JP3030121B2 - 補強材用六チタン酸カリウム繊維 - Google Patents

補強材用六チタン酸カリウム繊維

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JP3030121B2 JP3148833A JP14883391A JP3030121B2 JP 3030121 B2 JP3030121 B2 JP 3030121B2 JP 3148833 A JP3148833 A JP 3148833A JP 14883391 A JP14883391 A JP 14883391A JP 3030121 B2 JP3030121 B2 JP 3030121B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、プラスチックおよび軽金属の補
強材として有用な六チタン酸カリウム繊維、その製造方
法およびそれを含む金属基複合材料に係わり、更に詳細
には強化材として少なくとも平均繊維長が8〜30μm
および平均繊維径が0.2〜0.7μmであり、且つ比
表面積が2〜4m2 /gの補強材用六チタン酸カリウム
繊維、その製造方法およびそれを含む金属基複合材料に
関するものである。
【0002】さらに本発明は、複合材料のマトリックス
として軽金属を用いた場合に、より優れた性能を与え
る、不純物、特にニオブの含有量の少ない補強材用六チ
タン酸カリウム繊維に関する。
【0003】
【従来技術】近年、チタン酸カリウム繊維が汎用工業材
料を目的としたプラスチックスや軽金属の強化材として
注目されている。これは、強化素材となる他のセラミッ
クス・繊維が何れも高価であるのに対し、チタン酸カリ
ウム繊維が比較的安価で、該繊維で強化した複合材料の
製品コストも下がり幅広い用途が期待されるためであ
る。
【0004】従来、チタン酸カリウム繊維はアルミニウ
ム溶湯と激しく反応することが報告されていた(福永秀
春、武市通文、太田進啓:日本複合材科学会誌、8(1
982)、66)が、この問題点を改善したチタン酸カ
リウム繊維として、遊離カリウム含有量が5ppm以下
であるトンネル構造・六チタン酸カリウム繊維が開示さ
れている。(公開特許公報平1−301516号)該チ
タン酸カリウム繊維は、トンネル構造・六チタン酸カリ
ウム繊維中に含まれる層状構造チタン酸カリウムの含有
量を著しく減少させたものであり、このチタン酸カリウ
ム繊維の開発により、チタン酸カリウム繊維が汎用工業
材料を目的とした軽金属の強化材として注目され始めた
(K. Suganuma,T.Fujita,K.Niihara,T.Okamoto and S.
Suzuki:J. Mater. Sci. Letters, 8(1989),8
08)。
【0005】しかしながら、該チタン酸カリウム繊維は
10〜30μm径の束状凝結物を多く含むため、該繊維
で強化した金属基複合材料は機械的強度のバラツキが大
きく工業材料として好ましいものではなかった(菅沼克
昭他:粉体及び粉末冶金、8(1990))。更には、
該チタン酸カリウム繊維が軽合金中のマグネシウム成分
と反応し易いという欠点を有しており(菅沼克昭、勝田
輝昭、新原浩一、鈴木信幸:軽金属学会第75回秋期大
会講演概要(1988)、P.81)、更に該チタン酸
カリウム繊維で強化した金属基複合材料は機械的強度や
応力腐食割れ性等を向上させる為に熱処理を施すと逆に
強度が低下するという問題点も有していた。
【0006】また、該チタン酸カリウム繊維で強化した
プラスチックは上記束状凝結物の存在の為表面平滑性に
劣るのみならず、該繊維を配合したコンパウンドを使用
して微小部品を成形する場合に該束状凝結物が金型のゲ
ートを閉塞するという問題点を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のトン
ネル構造を有する六チタン酸カリウム繊維は分散の難し
い束状凝結物を多く含有している為に、該繊維で強化し
た金属基複合材料は機械的強度のバラツキが大きいと
か、あるいは該繊維で強化したプラスチックスは繊維強
化プラスチックスが持つべき最も重要な特性の一つであ
る表面平滑性に劣るという問題点を有していた。更に
は、該チタン酸カリウム繊維は軽金属の成分と反応し易
く、該繊維で強化した金属基複合材料は熱処理で強度が
低下する等の問題点も有しており、プラスチックスや軽
金属の補強材として好ましいものではなかった。
【0008】そこで、本発明は従来の六チタン酸カリウ
ム繊維の欠点を有さず、安価でかつ安定した高い機械的
強度と表面平滑性を付与しうるチタン酸カリウム繊維、
その製造方法およびそれを含む複合材料を提供すること
を目的とする。
【0009】
【課題を解決する手段】本発明者らは、上記の問題を解
決するため鋭意研究を行った結果、特定の形状と特定の
比表面積を有する六チタン酸カリウム繊維が好ましい結
果を与えることを見いだし本発明を完成した。すなわ
ち、本発明は平均繊維長8〜30μmで、平均繊維径が
0.2〜0.7μmであり、かつ比表面積が2〜4m2
/gである六チタン酸カリウム繊維を提供するものであ
る。
【0010】繊維の形状については、繊維長が長すぎる
場合、平均繊維径が太すぎる場合には繊維の塊状物が生
じるため上記の問題を解決することができず、一方、平
均繊維長が短い場合、平均繊維径が細い場合には所定の
補強効果が得られないので好ましくない。
【0011】本発明は、上記のような特定サイズの粒子
を合成する条件下では粒子の凝集等を防止できることを
発見し、さらに上記の比較的短い粒子について、その結
晶性を高めることにより強度を向上させ、物性的にも満
足のゆく補強材用六チタン酸カリウム繊維の提供を可能
としたものである。
【0012】本発明にかかる六チタン酸カリウム繊維
は、一般式K2 O・nTiO2 (但しn=3.5〜4)
で示される割合で配合されたチタン原料化合物とカリウ
ム原料化合物との混合物を950〜1100℃で焼成
後、800℃まで30分以内の時間で冷却する方法で塊
状の四チタン酸カリウム繊維を生成せしめ、次いで該塊
状生成物を水又は温水中に浸漬した後、高剪断力を有す
るミキサーで該塊状チタン酸カリウム繊維を単一繊維に
分離した後、該スラリーに酸を添加してpHを9.2〜
9.5に調整することにより、チタン酸カリウム繊維の
組成がTiO2 /K2 O(モル比)で5.95〜6.0
0の組成になるように組成変換処理後、高分子凝集剤を
添加して繊維を凝集させた後固液分離し、該固形分を9
50〜1050℃で焼成後、酸洗浄する方法により得ら
れる。
【0013】本発明にかかる六チタン酸カリウム繊維で
強化された金属基複合材料は機械的強度のバラツキが少
なく、またこれにより強化されたプラスチックス複合材
料は高強度でかつ表面平滑性に優れているという特徴を
有する。
【0014】さらに、不純物量が0.3重量%以下の六
チタン酸カリウム繊維(以下、本明細書で高品位六チタ
ン酸カリウム繊維と呼ぶ)においては、熱処理で強度が
向上するという特徴を有する。
【0015】本発明で使用されるチタン原料化合物とし
ては、含水酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ル
チル型二酸化チタンおよびルチル鉱などをあげることが
でき、カリウム原料化合物として焼成時にK2 Oを生じ
る化合物、例えばK2 O、KOH、K2 CO3 およびK
NO3 などを挙げることができる。また、高品位六チタ
ン酸カリウム繊維を合成する為には純度の高い原料化合
物を使用することが必要である。例えば塩素法で製造さ
れた二酸化チタンで無機物の表面処理を施していないも
の、高純度酸化チタンあるいは不純物含有量の少ない含
水酸化チタン等が有効に使用される。
【0016】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合割合は、一般式K2 O・nTiO2 で示してnが
3.5〜4の範囲である。即ち、nが3.5よりも小さ
いと冷却途上で四チタン酸カリウム繊維に二チタン酸カ
リウム繊維が混在してくる。二チタン酸カリウム繊維は
その形状が板状である為補強材として好ましくないのみ
ならず、次工程のチタン酸カリウム繊維の組成をTiO
2 /K2 O(モル比)で5.95〜6.00の組成に変
換する工程で四チタン酸カリウムと二チタン酸カリウム
が混在していると、その双方の組成をTiO2 /K2
(モル比)で5.95〜6.00の範囲に調整すること
が必要となり、条件の設定が非常に難しく再現性に乏し
くなるという問題を生ずる。即ち、組成変換工程で四チ
タン酸カリウムの組成をTiO2 /K2 O(モル比)で
5.95〜6.00の範囲に調節しようとすると、この
中に含まれる二チタン酸カリウムの組成は上記組成より
も大きくなるとの不都合を生じるし、また二チタン酸カ
リウムの組成をTiO2 /K2 O(モル比)で5.95
〜6.00の範囲に調節しようとすると、四チタン酸カ
リウムの組成は上記組成よりも小さくなるとの不都合を
生じる。チタン原料化合物とカリウム原料化合物との混
合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示してnを4に
近づける程、生成する四チタン酸カリウム繊維中の二チ
タン酸カリウム繊維の割合は減少していくが、原料の混
合割合の調節のみで二チタン酸カリウム混在の悪影響を
取り除くことは困難である。なぜなら、前述のように、
四チタン酸カリウムの組成をTiO2 /K2 O(モル
比)で5.95〜6.00の範囲に調節しようとする
と、この中に混在する二チタン酸カリウム繊維の組成は
TiO2 /K2 O(モル比)で6よりも大きくなるが、
この繊維は次の950〜1050℃で焼成する工程で二
酸化チタンと六チタン酸カリウムに分解し、この分解時
に他の繊維間のバインダーとして作用して焼結を促進す
るからである。この焼結繊維は分散が非常に難しく、補
強材として用いた場合に前記束状凝結物と同様な悪作用
をする。
【0017】また、この繊維は二酸化チタンと六チタン
酸カリウムからなる多相の結晶体なので強度が弱い上、
結晶粒界に存在するカリウムを酸処理工程で除去するこ
とができず、熱可塑性樹脂との混錬時に繊維が折損した
場合に該カリウムが遊離カリウムとして作用し、熱可塑
性樹脂を分解させる。更に、カリウムイオンが部分的に
不足するため、六チタン酸カリウム繊維の表面に二酸化
チタンが生成するが、該二酸化チタンが軽金属の成分と
反応し易い為、繊維強化による軽金属の強度の向上を阻
害したり、あるいは強化軽金属の強度のバラツキの原因
になる。
【0018】尚、チタン原料化合物とカリウム原料化合
物との混合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示して
nを4に近づける程、生成する繊維の長さが短くなる。
一般的に、繊維の長さが長い程補強効果が高いとされて
いる。しかしながら、本発明の繊維はその長さが従来の
発明によるチタン酸カリウム繊維よりも短いが、束状物
や塊状物を実質的に含まない為に本発明の繊維の補強効
果は従来の発明によるチタン酸カリウム繊維よりも大き
いという特徴を有する。
【0019】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示してnが
4よりも大きくした場合にも、二チタン酸カリウムの混
入を防ぐことが出来るが、この場合には初生相として四
チタン酸カリウム中に六チタン酸カリウムが混入する
為、塊状の繊維を単一繊維に分離することが難しい。
【0020】上記問題点を解決する為に検討を重ねたと
ころ、チタン原料化合物とカリウム原料化合物との混合
割合を、一般式K2 O・nTiO2 で示してnが、3.
5〜4の範囲に限定し、且つ焼成物の温度を反応温度か
ら800℃まで30分以内の時間で降温して得た塊状焼
成物は、高剪断力を有するミキサーを使用すれば単一繊
維に分離することができること、および水または温水中
で塊状繊維を単一繊維に分離した後の固液分離工程で、
焼成温度で融液として存在していた成分を固液分離工程
で水と共に繊維と分離除去できること等を見出してこの
問題点を解決した。即ち、チタン原料化合物とカリウム
原料化合物との混合割合が一般式K2 O・nTiO2
示してnが3.5〜4の場合、焼成温度では四チタン酸
カリウム繊維と液相とが安定に共存するが、該塊状焼成
物をゆっくりと冷却した場合にはこの中に含まれる液相
が冷却過程で二チタン酸カリウム繊維に変化する。しか
しながら焼成温度から800℃まで30分以内の時間で
冷却すると該液相は大きい二チタン酸カリウム結晶に変
化することなく、非結晶質成分として該焼成物中に存在
する。そして該非結晶質成分は、塊状焼成物を水あるい
は温水中に浸漬して繊維を単一繊維に分離する工程でコ
ロイド粒子として液中に分散し、該コロイド粒子は繊維
を固液分離する工程で水と共に分離除去することができ
る。この操作により、実質的に、二チタン酸カリウムに
由来する二酸化チタンと六チタン酸カリウムとの多結晶
体繊維を含まない六チタン酸カリウム繊維が得られるこ
とを見出し、前記問題点を解決した。
【0021】尚、チタン原料化合物とカリウム原料化合
物との混合割合が、一般式K2 O・nTiO2 で示して
nが、3.5よりも小さい時には、冷却速度をより速く
しても塊状焼成物中への大きい二チタン酸カリウム結晶
の混入を防ぎ難い。
【0022】チタン原料化合物とカリウム原料化合物と
の混合方法は、乾式混合よりもチタン原料化合物のスラ
リーにカリウム原料化合物を添加溶解した後に、ニーダ
ーで混錬しながら乾燥するか、あるいは噴霧乾燥する方
法が原料混合物の組成の不均一性が少なくなるので好ま
しい。即ち、この原料混合物の組成が不均一な場合、二
チタン酸カリウムや六チタン酸カリウムが四チタン酸カ
リウム中に混在し易くなるので好ましくない。
【0023】焼成温度は、950〜1100℃の範囲が
好ましい。即ち、焼成温度が950℃より低いと反応が
遅く、得られるチタン酸カリウム繊維の長さが短くなり
すぎ、単一繊維への分離が難しく、束状凝結物の含有量
が多くなる。又、焼成温度が1100℃よりも高い場合
には冷却途上での二チタン酸カリウムの生成を防止し難
い。また、初生相として六チタン酸カリウム繊維が混入
するため繊維を単一繊維に分離することが難しくなり、
束状凝結物の含有量が多くなる。尚、焼成時間は0.5
〜4時間、好ましくは1〜2時間である。
【0024】塊状焼成物を単一繊維に分離する操作は、
焼成物を適量の水または温水中に投入して1〜5時間浸
漬後、高剪断力を有するミキサーで攪拌することにより
なされる。該操作終了時のスラリーのpHはスラリー濃
度により異なるが、通常12〜13程度であり、四チタ
ン酸カリウム水和物とコロイド状の酸化チタンの水和物
との混合相である。コロイド状の酸化チタンの水和物は
固液分離工程で水と挙動を共にし、繊維から分離除去さ
れる。最終製品として六チタン酸カリウム繊維を得る為
には、四チタン酸カリウム水和物結晶の層間に存在する
カリウムの一部を除去して、その組成をK2 O/TiO
2 (モル比)で5.95〜6.00に調整する必要があ
る。そこで、塊状焼成物を単一繊維に分離した後のスラ
リーに酸を添加してスラリーのpHを9.2〜9.5に
調整する。この時のpHが9.5よりも高い場合には、
繊維の組成がK2O/TiO2 (モル比)で5.95よ
りも小さくなり、次工程の加熱処理を施しても層状構造
四チタン酸カリウムが残存する為、最終製品中の遊離カ
リウムが多くなり、好ましくない。又pHが9.2より
も低い場合には、四チタン酸カリウム水和物からカリウ
ムイオンの抽出が進みすぎて最終製品である六チタン酸
カリウム繊維の表面に二酸化チタンが生成する為、繊維
が多相の結晶体となり、繊維の強度が低下するのみなら
ず、繊維のなかの結晶粒界にカリウムが閉じ込められ、
このカリウムは酸処理工程で除去することが出来ず、熱
可塑性樹脂との混錬時に繊維が折損した時にこの結晶粒
界に存在していたカリウムが遊離カリウムとして作用
し、熱可塑性樹脂を分解させる。また、該チタン酸カリ
ウム繊維を軽金属の補強材として利用した場合、二酸化
チタンが軽金属の成分と非常に反応し易い為、補強効果
が減少するだけでなく、複合材料の機械的強度のバラツ
キが大きくなる。
【0025】スラリーのpHを調整する為に添加する酸
としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸等が使用で
きる。
【0026】組成変換処理終了時のスラリー中におい
て、繊維は分散状態にある。このまま固液分離をして乾
燥すると、該乾燥物中には束状に集合した繊維が多く存
在しており、この束状に集合した繊維は次工程の加熱処
理温度が低い場合には特に変化せず分散性は悪くならな
いが、軽金属との反応性を少なくさせる目的および遊離
カリウム量を減少させる目的で950℃以上という高温
で加熱処理すると凝結して、分散の難しい束状凝結物に
変化するという現象を見出した。そこで、この問題点を
解決する為に鋭意検討したところ、組成変換処理終了時
のスラリーに従来公知の高分子凝集剤を添加して、該繊
維を凝集させることが、乾燥物中の束状に集合した繊維
を少なくすることに繋がり、これにより該乾燥物を高温
で加熱処理しても束状凝結物が特に生成しないことを見
出し、この問題を解決した。
【0027】組成変換処理した後、固液分離して得た固
形分の加熱温度は、950〜1050℃の範囲が好まし
く、加熱時間は0.5〜1時間が好ましい。加熱時間が
950℃よりも低い場合は、繊維の芯部に微量の層状構
造四チタン酸カリウムが残存する為、樹脂や軽合金と複
合化する際に繊維が折れた場合に破断面から遊離カリウ
ムが出て樹脂を分解するので好ましくないのみならず、
繊維の比表面積が大きく、且つ結晶子径が大きい為結晶
性が悪く、軽金属と反応し易く好ましくない。又、加熱
温度が1050℃より高い場合は、繊維が焼結しはじ
め、分散が悪くなるので好ましくない。
【0028】繊維の結晶性は、比表面積を測定すること
により定量化される。即ち、本発明の六チタン酸カリウ
ム繊維は、初生相として四チタン酸カリウム繊維を合成
し、この後該四チタン酸カリウム繊維の組成をイオン交
換により六チタン酸カリウムの組成に調整し、次いで加
熱により該繊維の結晶構造を層状構造からトンネル構造
に変換する方法で合成されるが、層状構造を有する四チ
タン酸カリウム繊維のBET法による比表面積の測定値
がこれと同一形状および寸法を有するトンネル構造の六
チタン酸カリウム繊維のBET法での比表面積のそれの
3〜4倍の値となることを利用して、加熱後の繊維のB
ET法による比表面積の測定値を、繊維の結晶構造が加
熱による層状構造からトンネル構造に変換する度合い、
すなわち六チタン酸カリウム繊維の結晶性の目安とする
ことができる。
【0029】尚、層状構造を有する四チタン酸カリウム
繊維のBET法による比表面積の測定値がこれと同一形
状および寸法を有するトンネル構造の六チタン酸カリウ
ム繊維のBET法での比表面積よりも大幅に大きくなる
のは、窒素ガスが四チタン酸カリウムの結晶構造の層間
に進入する為と考えられる。
【0030】さらに、繊維の結晶性は結晶子径を測定す
ることによっても定量化される。結晶子径は公知の、た
とえばX線回折によるScherrerの式を用いて、繊維の伸
張方向に垂直な方向である(200)回折線から求める
ことができる。比表面積および結晶子径はどちらも結晶
性の尺度であり、比表面積が小さくなると結晶子径が大
きくなるという対応関係にある。結晶子径が650オン
グストローム以上であれば、本発明にかかる繊維の所定
の効果を奏することができる。
【0031】酸洗浄は加熱処理により、繊維の芯部から
表面に移動した遊離カリウムを除去する工程であるが、
繊維を水または温水中に分散した後、酸を添加して該ス
ラリーのpHを7以下、好ましくは3〜5に調整するこ
とによりなされる。
【0032】以上の本発明の製法により得られる六チタ
ン酸カリウム繊維は、平均長が8〜30μmおよび平均
径が0.2〜0.7μmであり、比表面積が2〜4m2
/gの実質的に四チタン酸カリウム、および六チタン酸
カリウムの束状凝結物を含まない六チタン酸カリウム繊
維である。そして本発明の六チタン酸カリウム繊維で強
化した熱可塑性樹脂は高強度であるのみならず表面性に
優れている。特に、遊離カリウムの存在を嫌う樹脂であ
る、例えばポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフ
タレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ
フェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー等の強化に
用いた場合にその有効性を発揮する。
【0033】また、本発明による六チタン酸カリウム繊
維で強化した金属基複合材料は機械的強度のバラツキが
少なく工業材料として信頼性の高いものである。更に、
本発明による製法で合成された不純物の少ない高品位六
チタン酸カリウム繊維で強化された金属基複合材料は機
械的強度のバラツキが少ないのみならず、熱処理によ
り、該金属基複合材料の強度が更に高くなり、熱的安定
性に優れている。即ち、従来の補強材用チタン酸カリウ
ム繊維は、ニオブ、アルミニウム、リン、カルシウム、
マグネシウム、鉄およびシリカ等の不純物を多く含んで
いる硫酸法によるアナターゼ型酸化チタンやメタチタン
酸あるいは天然産のルチルサンドやアナターゼサンド等
を原料にして合成されており、これらの原料から合成さ
れるチタン酸カリウム繊維は不純物を多く含有してお
り、この不純物含有量の多いチタン酸カリウム繊維は、
たとえ表面活性を小さくする為に高温で焼成して、比表
面積を小さくしても、該六チタン酸カリウム繊維で強化
した軽合金の熱処理時の強度の低下を防ぎ難い。特に原
子価が4価以外の元素が不純物としてチタン酸カリウム
の結晶構造中に固溶している時にその存在の影響が大き
い。不純物が少ない程、該繊維で強化した軽合金の特性
が良好であるが、ニオブの含有率がNb25 で0.1
%以下であり、且つ不純物の総量が酸化物表示で0.3
%以下であれば特に問題はない。
【0034】本発明に使用される軽金属としては、アル
ミニウム軽合金、例えばAl−Mg系、Al−Mn系、
A1−Si系、Al−Mg−Si系、Al−Cu系、A
l−Cu−Si系又はAl−Cu−Mg−Ni系等をい
い、通常用いられるアルミニウム軽合金は何ら問題無く
使用される。更には、マグネシウム系の軽合金も使用で
きる。
【0035】六チタン酸カリウム繊維と軽金属との複合
化方法としては例えば、粉末冶金法、高圧鋳造法等の従
来公知の方法が使用される。
【0036】高圧鋳造法で複合材料を作成する場合、予
め繊維予成形体を作製する必要があるが、この際には無
機系のバインダーを添加して作製した繊維予成形体を使
用するよりも、焼結繊維予成形体を使用する方が好まし
い。即ち、無機系のバインダーを添加して繊維予成形体
を作製すると、無機系のバインダーとチタン酸カリウム
繊維とが反応してチタン酸カリウム繊維の強度が低下
し、この為に本来のチタン酸カリウム繊維が有している
補強効果を軽金属に有効に付与しがたくなるのみなら
ず、無機系バインダーが合金成分と反応し易いので合金
成分が偏在することあるいは合金成分が母材の強度向上
に影響する金属間化合物の生成を妨害すること等に繋が
り、熱処理の効果が得られ難くなる。
【0037】該焼結予成形体は以下のようにして製造す
ることができる。即ち、チタン酸カリウム繊維を含む強
化材に有機バインダーを添加混合後、800〜1100
℃の温度で焼成するとチタン酸カリウム繊維が適度に焼
結して、良好な特性を有する溶湯鋳造用の予成形体とす
ることができる。
【0038】六チタン酸カリウム繊維と軽金属との配合
割合は、六チタン酸カリウム繊維の体積率が5〜40%
である。即ち、六チタン酸カリウム繊維の体積率が5%
より小さい場合は六チタン酸カリウム繊維によりマトリ
ックス金属を強化する効果が非常に小さく、逆に六チタ
ン酸カリウム繊維の体積率が40%を越える範囲におい
ては、六チタン酸カリウム繊維の体積率の増大に伴う複
合材料の強度の向上度合いが小さくなるのみならず、六
チタン酸カリウム繊維の使用量が増大するにつれて複合
材料のコストが高くなるので好ましくない。
【0039】本発明による金属基複合材料の製造に際
し、強化材として更にアルミナ短繊維、結晶質アルミナ
ーシリカ短繊維、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウ
ィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、アルミナ長
繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、チラノ繊維等を併用
使用することができる。前記の繊維あるいはウィスカー
を併用使用することにより、本発明による六チタン酸カ
リウム繊維強化金属基複合材料の強度を更に向上させた
り、耐摩耗性を向上させたり、あるいは熱膨張率を更に
低下させることができる。
【0040】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すもので
あり、発明の範囲がこれらによって制限されるものでは
ない。
【0041】
【実施例1】アナターゼ型二酸化チタン1400gおよ
び炭酸カリウム650gを秤量し、7リットルの水を添
加後、よく攪拌して炭酸カリウムを溶解した。このスラ
リーを入口温度270〜280℃、出口温度80〜85
℃の条件で噴霧乾燥した。
【0042】次に、この乾燥物をアルミナ製ルツボに入
れ、電気炉中で昇温速度250℃/時、焼成温度100
0℃、保持時間1時間の条件で焼成した後、800℃ま
で20分で降温し、以後室温まで200℃/時の速度で
降温した。
【0043】焼成物をステンレス製容器中の15リット
ルの温水に投入して、5時間浸漬した。T.K.ホモミ
キサー(特殊機化工業製高剪断力ミキサー、回転数は4
000rpm、以下特に記載のないときのホモミキサー
の回転数は同じ)で1時間攪拌後、浴温度を60℃に調
整した。5N−塩酸を滴下してpHを9.3に調整し
た。この後攪拌を更に続けると四チタン酸カリウムの層
間からカリウムイオンが溶出する為、pHが高くなる
が、塩酸滴下後、30分間攪拌を続けた場合のpHの上
昇が0.1以下になるまで30分間隔で塩酸を滴下して
pHを9.3に調整した。チタン酸カリウム繊維に対し
0.2重量%の高分子凝集剤(共立有機工業研究所製、
商品名:ハイモロックMP−173H)添加して繊維を
凝集させた。濾過洗浄後、1000℃で1時間焼成し
た。該焼成物を10リットルの温水中に投入し、T.
K.ホモミキサ−で30分間攪拌して該繊維を分散させ
た。1N−塩酸を滴下して、pHを4に調整した。濾
過、洗浄、乾燥して六チタン酸カリウム繊維を得た。こ
の繊維をX線回折により同定したところ、六チタン酸カ
リウムしか確認されなかった。更に、分析電子顕微鏡で
も該繊維を調べたが、特に他の相はみとめられなかっ
た。また、走査型電子顕微鏡により繊維を観察したとこ
ろ、平均的な長さは11μmであり、平均径は0.4μ
mであった。また、BET法により比表面積を測定した
ところ3.3m2 /gであった。Scherrerの式の定数K
を0.9として、(200)回折線から結晶子径を求め
たところ、680オングストロームであった。
【0044】該チタン酸カリウム繊維を化学分析により
調べたところ、Nb25 0.384%、Fe23
0.007%、MgO 0.010%、CaO 0.0
85%、Al23 0.025%、ZnO 0.012
%、P25 0.009%、SiO2 0.006%等の
不純物を含み、純度は99.4%であった。
【0045】該チタン酸カリウム繊維を、150g/l
の濃度になるように水に加え、更にチタン酸カリウム
繊維に対し0.1重量%の分散剤(サンノプコ製、商品
名:ノプコサントRFA)を添加した後、T.K.ホモ
ミキサーで30分間攪拌して分散させた。この後チタン
酸カリウム繊維に対し8.0重量%相当量のポリビニル
アルコール(クラレ製、商品名:クラレポバール20
5)を加えた後、塩ビ製型枠の中に入れ、吸引濾過し成
形体を得た。該吸引成形体を塩ビ製型枠内から金型内に
移し、繊維体積率が30%になるように加圧した。プレ
ス成形体を金型から取り出し乾燥した後950℃に加熱
して焼結予成形体を得た。
【0046】該焼結予成形体を約700℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約700
℃のJlS規格ADC12材の溶湯を注ぎ、ただちに1
000kg/cm2 の圧力を加えたまま急速に冷却凝固
して、複合素材を製造した。
【0047】
【比較例1】アナターゼ型二酸化チタン1400gと炭
酸カリウム650gとを乾式混合した後、アルミナ製ル
ツボに入れ、電気炉中で昇温速度250℃/時、焼成温
度1000℃、保持時間1時間の条件で焼成した後、室
温まで200℃/時の速度で降温した。
【0048】焼成物をステンレス製容器中の15リット
ルの温水に投入して5時間浸漬した後、600rpmで
攪拌を開始し、液温を60℃に調整した。5N−塩酸を
滴下してpHを9.5に調整した。この後攪拌を更に続
けると四チタン酸カリウムの層間からカリウムイオンが
溶出する為、pHが高くなるが、塩酸滴下後、30分間
攪拌を続けた場合のpHの上昇が0.1以下になるまで
30分間隔で塩酸を滴下してpHを9.5に調整した。
【0049】濾過後、1000℃で1時間焼成した。該
焼成物を10リットルの温水中に投入し、T.K.ホモ
ミキサーで30分間攪拌して該繊維を分散させた。IN
−塩酸を滴下して、pHを4に調整した。濾過、洗浄、
乾燥して六チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX
線回折により同定したところ、六チタン酸カリウムしか
確認されなかったが、更に分析電子顕微鏡で調べたとこ
ろ、カリウムを殆ど含まない繊維が存在することが分か
った。また、走査型電子顕微鏡により繊維を観察したと
ころ、平均的な長さは13μmであり、平均径は0.4
μmであった。また、BET法により比表面積を測定し
たところ4.3m2/gであった。Scherrerの式の定数
Kを0.9として、(200)回折線から結晶子径を求
めたところ、630オングストロームであった。
【0050】実施例1と同様な手法により繊維体積率が
30%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を約
700℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約700℃のJIS規格ADC12材の溶
湯を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加え
たまま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0051】
【比較例2】比較例1において、焼成物をステンレス製
容器中の15リットルの温水に投入して5時間浸漬後、
T.K.ホモミキサー(特殊機化工業製高剪断力ミキサ
ー)で1時間攪拌した後に液温を60℃に調整した他は
全て比較例1と同様な操作で六チタン酸カリウム繊維を
得た。
【0052】走査型電子顕微鏡により繊維を観察したと
ころ、平均的な長さは12μmであり、平均径は0.4
μmであった。また、BET法により比表面積を測定し
たところ4.4m2 /gであった。Scherrerの式の定数
Kを0.9として、(200)回折線から結晶子径を求
めたところ、630オングストロームであった。
【0053】実施例1と同様な手法により繊維体積率が
30%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を約
700℃に余熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約700℃のJIS規格ADC12材の溶
湯を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加え
たまま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0054】
【参考例1】大塚化学製チタン酸カリウムウィスカー・
ティスモNを使用した他は実施例1と同様な条件で焼結
予成形体を得た。尚、該チタン酸カリウムウィスカーを
化学分析により調べたところ、Nb25 0.120
%、Fe23 0.010%、MgO 0.027%、
CaO 0.111%、Al23 0.062%、Zn
O 0.001%、P25 0.089%、SiO
20.005%等の不純物を含み、純度は99.5%で
あった。このウィスカーをX線回折により同定したとこ
ろ、六チタン酸カリウムと二酸化チタンの2相混合物で
あった。また、走査型電子顕微鏡によりウィスカーを観
察したところ、平均的な長さは10μmであり、平均径
は0.4μmであった。また、BET法により比表面積
を測定したところ7.2m2 /gであった。Scherrerの
式を用いて、(200)回折線から結晶子径を求めたと
ころ、405オングストロームであった。
【0055】該焼結予成形体を約700℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約700
℃のJIS規格ADC12材の溶湯を注ぎ、ただちに1
000kg/cm2 の圧力を加えたまま急速に冷却凝固
して、複合素材を製造した。
【0056】
【参考例2】日本ウィスカー製チタン酸カリウムウィス
カー・トフィカYを使用した他は参考例1と同様な条件
で焼結予成形体を得た。尚、該チタン酸カリウムウィス
カーを化学分析により調べたところ、Nb25 0.2
22%、Fe23 1.487%、NiO 0.00
8、MnO 0.034、MgO 0.073%、Ca
O 0.053%、Al23 0.276、ZnO
0.011%、P25 0.131%、SiO2 0.0
10%等の不純物を含み、純度は97.1%であった。
このウィスカーをX線回折により同定したところ、六チ
タン酸カリウムと二酸化チタンの2相混合物であった。
また、走査型電子顕微鏡によりウィスカーを観察したと
ころ、平均的な長さは12μmであり、平均径は0.4
μmであった。また、BET法により比表面積を測定し
たところ8.3m2 /gであった。Scherrerの式を用い
て、(200)回折線から結晶子径を求めたところ、3
65オングストロームであった。
【0057】該焼結予成形体を約700℃に予熱後、予
め350℃に加熱してある金型に設置した後、約700
℃のJIS規格ADC12材の溶湯を注ぎ、ただちに1
000kg/cm2 の圧力を加えたまま急速に冷却凝固
して、複合素材を製造した。実施例1、比較例1及び
2、参考例1及び2で得られた複合素材を機械加工し、
引張試験片を作製した。図1に引張試験用の試験片形状
を示す。
【0058】常温引張強度の測定結果を第1表に示す。
【0059】 第1表 引張強度(MPa) ワイブル係数 実施例 1 398 59 比較例 1 362 20 比較例 2 375 27 参考例 1 324 21 参考例 2 315 18 *試験片数 12ケ 第1表に明らかなように、本発明による六チタン酸カリ
ウム繊維強化複合材料は強度が高いのみならず、強度の
バラツキが非常に小さいことが分かる。比較例1および
2の引張試験片の破断面を走査型電子顕微鏡で観察した
ところ、強度が低くでた試験片の破断面には10〜30
μmの径の束状物が多く観察された。これに対し、実施
例1の試験片の破断面には束状物が特に観察されなかっ
た。また、実施例および比較例の複合材料の母材と複合
部との境界付近をEPMAで分析したところ、比較例1
および2の複合材料の母材と複合部との境界付近にはM
gの富化部が観察され、複合部の内部に向かう程Mgの
含有量が低下していることが分かった。これに対し、実
施例1の複合材料の母材と複合部との境界付近には軽金
属成分の偏析は特に観察されず、複合材料の外部と内部
とでMgの含有量に特に差は認められなかった。
【0060】参考例の複合材料の強度が比較例および実
施例の複合材料のそれよりも大幅に低いのは、該チタン
酸カリウムウィスカー中に束状凝結物が多いこと以外
に、該ウィスカー中に六チタン酸カリウムよりも金属と
の反応性が高い二酸化チタンが多量に含まれているため
と判断される。
【0061】
【実施例2】実施例1において、チタン原料化合物とし
てチタン工業製の高純度酸化チタンを使用した他は全て
実施例1と同様な操作で高品位六チタン酸カリウム繊維
を合成した。この繊維をX線回折により固定したとこ
ろ、チタン酸カリウムの単一相であった。走査型電子顕
微鏡により繊維を観察したところ、平均的な長さは21
μmであり、平均径は0.5μmであった。また、BE
T法により比表面積を測定したところ2.8m2 /gで
あった。Scherrerの式を用いて、(200)回折線から
結晶子径を求めたところ、760オングストロームであ
った。該チタン酸カリウムウィスカーを化学分析により
調べたところ、Nb25 0.021%、Fe23
0.003%、MgO 0.008%、CaO 0.0
24%、Al23 0.005%、ZnO 0.008
%、P25 0.005%、SiO20.004%等の
不純物を含み、純度は99.9%であった。
【0062】実施例1と同様な手法により繊維体積率が
20%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を約
800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約800℃のJIS規格AC8A材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0063】
【実施例3】実施例1において、原料化合物の焼成温度
を1050℃とした他は全て実施例1と同様な操作で六
チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX線回折によ
り同定したところ、六チタン酸カリウムの単一相であっ
た。走査型電子顕微鏡により繊維を観察したところ、平
均的な長さは20μmであり、平均径は0.5μmであ
った。また、BET法により比表面積を測定したところ
2.7m2 /gであった。Scherrerの式を用いて、(2
00)回折線から結晶子径を求めたところ、770オン
グストロームであった。該チタン酸カリウム繊維を化学
分析により調べたところ、純度99.4%であった。
【0064】実施例1と同様な手法により繊維体積率が
25%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を約
800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約800℃のJIS規格AC8A材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0065】実施例2および3で得られた複合素材を機
械加工し、図1と同様な引張試験片を作製した。
【0066】熱処理する前およびT6熱処理(510℃
x4時間の容体化処理後水中急冷した後170℃x10
時間の焼戻し処理)後の常温引張度を測定した。試験結
果を第2表に示す。
【0067】 第2表 引張強度(MPa) 熱処理前 熱処理後 実施例 2 391 425 実施例 3 382 367 第2表に明らかなように、純度の高い六チタン酸カリウ
ム繊維強化複合材料は、複合材料を熱処理することによ
り、強度がより高くなることが分る。尚、実施例2およ
び3の複合材料の引張強度試験のワイブル係数は、実施
例2の熱処理前の複合材料で60、実施例3のそれは5
4であり、これらの値は熱処理後においても特に変化は
なく、実施例2および3の複合材料共に、強度のバラツ
キが非常に小さいものであった。
【0068】
【比較例3】実施例2において、組成変換処理した後の
加熱温度を900℃とした他は全て実施例1と同様な操
作で六チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX線回
折により同定したところ、六チタン酸カリウム繊維の単
一相であった。走査型電子顕微鏡により繊維を観察した
ところ、平均的な長さは20μmであり、平均径は0.
5μmであった。また、BET法により比表面積を測定
したところ5.3m2/gであった。Scherrerの式を用
いて、(200)回折線から結晶子径を求めたところ、
555オングストロームであった。
【0069】
【比較例4】実施例2において、組成変換処理した後の
加熱温度を800℃とした他は全て実施例1と同様な操
作で六チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX線回
折により同定したところ、六チタン酸カリウム繊維の単
一相であった。走査型電子顕微鏡により繊維を観察した
ところ、平均的な長さは20μmであり、平均径は0.
5μmであった。また、BET法により比表面積を測定
したところ6.4m2/gであった。Scherrerの式を用
いて、(200)回折線から結晶子径を求めたところ、
435オングストロームであった。
【0070】実施例1と同様な手法により繊維は体積率
20%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成形体を約
800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約800℃のJIS規格AC8A材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。
【0071】比較例3および4で得られた複合素材を機
械加工し、図1と同様な引張試験片を作製した。
【0072】T6熱処理(510℃x4時間の容体化処
理後水中急冷した後170℃x10時間の焼戻し処理)
後の常温引張強度の試験結果を第3表に示す。
【0073】 第3表 引張強度(MPa) ワイブル係数 比較例 3 365 26 比較例 4 348 22 第3表に明らかなように、比較例3および4の複合材料
は実施例2の複合材料に比べ強度が低いのみならず、強
度のバラツキが非常に大きい。各試験片の破断面を走査
型電子顕微鏡で観察したが、繊維の束状物は特に観察さ
れなかった。しかしながら、比較例3および4の複合材
料の母材と複合部との境界付近にはMgの富化部が観察
され、複合材料の内部にむかうほどMgの含有量が少な
くなっていることが分かった。従って比較例3および4
の複合材料の強度が低く且つ強度のバラツキが大きい原
因として、繊維の比表面積が大きく結晶性が悪い為、複
合化時に繊維と軽金属の成分とが反応して繊維が損傷を
受けて繊維自体の強度が低下したあるいは軽金属の成分
が偏析した為複合部の母材自体の強度がばらついた等が
考えられる。
【0074】
【比較例5】実施例2で使用したものと同じチタン工業
製高純度酸化チタン1400gおよび炭酸カリウム93
0gを秤量し、9リットルの水を添加後、よく攪拌して
炭酸カリウムを溶解した。このスラリーを入口温度27
0〜280℃、出口温度80〜85℃の条件で噴霧乾燥
した。
【0075】次に、この乾燥物をアルミナ製ルツボに入
れ、電気炉中で昇温速度250℃/時、焼成温度970
℃、保持時間1時間の条件で焼成した後、800℃まで
20分で降温し、以後室温まで200℃/時の速度で降
温した。
【0076】焼成物をステンレス製容器中の15リット
ルの温水に投入して、5時間浸漬した。T.K.ホモミ
キサー(特殊機化工業製高剪断力ミキサー)で1時間攪
拌後、浴温度を60℃に調整した。5N−塩酸を滴下し
てpHを9.5に調整した。この後攪拌を更に続けると
四チタン酸カリウムの層間からカリウムイオンが溶出す
る為、pHが高くなるが、塩酸滴下後、30分間攪拌を
続けた場合のpHの上昇が0.1以下になるまで30分
間隔で塩酸を滴下してpHを9.5に調整した。チタン
酸カリウム繊維に対し0.2重量%の高分子凝集剤(共
立有機工業研究所製、商品名:ハイモロックMP−17
3H)を添加して繊維を凝集させた。
【0077】濾過洗浄後、1000℃で1時間焼成し
た。該焼成物を10リットルの温水中に投入し、T.
K.ホモミキサーで30分間攪拌して該繊維を分散させ
た。1N−塩酸を滴下して、pHを4に調整した。濾
過、洗浄、乾燥して六チタン酸カリウム繊維を得た。こ
の繊維をX線回折により同定したところ、六チタン酸カ
リウムしか確認されなかったが、分析電子顕微鏡で該繊
維を調べたところ、カリウムを殆ど含まない繊維が存在
することが分かった。また、走査型電子顕微鏡により繊
維を観察したところ、平均的な長さは60μmであり、
平均径は1μmであった。また、BET法により比表面
積を測定したところ1.4m2 /gであった。Scherrer
の式を用いて、(200)回折線から結晶子径を求めた
ところ、790オングストロームであった。
【0078】実施例1と同様な手法により繊維体積率が
20%の焼結予成形体に作製した。該焼結予成形体を約
800℃に予熱後、予め350℃に加熱してある金型に
設置した後、約800℃のJIS規格AC8A材の溶湯
を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力を加えた
まま急速に冷却凝固して、複合素材を製造した。この複
合素材を機械加工し、図1と同様な引張試験片を作製し
た。
【0079】T6熱処理(510℃x4時間の容体化処
理後水中急冷した後170℃x10時間の焼戻し処理)
後の常温引張強度を測定したところ393MPaと高い
値を示したが、ワイブル係数は23であり、強度のバラ
ツキが大きかった。引張試験片の破断面を走査型電子顕
微鏡で観察したところ、強度が低かった試験片の破断面
には10〜30μmの径の塊状物が多く観察された。
【0080】
【比較例6】比較例5において、組成変換処理時のスラ
リーのpHを9.3に調節した他は全て比較例5と同様
な条件で六チタン酸カリウム繊維を得た。この繊維をX
線回折により同定したところ、六チタン酸カリウムと二
酸化チタンとの2相混合物であることが分かった。ま
た、走査型電子顕微鏡により繊維を観察したところ、平
均的な長さは60μmであり、平均径は1μmであっ
た。また、BET法により比表面積を測定したところ
1.7m2 /gであった。Scherrerの式を用いて、(2
00)回折線から結晶径を求めたところ、785オング
ストロームであった。実施例1と同様な手法により繊維
体積率が20%の焼結予成形体を作製した。該焼結予成
形体を約800℃に予熱後、予め350℃に加熱してあ
る金型に設置した後、約800℃のJIS規格AC8A
材の溶湯を注ぎ、ただちに1000kg/cm2 の圧力
を加えたまま急速に冷却凝固して、複合素材を製造し
た。この複合素材を機械加工し、図1と同様な引張試験
片を作製した。
【0081】T6熱処理(510℃x4時間の容体化処
理後水中急冷した後170℃x10時間の焼戻し処理)
後の常温引張強度を測定したところ341MPaと低い
値を示した。更に、ワイブル係数は25であり、強度の
バラツキも大きかった。引張試験片の破断面を走査型電
子顕微鏡で観察したところ、強度が低かった試験片の破
断面には10〜40μm径の塊状物が多く観察された。
【0082】試験結果を第4表に示す。
【0083】 第4表 引張強度(MPa) ワイブル係数 比較例 5 393 23 比較例 6 341 25
【図面の簡単な説明】
【図1】引張試験片の形状を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−263031(JP,A) 特開 平4−202099(JP,A) 特開 平3−278215(JP,A) 特開 昭62−240727(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均繊維長が8〜30μmおよび平均繊
    維径が0.2〜0.7μmであり、かつ比表面積が2〜
    4m2 /gである補強材用六チタン酸カリウム繊維。
  2. 【請求項2】 繊維の不純物含有量が0.3重量%以下
    である請求項1記載の六チタン酸カリウム繊維。
  3. 【請求項3】 不純物としてのニオブの含有量がNb2
    5 換算量で0.1重量%以下である請求項2記載の六
    チタン酸カリウム繊維。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の補強材用六チタン酸カリ
    ウム繊維と、軽金属または熱可塑性樹脂であるマトリッ
    クスとを含む複合材料。
  5. 【請求項5】 請求項2記載の補強材用六チタン酸カリ
    ウム繊維と、軽金属または熱可塑性樹脂であるマトリッ
    クスとを含む複合材料。
  6. 【請求項6】 請求項3記載の補強材用六チタン酸カリ
    ウム繊維と、軽金属または熱可塑性樹脂であるマトリッ
    クスとを含む複合材料。
  7. 【請求項7】 一般式K2 O・nTiO2 (但しn=
    3.5〜4)で示される割合で配合されたチタン原料化
    合物とカリウム原料化合物との混合物を950〜110
    0℃で焼成して、塊状の四チタン酸カリウム繊維を生成
    せしめ、次いで該塊状焼成物の温度を800℃まで30
    分以内の時間で冷却した後、該塊状焼成物を水又は温水
    中に浸漬して、高剪断力を有するミキサーで該塊状チタ
    ン酸カリウム繊維を単一繊維に分離後、該スラリーに酸
    を添加してpHを9.2〜9.5に調整することによ
    り、チタン酸カリウム繊維の組成がTiO2 /K2
    (モル比)で5.95〜6.00の組成になるように組
    成変換処理し、次いで高分子凝集剤を添加して繊維を凝
    集させた後固液分離して該固形分を950〜1050℃
    で焼成後、酸洗浄することを特徴とする請求項1記載の
    補強材用六チタン酸カリウム繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102307570B1 (ko) * 2019-11-04 2021-09-30 연세대학교 원주산학협력단 아동용 웨어러블 보행재활 장치

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