純物含有
量が多くても複合材料の熱処理時の強度の低下が認めら
れないのである。
【0010】さらに、繊維の形状については、繊維長が
長すぎる場合、平均繊維径が太すぎる場合には、補強効
果は得られるが繊維の塊状物が生じるため上記のゲート
の閉塞等の問題を解決することができず、一方、平均繊
維長が短い場合、平均繊維径が細い場合には繊維の塊状
物は発生しないが所定の補強効果が得られないという2
律背反の問題が存在する。本願発明においては、繊維の
結晶性を高めることにより、比較的短い粒子であるにも
かかわらず十分な強度を発現させることに成功し、上記
の問題を解決した補強材用六チタン酸カリウム繊維の提
供を可能としたものである。
【0011】本願発明にかかる六チタン酸カリウム繊維
においては、結晶内部あるいは表面に層状構造チタン酸
カリウムや二酸化チタン等の異相を含まない単一層繊維
であることが望ましい。即ち、繊維中に層状構造チタン
酸カリウムや二酸化チタンを含む場合には、単結晶繊維
と比較して繊維自体の強度が弱くなるのみならず、層状
構造チタン酸カリウムや二酸化チタンは、トンネル構造
を有する六チタン酸カリウムよりも軽金属との反応性が
非常に大きい為に、軽金属との複合化時および複合後の
熱処理工程で軽金属との反応による繊維の損傷が大きく
なり、チタン酸カリウム繊維による強化効果が低下する
からである。
【0012】本発明にかかるチタン酸カリウム繊維は、
代表的には以下の方法で製造される。
【0013】一般式K2 O・nTiO2 (但しn=3.
5〜4)で示される割合で配合されたチタン原料化合物
とカリウム原料化合物との混合物を950〜1100℃
で焼成後、800℃まで30分以内の時間で冷却する方
法で塊状の四チタン酸カリウム繊維を生成せしめ、次い
で該塊状生成物を水又は温水中に浸漬した後、高剪断力
を有するミキサーで該塊状チタン酸カリウム繊維を単一
繊維に分離した後、該スラリーに酸を添加してpHを
9.2〜9.5に調整することにより、チタン酸カリウ
ム繊維の組成がTiO2 /K2 O(モル比)で5.95
〜6.00の組成になるように組成変換処理後、高分子
凝集剤を添加して繊維を凝集させた後固液分離し、該固
形分を950〜1050℃で焼成後、酸洗浄する方法に
より得られる。
【0014】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合割合は、一般式K2 O・nTiO2 で示してnが
3.5〜4の範囲である。即ち、nが3.5よりも小さ
いと冷却途上で四チタン酸カリウム繊維に二チタン酸カ
リウム繊維が混在してくる。二チタン酸カリウム繊維は
その形状が板状である為補強材として好ましくないのみ
ならず、次工程のチタン酸カリウム繊維の組成をTiO
2 /K2 O(モル比)で5.95〜6.00の組成に変
換する工程で四チタン酸カリウムと二チタン酸カリウム
が混在していると、その双方の組成をTiO2 /K2
(モル比)で5.95〜6.00の範囲に調整すること
が必要となり、条件の設定が非常に難しく再現性に乏し
くなるという問題を生ずる。即ち、組成変換工程で四チ
タン酸カリウムの組成をTiO2 /K2 O(モル比)で
5.95〜6.00の範囲に調節しようとすると、この
中に含まれる二チタン酸カリウムの組成は上記組成より
も大きくなるとの不都合を生じるし、また二チタン酸カ
リウムの組成をTiO2 /K2 O(モル比)で5.95
〜6.00の範囲に調節しようとすると、四チタン酸カ
リウムの組成は上記組成よりも小さくなるとの不都合を
生じる。チタン原料化合物とカリウム原料化合物との混
合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示してnを4に
近づける程、生成する四チタン酸カリウム繊維中の二チ
タン酸カリウム繊維の割合は減少していくが、原料の混
合割合の調節のみで二チタン酸カリウム混在の悪影響を
取り除くことは困難である。なぜなら、前述のように、
四チタン酸カリウムの組成をTiO2 /K2 O(モル
比)で5.95〜6.00の範囲に調節しようとする
と、この中に混在する二チタン酸カリウム繊維の組成は
TiO2 /K2 O(モル比)で6よりも大きくなるが、
この繊維は次の950〜1050℃で焼成する工程で二
酸化チタンと六チタン酸カリウムに分解し、この分解時
に他の繊維間のバインダーとして作用して焼結を促進
し、この焼結繊維は分散が非常に難しく、補強材として
用いた場合に前記束状凝結物と同様な悪作用をするから
である。
【0015】また、この繊維は二酸化チタンと六チタン
酸カリウムからなる多相の結晶体なので強度が弱い上、
結晶粒界に存在するカリウムを酸処理工程で除去するこ
とができず、熱可塑性樹脂との混錬時に繊維が折損した
場合に該カリウムが遊離カリウムとして作用し、熱可塑
性樹脂を分解させる。更に、カリウムイオンが部分的に
不足するため、六チタン酸カリウム繊維の表面に二酸化
チタンが生成するが、該二酸化チタンが軽金属の成分と
反応し易い為、繊維強化による軽金属の強度の向上を阻
害したり、あるいは強化軽金属の強度のバラツキの原因
になる。
【0016】尚、チタン原料化合物とカリウム原料化合
物との混合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示して
nを4に近づける程、生成する繊維の長さが短くなる。
一般的に、繊維の長さが長い程補強効果が高いとされて
いる。しかしながら、本発明の繊維はその長さが従来の
発明によるチタン酸カリウム繊維よりも短いが、束状物
や塊状物を実質的に含まない為に本発明の繊維の補強効
果は従来の発明によるチタン酸カリウム繊維よりも大き
いという特徴を有する。
【0017】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示してnが
4よりも大きくした場合にも、二チタン酸カリウムの混
入を防ぐことが出来るが、この場合には初生相として四
チタン酸カリウム中に六チタン酸カリウムが混入する
為、塊状の繊維を単一繊維に分離することが難しい。
【0018】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合割合が一般式K2 O・nTiO2 で示してnが
3.5〜4の場合、焼成温度では四チタン酸カリウム繊
維と液相とが安定に共存するが、該塊状焼成物をゆっく
りと冷却した場合にはこの中に含まれる液相が冷却過程
で二チタン酸カリウム繊維に変化する。しかしながら焼
成温度から800℃まで30分以内の時間で冷却すると
該液相は大きい二チタン酸カリウム結晶に変化すること
なく、非結晶質成分として該焼成物中に存在する。この
非結晶質成分は、塊状焼成物を水あるいは温水中に浸漬
して繊維を単一繊維に分離する工程でコロイド粒子とし
て液中に分散するので、該コロイド粒子は繊維を固液分
離する工程で水と共に分離除去することができる。した
がって、実質的に二チタン酸カリウムに由来する二酸化
チタンと六チタン酸カリウムとの多結晶体繊維を含まな
い六チタン酸カリウム繊維を得ることができるのであ
る。
【0019】尚、チタン原料化合物とカリウム原料化合
物との混合割合が、一般式K2 O・nTiO2 で示して
nが、3.5よりも小さい時には、冷却速度をより速く
しても塊状焼成物中への大きい二チタン酸カリウム結晶
の混入を防ぎ難い。
【0020】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合方法は、乾式混合よりもチタン原料化合物のスラ
リーにカリウム原料化合物を添加溶解した後に、ニーダ
ーで混錬しながら乾燥するか、あるいは噴霧乾燥する方
法が原料混合物の組成の不均一性が少なくなるので好ま
しい。即ち、この原料混合物の組成が不均一な場合、二
チタン酸カリウムや六チタン酸カリウムが四チタン酸カ
リウム中に混在し易くなるので好ましくない。
【0021】焼成温度は、950〜1100℃の範囲が
好ましい。焼成温度が950℃より低いと反応が遅く、
得られるチタン酸カリウム繊維の長さが短くなりすぎ、
単一繊維への分離が難しく、束状凝結物の含有量が多く
なる。又、焼成温度が1100℃よりも高い場合には冷
却途上での二チタン酸カリウムの生成を防止し難い。ま
た、初生相として六チタン酸カリウム繊維が混入するた
め繊維を単一繊維に分離することが難しくなり、束状凝
結物の含有量が多くなる。尚、焼成時間は0.5〜4時
間、好ましくは1〜2時間である。
【0022】塊状焼成物を単一繊維に分離する操作は、
焼成物を適量の水または温水中に投入して1〜5時間浸
漬後、高剪断力を有するミキサーで攪拌することにより
なされる。該操作終了時のスラリーのpHはスラリー濃
度により異なるが、通常12〜13程度であり、四チタ
ン酸カリウム水和物とコロイド状の酸化チタンの水和物
との混合相である。コロイド状の酸化チタンの水和物は
固液分離工程で水と挙動を共にし、繊維から分離除去さ
れる。最終製品として六チタン酸カリウム繊維を得る為
には、四チタン酸カリウム水和物結晶の層間に存在する
カリウムの一部を除去して、その組成をK2 O/TiO
2 (モル比)で5.95〜6.00に調整する必要があ
る。そこで、塊状焼成物を単一繊維に分離した後のスラ
リーに酸を添加してスラリーのpHを9.2〜9.5に
調整する。この時のpHが9.5よりも高い場合には、
繊維の組成がK2O/TiO2 (モル比)で5.95よ
りも小さくなり、次工程の加熱処理を施しても層状構造
四チタン酸カリウムが残存する為、最終製品中の遊離カ
リウムが多くなり、好ましくない。又pHが9.2より
も低い場合には、四チタン酸カリウム水和物からカリウ
ムイオンの抽出が進みすぎて最終製品である六チタン酸
カリウム繊維の表面に二酸化チタンが生成する為、繊維
が多相の結晶体となり、繊維の強度が低下するのみなら
ず、繊維のなかの結晶粒界にカリウムが閉じ込められ、
このカリウムは酸処理工程で除去することが出来ず、熱
可塑性樹脂との混錬時に繊維が折損した時にこの結晶粒
界に存在していたカリウムが遊離カリウムとして作用
し、熱可塑性樹脂を分解させる。また、該チタン酸カリ
ウム繊維を軽金属の補強材として利用した場合、二酸化
チタンが軽金属の成分と非常に反応し易い為、補強効果
が減少するだけでなく、複合材料の機械的強度のバラツ
キが大きくなるという問題を生ずる。
【0023】なお、スラリーのpHを調整する為に添加
する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸等が
使用できる。
【0024】組成変換処理終了時のスラリー中におい
て、繊維は分散状態にある。このまま固液分離をして乾
燥すると、該乾燥物中には束状に集合した繊維が多く存
在しており、この束状に集合した繊維は次工程の加熱処
理温度が低い場合には特に変化せず分散性は悪くならな
いが、軽金属との反応性を少なくさせる目的および遊離
カリウム量を減少させる目的で950℃以上という高温
で加熱処理すると凝結して、分散の難しい束状凝結物に
変化するという現象を見出した。そこで、この問題点を
解決する為に鋭意検討したところ、組成変換処理終了時
のスラリーに従来公知の高分子凝集剤を添加して、該繊
維を凝集させることが、乾燥物中の束状に集合した繊維
を少なくすることに繋がり、これにより該乾燥物を高温
で加熱処理しても束状凝結物が特に生成しないことを見
出し、この問題を解決した。
【0025】組成変換処理した後、固液分離して得た固
形分の加熱温度は、950〜1050℃の範囲が好まし
く、加熱時間は0.5〜1時間が好ましい。加熱時間が
950℃よりも低い場合は、繊維の芯部に微量の層状構
造四チタン酸カリウムが残存する為、樹脂や軽合金と複
合化する際に繊維が折れた場合に破断面から遊離カリウ
ムが出て樹脂を分解するので好ましくないのみならず、
繊維の比表面積が大きく、且つ結晶子径が小さい為結晶
性が悪く、軽金属と反応し易く好ましくない。又、加熱
温度が1050℃より高い場合は、繊維が焼結しはじ
め、分散が悪くなるので好ましくない。
【0026】繊維製造の最終工程の酸洗浄は、加熱処理
により繊維の芯部から表面に移動した遊離カリウムを除
去する工程であるが、繊維を水または温水中に分散した
後、酸を添加して該スラリーのpHを7以下、好ましく
は3〜5に調整することによりなされる。
【0027】本発明で使用されるチタン原料化合物とし
ては、含水酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ル
チル型二酸化チタンおよびルチル鉱などをあげることが
でき、カリウム原料化合物として焼成時にK2 Oを生じ
る化合物、例えばK2 O、KOH、K2 CO3 およびK
NO3 などを挙げることができる。また、アルミニウム
およびニオブ以外の不純物の酸化物換算量での含有量が
1%以下である六チタン酸カリウム繊維を合成する為に
は純度の高い原料化合物を使用することが必要である。
例えば塩素法で製造された二酸化チタンで無機物の表面
処理を施していないもの、高純度酸化チタンあるいは不
純物含有量の少ない含水酸化チタン等が有効に使用され
る。
【0028】原料化合物中に含まれるニオブはほぼ全量
がチタン酸カリウム繊維の結晶格子中に固溶されるのに
対し、原料化合物中のアルミニウムの一部はカリウムと
化合物を形成する為、その一部がチタン酸カリウム繊維
の結晶格子中に固溶されるに止まるので、チタン原料化
合物中に含まれるアルミニウムとニオブの割合は少なく
ともAl23 /Nb25 (モル比)で0.7以上で
あることが必要である。チタン酸カリウム繊維の結晶構
造中に取り込まれずにカリウムと化合したアルミニウム
はチタン酸カリウム繊維の特性向上に対し何ら影響を及
ぼさないのみならず、むしろ、チタン酸カリウム繊維の
結晶構造を層状構造からトンネル構造に変換する工程で
チタン酸カリウム繊維と反応してこれを損傷する為分離
除去することが望ましい。塊状チタン酸カリウム繊維を
合成後、該塊状物を水又は温水に浸漬して単一繊維に分
離する工程でアルミニウムとカリウムの化合物が水に溶
解するので、酸を添加する前に固液分離することで、上
記のカリウムと化合したアルミニウムを除去することが
できる。しかしカリウムと反応したアルミニウム分の含
有量がチタン酸カリウム繊維に対し酸化物表示で0.2
%程度以下であれば分離除去しなくても特に問題はな
い。尚、原料化合物中にカリウムと水溶性の化合物をつ
くる不純物が多く含まれる場合には塊状物を水又は温水
に浸漬して単一繊維に分離後、酸を加える前に固液分離
して不純物を除去することがチタン酸カリウム繊維の特
性の向上に繋がる。
【0029】ニオブに対するアルミニウムの含有量がA
23 /Nb25 (モル比)で0.7よりも小さい
化合物を原料として使用する場合には原料化合物にアル
ミニウム化合物を添加してAl23 /Nb25 (モ
ル比)で0.7以上、1.2以下になるように調整すれ
ばよい。Al23 /Nb25 (モル比)が1.2よ
りも多くなるように添加しても、合成されるチタン酸カ
リウム繊維の特性向上には繋がらないのみならず、生成
するアルミン酸カリウムの量が多くなる為に塊状物を単
一繊維に分離することが難しくなるので好ましくない。
尚、添加するアルミニウム化合物としては硫酸アルミニ
ウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化ア
ルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸塩等を挙げ
ることができる。
【0030】ニオブおよびアルミニウムの総量は特に規
定するものではなく、両者のモル比が上記の範囲に有れ
ばよい。但し、前述の説明から分かるように、両者の総
量は原料中に含まれるニオブの量に依存することにな
る。ちなみに、通常使用される原料中に含まれるニオブ
の量は多い場合でNb25 表示で0.6%程度であ
り、この場合にはニオブとアルミニウムの総量は酸化物
表示で0.9%程度となる。
【0031】チタン酸カリウム中に含まれるニオブ及び
アルミニウム以外の不純物の含有量はできるだけ少ない
方が好ましいが、酸化物換算量で1%以下であれば特に
問題はない。即ち、これらの不純物含有量が1%よりも
多くなると、チタン酸カリウム繊維中に含まれるアルミ
ニウムとニオブの割合がAl23 /Nb25 (モル
比)で0.6以上であっても、チタン酸カリウム繊維と
軽金属との複合材料を熱処理した場合の強度の低下が大
きくなり、チタン酸カリウム繊維による強化効果が低下
する。特に原子価4価以外の元素がチタン酸カリウム繊
維の結晶構造中に固溶していたり、あるいは原子価が4
価であっても酸素との親和力がチタニウムよりも弱い元
素がチタン酸カリウム繊維の結晶構造中に固溶している
ような場合にその影響が大きい。チタン酸カリウム繊維
の結晶構造中にこのような元素が固溶していると、軽金
属との複合化時あるいは複合化後の熱処理時に、チタン
酸カリウム繊維が還元されやすくなりこの為に繊維の強
度が低下して、チタン酸カリウム繊維による強化効果が
減少するからである。
【0032】本発明に使用される軽金属としては、アル
ミニウム軽合金、例えばAl−Mg系、Al−Mn系、
Al−Si系、Al−Mg−Si系、Al−Cu系、A
l−Cu−Si系又はAl−Cu−Mg−Ni系等をい
い、通常用いられるアルミニウム軽合金は何ら問題無く
使用される。更には、マグネシウム系の軽合金も使用で
きる。
【0033】六チタン酸カリウム繊維と軽金属との複合
化方法としては、例えば、粉末冶金法、高圧鋳造法等の
従来公知の方法が使用される。
【0034】本発明にかかる六チタン酸カリウム繊維で
強化された金属基複合材料は機械的強度のバラツキが少
なく、熱処理で強度が向上するという特徴を有し、さら
にこれにより強化されたプラスチックス複合材料は高強
度でかつ表面平滑性に優れているという特徴を有する。
【0035】繊維の結晶性は、比表面積を測定すること
により定量化される。即ち、本発明の六チタン酸カリウ
ム繊維は、初生相として四チタン酸カリウム繊維を合成
し、この後該四チタン酸カリウム繊維の組成をイオン交
換により六チタン酸カリウムの組成に調整し、次いで加
熱により該繊維の結晶構造を層状構造からトンネル構造
に変換する方法で合成されるが、層状構造を有する四チ
タン酸カリウム繊維のBET法による比表面積の測定値
がこれと同一形状および寸法を有するトンネル構造の六
チタン酸カリウム繊維のBET法での比表面積のそれの
3〜4倍の値となることを利用して、加熱後の繊維のB
ET法による比表面積の測定値を、繊維の結晶構造が加
熱による層状構造からトンネル構造に変換する度合い、
すなわち六チタン酸カリウム繊維の結晶性の目安とする
ことができる。
【0036】尚、層状構造を有する四チタン酸カリウム
繊維のBET法による比表面積の測定値がこれと同一形
状および寸法を有するトンネル構造の六チタン酸カリウ
ム繊維のBET法での比表面積よりも大幅に大きくなる
のは、窒素ガスが四チタン酸カリウムの結晶構造の層間
に進入する為と考えられる。
【0037】さらに、繊維の結晶性は結晶子径を測定す
ることによっても定量化される。結晶子径は公知の、た
とえばX線回折によるScherrerの式を用いて、繊維の伸
張方向に垂直な方向である(200)回折線から求める
ことができる。比表面積および結晶子径はどちらも結晶
性の尺度であり、比表面積が小さくなると結晶子径が大
きくなるという対応関係にある。結晶子径が650オン
グストローム以上であれば、本発明にかかる繊維の所定
の効果を奏することができる。
【0038】以上の本発明の製法により得られる六チタ
ン酸カリウム繊維は、平均長が8〜30μmおよび平均
径が0.2〜0.7μmであり、比表面積が2〜4m2
/gの実質的に四チタン酸カリウム、および六チタン酸
カリウムの束状凝結物を含まない六チタン酸カリウム繊
維である。そして本発明の六チタン酸カリウム繊維で強
化した熱可塑性樹脂は高強度であるのみならず表面性に
優れている。特に、遊離カリウムの存在を嫌う樹脂であ
る、例えばポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフ
タレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ
フェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー等の強化に
用いた場合にその有効性を発揮する。
【0039】また、本発明による六チタン酸カリウム繊
維で強化した金属基複合材料は機械的強度のバラツキが
少なく工業材料として信頼性が高いという特徴を有す
る。従来の補強材用チタン酸カリウム繊維は、ニオブ、
アルミニウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄お
よびシリカ等の不純物を多く含んでいる硫酸法によるア
ナターゼ型酸化チタンやメタチタン酸あるいは天然産の
ルチルサンドやアナターゼサンド等を原料にして合成さ
れていた。これらの原料から合成されるチタン酸カリウ
ム繊維は不純物を多く含有しており、この不純物含有量
の多いチタン酸カリウム繊維は、たとえ表面活性を小さ
くする為に高温で焼成して、比表面積を小さくしても、
該六チタン酸カリウム繊維で強化した軽合金の熱処理時
の強度の低下を防ぎ難く、特に原子価が4価以外の元素
が不純物としてチタン酸カリウムの結晶構造中に固溶し
ている時には、その存在の影響が大きいという問題を有
していたのである。
【0040】高圧鋳造法で複合材料を作成する場合、予
め繊維予成形体を作製する必要があるが、この際には無
機系のバインダーを添加して作製した繊維予成形体を使
用するよりも、焼結繊維予成形体を使用する方が好まし
い。即ち、無機系のバインダーを添加して繊維予成形体
を作製すると、無機系のバインダーとチタン酸カリウム
繊維とが反応してチタン酸カリウム繊維の強度が低下
し、この為に本来のチタン酸カリウム繊維が有している
補強効果を軽金属に有効に付与しがたくなるのみなら
ず、無機系バインダーが合金成分と反応し易いので合金
成分が偏在することあるいは合金成分が母材の強度向上
に影響する金属間化合物の生成を妨害すること等に繋が
り、熱処理の効果が得られ難くなる。
【0041】該焼結予成形体は以下のようにして製造す
ることができる。即ち、チタン酸カリウム繊維を含む強
化材に有機バインダーを添加混合後、800〜1100
℃の温度で焼成するとチタン酸カリウム繊維が適度に焼
結して、良好な特性を有する溶湯鋳造用の予成形体とす
ることができる。
【0042】六チタン酸カリウム繊維と軽金属との配合
割合は、六チタン酸カリウム繊維の体積率が5〜40%
である。六チタン酸カリウム繊維の体積率が5%より小
さい場合は六チタン酸カリウム繊維によりマトリックス
金属を強化する効果が非常に小さく、逆に六チタン酸カ
リウム繊維の体積率が40%を越える範囲においては、
六チタン酸カリウム繊維の体積率の増大に伴う複合材料
の強度の向上度合いが小さくなるのみならず、六チタン
酸カリウム繊維の使用量が増大するにつれて複合材料の
コストが高くなるので好ましくない。
【0043】本発明による金属基複合材料の製造に際
し、強化材として更にアルミナ短繊維、結晶質アルミナ
ーシリカ短繊維、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウ
ィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、アルミナ長
繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、チラノ繊維等を併用
使用することができる。前記の繊維あるいはウィスカー
を併用使用することにより、本発明による六チタン酸カ
リウム繊維強化金属基複合材料の強度を更に向上させた
り、耐摩耗性を向上させたり、あるいは熱膨張率を更に
低下させることができる。
【0044】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すもので
あり、発明の範囲がこれらによって制限されるものでは
ない。
【0045】実施例 1.TiO230%、Nb2
50.129%、Al230.017%を含むメタチタ
ン酸スラリー4700g中にAl23として50g/リ
ットルの硫酸アルミニウム水溶液18mlを加えた後2
0分間撹拌した。この後炭酸カリウム粉末655gを添
加混合した後、入口温度270〜280℃、出口温度8
0〜85℃の条件で噴霧乾燥した。次に、該粉末をアル
ミナ製ルツボに入れ、電気炉中で昇温速度250℃/
時、焼成温度1030℃、保持時間1時間の条件で焼成
した後、800℃まで20分で降温し、以後室温まで2
00℃/時の速度で降温した。
【0046】焼成物をステンレス製容器中15リットル
の温水に投入して5時間浸漬した後、T.K.ホモミキ
サー(特殊機化工業製高剪断力ミキサー)を使用し、4
000rpmで1時間撹拌後、スラリー温度を60℃に
調整した。5N−塩酸を滴下してpHを9.3に調整し
た。この後撹拌を更に続けると四チタン酸カリウムの層
間からカリウムイオンが溶出する為、pHが高くなる
が、塩酸滴下後、30分間撹拌を続けた場合のpHの上
昇が0.1以下になるまで30分間隔で塩酸を滴下して
pHを9.3に調整した。チタン酸カリウム繊維に対し
0.2重量%の高分子凝集剤(共立有機工業研究所製、
商品名:ハイモロックMP−173H)を添加して繊維
を凝集させた。
【0047】濾過洗浄後、1030℃で1時間焼成し
た。該焼成物を10リットルの温水中に投入し、T.
K.ホモミキサーで30分間撹拌して該繊維を分散させ
た。1N−塩酸を滴下して、pHを4に調整した。濾
過、洗浄、乾燥して繊維を得た。この繊維をX線回折に
より同定したところ、六チタン酸カリウムしか確認され
なかった。更に、分析電子顕微鏡でも該繊維を調べた
が、特に他の相は認められなかった。また、走査型電子
顕微鏡により繊維を観察したところ、平均的な長さは1
4μmであり、平均径は0.4μmであった。BET法
により比表面積を測定したところ3.2m2/gであっ
た。Scherrerの式の定数Kを0.9として、
(200)回折線から結晶子径を求めたところ、690
Åであった。
【0048】該チタン酸カリウム繊維を化学分析により
調べたところ、Nb25 0.355%、Al23
0.096%、Fe23 0.007%、MgO 0.
009%,CaO 0.085%、ZnO 0.013
%、P25 0.009%、SiO2 0.006%等
の不純物を含み、TiO2/K20(モル比)は6.0で
あった。
【0049】また、粉末X線回折法により高純度ケイ素
粉末(99.9%)を内部標準として(712)格子面
間隔dを求めたところ、1.6644Åであった。
【0050】該チタン酸カリウム繊維を、150g/リ
ットルの濃度になるように水を加え、更にチタン酸カリ
ウム繊維に対し0.1重量%の分散剤(サンノプコ製:
ノプコサントRFA)を添加した後、ホモミキサーで3
0分間撹拌して分散させた。この後チタン酸カリウム繊
維に対し8.0重量%相当量のポリビニルアルコール
(クラレ製、商品名:クラレポバール205)を加えた
後、塩ビ製型枠の中に入れ、吸引濾過し成形体を得た。
該吸引成形体を塩ビ製型枠内から金型内に移し、繊維体
積率が30%になるように加圧した。プレス成形体を金
型から取り出し乾燥した後950℃に加熱して焼結予成
形体を得た。
【0051】該焼結予成形体を約800℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約800
℃の米国規格A132材の溶湯を注ぎ、ただちに100
0kg/cm2の圧力を加えたまま急速に冷却凝固し
て、複合素材を製造した。
【0052】実施例 2.実施例 1において、四チタ
ン酸カリウム繊維の層間からカリウムの一部を除去した
後の焼成温度を1030℃から950℃に変えた他はす
べて同様な条件で六チタン酸カリウム繊維を合成した。
得られた繊維の純度および組成は実施例1と同じであっ
た。また、走査型電子顕微鏡により繊維を観察したとこ
ろ、平均的な長さは14μmであり、平均径は0.4μ
mであった。また、BET法により比表面積を測定した
ところ3.8m2/gであった。
【0053】実施例 1と同様な手法により繊維体積率
が30%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を
約800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型
に設置した後、約800℃の米国規格A132材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0054】比較例 1 TiO230%、Nb250.129%、Al230.
017%を含むメタチタン酸スラリー4700g中に炭
酸カリウム粉末840gを添加混合した後、入口温度2
70〜280℃、出口温度80〜85℃の条件で噴霧乾
燥した。次に、該粉末をアルミナ製ルツボに入れ、電気
炉中で昇温速度250℃/時、焼成温度1050℃、保
持時間1時間の条件で焼成した後、250℃/時の速度
で降温した。
【0055】焼成物をステンレス製容器中15リットル
の温水に投入して5時間浸漬した後、600rpmで撹
拌を開始し、スラリー温度を60℃に調整した。5N−
塩酸を滴下してpHを9.5に調整した。この後撹拌を
更に続けると四チタン酸カリウムの層間からカリウムイ
オンが溶出する為、pHが高くなるが、塩酸滴下後、3
0分間撹拌を続けた場合のpHの上昇が0.1以下にな
るまで30分間隔で塩酸を滴下してpHを9.5に調整
した。
【0056】濾過後、1000℃で1時間焼成した。該
焼成物を10リットルの温水中に投入し、T.K.ホモ
ミキサーで30分間撹拌して該繊維を分散させた。1N
−塩酸を滴下して、pHを4に調整した。濾過、洗浄、
乾燥して六チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX
線回析により同定したところ、六チタン酸カリウムしか
確認されなかったが、更に分析電子顕微鏡で調べたとこ
ろ、カリウムを殆ど含まない繊維が存在することが分か
った。また、走査型電子顕微鏡により繊維を観察したと
ころ、平均的な長さは42μmであり、平均径は0.8
μmであった。BET法により比表面積を測定したとこ
ろ4.2m2/gであった。Scherrerの式の定
数Kを0.9として、(200)回析線から結晶子径を
求めたところ、630Åであった。
【0057】該チタン酸カリウム繊維を化学分析により
調べたところ、Nb25 0.353%、Al23
0.042%、Fe23 0.006%、MgO 0.
010%、CaO 0.087%、ZnO 0.012
%、P25 0.010%、SiO2 0.007%等
の不純物を含み、TiO2/K20(モル比)は6.0で
あった。
【0058】また、粉末X線回折法により高純度ケイ素
粉末(99.9%)を内部標準として(712)格子面
間隔dを求めたところ、1.6657Åであり、実施例
1のチタン酸カリウムのそれよりもおおきい値であっ
た。これは実施例1のチタン酸カリウムの結晶格子の中
に、Ti3+よりもイオン半径の小さいAl3+がTi
3+と置換固溶した為と考えられる。実施例 1と同様
な手法により繊維体積率が30%の焼結予成形体を作製
した。該焼結予成形体を約800℃に予熱後、予め35
0℃に加熱してある金型に設置した後、約800℃の米
国規格A132材の溶湯を注ぎ、ただちに1000kg
/cm2の圧力を加えたまま急速に冷却凝固して、複合
素材を製造した。
【0059】実施例 3 チタン原料としてアナターゼ型酸化チタン(Nb2
50.157%、Al230.072%)を使用した他
は実施例 1と同様な条件で六チタン酸カリウム繊維を
合成した。走査型電子顕微鏡により繊維を観察したとこ
ろ、平均的な長さは13μmであり、平均径は0.4μ
mであった。(BET法により比表面積を測定したとこ
ろ2.9m2/gであった。)該チタン酸カリウム繊維
を化学分析により調べたところ、Nb25 0.130
%、Al23 0.055%、Fe23 0.008
%、MgO 0.009%、CaO0.101%、Zn
O0.010%、P25 0.010%、SiO2
0.007%等の不純物を含み、TiO2/K20(モル
比)は6.0であった。実施例 1と同様な手法により
繊維体積率が30%の焼結予成形体を作製した。該焼結
予成形体を約800℃に予熱後、予め350℃に加熱し
てある金型に設置した後、約800℃の米国規格A13
2材の溶湯を注ぎ、ただちに1000kg/cm2の圧
力を加えたまま急速に冷却凝固して、複合素材を製造し
た。
【0060】比較例 2.チタン原料としてアナターゼ
型酸化チタン(Nb250.157%、Al230.0
32%)を使用した他は比較例 1と同様な条件で六チ
タン酸カリウム繊維を合成した。走査型電子顕微鏡によ
り繊維を観察したところ、平均的な長さは22μmであ
り、平均径は0.6μmであった。BET法により比表
面積を測定したところ4.6m2/gであった。該チタ
ン酸カリウム繊維を化学分析により調べたところ、Nb
25 0.131%、Al23 0.026%、Fe2
30.012%、MgO0.014%、CaO 0.
094%、ZnO 0.014%、P25 0.010
%、SiO2 0.013%等の不純物を含み、TiO2
/K20(モル比)は6.0であった。
【0061】実施例 1と同様な手法により繊維体積率
が30%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を
約800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型
に設置した後、約800℃の米国規格A132材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0062】参考例 1 大塚化学製チタン酸カリウムウィスカー・ティスモNを
使用した他は実施例1と同様な条件で焼結予成形体を得
た。尚、該チタン酸カリウムウィスカーを化学分析によ
り調べたところ、Nb25 0.120%、Al23
0.062%、Fe23 0.010%、MgO 0.
027%、CaO 0.111%、ZnO 0.001
%、P25 0.089%、SiO2 0.005%等
の不純物を含み、TiO2/K20(モル比)は6.3で
あった。また、X線回折で調べたところ六チタン酸カリ
ウムとアナターゼ型二酸化チタンの2相混合物であるこ
とが分かった。 また、走査型電子顕微鏡によりウィス
カーを観察したところ、平均的な長さは10μmであ
り、平均径は0.4μmであった。また、BET法によ
り比表面積を測定したところ7.2m2/gであった。
Scherrerの式を用いて、(200)回折線から
結晶子径を求めたところ、405オングストロームであ
った。
【0063】該焼結予成形体を約800℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約800
℃の米国規格A132材の溶湯を注ぎ、ただちに100
0kg/cm2の圧力を加えたまま急速に冷却凝固し
て、複合素材を製造した。
【0064】参考例 2 日本ウィスカー製チタン酸カリウムウィスカー・トフィ
カYを使用した他は実施例 1と同様な条件で焼結予成
形体を得た。尚、該チタン酸カリウムウィスカーを化学
分析により調べたところ、Nb25 0.222%、A
23 0.276%、Fe23 1.487%、Ni
O 0.008%、MnO 0.034%、MgO
0.073%、CaO 0.053%、ZnO 0.0
11%、P25 0.131%、SiO2 0.010
%等の不純物を含み、TiO2/K20(モル比)は6.
2であった。また、X線回折で調べたところ六チタン酸
カリウムとアナターゼ型二酸化チタンの2相混合物であ
ることが分かった。また、走査型電子顕微鏡によりウィ
スカーを観察したところ、平均的な長さは12μmであ
り、平均径は0.4μmであった。また、BET法によ
り比表面積を測定したところ8.3m2/gであった。
Scherrerの式を用いて、(200)回折線から
結晶子径を求めたところ、365オングストロームであ
った。
【0065】該焼結予成形体を約800℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約800
℃の米国規格A132材の溶湯を注ぎ、ただちに100
0kg/cm2の圧力を加えたまま急速に冷却凝固し
て、複合素材を製造した。
【0066】実施例 1、2及び3、比較例 1及び
2、参考例 1及び2で得られた複合素材を機械加工
し、引張試験片を作製した。図 1に引張試験用の試験
片形状を示す。
【0067】熱処理する前およびT71熱処理(525
℃×16時間の容体化処理後水中急冷した後188℃×
5時間の焼戻し処理)後の常温引張強度を測定した。試
験結果を第1表に示す。
【0068】 第1表 引張強度(MPa) ワイブル係数 熱処理前 熱処理後 熱処理前 熱処理後 実施例 1 393 438 54 57 実施例 2 389 425 49 52 実施例 3 394 429 58 52 比較例 1 364 330 16 14 比較例 2 359 322 15 12 参考例 1 334 270 13 11 参考例 2 325 251 12 12 ※試験片数 13ケ 第1表に明らかなように、本発明によるチタン酸カリウ
ム繊維強化複合材料の鋳放し品の強度は、比較例1、2
及び参考例1、2の複合材料のそれに比べ高く、この強
度差は該複合材に熱処理を施すことにより更に大きくな
っている。また、本発明によるチタン酸カリウム繊維強
化複合材料の強度のバラツキが非常に小さい。比較例
1および2の引張試験片の破断面を走査型電子顕微鏡で
観察したところ、強度が低くでた試験片の破断面には1
0〜30μmの径の束状物が多く観察された。これに対
し、実施例 1〜3の試験片の破断面には束状物が特に
観察されなかった。また、比較例および参考例の複合材
料の母材と複合部との境界付近にはMgの富化部が観察
され、複合部の内部に向かう程Mgの含有量が低下して
いることが分かった。これに対し、実施例 1〜3の複
合材料の母材と複合部との境界付近には軽金属成分の偏
折は特に観察されず、複合材料の外部と内部とでMgの
含有量に特に差は認められなかった。
【0069】不純物としてのアルミニウムの含有量とニ
オブの含有量がAl23/Nb25(モル比)で0.6
以上である市販チタン酸カリウムウィスカーで強化した
参考例の複合材料の強度が実施例および比較例のそれよ
りも大幅に低いのは、該チタン酸カリウムウィスカー中
に束状凝結物が多いこと以外に、双方のチタン酸カリウ
ムウィスカー共に六チタン酸カリウムの単一相ではない
ことおよび参考例 2のチタン酸カリウムウィスカーの
場合、更に不純物が大量に含まれていること等が原因と
考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は引張試験用の試験片形状を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 49/12 C22C 49/12 C30B 29/62 C30B 29/62 F // C22C 101:02 C22C 101:02 (56)参考文献 特開 昭62−240727(JP,A) 特開 平3−82725(JP,A) 特開 昭64−73031(JP,A) 特開 平5−899(JP,A) 特開 平5−898(JP,A) 特公 平3−38239(JP,B2) 特公 平1−59214(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 47/00 - 49/14 C30B 1/00 - 35/00 C08K 3/22 C08K 7/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均繊維長が8〜30μmおよび平均繊
    維径が0.2〜0.7μmであり、かつ比表面積が2〜
    4m2/gである、不純物としてのアルミニウムの含有
    量とニオブの含有量がAl23/Nb25(モル比)で
    0.6以上である六チタン酸カリウム繊維。
  2. 【請求項2】 アルミニウムおよびニオブ以外の不純物
    含有量が1%以下であることをさらに特徴とする請求項
    1記載の六チタン酸カリウム繊維。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の六チタン酸カリウム繊維
    および軽金属を含むことを特徴とする金属基複合材料。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の六チタン酸カリウム繊維
    および軽金属を含むことを特徴とする金属基複合材料。
  5. 【請求項5】 高圧鋳造法で複合材料を製造するに際し
    て、平均繊維長が8〜30μmおよび平均繊維径が0.
    2〜0.7μmであり、比表面積が2〜4m2/gであ
    り、かつ不純物としてのアルミニウムの含有量とニオブ
    の含有量がAl23/Nb25(モル比)で0.6以上
    である六チタン酸カリウム繊維の焼結体と、軽金属とを
    使用することを特徴とする、金属基複合材料の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 高圧鋳造法で複合材料を製造するに際し
    て、平均繊維長が8〜30μmおよび平均繊維径が0.
    2〜0.7μmであり、比表面積が2〜4m2/gであ
    り、かつ不純物としてのアルミニウムの含有量とニオブ
    の含有量がAl23/Nb25(モル比)で0.6以上
    であり、さらにアルミニウムおよびニオブ以外の不純物
    含有量が1%以下である六チタン酸カリウム繊維の焼結
    体と、軽金属とを使用することを特徴とする、金属基複
    合材料の製造方法。
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